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第35話 「光の翼」

キイイイイイイィィィ…。

光が私たちを包み、私たちは転移する。


………。


レイナ 「……」
シーナ 「……」

光が収まったかと思うと、私たちは目を開ける。

前にも見た城の中にできた大穴。
モフの死んだ場所。
モフは私たち王家のために、自ら死を選んだ。

シーナ 「……」

レイナ 「さぁ、行きましょう」

私たちは頷き合い、再び大広間に向かった。

レイナ 「……」

何か違和感があった。
確信ではないけど、何か嫌な予感がする。

レイナ 「…シーナ、何か感じる?」

シーナ 「え、何を…?」

シーナは何も感じていない。
私だけなの?

私はその違和感がより一層強くなっていくのを感じた。
その時。

ゴオッ!

レイナ 「何!?」

突如、私の足元から何か黒い水のようなものが私を包み込む。

シーナ 「姉さん!!」

レイナ 「シーナ!」


………。


レイナ 「う…?」

気が付くと、全く知らない場所にいた。

レイナ 「…どういうことなの?」

シーナはいない、パルスも感じないということはかなりの距離を飛ばされたのかしら?
私は周りを見渡す。
見たところ、この部屋は割と広く大広間と同じくらい。明かりは地下室の様に薄暗かった。

レイナ 「どこなのかしら…?」

周りをどれだけ見ても、出口が見当たらない。
完全に閉じ込められた。

レイナ 「まさか…私をシーナを別れさせるために」

声 「気づいたか。まぁ、当然だ」

レイナ 「!?」

聞き覚えのある低い声。

レイナ 「ゼイラム!!」

ゴオッ!

前と同じ登場の仕方で、ゼイラムが姿をあらわす。

ゼイラム 「貴様をここに連れてきた真の理由は、ふたつある」

レイナ 「ふたつ…?」

ゼイラム 「ひとつは、貴様をこちらに引き込むため…」
ゼイラム 「ふたつめは、従わなかった場合のお前を消しやすくするためだ」
ゼイラム 「強制はせん…好きなほうを選べ」
ゼイラム 「生か、死か…」

レイナ 「…私が選ぶのはひとつだけ」
レイナ 「私は生きる…」

ゼイラム 「ほう…」

ゼイラムが驚いたように表情を変える。

レイナ 「私は、死にたくはないもの…」

ゼイラム 「…本気か? それとも芝居か?」

レイナ 「本気よ…嘘は何ひとつないわ」

ゼイラム 「ククク…面白い」

レイナ 「私は、死なない…あなたを倒すもの」

ゼイラム 「成るほど…やはり始末するしかないか」

レイナ 「(シーナ、あなたも頑張って!)」



シーナ 「姉さん…一体どこに?」

いつまでもここにいるわけにはいかない。
姉さんなら、きっと何とかする。
私は決意を新たに、父さんのいるであろう大広間に向かった。

シーナ 「……」

ギイイィィ…

重い扉を開く。
そして、目の前にはふたりの男と女。

シーナ 「父さん、母さん…」

父 「シーナ、よく帰ってきたな」

母 「シーナ、お帰りなさい」

父さんと母さんがやさしくそう言う。
だけど、私にはわかっていた。
それが、本当の笑顔じゃないって。
作られた笑顔だって。
私は、右手にある槍を握り締め、それを構える。

母 「シーナ? 何をするの…?」

シーナ 「母さん、待ってて。今、助けてあげる…」

私は体の中にある力を引き出す。
王家の力。
邪を払う力。
この力なら、父さんも母さんもきっと救える!

シーナ 「はああ!!」

私は槍で母さんの上から切り下ろす。

ガキィ!!

だけど、父さんがグングニルでそれを止める。

シーナ 「父さんっ」

父 「シーナ…可哀想な奴だ、せめて、父の私が安らかに殺してやろう!」

シーナ 「父さんっ!!」



ノーム 「…姉ちゃんたち、大丈夫かな?」

ドリアード 「大丈夫よ、そう信じることが、きっといい結果を生むはずよ」

サリサ 「だけど、そうも言ってはいられないわね」

ノーム 「え?」

サリサさんが、後ろを向くと、何と国の兵士がこちらを囲んでいた。

指揮官 「サリサ・シオーネ! 反逆罪で処刑する!!」

サリサ 「できるかしら? あなたたちに」

サリサさんは軽く微笑んで、そう言ってみせる。

指揮官 「一斉にかかれ! この数でかかれば、いかに将軍といえど!!」

指揮官の声で兵士が一斉に、上から前から横からと俺たちに向かってくる。

ノーム 「ドリアード!!」

ドリアード 「うんっ!」

俺とドリアードは同時に魔法を放つ。

ノーム 「グラビティ・プレス!!」
ドリアード 「グラビティ・プレス!」

ゴゴゴゴゴ…!!

俺たちの周りに強力な重力波が張られる。

兵士達 「がああああ!!」

上に飛んでいた兵士もまとめて地面に落ちる。

指揮官 「く…これが子供の魔力か!?」

サリサ 「さぁ、どうするの? これで私達には近づけないわ」

指揮官 「ぐ…おのれ!」

指揮官は、後ろを向き走り出した。

ノーム 「なんだぁ?」

逃げやがった。
他の兵士はどうしたらいいのかわからずに動揺してる。

兵士 「た、隊長!?」

指揮官 「うるさい! ひとまず退却だ!!」

その声で、兵士全員が後ろを振り向く。
だけど。

指揮官 「ぐわぁ!!」

兵士 「隊長!!」

突然、指揮官が血を吹いてその場に倒れる。

男 「…この程度でよく指揮官などになれるものだな」

サリサ 「氷牙…」

氷牙 「待たせたな、サリサ」

ノーム 「氷牙って、この人が元十騎士の?」

氷牙 「ああ…お前達には感謝している、またこうやってサリサのためにここにいられる」

それを聞くと、サリサさんは頬を赤らめて。

サリサ 「もう…こんなところで何を言ってるのよ」

兵士 「……」

兵士たちは完全に沈黙していた。

サリサ 「さて、後は私の出番ね…」

サリサさんは兵士達に向け、こう言い放つ。

サリサ 「ヴェルダンドの兵士たちよ! あなた達の意思を聞きたい!」

兵士 「サリサ様…」

サリサ 「私たちは、弱き者を助け、悪しき者を挫く誇り高い一族!」
サリサ 「その私たち飛翼族が、なぜこのような意味のない戦いをしなければならないのです!?」

兵士 「サリサ様…」

サリサ 「今、あの邪神ドグラティスが目覚めようという時に、私達が争う必要はないのです!」

ザワザワ…

兵士A 「俺はサリサ様に賛成だ!!」

ひとりの兵士がそう言うと、一斉に他の兵士たちも乗ってくる」

兵士B 「おう! 俺たちもだ!!」

兵士C 「今までおかしいと思ってたんだ!」

ノーム 「何か調子いいなぁ…」

ドリアード 「だって、今まで自分の主人が悪だなんてわからなかったんだから…」

ノーム 「そうだけどね…」

サリサ 「皆…ありがとう、でも今は私でなく、ある人を称えてほしいの!」

兵士 「…?」

兵士たちがざわめく。

サリサ 「私たちの王女、レイナ様とシーナ様が戻ってこられているのです!!」

おおおおお!

その瞬間、兵士たちがざわめきと共に狂喜乱舞する。

兵士A 「あの姫様たちが!?」

兵士B 「うおお! やった!!」

サリサ 「今、姫様たちは、城の中で戦っておられます! 皆の力を貸して!!」

おおおおおお!!

兵士たちは一斉に声をあげ、サリサの周りに集まる。

ノーム 「なぁ、サリサさん…」

サリサ 「何?」

ノーム 「まさか、このまま兵士全員で突入!なんて事はしないよね?」

サリサ 「…どうすればいいと思う?」

サリサさんはそう答えた。

ノーム 「は?」

サリサ 「だから、どうすればいいと思う?」

ノーム 「え? え〜と…」

俺は少し悩んだけど、こう答える。

ノーム 「レイナ姉ちゃんたちに任せるべきだと思う」

ドリアード 「私もそう思います…。だってこれは、レイナさんとシーナさんの手で何とかしなければいけないと思いますから」

それを聞くとサリサさんは納得したように。

サリサ 「今の言葉の通りです! 今私たちにできることは、姫様たちを信じることです!!」
サリサ 「私は信じます! 姫様たちが、必ずこの国を救ってくれることを!!」
サリサ 「姫様たちが、必ず生きて帰ってくることを!!」

オオオオオオオオッ!!!

兵士たちは全員賛同し、勝どきでも上げるように叫んだ。



レイナ 「く…!」

ゼイラム 「ふ…」

圧倒的な魔力の差。
さすがにマジックマスターと呼ばれるだけある…。
私程度の魔力じゃ歯が立たない…。

ゼイラム 「こんなものか…期待はずれだな。もっと、役に立つ力を持っていたかと思ったが…」

レイナ 「……!」

私はバルムンクで上空から切りかかる。

ガキィ!

ゼイラムは魔力の壁でそれを止める。

レイナ 「…いったいどうすれば」

ゼイラム 「そろそろ終わりにするか? 私も忙しい身なのでな…」

ブゥン…

ゼイラムの周りに闇の球体が数個現れる。
そして、それらが不規則に私の方に向かってくる。

レイナ 「何!?」

私はそれを空中に上がってよける。

ギュンッ!

だけど、球体は私を追ってくる。

レイナ 「自動追尾?」

私は、それを剣で切る。

ガキィ!

レイナ 「そんな!」

バルムンクがあっさりと止められる。

ヒュッ!

レイナ 「!?」

ドオンッ!

突如後ろから、攻撃をくらう。

レイナ 「きゅ、球体が攻撃を…?」

ヒュヒュヒュ!

5個の黒い球体が、私の周りを飛び交い、それら自体が魔法で攻撃してくる。

レイナ 「くっ!!」

ヒュンッ! ドオンッ! バアァンッ!!

ゼイラム 「この、シャドー・ビットからは逃げるだけでは破ることはできん」

レイナ 「どうすれば…」
レイナ 「はっ!?」

ドガアッ!

上空からゼイラムが現れ、私を拳で叩き落す。
魔力だけじゃない、肉弾戦も十分強い…。

ゼイラム 「さぁどうする? 後がないぞ…」

レイナ 「!!」

すでに目の前にはゼイラム、後ろにはビットが囲んでいる。
逃げ場はない…。

レイナ (…私の力はこの程度なの!?)

ウラヌス (諦めてはいけません!)

レイナ (!?)

ウラヌス (自分の中に眠る力を信じるのです! あなたならできます!!)
ウラヌス (私がきっかけをあげます…だから、信じて!!)

すると、私の体を駆け巡る『何か』を感じる。

レイナ (何…これ?)

暖かい…そして、大きい。

ゼイラム 「…目を瞑るとは、観念したか」
ゼイラム 「ならば、この一撃で終わらせてやろう…」

キュイイィィィ!!

ゼイラムが右手に魔力を集める。
あれをくらえば、間違いなく消し飛ぶ。

ゼイラム 「さらばだ!!」

ゴウッ!!

そして、それは私に直撃する。

ズドオオオオオオンッ!!!

ゼイラム 「ふ、どうやら余計な時間を…?」
ゼイラム 「な、何!?」

レイナ 「……」

カアアアァァ…

優しく、そして暖かい光が私を包む。
これが、私の中に眠る力。

ゼイラム 「馬鹿な!! レイナの翼が金色に!?」

レイナ (力が溢れる…。一気に開放してはダメ…。少しづつ…少しづつ…)

ゼイラム 「くっ! 私の魔力を上回るというのか!?」

レイナ 「!!」

私は軽く魔力をこめた弾をゼイラムに投げつける。

ヒュンッ!

ゼイラム 「ぐ!」

バチィ!

ゼイラム 「ぬぅ…」

戦える…。
私の魔力が、ゼイラムに通用するっ。

ウラヌス (さぁ、レイナ行きましょう)

レイナ (はいっ!)

ゼイラム 「!!」

私はバルムンクを構え、正面からゼイラムに切りかかる。

ガキィッ!!

ゼイラム 「く…」

さすがに受け止められる。
簡単には勝たせてくれない…。

レイナ 「はぁっ!!」

カキッ! ギィンッ!! ガキィ!!

私は細かく連続で切りつづける。
全て受け止められるが、確実にゼイラムは表情を曇らせている。

ゼイラム 「ちぃ!」

ゼイラムが一歩下がり、炎魔法を繰り出す。

レイナ 「!」

ドオンッ!

私は魔力の壁でそれを止める。

ヒュヒュヒュッ!

爆発の後、私の周りに再びビットが襲い掛かってくる。
その隙にゼイラムは空中に逃げる。

レイナ 「……」

目でビットの動きを全て把握するのは不可能…。
悠のような野生的な勘があれば可能かもしれないけど。
私は、目を閉じて感覚を研ぎ澄ませる。

ヒュヒュヒュッ!

周りをビットが動き回っている。
攻撃に入る…。

レイナ (後ろっ)

ヒュンッ!

私は後ろから来たビットの射撃をかわす。

ゼイラム 「何だと!?」

レイナ (左右から同時)

ヒュヒュンッ!!

次もかわす。
だけど、かわしているだけじゃダメ。
ゼイラムの行動を止めなければ!

ヒュヒュヒュ!

ゼイラム 「ちぃっ!」

レイナ (ビットが後ろから追って来る、攻撃しながらじゃかわせない)

だったら、防御と攻撃が同時にできれば…。
私はそう思うと、魔法を放つ。

レイナ 「ホーリー・ビット!」

私の周りを5個のビットが規則的に起動を描いて回りだす。

ヒュンッ!

バチィッ!

ゼイラム 「!!」

ゼイラムのビットの攻撃は私のビットの防御に阻まれる。
これでどの角度から攻撃されてもビット程度の攻撃力なら相殺できる。
私はビットを纏いながらゼイラムに向かって飛び立つ。

ゼイラム 「つけあがるなぁ!!」

ゼイラムは魔力を両手で集め、それを収束させ、私に向かって放つ。

レイナ 「!!」

私は3個のビットを前方の防御に回す。
残りの2個はゼイラムのビットから守る。

ドオンッ!!

ギュアアアアアアッ!!
レイナ 「くっ…!」

空中で防御形態のまま、押し戻される。
さすがに、辛い…。

ゼイラム 「フハハハッ! このまま消し飛べ!!」

レイナ 「…ビットの攻撃がない?」

気が付くと、ビットは攻撃どころか動いてもいない。

レイナ (…ということは、私のビットと原理は同じ…)

自分の攻撃に集中させすぎて、ビットへの信号が送られてない。
なら、今がチャンス!
私は全てのビットを前方の防御に回し、魔力の全てを両手に集める。

レイナ 「…ホーリー・ブラスターーーー!!」

ピカァッ!

ゼイラムの魔法と、私の魔法がぶつかる。

ガガガガガガガ!!

ゼイラム 「愚かなっ! この私の魔力を押し戻せるとでも思うのか!?」

確かに、このままじゃダメ…。
だけど、これでビットの防御はいらなくなった。

レイナ (今よ! ゼイラムを!!)

私は全てのビットを攻撃にまわす。

ヒュヒュヒュッ!

ゼイラム 「!?」

ヒュンッ! ヒュンヒュンッ!!

ズドンッ! ドンッ!

ゼイラム 「があっ!」

ゼイラムの魔力が落ちた!

私はゼイラムの魔法を横に避け、ゼイラムが体勢を立て直す前に上から切りかかる。

ゼイラム 「!?」

レイナ 「これで、終わって!! シャイニング・クローーースッ!!」

ゼイラム 「ふざけるなぁ!!」

グアアアキィィィッ!!

ゼイラムはこの一撃を魔力の壁で何とか防ぐ。
対して私は、ゼイラムの下になる。

ゼイラム 「死ね! レイナっ!!」

ゼイラムが闇の槍で私を狙う。

ヒュンッ!!

だけど、その時すでに私はいない。

ゼイラム 「残像!?」

レイナ 「ゼイラムーーー!!」

私は背後から、2段目を切りつける。

ズバアアアアァァッ!!!

光と共に、剣閃が十文字に煌く。
手ごたえは…あったっ。

ゼイラム 「ば、馬鹿な…この私が、負けるというのか!?」

レイナ 「……」

私にはもう魔力は残っていない。
もう、飛んでいることもできない…。
私は力が抜け、そのまま真下に落下していく。

ゼイラム 「ぐぅ…レイナ、この借りは忘れんぞ! この私に、2度目の屈辱を…!!」

ゼイラムは消えていった…。
仕留められなかった。

ドサッ!

同時に、私も地面に落ちた。

レイナ 「………」


………。
……。
…。



ガキィ! キィンッ!

シーナ 「はぁ…はぁ…」

私は父さんのグングニルを止めるので精一杯だった。

父 「…もう諦めなさい、お前の力ではどうにもならん」

母 「大人しくしなさい…そうすれば、楽に死ねるわ」

シーナ 「父さん…母さん」

父さんはジリジリと近づく。
母さんは手に魔力を集める。

シーナ (姉さん、ごめん…)

私は諦めるしか…。

ガキィン!!

シーナ (……)

痛みがない。
本当に楽に死ねるの…?
でも、何も感じない…。
呼吸もできる…。
私はゆっくりと目を開ける。

シーナ 「……?」

父 「…これは?」

父さんのグングニルは、白い光を放つ球に防がれていた。

シーナ 「……?」

レイナ 「シーナ!!」

シーナ 「ね、姉さん!?」

レイナ 「大丈夫シーナ!?」

シーナ 「…姉さん」

レイナ 「シーナ…」

見ると、シーナの体はボロボロだった。
ひとりで、お父様たちと戦っていたのね…。

父 「馬鹿なっ…お前はゼイラム様に」

レイナ 「ゼイラムなら、もう引き上げたわ…」

母 「そんな…ゼイラム様を退けた?」

レイナ 「お父様…お母様、やはり…元に戻ってはいなかったのね」

ネイの時と同じ、エビル・プリズナーなのね…。
でも、そうなら、シーナの力で。
私にはもうそこまでの魔力は残っていない。

レイナ 「シーナ! あなたの力を使うのよ!!」

シーナ 「姉さん…」

レイナ 「大丈夫、今なら…」

父 「ば、馬鹿な…」

母 「ゼイラム様が…」

精神が安定していない…ゼイラムが退いたことで困惑してる。

シーナ 「…父さん、母さん…」

父 「あああ!!」

母 「ううう!!」

レイナ 「……!」

シーナ 「今…助けてあげるからっ!!」

シーナは体の魔力を全て解き放ち、白い光でお父様とお母様を包み込んだ。

カアアアアアアアァァァァァッ!!!

父 「おおお…っ」

母 「ああ…」


………。


光が消えたかと思うと、お父様とお母様が倒れていた。

シーナ 「父さん、母さん!!」

レイナ 「…お父様、お母様」

私たちはふたりに駆け寄る。

シーナ 「父さん!!」

レイナ 「お母様!!」

母 「…レ、レイナ」

父 「シーナ…」

レイナ 「…お母様」

母 「ごめんなさい…レイナ」

父 「レイナ…レイナがいるのか?」

シーナ 「父さん…」

父 「レイナ…」

レイナ 「お父様…」

父 「おお…ああ……」

お父様が力なく私に抱きつく。

父 「大きくなったな…レイナ。もう、何年になるか…」

母 「シーナも、立派になりましたね…」

シーナ 「……」

シーナは顔を俯けて泣いていた。
そうよね…やっと、本当のお父様とお母様に会えたのだから…。

父 「…レイナ、シーナ……」

レイナ 「はい」
シーナ 「はい…」

父 「私は…もう長くはない、恐らく、母さんも」

レイナ 「お父様…?」

シーナ 「そんな…」

父 「ゼイラムの魔法によって、私たちは長い間自分を失っていたのだろう…」
父 「そして、すでにその寿命も尽きたのだ…」

母 「レイナ…シーナ…あなたたちには親らしいこともできずに、こうやって辛いことを押し付けてばかりだった」
母 「そんな、私たちを許してくれとは言いません…」

父 「ただ…自分の意志を貫け。国を継げとは言わん…」

レイナ 「……」
シーナ 「……」

父 「シーナ…これを」

お父様は、そう言ってグングニルをシーナに手渡す。

シーナ 「父さん…?」

父 「それは、お前の物だ…お前が扱うに相応しい」

シーナ 「と、父さん…」

父 「さ、最後に…お前たちの姿が見れたのが嬉しかった……」
父 「わたしたちは、信じているぞ…」

母 「あなたたちが…きっと、世界を救ってくれることを……」

父 「あの、広い空から…見守っているぞ…」

母 「ありがとう…私たちの、娘たち……」

そう言って、ふたりは糸の切れた人形のように、私たちの腕の中で力を失った。

シーナ 「う…」
シーナ 「うわあああああああぁぁぁぁっ!! 父さぁん、母さぁぁぁん!!!」

レイナ 「……ぅ」

私たちは泣いた。
ふたりの亡骸を抱きしめて…。


………。
・……。
…。


サリサ 「……」

ノーム 「…遅いな」

ドリアード 「…うん」

氷牙 「…どうやら、終わったようだな」

氷牙兄ちゃんがそう言うと同時に、上から声が聞こえる。
すると、城のテラスにレイナ姉ちゃんとシーナ姉ちゃんがいた。

レイナ 「…たった今、ヴェルダンド王と王妃は息を引き取りました」

サリサ 「!!」

兵士たちがざわめく…。
ちなみに、サリサさんの考えで、国中の人がこの城の前に集まっている。

シーナ 「でも、この国は救われました!!」

おおおおお!!

レイナ 「ヴェルダンドの兵士たちよ…ヴェルダンドの民たちよ、お父様とお母様がいなくなってしまったけれど、安心して!!」

シーナ 「私たちが…ヴェルダンドの王女として、この国を支えます!!」

うおおおおおおっ!!

ヴェルダンドの民は大歓声を上げる。
悲しみと、歓喜の入り混じった歓声。

こうして、私たちはこの国に戻った…。



サリサ 「行かれるのですか…」

レイナ 「ごめんなさい、ああは言ったけれど、私は悠たちと一緒にいたいの…」

セリス 「止めはしません…姫様がいない間は、私が何とかいたします」

レイナ 「ありがとう、サリサ…」

シーナ 「…私は残るわ」

レイナ 「シーナ…?」

シーナ 「私は、この国の王女だし、どっちかがいないと、この国の皆がきっと不安になるもの…」

レイナ 「……」

シーナ 「それに…」

レイナ 「……?」

シーナ 「この国には…クルスがいるから……」

最後の所は霞んでいた。
涙をこらえているのだろう…。
私たちは大事な物を失いすぎた・…。

モフ…。

クルス…。

お父様、お母様…。

レイナ 「わかったわ…押し付けるつもりじゃないけど、お願い」

シーナ 「わかってる…でも、安心してね」

レイナ 「え?」

シーナ 「きっと、助けに行くから!」

最後に、シーナは笑顔でそう言って、サリサと共に城の中に消えていった。


レイナ 「……」

ノーム 「レイナ姉ちゃん…」

ドリアード 「レイナさん…」

レイナ 「…さぁ、帰りましょう! 皆の所へ!!」

ノーム 「おう!」
ドリアード 「はい!」

こうして、私たちはヴェルダンドを後にした。
新しい自分と共に…。



…To be continued



次回予告

悠 :再び集まった仲間たち。
新たな仲間、失った仲間。
様々な感情の中、ついにユミリアさんの口からひとつの言葉が発せられた。


次回 Eternal Fantasia

第2章 『伝説の武具を継ぐ者達』
完結


第36話 「邪神軍、動く」

悠 「俺たちは、絶対に勝つ!!」



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