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beatmaniaUDX The ANOTHER Story


19th STAGE 『記憶の戻りし時…そして別れの時』

リュウ 「……」

俺は何かを感じていた。
記憶の糸…。
俺は何かを思い出しそうだった。



エリカ 「………」

ふとしたことだった…。
今まで何も感じなかった物が、突然…動き出した気がした。
それは…何故だか、私の涙を誘った…。

エリカ 「? どうして…私が、泣いて…るの?」



セリカ 「……?」

それは突然だった。
まるで、何か時が来たように、私の中で何かが動き出した。
それは、切ない感情。



ナイア 「……終わったわね」

ダルマ 「これで全部ですか」

ナイア 「一応ね…でもDXYはちょっとね」

ダルマ 「…完全にシステムダウンですか」

ナイア 「…元々、無理があったから。ここまで持ったことが凄かったのかもしれない」

機体をバラしてシステムを見た時だった。
DXYのシステムは元々無理やり作った物だったから、こうなったのも当然だった。
完全に動作システムが死んでいるので、DXYは動き様がなくなっていた。
バラした直後だっただけに、どうしようもなくなった。

ダルマ 「じゃあ、しばらくエリカさんは機体がないんですか?」

ナイア 「そうなるわ…」

私は機材を直しながら、ぐるっとデッキを見る。

ナイア (ABSOLUTEの改良型、Abyss)
ナイア (雪月花もこれで通常戦闘は大丈夫のはず…)
ナイア (eraと桜は特に変更なし、基本スペックの上昇と、装備の充実は完了)
ナイア (B4Uは修理が終わって特に変更は無し)

私は休むためにその場を後にした。
ダルマにも休ませるように言っておいた。

ナイア 「…気のせいかしらね、何か嫌な予感がするわ」

私にはそんな特殊な能力があるわけじゃない、でも…何となくそう思えた。





………。
……。
…。





それは唐突だった。
誰もがどうしてこの事態を想像できたであろうか?
それは、リュウたちにとって試練となる事件だった。



ドガアアアアアァンッ!!!

リュウ 「!?」

それはいきなりだった。
部屋で睡眠を取っていた最中、いきなり爆発音が響く。

リュウ 「……!!」

俺は部屋を出て、廊下を走る。
機内が赤いランプで点灯し、警報が鳴っている。

リュウ 「トラン!」

俺は廊下の先でトランを見つけ、声をかける。

トラン 「…リュウさん!」

トランは俺の姿を見かけると小走りに寄って来る。

リュウ 「何があった!?」

俺はトランを優しく抱き寄せてそう言う。

トラン 「…外部からの攻撃だとは思います。でも…何かがおかしいんです」

トランは俯いて、何か顔を蒼くしている。
こう言う時は何かが起こる前触れな気がした。
そして。

ズドオオオオオオンッ!!!

また爆発音、今度は艦が傾くほどだった。
REINCARNATIONは航行テストの途中で現在宇宙空間で待機している状態だ。
その状態で攻撃されるのはちゃんと注意していたはず、なのに何故…?

トラン 「マザーが反応しなかった…外部からのハッキング? 前と同じ…」

リュウ 「…マザーは大丈夫なのか!?」

トラン 「はい…最初に見て大丈夫でした、ただ…レーダーをやられていただけのようです」

俺はそれを聞いて少し安心する。
そして、トランを連れて俺はデッキに向かった。



………。



リュウ 「ナイア、いるか!?」

俺はデッキに着くなりそう叫ぶ、すると中央にナイアの姿があった。
ただし…倒れている状態で。

リュウ 「ナイア!?」

トラン 「ナイアさんっ!?」

俺たちはすぐにナイアの元に駆けつける。
見ると、ナイアは銃で撃たれた痕があり、腹部のようだった。

ナイア 「…くっ、はぁっ!」

リュウ 「ナイア! 動くな!! 今治療室に…!」

俺が担ぎ上げようとすると、トランが制する。
そして、トランがナイアの腹部に手を当てると、その部分が淡く光りだす。

ナイア 「…はっ!?」

ナイアの傷が少しだが塞がる。
とりあえず、出血は止まったようだ。

トラン 「私の力じゃ、ここまでですけど…」

ナイア 「じゅ、十分よ…痛みはあるけど、動けるわっ」

ナイアは俺の肩を借りて、立ち上がる。

リュウ 「一体誰に…?」

俺はナイアにそう聞く。

ナイア 「…聞いても驚かない?って無理な話よね…」

ナイアはそう言って、歩き出す。

リュウ 「どこに行く!?」

ナイア 「私が動かすわ…これでもちゃんと訓練はしてるのよ?」

リュウ 「よせ! 死ぬ気か!?」

俺はナイアの手を取って止める。

ナイア 「…ダメよ! あなたじゃ…きっと撃てない!!」

トラン 「エリカさんですね…」

トランがそう言う。
ナイアの心を読んだのか?

ナイア 「あ……」

ナイアははっとなって動きを止める。
図星のようだ、だが、俺はその程度の驚きじゃなかった。

リュウ 「どういうことだ?」

トラン 「…記憶。それが全てです」

リュウ 「記憶…? まさか……」

俺は嫌な予感がした。
直後、俺は雪月花に乗り込んで、出撃する。

ナイア 「リュウ君…出るなら、これだけは覚えておいて!」

リュウ 「…?」

ナイア 「撃たなければ…きっと後悔するわよ?」

俺は答えなかった。
もし…エリカがこの爆発を引き起こしたのなら、俺は救わなければならない。
撃つことは、出来ない…。

リュウ 「雪月花、出撃する!」

ハッチが開き、俺は出撃する。
宇宙に出ると、俺はその場で止まらざるをえなかった。

リュウ 「馬鹿なっ!」

機体数だけでも人型100はいる。
完全に艦隊がこちらを包囲していた。

リュウ 「エリカ…どこだっ!?」

俺はエリカを探す。
感覚でわかる。
エリカはこの宙域にいる。

リュウ 「あれか!?」

俺は1番後方の黒い機体を見る。
ホルスの物とは大分デザインが異なる。
軽量型とも中量型とも取れる機体だった。
見たことも無い、初めて見る機体だ。
俺は一気にブースターで近づく。

リュウ 「エリカ!!」

俺はそう叫んで、その機体に体当たりする。
すると、その機体はこちらを向き、受け止めた。
そして相手はこちらの機体を突き放す。

? 「突然だな…大人しくしていれば、今は危害を加えるつもりは無いんだがな?」

俺はその声を聞いて、ハッとなる。
聞き覚えのある声、それはまさしくあの時、俺とデュエルで救出した…。

リュウ 「士朗!? 貴様が…!?」

俺がそう言うと、士朗は微笑し。

士朗 「ふっ、悪いが貴様の相手をしている暇はない。俺は姫を連れて行かねばならんのでな」

リュウ 「貴様、エリカを!?」

俺は相手の機体に向かって突っ込む。
だが、相手はそれをかわして、一気に加速する。

リュウ 「くっ!?」

すると、あっという間に他の機体が俺を取り囲む。
攻撃する意思はないようだが、身動きが取れなかった。

士朗 「はっはっは! さらばだ…」

リュウ 「エリカーーー!!」

俺がそう叫ぶと、通信が開かれる。

エリカ 『…リュウ』

あの黒い機体から、エリカの声が聞こえる。

エリカ 『ごめんなさい…私は、あなたたちと一緒にはいられない』
エリカ 『記憶…私の記憶……あなたとの記憶…さようなら………』

それが最後の言葉のように思えて、俺は瞬間涙した。
そして、黒い機体から一筋の光が放たれた。

リュウ 「………」

セリカ 「リュウーーーー!!!」

直後、閃光と共に、俺はセリカの機体に助けられる。

ギュアアアアアアアッ!!!

リュウ 「!?」

とてつもないエネルギーだった。
それはREINCARNATIONをかすめ、AVGの点在する星にまで到達した。

リュウ 「……」

そして、その光の後、敵艦隊は撤退していった。
俺は…その場を動くことが出来ず、セリカに連れられて俺は帰還した。



………。



ナイア 「…無事で、良かったわ」

ナイアはそれだけを言って、後は何も追及しなかった。
あの後、REINCARNATIONの修理をAVGのメカニックに頼み、俺たちはミーティングルームに集合していた。
G2のメンバーもここに集まっていた。

リュウ 「………」

セリカ 「…リュウ」

俺は拳を強く握った。
血が滲み、床に滴るが、俺はそれでも納得できなかった。

彩葉 「どうして…エリカさんが、そんなことを…」

リリス 「…記憶」

それが全てだった。
エリカの記憶…それは俺たちの敵となる記憶だったということは安易に想像できた。

ユーズ 「沈んでいる所悪いが、もっと悪いニュースがある」

ユーズがそう言ってみんなの注目を集めると。

ユーズ 「AVG、V…この勢力に対して攻撃を仕掛けてくる部隊だ、今の所詳細は不明だが、強大な力を持った軍だと認識してもらいたい」
ユーズ 「さっきの攻撃で、AVGにも多大な被害が出た…残念ながら、G2もすぐには出航できないほどにな」

ナイア 「エレキ…あなた士朗の弟でしょ? 動機は見当たらないの?」

ナイアがそう言って、エレキに話を振る。
すると、エレキは考えたように。

エレキ 「…詳しくは知らない、一応AVGに所属している『はず』だった」
エレキ 「何があったのかは俺にはわからない、多分…捕まっていた時に、何かがあった」

リュウ 「…洗脳ではない、あれは明確な意思を持った敵だった」
リュウ 「士朗は、間違いなく、俺たちの敵だ…そしてエリカも」

ユーズ 「厄介なことだな…とにかく、俺たちはしばらくここに滞在してやることがある」
ユーズ 「REINCARNATIONのクルーはここを出て、自分たちの判断で動いてくれ」
ユーズ 「AVGのスタッフを何人か回す、好きに使ってくれ」

こうして会議が終わり、G2のメンバーはREINCARNATIONを降り、AVGのスタッフが何人か艦に入った。
その後、俺たちは休憩室で皆と話し合っていた。

セリカ 「…リュウ、辛い?」

リュウ 「…?」

セリカがふとそう話し掛ける。
俺は答えられなかった。
ただ、右手の痛みよりも、苦しい物が心にあった。

茶倉 「…思い出したんでしょ? 記憶…」

茶倉がふとそう言う、俺は答えない。
答えなくても、茶倉は知っている。

セリカ 「…エリカの記憶」

茶倉 「リュウの記憶もね…取り戻したんでしょ?」

セリカ 「ええっ!? リュウの記憶が…?」

ナイア 「初耳ね…もしかしてエリカと同じように?」

ツガル 「そんなっ、リュウさんまでいなくなったら…」

皆が俺を見る。
俺は強くこう言った。

リュウ 「頼む、俺に力を貸してくれ」

全員 「……」

リュウ 「…俺は、エリカを救いたい」
リュウ 「だが、俺だけじゃ救えない…」

セリカ 「リュウ…ひとつだけ聞かせて」

セリカが俺の顔を見ながら真剣な目をしてそう言う。
その目は明確な意思があった。
絶対譲れないという、意思が伝わってきた。

セリカ 「…リュウは、エリカのこと…好きなの?」

強い意志。
その言葉には、セリカの全ての意思が集約されているのがわかった。
俺は迷わず答える。

リュウ 「好きだ」
リュウ 「誰よりも…俺はあいつが好きだ」

セリカがそれを聞くと、目を閉じて考える。
そして、次に出た言葉は。

セリカ 「よしっ、頑張ろう! 私たちでエリカを助けよう!!」

セリカが皆を見てそう言う。
すると、今までの沈黙がまるで嘘のように。

ナイア 「まぁ、仕方ないわね…あの馬鹿にちょっとお灸すえなきゃね」

ナイアが笑いながらそう言う。

リリス 「お手伝いします…リュウさんとエリカさんのために」

リリスが続く。

ダルマ 「俺もやるぜ! 元々乗りかかった船だし、最後までっ」

ツガル 「私も、出来る限りのことはやりますっ」

ダルマとツガルもそう言ってくれる。

エレキ 「まぁ、兄貴が原因なら俺も黙ってられねぇし…お手伝いしますよ師匠っ」

いつのまに俺が師匠になったのか、エレキがそう言う。
そして…。

茶倉 「…ふぅ、まぁ…いいか。これも惚れた弱みだし…私も手伝ってあげるわ」

茶倉は壁に寄りかかりながら、そう言う。
素直じゃないのは相変わらずだが、今はそれで十分嬉しかった。

トラン 「…大丈夫です、きっとエリカさんは救えます」
クロロ 「にゃあ…」

トランがそう言う。
クロロも呼応したかのように鳴く。

リュウ 「皆…ありがとう、俺の個人的な感情のために」

セリカ 「いいのっ、Vのことだけでも大変だけど…結局Vを倒そうって最初に言ったのはエリカだもん」
セリカ 「そのエリカがいないんじゃ、V打倒も、何か足りないよね…」

ナイア 「そうね…記憶が戻ったからっていきなり撃たれた身としてはこのままじゃ許せないわね」

リュウ 「エリカが撃った時、士朗はいたか?」

俺が状況を聞くと、ナイアは頷く。

ナイア 「ええ、エリカがハッチを開けたところで、士朗の機体があったわ」
ナイア 「それを見た私はいきなり撃たれたの」
ナイア 「攻撃してきたのもあの機体だと思うわ」

ダルマ 「そうですね、REINCARNATIONが破損した部分はハッチ付近の装甲ですから」

ふたりがそう言って、説明する。

セリカ 「問題は…何で、エリカがよね…」

セリカが悩む。
すると、茶倉が口を開く。

茶倉 「…生命体のいない星」

ナイア 「え?」

全員が注目する。
茶倉は目を瞑りながら語りだす。

茶倉 「エリカは生命体のいない星で産まれたの…セリカもね」

セリカ 「え、ええっ!?」

突然の茶倉の言葉に全員が硬直する。

茶倉 「リュウ…私が何故あなたのことを話さなかったかはわかる?」

茶倉が目を開いて俺を見る。
俺はこう答える。

リュウ 「…エリカの記憶を戻さないため、か」

俺がそう言うと、茶倉は微笑んで。

茶倉 「記憶が戻ったんだから当然よね、その通りよ」
茶倉 「あなたの記憶には、エリカの本当の姿があったから」

リュウ 「………」

俺は答えない。
確かにエリカは…。

茶倉 「エリカはその星で産まれてしまった不運な女」
茶倉 「セリカにも言えることだけどね」

セリカ 「それってどういうことなの!? 私そんな記憶はっ」

茶倉 「当然よ、あなたの記憶になる前にあなたは別の星に飛ばされているわ」

セリカ 「………」

茶倉 「正確には、あなたたち姉妹はその星そのものから産まれたのよ、理由は知らないわ」

セリカ 「……ちょっと待って!? 姉妹!?」

セリカが声を張り上げる。
緊張感が高すぎて、忘れていた。
姉妹だと…?

茶倉 「そうよ…あなたはエリカの妹なのよ?」

リュウ 「そうだったのか…」
リュウ 「それよりも、何故茶倉がそんなことを知っているんだ?」

俺はもっともな意見を述べる。
すると、茶倉はこっちを見て。

茶倉 「…私が死んだ時、声を聞いたわ」
茶倉 「その声の主はよくわからないけど、多分エリカを創った意思の片割れのことね」

リュウ 「…? 話が見えんな」

よくわからないことが多すぎた。

リリス 「茶倉さんは憑依霊ですから、死ぬ前にそういう流れがあってもいいのかもしれません」

リリスがそう説明する。
非科学的だな…だが、今はそうも言っていられんか。

リュウ 「すまんな、続けてくれ」

俺がそう言うと茶倉は語りだす。

茶倉 「まぁ、その時に私は声を聞いたのよ…」
茶倉 「それがその星自身の声で、私は選ばれた」
茶倉 「死んだ時に私が見たものはその星だったわ」
茶倉 「短い時間だったけど、エリカとセリカのことを知ったわ」
茶倉 「見せられたって言う方が正しいかしら?」

トラン 「…それで、茶倉さんは何故彩葉さんの体に?」

茶倉 「…運命、とでも言えばいいのかしら? エリカ、セリカと接触するために、私は彩葉に憑依した、またはさせられたのかもしれない」
茶倉 「そもそも、自分の意志で憑依したわけじゃないわ」
茶倉 「ただ単に、特異な能力を持って、リュウと関係があった…だから選ばれたのかもしれない」

知らなかった。
そんなことが茶倉の中であったとは。
むしろ、茶倉がそんなことまで考えて動いていたとは思えなかった。
パートナーをしていた頃は、人を殺すことさえ平気でやっていた女が。

茶倉 「まぁ、私が人を殺していたことは半分気性なわけで」

セリカ 「…気性だからって人殺さないでよね」

茶倉 「うっさい小娘っ、黙って聞いてろ!」

セリカの突っ込みに茶倉が答える。
このパターンも慣れてきた。
茶倉がぶつぶつ言いながら先を続ける。

茶倉 「えっと…どこまで言ったっけ?」

トラン 「人を殺した所です」

茶倉 「そうそう、まぁそれは置いといて」

茶倉はジェスチャーで示す。

セリカ (置いとくなよ…)

セリカが明らかに不信な目を抱いている。

茶倉 「要するに、私はエリカやセリカと出逢う運命だったって言いたいの、過程は置いておいてね?」

セリカ (だから置いとくなよ…人殺し)

茶倉 「ま、まぁ…そういうわけよ、Do you understand?」

リュウ 「大体わかった」

トラン 「…はい」

俺とトランはそう頷く。

茶倉 「それで…後は何かあったっけ?」

セリカ 「だから、結局エリカと私は何なの!?」

すっかり肝心なことを言い忘れている茶倉にセリカが突っ込む。
エリカがいないと実にスムーズだ…。
このコンビは結構いいのかもしれない…。

茶倉 「ああ、そうだったわね…要するに、星の落とし子とでも言うのかしら?」
茶倉 「生命体の一切ない星で産まれた生命体。それがあなたたちなの」
茶倉 「理由は知るわけがないけど、少なくとも士朗はその星の意思に引き込まれたのか…それとも自分の意志か」

セリカ 「エリカ…じゃなかった、姉さん…うう何か引っかかるなぁ、とにかくそれが何で攫われたのかは?」

茶倉 「…星の意思でしょう? 記憶が戻ったということはそう言うことよ」
茶倉 「今までエリカの記憶が戻らなかった理由は、よくわからないけど、何かの意思で封じ込めていたのね」
茶倉 「リュウの記憶がなくなったのもその星の意思のせいでしょうね…知ってしまったんだから」
茶倉 「戻ってしまったから、エリカは星に帰ったのよ」

リュウ 「何故エリカの記憶が急に戻ったんだ?」

俺は次の疑問を投げかける。

茶倉 「…星の意思だとは思うわね。時間が来た…と言うことかもしれない。それとも士朗が何かやったのかもね」

リュウ 「………」

俺はそれ以上は何も聞かなかった。

セリカ 「…どうして私は大丈夫なの?」

今度はセリカが疑問を投げかける。

茶倉 「…細かくはわからないけど、あなたの存在自体がおかしいのよ」

茶倉が頭を掻きながらセリカを見てそう言う。

茶倉 「…ひょっとしたら、セリカはアンチかもね」

セリカ 「アンチ?」

茶倉 「…エリカを駆除するために星のもうひとつの意思が産み出したのかもしれない」

その言葉を聞いて、全員が凍りついたように止まる。

セリカ 「…私が、姉さんを…殺すために?」

セリカは全身を震わせながら、体を抱える。
セリカ自身も、実感があるのかもしれない…セリカのその状態が、真実を語っている気がした。
俺は最悪な結末を考えてしまった。

茶倉 「…あるのね、そういう感覚が」
茶倉 「あなたがエリカの妹なら、姉の目覚めで何かしら反応してもおかしくないのよ」
茶倉 「あなたの曖昧な記憶は、その意思が不明確だったからよ」
茶倉 「エリカが目覚めていないのなら、あなたが目覚める必要もないもの…だから」

茶倉がそう仮定する。
あくまで仮定でしかないが、当たらずとも遠からずという所だろう。
セリカの顔が蒼くなる。
やはり…。

セリカ 「…嫌っ! 私は信じない!!」

茶倉 「現実を受け入れなさい…もしあなたが本当にそういう運命で産まれたのなら、なおさらよ!」

茶倉はセリカを掴みあげてそう言う。
茶倉は悪い意味で言っているんじゃない、セリカのためを思って言っている事がわかった。
普段、あれだけ仲が悪いのに、相手を思いやっている。
特にあの茶倉がそうする光景は、思わず涙が出そうだった。

茶倉 「…もしそうなら、あなた自身が自分の意志で抗いなさい」
茶倉 「本当に、エリカやリュウを想うなら、ね…」

セリカ 「………」

セリカは答えなかった。
ただ涙ぐんで震えていた。
自分の運命、セリカも記憶が明確になったのだろう。
本来あるべき記憶が。

ナイア 「結局…あなたたちの出会いは何だったの? 私とエリカもだけど…星が意思を持ってふたりを創ったのなら、何故すぐに行動を起こさなかったの?」

ナイアがそう言う疑問をぶつける。

リュウ 「恐らく、星の意思だろう…ひとつの意思が、エリカを創り、もうひとつの意思がセリカを創ったのなら」
リュウ 「セリカを創った意思が、エリカと一緒に別の星に送ったのかもしれん」
リュウ 「少なくとも、奴らは文明を持っている」

艦隊すら、動かせるほどの文明。
恐らくはほぼ全て無人か、創られし者か…。

ナイア 「…エリカが成長する前に、『人』と接触させた」
ナイア 「そして、エリカは本来の任務を思い出すことなく、命を終えても良かった」

リュウ 「もし戻っても、セリカをぶつければすむ…とでも思ったのかもしれん。どっちにしてもロクでもない計画だ」

エレキ 「でも、それじゃあ奴らって、何が目的で?」

茶倉 「…不必要な生命体の排除、らしいわ」

茶倉がぼそりと言う。

茶倉 「この宇宙にはいくつもの生命体がいる。動物や植物…人間もね」
茶倉 「生命体のいない星にとっては、本来関係がないはずなの」
茶倉 「でも、その星が意思を持った。それは宇宙のために…」
茶倉 「私たちのような人間ばかりじゃないということよ宇宙に住んでいるのは」

セリカ (茶倉も十分不必要に分類できるんじゃ?)

茶倉 「私は生き抜くために殺してたけど、そうじゃないのもいる…Vの連中とかね」

全員が納得する、セリカは一部引っかかるようだが。

ダルマ 「星の意思ね…宇宙に不必要な人間。特にVのようなってことは…俺たちは戦わなくてもいいんじゃ?」

ダルマがそう言うと、ナイアが答える。

ナイア 「…戦争をしている人間は少なくとも全員対象でしょうね、ユーズも言ってたでしょ? もちろん私たちも対象」

ツガル 「でも、だったら何故さっきの戦いでは艦を落とさなかったんですか? 出来たはずなのに…」

リュウ 「…セリカの存在だろう」

茶倉 「そうね、セリカがエリカ打倒の存在なら、危険を感じて退いたとも取れるわ」

エレキ 「兄貴がいて手を出さないって言うのは?」

ナイア 「士朗は星の意思に呼応したんでしょう? だったら、星の意思は絶対って事かもね」
ナイア 「それとも、エリカに気があるだけかも…」

全員が注目する。

エレキ 「…そうか、兄貴はエリカさんを」

リリス 「ふたつの星の意思…でも、それは私たちにとってはどちらも危険でしかありません」

今までほとんど喋らなかったリリスが急に口を開く。
全員が嫌でも注目してしまう。

リリス 「エリカさんとセリカさんは、リュウさんに惹かれて出逢ったんです」
リリス 「…それは運命という枠では図りきれないもののはずです」
リリス 「特に、リュウさんはエリカさんのことを知ってしまった…これは偶然ではなくて必然だと思います」

リュウ 「そうだな…俺がエリカを好きになったのも、運命だとは思いたくない」

むしろ、必然だった。

セリカ 「うんっ、私だってリュウを好きになったのはきっと運命じゃない!」

茶倉 「まっ、私が1番リュウを愛しているけどね〜」

そう言って茶倉が俺に擦り寄る。

セリカ 「このぉ…またぁ!」

セリカが怒って茶倉に掴み寄る。

茶倉 「やる気!?」

セリカ 「離れなさい!!」

結局いつものパターンだった。
この光景も今では笑っていられる。

ナイア 「はいはいはい! いい加減にしなさい!! とにかくこれからどうするか決めるわよ!?」
ナイア 「Vを放っておくわけにもいかないわ、向こうは攻撃して来るんだから」
ナイア 「でも、新勢力も頭に入れておかないといけない」

セリカ 「星の場所は、外宇宙で、ここから直進で7時の方向…ちなみに星の名前は『Pandora』」

セリカがそう言う。

トラン 「わかりました…すぐに向かいます」

ナイア 「って、行く気!? 勝てる見込みはあるの!?」

リュウ 「…そんな物はない。だが俺は行く…それだけだ」

俺は無鉄砲にそう言う。
トランはそのまま部屋を走り去った。

茶倉 「切り札はこっちにあるわ…セリカという切り札がね」

茶倉がそう言って部屋を出る。

セリカ 「……姉さん」

セリカは何かを祈るように部屋を出る。

ナイア 「…仕方ないわね。地獄まで一緒に逝ってあげるわ」

ダルマ 「…ツガルは本当にいいのか? もしかしたら…二度と帰れないかも」

ツガル 「言わないで! 私…一緒にいたいから」

ツガルはそう言って、ダルマに抱きつく。

ナイア 「いいところ悪いけど、そろそろ休みなさい…皆疲れてるし」

ナイアがそう諭すと、ふたりは紅くなって部屋を出る。ナイアも後を追った。

リリス 「…大丈夫です。きっと上手くいきます」

リリスはそう言って部屋を出る。

エレキ 「…はぁ、何か俺ってとんでもない艦に乗ったのかなぁ?」

リュウ 「嫌なら降りてもいいぞ」

エレキ 「冗談…師匠に着いていきますよっ」

エレキは笑ってそう言った。
こいつはこれで案外、将来有望かもな。
俺たちは揃って部屋出て自室に戻った。



………。
……。
…。



俺はその時悲しい夢を見た。
泣いて叫ぶ俺の腕の中で、息絶えるエリカを抱きしめていた夢…。

…To be continued

ANOTHER


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