閃光のALICE




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第4話 『霧島の謎』





キーンコーンカーンコーン。


熊谷 「あ〜、それじゃ今日はここまでだ、学級委員!」

蛍 「起立! 礼!」

学級委員の霧島は今日も学級委員として職務を果たす。
まぁ、何はともあれこれで今日はおしまい、つまり放課後だ。
すでに担任の熊谷の姿もなく、クラスメートたちはそれぞれの目的のために動き出している。

智樹 「さってと、俺はどうしよっかな?」

放課後は学生たちの天国だ。
なんせ、家に帰るもよし、どこか寄り道するもよし、残って友人たちと楽しく会話に花咲かすもよし、そして部活するもよし!
さぁ、放課後 is Freedom〜♪

成明 「ふ、暇そうだな、マイエターナルディアーズよ」

智樹 「うれしくてスクリューはめをしたいくらいだよ!」

今ならできる気がするぜ。
あの頃はダメージが大きいから3発成功すればKOだ。
それを2セット行えば勝ちだ!
Fは決して弱くない!

成明 「ふ、○イル少佐にこりずに挑むか」

そう言って成明をほくそえむ。
ずっとしゃがみっぱなしのがちがちフォームの軍人さんに負けてたまるかよ。

智樹 「それがアーケードゲーマー智樹の定めよ」

成明 「それでこそ、わがエターナルディアーラバーズよ」

智樹 「ちょっとまて! ラバーズってゴム人間じゃねぇか!」

成明 「…それは、本気で言っているのか?」

智樹 「ぬ? なんだよ?」

成明は突然軽蔑したような顔で俺を見る。
ラバーってゴムだろ?
だからラバーズにするとゴム人間…。
あ、これってラバーメン?

成明 「ふぅ…では、教えてやろう」
成明 「エターナル…永遠、ディアー…親愛なる、ラバー…恋人だ」

智樹 「…え? まじ…?」

成明 「ゴムはRubberで、恋人はLoverだ」

智樹 「………」

成明 「Dear eternal lovers, Did you understand?」

智樹 「ちょっとまてー! 恋人だったらなおさら悪いわ!!」

畜生! 恥かいちまったぜ!
これ読んでいる学生諸君も間違えないよう気をつけろよ!?

成明 「はっはっは! すこしお馬鹿な方が萌えるぞ!?」

智樹 「男が萌えてどうすんじゃーっ!!!」

俺は思いっきりまだ残っている学生がいるというのに叫んでしまう。
もはや、周りは慣れてしまってか、むしろ面白おかしく見ているものもいる始末。
まずい、まずすぎる…これでは俺も変態の仲間入りではないか。

成明 「ふ、というわけで久しぶりに格ゲーで対戦といくか?」

智樹 「望むところだ、叩き潰してやるぜ!」

俺と成明はたた、近場のアミューズメントパークに行って、遊んでいる。
ここの管理人たちも大阪時代はアミューズメントパークに行っていた位だ。
近くの100金の店でよくコーヒー牛乳を買っていたものだそうだ。



…………。
………。
……。



智樹 「で、なにをやるんだ?」

俺たちは早速ゲーセンにやってきた。
中は広く、品揃えもいい。
惜しむらくはビデオゲーム1ゲーム100円ということか。
しかし、音ゲーなど大型筐体も100円はありがたい。
最近はやっているのかオンラインゲームも設置してある。

成明 「そうだな、これならどうだ?」

智樹 「ぷ○ぷ○通か…」

格ゲーじゃないじゃん…。
大体なんで通?
フィーバーもあるのに?

成明 「ふ、○ルーのいないぷ○ぷ○に価値などあるか」

智樹 「○ンパイルじゃないしな〜…」

どこか納得するところだな。 やはりぷ○ぷ○に○ルルは必要不可欠だ。
ちなみに管理人は○ラゴノ○ンタウロス、略して○ラコのファンだ。

智樹 「100円払うのはきついがやってやろうじゃないか」

普通ならいまさら通に100円払ってまでやる気は起きない。
しかし、対戦するならちょうどいいだろう。
しかし、問題は成明の腕だな。

智樹 「いっきまーす!」

俺はゲームのヒロイン風に言うと、早速2Pで乱入対戦する。
畜生、1Pは○ルル固定だよ…。
俺のキャラは○ケルトンTかよ…。
○導物語ではDだったよ…。

智樹 「おっしゃー! ○イアキュート!」

1Pではないが○ルルのファンなのでセリフは○ルルだ。
早速4連鎖だ!
成明からまだ攻撃はない!
早速妨害して叩き潰してやるぜ!

1P筐体 「○よえーん!」

智樹 「へ?」

いきなり最高連鎖の響きが…。

智樹 「やば! 思いっきり押し返された!」

送った分まとめて返品されてくる。
しゃ、洒落にならん…しかし、成明の攻撃はまだ終わらない。

1P 「○よえーん! ○よえーん! ○よえーん!」

智樹 「ちょっとまてぇい! いつまで連鎖しとるんじゃー!!?」

気がついたらすでに隕石がマックスまで溜まっている…。

智樹 「オーマイガット…」

結局惨殺されたのは俺のほうだった。
Tでは無理なのか…。

智樹 「畜生、天才にパズルゲームで勝つのは無理か…」

成明 「ふ、俺はポ○で鍛えられた人間だぞ?」

智樹 「お前何歳だよ…これ公開されている年(2006年)で15歳なのに○ンって…」

管理人より年上ですよそれ…。
てか、パズルゲームどころかアーケードゲームの祖かよ。

成明 「当然ながら現役でやっていたわけじゃないぞ」

智樹 「当たり前だ、そうだったらお前は30歳以上ということになる」

成明 「基盤さえ持っていれば家でもできる」

智樹 「基盤って…金持ちめ…」
智樹 「どうせてめぇはあのくそ高い○Sも買うんだろうな」

くそ高い○Sとは正式名称○S3、税込価格62790円の据え置き型ハードだ。
そのユーザーを度外視した値段では○天堂には勝てそうにないが…。

成明 「ふ、あれはまだ安いものさ」

智樹 「それは貧乏人に対するあてつけか?」

成明 「ふ、そうではない、これを見ろ」

そう言うと成明はバッグから携帯ゲームのようなものを出す。
それは古臭く、ちょっと大きい。
てか、小型テレビ?

智樹 「それはなんだ?」

成明 「これは○CエンジンLTだ」
成明 「ちなみに定価99800円だ」

智樹 「きゅ、きゅうまんきゅうせんはっぴゃくえん…」

それはパソコンですか?
下手な家電製品より高いですが?

成明 「よーするに○Cエンジンを携帯ゲーム機にしたものだ」

智樹 「それってすごいよーなすごくないよーな…」

成明 「当時ではすごい」

そりゃ、当時ではね。
てか、99800円って…消費税込みで100000超えるよ…。
それ聞くと○S3って安いのか?
なんだか複雑な気分だな。

成明 「まぁ、これも過去の遺物だがな」

智樹 「てか、なんでお前そんなもの持っているんだ?」

○SPとか○S持っていろっての。

成明 「おや…? あれは、霧島ではないか」

智樹 「ん? あ、本当だ」

見てみると、ビデオゲームコーナーの片隅に霧島の姿を確認した。
今日は部活じゃないのか?
まぁ、漫研なんてあってないようなものだからな。

智樹 「なにプレイしているんだ、霧島のやつ」

霧島のいる辺りはシューテングが置いてあるエリアだ。
霧島とは仲はいいが、高校からの付き合いなだけに知らないことが多い。
俺と似たような趣味持っている霧島だがどんなシューティングをしているんだろうか?

成明 「○ンタ○ー○ーンだな」

智樹 「おお、あのライト感じのゲームは間違いないな」

○ァンタ○ー○ーンとは○ガの名作横シューティングゲーム。
古いソフトだが比較的簡単な難易度やとっつきやすいキャラクターたちで今でも高い支持を持っている名作だ。
てか、ここは○ァミ通じゃないんだぞ…。

成明 「ステージ3のボスだな」

智樹 「あ、○ビーボム一発即死…」

成明 「…しばらくたってステージ4のボスだな」

智樹 「あ、○マートボム3発…」

成明 「…また、しばらく経ってステージ5…」

霧島はゲームをノーダメージのままさくさく進んでいく。
しかも、どのボス相手にはどう戦えばいいかよく理解している。
結局そのまま1コインでクリアしてしまった。

智樹 「クリアしてるよ…」

成明 「う〜む、やはり只者ではなかったな」

蛍 「え…? て、唐沢君!? 神宮寺君!?」

成明 「うむ、奇遇だな霧島よ」

智樹 「霧島って○ァンタ○ー○ーンのマニア?」

霧島はゲームをクリアしてやっと後ろにいた俺たちに気づく。
その時に霧島はこっちまで恥ずかしくなるくらいに顔を赤くしていた。

霧島 「あ、わ、私もう行かないと! いきなりだけどごめんね!」

霧島はそう言うと慌てて店を出て行った。
間違いなく恥ずかしくて逃げたな。

成明 「ふむ、あれが我が高一早いスプリンターの足か」

智樹 「? なんだそれ?」

成明 「知らんのか?」

智樹 「知らないぞ」

成明 「有名だぞ? うちの男子陸上部でも霧島より早く走れる奴がいないというのは」

智樹 「…まじかよ、そんなに足早かったのか?」

普段の霧島の様子からはまるで想像できないな。
どちらかというと霧島のイメージはゆっくりした感じがあるのだが。

智樹 「あれ? これって霧島のカバンじゃ…」

よく見ると○ァンタ○ー○ーンの筐体にひっそり立ててある茶色のカバンがあった。
間違いなく霧島のだろう。

成明 「よし、届けてやれ智樹」

智樹 「なぬ!? 何で俺が!?」
智樹 「大体俺は霧島の家を知らないぞ!?」

言っておくが女の子の家を知っているほど俺は女子と仲良くない。

成明 「心配するな、俺が教えてやる」

智樹 「知ってるならお前が行けよ」

成明 「ふ、私が行くより智樹が行った方が霧島は安心するのでな…」

智樹 (わかっているなら普通にしていればいいだろうに)

まぁ、わかっているからそうなったんだろうが。
ちなみに成明と霧島は中学が一緒だ。
つまり俺より3年霧島と付き合いが長い。
とはいえ、中学の頃は今のような関係ではなく、単に知っている顔程度だったらしい。
どうも俺が因果で友達になったらしいな。

成明 「ほら、この地図を見ればわかるだろう、行ってくるがいい」

智樹 「どこからこんなメモ地図…」

成明はメモ帳を千切って俺に渡してくる。
それには学校周辺の地図が簡略されて描いてあった。
げ…霧島の家って学校はさんだ俺の家の正反対…。

と、言うことは結構遠い。
てか、霧島ってこの街に住んでいたのか。
中学が違ったのにな。
ちなみに成明はこの街ではなく隣町だ。

智樹 「なぁ、お前と霧島って同じ学校だよな?」

成明 「ああ」

智樹 「じゃあなんで霧島はこの町に住んでいるんだ?」

どうしても疑問だった。
この町全体は同じ学校になるはずなのに…。

成明 「霧島はもともとは隣町に住んでいたんだ」
成明 「だが、高校になると同時に電車を考えてこの街に引っ越してきたんだ」

智樹 「引っ越してきたのか」

それは初耳だ。
本当に俺は霧島のことを知らないんだな。

成明 「俺はもう少しここにいる」
成明 「なかったら霧島も大変だろう、持っていってやれ」

智樹 「しかたない…」

俺は本当に仕方ないのでとりあえずゲームセンターを出る。
しかし、ここは家から10分の近場。
霧島の家には1時間近くかかるな…。

智樹 「…明日学校で渡したほうがいいな」

俺はそういう結論を出した。
霧島には悪いが今日はあせってもらおう。
しかし、明日のHR前に渡せば問題ないだろう。

智樹 「というわけで、ごーまいほ−む」

俺は家が近いのでまっすぐ家に帰ることにした。



…………。



智樹 「ただいま〜」

アリス 「……」

智樹 「ただいま」

アリス 「…ん」

アリスはとりあえず玄関で俺を出迎えてくれる。
かな〜り、無表情だがこれはこれでアリスの精一杯の出迎えだ。
ていうか、キャピーっと出迎えられても逆に怖いしな。
真っ先に迎えてくれるだけ嬉しいってもんだ。

ティアル 「あら? 帰ったの?」

智樹 「…少なくともこいつよりましだよな」

アリス 「?」

ティアルは滅多に出迎えてなどくれない。
いつも何しているのか知らないがどうどうとこの家に居座ってやがる。
一応家主(代理)だぞ? こいつ(ら)全然俺を尊敬してやがらねぇ…。

アリス 「? カバンが二つ?」

ティアル 「あら? どうしたのそれ」

智樹 「ん? ああ…」

アリスたちは俺が二つカバンを持っていることに気づく。

智樹 「まぁ、預かり物だ、明日学校に持っていかないといけない」

ティアル 「なんで?」

智樹 「学生にはいろいろあるんだよ」

アリス 「…学生になればわかるのか?」

ティアル 「お金ないから無理ね」

智樹 「わかっているなら働けつーの!」

常識のないアリスならともかく、ティアルはできるだろうが!
親にこいつらの事を言えるわけもなく、ずっと一人分の仕送りだけで3人で生活しているんだ。
これはかなり地獄だぞ?

アリス 「おつかい行ってる」

智樹 「この前、500円で鯛一匹を買ってきたよな?」

俺はいつものカップラーメンを頼んだのだが、アリス一人で行かせた所どういうわけか鯛を丸ごと買ってきやがった。
どこかの欠陥品の親愛なる者じゃないんだぞ…。

ティアル 「この子、とんだわらしべ長者よね〜…」

智樹 「まぁ、結果的には得したんだけどよ」

しかし、問題はティアルもアリスも料理はまるでダメという事だった。
一応、俺ができなくはないがすでにろくなものではなく、無難に刺身にして食べたっけ?

智樹 「はぁ、俺は自分の部屋にいるからなんかあったら呼べよ?」

アリス 「ん…わかった」

ティアル 「たまにはちゃんとした料理食べたいわね〜」

智樹 「じゃ、お前が作れよ!」

ティアル 「作れないから願望しているんじゃない」

アリス 「遠まわしに智樹に期待しているのか?」

智樹 「どっちにしろ無理だな…」

どうして、こうもうちには料理のできるやつがいないのだろうか?
毎日カップラーメンではさすがに飽きてしまう。
アリスは無類のラーメン好きなので苦にしないが、ティアルは真っ先に嘆いていた。
俺でさえきついからな。
一応、味は毎回変えているのだが、安く仕入れるためカートン買いしているから同じ味が溜まる。

智樹 「じゃ、飯までおとなしくしてろよ?」

俺は最後にそう言って2階にある自室に向かうのだった。



…………。
………。
……。



『次の日…』


智樹 「だぁっ! 時計止まっているの忘れてた!」

ティアル 「朝からうるさいわね」

智樹 「い、行ってきます!!」

アリス 「ん…」

ティアル 「道中気をつけてね〜」

智樹はなにやら慌てた様子でカバンを抱えると急いで学校に向かった。
結局おとといからずっと時計の電池を買え換えわすれてあんな調子よね。

ティアル 「ん? カバン?」

私は昨日の出来事を思い出す。
たしか…。

アリス 「ティアル…これ…」

ティアル 「…あのおっちょこちょい」

アリスは昨日智樹が持ってきたカバンを持っていた。 智樹のやつ、思いっきり家に忘れているじゃない。
しょうがないわね…。

ティアル 「届けに行くわよ」

アリス 「学校にか?」

ティアル 「そうよ」

アリス 「ん、わかった」

私はあのおっちょこちょいにカバンを届けに行く。
まったく、散々言っている割には智樹もダメじゃない。



…………。



智樹 「ギリギリセーフ!」

俺は今日はなんとか予鈴が鳴る前に教室に突入する。
最近、こんなのばかりだな。

成明 「おはよう、マイフレンドよ」

智樹 「おう、おはようさん」

むかつくことに教室に入ると成明が真っ先に迎えてくれる。
おかしいな…いつもなら霧島がまっさきにくるのに。

智樹 (ん? 霧島?)

俺はなんか、忘れている気がするんだが?

成明 「で、カバンはどうした?」

智樹 「カバン…あ」

俺は瞬間顔が青くなる。
しまった…家だ。
やべぇ、思いっきり忘れてた。

成明 「やはり、渡していなかったか…」
成明 「まったく貴様というやつは」

智樹 「すまん…」

成明 「俺に謝られても困る、謝るなら霧島に謝るのだな」

俺は本当に申し訳がなかった。
後悔先立たずとはよく言ったものだ。

キーンコーンカーンコーン。

智樹 「げ…鳴った」

なんと、ここでチャイムが鳴る。
そして、鳴ると今日は珍しく担任の熊谷は早く来るのだった。

成明 「なんとか繕ってやるのだ」

智樹 「マイガット…」

俺たちは自分の席に戻るのだった。

熊谷 「あ〜、朝礼、学級委員!」

蛍 「……」

熊谷 「あ〜? 霧島?」

蛍 「え!? あ、き、起立、礼!」

智樹 (めっちゃやばいな…)

霧島はこれでも勝手くらいに絶望的な顔だった。
俺のせいだよな…。

熊谷 「あ〜、それでは1時間目の用意をして待っているように」

やがてHRが終わると熊谷はさっさと教室を退散する。
すると、クラスメートたちはまた席を動いて友達同士談話を始める。
俺はどうすればいいのだろうか…。

クラスメート 「おい! 唐沢! お前に面会したいってやつがいるぞ?」

智樹 「あ?」

面会って、ここは監獄じゃないんだぞ?
いったい、誰だ?

アリス 「…智樹」

智樹 「て!? うっひゃら!?」

俺が席を立とうとした瞬間にはすでに目の前にはアリスがいた。
な、何でアリスが!?

ティアル 「こらアリス! 勝手入っちゃダメよ!」

智樹 「ティアルまで!?」

クラスメートA 「アリス!? ティアル!?」
クラスメートB 「おい! 唐沢! こりゃいったいどういうことだ!?」

智樹 「げ…ちょ、お前ら落ち着け!」

クラスメートA 「馬鹿やろう! こんな状況で落ち着けるか!」
クラスメートB 「俺にも紹介しろ!」

アリス 「…これ」

智樹 「え…? て、これ霧島のカバン!?」

ティアル 「渡したわね、それじゃさっさと帰るわよ」

アリス 「帰るのか? 私はもうちょっと智樹といたい」

ティアル 「迷惑かけたくないなら去るのみよ」

アリス 「…わかった、帰る」

ティアル 「じゃ、わたしはこれで…」

智樹 「あ! 前…!」

ティアル 「え…? きゃっ!」

蛍 「きゃっ! だ、大丈夫ですか!?」

ティアルはよそ見して歩いている間になんと霧島とぶつかってしまう。
わやや…。

ティアル 「!? あなた…!」

蛍 「え? な、なんですか?」

アリス 「どうしたティアル?」

ティアル 「…ごめんなさい、なんでもないわ」

蛍 「あの、こちらこそごめんなさい」

ティアルと謝ると、すぐにアリスと一緒に帰るのだった。

智樹 「と、俺はさっさとこれを霧島に返さないとな!」

俺はそう思うと早速カバンを返しに行くのだった。



…………。



ティアル 「アリス…あの子どう思う?」

アリス 「? あの子って誰のこと?」

ティアル 「ごめん、なんでもないわ」

私は学校でのことがどうにも頭から離れなかった。
自分たちのことで騒がれていたことではない。
あのぶつかった女の子の事だ。

ティアル (なんだったのかしら…? あの子の目を見たとき一瞬DOLLと対峙している感覚だったわ)

でも、そんなはずはない。
あの子の感覚はDOLLというより人間のそれだった。
DOLLにしては人間らしすぎる。
アリスは何も感じなかったし、単に私の思い込みかしら?

ティアル (念のため…もう一度会ってみる必要があるかもしれないわね…)

もし、あれがDOLLなら疑問がある。
DOLLはなんらかの組織に管轄され、行動起こす時しか姿を表には出さない。
だとしたら、あの子は何?
私たちのように組織から抜け出したもの?
でも、それなら向こうも何か反応があってもよかったはず。
私たちの見た目は同じDOLLならすぐにでもわかるはず。

ティアル 「ヤキが回っただけかしら?」

どっちにしても私はとりあえず家に帰るのだった。



『そして、放課後…』


ティアル 「例によっておつかいね、私たち」

アリス 「ん…しかたない」

私たちは買出しのため商店街に来ていた。
本当は智樹も来ているんだけど、ちょっと今は別行動している。

ティアル 「…! 久しぶりね…」

アリス 「…きた」

私たちはDOLLに見られている事に気づく。
この前も商店街だった気がするわね。

ティアル 「例によって智樹をお願いね?」

アリス 「児童公園か?」

ティアル 「あそこが一番戦いやすいでしょ」

とりあえず、アリスには智樹の下に急いでもらう。
智樹は人間なんだからそれこそDOLLに襲われたらひとたまりもない。
私はとりあえず、アリスと別れて走り出す。
今度は誰かしら?

ティアル 「…接近が早い? 商店街でケリをつけたいの?」

別に私たちにはDOLLを察知する能力はない。
でも、常人よりはるかに気配の察知能力に優れている私たちは1キロ2キロくらいなら把握できる。
まして、DOLLは特殊な気配を放つから丸わかりだ。

ティアル 「しょうがない、予定変更」

私は裏路地に入る。
こうなったらここで決着をつけるしかない。



ティアル 「ここ、人はいないけど…まぁ、相手にも条件はおなじよね」

私は人の気配のない、裏路地にいた。
道が狭く、細い通路だ。
戦う条件は同じよね?

青DOLL 「……」

ティアル 「あら正面から…て、また青DOLL…」

正面から堂々と現れたのはくしくもまた青のDOLLだった。
だから、赤の私には相性悪いって…。

青DOLL 「まずはあなたから始末させてもらうわ」

青DOLLはそう言うとアリスの持つような剣を取り出す。
参ったわね、ここじゃ小細工無用じゃない…。

青DOLL 「!」

ティアル 「クッ! キャアッ!?」

青DOLLは相変わらず閃光のようなスピードで襲い掛かってくる。
私は咄嗟に懐にしまっていた二丁銃で防御するが、突進力が違うので吹き飛ばされてしまう。

ガッシアアアアアッ!!

ティアル 「くぅ…痛いじゃないのよ…」

私はすっこんで、尻餅をつきながらそういった。
体中痛いわ。

青DOLL 「とど…!?」

蛍 「そこで何しているの!?」

ティアル 「!? あの子…!?」

突然、後方から少女の声が響いた。
後ろ向くと、今朝会った少女だった。

蛍 「あ、あなた! ちょ、大丈夫ですか!?」

少女は慌てて私に寄ってきた。
てか、どうしてこんなところに学生さんくるかしらね!?

青DOLL 「人間が入ってくるなんて…計算外だったわ」

蛍 「!?あ、あなたこの人に何したんですか!?」

青DOLL 「今日はあったことは忘れて、おとなしく去りなさい」

蛍 「! その言い回し! 悪い人ですね!」

青DOLL 「なんでもいいわ、痛い目にあいたくなかったら言う事をききなさい」

蛍 「そこの人! 逃げますよ!」

ティアル 「え!? ちょ、ちょっと!?」

少女は私の腕を取ると、全速力で走り出す。
ちょ、私より足早いじゃない!!

蛍 「こっちです!」







青DOLL 「…人間に撒かれた?」



…………。



ティアル 「はぁ…はぁ…! ま、撒いたの?」

蛍 「ふぅ…大丈夫ですか?」

ティアル 「あ、あなたよりは大丈夫じゃないわ」

こう見えてもDOLLだけに人間には負けないと思っていたけど、この子DOLLに負けてないわ。
どういう足力しているのよ?

ティアル 「ここ、よく見たら児童公園じゃない…」

なんと、気がついたら、いつもどおり人気のない児童公園に来ていた。
こんなに遠くまで走ったとは、通りで疲れたはずだわ。

ティアル 「あなた、何者なの?」

蛍 「えと、私は霧島 蛍っていいます」

ティアル 「蛍ね…私はティアルよ、苗字はとりあえずないけどしいて言えば唐沢なのかしら?」

蛍 「さっきのはなんだったんですか?」

ティアル 「…悪いけど、それはいえないわ」
ティアル 「私に言えるのはこれだけ、今日あったことは忘れなさいな」

蛍 「そう言われたら余計忘れられません」

ティアル 「そう…しかたないわよね」

さすがに忘れろという方が無理というのは確かでしょね。
もし、私が逆の立場でもそうでしょうね。

蛍 「!? ティアルさんあぶない!」

ティアル 「え…しま!?」

青DOLL 「もらった!」

突然、上空から青DOLLが強襲してくる。
やばい! かわせない!

蛍 「くっ!」

ティアル 「て、へ!?」

青DOLL 「!?」

ヒュン!

突然、視界がぶれた。
気がつくと、さっき立っていた場所から2メートルほど離れた場所に立っていた。
もしかしなくても、蛍が?

ティアル 「蛍…あなた?」

蛍 「だ、大丈夫ですか!?」

ティアル 「私は大丈夫だけど…」

むしろ蛍の方が大丈夫かしら?
今、明らかに一瞬でこっちまで跳んだわよ?
これが縮○?
なんにせよ、人間離れした動きだわ。

青DOLL 「人間…あなた何者かしら?」

蛍 「私は私です! あなたこそどうしてそんな危ないもの振り回すんですか!」

青DOLL 「予定変更だわ…障害とみなしてあなたも消させてもらうわ」

蛍 「うっ…、そんなアニメなことを…」

まぁ、現実的ではないのは確かよね。
てか、被害者増加!?

ティアル 「冗談じゃないわよ! やれるものならやってみなさいよ!」

私は二丁銃を青DOLLに構える。
勝負は一瞬! 近づかれたら終わりだわ!

ティアル 「くらえっ!」

青DOLL 「!!」

私はDOLLに向かって銃を撃つ。
しかし、青DOLLはそれを回避してしまう。
つまり…。

ティアル 「やば!」

青DOLL 「あなたの負けよ!」

思いっきり回避された後、近づかれる。
そしてそのまま上段に構えて私に切りかかってくる。
スピードが違う! 回避は無理!

蛍 「あぶない!」

ドカァ!

ティアル 「蛍!?」

蛍は私を庇ってしまう。
前に出た分斬るというより殴るという当たり方だったが当然蛍はただではすまない。

青DOLL 「計算外だけど、好都合だわ、人間の方からたおれてくれるなんてね」

蛍は一撃で気絶してしまう。

青DOLL 「私たちDOLLは人間を殺傷する事は禁止されているものね」

ティアル 「く…」

でも、DOLLは例外。
万事休すに変わりなし…か。

青DOLL 「さぁ、終わりよ!」

ティアル 「くぅ!」

ガキィン!!

やられた、そう思った瞬間、刃は私の目の前で止まっていた。
いや、正確には別の刃にとめられていた。
こんなことができるものはそうそういない。

智樹 「ふぅ、ギリギリセーフ」

刃を止めたのはアリスと『融合』した智樹だった。

ティアル 「ちょっと! くるの遅すぎよ!」

智樹 「しかたないだろうが、アリスと合流した後、この剣取りに家に戻っていたんだから」

ティアル 「まったく…!」

智樹 「さてと、それじゃ…てい!」

キィン!!

青DOLL 「くっ!?」

智樹は力で敵を吹っ飛ばす。
融合した智樹はアリスの力+αの力を発揮する。
通常のDOLLで勝てないのは道理だ。

青DOLL 「くっ! このっ!!」

智樹 「悪いけど! 一撃で終わりだ!」
智樹 「ハイドロプレッシャー!!」

ガキィンンッ!!

青DOLL 「!? ああっ!!?」

智樹はアリスの必殺技で敵の剣を斬る。
すると、存在を保てないDOLLはその場で光となってしまうのだった。

智樹 「ふぅ…」

キィィィィン…。

智樹 「大丈夫か、ティアル?」

融合を解いて、アリスと別れた智樹はそう聞いてきた。
まぁ、無事は無事だけどね。

ティアル 「私より、この子」

私はそう言って蛍を指差す。

智樹 「げっ!? 霧島!? なんでここにいるんだよ!」

智樹は倒れている蛍を見て、驚く。
そりゃ、クラスメートがいたらねぇ。
しかも、今は気絶中だし。

アリス 「目覚める前に去った方がいい」

ティアル 「ま、妥当ね」

智樹 「い、いいのか?」

ティアル 「見られるマシでしょ?」

智樹 「む…」

智樹は複雑そうな顔をするが、しのごと選んでいられない。
蛍には夢を見たとでも思ってもらいましょう。
というわけ、私たちは家へと帰るのだった。






ティアル 「あ、買い物するの忘れてた」

智樹 「え?」




第4話 「霧島の謎」 完


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