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beatmaniaUDX The ANOTHER Story


18th STAGE 『記憶の糸』

ナイア 「各部チェック…OK。システム起動…」

カタカタカタ…とキーボードを叩く音が響く。
私は異状がないことを確かめると、コクピットハッチを開けた。

リュウ 「どうだ?」

すぐそこで待っていたリュウ君が聞いてくる。
私はコクピットから地上に降り、リュウ君にこう告げる。

ナイア 「とりあえず問題ないわ…後は実戦テストね」

リュウ 「そうか、ならすぐにでも出撃する」

リュウ君はそう言ってすぐにコクピットに乗り込む。

ナイア 「ん…じゃあ始めましょうか」

こうして、宇宙での実戦テストが始まった。


………。



リュウ 「ふむ…確かに問題ない。動きの方も随分スムーズに反応する」

重量が重くなっているので、反応が遅れるのかと思ったが、実にスムーズだ。
これもナイアの力だな。
俺は宇宙空間での、姿勢制御等を確かめるため、ブースターを存分に使い、飛び回る。


………。


急ブレーキやターンを繰り返しても、負担がかからない。
今までの物とは比べ物にならない出来だった。

ナイア 『リュウ君、それじゃあそろそろ実戦テストに移るわ』

通信モニターにナイアの姿が映り、スピーカーから通信が入る。

リュウ 「わかった、相手は?」

ナイア 『今回は武装チェックをするから、IGを使って』
ナイア 『ついでにエレキのチェックも済ませておくわ、とりあえず早めにモノになってもらわないといけないしね』
ナイア 『まぁ存分に鍛えてあげて、今回はあなたに委任するから。私は他の仕事があるから、何かあったらチェック役のトランに言って』

リュウ 「了解だ」

俺がそう言うと、ナイアは通信を切った。



エレキ 「うわっ、前よりも更に出来がいいな…全然動きが違う」

俺は暫くリュウさんのように機体を動かしていたが、反応速度もブースター出力も段違いだった。

ナイア 『エレキ、これからテストを始めるわ。内容はリュウ君に委任してあるから、彼の指示に従って』

エレキ 「は、はいっ、了解っす!」

ナイア 『あなたのその機体、B4Uは換装を施しての局地戦闘型だからあまり無茶はできないわ』
ナイア 『今は宇宙用に換装したタイプだから、あくまで宇宙空間での戦いしか出来ないから気をつけなさい』
ナイア 『武装はすでに把握してると思うから細かいことは言わないわ』
ナイア 『じゃ、せいぜい鍛えてもらいなさい』

そう言ってナイアさんは通信を切った。


リュウ 「よし、なら始めるぞ」

俺は通信を開いて、エレキにそう告げる。

エレキ 『はいっ、よろしくお願いします!』

リュウ 「まずは武装のチェックだ、今回は模擬弾じゃないから、IGを使う」

IGとはイメージ・グラフィックの略で、訓練等に使われる、仮想敵を空間に映す技術だ。
無論実体がないので、実弾を当てても爆発はしない、ただ映像が消えるだけだ。
すべてREINCARNATIONのコンピュータに記録されていくから、存分に武装を振るえる。

リュウ 「とりあえずは全て撃墜のつもりで撃て、IGでも攻撃はしてくるから回避は忘れるな」

エレキ 『了解!』

すると、すぐに数十体の人型IGがこちらに向かってくる。
これらの攻撃パターンは一般的なパイロットのデータなので、訓練にには最適な動きをしてくれる。
無論、IGの攻撃は実体がないのでダメージは負わない、ただ当たったというデータが残るだけだ。

リュウ 「………」

俺は右手のエネルギーランチャーを構える。
通常なら誘爆を狙うが、実体がないので、一体を見定めて撃つ。

ドギュウウウンッ!!

放射線状に数体のIGが消える。
反動は問題なし、ジェネレータにも異常はない、最大出力で15発といったところか。
バンカーとワイヤーはIGだとテストのしようがないので、俺は完全に射撃訓練になっていた。



エレキ 「ようし、俺も…!」

俺は実弾ライフルを構えて撃つ。

ダンッ!

エレキ 「うわっ」

俺は反動でよろけながら、バランスを戻す。

エレキ 「宇宙空間だと全く勝手が違うな…実弾だと反動に合わせてブースターも使わないといけないのか」

俺はライフルの反動を覚えると、右手のライフルを仕舞って、次はブレードを振る。
細身のエネルギーブレードだから、軽い分出力は小さい。
振りが速い分、使いやすいかもしれない。

ビュンッ、ブオォンッ!!

IGを2体切り裂く。
バランスがやはり難しい。
1回振るだけでも機体が流れてしまう、もっとコンパクトに計算して振るわないと。



………。
……。
…。



そして、大体1時間が過ぎた。



トラン 「………」

エリカ 「結構良好じゃない」

私は数値のチェックをしているトランの横に並んでそう言った。
REINCARNATIONのモニターでふたりのテストが直に見られる。
撃墜スコアは当然の如くリュウがダントツ、エレキはそこそこ頑張っている方だった。

トラン 「いいです…リュウさんは当たり前として、エレキさんも慣れない宇宙空間で頑張ってます」

トランは機体の状態を見ながら、そう言った。

エリカ 「これで後は何もなければいいんだけど、ね…」

私がそう危惧した瞬間だった。



リュウ 「!?」

ドオオオオオンッ!!

直後爆発。
エレキの機体だ。
何事かと俺は通信を開くが、エレキが応答しない。
まさか落ちたのか!?
俺はモニターで確認するが、エレキの機体は無事だった。
どうやら通信回線をやられただけのようだ。

リュウ 「!? あの方角か!」

俺は相手の殺意を感じ取り、すぐ様その方向にランチャーを撃ち込む。

ギュアアアアアァッ!!

だが、さすがに距離がありすぎたせいか、当たらなかったようだ。



? 「…リュウ、君が」

僕はリュウの攻撃をかわして、思い出す。





ホルス 「………」

? 「少佐!」

僕は無事に帰還された少佐に近づく。
どうしても聞きたいことがあった。

ホルス 「ハルザリック中尉か…何用だ?」

少佐は立ち止まってそう答える。

ハル 「少佐が不覚を取るなどと、僕には信じられません! 一体誰なんですか!?」

僕は半ば叫びながらそう尋ねた。
すると、少佐は微笑みながら…。

ホルス 「ククク…ゲームには欠かせない人物に、だ」

そう言って、少佐は去っていく。
僕にはその時わかった。
少佐を撃墜したのは、リュウ、君だって事を…。





リュウ 「…何だ? 見た事もない機体だが」

少なくとも今の情報では、どの機体にも該当しない。
見た感じ、細身の機体で、いかにも早そうだ。
全体的に尖った装甲が目立つ、接近戦の機体だろうか?
だが、逆に当たれば一撃で落ちそうな脆い感があった。

リュウ 「レーダには反応無し、単機で来たというのか!?」

俺は相手を見据えながら、暫く待つ。
少なくとも、攻撃してきた以上、問答無用な気はするのだが…。
どうしても、気になることがあった。

リュウ (こいつは…俺を知っている?)

俺の記憶にはないことだ、だが、こいつにはある。
そう、俺の直感がそう言っていた。
こいつは、俺を知っていると。

ハル 「リュウ…君が何故裏切ったのかは聞かない」

どこかで聞いたことがあるような声がスピーカに流れる。

ハル 「だが、少佐を撃墜したのが君だなんて…僕は認めない!!」

瞬間、俺は撃っていた。
確実に殺意を感じた。
やらなければやられるという感情が先に動いた。

ドギュウウンッ!!

だが、いともたやすく回避し、その機体は突っ込んでくる。

ギュンッ!

敵の機体は異常な速度で、ブレーキングとターンを繰り返してくる。
速度の桁が違う、追って追えるものではないし、逃げて逃げ切れるものではなかった。
確実に、性能の差があった。

リュウ 「ちぃっ」

俺は舌打ちしながら相手を見据えて撃つ。
いちいちロックなんてしていない。
重要なのは当てることだ。

ドギュウンッ!!

だが、やはり当たらない、敵機は高速でこちらとの間を開いたり縮めたりしている。

リュウ (攻撃をしてこない? どんな武装を持っているんだ…?)

相手の武装がわからない以上、下手に近づくのは危険だった。
接近戦が得意だとヤマを張ったが、向こうも距離を詰めないことから微妙だった。



エリカ 「ちょっと、あれは何なの!?」

トラン 「…識別コードはVの物です、敵機の攻撃でB4Uが行動不能になっています」

私はそれを聞いて、通信を開く。

エリカ 「エレキ、聞こえる!? 大丈夫なの!?」

だが、通信が帰ってこない。

トラン 「通信システムに異状です、B4Uとの通信不可能ですが、機体に損傷はほとんどありません、パイロットも無事です」

私はそれを聞いて一安心する。

エリカ 「く…トラン、数は!?」

トラン 「1機のみです、リュウさんが交戦していますが、かなりの速度です…雪月花の速度より150%は早いと思えます」

エリカ 「150%!? 段違いじゃない!!」

トラン 「今の所、武装も不明です…このままだと危ないかもしれません、雪月花はまだテスト段階でどうなるか…」

トランが冷静にそう答える。
私はすぐにその場を後にした。



………。



エリカ 「ナイア、DXYは出られる!?」

私はやぶから棒にそう言った。

ナイア 「急に何言ってるの? 無理に決まってるでしょ…ばらしてるんだから」

言葉どおり、DXYはすでに原型がない位にばらされていた。

エリカ 「嘘〜? ちょっと大変なのよ!! 正体不明の敵機が襲ってきたの!!」

ナイア 「うっそ! まずいわね…今出れるのは」

ダルマ 「あっ、茶倉さん!?」

見ると、すでに一機飛び出していた。
桜だ…現状動けるのはあの機体と。

リリス 「私も出ます…」

eraが出撃する。ただ急なので換装無しのノーマル装備で出撃している。

エリカ 「…頼むわよ」





リュウ 「く…」

どれだけ撃っても当たらない、すでにランチャーは弾切れを起こし、俺は放棄していた。
飛び道具は、予備のエネルギーライフルのみ。
俺はライフルを構えながら、相手を見据えていた。
相手は未だに攻撃してこない、何を狙っているのか…?



茶倉 『リュウ、大丈夫なの!?』

突然、茶倉が出てくる。
どうやら出撃したようだ。

リリス 『…無事ですね、よかった』

リリスも来た、どうやら今出れるのはこれだけのようだな。

リュウ 「ふたりともB4Uを先に回収してくれ、こいつは俺が仕留める」

俺はそう言って、敵機に向かう。



茶倉 「……」

リリス 「指示に従いましょう…リュウさんなら大丈夫です」

私たちは言われたようにB4Uを回収する。



リュウ 「……!!」

俺は出来るだけ間合いを詰めようとする。
だが、相手は遠ざかる、一体何が狙いなんだ?
このままだと、艦から離れすぎる、俺はいったん止まった。

ハル 『リュウ…どうして君はわからないんだ?』

ふとそんな通信が入る。
何を言っている?

ハル 『本当はわかっているんじゃないのかい? Vが…必要悪で戦争を起こしているって事を』

俺はそれを聞いて、こう反論する。

リュウ 「何が必要悪だ! 戦争を起こしている以上、誰かが苦しむ! それを必要悪というのか!?」

ハル 『そうだよ、この宇宙には戦争が必要なんだ…君はVに選ばれたのに』
ハル 『どうしてVに牙をむくんだ!? 戦ったって勝ち目はないのに!! Vの強大さはわかるだろぉ?』

敵パイロットは、何やら普通じゃない喋り方で話し掛けてくる。
まるで…狂気に魅入られているような。

ハル 『君は他の人間とは違うんだ…僕たちのように、人殺しをしなくちゃいけないんだぁ!!』

その時だった。
突然、全方位に殺気を感じた。

リュウ (!? 敵機? いや違うこれは…!!)

俺は瞬間敵機に向かって突っ込んだ。

ドドドドドドンッ!!

数十発の内、6発被弾する。
幸い、そこまでの攻撃力はなく、致命傷にはならなかった。
だが、判断を間違っていたら、即死だった。

ハル 『君が少佐を落としたなんて…だったら、僕が君を落としてやる!!』

またあの殺気が…。
俺はライフルを前方に放ち、突っ込む。
そして、次の瞬間。

ドドドドドッ!!

今度は全弾かわしてみせる。
内容はわかった、あれはビットだ!
武装を積んでいないかと思ったら、そんなものを搭載していたのか…。
だが、見たところあれは精神コントロールだ、そうそう使いつづけられる代物ではないはずだ。
パイロットに負担がかかりすぎる、普通の人間に扱わせるのは…。
俺はそこでピンと来た。
こいつの狂気に見入られた感情、精神コントロール…。

リュウ 「…強化人間か」

それで全てが納得いく、精神強化によってビットを使わせている。
確かに理に適うが…パイロットが廃人化してもおかしくない。
俺はそんなVのやりかたに、敵意を覚える。
わかってる…だから俺は戦うんだろう?
俺は戦う意味を悟って、向かう。

ハル 『リュウーーー!! 死ねよぉーーーー!!!』

敵機がビットを散らばらせる、だが。

ドオンッ!!

ハル 『うわぁああああ!!』

俺が放ったライフルが直撃する。
ビットを使いつづけたことで、精神がおかしくなっている、回避行動に頭が回っていない。

ハル 『ど、どうして…!? 僕が、僕が負けるはずないんだーーー!!!』

敵機が高速で突っ込んでくる、だがそれこそこちらの思うツボだった。

ビィンッ!!

ハル 『!?』

俺は事前にヒートワイヤーを張っておいた。
それにひっかったと同時に俺はワイヤーで敵機を巻く。

そして俺は動きを止めた上で。

リュウ 「その苦しみ…今止めてやる!」

ドガアアアアアァンッ!!!

俺は右手に装備されたパイルバンカーをコクピットに打ち込んだ。

爆発が起き、敵機は自然と流れていく。
確実に死んだはずだ…俺は確認せずに、その場を後にした。



………。
……。
…。



ナイア 「…また壊したの?」

リュウ 「…ああ」

今回はまだマシだった、装甲が多少打ち抜かれたのと、右手の破損くらいだったからだ。

ナイア 「パイルバンカーの火力に右手が着いていかなかったのね…もうちょっと右手の装甲上げないと」
ナイア 「はぁ…先が思いやられるわ」

ナイアはそう言って、すぐに作業に取り掛かった。

リュウ 「………」

俺は疲れを感じて部屋に戻る。
REINCARNATIONでの新しい部屋。
戦艦ということで、以前に比べると少々狭い。
武装や艦橋、エンジンルーム、マシンドック等が充実しているのでナイアは満足していたが…。

リュウ 「………」

俺はベッドに倒れる。
記憶に引っかかるあの声。
ハルザリック…その名前がふと浮かんだ。
だが、あいつは…弱気な人間で、争い事が出来るような人間じゃなかったはずだ。
それがあの姿なのか?
俺は記憶がまた少し戻ったようだった。
だが、おかしかった。
記憶が戻っても繋がらない事項があった。
エリカとセリカ。
このふたりとの接点が、何ひとつなかった。
もしかしたら、俺たちは本当は他人だったのでは?
そんなことを覚えてしまう。
3人の記憶は本当に作られた物なのかもしれない。

リュウ 「ハルは…知っていたのだろうか?」

ベッドに顔を埋めながら俺はそう思う。
死んだ人間のことを考えるのは滑稽かもしれない…。





研究員 「はい? 記憶ですか…?」

リュウ 「ああ」

俺は休んだ後、前の研究員に記憶のことを聞いた。

研究員 「そうですね…記憶を操作されていれば、ある程度痕跡はあります」
研究員 「でも、リュウさんにはそんな物はありませんでしたよ?」

俺はその言葉を聞いて安心する。
作られたものじゃない、エリカやセリカとの絆は、作られたものではなかった。
それがわかっただけでも、嬉しかった。

研究員 「エリカさんとセリカさんについてもですが、やはり記憶が操作された痕はありません」
研究員 「あえて言うなら、心の病気でしょうかね? 自分で閉じ込めている気がします、特にエリカさんは」

リュウ 「エリカが?」

俺は少々考える、すると納得できた。
エリカの言動、態度。
何故だか、それが不思議に思えた。
記憶をなくして…戻る傾向がない、エリカはあの性格だから気にしていないと思っていた。
俺はふとエリカの言葉を思い出す。

『…私は未だに記憶のかけらも戻らないわ』
『あなたのことすら曖昧なまま…リュウは思い出せない? 私との出会い初めとか…』

思い出そうとはしている、だが本能が拒否してる?
エリカは俺との関係をやたらと否定したがる。
俺の中では確立されかけていた…。
エリカへの想いが。
俺は間違いなく、エリカが好きなのだと想う。
だが、エリカはそれを否定する。
何故だ?
わかるはずもなかった。
ただ言えることは…この戦争が終わった時、俺たちは恐らく別の道を歩むのだろう。
それだけが、妙に頭から離れなかった。

…To be continued

ANOTHER


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