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beatmaniaUDX The ANOTHER Story


20th STAGE 『絶望と希望の子』

リュウ 「…エリカ」

俺はただひとつの心を持って、その時が来るのを待っていた。
死の惑星『Pandora』
エリカという、不必要な生命を絶つ『絶望』の子を産み出し。
そしてセリカという、エリカを駆除するための『希望』をも産みだした忌むべき惑星。
だが、俺にとってはふたりはかけがえのない仲間なのだ。
どちらが欠けることも、俺は受け入れるつもりはない。
エリカは、俺が連れ戻す。



………。



REINCARNATIONは全速力で『Pandora』を目指している。
後100時間程で着くそうだ…気の長い距離だ。
今回は食料も十分に余裕がある、中継地点がないのは気になるが、このままなら往復できるはずだ。
俺は休憩室で、ひとり椅子に座って休んでいた。

リュウ 「………」

あれから考えることはいつもエリカのことだった。
記憶が戻ったことで、エリカの過去も俺は思い出した。
エリカは、産まれたその時から記憶がなかった。
本来、あるはずの記憶を封じられ、俺たちと出逢いを果たした。
エリカの記憶が戻ったことは実は前にも一度あった。
俺はそれを知ったがために、記憶を消されたのだ。
正確に何者かはわからないが、恐らくはそれも『Pandora』の仕業だろう。
もし…エリカが敵に回ったら、俺は撃てるのだろうか?
…無理だろう、そう思った。
本来なら撃たなければならないのだろうが、俺にはそれは出来ない。
結局…どう考えてもエリカを救う以外に俺には道はなかった。

ウィィン…

突然ドアが開き、中からセリカが現れる。
俺を確認すると、歩み寄ってくる。
俺を探していたんだろう、心なしか嬉しそうに見えた。
セリカは丸テーブルを挟んで俺と向かい側の椅子に座る。

リュウ 「………」

俺は左横にある、窓ガラス越しから宇宙を見る。
何もなく、ただ星が散りばめられている空間。
俺はそのまま、宇宙を見つづけた。

セリカ 「…思いつめてるんだ、やっぱり」

リュウ 「………」

セリカが口を開く。
俺はあえて何も言わなかった。

セリカ 「私の記憶…曖昧だったのは、Pandoraのせいだったんだね」

セリカは誰に向かってでなく、そう喋りだした。

セリカ 「ずっと曖昧で、リュウと一緒にいた記憶ですら、本当は妄想だと思ったこともあった」
セリカ 「結局…リュウと一緒にいた時の記憶は本当の記憶じゃなかったけど」
セリカ 「私の本当の記憶は…姉さんを殺すことだから」
セリカ 「だから…姉さんよりも私の方が、きっと残酷だと思う」
セリカ 「姉さんは生命体を駆除するため…私はその姉さんを駆除するため…」

顔を見てないのでわからないが、セリカは俯いているようだった。
俺は視線を変えずにこう呟く。

リュウ 「気にするな」

セリカ 「…え?」

俺は視線をセリカに向けてこう言い放つ。

リュウ 「お前たちの本当の記憶など何でもいい」
リュウ 「今セリカがここにいる、そしてエリカも俺が連れ戻す」
リュウ 「その真実さえあれば、それでいい…」

俺はそう言って、立ち上がる。
部屋に帰って睡眠をとる。

セリカ 「…リュウ、ありがとう」





………。
……。
…。





そして、REINCARNATIONが航行する地点からそう遠くない場所で、動いている艦があった。



男 「ホルス少佐!」

ひとりの男が俺の前に立って敬礼する。
部下のひとり、ガルマン少尉だ。

ホルス 「少尉か…準備は出来たのか?」

俺がそう言うと、少尉は。

ガルマン 「はっ、すでに準備できております! すぐにでも出撃可能です」

俺はそう聞くと、歩き出し。

ホルス 「…すぐに出撃する」

ガルマン 「少佐、一体少佐は何をお考えで…?」

突然、少尉がそんなことを聞く。
俺は足を止めずに聞き返す。

ホルス 「…どういう意味だ?」

ガルマンも歩きながら話す。

ガルマン 「自分には、少佐の意思が理解できないことがあります」
ガルマン 「無論、少佐には絶対の忠誠を誓っておりますし、間違っているとは思いません!」

ホルス 「では、どういう意味だ?」

俺は格納庫のドアを開け、そう答える。

ガルマン 「リュウという男ですか? その男には一体何があるというのですか? 少佐がここまでこだわる男とは…」

ホルス 「ならば、共に来てみるがいい…その理由がわかるかもしれんな」

ガルマン 「はっ! では自分も新型のテストを兼ねて出撃します!」

ガルマンはそう言って、機体に向かう。
俺は自分の機体を見て、近くのメカニックに話し掛ける。

整備兵 「これは少佐…すでにメンテナンスは終えてあります、すぐにでも出撃可能です」

ホルス 「…例のシステムはどうだ? ハルが使っていたそうだが…」

整備兵 「あれは精神に対してかなりの負担をかけます。強化兵のハルザリック中尉ですら、異状のすえ撃墜されています」

整備兵はハルの死を悲しむようにそう言う。
ハルはVの高官たちの独断で強化手術を強行された。
その結果があれだ…精神は不安定なまま改善されず、出撃して落とされた。
結局は、ゲームだが…気に入らんな。
俺のゲームシナリオにあれは必要なかった。
そろそろ…時が来るかもしれんな。

整備兵 「一応、AIビットは搭載してありますので、使用は大丈夫です」
整備兵 「識別コードも入力してありますし、少佐の意思で自由に変更は可能です」
整備兵 「少佐の希望通り、軽量化していますので隠し腕や、内臓装備は多少排除してあります」
整備兵 「装甲は多少削っていますが、その分機動力は向上していますので、少佐の腕があればまず大丈夫でしょう」

ホルス 「そうか…後は使って試すとするか」

俺はそう言って、自機『quasar』に乗り込む。
俺はシステムを起動し、ハッチを開けさせる。

ホルス 「quasar、出るぞ!」

カタパルトに乗って一気に加速する。
後ろからガルマンの乗る新型、『sunctus』が着いてくる。
俺は加速に乗って、一気に目的地を目指す。
だが、その途中に突然レーダー反応がある。

ガルマン 『少佐、この反応は!?』

ホルス 「…どうやら先客がいたようだな」





同刻『REINCARNATION艦内』



ツガル 「レーダー反応ありです、旗艦1! 人型約50! こちらに高速で近づいてきます!!」

トラン 「…距離は?」

私は艦の速度を落として、ツガルさんにそう聞く。

ツガル 「えっと、前方1000にです! あっ…とその先200にも機数2が反応! そちらも近づいてきます!」

トラン 「…ツガルさん、私にだけじゃなくて、皆さんにも教えてあげてください」

私がそう言うと、ツガルさんは顔を真っ赤にして。

ツガル 「ご、ごめんなさいっ、忘れてました!」



ツガル 『各乗組員に伝えます、近くに敵艦隊反応! パイロットは直ちに出撃してください!!』

ツガルの艦内放送が流れる。

リュウ 「行くぞ…っ!」

セリカ 「うんっ、こんな所で負けられないもの…っ」

突然セリカがその場でうずくまる。

リュウ 「どうした、セリカ!?」

俺が駆け寄ると。

セリカ 「…来る、姉さんがっ」

リュウ 「! 俺はセリカを連れて格納庫に走る」



ツガル 「リュウさんが先頭、セリカさん出撃…彩葉さん、リリスさんも出撃しました!」

トラン 「…エレキさんは?」

ツガル 「えっと…まだですね、エレキさん!? どうしたんですか!? 出撃してください!!」



エレキ 「だぁ〜っ、えっと…これでいいのか?」

俺は換装に手間取り、出撃を遅らせてしまう。

ナイア 「こらっ、早く出なさい! 何やってるのよ!?」

エレキ 「す、すぐに出ます!!」

俺はろくに確認もしないまま、カタパルトに乗る。


ナイア 「もう…こんな時に」

私は腕を組んでため息をつく。

ダルマ 「…ライフル一本で出て行きましたけど、大丈夫ですかね?」

ナイア 「……」



………。



リュウ 「……」

俺は敵艦隊に向かって突っ込む。
今回は前回ほど数も多くない、囲まれてもいないので戦いやすいといえばそうだが…。

リリス 『数が数です…あまり無理はしないで下さいね?』

リリスが皆を気遣う。
確かにこの数が相手では、嫌でも消耗戦になる。

リュウ 「…雪月花から各機へ、固まらずに各個撃破で、敵艦を狙え! リーダー機は俺が正面から相手をする」

セリカ 「大丈夫なの!? いくらリュウでも正面からなんて…」

彩葉 「リュウさんを信じましょう! 私たちは自分たちで出来ることを!」

リリス 「…了解です」

俺が正面、セリカが右翼、彩葉が左翼。
リリスが後方支援、その後ろからエレキが追ってくる。



リュウ 「…!」

俺は黒い機体を確認する。
前に見たものと同系機。

リュウ 「士朗か…エリカはどこだ?」

俺は通信を開いて、そう聞く。

士朗 「知りたければ、自分で知るがいい…ただし、命を賭けてな」

俺の正面から、別の機体が突っ込んでくる。
かなりのスピードで、見た目は士朗の物とさほど変わらなかった。
色が白で、装備も恐らく同じ…。
俺はエネルギーライフルを構えて、相手を捕らえる。

セリカ 『ダメよリュウ!!』

突然、セリカの声が聞こえる。
俺は撃ち損ねて、その場を離れる。

リュウ 「…まさか」

俺はそこで気づく。
この機体、動き、セリカの言葉。
この白い機体のパイロットは…。

リュウ 「エリカかっ!」

士朗 「ふ…どこまで持つかな?」


リュウ 「!」

俺は危険を察知し、その場から横に急速で方向転換する。

ギュアアアアアアアッ!!

黒い機体から、前に見たとてつもないエネルギーキャノンが放出される。
まともに貰えば戦艦とて一撃で沈む…要注意だが、前に一度見せたのが悪かったな。

リュウ 「エリカ…聞こえているなら返事をしろ!!」

俺は回りに群がる人型を撃ちながら、エリカに語りかける。

相手の数は段々と減ってきているが、それでもこちらの数の十倍だ。
ひとり頭十体と言っても、実戦経験の少ないこの部隊ではきつい。


セリカ 「このぉ!」

私はAbyssの両腕に内蔵されているエネルギーブレードで相手を切りまくる。
囲まれると辛いから、動き回っているけど…相手も馬鹿じゃない。
このままじゃいずれ捕まる。


彩葉 「ダメだわ…このままじゃ持たない、いずれ…っ!」
茶倉 「寝言言ってるんじゃないわよ!!」

機体モードが切り替わり、一気に動く。
とりあえず、囲んでいる人型4機の内、正面の一体にブレードで切りつけ、その機体をすぐ右の機体に蹴り飛ばす。
私はその反動で、距離を取り、エネルギーライフルで残りの機体を打ち抜く。


リリス 「…狙うは敵艦。エネルギー充填…OK。皆さん、巻き添えを食わないようにお願いします」



リュウ 「了解だ」

俺たちは通信を聞くと、放射線状から散らばる。
その際にライフルで相手を誘導し、固まらせる。


ギュアアアアアアアッ!!!

eraから放たれたエネルギーキャノンが敵部隊を消滅させながら艦に向かう。
だが、その先には。

リュウ 「エリカ!?」

セリカ 「まさか…よけてエリカ!!」



エリカ 「………」

ギャアアアアアアンッ!!!

俺は目を疑った。
eraのエネルギーキャノンを正面から受け流す機体。
エリカの機体は間違いなくエネルギーを遮断していた。
それも、あれ程の威力を遮断できるとは…!

セリカ 「ど、どうなってるの!?」

茶倉 「とんでもない物を積んでるわね…!」

リリス 「敵艦無傷…エリカさんの機体にも損傷なし。強力なエネルギーバリアです…遠距離攻撃は通用しないと思われます」

エレキ 「ど、どうすりゃいいんだ!? 俺はライフルしか持ってないぞ!?」

茶倉 「何で、それしかないのよ!? ブレード位装備しろ、馬鹿!!」

エレキの泣き言に茶倉が怒る。

リュウ 「茶倉、リリス、エレキは残りの部隊が艦に近づかないように止めろ!」
リュウ 「俺とセリカはエリカの相手をする」

リリス 「了解です…」

茶倉 「セリカが一緒ってのは気に食わないけど…仕方ないわね!」

エレキ 「りょ、了解ですっ」

3機がそれぞれ艦を守るように動く。
俺はそれを確認すると、エリカ機に向かって動く。



………。



リュウ 「エリカ…もしかして操られているのか?」

セリカ 「姉さん、聞こえてるなら返事をして!!」

エリカ 「……!」

エリカ機に反応が見られた。
明らかに一瞬鈍った。
セリカの声に反応した…?
いや、恐らくはセリカの存在自体を拒否している。
エリカはセリカに恐怖している…? だとしたら。

リュウ 「セリカ、離れろ!!」

セリカ 「ええっ!?」

セリカはエリカの正面にいた。
エリカはセリカの存在を本能的に恐れている、ならば取る行動はひとつ!
俺はセリカの機体に抱きついて無理やり押す。

ギュアアアアアアアッ!!!

瞬間、エリカ機の腹部から巨大なエネルギーキャノンが放たれる。
幸い後ろに艦はいなかったので被害はないようだ。

リュウ 「…? しまった、バランサーが!」

さっきのエネルギーの余波で機体の様子がおかしい。
バランサーがいかれたようだな…機体制御ができん。

士朗 「ここまでのようだな…せめて、エリカの手で殺されるがいい」

士朗がそう言うと、エリカはこちらを向く。

セリカ 「リュウ!! どうしたの? 逃げて!!」

セリカがそう叫ぶが俺の機体は思うように動かない。

リュウ 「…エリカ。俺は」

俺は諦めるつもりはない。
機体の自由が効かないなら、こうするまでだ!
俺は自機の足にパイルバンカーを浅く打ち込む。

ドガァッ!!

瞬間自機の足が爆発してその反動で機体を動かす。

ギュアアアアアアアアッ!!

俺は間一髪よけるが、次はない。
同じ手は相手も通用しないだろう、だが、ひとつの弱点を見つけた。
あのキャノンは溜めが短い分、溜めの間はほとんど動きが取れん。
つまり溜めの瞬間を見切れば、かわせる。

エリカ 「……」

だが、エリカは今度は位置を変えて俺を狙う。
俺は後ろを確認する。
そこには…。

リュウ 「REINCARNATION!? 一緒に打ち抜く気かっ」

今度は俺がかわしてもREINCARNATIONがかわせない。
このままでは…!

リュウ 「方法はまだある!」

俺はワイヤーをエリカの機体に向けて射出する。
ワイヤーの先にはマグネットが着いており、金属に当たれば当然くっつく。

エリカ 「……?」

当然ワイヤーは俺と繋がっている、つまりここでワイヤーを引けば!

エリカ 「……!」

エリカ機がワイヤーにつられて、傾く。
これでキャノンを撃つタイミングがずれる。
俺はワイヤーを引き戻す。
すると、自機がエリカ機に向かって直進する。

リュウ 「エリカー!!」

俺はエリカの機体に体当たりをして、無理やり後ろに回って羽交い絞めにする。

エリカ 「!!」

士郎 「しぶとい奴だ…!」

俺はブースターだけでエリカの動きを止めている間、士郎が後ろから俺を狙う。

セリカ 「させないわ!!」

セリカが士郎に向かってブレードを振り、動きを止める。
士郎はセリカのブレードをシールドで受ける。

士郎 「ちぃ!」

セリカ 「姉さんは返してもらうわ!!」

士郎 「馬鹿が…エリカはもうすでにお前たちの仲間じゃない」

セリカ 「そんなことはないわ! 姉さんは皆の仲間よ!!」

ギギギ…バキャアッ!!

金属が鳴り響くと、セリカのブレードが士郎のシールドを切り裂いて、腕を切り落とす。

士郎 「ぐっ!」

セリカ 「これでっ!!」

セリカはもう片方のブレードで、士郎の機体を狙う。

ズドンッ!!

セリカ 「きゃあっ!」

ドンッ、ドンッ!!

リュウ 「!?」

突然、雪月花とAbyssが攻撃される。
この攻撃はまさか…!

ヒュヒュヒュ!

リュウ 「ビットだと…!? まさか…」

エリカの機体背中から、小型の丸いビットが射出されていた。

リュウ 「ぐ…っ」

衝撃で雪月花がエリカ機から引き離される。

セリカ 「リュウ!?」

士郎 「人の心配をしている場合か?」

セリカ 「士郎…!」

完全に追い詰められたようだ…まさかここまでの装備を持っているとは。

リュウ 「どうする…!? もうこれしかないのか…!!」

俺はどうにかエリカ機の腕を左手で掴むことに成功する。

そして、俺は右手を構え。

セリカ 「リュウ、まさか…!?」

士郎 「!?」

リュウ 「…せめて、俺が撃ち貫く!!」

俺はエリカ機の胴体を狙って、右腕を振るう。

エリカ 「………」

士郎 「ちぃっ!!」

ドガアアアンッ!!!

爆発音、だが爆発したのは士郎の機体だった。

リュウ 「何!?」

エリカ機の右腕がなくなっている、士郎が切り落としたのか。
士郎がエリカ機の腕を切り落とし、体ごと割って入ったのだ。どうにか直撃は避けたようで、コクピットは無事だった。
士郎機はそのままエリカ機を庇うように漂っている。

リュウ 「貴様…!」

士郎 「まさか…本当に撃つとは思わなかった、今回はここまでだ…」

エリカ 「………」

エリカ機は士郎機を連れて、艦に戻る。
残った人型はどうやら一機もいない。
茶倉、リリス、エレキが頑張ってくれたようだ。

リュウ 「……!」

俺は自分の力の無さを悔やんだ。
エリカを救うどころか…落とすことも出来ない。
俺は中途半端状態だった。
今回は敗北を痛感させられる戦いとなった。





ガルマン 「あれが、リュウですか…」

ホルス 「そうだ…どうやら記憶が戻ったようだな」

俺はREINCARNATIONを眺めながら、そう呟く。

ガルマン 「どうします? このまま攻めるのですか?」

ホルス 「まだ今のリュウではゲームは終わらん…帰還するぞ」

ガルマン 「はっ!」

俺たちは、REINCARNATIONを見送って艦に戻ることにした。





リュウ 「………」

セリカ 「リュウ…どうして?」

俺たちは休憩室で集まっていた。
REINCARNATIONは進路は変えずに、低速航行で進んでいた。

リュウ 「…俺はエリカを救えないのかもしれん」

自分を今まで過信していたわけじゃない。
だが、エリカを救うことができると、疑ったことはなかった。
今回の戦いで、それが痛感できた。
やるかやられるかの世界で、相手を気遣いながら動くのには限界がある。

セリカ 「でも、救えるのはリュウだけなのよ!? そのリュウがそんなじゃ…」

ナイア 「セリカの言う通りよ…リュウ君がそんな泣き言言うのは我慢できないわね」

リュウ 「…そうだな」

俺は自分に渇を入れながらも、改めてエリカのことを考えた。

リュウ 「だが、今のままではどうにもならん…」
リュウ 「結局はこのまま進んでも玉砕するだけかもしれん」

ダルマ 「相手の戦力が大きすぎですからねぇ…せめてG2がいたら」

ナイア 「無い物を期待しても仕方がないわ…G2はVとの戦いで手一杯だから」

現状のこの戦力でできることは限られていた。
全員が重い空気をかみ締めていた。

クロロ 「にゃあ…」

トラン 「…大丈夫ですよ、リュウさんがPandoraまで届けば、きっと解決します」

トランがクロロを撫でながらそう言う。
根拠があるとは思いがたかった。
だが説得力がある。
トランの言葉だけに意味がある気がした。

彩葉 「リリスそう思う?」

リリス 「……」こくり

リュウ 「Pandora…そこに鍵があると言うことか」

セリカ 「行くしかないよ…それしか選ぶ道はないもの」

ツガル 「………」

ツガルは祈るように俯いていた。
隣でダルマが心配そうに見ている。

リュウ 「…今度はエリカを救う、それでいいな?」

セリカ 「うんっ、きっと大丈夫!」

前向きだが、無謀とも言えるこの作戦、だが俺たちはそれ以外の道を知らなかった…。

…To be continued

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