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beatmaniaUDX The ANOTHER Story


23th STAGE 『休養』

トラン 「第7銀河太陽系…地球」
ツガル 「第7銀河太陽系…地球」

それが、今後の対策を練るに至っての方向だった。



………。
……。
…。



私たちは進路を地球に設定し、REINCARNATIONを進めると医務室に戻る。
まだ全員がそこにいた。

ナイア 「あら、おかえりなさい…で、どうだった?」

ナイアさんがベッドの上で首だけを向けてそう聞いてくる。
体を動かすのもきついみたい…。

ツガル 「あの…その、ちょっと言いにくいかもしれませんけど……」

ツガルさんはさすがに言いにくそうだ…。
信じろと言う方が無茶だもんね…。
仕方ないので私が率直に言う。

トラン 「地球に進路を執りました」

ナイア 「…ふぅん」

あれ…? 驚かないんだ…。

全員 「………」

沈黙していた。
あまりのリアクションの無さにだろうか? ナイアさん以外が止まっていた。

エリカ 「………」

リュウ 「………」

リリス 「………」

…訂正、『一部が』止まっていた。
エリカさんは聞いてないのか、リュウさんの側を離れていない。
リリスさんは、動じなさ過ぎるのか、いつも通りだった。

ナイア 「……?」
ナイア 「………」
ナイア 「……」
ナイア 「…」
ナイア 「何ですってぇ!?」

あ、やっと気づいた。
思考が大分おかしくなっていたのか、気づくのが遅すぎですね。

ナイア 「あたた…ちょっと! それどういうこと!?」

セリカ 「地球って…ここから近いの?」

セリカさんがナイアさんの側の椅子に座ったまま、そう聞く。

トラン 「…間違いないです」
トラン 「ついでに言うのなら、Pandoraは第7銀河太陽系の太陽の裏側に存在することがわかりました」
トラン 「ですから、地球が近いと言うのも、必然です」

私は簡単にそう説明する。
ナイアさんは首だけで項垂れて。

ナイア 「あらら〜…何かいい休養になるかしら? もしかして…」

一応プラス思考だった。

彩葉 「楽しみですねぇ…行ったことないですから」

エレキ 「俺も無いな…聞いてはいたけど」

トラン 「…では、私はブリッジに戻ります」

ツガル 「あ、私もっ」

私たちはブリッジに戻った。
中ではAVGから来た通信士さんが代役を務めてくれている。

通信士 「あ、トランちゃん、ツガルちゃん! たった今、G2から通信が来たよ!」

通信士さんは私たちを見てそう言う。
私は、回線を繋げて、通信を開く。

トラン 「こちらREINCARNATION…G2、どうぞ」

ユーズ 『こちらG2だ…SOSをキャッチしたんだが、何だ無事なのか?』

ユーズさんが安心したように、そう語りかけてくる。

トラン 「…艦は無事ですけど、クルーが」

ユーズ 『何だ…誰か死んだなんていう縁起でもない事が起こったんじゃないだろう?』

ユーズさんは冗談交じりにそう言う。
今は冗談でもそんなこと言って欲しくない…。

トラン 「とにかく、いまからこちらは地球に向かって補給等を考えています」

ユーズ 『…地球? ああ…未踏査地区の』
ユーズ 『そういえば、お前らは行った事あるんだったな…よし、俺たちも行こう』

トラン 「…え?」

ユーズ 『まぁ、折角近くまで来たんだ、旅は道連れというしな』

世は情け…ですか。

トラン 「わかりました…では諸注意を」

私は地球に向かうに当たって、注意を述べておいた。
それから、大体20時間。
かつてみた青い星が姿を現した。



………。
……。
…。



セリカ 「…また、美夏たちの世話になるの?」

ブリッジで私たち(一部怪我人等を除いた)は集合していた。
とりあえずこれから着陸に入ろうというところである。

トラン 「…一応その方がいいと思います、まだ私たちは、地球のことをほとんど知らないんで」

私はEARTH LIGHTの時にも使った、湾曲ステルスで、空間をゆがめて姿を完全に消す。
G2も同様の方法で姿を消すことになった。

トラン 「…これから大気圏に突入します」

私がそう言うと、ツガルさんが通信を開く。

ツガル 「全乗組員に通達、これより大気圏に突入。各員衝撃に備えてください!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!



摩擦で多少揺れる。
だが、さすがに軍艦ともなるとさほどではなかった。





大気圏を抜けると、私たちは前のあの場所を目指す。
G2も後ろから着いて来ていた。

セリカ 「トラン、G2も来るんだったら、どこに着陸するの?」

トラン 「…今検索してます。前もEARTH LIGHTで止まっていた所なら十分この艦は入ります」

セリカ 「G2はどうするの?」

私は少し考えて。

トラン 「…先にG2を降ろして、REINCARNATIONを上に載せましょう」

セリカ 「そ、それは無茶じゃない…?」

セリカさんが冷や汗混じりにそう言う。
本気だったんだけど…やっぱり重力があるから、確かに無理かも…。
考えていると、G2が通信を開く。

ユーズ 『…おおっぴらに停めたらまずいんだろ? どうする、そっちは宛てがあるのか?』

トラン 「こちらは大丈夫です…そちらは、できればそちらの判断でお願いします」
トラン 「こちらの人たちは、文明レベルが全く違うので、宇宙から来た人間と言うだけでとてつもない騒ぎになりますから」

ユーズ 『了解だ、後はこちらで何とかする、停泊場所が決まったらそちらに向かう』

トラン 「こちらに向かう時も注意してください、小型艇ですら、引っかかりますから」

ユーズ 『マジかよ? どうするかな…』

トラン 「G2を停めたら、動かないのが1番いいです」

私ははっきりそう言う。

ユーズ 『何とかするか…』

聞いていないようだった、その瞬間通信が切れた。

セリカ 「だ、大丈夫かな…?」

トラン 「…多分」



こうして、私たちはまた美夏さん、優里さん、彩香音さんの3人に世話になることになった。



彩香音 「うっわ〜っ久し振り〜!! って言う程月日は経ってないか」

彩香音さんは相変わらず明るい表情で、私たちを迎えてくれる。

美夏 「(セリカ…ヴァレンタインはどうだった? 上手くいったかしら?)」

セリカ 「(あ、あはは…ま、まぁ…ね)」

なにやら美夏さんとセリカさんがヒソヒソと話している。
顔を見ると美夏さんは笑っていて、セリカさんは苦笑していた。

優里 「トランちゃん、ダルマ君もツガルちゃんもいらっしゃい…」

突然後ろから優里さんに抱きしめられる。
私はそのまま。

トラン 「は、はい…また、お世話になります」

そう言った。

ダルマ 「お世話になります〜」

ツガル 「お久し振りです」

優里 「ええ、ゆっくりしていってね…」

彩葉 「…こんな感じなんだ」

エレキ 「見ると聞くじゃ違うからなぁ…」

エレキさんは彩葉さんに手伝ってもらって何とか歩いていた。
彩葉さんが型を貸した状態で、片足でふらふらと歩いている。
初めて降り立つ地球にふたりは少し戸惑う。

彩香音 「あっ、新顔もいるんだ」

優里 「…もしかして、怪我してるの?」

エレキさんを見て、優里さんが心配そうに近づく。

エレキ 「わ…な、何すか?」

優里 「骨折してるのね…松葉杖はないの?」

彩葉 「…な、何ですか、それ?」

私も聞いたことがなかった。
骨折に効くんだろうか?

優里 「彩香音、私の部屋に確かあったわ、持ってきてくれる?」

彩香音 「ほ〜い」

彩香音さんは走って家の中に入った。
よく見ると、前に来た時と違って、雪と言う物が積もってなかった。
季節と言う物が変わったんだろう…。
しばらくすると、彩香音さんが松葉杖を持ってくる。

優里 「ありがとう彩香音、さぁこれを使って」

優里さんは松葉杖を一本手渡し、エレキさんに使い方を教える。

エレキ 「おお…これなら」

エレキさんは左腕で松葉杖を使って立つ。

彩葉 「こう言うものまであるんですね…」

さすがに驚く、通常は無重力装置等を使うことが多いからだ。
骨折で出歩くのも変な話だが。

優里 「そういえば、ナイアやリュウ君…エリカとリリスもいないみたいだけど?」

優里さんは周りを見渡して見るがいない。

セリカ 「えっと、あ、来たわ!」

以前と同じく、崖の下に停泊しているREINCARNATIONからリュウさん、ナイアさんを担架で順に上に上げる。
リリスさん、エリカさんも一緒にいるので、大丈夫のようだ。

優里 「…リュウ君、ナイアどうかしたの?」

ナイア 「お久し振り〜、ちょっと怪我してね〜」
ナイア 「休養するのに、また泊めてくれない?」

ナイアさんがそう言うと、優里さんは心優しく。

優里 「ええ、いいわよ」

そう言ってくれた。
相変わらずのようだ。

彩香音 「リュウ君、寝てるの? 担架で登場ってどうかと思うけど…」

セリカ 「…リュウ、意識不明なの」

その言葉を聞いて、美夏さん、優里さん、彩香音さんの3人が驚く。

美夏 「い、意識不明って…一体何が!?」

優里 「とにかく、中に入れましょう…そこで話しましょう」

彩香音 「早く、こっちに!」

私たちは皆家に入って、リビングに集まった。
リュウさんとナイアさんはそこで布団を敷いてもらって、その上に寝ていた。

ナイア 「…ごめんね〜」

優里 「いいわよ…困った時はお互い様」
優里 「それより、事情を聞かせてくれる?」

優里さんは正座でナイアさんの枕もとに座り、そう聞く。



………。



とりあえず、リュウさん、エリカさん、セリカさんのことを話した。
この星の人じゃ、理解できないのも無理は無いけど、親身になって聞いてくれるのが嬉しかった。

美夏 「じゃあ、原因不明…?」

彩香音 「御伽話というか…童話というか」

優里 「そうねぇ…眠れる王子様って所かしら?」

セリカ 「王子様?」

ふとした言葉に疑問を持つセリカさん

優里 「ええ、こちらの星に伝わる伝説みたいな物かしら? 本当はお姫様なんだけど」

美夏 「眠っているお姫様に運命の王子様が口付けすることで、呪いが解けて目覚めるっていうお話」

セリカ 「………」

それを聞いて、セリカさんの目が変わる。
そして、セリカさんの頭の中で次の方程式が確立した。

{(眠れる王女+王子のキス)=(眠れるリュウ+セリカのキス)}=目覚める

セリカ 「よし!」

やる気満々なのか、セリカさんはおもむろにリュウさんに近づく。

ナイア 「ってやる気!?」

全員がおおっ、と注目する。

セリカ 「よ、ようし…やるよ?」

セリカさんは顔を近づけていく。

茶倉 「って、許すかーーーーーっ!!」

セリカ 「きゃあ!?」

当然と言うか、何と言うか茶倉さんが彩葉さんに憑依して止める。

茶倉 「どさくさに紛れて何やってるのよ小娘!?」

美夏 「な、何? この娘突然性格が変わったわよ!?」

そう言えば話してなかった。



………。



茶倉の説明中…。



彩香音 「二重人格かと思った…」

美夏 「オカルト過ぎだよ〜…」

優里 「……」

思いの他、驚かなかった。

茶倉 「ったく、そういうことは私に任せなさい!」

そう言って茶倉さんがリュウさんの顔に顔を近づける。

セリカ 「あ・ん・た・も!! 何やってんのよ!?」

セリカさんが後ろから、スリーパーホールドで絞める。

茶倉 「ぐえぇっ!?」

彩香音 「おおっ、強烈ねぇ…こりゃタップした方がいいわよ〜?」

彩香音さんが茶倉さんに向かってそう言う。

茶倉 「ぐべっ! タ、タップって何よ〜!?」

優里 「ギブアップのことよ」

優里さんが笑顔で解説する。

茶倉 「ぜ、絶対しねぇ…!」

エレキ (頑張るなぁ…こりゃ彩葉も大変だ)

セリカ 「……うるさいからこのまま落とそうかしら?」

彩香音 「程ほどにしときなよ〜?」

完全に談話モードだ…リュウさんは?
ふと私とリリスさんの目が合う。

トラン 「……?」

リリス 「………」こくり

無言でGOサインを出される。
さすがにそれは…。
少し顔が紅くなるのがわかった。
私は無言で、リリスさんが、とサインする。

リリス 「………」(赤面)

リリスさんも顔を紅くする。
はたからみたら不思議な光景だ。

ダルマ 「何か、話が別の方向に…ん?」

ツガル 「TVがどうかしたの?」

ダルマさんとツガルさんがTVに注目していた。
私もつられて見る。

美夏 「ああ、昼の連続ドラマね…わぁ、キスシーンやるんだ?」

彩香音 「あははっ、何か滑稽〜こっちと似たようなシチュエーション!」

何だか、こちらとしては笑える光景ではなかったようだ。
TVの中では、大人の男女が唇を重ねようとしていた。
ベッドの上で眠っている男、その側にいる女性がその男性に唇を重ねた。
私たちはこう言うのは見慣れないので、見入ってしまった。
そう…特にエリカさんが。

エリカ 「……?」

リュウ 「………」

エリカ 「………」

エリカさんはTVのキスシーンとリュウさんを交互に見る。
何かを考えているようだった。

セリカ 「うわ〜、やっぱり見てると恥ずかしいわね」

茶倉 「いい加減に離しなさい〜!」

セリカ 「嫌」

そう言ってセリカさんは茶倉さんの頚動脈を的確に絞める。

エリカ 「………」

美夏 「あははっ、でも本当に起きたら奇跡よね〜」

優里 「でもロマンチックよね」

彩香音 「あたしはパスかな…恥ずかしいもん」

皆が談話モードに入ったその時、唐突だった。

エリカ 「………」

全員 「!!??」

場が凍りついた。
眠っているリュウさんの唇にエリカさんが唇を重ねたのだ。

セリカ 「……姉さん!?」

茶倉 「ぐ、ぐぇっ!?」

セリカさんは驚きのあまり、茶倉さんを絞め落とす。

彩香音 「あら〜…こりゃキマっちゃったわね」

ナイア 「…あらら、意外な結果になったわね。エリカも一体何を思ったのか?」

エリカ 「………」

エリカさんはTVのキスシーンを忠実に真似ていた。
目を瞑って、リュウさんの両肩に手を重ねて、唇を重ねる。
数秒後の後、唇は離れた。

エリカ 「……?」

リュウ 「く…?」

セリカ 「嘘おっ!!?」

茶倉 「………」

セリカさんはさらに驚いて、すでにオチている茶倉さんの首をさらに絞める。

彩香音 「って、これ以上はやばいって!! 白目向いてるわよ!?」

慌てて、彩香音さんが振りほどくだが、外れない。

彩香音 「って、この細腕のどこにこの力が!? ブレイクブレイク!!」

セリカさんははっとなって手を離す。
すると糸の切れた人形のように茶倉さんが床に倒れる。

優里 「……」

さすがの優里さんも言葉が無かったようだ。

ナイア 「ちょっと…何よこのありがち過ぎる展開は!?」

エレキ 「師匠、幸せ者ですね〜俺もあやかりたい」

ダルマ 「ありえん…」

ツガル 「あ、あはは…でも目覚めてよかったね」

皆状況を受け止めている。
慣れてきたのかな…こういう展開に。

リュウ 「…? ここは…どこだ? 俺は…一体?」

リュウさんは体を起こす、すると目の前のエリカさんを見た。

リュウ 「!? エリカ!? 何故ここに…その服は?」

エリカさんはPandoraの服のままだった。
見慣れないリュウさんは戸惑っているようだった。

エリカ 「……?」

リュウ 「…どうした?」

エリカ 「………」

エリカさんは変わらなかった。
そうだ、リュウさんが目覚めても…まだエリカさんが元には戻っていない。

セリカ 「リュウ!? 大丈夫なの?」

セリカさんが駆け寄る。
リュウさんは頭を少し抱えて。

リュウ 「頭痛がするが、大丈夫だ…ここはどこだ? どこかで見たことがあるぞ?」

リュウさんは周りを見渡す。
そして、見知った顔を見ると。

リュウ 「どういうことだ?」

トラン 「私が説明しますね」



…説明中…



リュウ 「成る程、大体わかった。今はここに逃げてきたと言うわけか」
リュウ 「そして、エリカは…自分を見失って」

エリカ 「リュウ」

エリカは俺の名を呼ぶ。
俺は笑って、呼び返す。

リュウ 「エリカ…お前が無事で何よりだ」

エリカ 「……リュウ」

トラン 「後は…時間の問題です」

リリス 「きっと、エリカさんも元に戻れます…本当の姿に」

トランとリリスがそう言う。
ふたりは人の心情を深く理解できるだけに、わかるのだろう。

リュウ 「そうか…しばらくはこのままということか」

エリカ 「………」

美夏 「まるで子供みたいよね」

優里 「そうね…無邪気な子供のよう」

確かにエリカは子供が親を見る様に俺を見ていた。

リュウ 「とりあえず、これからどうするつもりだ?」

俺は横になっているナイアにそう聞く。

ナイア 「う〜ん…寝る」

そう言って、布団を被って寝てしまう。

リュウ 「…怪我をしているからか?」

とりあえずそう納得しておくが。
休養か…たまにはいいかもしれん。
ここの所、気が休まらなかったからな。

エレキ 「気がついたんですけど、ここに攻め込まれることってないんすか?」

ナイア 「一応未踏査だからね〜…あ」

そう思ったところで気づく。
Vはな…。

ナイア 「Pandoraはおかまいなしか…」

全員 「………」

全員が沈黙する。

ナイア 「まぁ、何とかなるでしょう…その時はその時で!」

かなりアバウトだな…。
まぁ確かに来たら来ただが…こうなった以上は仕方あるまい。

トラン 「多分…大丈夫だと思います、Pandoraはあくまで『不必要』な生命体をですから」
トラン 「…地球の人たちは文明が進んでいないので、狙われる程の脅威はないと思います」

セリカ 「そっか…でも私たちがいたら?」

美夏 「いいわよ、こっちは」

美夏さんは簡単にそう言う。

優里 「そうよ、初めから覚悟の上」

彩香音 「もう私たちは友達だしね」

リュウ 「…もし攻められても、俺たちが絶対に守って見せるさ」
リュウ 「この星は、俺も居心地がいい」

エリカ 「………」

セリカ 「姉さんもこっちにいた方が安全だと思うし」

ダルマ 「でも修理とかもあるけど…任していいのかな?」

今の所AVGの整備兵に頼みっきりだからな。

ナイア 「いいんじゃない? G2の方でもいいって言ってたんでしょ?」

ツガル 「はい、一応何とかなるとは思いますけど…」

ダルマ 「でもB4U辺りはコクピットが損傷してますからね…それにDoLLのこともありますし」

ナイア 「ああ、DoLLは触らないように言っておいたわ、あれはまだ全然わからないから」
ナイア 「わかることと言えば、生きていることと、エリカにしか『懐かない』ってこと」

懐く…? それは機体に当てはめる言葉なのか?
それ以前にDoLLとは生きているのか? トランの説明にもあったが、エリカの乗っていた機体だそうだが。

彩香音 「まぁ、折角だからまた遊びに行こうよ! こっちもしばらく休みでしょ?」

美夏 「そうねぇ、元々流すつもりだったから」

優里 「私は大賛成よ」

三人はそう言って、相槌を打つ。

彩香音 「そこで、物は相談なんだけど…」

彩香音がそう言って、俺に近づく。

リュウ 「何だ?」

彩香音 「軍艦だったら、飛行機とかあるよね〜?」

リュウ 「…戦闘機ならあったか? それともテスト用の飛行試験型か…」

俺は格納庫の内容を思い出してみる。
多分2〜3機あった気はするが。

彩香音 「当然、運転できるわよね?」

リュウ 「…人型の操作より数段楽だ」

彩香音 「よしっ、決まり!」

何が決まったのか説明してほしいんだが。

彩香音 「一緒に海まで連れてって!!」

美夏 「ごめんねぇ…どうせなら旅費を削減したくて。その代わり皆の宿代は持つから!」

ナイア 「それだったら艦ごと移動したら? どうせステルスで肉眼には見えないし」

優里 「いいの?」

ナイア 「いいわよ、私も『海』を見てみたいし」

海か…実際に見たことはないな。
巨大な水溜りだそうだが…どの位なのか。

彩香音 「それじゃあ明日出発しましょう♪」

優里 「そうね、今日は休んだ方がいいと思うわ、ナイアも部屋に連れて行くわね」

ナイア 「ごめんね…まだ自由にならないのよ」

ナイアは布団ごと移動される。



………。



そして、怪我人は部屋で休み、残りの人間は各々別の行動をとっていた。
俺はエリカと一緒にそのままリビングで休んでいた。

エリカ 「………」

リュウ 「………」

お互いに一言も喋らない。
エリカは俺を見つめるだけだった。
その場には優里、美夏、セリカが一緒にいた。

セリカ 「海って泳げるの?」

優里 「そうねぇ、どこに行くかによるけど…」

美夏 「この際アメリカとか?」

優里 「そうねぇ…でも、見つかったら問題でしょ? ○ASAが黙ってないかも…M○Bとか来たらどうするの?」

意味不明な単語が飛び交う。国の名前だか略語だかわからなかった。

美夏 「じゃあ、沖縄に行こうよ…幸い、旅費はタダだし」

セリカ 「オキナワ? そう言う国があるの?」

優里 「日本の中よ、そういう地名があるの。簡単に言えば町ね」

セリカ 「ふぅん…そこなら海があるのね」

美夏 「まぁ、そういうこと」

3人は楽しそうに話していた。

エリカ 「………」

リュウ 「………」

エリカは俺を見つめつづけていた。
一体何故だろうな?
不思議に思うほどだった。
俺が寝ていた間もずっと見ていたそうだが。

リュウ 「………」

エリカ 「………」

目が合ってしまう。
今更気恥ずかしいとも思わないが、そのまま数秒が過ぎた。

セリカ 「ぶ〜…何姉さんと見つめ合ってるの〜?」

セリカは突然後ろから俺の両頬を引っ張る。
少し痛い。

リュウ 「…セリカ? 話は終わったのか?」

俺は振り向いて、セリカを見る。
するとセリカは手を離して。

セリカ 「うん、大体は。オキナワって所に行くそうよ」
セリカ 「泳ぐそうだから、水着も用意するんだって」

リュウ 「…持ってないぞ?」

セリカ 「うん、だから今から買いに行こうと思うんだけど…」

優里 「大丈夫よ、向こうでも売ってるわ」

美夏 「その時に買えばいいと思うわよ」

セリカ 「そっか、じゃあそうすればいいね」

リュウ 「…泳ぐ気なのか? まだ寒いだろう?」

少なくとも、泳ぐには肌寒いはずだ。

美夏 「あははっ、大丈夫沖縄なら今でも十分暑いから」

優里 「そうね、夏服を用意した方がいいかもしれないわ」

セリカ 「私たち、そんな服とか持ってないから…」

優里 「そうね…普段着くらいは買ったほうがいいかしら?」

美夏 「うん、私たちが貸せるのにも限界があるしね」

リュウ 「…普段着か、こっちに合わせたほうがいいか」

俺のに関しては完全に普段着がないからな。

美夏 「じゃあ、街まで降りようか? セリカも一緒に行こう」

セリカ 「そうねぇ…飛ばさないでよ?」

美夏 「大丈夫大丈夫♪」

セリカ 「本当かなぁ…まぁいいか、適当に見繕ってくるね」

リュウ 「サイズが合うならなんでもいい」

セリカ 「うん、わかった」

そう言って、セリカと美夏が出ていった。

エリカ 「………」

優里 「エリカは…泳ぐのかしら?」

リュウ 「…無理だろう?」

少なくとも、何もしなさそうだった。

優里 「でも、皆が泳ぐのを見たら、真似するかもしれないわね」

リュウ 「…溺れそうだな」

優里 「その時はリュウ君が助けなきゃ」

リュウ 「………」

言葉が無かった。



………。
……。
…。



やがて、日が落ち、次の日がやってくる。

美夏 「わぁ…これが戦艦」

彩香音 「広いと思ったら、通路は狭いね」

優里 「でも大きいわね…飛行機とは比較にならないわ」

美夏 「格納庫に車が入るもんね…」

3人は車ごと艦に乗せた。
現地での移動のためらしい。

美夏 「でも駐車場とかあるのかな?」

彩香音 「無理じゃないの? 違反区域もないだろうし?」

優里 「まぁ、注意されたらその時よ」

リュウ 「とりあえず、場所がわからないからな…ブリッジに一緒に来てくれ」

美夏 「そうね、行きましょう」



………。



『メインブリッジ』



美夏 「うわ…広いわね」

トラン 「えっと…場所は?」

トランが操縦席でそう指示を仰ぐ。

彩香音 「わお、トラン格好いい♪」

美夏 「えっと、マップは出せるのかな?」

トラン 「…ある程度なら」

トランはメインモニターにマップを表示させる。すると、妙な地形の島(?)が表示される。

美夏 「ああ、これこれえっと…沖縄は、ここ」

美夏はメインモニターの南西の果てにある島を指差した。

トラン 「ここですね…了解、進路設定…沖縄に」

トランがそう設定すると、REINCARNATIONが動き出す。

彩香音 「わお、すごい…本当に飛んでる」

優里 「宇宙の神秘ね」

優里は簡単にそう言う。

トラン 「…この距離なら、10分程で着きます」

美夏 「そ、そんなに早いの!?」

彩香音 「凄すぎ…」

優里 「朝早く出たのに、朝早くに着いちゃうわね」

3人は驚いた。
俺たちには不思議じゃないが、やはり違うと言うことか。
こうして、俺たちは海に向かうこととなった。
久し振りの休養だが、どうなることか…。

…To be continued

ANOTHER


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