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? 「デウス…デウス…」

私を呼ぶ声が聞こえる。
温かく…やさしい声。
私の愛する…大切な『マスター』の声が…。

しかし、その声はモノクロームな色を持ち、やや褪せていた。
そう、それは夢なのだから…。

デウス 「はい、お父様」

目の前に昔の私がいた。
8年程前…まだ、私たちが日本という小さな極東の島国にいた頃。
かつての私は今とほとんど変わらない姿で映っていた。

何故って?
なぜなら私は人間じゃないから…DOLLだから…。

私は偉大なるマスター『アルシャード・ルペイン』様の創ったアルシャードシリーズの第2DOLL『デウス』。
この夢はまだ私たちが日本の施設にいて、お姉さまがちょうどいなくなった頃。

アルシャード 「デウス…お前の生きる意味は何だ?」

デウス 「私の生きる意味…それはお父様です」
デウス 「私はお父様がいるから強くなれますし、戦えます」

かつての私は恥ずかしげもなくマスターに素顔で言った。
見た目は今も昔も変わらない。
変わらないのに…昔の私は今より輝いて見えた。

アルシャード 「デウス…お前は死ぬな、生きろ」
アルシャード 「それがお前のするべきことだ」

デウス 「お父様…?」

かつての私は急に顔を曇らせる。
今の私と同じ顔だ。

デウス 「お父様…私は…」




閃光のALICE外伝 〜矛と盾〜




『2006年6月…(蛍がDOLLと発覚した頃)ギリシャ・郊外』


エクス 「みっはーん! お姉さま、起きろー!」

ドスドス!

デウス 「こら、エクス…人の体の上で跳ねるな…」

私は妹の強引な起こし方で目を覚ます。
ただ、起こしてもらうのは感謝するが起こし方には修正の余地があるな。

エクス 「みはーん♪ 起きない方が悪いんですよー?」

デウス 「お前は身長はないが胸があるから重いんだ…」

エクス 「妬いているんですか〜? あたしの胸がお姉さまより8センチも大きいですからね〜?」

デウス 「とりあえずどきなさい!」

私はそう言って強引にエクスを私の寝ているベットから降ろす。
その際勢い余ってエクスは大きく尻餅をついたが私は気にしない。
因果応報だ、悪いのはエクスだ。

エクス 「みは〜ん…、やっぱりあたしのバスト90を妬いているんじゃないですか〜?」

デウス 「……」

私は何も言わない。
そのままエクスを無視して着替えを始めた。

デウス 「エクス、時間は?」

エクス 「朝8時ですよ〜」

デウス 「8時か…」

しまった…寝すぎたな…。
アルシャード様はまだいるだろうか?

エクス 「マスターならいませんよ? どうせ、マスターのこと考えたんでしょ?」

デウス 「そうか…」

聞くまでもなかったようだ。
当然か、既にアルシャード様は仕事に行かないと行けない時間だからな。

デウス 「しかし、朝食は?」

エクス 「あたしが作りましたよ、マキナなんかに作らせたら夕ご飯になっちゃいますよ〜」

デウス 「そうだな…」

エクス 「見直した? 見直しました?」

デウス 「えらいえらい」

やや子ども扱いしすぎだが、私はエクスの頭を撫でる。
しかし、エクスは単純というか…。

エクス 「みっはは〜ん♪ 褒〜められた〜♪」

デウス 「エクス、私の分の用意はあるか?」

エクス 「問題なーし♪ こっちですよ〜お姉さま〜♪」

エクスは上機嫌でスキップをしながら私の部屋を出て行く。
私は布団を直し、キッチンへと向かうのだった。





家の窓から見えるのは穏やかな海と、帆を立てた船。
段の上に白い壁の家が立ち並んでいる。
首都アテネとは違い、のどかな郊外である。
昼間は電気をつけず、外から入る日差しで過ごす。

デウス 「引越しの準備はできている?」

私はトーストにバターを塗りながらエクスに聞いてみる。
私たちは近々、この国から再び日本という国へと帰るのだった。

私たちは元々日本という国で生まれ、日本という国で生活していた。
まぁ、生活といっても施設の中だけで、実質は箱入り…といったことろだが。
我々のマスターである、アルシャード・ルペイン…この方は生粋のギリシャ人だ。
ギリシャの大富豪の家系でその跡取りだが、ルペイン家の当主に若くしてなったが親戚やら叔父やらからの視線を嫌がり、わざわざ極東の島国にまで来たらしい。
まぁ、金持ちにありそうなどろどろの思念か。

エクス 「大丈夫ですよ〜、元々ほとんどの物は向こうにありますし」

デウス 「そうね」

エクス 「むしろ心配なら、マキナをしてくださいよ〜」

マキナ 「…大丈夫」

私の二人の妹、第四女のマキナはとても大人しく普段は自分から動こうとはしない本当の意味でお人形のような存在だ。
第三女であるエクスはこんなに活発的だというのに。

エクス 「でも、お姉さま〜、日本に帰ったらまた施設に逆戻りですか〜?」

デウス 「多分大丈夫よ、マスターが掛け合ってくれている、こっちとそう生活に問題は出ないと思うわ」

エクス 「みっは〜ん♪ よかったねーマキナ! 向こうに行っても一杯遊べるよ!」

マキナ 「…うん」

デウス 「やれやれ…」

私はエクスの能天気ぶりを見ながらトーストを全て食べ終え、その皿を洗い片付けるのだった。



…………。



エクス 「おっかいっもの♪ おっかいっもの♪」

マキナ 「……」

エクス 「お姉さま〜! 早く早くーっ!」

デウス 「やれやれ…」

私たちは街に出て、3人で買い物に来ていた。
マキナは凄く動くのが遅い。
そのため普段から素早いエクスに手を握られ、いつも一緒にいる。
今日はお昼の分と晩餐の分が必要だ。

デウス 「…またか、しつこいな」

私は真後ろから視線を感じる。
いつものことだ、だが、私たちにつけられる道理は無いはずなのだがな。
大抵は無視してきたが…。

エクス 「みっはー! おーねーえーさーまー!」

デウス 「わかったわかった! 静かにしなさい!」

私はエクスに急かされ、足早にエクスを追うのだった。

デウス (まぁ、無理にここで問題を起こすのはまずいか…ある意味こちらとしては命拾いかな…ナイツさん)

私たちの影を常に追う存在がある。
詳しいことは何もわからない。
接触してきたこともたった一度だけ。
だが、気配はずっと感じている。
その気配の名前は『ナイツ』という。
その名の通り夜、すなわち闇を意味するような存在だ。
しかし、このギリシャにおいて英語とは、英国人とも思えんな?
偽名をこの国に合わせないとは恐れ入る。



…………。



エクス 「おっさっかな、おっにく、やっさい、くっだもっの♪」

マキナ 「……」

デウス 「…では、これで、丁度ですよね?」

私たちは市場で買い物を済ます。
普段はミノ市の方を見たりもすることもあるけど今日は食材集めだけ。
魚も美味しいと野菜炒めと一緒に作るかしら?

マキナ 「…あ」

エクス 「ん〜? どうしたのマキナ〜」

突然、マキナが私からかなり前方のお店で立ち止まる。
何を見つけたのかしら?

おじさん 「はは、マキナちゃんは今日も可愛いな! ほら、これをあげよう!」

マキナ 「あ…、ありがとうございます…」

エクス 「ああ…アメかぁ」

マキナはどうやら飴を貰ったらしい。
マキナは一番行儀がいい、こういったところへ行くとよく何かを貰っていたりする。
名前もこの市場はいつも来ているしエクスがマキナマキナと連呼するから、この街の住民たちはみんなマキナを知っている。
というより私たち三姉妹はこの街では有名のようだ。
姉妹といいつつもここまで3人とも性格が違うというのは珍しいだろう。
まぁ…私たちDOLLにおいては血は繋がっているともいえるし繋がっていないともいえる。
繋がっていると言えばDOLL全員が姉妹ということになってしまう。
だが、現実には人間とは構造が違うし、生成方法も特殊な、道具というのが正しい存在だ。
生理現象があるし、血は流れているが…姉妹というより同一人物という見方のほうが私たちDOLLは正しい。
ただ、誰が基本ベースでこれだけ大きく差ができるのかは謎だ。

デウス (そういえば…日本のみんなは元気かしら?)
デウス (あの事件…私たちは一人の姉を失った…コッペリア姉さん、トゥア姉さん、ヨハンも…みんな元気かな)

私たちDOLLは歳を取らない。
ゆえに年月が経っても変化が無い。
恐らく日本に帰って再会してもお互い変わったということはないだろう。
それは、どこか悲しいことの様にも思える。

おばさん 「デウスちゃん、デウスちゃん!」

デウス 「! はい?」

おばさん 「今日の晩飯探しかい? この魚どうだい? 安くしとくよ!?」

デウス 「…そうですね、いただきましょうか、いくらです?」

おばさん 「まいどあり!」



…………。



エクス 「ゆ〜やけ、こ〜や〜けの、赤とん〜ぼ〜」

マキナ 「……」

デウス 「日本の童謡? あの国が恋しいの?」

買い物も終わり、夕刻の時間、日が沈む姿をエクスは眺めながら日本の童謡を歌っていた。
外には別にトンボが飛んでいるわけではない。
というよりトンボはまだ時期ではないと思うのだけれど?

エクス 「恋しいわけじゃないよ…だけど、どうしても思い出しちゃう…馬鹿みたいなことしていてもあの惨劇を…」

マキナ 「…!!」

エクス 「大丈夫だよ、マキナ…もう起きないから」

マキナ 「……」

マキナは惨劇と聞いてひどく怯える。
エクスはなだめるようにマキナを抱きしめた。
私たちの悪夢…施設で起きた惨劇。
茨城にあるDOLL開発研究施設、そこでおこった暴走事故。
DOLL21体、研究員8名を失った凄惨な事故だった…。
この21体のうち、私たちが姉妹と呼ぶ長女がいた。
しかし、長女はその死体が見つからず、魂命がそのまま残っていた。
それゆえ死亡と決め付けることができず、私もマスターも姉を失ったと表現し、死を認めない。
けれど、元々私たちDOLLは謎の多い存在、姉…やはりもういないのではないだろうか?

エクス 「お姉さま…あたし怖い…」

デウス 「エクス?」

エクス 「向こうに戻ったら平和が崩れそうな気がする…」

デウス 「大丈夫、気のせいよ」

エクス 「どうして言い切れるの!? すごく…すごく嫌な予感がするんだよ…! とっても…とっても怖いのに…」

デウス 「大丈夫よ、エクス、たとえそうなっても私があなたたちは守るわ」

エクス 「それじゃ…あの時の二の舞だよ…」

デウス 「大丈夫よ…私もあの頃とは違う…」

私はそう言ってその場を離れた。
そろそろ晩御飯の用意をしないといけない。
いざ、あの国へ帰るというとき、妹たちにトラウマが蘇ろうとしているなんて…。
私だって怖くないわけじゃない…。
だけど、状況が違う。
あの頃はただの一介のDOLLに過ぎなかったが、今は教員免許も取れるほど社会にも順応している。
DOLL開発研究施設のほうも私たちの独立に異論は無いはず。
私たちはすでに向こうとはそう関係があるわけじゃない。
あの時のような惨劇が起きるわけが無い!



…………。



その夜…私は夢を見た。
なぜこんな時にあの夢を見たのか…。
それは…あの忌まわしき8年前の惨劇の夢…。



『8年前 DOLL開発研究施設』


デウス 「エクスー! マキナー!」

私は姿の見えないエクスとマキナを探す。
もはやいつものこととは思う。

デウス 「まったく…エクスの奴…」

エクスはよくマキナを連れて、施設を脱走する。
黄色DOLLはとても素早い、それゆえ施設の中はとても狭く感じるのだろう。
だからと言って茨城の山奥に隠すようにできているこの施設から脱走するとこちらも探しようがない。
大抵日が落ちる前に帰ってくるが、もし万が一があっては困る。
エクスとマキナは仲がいいのは良いがこうやってやってはいけないことにも平気で突っ込むのは勘弁して欲しい。
特にマキナは普段はトロく、万が一エクスとはぐれようものなら二度と見つからないような存在だ。
マキナの存在はエクス頼みなのだ。

デウス 「やれやれ…」

これはもう探しようもないか。

コッペリア 「あ、デウス?」

デウス 「! コッペリア姉さん、…とそれにアルド君」

アルド 「どうしたのデウス姉ちゃん」

私が施設の中庭にいるとコッペリアとアルド君が手を繋いで現れる。
アルド君はまだ小学生だし、コッペリアより小さいがとても仲良しだった。
これからどんどん人間は大きくなるのね。

デウス 「エクスとマキナの姿が見えなくてね」

アルド 「また?」

コッペリア 「だとすると、きっと森の中ね」

デウス 「ええ、ところで二人は?」

コッペリア 「え? ああ、私たちはこれからお買い物です」

デウス 「! ということは外出許可が降りたの姉さん!?」

コッペリア 「ええ、ようやく」

デウス 「うわぁ、おめでとう姉さん! 第1号ですよね!?」

コッペリア 「ふふ、ありがとう…さぁアルド、掴まって」

アルド 「うん!」

コッペリアはアルドを離さないようにしっかり抱きしめる。
コッペリア姉さんは青DOLL同様、空を飛ぶ能力がある。
ある程度は飛んで外出するみたいね。

コッペリア 「それじゃ、夕方までには帰るわ」

デウス 「ええ、しっかり楽しんできてよ」

コッペリア 「ええ、それとエクスたちは見つけたら一緒に連れて帰るわ」

デウス 「お願いします」

それでコッペリア姉さんはアルド君を連れて南の空へと消えた。
そうか…やっとコッペリア姉さんも。

デウス 「それにしてもエクスは…コッペリア姉さんのような聡明なお方ならともかく…」

私たちDOLLは人間にそっくりではるが人間ではない。
そのため人間と同様の扱いをさせるのは危険…とのことだ。
ゆえに慎重な審査と教育が行われ、さっきのコッペリア姉さんのように外出するには200ものカリキュラムを終了し、合格審査を受けないといけない。
トゥア姉さんもそろそろ外出できるとおもうのだけど。
私はと言うと…まだまだ…である。
それほど人の世界に順応するのは難しい。
体は大人でも生まれたてのDOLLは赤子同然なのだから。
人間でも一人前と扱われるのは身体的にも精神的には20から。
それなのにDOLLが数ヶ月で出ては問題があるからね。
それでもコッペリア姉さんは凄い。
わずか10年足らずでこの施設の外に出られるなんて。

デウス 「さて…一応お父様にも報告しておかないと」

もちろん、エクスたちの件だが。
あの二人どうにかならんものか。
エクスは好奇心の塊、だがマキナも大人しいが好奇心は非常に強い。
ゆえにこんなとっぴなことをしたがるのかもしれない。
全く誰に似たのか…私たちDOLL全員…。



…………。



ヨハン 「こら、ワロゥ! 待て!」

ワロゥ 「! よう、デウス…ちょっとどいてくれ!」

デウス 「!? きゃっ!?」

突然、ワロゥが高速に通路を通って私の横を横切る。

ヨハン 「くぅ…ワロゥめ」

デウス 「ど、どうしたのヨハン?」

ヨハンはワロゥを取り逃がして悔しそうにしている。

ヨハン 「ワロゥがまた盗み食いをしていてね…ダメだってしつこく言っているのにあの子聞かなくて…はぁ」

デウス 「盗み食いならまだ可愛いものでしょ?」

ヨハン 「とんでもない! そんなことでは私たちはいつまでも一人立ちできませんよ!」
ヨハン 「大体あなた方の方でも問題が出ているじゃないですか!」

デウス 「う…まぁ…ねぇ」

エクスとかエクスとかエクスとか…。

ヨハン 「はぁ…コッペリア姉さまは早くも外出できているというのに」
ヨハン 「私はいつになったら出来るのか…」

デウス 「あんまり無理に仕切らなくてもいいんじゃない?」

ヨハン 「そうはいかないわ! ただでさえ皆個性が強いんだから! 誰かがちゃんと仕切らないと纏まらないわ!」

デウス (学級委員長タイプ…)

ヨハンを見ているとつくづくそう思う。
この子いつか凄い重役になっていそうな気がするわ。
しっかりしているのはいいけど、少し堅苦しいわね。

ヨハン 「お願いだからデウスも問題起こさないでよ?」

デウス 「大丈夫よ、少なくとも私は」

ヨハンにはエクスのことを言うのは危険そう。
少なくとも今、別の問題も起きているがそれを言うと大変そうだ。

ヨハン 「ところでデウスはどうしたの?」

デウス 「私? 私はこれからお父様のところに行くところだけど」

ヨハン 「そう、あ、だったら後でおと…所長が呼んでいたってアルシャードさんに言っておいて」

デウス 「わかったわ」

ヨハン 「全く…ワロゥといいマインダといい…」

デウス 「……」(汗)

本当にヨハンは堅いわね。
もう少し女の子のようにしてもよさそうだけど…。

デウス 「と、お父様のところにいかないと」

私は本来の用事を思い出し、お父様がいると思う第2研究室へと向かう。



…………。



アルシャード 「状況は?」

槲 「維持率98%…しかし、コレを第2研に回されちゃうなんて厄介払いもいいところですよ…」

アルシャード 「そういうな…これはDOLLとも少し違う、特別な存在だ」

槲 「この死塊の塊がですか?」

デウス 「お父様…?」

私は第2研へと入る。
すると予想通りお父様とその部下にあたる槲さんがいた。

アルシャード 「? どうしたデウス?」

槲 「やぁ、デウスちゃん、今日も可愛いね」

デウス 「ありがとうございます、それとお父様、またエクスとマキナが消えました」

アルシャード 「またか…」

槲 「またぁ〜? 困ったな〜…ただでさえ第2研は立場が悪いのに」

このDOLL開発研究施設には第1研から第3研の3つの研究室がある。
お父様が主任として働くのがこの第2研。
実力はあるのだけど、なにかと貧乏くじを引かされるのネックだった。
そして、今回もなにか変なものが押し付けられたらしい。
このA&Pの特別研究施設であるこの施設は国家機密以上のセキュリティがしかれている。
それゆえ、この国の首脳さえ知らないような危ないものも管理している。
それが私たちDOLLである。
DOLLは本来人間様への奉仕活動や補助行為を主眼として生み出された存在だ。
だが、DOLLには謎があまりに多い。
基本構造はかなり昔に完成しているが、人体と同じ構成成分にイノセンスという特殊なウィルスを感染させるらしい。
このイノセンスは第1研が管理する『ALICE』の体内及び、ALICEの所持品と思われる魂命(我々は時の剣と呼んでいる)から抽出できる。
魂命とは理屈はわからないがDOLLが誕生した時セットになって生まれてくる武器の形をした命そのもの。
これが欠ける、もしくは壊れるとそれはDOLLにおいて死を意味する。
なぜ自らの急所を外気にさらけ出してしまうのかは未だに謎だ。
私たちDOLLを生み出す秘術を見つけ出した吉倉所長にもよくわかっていない謎のことなのだから。

デウス 「お父様…これは?」

私は培養液の詰まったカプセルの中に漂うなにかを注目する。

アルシャード 「『テラー』だ」

デウス 「テラー?」

テラーと呼ばれるなにかは、よくわからない存在だった。
まず人型とはとてもいえない…。
顔のようなものが上部にあるが半壊していて顔と認識するのは難しい。
それ以上にひどいと感じるのは首から下だ。
なにか変な物が漂っている…言い方を変えれば肉塊が培養液の中を漂っている…そんな感じだ。

槲 「テラー…溢れかえる生成失敗のDOLLの塊だと言われている存在だよ」

デウス 「失敗作の塊?」

アルシャード 「確かな情報じゃない…だが、現状DOLLの誕生確率は大体7%」
アルシャード 「つまり生み出そうしたDOLLの93%は生成失敗でこの世に生を受けていない」

槲 「デウスちゃんたちが生まれた頃に比べたら相当上がりましたよ、あの頃の生成確率なんて1%なかったんですよ?」

アルシャード 「そうだな、それでその生成失敗が起きるたびにこのテラーは誕生し、大きくなった」

槲 「最初は生成失敗かな…て、思ったみたいだけど生命反応があってね…この状態で生きていると判明したんだ」

デウス 「これが生きている者の姿ですか?」

槲 「そうさ、邪険にするのは可哀相だよ、この子だってこんな姿で生まれたくなんてきっと無かったんだから」
槲 「だけど、ちょっとづつこの子は形づくられているんだ…まるで人間が受精卵から赤ちゃんになるかのようにね」

アルシャード 「問題はその状況だ…生成失敗と同時に体が徐々に増える…まるで吸収するかのようにだ」

槲 「もしかしたら死神かもしれませんねぇ〜…触れてはいけない禁忌にふれてしまった〜って感じに」

ゴポォ…!

デウス 「!?」

槲 「おっと、またテラーが細胞を増やしたよ」

アルシャード 「どれくらいだ?」

槲 「8.5%…0.2%体積が増えてますね…今日だけで0.6%も体積が増えましたよ」

デウス 「……」

私はテラーのいるカプセルを見る。
カプセルの中にいるのは出来損ない…という存在。
しかし本来は生を得られるはずの無い存在が今、ここで生を得ている。
この状態で生きていると呼べるのだ。
おおよそ考えられない。
とはいえ、培養液の中にいる辺りは外気中では生存できないということか?
槲さんはまるで受精卵から成長するようと言っていたが…。

アルシャード 「しかし、デウスはエクスのことを知らせるだけに来たのか?」

デウス 「あ、そうでした、すいません忘れていました、吉倉所長が後で来るよう言っていました」

槲 「へぇ、所長がお呼びね」

アルシャード 「わかった、それじゃ行ってこよう、恐らく所長室にいるだろう」

槲 「自分はここでテラーを観察していますよ」

アルシャード 「何かあったらすぐに連絡しろよ?」

槲 「わかってますよ!」

お父様はそう言って所長室へと向かう。
私はしばらくこのテラーを眺めていることにするのだった。

だが…。

ジリリリリリリリリリリ!!!

槲 「へっ!? な、なに…サイレン!?」

デウス 「一体何が?」

槲 「火事かな…一体!?」

突然激しくサイレンが鳴り始める。
一体何事かと戸惑ってしまう。
火事…とは思えない。
私たち赤DOLLは熱や炎を司るらしい。
そのせいかどうかはわからないが炎の気配は感じないようだった。
むしろ感じるのは…。

デウス 「なに…これ…? 血の匂い…?」

槲 「え…どうしたデウス!?」

ゴポ…ゴポゴポッ…!!

デウス 「!? テ、テラーが…!?」

槲 「え…ちょ…嘘っ!? 体積が25%になった!? 17%もアップなんてどうなっているの!?」
槲 「た、大変だ! 培養液が溢れちゃう! 急いで培養液の量を減らさないと! い、いや…まず主任に連絡を…!」

槲さんはそう言って急いで内線のある電話に近づく。
そしてそのまま。

ブツン…!

槲 「うそっ!? 停電!? なんでこんな時に!?」

デウス 「電話、繋がらないんですか!?」

槲 「だめだ! 予備電力まで逝っちゃったらしい! まだ昼下がりなのが救いだけど…」

デウス 「……」

なにか胸騒ぎがする。
一体何が起こっているのかはわからない。
ただ、物凄く嫌な予感だけした。

『クル…くる…来る…!』

デウス 「!? 誰…? 誰が、なにがくるの!?」

槲 「ど、どうしたんだいデウスちゃん!」

突然、頭の中に聞いたことの無い声が響いた。
それが誰の声で何のことなのかは理解できない。

『オコル…おこる…起こる…怒る…熾る…!』

デウス 「まさか…あなたなのテラー!?」

槲 「え!? テラーがどうかしたのかい!?」

デウス 「く…槲さん、ちょっと様子を見てきます! 槲さんはテラーを!」

槲 「え!? あ、ああ…気をつけて!」

デウス 「はい!」

私は急いで所長室へ向かう。
お父様が心配だ! もしお父様の身に何かが起こってしまったら…!

所長室は第2研からは階段を上り、渡り廊下を通って別の棟に渡る。
中は広く、学校くらいはある。
私はそんな施設内を全力で走る。
そして渡り廊下を渡り終え、所長室のある棟へと着いた時、いい加減異変に気付いた。

デウス 「…? みんなは? みんなはなぜどこにもいないの!?」

気がつかなかった。
焦りすぎていたのかもしれない。
ここは50体近いDOLLと10数名の研究員がいる。
しかし、まるでそれらの気配が無かった。
第2研へ向かう時はヨハンやワロゥにも出会ったのに、停電が起きてから誰もいないなんて…。

デウス 「そんなこと…あるはずが…」

私は急になんだか恐ろしくなり足音がもれないよう注意しながら所長室を目指した。

デウス (ど…どうなっているのよ…一体、嘘でしょ…まるで誰もいないみたいなんて…)

カツン…カツン…。

デウス 「!? 誰…誰なの?」

突然、足音が聞こえる。
昼下がりだというのに蛍光灯が無ければまるで真っ暗にも感じる閉じ込められた空間。
空気が淀む。
思考がおかしくなりそうな気分だ。

マインダ 「う…デウス…?」

デウス 「!! マインダ、どうしたのよ!?」

突然、暗闇から現れたのはマインダだった。
ただし五体満足のマインダじゃない。
そのマインダは左腕を切られ、ところどころ切り傷があった。

マインダ 「デウス…この先は…行くな!」

デウス 「行くなって一体…それよりあなた大丈夫なの!?」

マインダ 「致命傷じゃない…だが、迂闊だった…こっちの得物は針だからな…さすがに2本が相手じゃ…無理か…」

デウス 「2本? 相手は2本の刃物状の物であなたを襲ったの!?」

マインダ 「!? デウス、さっさと引き返せ! 私は大丈夫だ…つ!」

デウス 「大丈夫なわけないでしょ! わかったわ、先には行かない、でもあなたの手当ても必要だわ」

マインダ 「く…」

私は傷だらけのマインダを背負って道を引き返す。
停電すると渡り廊下の部分だけ日光が当たる。

マインダ 「ところでデウス、他のみんなを知らないか?」

デウス 「え? あなたこそ知らないの?」

マインダ 「…まさか」

デウス 「うそ…そんな…?」

私は嫌な予感がするとマインダを担ぐ。
そのまま別棟へと走り出す。

デウス 「? マインダ…なにか感じない?」

マインダ 「私に言わせたいのかよ…デウス、お前こっちからきたんじゃないのか?」

デウス 「…一階は通ってないわ…」

私は変な匂いを感じて慎重になりながら一階へと下る。

マインダ 「匂いの原因はそこね…」

デウス 「会議室…?」

そこは会議室だった。
もう、はっきり言おう…そこからするのは血の匂いだ。
開けた時…そこには無残に切り捨てられた大量の死体でもあるのだろうか?
嫌な空気がその場にあった。

デウス 「……」

ガチャ…ギィ…。

私は意を決して扉を開く。
しかし、次の瞬間、私は開かなければよかったと思った。

デウス 「!?」
マインダ 「な!?」

バタン!

私は急いで扉を閉める。

デウス 「オエェ…」

私は思わず吐いてしまう。
あの…光景は…。

マインダ 「嘘だろ…あんなの…人が…バラバラにされてた…」

デウス 「うぅ…どうなっているのよ…いつから…ここは処刑場になったのよ…」

ギィィ…。

マインダ 「くそ…あいつ、偽装工作のつもりかよ…これじゃ誰が誰だかわからねぇ…」

会議室の中は凄惨だった。
何人いるかわからないどれがどの部分かわからない物も多い。
仮に20人の死体があるとしよう…それが鋭利ななにかでバラされている。
200くらいなの?
あまりに無残にバラバラにされているので数えようがない。

マインダ 「畜生…DOLLもかなりやられている…」

デウス 「こ、魂命…?」

マインダ 「DOLLは魂命がやられると体を維持できず消滅してしまうんだ」
マインダ 「だが、魂命が残ったまま殺されたら人間同様消滅せず、残っちまう…」

デウス 「そんな…こんな殺し方するなんて…」

マインダ 「私たちの存在は極秘裏だからな…救援呼ぶこともできやしねぇ…最も来た所で餌食になるのがオチだろうがな」

デウス 「…ねぇ、マインダ、あなた…これをやった人物を知っているのね…?」

マインダ 「ん…あ、ま、まぁ…」

デウス 「教えて! 誰なのこんなに誰彼構わず殺しまわったのは!?」

マインダ 「く…知る必要はない」

デウス 「それはどういう意味なの!? まさか、これをやったのは身内!?」

マインダ 「何度も聞くな! じゃあ逆に聞くがな! お前これだけのことをやってのけた奴に一人で勝てるのか!?」
マインダ 「人間もDOLLも区別無く、バラバラの肉の塊だ! 頭! 腕! 胸! 腹! 胃! 太もも! 耳! 目! なにもかもばらばらだ!」
マインダ 「人間とも認識できやしないじゃないか! お前が行った所でこうなるのがオチなんだよ!」

デウス 「でも…それでも、こんなことしたやつは許せない! 身内ならなおさら!」
デウス 「それに…そうだ! お父様!? お父様は!?」

私は急いでその場を離れて所長室を目指す。
もし…もしお父様の身になにかあったら…!

マインダ 「お、おい待て…て、痛ってーっ!! くそー! 待ちやがれ、デウスー!!」



…………。



私は急いで走る2階に上がり、渡り廊下を抜ける。
時刻はすでに夕刻に入ろうとしている。
まずい、暗くなったら停電している今は絶望的だ。

デウス 「く…あとはこの真っ暗闇な廊下を渡り上の階へといく」

問題はここで襲われると非常に状況は悪いということだが。
丸腰でアレだけのことをやってのけた相手と戦えるか?
いや…魂命があったとして勝てるとは思えないが…。

デウス (せめてお姉さまがいれば…)

相手の情報は少なくとも得物を2本持っているらしい。
あのマインダがあそこまで傷だらけに追い込まれるくらいだ、恐らく2刀流だろう。
そんなことが出来る身内…。

デウス 「そんな…まさか…そんなはずは…」

私はたった一人だけこの研究所で2刀流のDOLLを知っている。
しかし…どうしてあの人が…?
いや、それは全DOLLに当てはまるか…しかし、もしあの人だとすると。

デウス 「…勝てないのも無理はないかもしれない…だけどここまで残忍なことができる人じゃなかったはず…どうして…?」

考えても仕方が無い、今は急いで所長室に!

デウス 「いそ…!?」

ガッ!

デウス 「あぐっ!?」

突然頭が叩かれる。
い、一体なにが…!?

? 「危ないデウス!」

デウス 「!? くっ…!?」

ブォン!

何かが私の額を掠めて通過する。
髪の毛が少し切れた。
前を見ようとしたが目の前が白い、後頭部を叩かれた影響で視神経がイカれたか!?

? 「左だ、デウス!」

デウス 「左!? このっ!」

ドコォ!

咄嗟に放った蹴りが何かを捕らえる。
間違いなく私を襲った犯人!

デウス 「お父様ーっ!!」

私は私を助けてくれた声、お父様を叫ぶ。
間違いない、お父様だ!

アルシャード 「デウス! 見えるか! こっちだ!」

デウス 「…? く…!」

なんとか視力が戻りつつある。
私は急いでお父様の元に向かった。

アルシャード 「こっちだ!」

デウス 「はい!」

お父様は上へと誘う。
私はお父様に従い上の階へと向かう。

? 「…!」

ヒュン! ガッ!

デウス 「!? 短刀!? しまっ…!?」

突然短刀が投げられズボンの裾に引っ掛かる。
急いで逃げなければ…!

バァッ!

アルシャード 「!? デウス!」

デウス 「な!? なんだこれは!?」

突然、何か布状の物を投げつけられる。
こ、これって…ストール!?

アルシャード 「うおおっ!」

デウス 「きゃあっ!?」

ブォンブォン!

私はお父様に手を引かれ、ズボンの裾を破りながらもなんとか助けられる。

アルシャード 「く…!」

デウス 「立てます!」

私は立ち上がり、お父様と一緒になんとか3階へと上がった。

デウス 「お父様、どうしてここに!?」

アルシャード 「お前なら必ずここへ来ると思っていた」
アルシャード 「だから、ここで待っていたのだ」

デウス 「しかしこっちに逃げても逃げ場を失うだけでは!?」

アルシャード 「大丈夫だ! あれで脱出する!」

3階に着くと窓が開けられており、災害用のスロープがあった。

? 「ふ…!」

アルシャード 「!? もう…!?」

デウス 「あ、危ないお父様!! きゃあっ!?」

ザシュウウッ!!

デウス 「あぐっ…!?」

肩が貫かれた。
痛い、とても痛いが…お父様は…守れた。

ガッシャァァァン!!

アルシャード 「デウスーッ!!」

空が見える。
お父様が遠ざかる…。
視界に赤い液体が見えた。
あ…これは私の血だ…。

そうか…私…窓ガラスを割って…落ちたんだ…3階から…。

ズッシャァァァ!!!



…………。



ピー…ピー…ピー…。

デウス 「う…」

何かの音…テレビで見たことがある…たしか病院の…。

槲 「よかった、目を覚ましたよ…デウスちゃん」

デウス 「ここは…?」

槲 「病院だよ、わざわざ東京のA&Pが経営する病院に入れてくれたんだよ」

デウス 「だけど…身分の証明は…?」

槲 「言ったろ、A&Pの経営する病院、社長の便宜があるからだよ」

デウス 「…そうだ! お父様、お父様は!?」

槲 「主任…主任ね…大丈夫…大丈夫だけど」

デウス 「だけど…? どういうことです!?」

アルシャード 「心配するな、この通り、大丈夫だ」

ガシャン…ガシャン…。

デウス 「お、お父様…その…体は?」

お父様はよろよろと現れる。
その姿に私は驚愕した。

アルシャード 「反応が悪いぞ、どうにかならないのか?」

槲 「無茶言わないでくださいよ、ただでさえ生きているだけで不思議なんですから」

アルシャード 「…まぁ、見ての通り両足は義足、左腕も…だ」

デウス 「ああ…ああ…お父様…お父様ぁ…」

お父様はその両足が義足、そして左腕も義手となっていた。
なんということだ、私が…私のせいで…お父様は…。

アルシャード 「私などまだマシな方さ…」

デウス 「? どういうことですお父様?」

アルシャード 「デウス、今回は多くの人命が失われた…多くの研究員とDOLLがだ」
アルシャード 「その中に…あの子が…含まれてしまった」

デウス 「あの子…まさか、エクスとマキナが!?」

槲 「違うよ…あの子達は帰ってきたこ所、なんとかトゥアにかくまわれて無事無傷で終わった」
槲 「今回我々第2研が失ったのは…」

デウス 「嘘…それじゃ…それじゃ…お姉さまが…?」

槲 「…ああ、そうだ」

デウス 「そんな…うわぁ…うわぁぁぁぁぁっ!!」

アルシャード 「く…!」

どうして…どうしてなの!?
私は五体満足…だけど最愛のお父様はこれだけの犠牲を払い、それでもなおお姉さまという犠牲を出せというの!?
あんまりよ! こんなの…こんなの…!

デウス 「ぁぁぁぁぁっ…!」

私は泣いた。
ずっとずっとこれまで堪えていたものを全て出すように、一生分の涙を出すように。



…………。



…しばらくして、DOLL開発研究施設では今回の事件で失われた多くの命の追悼式が行われた。
私たち姉妹も参加し、冥界へと旅立った皆を見送った。
そして…。

アルシャード 「デウス…デウス…」

お父様の呼ぶ声。
私たち第2研はとりあえず取り壊しになることだけは免れた。
だけど第3研が一時閉鎖。
多くの人命も失い、これからの復興は難しい。
だけど、そこはヨハンが仕切ってなんとか立ち直らせようとしている。

デウス 「はい、お父様」

私はお父様に呼ばれて振り返り、答える。

アルシャード 「デウス…お前の生きる意味は何だ?」

お父様は突然、不思議なことを聞いてきた。
私は少し黙考するが、すぐに答えはやはりこれしかないと思い。

デウス 「私の生きる意味…それはお父様です」
デウス 「私はお父様がいるから強くなれますし、戦えます」

私はそう恥ずかしげもなく答える。
お姉さまがいなくなった以上私が姉妹の姉として第2研を支え、今度こそお父様を御守りする。

アルシャード 「デウス…お前は死ぬな、生きろ」
アルシャード 「それがお前のするべきことだ」

デウス 「お父様…?」

私はお父様も言葉に戸惑いを隠せない。
それではまるで…お父様が死んでしまうように思える。

デウス 「お父様…私は…」

アルシャード 「私は…この国を離れる…全てを忘れて」

デウス 「それは…それでは第2研は!?」

アルシャード 「すまない…責任逃れのようで…しかし、私には辛い…一人でも家族を失ったことが」

デウス 「く…う…お父様…いえ、マスター、私はマスターについていきます、どこまでも…いつまでも」

アルシャード 「デウス…」

デウス 「私は、第2研究室が生んだ、アルシャードシリーズ第2DOLLデウス、あなたの盾であり矛です」

アルシャード 「ありがとう、デウス」



…それからだ、私はただひたすら全ての煩悩を忘れるようにアルシャード様のために出来ることを頑張りだしたのは。
元々私は活発的な方とはいえ、料理や裁縫の方が得意だし、好きな家庭的な女の子だった。
だけど、それまで護身術的な技しか身につけていなかったが、体技も達人になるかのごとく修練を積んだ。
全てをマスターするため、己を鍛えた。
全てはマスターを護る為。

この時、私の中でお父様を守るから、マスターを護るに変わった。



…………。



エクス 「みっはーん! お姉さま、起きろー!」

デウス 「起きている、エクス」

エクス 「みは? 今度はネボスケさんじゃないですね〜?」

デウス 「…嫌な夢を見た」

エクス 「嫌な夢?」

デウス 「8年前のあの事故のこと」

エクス 「あ…」

デウス 「心配するな、エクスもマキナも、当然マスターも護るさ、そのため私は生きている」

私たちは今日、日本へと向かう。
成田空港に着いたら、家へと向かうだろう。
久しぶりの日本…まるで洗礼を受けるかのような気分だな。








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