閃光のALICE




Menu

Back Next





第18話 『TELLER』







『7月某日 時刻15:15 某高等学校』


デウス 「…本日付で私の教育実習生として期間を終えました」
デウス 「皆さんと、別れるのは少し寂しいですが…この1ヶ月の経験を胸に、正式な教育者として働きたいと思います」

パチパチパチパチ…。

テストも終わり、とりあえずひと段落した辺り。
後1週間で夏休みだ、そしてそんな中デウス先生は実習期間を終え、ここを去る。
結局テスト期間中、デウス先生は1日休んだけだった。
皆勤賞ってわけにはならなくなったが…まぁ、関係が正常化してなによりだと。

熊谷 「あ〜、それじゃ、今日は終わりだ」
熊谷 「テスト明けだからってお前ら、羽目はずすなよ〜」

蛍 「起立、礼!」

俺たちは学級委員の合図で席を立ち、礼をした。
そしたら、皆思い様々、さっさと帰る奴、ダチと談笑するやつ様々だ。

蛍 「智樹君…」

智樹 「おう、もう腕は大丈夫なのか?」

蛍 「あ…うん、大丈夫」

俺は蛍の左腕を見てそう言う。
制服はなんとか修繕できたようだったが、あの夜家に帰ってきたときはそりゃびっくりだった。
一体、あの黄DOLLを追って何をしたかはしらんが、いきなり腕から血を垂れ流して尋ねてきやがったからな。
あの時はそりゃ慌てたもんだ。
まぁ、無事期末試験も終わり、蛍も問題ないようで幸いだが。

蛍 「…智樹君、あんまり一人で抱え込まないでね…私だって助けられるんだから…」

智樹 「ああ〜…ん…まぁ、考えとくわ」

正直やっぱり、まだ完全に頼りきれないっていうか…迷惑かけれないっていうか…な。

成明 「おうおう、相変わらずだな、二人とも」

智樹 「お前も、相変わらずだよ」

皮肉なのか、なんなのか未だにわからんが成明にもいい加減慣れた。
こいつ、本当に何考えて行動しとるんだろうな。
実はラスボスなんじゃねぇのか?
て…ゲームじゃねぇっつうの、う〜む、これがゲーム脳?

智樹 「で…これからお前らはどうするわけ?」

蛍 「私は家に真っ直ぐ帰るけど?」

成明 「どうだ、たまには『あそこ』行くか?」

智樹 「ああ、『あそこ』な、いいぜ」

蛍 「『あそこ』って?」

智樹 「ゲーセンだよ」

蛍 「ああ」

蛍は答えを聞いて、納得する。
俺と成明はしばしばこうやってゲーセンに行く。
やるゲームはジャンルはいとわず、シューティング、アクション、パズル、格ゲー、なんでもやる。
ただ、成明に勝てた試しは無いが…。

智樹 「んじゃ、さっさと向かうか」

俺は鞄を持って教室を出る。
蛍も正門までは一緒だったが、そこで別れた。



…………。



ヨハン 「はぁ…どうしたものか」

コッペリア 「大丈夫? 最近無理がたたっているんじゃない?」

私は最近常にため息をついている気がしたヨハンに、さすがに心配になって声をかけた。
一応、姉としては頑張る妹たちを放ってはおけない。

ヨハン 「ありがとうございますコッペリア姉さん、ですが…これは責任者である小生の仕事でございます…」

コッペリア 「アーティスちゃんの件?」

ヨハン 「はぁ…その通りでございます、ただでさえ問題が絶えないというのにアーティスは消息不明ですし…」

アーティスがどこにいるのかは分からない。
まぁ、DOLLを攫ったからといって、A&P以外にはどうにもできないけど…。
問題はアーティスが暴走しないかどうか…。
なにせあのアーティスは調整前のDOLL、精神的に言えば情緒不安定な幼稚園児同然。
何も問題が起きなければいいんだけど…。

ヨハン 「会社の運営もありますし、この施設の管理もあり、更には内外で起こる問題…パンクしてしまいそうですよ」

さすがのヨハンも滅入っているみたいだった。
当然かもしれない、ヨハンは真面目な娘。
何でも率先してこなし、皆のために頑張っている。
だけど根詰めすぎだというのは誰の目からも明らかだった。

コッペリア (なにか手伝ってあげたいけど、私に出来ることなんてたかがしれているし…)

ヨハンのやっていることは、私に手伝えるようなことではない。
残念だけど、何もしてあげることが出来そうに無かった。

槲 「あ、た、た、たたた、大変ですヨハンちゃん! あ、いや副所長!」

そこへ突然、顔を青ざめて第二研の槲主任が走って現れた。
何が大変なのかは分からないけど、顔を青ざめていたことが、大変な事態なのだろうと推測できるようだった。

ヨハン 「一体どうしたのですか、槲さん? 落ち着いてください」

槲 「こ、これが落ち着いていられますかっ! と、とにかく来て!!」

ヨハン 「あ、ちょ…槲さん!?」

なんと槲主任はヨハンの腕をつかむと大急ぎで第二研へと向かうのだった。
私も失礼ながら二人の後を追い、第二研へと向かう。



…………。



槲 「あ…あれ、あれ、あれ!」

槲主任は第二研究室にくると、呂律が回らないまま、研究室の中央でヘタレ込む少女を指した。

コッペリア 「なにこれ…ひどく散らかって…」

第二研は何があったのか、地面を水浸しにし、更に地面一体にガラスの破片が散らばっていた。
よく見ると、壁側に備えてあるDOLL生成培養カプセルが1つ粉々に砕け散っていた。

ヨハン 「…これはまさか…!?」

槲 「そ、そ、そうだよ! あ、あれ…テラーなんだよっ!!」

テラー 「……?」

ガラスが散らばる中、研究室の中央でヘタレ込み、こちらの目を覗き込む一人の少女。
一見白に見えるが、赤にも青にも黄色、緑ににも見えてしまう不思議な瞳と、長く地面に垂れ落ちた髪。
服は着ておらず、そして何を考えているのか分からない表情でこちらの顔を覗き込んでいる。

コッペリア 「あれ…何色?」

私にはテラーと呼ばれる少女の色が特定できなかった。
何色ともとれない不思議なカラー…というか視覚的に言えば、コロコロ色が変わっている気が…?

ヨハン 「む、無色といいましょうか、それとも全色といいましょうか…?」

ヨハンにも特定できないみたい。
なんだろう…こんな色のDOLL初めて見る。

ヨハン 「槲主任、一体どうして?」

槲 「そ、それが僕にもわからないんだ! 突然カプセルを突き破って出てきたんだよ!」
槲 「今までずっと、カプセルの中から出てくることの無かったテラーが突然…!」

ヨハン 「テラー、我々がわかりますか?」

テラー 「?」

ヨハンは優しくテラーに問いかけたが、テラーは理解できていないのか頭に?を浮かべるだけだった。
理解できていないらしい。

ヨハン 「…どういうことなんでしょうか? DOLLは本来カプセルの中で生み出される中、ある程度は学習するはずですが…?」

コッペリア 「無口なだけじゃないの…?」

槲 「わ、分からないけど…この娘なんだか不気味なんだよ…」

不気味…たしかに物言わぬ少女が、裸でずっと座ったままというのはある意味不気味に思える。
だけど、槲主任の怖がり方は異常だ、もっとなにか…?

槲 「あの娘…なんでガラスの破片が散ばる危険な地面に座り込んでいると思う…?」

ヨハン 「は…いえ、なんででしょうか?」

コッペリア 「痛くないのかな?」

いかにDOLLでも刃物で体が切れれば痛い。
でも、テラーちゃんは痛がる様子は無い、いや、それどころか怪我ひとつ無いみたいだけど。

槲 「ふ、普通じゃないんだよ…あの娘、どうやってカプセルから出たと思います?」

ヨハン 「? 状況から察するに、カプセルを突き破ったとしか…」

槲 「その通り…だけど、このカプセルはライフルの弾だって弾く特殊なガラスなんだ! か、彼女はそのガラスを内側からガンガン、ガンガン叩いた!」
槲 「腕が折れ、足が砕け、首がありえない方角に曲がってでも、ガラスを突き破って外に出た! 外に出たとき彼女は生きていける体ではなかった!」

コッペリア 「!? で、でも…見たところどこにも外傷は…」

槲 「そう…ないんだよ…治ったんだよ…短期間に…あっという間に…」
槲 「訳が分からないよ…緑DOLLでもこんな生命力はありえない…どんな大怪我をしようと彼女は生き続けるんだ…」

ヨハン 「そんな…まさか?」

槲 「き、きっとバズーカで吹き飛ばしたって彼女は再生するだろうね…は、あはは…」

コッペリア 「そんな信じられない…」

だけど、現実少女は生身ではどうやっても突破できないガラスを突き破って外に出ている、しかも無傷で…。
だけど怪我がそんなにすぐに治るなんて…。

槲 「そんなに信じられないなら試してみようか…あはは?」

コッペリア 「え…? !? か、槲主任なにを!?」

なんと槲主任はどこからか、包丁を取り出していた。
槲主任は何を考えたのかそれをテラーちゃんに投げつけたのだ。

ドスッ!

テラー 「!?」

テラーちゃんの首に包丁が突き刺さる。
赤い鮮血の血が垂れ落ちる。

コッペリア 「ひっ!?」

ヨハン 「か、槲さん! あなたなんということを!?」

槲 「は……はっははは…よく見てみなよ…テラーを」

テラー 「……」

ずぶ…ずぶ…カラァン!

コッペリア 「!? う…う…そ…?」

テラーちゃんの首から重力に従い包丁が生々しい音を立てて、地面へと落ちた。
どう考えても助からない傷、だけど信じられないのはそこからだった。
喉が掻っ切られたテラーちゃん、だけど、怪我が見る見るうちに再生している…。
やがて、まるで何事も無かったかのようテラーちゃんは体についた血のシミさえ、新陳代謝で新しい皮膚を作り、消し去っていた。

ヨハン 「馬鹿な…不死身のDOLLとでもいうのですか?」

槲 「と、とにかくあの娘不気味なんだ! こ、これ以上第二研では面倒見きれないよ! どうにかしてよヨハンちゃん!?」

槲さんの錯乱する理由。
普段温厚で理知的な槲さんが、ここまで混乱する少女。
正直私も混乱してきている、不死身なんて…本当にありえるの?

ヨハン 「生成失敗のDOLLの塊…まさにさながらゾンビですね…」

槲 「ゾンビなんて生易しいよ…アレはゾンビですらない、数秒後には元の美しい顔を取り戻す化け物だよ……」

ヨハン 「とりあえず、第一研に移しましょう、槲さんは第二研の後片付けをお願いします」

槲 「あ…ああ! た、頼むよ!?」

コッペリア (化け物…か)

化け物と称される少女は、無垢な瞳をし、さっき殺されかけたにも関わらずまるでに微動だにしない不思議な少女だった。
正直彼女がなんなのかは私にはわからない。
何色にも染まらない不思議なDOLL…テラー…か。



…………。



吉倉 「テラー…か」

ヨハン 「カプセルから自ら出て、その後はまったく微動だにしません、ただ生きているだけと言った感じです」

吉倉 「一体、何を求め、この世界に飛び出したんだろうな…」

アルド 「目的があるとすれば、アリス…この一点だろうさ」

ヨハン 「!? アルド殿!?」

コッペリア 「ごめんなさい、ヨハン、お父様」

その日の夜、私は今日会ったことをアルド様に報告した。
アルド様はそれを聞くとニヤっと笑い、私を連れて所長室へとやってきた。
中ではお父様こと、吉倉所長とヨハンがなにやら話し合っていたが、私たちは無断で入ることとなった。

吉倉 「アリス…それはどういう意味だね、アルド君?」

アルド 「DOLL全員にいえることだろうさ、DOLLはアリスを求める、それはDOLLである限りテラーも然りさ」

吉倉 「DOLLである限りか…」

ヨハン 「しかし、それならばなぜ出てこなかったのですか!? 眠り姫と言われたアリスが目覚めてからすでに1ヶ月以上経つのですよ!?」

アルド 「呼応はしていたさ、テラーは目覚めていた…だが、出てくる気がなかったんだろう」

吉倉 「気になるな…なぜだ?」

アルド 「IFの可能性でも見出したんじゃないか?」

ヨハン 「!? あなた…どこでそれを!?」

アルド 「ああん? 何のことだヨハンちゃんよ?」

ヨハン 「い、今IFと!」

アルド 「ああん? ああ…偶然だろ、偶然」

ヨハン (偶然……そ、そうですね、アルド殿が知っているはずが無い…アリス嬢のIFの力のことは)

吉倉 「……アリスへの呼応か…」
吉倉 「しかし、だとするとこれからテラーがとる行動は?」

アルド 「アリスを求めるだろうさ、今は動くためのエネルギーを蓄積しているんじゃねえのか?」

吉倉 「やはりそう考えるべきか…」

ヨハン 「馬鹿な……そんな証拠どこに!?」

アルド 「証拠はねえが、証明は出来るぜ?」
アルド 「明日、テラーをアリスに会わせてみな、絶対になにか反応があるはずだ」

吉倉 「そうだな、ヨハン、明日テラーを連れて唐沢家へ」

ヨハン 「わ、わかりました…しかし、反応があったとしても、その時どうすれば?」

アルド 「その時は暫くアリスの下にでも置いとけ、下手に引き離すと何があるかわからんぜ?」

ヨハン 「……」

アルド 「ひゃはは、じゃ、無断で入って悪かったな、帰るぜ!」

私は最後にペコっとヨハンとお父様に頭を下げ、アルド様に着いて行って所長室から出る。



コッペリア 「アルド様…一体何を考えで?」

アルド 「ひゃはは…面白くなってきぜ、アリスはIFを発現させ、テラーはそれに呼応した」
アルド 「つまり、テラーはIFの力に感応しているんだ…」

コッペリア 「テラーちゃん、あれは一体何者なんですか?」

アルド 「それは、俺にもよくわからねぇな」
アルド 「わかるのはアリスに呼応していたということだけだ、アリスにとって何者かはわからんが、利用できるなら利用するだけさ」

アルド様はそう言ってヒャハハと笑っていた。
何が面白いのかは私にはわからない。
ただ、私が本能で感じていたことはテラーという少女はこの世界に対する警告のように感じていた。
どうして、この世界にIFの力のような過ぎた力が存在するのか?
この世界にとってあの力は必要なのか?
目には見えず、感じることも出来ないIFの力、アレは神のみがもつことを許される禁じられた力ではないのだろうか?
私にはなんだか、過ぎたる力に手を出そうとするこの世界に対する警告のように感じていた。

コッペリア (テラーちゃんはアリスさんにとって一体なんなの?)



…………。
………。
……。



智樹 「な〜んか、また嫌な予感が…す・る!」

そう呟いたのは夜、小便をするため、トイレに自室から向かった時のことだった。
良い勘は当たらないが、嫌な予感はよく当たる、非常に迷惑なことに。
ただ、それがすぐ起きることか明日起きることかはわからない。
まぁ、明日は休日だし、どうせたいしたことはないだろうけど。

ティアル 「くぉらぁぁぁ! まぁた私のプリンぉぉぉぉっ!!!!」

夜だと言うのに、非常に迷惑な騒音が家の中にあることを感じ取る。
はぁ…最近、問題は発生しなかったのに。

智樹 「くぉらぁっ!」

俺はドタドタと足音を立て、1階のリビングで騒ぎを起こす元凶の元へと向かうのだった。

ティアル 「私が楽しみにとっておいた、○appyプリンを!!」

ヴィーダ 「不可抗力なのーっ!!」

ティアル 「じゃぁかしい!! アレが販売されるまでどれほど恋焦がれたとぉ!!」

智樹 「お前ら、今何時だと思っている! 静かにしろ!」

ヴィーダ 「あ、お兄たま! ティ、ティアルが〜!!」

ティアル 「智樹…止めるな! 私の命よりも大切な○appyをそいつは食ったんだっ!」

智樹 「アホか、ていうかお前なんて格好で家の中うろついているんだ…」

ティアルの言う○appyプリンとは、日本各地でゲリラ的に不定期に販売している、非常にレア度の高いプリンでなんと内容量500mlもある迫力満点のプリンなのだ。
アレはヴィーダならずとも、俺でも欲しくなるすばらしい一品だが、ヴィーダはそれを食べたわけだな。
まいったぞ…これの怒りはそう簡単には収まるまい。
ちなみに、ティアルの奴、なぜかバスタオル一枚で裸体を覆う、なんとも目のやり場に困る格好だった。
恐らく風呂上りに食べる予定だったのだろう。

イェス 「あ、あの…プリンなら私が作りますから、冷静に…」

ティアル 「ダメよ! アレは幻の一品よ!? 次いつ食べられるかわからないのに!」

アリス 「○appyがあればハッピーになれるのか?」

智樹 「ん…まぁ、文字通りハッピーだわな…」

あれば…だが。
なにせアレは主にコンビニなどで見かけるが、普通は一日で品切れになる人気商品だからな。
時間帯から考えて…恐らくもう在庫はあるまい。

智樹 「…はぁ、ティアル俺が代わりのプリンを買ってきてやる、だから落ち着け」

ティアル 「○appyに勝るプリンがあるとでも!?」

智樹 「ないかもしれん…だが、ここでプリン抜きと、妥協案で俺にプリン奢られるとどっちがいい?」

ティアル 「う…そう言われると…」

智樹 「さぁ、どうする?」

ティアル 「…わ、わかったわよ! じゃあ奢ってもらおうじゃない! ただし普通のプリンじゃこっちは納得できないわよ!?」

智樹 「わぁってらぁ、ちょっと走って買ってくる。ティアルは着替えとけよ。貧乳がバスタオル一枚じゃ、惨めだぞ?」

ティアル 「んなっ!? 一言多い!」

智樹 「はーいはいはい!」

俺は一旦2階に上がり、出かえる用意をするとまず、一番近場のコンビニに向かうことにした。



…………。



ウィィィィン…。

自動ドアをくぐり、コンビニの冷房に辺り、奥にあるであろうプリンを探しに行く。
スタンダードじゃ納得しねえだろうから、少し高級品をか…畜生、何で俺ってやつはティアルに奢ろうとしているんだろうな。

智樹 「えっとプリンプリン…んんっ!?」

俺はプリンの並べられている棚を見るとそこには、幻ともいえるプリンがあった。

智樹 「こ…これはまさか○appyプリン!? なぜに!?」

店員 「ああ、そのプリンさっき再入荷してね、一度売り切れたんだけど運良く仕入れれたんだよ」

俺の様子を見て、気さくに説明してくれる店員。
なんという偶然か…まさか○appyがあるとは…。

智樹 (いや…これは偶然ではない? 奇跡でもなければ…IFか?)

俺はさっき家での行動、特にアリスの行動を思い出す。
…○appyがあればハッピーになれるのか?
たしか、アリスはそう言った…てぇことはこの再入荷さえも、アリスのIFによる物なのか?
にわかには信じられんが、現に○appyがここにある…そういうことなのか…?

店員 「お買いになるんですか?」

智樹 「あ、買います買います!」

俺は○appyプリンを買うと、急いで家へと帰るのだった。



…………。



智樹 「ただいま〜!」

俺は家へと帰ると、ドタドタと団体さんが俺を出迎えてくる。
アリスたちだ、ご丁寧に全員。

ティアル 「安物だったら怒るわよ?」

智樹 「冗談抜かせ、ほれ」

俺はそう言ってスーパーの袋からプリンを取り出す。
一個当たりかなり重いんで大変だ。

ティアル 「!? ま、まさかぁ!? これは!?」

智樹 「これが食いたかったんだろ? ほれ」

ティアル 「〜〜〜!」

ティアルはプリンを受け取るとワナワナと震えていた。
そして次の瞬間。

ティアル 「智樹サイコー! 愛してるー!!」

智樹 「やめい、暑苦しいっての」

ティアルは大感激で俺に抱きついてくる。
ちゃっかりティアル胸が当たり、感じてしまっているのは内緒だ。

智樹 「これイェスの分、こっちはアリスの分な」

イェス 「あ、ありがとうございます」

アリス 「ん、ありがとう」

俺はアリスとイェスの分も買っていたのでそれを順々渡していく。

ヴィーダ 「ねぇ、お兄たまヴィーダのはぁ?」

智樹 「ヴィーダはティアルの食べたんだろ? お預け」

ヴィーダ 「うう〜」

さすがに甘やかすわけにはいかない。
家の中では穏便にしてもらいたいが、甘やかしはしない。
一応家主として、家の秩序は守らんとな。

ティアル 「今日はプリンフェアじゃー! プリンの日ーっ!」

智樹 「だーかーら、静かにしろっての」

ティアルは2度と見れないと思っていた○appyを見てか、異様なまでのハイテンションになっていた。
すでに時刻は深夜の域に達しており、静かにしてほしいのだがな…近所迷惑だし。



…さて、そんなどうでもいい些細な事件があった次の日の朝、本題はそこから始まるわけで…。



ブロロロロ…。
ガチャリ。

ヨハン 「…ここが唐沢さんの家ですね」

テラー 「……」

ヨハン (アリスさんの住む家の前でも反応無しですか…)
ヨハン 「運転手さん、少し待っていてください」

朝、唐沢宅へとやってきたヨハン。
ヨハンは後部座席から降りると、唐沢宅の呼び鈴を鳴らすのだった。

ピンポーン!



ピンポーン!

智樹 「? 呼び鈴…?」

俺はリビングで朝飯を食っていると、突然呼び鈴が鳴ったことに気づく。

イェス 「誰でしょうか?」

智樹 「行ってくるわ」

俺は朝食のトーストを食べていたが、さすがに呼び鈴がなったのでトーストを皿の上に置いて、玄関の前で待っているはずの誰かを迎えに行くのだった。
今日は土曜で休日だが、一体誰だよ…まだ8時だぜ?


智樹 「はいはーいっと」

俺は玄関の錠を開け、扉を開いて来客を出迎える。

ヨハン 「おはようございます、唐沢殿、朝早くにどうも申し訳ありません」

智樹 「よ、よ、ヨハンーっ!? ちょ…な、なんでここにぃっ!?」

なんと来た客はヨハンだった。
今度は何企んでやがる!?

ヨハン 「そう、構えないでください。小生の方からそちらに何かするつもりはありません」

智樹 「む…、で、一体何のようだ? たまたま近所を通ったから挨拶に来たってわけじゃないだろ?」

ヨハン 「ええ、その通り。実を言うとアリス嬢に少し用があるのですよ」

智樹 「! アリスに?」

ヨハン 「構えない、構えないでください」

どうもこの女からアリスなんて言葉が出てきたら警戒せざるをえない。
いっつも裏でなにか画策してそうで不安なんだよなぁ…。

ヨハン 「用といっても少し会ってもらいたい娘がいるだけなのですよ」

智樹 「会ってもらいたい娘?」

ヨハン 「アリス嬢は居られますか?」

智樹 「ああ、いるけど…」

ヨハン 「是非、ご面会を」

智樹 「……」

なんとも、奇妙な話だった。
アリスに会わせたい娘…DOLLなのか?
なんだか、不穏な気もするがヨハンの意図が全く読めないのも事実。

智樹 「…わかったよ、どうぞ」

結局俺はヨハンを引き入れることにした。






アリス 「……」

ヨハン 「……」

智樹 「……」

テラー 「……」

そして、数分後リビングにて。

ヨハンが連れてきた謎の少女テラー。
テーブルを挟み、謎の少女テラーとアリスが向かい合う。

智樹 (テラーか…DOLL…なのか?)

テラーという少女は基本白ベースに見えるものの、赤く見えたり、青く見えたり、何色にも見える不思議な娘だった。
光学迷彩とでも言えばいいのか…なんとも掴みづらい色合いの少女だ。
そして面会を始めて早5分、言葉一つ飛びあわない。

アリス 「……」(汗)

智樹 「いつまでお見合い続ける気だい?」

テラーという少女にはまるで生気がしない。
ここへ来る際もヨハンに担がれてやってきたし、植物人間じゃねぇのか?
ちなみに、都合上イェス達は2階で待機してもらっている。

ヨハン (5分経過、特にテラーに反応はなしか)

ヨハンは腕時計で時間確認するし、これ意味あるわけ?
一体、アリスがなんなんだ?

ヨハン 「…ここまでとしましょう、唐沢殿、アリス嬢、お忙しいところ誠に申し訳ございません」

ヨハンがそう言うとアリスはようやく緊張から解かれたかのようにしていた。

アリス 「よかった、もうすぐバイトだ、急がないといけない」

智樹 「土曜だってのに大変だな…お帰りは大丈夫か?」

俺はヨハンの方を見る。
テラーの身長は曲がりなりにもヨハンよりでかい。
ちょっとは手伝ってやるか。

ヨハン 「大丈夫です、それよりありがとうございました」

智樹 「いいけど、その娘一体何なんだよ、植物人間か?」

ヨハン 「そのような物です、アリス嬢になら反応を見せるかと思ったのですが…」

智樹 (アリスになら…てのがわからねぇな。なんでアリスなんだ?)

と、突っ込んでいいものかどうか。
個人的には突っ込みたいが、なんだかヨハンからは聞き出せそうにない。
第一ヨハンが言い忘れをするようなタマとは思えない。
何も言わず、アリスに会わせた位だから多分聞いても意味ないだろう。

智樹 「アリスは急いでバイトに行く準備をしろよ、俺はお客さんを玄関に届けるから」

アリス 「ん」

俺はそう言って植物人間テラーちゃんを抱えようとする。

ヨハン 「あ、それは小生が…」

テラー 「…!」

智樹 「うん?」

テラー 「…!」

ギョロ。

智樹 「うおっ!?」

テラーの手を取った瞬間、顔が少しこっちを向いたかと思うと、ギョロっと目が合う。
俺はビビって手を離し、距離を取る。

アリス 「どうした智樹?」

智樹 「こ…この娘とめ、目が合った…び、ビックリしたぁ…死人のような目だもんなぁ…」

ヨハン (まさか?)

偶然だったんだろうが、目が合っちまうだけでびびっちまうとは。

智樹 「え、えーと、失礼?」

俺は自分で言って?になるが、とりあえず断ってテラーの体に触れさせてもらう。

テラー 「…!」

ビクン!

智樹 「うっひゃっ!?」

しかし、触った瞬間痙攣を起こしたかのようにテラーの体が縦に揺れた。

アリス 「こ、今度はなんだ!?」

智樹 「こ、この娘なんなわけぇ〜? なんでこんなホラーチックなの?」

なんだか、さっきからこの娘、俺が何かする度に反応するけど、まじで何者?

アリス 「……」

チョンチョン。

テラー 「……」

アリスが何を考えてか、人差し指でツンツンテラーを突付く。
しかし、テラーはなにも反応しない。

智樹 「……」

チョンチョン。

テラー 「…! …!」

智樹 「ぎゃあっ!? やっぱり俺に反応してんの!?」

テラーは俺が突付くと、それに呼応してビクンビクンと体を震わした。
怖ぇ…マヂで怖ぇ…。

ヨハン (…な、なぜ? なぜただの人間の唐沢殿にテラーは反応を…?)
ヨハン 「ちょ…ちょっと失礼!」

ヨハンは何か慌てて玄関に向かった。

智樹 「えと…アリスは早くバイトに行けよ?」

アリス 「…ん」

とりあえず、仕込みもあるだろうから、急いでアリスを福一に向かわせる。

智樹 「…もしかして、昨日の悪い予感って…これか?」

ふと、昨日感じた悪い予感を思い出す。
あれは、実はティアルの暴走ではなく…こっち?




ヨハン 「えぇ〜、というわけで本部の判断により、暫くテラーを唐沢家に預かってもらいたいでございます」

智樹 「ちょいまち! なに、その勝手な判断!? どいうこと!? ホワイ!?」

さて、いきなり玄関から帰ってきたヨハンはそんなことを言い出すのだった。
なんでよりにもよって、コイツを!?

ヨハン 「まずは、お話を聞いてください、唐沢殿」

智樹 「…ぬ…?」

ヨハン 「我々の推測は、テラーがアリス嬢を求めている物だと思っていました、しかし現実は唐沢殿に反応している」
ヨハン 「テラーには謎が多く、我々には一切なんの反応もせず、こちらも困っておりました」
ヨハン 「しかし、唐沢殿に何故か、テラーは反応を示した、これがどういう意味を持つのか現時点では分かりかねます」
ヨハン 「そこで、暫くテラーの様子をこちらで見てもらいたいのです」

智樹 「理由は察するけどよぉ…そんなこと、飲めるわけねぇだろ…ただでさえ、もう4人もDOLLを匿っているってのに…」

ヨハン 「本音を言えば、唐沢さんに我がDOLL開発研究施設に来てもらうのが望ましいですが、唐沢殿も学校がある…」
ヨハン 「監視カメラを設置して、テラーの反応をモニターしたいですが、それもそちらには困るでしょう?」

智樹 「当たり前だ!」

ヨハン 「そこで…これを」

智樹 「? なんだこりゃ…?」

ヨハンはいきなり懐から、一枚の札のような紙を差し出してきた。
まてよ…これ、なにかで見たことあるような…?

ヨハン 「好きな数字をお書きください」

智樹 「ちょ…!? これ、小切手!? 好きなって…はぁ!?」

そう、それはドラマとかでよく目にする小切手だった。
よく1000万とか、法外な金額がかかれるアレっすか!?

ヨハン 「生活に支障をきたしうることです、こちらからの気持ちです」

智樹 「いや…その…俺ぁ…こんな小切手の金銭感覚なんてわからないんだが…」

正直戸惑う、てか、これ貰うわけにはいかないだろ?
そもそも、引き受けるって言ってないし…。
しかし、それを聞くとヨハンは…。

ヨハン 「なるほど、そうですか…では……」

ヨハンは小切手を取ると、スラスラとペンで何かを書き始めた。
そして、それを俺に差し出してきた。

ヨハン 「これ位が、この仕事の引き受け量としては適切かと」

智樹 「えと…2…で、0が…8つ!? 2億!? ちょ…やりすぎ…!?」

ヨハン 「いえ、我々でも手に余るかもしれない者です、受け取ってください」
ヨハン 「この仕事の成功時には更に+で……」

智樹 「ちょっとまったぁぁぁ!!!」

ヨハン 「? 少なすぎましたか?」

智樹 「そうじゃない!! こんな法外な金額受け取れるか!! 返す!」

ヨハン 「! しかし…それでは……」

智樹 「1週間! 1週間だけだぞ!? テラーを引き受けるのは!?」

ヨハン 「! あ、ありがとうございます唐沢殿…」

正直、2億なんて馬鹿げた金受け取れるわけがない。
とはいえ、ここまでされて断ることも出来ない。
というか、絶対ヨハンはどうやっても食い下がるだろう。
だから、こっちから期限をつけて引き受けることにした。
畜生…やっぱ安請け合いか?

智樹 「テラーに関して、なんか注意事項はあるのか?」

ヨハン 「とくにございませんが…食事は多分必要ないと思います、また生理現象も存在しないかと」

智樹 「なんだ、まるで人形だな…」

ヨハン 「…本来は、そうあるべきなんでしょうね…」

智樹 「あ…」

最近DOLLと人形を別物の意味として解釈していたが、DOLLって直訳すれば人形なんだよな…。
だが、DOLLたちは飯も食えば、生理現象も起こす…そもそも、なんでDOLLなんだ?

智樹 「ひとつ聞いていいか?」

ヨハン 「はい? なんでしょうか?」

智樹 「なんで…お前らDOLLって呼ばれるんだ?」

ヨハン 「…それは」

俺はふとした当然の疑問をヨハンにぶつける。
しかし、ヨハンはなんだか少し悲しい顔をしていた。

ヨハン 「人形であれ。人形のように無垢で、意思に背かず、人間様のために尽くせ…これが、我々DOLLの存在理念です」
ヨハン 「ただ、ひたすらに人形のように順従で、そして人間様のために死ねる存在…その存在理由から我々はDOLLと呼ばれます」

智樹 「…な、なんだよそれ…お前ら、そんなんでいいのか!? お前それでいいのかよ!?」

ヨハン 「少なくとも、私は我がマスターのためならば、いつでも死ぬ覚悟は出来ていますし…それに、DOLLとして生まれ、人のために尽くすことに誇りを持っています」
ヨハン 「あなたに『消された』DOLLたちも、実に優秀な娘たちでしたよ…命令に一切背かず、その命を散らすことにためらいを持たず…」

智樹 「……!?」

ヨハン 「あなたが憎くないといえば嘘になります、大切な妹たちがあなたにたくさん消されたのですから」
ヨハン 「ですが、私はDOLL、人形です。人間らしい感情などDOLLに必要ありません、だから私は上の命令に従い、あなたに友好を示します」

智樹 「死ねって言われれば…死ぬのか…」

ヨハン 「はい、それが命令ならば」

智樹 「……そんなのって…」

聞かなけりゃよかったかもしれない。
DOLLの意味か…あいつらを見ていたら、まるで人形になんて思えなかった。
でも、DOLLは本来、そうでなければならなかった…。
思えば、俺たちが倒してきたDOLLたちは、俺たちと戦うことに躊躇いを持たなかった。
死ぬかもしれないのに、それさえ無視して、向かってきた…あれがDOLLなのか…。

ヨハン 「それで、1週間後、再びテラーを迎えに参ります」

智樹 「あ…ああ…」

俺は玄関までヨハンを送ることにする。



ヨハン 「では…」

智樹 「…なぁ、ヨハン」

ヨハン 「? なんでしょうか?」

ヨハンは外にリムジンを待たせており、後部座席に乗り込もうとしていたとき、俺はそれを止めてしまう。
どうして、ひとつ気になったことがあったからだ。

智樹 「…どうして、DOLLの存在理念を話す瞬間、あんなに悲しい顔をしたんだ?」

ヨハン 「!? そ、それは……」

智樹 「…もしかして、おまえ自身、その存在理念に疑問を抱いているんじゃないか?」

ヨハン 「…そんなこと、あるわけがございませんよ」

智樹 「……」

ヨハン 「いいですか、唐沢殿? 組織は一枚岩でなければならないのですよ」
ヨハン 「私は組織の上に立ち、全DOLLを管理する立場です。組織の上に立つものは下の者に道を示さなければならない」
ヨハン 「もし、私が迷えば、下の者たちは戸惑い、混乱を呼ぶでしょう…そうあってはならない」
ヨハン 「組織の上に立つ者は、なおのこと、人形になりきらないといけないんですよ……唐沢殿」

智樹 「……そうか。悪いな、変な質問して」

ヨハン 「いえ…お待たせしました、運転手さん。行ってください」

ブロロロロロロ…。

ヨハンは車に乗り込むと、車はそのまま走り去ってしまった。

智樹 「ヨハン…存外、あいつも可哀相な存在なのかもしれないな…」

俺はそう呟きながら、家に戻るのだった。
ヨハンは口では自分は人形ですと言っているようだったが、その実中身はまるで助けを請う少女のように感じた。
まるで、自分を強く見せる偽りの仮面をつけているかのような感覚…だった。
だけど、組織のためか…それって個人の幸せを組織の幸せのために捧げるってことなんだよな…。
そんなの…悲しすぎる。






ヨハン (く……どうして、あんなことを唐沢殿に……)
ヨハン (私は人形でなければ…人形でなければならないのに…どうして、どうしてこう感情が渦巻くの!?)
ヨハン (お父様の前とは違う…まるで…DOLLたちの求めを包み込むような…私は、アリス嬢やイェス嬢とは違う…個人の幸せのために組織を売るような真似など出来る筈がない…!)



…………。



『同日 時刻23:35 場所:???????』


アルド 「そうか、テラーは唐沢智樹っていう人間に反応を示したわけか」

巫 「ああ、あたしたちの予想は大はずれなわけだ…」

アルド 「しかしそうすると、テラーはアリスではなく唐沢智樹を求めたってことか?」

巫 「あれだけ、多くのDOLLを引き込んだんだ、ありえる話だけどねぇ」

アルド 「だが、お前の話じゃ、テラーは『DOLLではない』はず…どういうことだ?」

コッペリア (DOLLじゃない? テラーちゃんが!?)

私は、最近毎日のように巫さんのところにやってきた。
ここは…この世界は地面も空もなにもかも黒で埋め尽くされており、いまだここが、どこなのかが分からない。
もしかしたら、ここは私たちの知らない異世界だったり…て、さすがにそれはないか。
ファンタジーじゃあるまいし、異世界なんて。
それより、テラーちゃんがDOLLじゃないなんて、それじゃなにものなの?

アルド 「アンチなんだろ?」

巫 「それは間違いないよ」

アルド 「なんでアンチが、本体に懐かないんだ?」

巫 「さぁ? そこまでは」

アルド 「まぁいい、そろそろ俺も動くからな…」

巫 「いいのかい? やっちまったら吉倉のやつやヨハンが黙っちゃいないよ?」

アルド 「へっ、なんとでもなるさ…すでに、歯車は動き出しているんだからな…」

巫 「そぉかい…へぇ…ようやく、動き出すわけか…止まっていたひとつの時代が…」

コッペリア 「……」

どうにも、アルド様と巫さんの会話には、私には理解できない単語が多すぎる。
アルド様のやろうとしていること…そして巫さんの求めるもの…一体なんなの?

アルド 「巫、お前から貰った『コイツ』は…ありがたく使わせてもらうぜ」

アルド様はそう言って、茶色い手袋を出した。
そういえば、普段は手袋なんてつけないアルド様が珍しく手袋をしていた…。
巫さんから貰った…一体どういうこと?

アルド 「コッペリア…お前には久しぶりに活躍してもらうぜ?」

コッペリア 「…!? それはもしかして…」

アルド 「唐沢智樹…どれほどのやつなのか、見せてもらうぜ…ヒャハハ…」

やはり…やはりこういう事態に。
予感はしていた…私は必ず智樹さんと戦わないといけないという予感は。
そして、それがついに…来てしまったのね…。

コッペリア (智樹さん、ごめんなさい…私は…私は悪い娘です)






第18話 「TELLER」 完


Back Next

Menu

inserted by FC2 system