閃光のALICE




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第16話 『恐怖』







『某日 時刻11:40 学校』


キーンコーンカーンコーン。

智樹 「うーし、テスト1日目、終了!」

本日、一学期期末テスト、一日目。
とりあえず、これで終了だ。
採点は…あとは神に祈るしかないな。

智樹 (…はぁ、これから家に帰らないといけないんだよなぁ…)

かつて、これほどまで家に帰りたくないと思ったことはなかった。
家に帰りたくないと思うことには理由もある。
それは今朝のことだった…。



…………。



『同日 時刻06:30 唐沢宅』


智樹 「ん〜! はぁ、今日もいい天気だ」

俺は珍しく早起きして1階のキッチンへと降りてきた。
キッチンにはいつも通り、イェスがいる。
さすがだな、こんな朝早くからもう起きているなんて。
さすがにアリスもティアルもヴィーダも起きてはいないようだが。

智樹 「イェス、おはよう」

イェス 「あら、智樹さん、おはようございます、今日は早いのですね?」

智樹 「ん? ああ…まぁね」

実は早起きしたのにはわけがある。
本日より、テストが始まる。
そう、期末試験だ。
はっきり言って成績の悪い俺はこれの結果次第で夏期講習の可否が決まってしまう。
はっきり言って夏休みに学校へ行くのは痛すぎる!
幸い、ここ最近は成明や蛍、マリオンさんに極めつけ、デウス先生にもご指南受けていた。
とはいえ、相変わらず一夜漬けな俺は結局…『寝ずに』朝を迎えてしまった。
はぁ…眠い。

イェス 「? 大丈夫ですか? 眠そうですけど?」

智樹 「ああ…大丈夫大丈夫…はは」

イェス 「コーヒー淹れますね、座っていてください」

智樹 「ああ…」

イェス 「ああ、あと、これ使いますか?」

智樹 「? 医薬品? なんだ…○眠打破?」

ああ、眠気覚ましか。
一時期、作者も愛用していた一品だな。
効果は結構あるようだ。
カフェインが大量に含まれているからな。
ちなみに、カフェインはコーヒーにも含まれている、いわゆる眠気覚ましだ。
元来はイスラム教の信者が眠気覚ましに愛飲していたのが元祖で、それが十字軍遠征だか、なんだかの時オスマン軍のキャンプの中からコーヒーが発見され、広く普及したとか聞いたことがある。

智樹 「んっんっ! はぁ…なんか効いたような効いてないような…」

まぁ、半分はブラシーボに頼らないと話にならないが。
まぁ、ようは今日の試験の時まで眠気に負けなければいいだけの話だ。
後は気合でなんとかしよう。

ガサッ!!

智樹 「ん?」

突然、庭の方から音がする。
一体、何事だ?
まさか…族? 盗人か!?

智樹 (冗談じゃないぞ…こんな朝早くに…)

俺は恐る恐る庭へと近づく。
そして窓際に立つと…。

ヒョコ!

アーティス 「ぷはぁ…お腹減った…ん?」

智樹 「……」

突然、庭の植木に頭を突っ込んでいた謎の少女が、植木から頭を引っこ抜き、腹が減ったとぼやく。
そして俺と目が合う。

アーティス 「…こんちわ」

…それが、彼女の俺に対する第一声だった。

智樹 (またDOLLかぁ!?)

それは、越えには出せない心の叫びだった。
相手はどこからどう見ても青DOLL。
青い髪の毛が腰まで伸びるストレートヘアーで、目つきはやや幼い。
アリスと特徴が似ているが、アリスとは違った雰囲気があった。
俺はどうやら…DOLLと関わり続ける運命にあるらしい…。

智樹 (問題は敵かどうかだが…)

俺はコッペリアを信じたい。
コッペリアはもうA&Pはアリスを諦めたと言った。
だったら、この娘は刺客ではないということになる。
しかしそれなら…一体…。

智樹 (この娘は何なんだ!?)

ナイツ 「アーティス、勝手に人の家に入っては…あ」

智樹 「……」

ナイツ 「こんにちわ…」

…それは、彼女の俺に対する第一声だった。

智樹 (さらに謎の外国人美人が現れたーっ!?)

なんと、いきなり長身の外国人と思える女性が庭に現れる。
一体、全体どうなっているんだ!?

イェス 「一体、どうしたんです、智樹さん?」

智樹 「あ、イェス…」

そこへ後ろからイェスが現れる。

アーティス 「…DOLL…?」

ナイツ 「!?」

イェス 「え…あなたは?」

ナイツ (なんだ…? こいつ…こいつもDOLLか?)
ナイツ (だが、なぜDOLLがこんな民家に…)

智樹 (わっけわからん…一体、どうなってるんだよ…なんでまた家にDOLLが現れるんだよ…)

もしかして、俺DOLLに呪われているのか?
そうなのか!? やっぱりそうなのか!?

智樹 (てぇすると…この外国人美人は何者だ…?)

現在、イェスを見て驚く、俺より身長の高い(170くらい)の金髪の美人。
訪問販売にでも来たのかスーツを着込み、なんか宝石のイヤリングが耳につけられていたのが気になった。
宝石…サードニクスだっけか…あれ?

智樹 (…ここは慎重にいかねばなるまい…カマ賭けてみるか)
智樹 「お宅、A&Pの回し者か?」

ナイツ 「!? ここでその言葉が出てくる…少なくともA&Pの者じゃなく、そしてA&Pに狙われている者ね」

智樹 (! わぁお、俺の一言で全てを察した感じ…しかし、この人もA&P関係じゃない?)

この女性、何者かは知らないが相当の切れ者のようだ。

ナイツ 「申し遅れたわね、私はナイツ、今はそれ以上でもそれ以下でもない女よ」

智樹 (某大尉のつもりか? って、たぶん言葉どおりなんだろうなぁ〜本当に)
智樹 「俺は唐沢智樹です、一応この家の代理管理人」
智樹 「で、こっちが」

イェス 「あ、イェスです…」

俺がイェスを指すと、イェスは気付いたようにこの女性たちにお辞儀する。

ナイツ 「知っている、本上サーカスの花形スターだからな」
ナイツ 「問題は、あれは染めているのではなく、本当に緑とはな…前例を見るとますますDOLLにしか見えない」

智樹 (…やっぱり、この人もDOLLと関わっちまった不幸な人か…いや、不幸かどうかは人次第か?)
智樹 「…まぁ、敵じゃなさそうだしな…中入ってください、話しあるなら中でしましょう」

ナイツ 「ああ、お邪魔するよ」

アーティス 「……」

智樹 「あ、ちなみに玄関から入ってくださいよ?」

ナイツ 「わかっているさ」

ナイツさんはそう言って体の砂やらなんやらを払うようにズボンをはたくと、玄関の方へと向かった。

アーティス 「……」

智樹 「? 君は…?」

そういや、この少女の名前は聞いてないな。
ずっと黙っていたけど…。

アーティス 「恩に着るわ、お人好しの大馬鹿野郎」

智樹 「んな!?」

その少女は、一言そういうとナイツさんを追って玄関に向かった。

智樹 (な、なんなんだよ一体…)

しかしお人好しって…やっぱりお人好しなのか…。



…………。



そして、10分後。


ナイツ 「改めて自己紹介するわ、ナイツよ」

アーティス 「アーティス…」

俺は…いや、もとい俺たちはキッチンでこの二人を迎えていた。

ヴィーダ 「またDOLLなの〜」

アリス 「…青DOLL…」

ティアル 「金色のDOLLっての初めて聞くけどね…」

ナイツ 「私はDOLLじゃない、人間だ」

ティアル 「ああそう、やっぱりそうよね」

ナイツさんを見てティアルは素でそう言った。
アリスやイェスはDOLLの察知能力が高いのに、どうしてティアルはこう間違えるのか?
ちなみに、補足し忘れたがナイツさんはサングラスをしており、金色のDOLLと言われれば納得してしまいそうなのも事実…。
大尉だけに…金色?

ナイツ 「しかし…この家にこれだけのDOLLが潜んでいるとは…盲点だった」

アリス 「類友?」

ティアル 「また、呼ばなくてもいいもの呼んだわよね〜」

智樹 「俺か? 俺のせいなのか!? もしかしなくても俺のせいでこんなことになったのかぁ!?」

イェス 「智樹さん、落ち着いてください!」

智樹 「いや、落ち着いてはいるんだけどさ…」

…なんていうかなぁ…どうして俺ってやつはこんなにDOLLに囲まれなきゃならんのだ?
人間よりDOLLの人口密度の方が高いなんてどう考えてもおかしいぞ…。
ひとえに俺がDOLLを引き寄せる性質でも持っているのか…?

ナイツ 「しかし、ここはある意味安全そうだな」

智樹 「は…?」

なんだか、とても嫌な予感がする。
ある意味…安全そう…その言葉に…とても嫌な予感がしてならない!

ナイツ 「すまないが、しばらく匿ってくれないか、私たちを」

智樹 「やっぱりそうくるのかー!?」

なんというか、そうなる空気は読んでいたけどさ…結構、生活は困窮しているのよ?
ていうか、これ以上ここの人間増えたらこの家潰れるわ!

智樹 (…ここは誰かに押し付けるべきか…)

蛍…事情は察してくれそうだが、さすがに頼めん…。
白姫先輩…DOLLということで色々世話になっているが、現在地不明だしな…。
成明…存在そのものが危険だ…第一いくら成明でも巻き込むのはまずい…。

智樹 (…結論、逃げ場なしか)

どうやら、俺は本気でお人好しのようだ…。

智樹 「…空いてる部屋ないですけど、それでもいいですね?」

ナイツ 「かまわない、寝るだけならどこででも寝れるわ」
ナイツ 「それに、しばらくしたらこの家も出るわ」

智樹 「そいつは重畳、だけどせめて何者か位教えてください」

ナイツ 「…いいわ、ただし他言無用よ」
ナイツ 「ナイツはコードネーム、とある組織から来たいわゆるエージェントよ」

智樹 「エージェントォ〜? まるで○07とか見たいに見えてきたんだが…」

ナイツ 「殺人許可証はないわよ…愛国者じゃないから」

智樹 (わぁお、そっち系のネタ知っていたのか…)

ナイツ (有名だからね…J・○ンドは…)

しかし、とある組織とな…と、これ以上わけのわからない物と関わっていたらこっちの身が持たん。
組織に関しては知らぬが仏だな。
下手なこと知って、命を狙われたくないからな。
命を狙われる恐怖はA&Pの刺客に襲われて十分知っている。
向こうが休戦を出してきて、やっと平穏が戻ったんだ。
それを崩したくはない。

アーティス 「……」

智樹 「そういや、さっきからボーっとして君はどうしたんだ?」

アーティスと呼ばれる少女は誰かを見て、ボーっとしていた。
その視線の先を見ると…。

アリス 「?」

アリスだった。
アーティスはずっとアリスをじっと見ていたのだ。

アリス 「…?」

アリスは突然、後ろを向いた。

智樹 「て! アーティスをお前を見ているんだっての!」

さすが、アリス…ここでボケるとは。
しかし…。

アリス 「あ…大変だ」

アリスはそう呟くと突然立ち上がる。

アーティス 「あ…」

智樹 「と、どうしたんだアリス? 突然立ち上がって…」

アリス 「時間…今日は開店前から仕込みがあるから」

智樹 「時間…げ!?」

俺はアリスの後方上に掛けてある時計を見る。
時刻はすでに8時5分!?
やば…朝飯食えないぞ!?

智樹 「あ、お、俺学校行かないといけないんで! 家にはいてくれても構いませんから!」

俺はバッグを担ぐと急いで玄関の方へと向かう。
急げばそんなに問題はないが朝飯が…今日はテストだってのに…。

イェス 「あの…! サンドイッチ作りましたから、学校ででも食べてください!」

智樹 「おっ、サンキュ! イェス!」

イェスはそう言って手作りサンドイッチの入った袋を俺に渡す。
こいつはありがたい、急いで学校へ向かい、そこで食べよう。



…………。



智樹 (と、いうことがあって家には思わぬ客人がいるんだよなぁ〜)

再び、今日の放課後…。
俺はテスト1日目を『たぶん』問題なく通過して家へと帰っていた。
大丈夫とは思うが、家に帰ったら家が倒壊していたらどうしよう…。
なんせ、また厄介ごとが増えたみたいだからな…不安にもなるよ。

デウス 「あ、唐沢君」

智樹 「あ、デウス先生」

俺が通学路を歩いているとデウス先生が現れた。
正確にはまだ教育実習生だから、先生ではないのだが…。

デウス 「テスト、どうだったかしら?」

智樹 「い、いやぁ〜…はは、たぶん大丈夫です…はい」

本当にたぶんだ。
とはいえ、これで駄目だったらテスト勉強をした意味がない。

智樹 「先生も帰りですか?」

デウス 「ええ、家にはお腹を空かした妹たちもいるしね」

智樹 「あ、姉妹がいるんですか?」

デウス 「ええ、妹が二人」

智樹 「へぇ、てことは長女なんですね」

デウス 「ううん、次女…姉は…遠いところに行っちゃったから…」

智樹 「あ…」

やべ…まずいキーワード使っちゃったか…?
遠いところって…そうか…。

デウス 「そういえば、唐沢君は兄弟はいないの?」

智樹 「え? あ、俺は妹が一人います、ひとつ下のまだ中坊ですけど」

デウス 「へぇ、ひとりっ子じゃないんだ」

智樹 「つっても、今は家にはいないんすけどね」

妹は現在、イギリスにいる。
父が外交官をやっており、日本にいないので母親と妹は父のいるイギリスへ行ったのだ。
俺は…とある事情で着いて行かなかった…俺だけ、日本に残った。

デウス 「へぇ、それじゃ家にはひとり?」

智樹 「ええまぁ」

…といっても、ホームスティ…てか、居候が一杯いますがね…。

デウス 「よかったら家で昼食食べていく? 電車を使わないといけないんだけど…」

智樹 「いや、折角ですけど」

俺はそこは丁重にお断りする。
非常にお得なお誘いだが、一応家にも帰りを待つ者がいる。
とはいえ、それは人間じゃなくてDOLLだからなぁ…。
いや、一名人間もいるか…ナイツさん。

デウス 「そう、それじゃ明日も頑張ってね」

智樹 「あ、はい」

俺たちはそう言って道を別れる。
デウスさんは駅側へと向かったようだ。
俺はさっさと住宅街を歩き、帰路についた。



…………。



智樹 「たっだいま〜」

ヴィーダ 「おっかえり〜♪ お兄たま〜♪」

智樹 「ただいま、ヴィーダ」

ヴィーダ 「ご飯にする? お風呂にする? そ・れ・と・も〜?」

智樹 「は〜いはいはい、とりあえずお昼ご飯な〜」

ヴィーダ 「ぶ〜! お兄たまノリが悪いの〜!」

ヴィーダに新婚さんみたいなことされても困るっての!
ただでさえ家はなぜか女性人口の方が多いんだから!

俺はヴィーダを抱えると、そのままキッチンへと向かった。

智樹 「ただいま〜」

イェス 「あ、お帰りなさい、智樹さん」

アーティス 「…おかえり」

キッチンへと向かうとイェスとアーティスがいた。
アリスはまだ仕事だな、ティアルもか…あいつどこでどんなバイトしているんだ?

智樹 「ナイツさんは?」

アーティス 「でかけた」

イェス 「今朝時分にどこかへ出かけましたよ」

そう言って、イェスはアーティスを残しと付け加えた。
ふ〜ん、お出かけ中か。
物件でも探しているのか?
できるだけ早く、家を出てもらいたいのは本当だからな。
ただでさえ部屋数足らんからなぁ〜…。
今は共同部屋の状態だし。

イェス 「お昼ごはんの用意をしますから席に座っていてください」

智樹 「うぃ〜っす」

俺はそう言っていつもの席へと座る。
今日はカレーだな…匂いでわかる。
どうも最近カレーの頻度が多い気がするな。
ヴィーダは大好物だからいいが…、俺もイェスのカレーは好きだがな。
ちなみに家の料理は週に1回絶対にカレーとラーメンは入っている。
というか、週1回は少ないくらいだ、平均3〜4回はでている。
まぁ…一週間ずっとラーメンが続いていたあの頃に比べたら相当ましだが…。

アーティス 「……」

智樹 「…? どうした?」

アーティスは普段はティアルの所定席である、俺の向かい側に座り、俺をじっと見ていた。

アーティス 「…本当に変なやつ」

智樹 「……」

いきなり、言う言葉はそれか…?
俺はさすがにもう口を開く勇気はなかった。
こいつ…コミュニケーションを取る気なしか…。

アーティス (なんだったんだろう…あの青DOLL…まるで違う気質を持っていた…)
アーティス (それに…こいつ…なんだ? なんでこんなにDOLLたちが懐いているの?)
アーティス (わけわからない…正体不明の変なDOLLはいるし、正体不明の変なお人好しはいるし、挙句の果てに私を助けたのは正体不明の変なエージェントの女…)
アーティス (…助け、か…助けられた…のよね、施設にずっといたらきっととても悪いことがこの身に振ったと思う…だから助かった)
アーティス (だけど…ここはなに?)
アーティス (なんでこんなにDOLLがいるの? 本当に訳わからいない…)

智樹 (なにうねっているんだ…こいつ?)

アーティスは変な顔してうねっていた。
アリスといいアーティストいい、青DOLLは変なのばっかりなのか?
いや…変なの…というより、何を考えているのかさっぱりわからん。

イェス 「はい、今日は野菜カレーです♪」

ヴィーダ 「カ・レ・エ〜♪」

智樹 「お〜」

本日は野菜カレーだそうだ。
野菜の苦手な子供もカレーなら大丈夫ってやつか。
て、俺は野菜は食えるっつーの!



…………。



『同日 時刻22:15 智樹の部屋』


智樹 「…明日もテスト…明後日も…か」

それが終わったらようやく、テストから開放されるのだね…。

智樹 (夏休みももう少し…夏休みは…何しよう?)

本来ならこの時期、家には俺一人のはずだった。
しかし、箱を開けてみればアリスが家に居候になって、ティアル、イェス、ヴィーダと増えていった。
そして気がつけば、アーティスとナイツさんも。

智樹 (アリスと出会う前はまだ、普通だったはずだ…)

ということは、アリスと出会ったことによって俺は普通じゃなくなった?
少なくとも、DOLLとの出会いは偶然というには多発しすぎではないか?
まるで、誰かに運命の糸を弄くられた結果、俺の周りにDOLLが集まった…そんな感じだ。
いや、多分違う…今日、俺は俺自身がDOLLを集めたと思った。
だけど、考えてみると、俺は単にアリスを引き寄せてしまった。
その結果、アリスがDOLLを呼んだ…こう考えるのが自然のはずだ。
事実、ティアルやイェスは刺客だった、しかし和解しその結果家にいるというのが現状だ。
だけど、蛍のDOLL発覚や、白姫先輩やヴィーダ、そしてアーティスは出来すぎか?
一体これの原因は俺にあるのか…アリスにあるのか…。
ただ、どっちだとしても…今は意味の無い模索だな…。

智樹 (明日のテストも頑張ろう…そして、お休み…)



…………。



『次の日…』


キーンコーンカーンコーン。

熊谷 「おーし、それじゃテストの解答用紙を回収するぞ〜」

…2日目のテストも無事終了。
明日のテストが終われば、ようやくテストから開放される。
今日はそこそこましなはずだ。

智樹 (やはり…たぶんなのが不安だが…)

俺はテスト用紙を回収され、校庭の空を窓から眺めた。
今日も快晴…とはいえ、俺の気分まで快晴とはいかない。
しかしまぁ、今日のテストが終わったことは祝うとしよう。

そしてまぁ、テスト用紙を回収した担任はそのままHRへと入り、終わると解散となるのだった。

蛍 「テスト、どうだった智樹君?」

智樹 「そういう蛍はどうなんだ?」

蛍 「え? 私? 私は…普通…かな?」

智樹 「ほう、普通か、なら俺も普通だ」

もっとも、ここでいう普通は基準が人それぞれだから曖昧だ。
蛍の普通とは…?

成明 「ふ、俺も普通だ」

蛍 「あ、神宮寺君」

智樹 「お前には聞いてない」

成明 「つれないな、マイフレンドよ」

智樹 「…お前、中間のテストの記録忘れたか?」

成明 「ああ、覚えているぞ」

智樹 「全科目98点以上を記録し、この学校の記録を作り出した男の普通なぞ凡人に当てはまるか!」

そう、何を隠そう成明は前回のテストで学年トップを取っているのだ、しかも成績が尋常じゃない。
平均点が99、4…日本全体で見て、最高点だ。
なんでこんなやつが2流の都立高校にいるんだよ!

成明 「今年は全科目トップを目指しているんだがな?」

智樹 (…こいつなら本当にやるだろう)

前回は1問間違えて、たまたま全問正解の他の生徒がいたせいで一科目トップを逃している。
今年は本気で全科目トップを取りそうだ。
本当に一体、なにを考えて2流の普通科の高校へと編入してきたのやら。
学校としては特かもしれんが、共に学校生活をする者としたらただの変なやつでしかないのだが。

デウス 「あなたたち、試験は終わりよ、帰らないの?」

成明 「うむ、俺はそろそろ帰ろう」

蛍 「さよなら、神宮寺君」

智樹 「じゃ、また明日」

デウス先生が現れるとまず、成明が教室を出て行く。
さて、俺はどうするかね。

智樹 「図書室で試験勉強でもしますかね」

まだ、試験中であることに変わりはない。
やはりここは不安を塗りつぶしに行こう。

智樹 「蛍、一緒に勉強するか?」

蛍 「え? あ、ごめん…一緒に勉強したいのはやまやまだけど、今日は家に早く帰らないといけないから」

智樹 「そっか」

蛍 「ごめんね、それじゃさようなら、ルペイン先生も」

デウス 「さようなら」

こうして蛍も消えてしまう。
後は、図書室でひとり寂しくテスト勉強しますかね。

デウス 「…勉強、するのね?」

智樹 「…そりゃ、留年したくないっすから」

デウス先生はちょっと意外そうな顔をしていた。
そんなに俺は勉強しなさそうなのだろうか?
いくらなんでも赤点とって夏休みに呼び出しは嫌だからな。

デウス 「ふふ、先生が勉強見てあげようか?」

智樹 「え? でも、先生はいいんすか?」

デウス 「ふふ、生徒が頑張っているからね、前にも唐沢君には教えたこともあったし」

智樹 「じゃ、ご講義受けますかね」

テストが始まる前…。
テスト一週間前になって俺は焦っていた。
中間テストで赤点2つ…期末では気合でそれを取り戻さないといけなかったからだ。
その時、俺に助け舟を出してくれたのは蛍や成明、そしてデウス先生だった。
とくにデウス先生には英語でお世話になった。
テスト2日目である今日は英語もあったが、結構自信ある。
こういう助力者は素直にありがたいな。

デウス 「それじゃ、図書室に行きましょうか」

智樹 「うぃっす!」

俺はバッグを担ぐと、デウス先生と一緒に図書室へと向かうのだった。



…………。



智樹 「……」

デウス 「…そこは…」

俺はデウス先生にテスト勉強を見てもらいながら、ノートに文字を書いていた。
やや、周囲が気になる。
まぁ…考えてみれば当たり前なのだが…。

デウス 「どうしたの…唐沢君?」

智樹 「いえ…」

周囲がざわめく。
そう、なんせ最近入ってきた謎の外国人実習生とただの一生徒が図書室で勉強しているのだ。
デウス先生だけでも目を引くのに…俺がいるものだからなおだ。
ただし、俺に向けられる視線は殺意に似た敵意だけだが…。
俺、いつか学校で殺される気がする。

智樹 (蛍の時も、白姫先輩の時もそうだった…俺は女絡みになると平穏な生活が送れないのか?)

ひとえに男子人気ランキングでトップ付近にいる蛍や白姫先輩の性もあるが。
いや、蛍はいい…あれは同学年の男子生徒からの視線だけで済んだから。
問題は白姫先輩によってそれがさらに上級生たちを敵に回す羽目に。
そしてついにはデウス先生によって、俺は女子さえも敵に回す羽目になった。
なぜだ…なぜなんだ!?
ただ、普通に親しいだけだろうが!
それがいけないのか!?

デウス 「…唐沢君、本当に大丈夫?」

智樹 「無問題…」

なんだか、デウス先生は本当に心配そうな顔でこっちの顔を覗いていた。
ひとえに皆美人なのが悪いんだよな〜…。
ただでさえ学園アイドルの蛍、転校生の白姫先輩、さらに教育実習生というレアな立場のデウス先生。
話題を掻っ攫うには申し分ない布陣だ。
ただ、その布陣が見事に俺へのとばっちり化しているのが問題だが。
俺は駄目で、成明はいいのか!?
畜生…肩身が狭いよなぁ…。

デウス 「ちょっと、休憩入れましょうか?」

智樹 「はい…」

やがて、一人二人と生徒たちが少なくなっていく。
一体、俺の知らないところでどんな話題が振られているのだろうか。
さすがにリンチは勘弁だぞ?

デウス 「昨日の話だと、妹さんは家にいないって話だけど、海外留学でもしているの?」

智樹 「ん? ええ、イギリスに」

デウス 「へぇ、随分と国際的なのね、妹さんすごいんだ」

智樹 「いや、親父が外交官やっていて、イギリスで暮らしているんで母親と一緒に親父のところに赴任しただけですよ」
智樹 「妹はその事情でイギリスに行っただけ、向こうでも多分日本人系の学校へ行ってるんじゃないですかね?」

デウス 「そうだったの…ということはもしかして唐沢君って一人暮らし?」

智樹 「いやまぁ、2ヶ月前までは完璧一人暮らしだったんすけどね…」

デウス 「あら? 今は違うんだ」

智樹 「まぁ…ホームステイっつうか、ただの居候つーか、いるんすよ…しかも4人」

デウス 「4人!? 随分と多いのねぇ…」

智樹 「ええ、しかも遠慮のないやつらなんで大変なんですよ」

デウス 「ふふ、賑やかそうね…私の家はね父と妹が2人の割と簡素な感じなの」

智樹 「お袋さんはいないんですか? もしかして離婚?」

デウス 「そんなところ」

智樹 「大変そうですね」

デウス 「少しね」

姉が一人いなくて、母親もいないのか。
俺も別の意味でいないが、俺は会おうと思えば国際電話ででも話せるもんな…。
会えないのって…本当に…つらいよな。

デウス 「でも4人も抱えると本当に大変ね」

智樹 「ええ…いや、まぁ…4人までならなんとかなった気もしますけど…」

デウス 「? どうしたの?」

智樹 「奇妙なようですけど…昨日また2人ほど居候が増えましてね」

デウス 「2人も? まさか…ホームレスを拾ってきているわけじゃないわよね?」

智樹 「まさか…ただ、今回は本当にびっくりでしたけど」
智樹 「なんせ、スーツ姿の金髪長身美人ときた時には度肝を抜きましたよ」

付け加えるなら、さらに正体不明のエージェントだということにもだが。
さらにまたDOLLがやってきちまったしな。

デウス 「長身の金髪の美人…まるで映画ね」

智樹 「映画って、そんな展開ありますかね?」

デウス 「あるわよ、きっと」

智樹 「そんなもんすかね」

俺は適当に相槌を打って、会話をきろうとする。
しかし、ちょっと意外なことに。

デウス 「ねぇ、もう一人来たんでしょ? それってどんな人なの?」

智樹 「え…どんなのって…まぁちょっと…ていうか異様に口が悪い女の子なんですけどね…身長は俺より下の癖に」

予想外だな、まさかデウス先生がこんな話題に食いついてくるなんて。
まぁ、別にいいけど…。
しかし、ここからさらにちょっと予想外だった。

デウス 「ふ〜ん、その奇妙な二人ね」

智樹 (…? なにか…雰囲気が…変わった気が…?)

気のせいかもしれない。
ただデウス先生の放つ言葉が少し重みを帯た気がした。
顔を俯かして表情が見えないのが、少し気になるといえば気になった。

デウス 「ねぇ、その二人ってなんて名前なの?」

智樹 「はぁ…? どうしてそんなこと…?」

依然、顔を上げない。
だけど聞いてくる。
別にこの人は関係ないじゃないか…だから言っても言わなくても問題ない。
だけど、なんなんだ…?

デウス 「ちょっと、気になるでしょ…話が盛り上がっちゃったし…」

智樹 「いや…そうっすかね…」

お願い…顔…上げてくれませんか?
どんな表情で言っているんです?
なぜ、食いついてきたんですか…?
言いたい…だけど口に出せない。
言いようのないプレッシャーがなにか俺に押しかかってきている気がした。
気のせいかも知れない。
実際、最近はA&Pの刺客やらなんやらで精神が過敏にもなっていた。
だから、ちょっと雰囲気が変わったように錯覚して、それが変な幻覚を見せているのかも…。

デウス 「ねぇ…なんていうの…名前…」

智樹 「…ツイナとステア、です」

言った…ただし、嘘の名前を。
他言無用…ナイツさんを庇う形になった。
言っても良かったが、ナイツさんに思わぬ迷惑がかかったかもしれない。
だから、嘘をついておこう。
すると、デウス先生は。

デウス 「…そう、素敵な名前ね」

顔を上げ、笑顔でそう言った。
いつも…どおり?
なんだったんだ…あの言いようもないプレッシャーが固形化して、押しつぶすような感覚は。

デウス 「さぁ、勉強を再会しましょうか」

智樹 「…いや、今日はもういいですよ、後は家に帰って勉強します」

デウス 「そう? じゃあ途中までだけど一緒に帰る?」

智樹 「…いいですよ」

…正直、あの感覚はなんだったんだろうか?
デウス先生が、別の恐ろしい生物のように感じた。
まるで殺されるかのような…まるで蛇に睨まれた鼠のような感覚だった。
だけど、今は何も感じない。
やっぱり些細なことに変な印象を持つほど、精神が過敏になっていたのか…?
う〜む、やはり学校生活にヴァイオレンスさはいらないな。

そうして、俺とデウス先生は他愛も無い会話をしながら帰路につく。



…………。



デウス 「私は駅側だから、ここでお別れね」

智樹 「そうですね、さようなら」

デウス 「ねぇ、唐沢君」

智樹 「はい、なんっすか?」

駅側と住宅街を分ける分かれ道。
俺は住宅街の方へと足を向けると、デウス先生に呼び止められる。
俺は振り返ると…。

デウス 「今日、嘘つかなかった?」

智樹 「!? な、なんでそんなことを…?」

デウス 「…どうなの?」

デウス先生が…デウス先生が俺を睨んでいる。
図書室の感覚…。

智樹 (なんで…どうしてそんなこと聞くんですか!? どうして俺を睨み付けるんですか!?)

まるで殺意という名の敵意を喉下に突きつけられた感覚。
一歩間違えれば命を失うぞといわんばかりの警告音が頭の中でサイレンとなって鳴っている。
恐怖…なんで、俺はデウス先生に恐怖を抱かないといけないんだよ!
おかしいだろ…ただ、先生は冗談交じりに言っているだけじゃないか!

智樹 「あっはは…ばれましたか…言いましたよ嘘」
智樹 「本当は家にいるのは6人じゃなくて、5人、さすがに人数多すぎましたね〜て、それでも多いか」

デウス 「…そう、じゃ、さようなら」

智樹 「え、ええ…さようなら」

デウス先生はしばらく表情を変えず俺の顔色を見ていたが、しばらくしてそう言って駅側へと顔向けた。
俺はデウス先生と別れると、走って家へと帰った。



…………。



智樹 「くそ…なんなんだよ…! 一体どうしたってんだよ…先生は!」

俺は家に着くと、自分の部屋で小さく体を屈めていた。
まだ、恐怖感が抜けない。
冗談じゃないよ…たかが言葉の交わしあいでなんで恐怖感を抱かないといけないんだよ…。
明日聞こうか、いや…無粋か、やっぱりあれに確証がない。
気のせいだった。
と、思いたい。

智樹 「少し寝よ…気分を落ち着かせないと」

俺はベットに転がるとそのまま眠りについた。



…………。



イェス 「…智樹さーん! 晩御飯ですよー!」

智樹 「…! ん…? もう夜?」

俺は枕の隣に置いてあった時計を見る。
すでに夜の7時を回っている。
晩御飯か…。

智樹 「今日はなにかね〜」

俺はベットから起き上がり、キッチンへと向かう。



智樹 「…おお、今日はハンバーグっすか」

ヴィーダ 「ハンバ〜グゥ〜♪」

アーティス 「……」

アリス 「ん…肉の塊…」

キッチンに行くととりあえず全員揃っていた。
しかし…ここに全員揃った時の問題が…。

智樹 「席が足らない…」

なんと椅子が一人分足らないのだ。
ただでさえ大人数。
微妙に一人分足りないとは。

イェス 「私は後で摂りますので、先に食べてください」

智樹 「折角の団欒に一緒に食べられないのは難儀だな〜…」

俺はそう言って席に座って食べることにする。
しかしその時…。

トゥルルルルル…!

イェス 「?」

智樹 「と、電話か」

俺は席を立って電話の受話器をとる。

智樹 「イェス、イェスが先に食べといてくれ、俺が後で食べる」

イェス 「はぁ…」

智樹 「はい、もしもし、唐沢ですが?」

? 『唐沢…智樹さんですか?』

智樹 「ええ、そうですが…失礼ですがどちら様で?」

電話の先から聞いたことの無い男性の声が聞こえた。
誰だ…迷惑電話か…?

? 『アーティスという少女を返してもらいたい』

智樹 「!?」

アーティスだって…!?
ど、どういうことだ…一体、何が…!?

? 『アーティスという少女、それにナイツという女性もいないかな?』

智樹 「お前…誰なんだよ!? 何者なんだよ!?」

俺は息を荒げてそう言う。
さすがに食事につくみんなも驚きを隠せない。

ティアル 「ちょ、ど、どうしたのよ!?」

イェス 「い、一体なにが!?」

ヴィーダ 「お、お兄たま怖いの〜…」

アリス 「…ん」

? 『私はルペイン…アルシャード・ルペイン』

智樹 「アルシャード・ルペイン!?」

ナイツ 「!? アルシャード!?」

アーティス 「!」

ピンポーン!

智樹 「!?」

アリス 「呼び鈴…」

突然、玄関の呼び鈴が鳴る。
よりによってこんな時に!

アルシャード 『そのDOLLは返してもらいたい…君たちの生活を侵害しようというわけではない…』

ピンポーン! ピンポンピンポーン!

アルシャード 『事を荒立てたくはない、穏便に…』

ピンポンピンポンピンポン!!

ヴィーダ 「う、うるさいの〜」

けたたましく呼び鈴が鳴る。
たく、相手は何を考えているんだ!?
こっちはこっちで大変だってのに!

智樹 「話はまた今度だ! 野暮用だ、切る!」

俺は電話を切る。
依然鳴り止まない、呼び鈴。
いくらなんでも常識的には思えない。
俺は急いで玄関へと向かった。

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!

智樹 「だぁ、うるさい!」

俺は玄関扉の穴から外を覗く。

智樹 「…? 姿は見えないけど…」

ピンポーン……。

智樹 「あら…鳴り止んだ」

諦めたか…それともイタズラか…。
どっちにしても最悪だ。

智樹 「たく…なんなん…」

俺は扉を開いて一応外の確認をしようとする。
しかし、その時…。

ガッ!

智樹 「な…!?」

扉を少し開いた瞬間、手が扉を掴んだ。
そして、下からが覗き込むようにして一人の女性が俺を見ていた。

デウス 「こんばんわ…唐沢君…」

智樹 「!? デウス先生どうして!?」

俺は咄嗟に扉にチェーンを掛けた。

デウス 「単なる家庭訪問よ…さ、開けて…」

智樹 「家庭訪問って…おかしいでしょ! 今何時だと思っているんですか!」
智樹 「扉から手を離してください!」

俺は必死で扉を内側に引く。
しかし、恐ろしい力で引っ張られ、閉じるどころかチェーンが軋みを上げる。
冷たい目が俺を目を睨み付ける。
言葉にはまるで感情が感じられない。

デウス 「ねぇ…唐沢君、嘘は良くないわ」

智樹 「う、嘘って…!」

デウス 「あなたはふたつ嘘をついた」
デウス 「一つ目は…ツイナとステアという二人の名前…」

智樹 「!?」

デウス 「もうひとつは、5人と6人の嘘…」
デウス 「嘘は駄目よ…智樹君?」

智樹 「離してくれ! それにそれがどうしたって言うんですか!?」

デウス 「どうしたって…? 電話こなかった…? 返して欲しいの」

智樹 「電話…!?」

デウス 「私はデウス・ルペイン…アーティスという少女を返して…ねぇ、智樹君」

智樹 「うわああああああああああああぁっ!!?」

アリス 「智樹!」
ティアル 「智樹、このっ!!」

ガッシャァァァン!!

俺は頭の中がぐるぐると回る感覚だった。
わけがわからない…なぜ、どうしていきなり!?
加勢に現れたアリストティアルのおかげで扉はなんとか完全に閉まった。
だけど、俺の精神状態はズタボロだった。

智樹 「畜生…なんなんだよ…なんなんだよ…なんだってんだよ…!」

どうしてだ…なんで…どうしていつもこんな事に巻き込まれるんだよ!
俺は普通でいたいんだよ…普通にしていたいだけなのに…なんで…なんでだよ…畜生。



…結局、その日俺は晩飯が喉を通ることはなく、ただ死んだように自室で眠りについた。
なにか口にしたのは…深夜たまらなく喉に渇きを感じて洗面台の水をがぶ飲みした位だった。





第16話 「恐怖」 完


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