Menu
BackNext




beatmaniaUDX The ANOTHER Story Type.K


10th STAGE 『暴君』




エレキ 「セリカ! 準備はオーケーだ! 各国の反抗組織や諸侯たちも集まった!」

基地奪還から早2週間、本来ならばもっと早くに本国に侵攻するべきだったのかもしれない。
しかし、アゼルガットの国中に散らばる同志たちを集めるのには時間が必要だった。
そしてついにその同志たちが集まったのだ。

敵はすでに布陣を敷いている。
作戦行動としては遅すぎたが、これによりついに大規模反攻作戦が開始されるのだ。

エレキ 「セリカ、すでに軍勢は外に集まっているぜ、開戦の合図だ!」

セリカ 「……わかったわ」

セリカはそう言うと、はぁ……と息を吐いた。
正直緊張している。
この大戦の総大将を務めるのだから当然と言えば当然かもしれない。
白いドレスのような服を着て、銀の剣を持つその姿はまるで戦う王女のようだった。

セリカ 「……よし」

セリカは覚悟を決め、いよいよ大衆の前に姿を表す。



ワァァァァァァァァァァァァッ!!!!

ケイ 「すごいなぁ……こんなに集まるなんて」

私はセリカさんが来るのを待ってテラスの横にいた。
外にはまるで大地を埋め尽くさんばかりの人が集まっている。
戦う人ばかりじゃない、キラーの圧政に反対する民衆も大勢集まっている。
まるで東京ドームでコンサートでもするかのようだった。

セリカ 「おまたせ、ケーちゃん!」

ケイ 「あ、セリカさん! 皆さん待ってますよ!」

セリカ 「うん……」

準備を終えたのかセリカさんがテラスに現れる。
まるでドレスのような服を来たセリカさんはとても美しい。
セリカさんが現れたことで民衆は静まり返った。
皆セリカさんの言葉を待っている。

エレキ 「拡声器、セット」

エレキさんが後ろでマイクの調整を行う。
この世界は何より音を重んじるせいか、技術レベルに似合わないマイクがあった。
どちらかというとメガホンみたいだけど、音術に力を変えて、声を大きくするらしい。

セリカ 「諸君、私が反アゼルガット抵抗組織EDENの代表セリカです!」
セリカ 「私たちは今日まであの暴君キラーの圧政に耐え忍び、必死に声を掛けてきました!」
セリカ 「しかし! あの暴君はどうだったでしょう!? 我々民衆のことを考えてくれましたか!? 否! 彼は我々の声にさえ耳を傾けなかった!」
セリカ 「そればかりか! 役人たちは罪の無い民衆から不当な税金をとり、盗賊に民が襲われようと知らぬふり! これが国を統べる者の姿であって本当にいいのか!?」
セリカ 「否! 断じて否です! だからこそ、私は立ち上がりました! 諸君等もそうでしょう!」
セリカ 「今、ここには10万の人間が集まっていると聞いています……その10万人がキラーの圧政に苦しんで立ち上がった者でしょう!」
セリカ 「我々は十分に耐えた! 今こそキラーに鉄槌を下すべき時! 立ち上がれ国を愛する者よ! 暴虐に苦しむものよ! 共にいこう! 未来を勝ちとれ!」

ワァァァァァァァァッ!

セリカさんの演説に聴衆は沸く。
そうだろう、まるでたぬきと言わんばかりに扇動している。
セリカさんにこんな話術があったなんて驚きだけど、どうせ文章考えたのはエレキさんとかそんな所だろうなぁと思ってしまう私ってやっぱりワル?
そんなことを考えていると、セリカさんが私にマイクを渡してきた。

ケイ 「へ? セリカさん?」

セリカ 「英雄さん、民衆はあなたを望んでいるわ」

ケイ 「へ? へ?」

私は戸惑っていると、突然コールが入る。

観衆 「ケー! ケー! ケー!」

ケイ 「あ……えと、本日は晴天ナリ、晴天ナリ……テステス、マイクテースト、マイクテースト、あ、あ〜」

私は緊張してマイクテストを行う。
場が静まる、私の言葉を待っているの?
うわぁ……き、緊張しちゃうよ!

ケイ 「え……えと、正直今でも私はなんで英雄なんて呼ばれているのかわかりません、私はある日平凡に暮らしていて、先輩や友達より少し劣っていることをコンプレックスにしているだけの少女でした」
ケイ 「それが突然、この世界に召喚されて本当に信頼出来る仲間達と一緒に戦って、気がついたらこんなところに立っています」
ケイ 「正直、代わってもらえるのならすぐにでも代わってもらいたい、でも……私がここにいるのはきっと何か意味があるんだと思います」
ケイ 「私はセリカさんみたいに頼りづよくはありません、むしろ皆さんに一杯一杯迷惑を掛けてしまうと思います、でも……それでも私は一生懸命頑張ります!」
ケイ 「えと、その……こんなこと言うのは厚かましいかもしれないけれど、皆さんも頑張って! そして死なないで! この戦いは勝つことが重要なんじゃない、生き残ることが重要なんだと思います! 未来を作りましょう! 共に行きましょう! 光より遠く、未来より速い先へ……て、間違えた! ああ、もういいや! とにかく頑張りましょう!」

私は演説なんかしたことがないからグデグデだけど、とにかく必死に自分の言葉を聴者に告げた。
聴者は口をポカンと開いて唖然としており、私は失敗したぁと内心落胆してしまう。
だが、直後歓声が割れた。

観衆 「ケー! ケー! ケー! 英雄ケーに栄光あれーっ!」

なんと私の名前を讃えてくれる。
なんで、なんでなのぉ〜!?
わ、わけわからないよぉ!?

セリカ 「ふふ……諸君これより作戦名『Believe again』を始動します!」

オオオオオオオオッ!!

それはまるで大地が揺れるようだった。
今、アゼルガットの命運をかけた戦いが始まろうとしているのだろう。






エクレメス 「――あっはっは! もうなんていうか……ケーらしいわねぇ! あっはっは!」

ケイ 「もう、そんなに笑わないでくださいよぉ〜!」

私は演説を終えて、仲間たちの元に帰ると盛大にエクレメスさんに笑われるのだった。
まぁでもエクレメスさんらしいっちゃらしいけどね。

ルルスス 「でも……ケーの優しさが一杯詰まってました」

赤いの 「私たちも一杯生きるの〜!」
青いの 「お〜!」
黄色いの 「お〜……」

エクレメス 「いやでも……光より遠く、未来より速い先へ……て、間違えた! ……は無いわぁ、あっはっは!」

ケイ 「うう〜……だって、緊張しまくっていたもん」

正直考えて言葉を選んでいる余裕なんてこれっぽっちもなかった。
もう自分が思ったこと片っ端から話しただけだし、間違えた部分も狙って入れてみたら間違えたし。
はぁ……私って格好悪ぅ〜……。

オロロージョ 「ケー、気にすることはない。ケーの言いたいことはしっかり伝わったよ、後……勝って生き残ろう!」

ケイ 「……うん」

私はしっかりと頷く。
やっぱりこんな所で死にたくないもん。
私には戦う力がないから祈ることしか出来ない。
だから精一杯神に通じるくらい祈ろう、皆の無事を。

エクレメス 「しっかし、平原で開戦か……面白みがないわねぇ」

ルルスス 「こちらが相手の非を唱えた以上、こちらには面子があります。演説は絶大な効果を発揮する反面、こちらの動きを制限してしまいますから」

確かにセリカさんの演説で今回の士気はものすごく高そうだった。
でも、それはそれだけセリカさんが信頼されている証拠だ。
だから今回の作戦ではあくまで正当性を示し続けなければならない。
うぅ〜ん、やっぱり戦争って難しいなぁ。

ケイ 「ねぇ、エクレメスさん、反乱軍と正規軍の戦力差ってどれくらいなんですか?」

エクレメス 「反乱軍の戦力は約10万、数十機のゼクトバッハが出撃すると考えていいでしょうね」

十万の中から数十機……そう考えるとやっぱりゼクトバッハって貴重なんだと感じる。

ルルスス 「対してアゼルガット王国軍の兵力は総勢30万……今回の戦いでは20万は来るかと……ゼクトバッハの数は114機……8割が出撃すると思われます」

ケイ 「うへぇ……そんなにいるの正規軍って?」

エクレメス 「当たり前でしょ? この国を護っている軍隊なんだから、最も……内容はセリカのいうようにほとんどが私利私欲で動く豚どもだけどね……ルルススみたいなのは特異なのよ」

ルルスス 「……」

ルルススちゃんは明らかに嫌な顔をしていた。
今回の戦いは身内の恥のとの戦いと言えなくもない。
とはいえ、全てが全てエクレメスさんの言うような人ばかりのはずがない。
中には芯から国のことを考えている人もいるはずだ。
そういう思いもあるから、ルルススちゃんは嫌な顔をしているんだろう。

エクレメス 「まぁでも結果的な戦力は5分と見ていいでしょうね」

ケイ 「え? でもさっきルルススちゃんの説明では倍以上の戦力差が……」

オロロージョ 「向こうはこちらほど士気はない、利害で動くなら尚更だ、ちょっとでも危なくなったら逃げるか寝返るさ……そういう点を込めての戦力差だよ」

ケイ 「あ、そうか」

シュミレーションゲームとは違うもんね。
シュミレーションゲームでは数字に過ぎない兵士も、実際の戦場ではそれぞれドラマがあり、生きている。
誰もが彼もゲームの駒のように、忠実で敬虔に戦ってくれるわけがないんだ。
人を扱うってやっぱり難しいだなぁ……私はまだこの3人(と3機なのかな?)の面倒を見ているだけだけど、それでも大変だもん。
今のところ何も問題は起きていないけど、サポートしたりフォローしたり余念がないもんね。

ルルスス 「でもキラー様の圧力は懸念するべきです」

エクレメス 「ルルスス、敵なんだから呼び捨てにしなさい! 他の人が聞いたら勘違いするわよ」

ケイ 「あ、それ私も気をつけないと」

昔と違って今は団体行動だもんね。
キラーさんと戦うときも私エクレメスさんに注意されたっけ。

エクレメス 「……でもルルススの言うように、キラーの圧力は懸念すべきね、兵士たちは多分大半が恐怖で戦いに来るわ」

オロロージョ 「恐怖で? それなら逃げるだろう?」

エクレメス 「後ろがない恐怖よ、後退したらキラーに殺されるという恐怖が兵士を動かすこともあるわ、特に彼、暴君として有名だしね」

ケイ (暴君……キラー……)

私は以前の彼を思い出す。
彼はまるで狂気をむき出しにしたように私やオロロージョさんに襲いかかってきた。
彼は私やオロロージョさんを知っていた。
一体どこで知ったんだろうか?
オロロージョさんはともかく、私はキラーさんに出会うはずがない、違う世界で生きているのだから。
それとも……キラーさんはこちら側の世界の人間だったり。
それはないか……それは……。

ケイ (もう一度、あの人と話をしたい、本当にあの人は暴君なんだろうか? あの人に隠された秘密……それがなんなのか知りたい)

オロロージョ (キラー……お前に勝つために、ケーのために俺は努力をした、今度こそお前に勝つ)



………互いの思いは、思いのまま……それはどのように生きるのかわからない。
だが、戦いの時は刻一刻と過ぎていく。



…………。



エクレメス 「――おうおう、よく集まったものよねぇ」

首都タッシュへと向かう反乱軍は首都手前の大平原にて正規軍と遭遇する。
その数は凄まじく本当に20万も30万も集まったという感じだった。
様々なタイプのゼクトバッハも集まり王国軍陣営にそびえている。

ケイ 「だけど……こっちも負けていない」

私は後方から相手の様子をみていた。
パッと見の戦力では確かに負けているけれど、この戦いは必ず勝つ。
なんだかわからないけれど、そんな予感がした。



セリカ 「……総員! 敵陣を突破せよ! この戦いこそ明日を賭けた正規の一戦である!」

反乱軍 「おおおっ!!」



アゼルガット将軍 「構え弓! ゼクトバッハ部隊は敵をけちらせ! 奴ら反逆者共に正義の鉄槌をくだせ!!」

正規軍 「おおおっ!!」



今、両軍が激突する。





エレキ 『……邪魔だぁ!!』

オロロージョ 「はぁ!」

俺はゼクトバッハXepherに乗り、エレキさんと一緒に敵ゼクトバッハをケチらした。
敵は数は多いが、烏合の衆だとエレキさんが言っていたようにたしかに敵ゼクトバッハ乗りはそう熟練した使役者とは言えない。
二回目の出撃に伴い、前よりはずっと戦いやすくはなっていた。
少なくとも……エレキさんを相手にするのに比べたらずっと楽だ。

正規軍 『うおおおおっ!』

オロロージョ 「!?」

突然、側面から斧を持った戦士型ゼクトバッハが襲いかかってくる。
俺は咄嗟に防御態勢をとるが、若干間に合わない。

だが、直後。

ズドォン!

俺に襲いかかってきたゼクトバッハに光の槍が突き刺さり、敵ゼクトバッハは動かなくなった。

ルルスス 『大丈夫? オロロージョさん』

ルルススの使役するSigSig、魔術師型のゼクトバッハで、白兵戦能力は皆無だが術者の魔力をダイレクトに反映する。
まさに今、ルルススの魔力の塊が敵を貫いたのだ。

ルルスス 『あなたの後ろは私が護るわ』

オロロージョ 「敵だったときはたまらなく怖かったが……いざ、味方になるとこれほど頼もしいことはないな、頼むぞルルスス!」

俺はルルススの援護を受けて、安心して前線に迎える。
足元は混戦状態であり、Xepherの足元を必死に攻撃する敵もいるが、Xepherには全く通用しない。
とはいえ、味方もいるので大胆な動きはできそうになかった。




ルルスス 「SigSigよ、我が音術の魔力を増幅し、ここに顕現せよ……Laaaaaaaaa」

私は音術を唱える。
私が得意とするのは攻撃音術ではない……幻覚音術。
私の魔力をSigSigという媒介を通し、増幅しそれを戦場に解き放つ。
戦場は今、私の魔力で距離感が掴めなくなったはずだ。
敵に向かって使ったはずだけど……味方は大丈夫だよね?

私はそう思って味方の様子を見た。




反乱軍 「敵の様子がおかしいぞ!? まるで距離をつかめてない!」

エクレメス 「……ルルススの音術ね、これだから敵に回したくはないのよね……さぁ! なら一斉に攻勢にでるわよぉ!」

私はオカリナを手の中で回すと奏で始めた。

エクレメス (大掛かりな音術は精霊が拗ねるからあまり使いたくはないけれど、そうも言っていられないでしょ!?)

私の得意とする音術は攻撃音術。
これは本来は音術のあり方とは全く正反対の位置にある使い方だ。
本来音術とは生活を豊かにするための力だ。
だけど、人が扱うのだからある種しかたがないのだろう、それは兵器へと転用された。
だが、兵器として扱うには音術は本来適さない。
精霊が争いを嫌うからだ。

だから、本来音術士は争いに力を使ってはいけない。
でも……今は綺麗事を言っていられる時じゃないでしょ!?

エクレメス 「フレアー・レイン!」

私が音術を唱え終えると、空から火の玉が炎の尾を引いて大地に降り注ぐ。
当たれば死ぬ可能性だったある強力な音術、一日一回使えれば上等という強力な魔法を敵陣の深くに叩き込んだ。

エクレメス 「おーし、押してる押してる。これは楽勝ね」

私の音術が大地を焼き尽くす。
そのダメージにおののいて敵の動きは余計に悪くなる。
このままいけば楽勝……それは誰から見てもそう思える快勝っぷりだった。

エクレメス 「よぉしこのまま……ん?」

突然、空が暗くなるのを感じた。
何が起こったのかと上を見上げると空には黒い渦が巻き起こり、その中心に一騎のゼクトバッハがいるように見えた。



オロロージョ 「なんだ? 空飛ぶゼクトバッハ……か?」

俺は空中に突然起きた暗雲に奇妙な念を感じた。
次の瞬間、歌声のようなものが聞こえてくる。
まさか……音術?

? 『ブラックホール……』

突然Xepherの回線に割り込んでくる謎の声。
次の瞬間、重力が逆転するような力を感じた。

オロロージョ 「今の声!? キラーなのか!?」

そう叫ぶのつかの間、体重の軽い歩兵が敵味方区別なく宙を浮き、黒い渦の中に吸い込まれてしまう。
その被害は凄まじく双方40%の兵力が今の音術らしき力に消し飛んでしまった。
そして、その力の強さに俺は確信する。

オロロージョ 「キラー……キラーーーッ!!!」

キラー 『……その声、オロロージョ、やはりXepherに乗って俺の前に立ちはだかるか……』

ゆっくりと、その異形のゼクトバッハは地面へと降り立つ。
それはまるで邪神が降臨するかのように。

精霊が嘆き悲しむ、まるで夜にでもなったかのように厚い雲が空を多い、雷が発生する。
そう……すべては圧倒的力を持つキラーの前に屈服するように。

ルルスス 『き、キラー様……』


エクレメス 「あれはまさか……キラーのゼクトバッハなの?」




EDEN兵 「正体不明のゼクトバッハ出現! 強力な音術兵器により双方の被害は甚大!」

セリカ 「キラー……あれが、暴君の力」

ケイ 「キラー……さん」

突然、戦場に現れたのはまるで血のように赤い一騎のゼクトバッハだった。
一見すると騎士型にも見えるが、その背中には大きな翼があり、光の粒子を放って宙に浮いている。
それはとても天使とは程遠い姿、後ろの翼は黒くまるで堕天使のようだった。

キラー 『オロロージョ、貴様のゼクトバッハに対抗するためのゼクトバッハCaptivAte、不完全なXepherと釣り合うとは思えないが出てきてやった……以前の決着をつけよう』

オロロージョ 「Xepherが不完全?」

コンパネのことを言っているのか?
確かにXepherのコンパネは正規の物じゃない。
だが、そんなものは技術でカバーできる!

オロロージョ 「降りてこいキラー! 今度こそ俺はお前を倒す!」

俺はふつふつと沸き起こる激情を抑えてキラーを呼ぶ。
するとキラーはゆっくりと真紅のゼクトバッハCaptivAteを地上に降ろした。
Xepherと同じように空間から剣を召喚し、こちらと対峙するキラー。
俺も同様に剣を構え、静かに動きを待った。

キラー 『オロロージョ、貴様は弱い……だが、どうしてそうなった? 何故お前はこんなに弱いのだ?』

オロロージョ 「訳の分からない言葉を言うなーーっ!!」

俺はそう言ってXepherを突進させる。
体からぶつかるように剣を振るい、CaptivAteを切り裂こうとする。
しかし、CaptivAteはふらりと俺の攻撃を回避して、ゆっくりと少し離れた地面に降り立つ。

キラー 『あははは、オロロージョ君自身も不完全ならば、Xepherも不完全。まるで滑稽だな……いつもいつも俺を苦しめてきた君の見る影もない……だけど』
キラー 『だけど、君の存在そのものが許せないんだよぉっ!!』

キラーは突然狂気性を増大させる。
まるで情緒不安定であり、突然豹変する姿に最初は戸惑いも持った。
だが、不思議と馴染む……このキラーが俺の意識に不思議なくらい馴染むんだ!

オロロージョ 「うおおおっ! キラーッ!!」

互いの剣が交錯する。
火花を散らしてぶつかり合う、互いの剣。
力は五分であり両者ゼクトバッハが後ろにずれる。

キラー 『ふっ、はぁっ!』

キラーのゼクトバッハの腰から何かが発射された。
一瞬なんだと思ったら、それは針のような何かだった。

キラー 「ふふふ……機体は丈夫でもパイロットはどうかな!?」

オロロージョ 「なに……ッ?」

突然だった、体に電撃が走る。
あの針が電撃を放つのか!?

オロロージョ 「くっ! うおおおおっ!!」

俺は気合で針を弾き返す。
だが、機体より俺自身への負担が激しく、俺は片足を着いてしまう。
ゼクトバッハは俺の動きを忠実に再現するあまり、XepherはさながらCaptivAteに屈服するかのようだった。

キラー 『ははは、こんな小技に苦しむなんてやっぱり君は猪だねぇ、本当に……屑だ! あっはっは!』

キラーの笑い声がこだまする。
さすがに効いた……これはまずいと直感する。

キラー 『ふふふ、さぁ! そのまま地に這い蹲って死ねっ!!』

CaptivAteが飛び上がる、俺はなんとか立ち上がろうとするがまだ体が回復しきっておらず動けない。

オロロージョ 「くそっ!」

絶体絶命……そう感じた刹那、2発の銃声が響く。

キラー 『!? ちぃ……鬱陶しいぞ雑魚がぁぁっ!!』

サイレン 『ふ……オロロージョ、熱くなるな、冷静になれ、現実を見極めろ』

オロロージョ 「現実……?」

CaptivAteはサイレンのゼクトバッハRealの攻撃を受けて後ろに後退する。
騎士型らしく遠距離攻撃は音術兵器以外ないらしく、むなしく吠えるだけでサイレンへの制裁はなかった。

エレキ 『たく、無茶すんなよ……俺達だっているんだぜ?』

ルルスス 『キラー様は強敵です、協力していきましょう!』

まるで俺を囲むように現れる仲間。
そうだ……俺は一人でキラーと戦っているんじゃない。
俺は仲間と一緒に戦っているんだ。

オロロージョ 「みんな! ここでキラーを仕留める! 手伝ってくれ!」

エレキ 『おう!』
ルルスス 『はい!』
サイレン 『OK!』

俺はXepherを立ち上がらせてCaptivAteに立ちはだかる。
たしかにやっぱりキラーは俺ひとりには手に余る強さだ……でもキラーには仲間がいない、だからその力はそこまでの力だ。
だが俺には友がいる、仲間がいる……仲間といればこの力は無限大だ!

オロロージョ 「いくぞ! キラー!」

キラー 『図に乗るなよオロロージョ!!』

俺はキラーに突っ込む。
キラーも同様に突っ込んできた。

サイレン 『ふっ! くらいな!』

直後Realの銃が火を吹き、CaptivAteを襲う。
だが、Realから放たれた光弾は突然、CaptivAteに直撃する前に弾かれた。
そのまま闇の塊がサイレンを襲う。

サイレン 『うおおっ!?』

キラー 『二度も同じ手が通用するか馬鹿が!!』

エレキ 『ち! 音術か! でぇぇぇ!』

直後後ろからエレキさん二刀の剣を使いCaptivAteに襲いかかる。
だがエレキのNEMESISもまたキラーの操るCaptivAteの俊敏な動きにはついていけず蹴り飛ばされる。

ルルスス 『攻撃は苦手だけど……! スター・ライト!』

ルルススのゼクトバッハSigSigの持つステッキから放たれる光の塊はまるで流星のように尾を弾いてCaptivAteを襲う。
CaptivAteもさすがに三人がかりは回避しきれずついにルルススの一撃がCaptivAteを捉える。
だが、恐らく致命傷にはならないだろう。
だから俺は飛び上がった。
キラーに決着をつけるために!

オロロージョ 『うおおおおおっ! キラーッ!!!』

爆炎の中から姿を表すCaptivAte。
俺は上から真っ二つにするように両手で剣を持ち振り下ろした。

キラー 『ぐううっ!?』

Xepherのモニターにエーテル粒子がふりかかり、視界が奪われる。
ダメージは与えた……だけど!

エレキ 『だめだ! 寸前でよけれられた! 致命傷になっていない!』

サイレン 『……いや、十分だ! CaptivAteのエーテル体が漏れたことで出力低下している! 今なら捉えられるはずだ!』

キラー 『ち……くそ、くそが! なんだよ、なんなんだよ! どいつもこいつも! くそ! くそ! くそがぁぁぁっ!』
キラー 『もういい……お前たち、この世から消え去れ!!』

サイレン 『!? 嘘だろ……CaptivAteのエネルギー残量が減るどころか急激に増えてやがる!?』

エレキ 『くっ! 何をする気かしらないが!』

サイレン 『よせ! エレキ!』

突然CaptivAteが光り輝く、それに突っ込むエレキさん、それを止めようとするサイレンさん。
直後、CaptivAteが放った光がすべてを奪い去る。

ズガァァァァァァァァァァァン!!!

大爆発。
ゼクトバッハさえ吹き飛ばす大爆発が起きる。

エレキ 『うおおおっ!?』

サイレン 『エレキーーッ!!』

サイレンさんが自身の身を呈してエレキさんをかばう。
俺とルルススはどうすることもできず吹き飛んだ。


爆発の後……その場は焼け焦げて何も残らなかった。
爆発の中心点から円を囲むように消し飛ばし、俺達は……なんとか耐えていた。

オロロージョ 「う……く……キラーめ」

俺はキラーはどうしたのかと必死にXepherを起き上がらせて爆発の中心を見る。
そこには傷ついてボロボロのCaptivAteがいた。
あの音術、自爆技か?

キラー 『はぁ……はぁ……くそ! 力を使いすぎた、オロロージョめ、しぶといな……まぁいい』

オロロージョ 「き、キラー……!」

キラー 『ふふふ。オロロージョ、決着はもっと相応しい場所でつけようよ、以前戦ったあの場所で待っているよ』

キラーがそう言うと、突然CaptivAteは空間の裂け目に入り込むようにその場から消えた。

……気がつけば静寂。
キラーとの戦いにより双方に多大な被害を出した。
特に正規軍は悲惨だ。
この戦い……勝った負けたで言えば反乱軍の勝ちだったが、勝ちと褒められる内容ではなかった。



…To be continued




 
BackNext
Menu




inserted by FC2 system