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第44話 「シオン王子、愛の告白!?」

………。
……。
…。


ウィル 「……?」

ふと眼が覚める…。
天井がある。
ここ、どこ?
あたしはゆっくりと体を起こす。
頭が多少重かったが、何とか体を起こすことに成功する。

ウィル 「………」

数秒間ぼうっとする。
現在の状況がいまいちわからない。
少なくとも毛皮の毛布とかで寝てたことにより、客室か何かと言うことは想像できた。
でも、何でこんなとこで?

ガチャ

突然、ドアが開く。
すると、見慣れた顔が見えた。

ルナ 「あれ、起きてたの?」

ウィル 「ん…なんか頭がガンガンするけど」

ルナ 「やばそうだったら、寝てた方がいいよ?」

ウィル 「う〜ん、まぁ動けないほどじゃないけどね」
ウィル 「ところでここどこ?」

今いちばん知りたいのはそれだ。

ルナ 「バルザイル城よ」

ウィル 「ふぅん、バルザイル城ね…」

バルザイル城…。
確か、獣人たちが多く住んでるところよね。
あたしたちは確かヴェルダンドにいて…。

ウィル 「ん? ヴェルダンド…? ここはバルザイル」


………。


数秒間沈黙。

やがて、今の状況を理解する。

ウィル 「何で、バルザイルなんかにいんのよ!?」

あたしは突然ルナに食って掛かる。
不意打ちに驚いたのか、ルナは対応が遅れた。

ルナ 「って、知らないわよ! 私だって疑問よ!!」

ウィル 「何それ!? 他の皆は?」

ルナ 「だから、知らないって! ここにいるのは私たちと他数名だけ!」

ウィル 「なんか、説明端折ってるわねぇ…」

? 「ったく、何ボケてんだ?」

その時、別の声が部屋の中に響いた。

ウィル 「フィリア! どういうことなの?」

私がそう聞くと、フィリアは呆れた顔で。

フィリア 「…飛ばされたんだよ、ここまで」

ウィル 「はぁ? 何で?」

ルナ 「だから、離れ離れになったの!!」

ウィル 「あ〜、う〜、つまり…他の人たちはどうなって?」

フィリア 「知るか…。今はそれどころか、こっちの身も危ないんだぜ?」

フィリアはそう言って部屋を出て行く。

ウィル 「何よ…なんなの?」

ルナ 「とりあえず、謁見の間に集まりましょ…皆いるらしいから」

あたしは疑問を持ちつつも、ルナに着いていく。


………。
……。
…。


シオン 「ああ、皆さん来ましたか…」

謁見の間の前でシオン王子が待っていた。
あたしたちはシオン王子の前に集まる。

ウィル 「で、結局今どうなってるの?」

あたしが出会い頭そう聞くと、シオン王子は難しそうな顔をする。

シオン 「まぁ、まずは陛下に会うのが先です」

そう言って、シオン王子は扉を開けて中に入る。

ウィル 「あれ? バルザイル王って確か亡くなられたんじゃ?」

ルナ 「もう…ディオ君がいるでしょ」

ウィル 「ああ…そういえば」

少し生意気なガキんちょね。

フィリア 「…ホントにお前がいると緊張がなくなるな」

フィリアが微笑してそう言う。

ウィル 「うるさいわね…これが素なのよ」

ルナ 「まぁ、この位のムードメーカーがいてもいいかもね」

ウィル 「そうそう…気楽にいきましょ」

ルナ 「気楽過ぎるのも問題よ…」

こうして、あたしたちは中に入った。


中は見た目からして豪華で、両脇の壁際には兵士がずらっと並んでいた。
あたしたちが入った時点で注目が一気に集まる。
少し視線が痛い…。

シオン王子がディオの前まで歩くと、膝を落とし頭を下げて敬礼する。

シオン 「ディオ陛下、今集まりました」

ディオ 「敬語はいらないぜ…? 堅苦しいし…」

ディオは何だか疲れた様子でそう答える。

シオン 「いえ、騎士たる者、礼儀を重んじなければなりません」

シオン王子は型を崩さない。
まぁ、確かに堅苦しいわね。

ディオ 「…シオンだって王子だろう」

ディオは苦笑するしかなかった。

フィリア 「いいんじゃねぇか? シオンはこういう奴だよ」

フィリアがシオンの肩をぽんと叩いて、そうフォロー(?)する。
すると、シオン王子はびくっと立ち上がって、フィリアの前で頭を下げる。

シオン 「い、いえっ…そのっ、フィリア王女が嫌がられるのなら…そ、その」

あからさまに、赤くなってる…。
純情ね〜☆

フィリア 「あ、いや…別に気にしなくてもいいぜ?」

フィリアは困ったようにそう答える。
フィリアも男には免疫少ないみたいね…♪

ルナ 「ウィル…何かあくどい事考えてない?」

どきっ

相変わらず鋭いわね…腐れ縁の賜物ね。

ルナ 「顔に出てるわよ…」

ウィル 「……」

知らず知らずの内に笑ってたらしい。
それ以上はその話題に触れないで、あたしは本題を切り出す。

ウィル 「で、結局現状どうなってるの?」

シオン王子ははっとなり、いつもの調子に戻った。

シオン 「はい、現状我々は孤立した状態です」
シオン 「他の部隊も恐らく同じでしょう」
シオン 「今の状態、我々は窮地ということです」

ウィル 「どう窮地なの?」

あたしは詳しく尋ねる。

シオン 「敵に囲まれている状態です」

ウィル 「マジ…?」

あたしもさすがに焦る。
それは本当に洒落にならないわ。

ウィル 「大群なの?」

シオン 「およそ邪獣が数百といった所ですか」

あたしはそれを聞いて呆れる。

ウィル 「ここの軍は?」

ディオ 「兵士全員を集めても百がいいとこだな」

ウィル 「絶望的ぢゃん…」

ルナ 「でも、何とかしないと…」

フィリア 「考えてもしょうがねぇよ…打って出ようぜ!」

シオン 「無理です…囲まれている以上。城が落とされればほぼアウトです」
シオン 「かと言ってこの戦力差で戦力を分散させては…」

ウィル 「邪獣は大将がいないと動かせないのよ? ということはどこか近くに大将がいるってこと」

ルナ 「そっか! ウィル頭いい!!」

ルナも気づいたらしい。
さすがあたしの相方ね。

シオン 「成るほど…敵隊長を落とせば勝ち」

ディオ 「なら簡単じゃねぇか! やろうぜ!!」

ウィル 「ちなみに、大将がどこにいるかなんてのはわからいわよ? あたしはレイナじゃないんだから」

一気に場が沈む。

ウィル 「ああもう!! 沈まないでしょ! 暗いでしょ!!」
ウィル 「とりあえず、敵はまだ攻めてこないの?」

シオン 「近づいています…もうすぐこの国に到達するでしょう」

時間がないわね…でも行き当たりばったりじゃ今回はダメだわ。

あたしが難しい顔をしていると、ルナが話し始める。

ルナ 「多分…敵隊長は南から来てると思う」

ウィル 「何でわかるの?」

ルナ 「なんとなく…シェイド姉さんのおかげでわからない?」

ウィル 「ん…?」

あたしは少し考えて、集中してみる。

ウィル 「んん…? あれ?」

ルナ 「気づいた?」

ウィル 「ああ…成るほど」

他一同 「?」

ウィル 「南よ! 多分間違いないわ!!」

ディオ 「全然わからねぇよ…」

ウィル 「いいから! いくわよ!! 怖気づいたの?」

あたしがそう挑発すると、ディオはすぐに乗ってきた。

ディオ 「上等! やったろうじゃねぇか!!」

ウィル 「よっし、出撃ーーー!!」

こうして、あたしたちは南に出撃した。
他の方角からの敵は兵士に任せた。


………。
……。
…。


ある程度進んだ所で、気配を感じた。

ウィル 「いるいる…でも森の中だと動きにくいわね」

ルナ 「でも贅沢は言えないわ」

ウィル 「同感」

あたしは覚悟を決めて大将のいるであろう方角に向かって走る。

ウィル 「邪魔よ!!」

ドガァ!!

前方の邪獣を撃破しながら進む。
一体どこまで行けばいいのか…。

ディオ 「俺も行くぜ!!」

ドオオオオオンッ!!

ディオの一振りで数十の邪獣が一気に消滅する。
さすがに伝説になるだけあるわね…頼りになるわ。
あたしとディオはこの調子で進んでいく。

フィリア 「皆どけっ!! 道を開く!!」

あたしたちはその声を聞くと左右に散開する。

フィリア 「くらえーーーー!!」

ギュアアアアアアアァァァッ!!!

瞬間、アルテミスの矢が敵陣を真っ二つに切り裂く。
そして、見えた!!

ウィル 「覚悟してもらうわよ!!」

敵隊長 「よくここに気づいたな」

シオン 「あれはまさかシグマ!?」

ルナ 「王子、知ってるの?」

シオン 「悠君から聞きました。闇の邪獣…強敵です」

ウィル 「成るほど…あの面子相手に生き残ったのね。確かに強敵だわ」

ディオ 「知ったことじゃねぇ! 強かろうが叩き潰す!!」

そう言って、ディオがバルカンをシグマ向けて空中から振り下ろす。

シグマ 「!!」

ドオオオオオオンッ!!!

爆音。
炎が当たりに溢れ、周りの邪獣が消滅する。

ウィル 「こらっ! 危ないでしょ!!」

ディオ 「だったら姉さんは退がってくれ!!」

ウィル 「あんただけじゃ無理よ!!」

あたしはディオを援護しに行く。


ルナ 「くっ!」

ドオンッ!

私は魔法で襲い掛かってくる邪獣を倒すが、孤立した状態になる。

ルナ 「このままじゃ…援護が」


フィリア 「くそっ! 邪魔だ!!」

シオン 「はあっ!!」

俺に向かってくる敵をシオンが全てエクスカリバーで薙ぎ払う。

シオン 「フィリア王女! 周りは私に任せて下さい!!」

フィリア 「すまねぇ! 頼むぜ!!」

俺はアルテミスを構え、シグマめがけて放つ。

ギュアアアアアアアッ!!

シグマ 「……」

ゴウゥッ!!

ウィル 「イリュージョン!?」

フィリア 「くそっ…」

ディオ 「畜生!!」

ドオオオオオンッ!!

ディオの攻撃は一向に当たらない。
その上、邪獣が限りなく襲ってくる。

ウィル 「ディオ! 退がりなさい!!」

あたしはシグマに向かって突っ込む。

シグマ 「むぅ!」

シグマは槍であたしを攻撃するけど、あたしはそれをかわす。
そして、懐に入り込み、拳を振るう

ドゴッ!

シグマ 「ぐ…」

ウィル 「げほぉっ!!」

ルナ 「ウィル!!」

あたしはシグマの膝蹴りを浴び、空中に浮く。
なんてタフなのよ…。
あたしはそのまま魔法を放つ。

ウィル 「…っ、ライト・ボール!」

ドンッ! ドオンッ!!

だがシグマはそれをひとつひとつ防御する。

ディオ 「いまだ! くらえーーー!!」

動きの止まったシグマに向かってディオは斧を振り下ろす。

シグマ 「ちぃ!!」

ドオオオオオオンッ!!

爆音。
だが、シグマは立っていた。

ウィル 「嘘でしょ…」

フィリア 「俺がとどめを刺してやる!!」

だが、その時俺の真上から邪獣が襲ってくる。

フィリア 「!?」

シオン 「フィリア王女ーーー!!」

ドシュッゥ!!

フィリア 「シオンーーー!!」

シオン 「ぐぅ…!」

シオンは身を投げ出して邪獣の攻撃を体で受け止める。
シオンの血が俺の体に降り注ぐ。

シオン 「シグマを…!」

俺はその言葉を聞いてシグマを狙う。

フィリア 「うおおおおおおっ!!」

アルテミスの矢は一直線にシグマを襲う。

シグマ 「……!!」

ウィル 「逃がさないわ! レイ・プリズム!!」

カアアアアアァァッ!!

光の結界がシグマを包み、動きを封じる。

コオオオァァァァァッ!!!

アルテミスの矢がシグマを貫く。

シグマ 「ぐ…!!」

その瞬間、邪獣は時と共に消滅した。


………。


ウィル 「……」

さすがに消耗した。
全員傷だらけね。

ルナ 「大丈夫? 今回復を…」

ウィル 「いいわ! それよりもシオン王子を!!」

ルナ 「あ…うんっ!」

気づいてルナはシオン王子に向かって走る。
あたしは、シグマの方に向かう。
まだ息はあるわね。

ウィル 「……」

シグマ 「何か用か? 敗者に語るべきことなどあるまい」

ウィル 「慰めの言葉でもかけて欲しい?」

あたしがそう言うと、シグマは微笑し。

シグマ 「無用だ…」

小さくそう答えた。

ウィル 「…何で、逃げなかったのよ?」

あたしはそう聞いた。
どうしても納得がいかなかったから。

シグマ 「それが我らの使命だ」

ウィル 「負けるのがわかってて…戦う必要なんてあると思うの?」

シグマ 「そんなことは教えられていない…ただ、戦うだけだ」

ウィル 「生きればいいのに…生きているんだから」

シグマ 「私にはデルタのような生き方はできん」

シグマそう答えると、目を閉じる。
死が近いのだろう…。

ウィル 「…やりもしないうちから、諦めてるようじゃ、未来はないわよ…」

あたしはそれだけを言って、去った。


ディオ 「姉さん…」

ディオは気を利かせてくれたのか、それ以上は何も言わなかった。



フィリア 「シオン! しっかりしろ!!」

ルナ 「フィリア離れて!」

私は全力で回復魔法を放つ。

ルナ 「ブレス・ライト!!」

パアアアアァァァァッ…!

白い光がシオンを包み、シオンの傷は塞がる。

シオン 「う…」

フィリア 「よかった、無事か…」

ウィル 「シオン王子が死にたくないって思ったからよ」

ルナ 「ウィル! ディオ君!」

あたしは小さくてを振って、そのままその場に座り込んだ。

ルナ 「…機嫌悪いの?」

ウィル 「何でわかるのよ?」

ルナ 「何年、一緒にいると思うの…? それぐらいわかるわよ…姉妹同然なんだから」

ウィル 「さすが、まいしすたーね…」

あたしはふざけてそう言う。

ルナ 「その位、ふざけてた方がウィルらしいけど、それじゃ男は寄り付かないわよ〜」

ウィル 「ふんっ、だ」

あたしが膨れると、ルナは笑ってシオン王子たちを見る。


フィリア 「ったく、無茶はすんなよ?」

シオン 「い、いえっ! フィリア王女を守るためならば!!」

ウィル 「………」

臭すぎ…。
ルナも笑いをこらえている。

ディオ 「もっと素直になったらいいじゃねぇか…シオン王子」

シオン 「は?」

フィリア 「あのなぁ…」

その時、意を決したのか、シオン王子が真剣な顔つきで(赤い顔で)フィリア王女を見据える。

フィリア 「……」(汗)

シオン 「フィリア王女!! 私はあなたを愛してしまいました!!」

ウィル 「………」(汗)

直球ね。
男らしいわ…。

フィリア 「あ〜、え〜っと…」

ディオ 「フィリア王女も、素直になったら? 嫌いなら嫌いでもさ…」

ざくっ

シオン王子があからさまに沈む。
あたしはディオの耳を掴んで、引き寄せる。

ディオ 「痛たたたたっ!!」

ウィル 「(無神経…)」

ディオ 「(姉さん! ギブギブ!!)」

ディオがタップしてあたしは耳を離す。


フィリア 「…いいよ」

シオン 「え?」

フィリア 「馬鹿やろう! 何度も言わせんなっ!! 俺も好きだっつてんだろっ!!」

うわぁ〜、台無し…。
まぁ、フィリアらしい告白ね。

シオン 「ほ、本当ですか!?」

フィリア 「…まだ言わせるか?」

シオン 「い、いえっ! 申し訳ありません!!」

シオンは歓喜の嵐か、感情を抑えられず、真っ赤に顔を染める。

ウィル 「あ〜あ、羨ましいわねぇ〜♪」

そこであたしが茶々を入れる。

ルナ 「今のウィルじゃ当分縁のない光景ね」

ディオ 「まぁ、仕方ないよな…」

ウィル 「………」
ウィル 「…どうせ、私はひとり身よーーーーーっ!!!」

その叫びがバルザイル王国に鳴り響いた。


やがて、飛空挺に乗った仲間たちと合流し、あたしたちは事なきを得た。


…To be continued



次回予告

シーナ:気がついた先は暗黒の地ゼルネーヴ。
襲いくる邪獣相手に、数の少ない私たちは絶望に瀕していた。
氷の邪獣オミクロン。そして、オーラマスターのマーズが…。
そして、仲間たちが帰ってくる。
最終決戦は近い。

次回 Eternal Fantasia

第45話 「REQUIEM」

シーナ 「…もうすぐ、戦いが終わる」



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