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第10話 「MVP」

ワァァァァ!!!

ウォーズ 「歓声起こる、ここテラ・フォース特別闘技館!! 今まさに、死闘の予感が!?」


ユウ 「………」

俺は控え室で準備を済まし、しばらく気を休めていた。

ユウ 「………」

バルとの闘い。
戦争中、一度闘ったことがあるが、実際決着はついてない。
お互いに、本気でやりあったことはないのかもしれないな。
そして、控え室のドアが開かれる。

役員 「ユウ先輩、時間です!」

1stの役員が、俺を呼びに来る。
俺は覚悟を決め、立ち上がる。

ユウ 「…わかった!」


………。


カツーン…カツーン…

廊下を歩く足音がやけに響く。
去年は、こんな大それた企画じゃなかったし、俺とバルは去年の闘いでも、多分本気じゃなかった。
いや、俺は本気のつもりだった…。
だが、バルはあの時すでにアイズに操られていた…。
あいつが本気を出していたら、俺はどうなっていた?
多分、大事件だ。
俺が覚醒するのが怖かったんだろう…だから、バルを偵察に出した。
…だが、今回はお祭りのようなものだ。
戦争でも何でもない…ただのお祭り。

ユウ 「…と言っても、ただでは終わらんな」

役員 「先輩、何か言いました?」

ユウ 「ひとり事さ」

役員 「頑張ってくださいね先輩! 応援してますよ!!」

ユウ 「ありがとよっ」

そして、闘技館の扉が開かれる。


ワアアアアアァァァァァァ!!!

ウォーズ 「お聞きくださいこの大歓声!! まさに学校中の生徒が叫んでおります!!」
ウォーズ 「それもそのはず! このユウ・プルート選手は何と、あの邪神ドグラティスを倒した勇者!!」

ユウ 「………」(正確には、俺やレイナ、そしてユシルさん、オメガにヴェイルさん…皆で、だがな…)


男子生徒A 「ユウ、頑張れよー!! 絶対勝てよ!!」
男子生徒B 「お前が一番だーーー!!」
男子生徒C 「先輩、ファイト!!」


ユウ 「………」

俺は拳を上げ、声援に応える。


ウオオオオオオオオオッ!!!

ウォーズ 「さぁてぇ! こちらも大声援!! 対するは、ユウ選手と共に戦場を駆け抜けた戦友!!」
ウォーズ 「バルバロイ・ロフシェルだぁ!!」


ユウ 「………」



バル 「………」

バルは何も言わず、黙然としたまま俺の前まで歩く。

女子生徒A 「バルバロイさんー! 頑張ってー!!」
女子生徒B 「先輩! 勝って下さいね!!!」
女子生徒C 「そんな男、やっつけちゃえ!!」


男子生徒A 「ざけんなぁ! ユウ! その色男をぶちのめせ!!」
男子生徒B 「生きて返すなぁ!!」


ユウ 「………」

バル 「何か言いたそうだな?」

ユウ 「…こんなに疲れる模擬戦は初めてだ」

バル 「お互いにな」

ユウ 「まぁいい…こんな形だが、決着をつけるには丁度いいかもな」

バル 「ふっ…」


ウォーズ 「さて、今回の模擬戦では、予め用意されている武器で戦ってもらうものです」
ウォーズ 「今回は両者共に剣で戦うようです」
ウォーズ 「ちなみに、使われる武器の全ては刃引きの物で、余程のことがない限りは死ぬことはないでしょう」
ウォーズ 「なお、このコロシアム型の闘技館には客席に被害が及ばぬよう、特殊なエレメント・コーティングが施されており、一切の魔法は客席には届きません」
ウォーズ 「ルールは無制限、どちらかが戦闘不能か、ギブアップするまで!!」
ウォーズ 「そして、今回のジャッジはユミリア先生にお願いいたしました!」



ユミリア 「…ふたりとも準備はいい?」

ユミリアさんがいつのまにか、俺たちの間に立っていた。

ユウ 「…いつでも」

バル 「…構いません」


………。


一瞬、場が静かになる。


ユミリア 「始め!!」

ユミリアさんの号令により、闘いは始まる。

ユウ 「……」

バル 「……」

俺たちはお互いに剣を構え、様子を伺う。


………。
……。
…。


そして、そのまま1分ほどが経つ。

ユウ 「…と言っても、動かなきゃ意味ないよな!!」

俺は両手持ちで上段の構えから一気に振り下ろす。

ドガァ!!

俺の剣は地面を叩く。
バルは剣を右にかわしていた。

バル 「!!」

バルはそこから俺の顔面に向かって剣を薙ぐ。

ガキィ!

俺はそれを気を帯びた手で掴む。

ユウ 「…バル、手加減するな」

バル 「…ふ、のようだ」

俺たちは仕切りなおし、剣をぶつけ合う。

ガキィ! キィン!! ギィィィ!!


ウォーズ 「これは凄い!! とてつもない接戦になっています!! 互いに剣の力は五分か!?」

バル 「……」(いや、五分ではない、力は多少負けているな…)

ユウ 「…へあっ!」(速度で負けてる、力押しで勝てるか!?)

俺が1回切れば、バルが2回切る。
このままじゃ埒があかねぇ…。
俺はバルの剣撃を打ち流し、魔法を放つ。

バル 「炎魔法か!?」

バルはそれに感づき、一旦離れる。

ユウ 「フレア・バーストォ!!」

ズッドオオオオオンッ!!!

爆音。
俺は多少加減しながらも、魔法を放った。

バル 「…ふ」

ユウ 「野郎…! 無傷かよ」

どうやら、相殺したようだな。

俺は魔法を交えながら剣を片手で振るう。

ガキィン!! ドォン!! ギンッ!! バァンッ!!

爆発音と金属音が入り混じる。
もう何分経った? 段々と疲労の感が強くなってきた。
だが、それは向こうも同じはず…。

ブンッ!!

ユウ 「何ぃ!?」

突然俺は空振りする。
確かに捉えたと思ったのに!?

バル 「……」

ブンッ!!

ユウ 「くっ!?」

俺はバルの剣撃をかろうじてかわす。
考えてる暇もねぇ!

俺は今度こそ狙いを定め、棒立ちのバルに剣を…。

ブォンッ!!

ユウ 「!?」

突然、俺の頬をバルの剣が掠める。

ユウ 「……!!」(何なんだ!?)



エイリィ 「ユウの動きがおかしい…?」

ルーシィ 「どういうこと、エイリィ?」

エイリィ 「わからないわ…でも」

ジェイク 「さっきまでの動きじゃないな」

ガイ 「何かあったのか?」

ジョグ 「何や、途端にバルのペースになってきたな」

アリア 「…電磁波よ」

ポール 「電磁波…? 機械などが放つあれですか?」

ピノ 「…電磁波」

アリア 「そうよ、バルバロイはユウ君にばれないよう、地面を伝って除々に電磁波を浴びせたのよ」

ガイ 「それで、どうなるんですか?」

ルーシィ 「身体機能の低下、及び、視覚障害…」

アリア 「正解よ」

エイリィ 「じゃあ、ユウは…」

アリア 「恐らく、電磁波の影響で幻覚でも見えるんでしょうね。まともにバルバロイの姿が見えているとは思えないわ」

ジョグ 「見事に術中にはまったわけや…」



ユウ 「く…!」(おかしい! バルの姿が見えるのに、死角からバルの攻撃が来る!)

バル 「……」

ザシュッ!

今度は腕を切られる。
あれから俺の攻撃はひとつも当たっていない。
闇雲に狙ってもダメか…。

ユウ 「しゃあねぇな…」

バル 「!!」

ブォンッ!!

バル 「なっ!?」



ガイ 「かわした!」

ジェイク 「おい、ユウを見ろ!!」



ユウ 「………」

ルーシィ 「目を…瞑っている!?」

ジョグ 「んなアホな…」

ポール 「眼ぇ瞑ったままかわしたんか!? まぐれやろ!?」



バル 「ならば! サンダー・スピア!!」

ユウ 「!!」

ゴオォゥ!!

アリア 「…間違いないわね、見えているわ…ユウ君には」


バル 「……!」

ユウは、恐らく俺の気力、魔力、空気の流れすらも読み取っているのだろう
だが、それならば…!!



エイリィ 「目を瞑ったまま闘えるんですか?」

アリア 「そうね…ルーシィ、目を頼らずに闘うために必要な物はいくつあると思う?」

ルーシィ 「そうですね…聴覚、嗅覚、触覚、味覚、気力、魔力、空気…それから」

アリア 「…心、よ」

ガイ 「心…? そんな曖昧な物で?」

アリア 「確かに曖昧だけど、ユウ君にとっては、それが重要よ」
アリア 「ユウ君はユミリアとの修行で、心を鍛えたわ」



バル 「これでどうだ!! ハリケーン・ブレス!!」

俺の放った風魔法で、空気が震える。

バル 「……!」(この状態ならば、音、匂い、空気。全て読み取ることはできん!!)


ユミリア 「……」(確かに正解だけど、それだけじゃあないのよ)

ブンッ!!

バル 「!?」

ユウ 「……!!」

ガキィィンッ!!

バル 「馬鹿な…!!」



ウォーズ 「これは凄いことです!! 何と、ユウ選手! 目を瞑ったまま、バルバロイ選手に反撃!!」
ウォーズ 「このままいくかと思われたが、またも互角の勝負だぁ!!」


ユミリア 「…ユウ君は、見えるのよ…バルバロイの心が」



ユウ 「うおおおおっ!!」

バル 「はああああっ!!」

ガキィン!! ドガアァッ!!



ウォーズ 「まさに剣と魔法! これこそ、闘いの神秘!! かつてこれ程の闘いが見れたでしょうか!?」


男子生徒A 「頑張れユウ!!」
男子生徒B 「負けてねぇぞ!!」
男子生徒C 「先輩、ファイト!!」


女子生徒A 「バルバロイさん、負けないで!!」
女子生徒B 「相手は弱ってるわ!!」
女子生徒C 「先輩! 頑張ってー!!」


ノーム 「ふたりとも頑張れ!!」

ドリアード 「ファイトです!」

ウィル 「う〜ん、何か燃えてくるわね…」

ルナ 「ガンバレー!」


ウォーズ 「お聞きくださいこの大歓声!! 両者の戦いで場内は真っ二つ!!」
ウォーズ 「一体、どちらが勝つのか!?」



バル 「うおおおっ!!」

俺は全力を持ってユウに剣を振り下ろす。
ここまで来れば、後は全てを出し切るだけだ!!

ユウ 「これまでだ!!」

俺は下から、全ての闘気を込め、剣撃を打ち上げる。

バキィンッ!!


甲高い音と共に、俺はバルの剣を叩き折り、剣をバルの首筋で止めた。

バル 「…!!」

ユウ 「………」


ユミリア 「勝負あり!! 勝者ユウ!!」


ワアアアアアアァァァァァァァッ!!!


バル 「…何故だ? 何故、こうも正確に」

ユミリア 「まだまだ修行不足ね…」

バル 「………」

ユミリア 「よし、もう見えると思うわよ」

ユウ 「…おっ、確かに」

バル 「……」

ユウ 「今回は俺の勝ちだな…」

俺は笑顔でそう言って右手を差し出す。

バル 「………」

バルは何も言わず、右手を差し出し、握手を交わした。

バル 「………」

そして、何も言わずに去っていく。


ユウ 「う〜む、敗者は何も言わず、ただ去るのみか…渋いねぇ」

ユミリア 「ほらっ、ユウ君は客席にでも行きなさい! 次の試合よ!!」

ユウ 「はいはい!」



ウォーズ 「何と、凄まじい闘いでしょう!! しかし、勝ったのはユウ選手!! 噂に違わぬ実力者だ!!」
ウォーズ 「そして、敗北者はただ去るのみ! バルバロイ選手もまた強かった!!」



男子生徒A 「いいぞ、ユウ!!」
男子生徒B 「感動したぜ! これからも負けるなよ!?」
男子生徒C 「先輩、感動しました!!」

女子生徒A 「バルバロイさん〜! 落ち込まないで〜!」
女子生徒B 「私、これからも応援します!!」
女子生徒C 「先輩…」


ノーム 「さっすがユウ兄ちゃん!」

ユウ 「まぁなっ!」

俺はガッツポーズを取ってみせる。

ドリアード 「お見事です」

ユウ 「そんな誉めんなよ」

ユミリア 「ほら、さっさと出る!」

俺は半ば追い出されるように試合場を出た。



レイナ 「…勝ったのはユウか」

これで、MVPはわからないな。

役員 「レイナ先輩、時間です!」

レイナ 「はい」

私は静かに控え室を出る。



………。



ネイ 「…これで勝てたら、私は」

私はその場から立ち上がる。

役員 「ネイ先輩…」

ネイ 「わかってる、用意はできてるわ」



………。
……。
…。



ユウ 「よっ」

ガイ 「おおっ! お疲れだな!」

ユウ 「まぁな、おっ、バルもいるじゃん!」

バル 「ああ…」

ジェイク 「次の試合に間に合ったな」

エイリィ 「ところで、ミルはどこにいったの? 午後から姿が見えないけど」

ルーシィ 「そう言えば…」

ユウ 「……?」



ミル 「あ〜…どうしよう」

何で、こんなことに…。

ミル 「皆に相談するべきかな…?」

でも、やっぱり〜…。



ジョグ 「おっ、出てきたで!?」


ウォーズ 「さて! それでは次の試合に行きましょう!!」
ウォーズ 「まさに学園ヒロイン最強決定戦! かの美少女コンテスト1位と2位の激突だ!!」
ウォーズ 「まずは、ミス・ガイアこと、ネイ・エルク選手!!」


ワアアアアアァァァァァ!!!
ウオオオオオオオオオオッ!!

ユウ 「俺らの時と、声援の桁が違うぞ…」

ガイ 「ここにもいるぞ…熱狂的ファンが」

ジョグ 「L・O・V・E!! ネ・イ・ちゃぁぁぁぁぁんっ!!!」

ポール 「馬鹿…」

ピノ 「………」(汗)


ネイ 「………」


ユウ 「あれ…?」

ガイ 「どうした?」

ユウ 「いや、ネイの奴…以外に緊張してねぇよな」

ガイ 「そう言えば…美少女コンテストの時はガチガチだったのに」

ジェイク 「それだけ、気合が乗っているということだろう」

バル 「……」


ウォーズ 「そして、第2位!! 美しき黒き翼の美少女!! レイナ・ヴェルダンドォ!!」


ワアアアアアァァァァァ!!!
ウオオオオオオオオオオッ!!

レイナ 「………」


ガイ 「おっ、こっちも気合十分の顔つきだぜ」

ユウ 「何が何でも勝ちたいって顔だな」



ウォーズ 「ルールは男子部門と同様! 審判もユミリア先生です!!」


レイナ 「ネイ、今回は負けないわよ」

レイナはそう言って右手を差し出す。
握手を求めているのだろう。

ネイ 「…悪いけど、そんな軽い気持ちだったら、死ぬかもしれないわよ?」

私はそう言って握手をかわす。

レイナ 「えっ…?」

ネイ 「………」

ユミリア 「…始めるわよ?」

ネイ 「………」こくり

レイナ 「…は、はい」



ユウ 「…まさか?」

バル 「………」


ユミリア 「始め!!」



ワアアアアァァァァァァァッ!!!

ウォーズ 「さぁ、ついに始まった、女子部門!! 男子生徒のファンも真っ二つだ!!」

男子生徒A軍 「ネイちゃん! ファイッ!!」

男子生徒B軍 「レイナちゃん、必勝!!」


レイナ 「…ネイ、あなた…まさか?」

ネイ 「…私、負けたくないから」

私はそう言って、レイナに向かって剣を振るう。

ガキィンッ!!

ユウ 「何っ!?」

ガイ 「レイナが吹っ飛んだ…」


レイナ 「そんな…!?」

ネイ 「どうしたの!?」


ユウ 「レイナに一発目から当てただと…スピードで、レイナを捉えた」

バル 「これで疑惑は確証に変わった…」

ユウ 「どういうことだバル!?」

バル 「あいつは…昔の力を取り戻した」

ユウ 「昔って…300年前!?」

バル 「そうだ…あの時のネイは、操られていなかった」
バル 「ネイは生まれてすぐに、ゼイラムによって攫われた、親を知らない子だった」
バル 「ゼイラムの戦う道具として育てられ、その力は、当時の俺を遥かに上回る強さだった」
バル 「逆に、強すぎたがゆえに、ゼイラムすらも、手を焼くほどにな…」

ユウ 「だが、俺と戦った時はあれ程には…」

バル 「だから、戻ったのだ…。300年前、ユシルとの戦いでネイは傷を負った」
バル 「ユシルが時の力を使い、ネイを倒したのだ…」

ユウ 「時の力を使う程にネイは…」

バル 「強かった…当時の四天王すら、勝てなかったかもしれん」
バル 「そして、ネイは眠りに着いた。目覚めてすぐには力は出せん」
バル 「再びゼイラムの前に立った時、ネイはゼイラムに術をかけられた」
バル 「そして、結果…お前と戦うことになった」

ユウ 「操られてたから弱かったのか? だったらそれは…」

バル 「そうだ、ゼイラムの魔力をネイが上回っていたのだ」

ユウ 「でも、記憶がなくなって力が出せなかったのか?」

バル 「それはわからん…が、恐らくはそうなのだろう」

アリア 「…記憶が、蘇ったわけではないわ」

ユウ 「アリアさん…」

アリア 「力の使い方を思い出しただけ…ただ、性格も若干戻りつつあるようね」
アリア 「後、1年もすれば、思い出すかもしれない」

ユウ 「ネイの記憶が…」

バル 「………」



レイナ 「くっ!?」

ネイ 「その程度!? レイナ、本気を出さないと怪我じゃすまないわよ!?」

レイナ 「…ネイ。どうして…?」

私はネイの剣撃に押されながら、戸惑う。

ネイ 「私はユウが好きなの! レイナよりも!!」
ネイ 「でも、ユウは…口ではああ言ってるけど、きっと心のどこかでレイナが好きだって言ってる!!」

レイナ 「…!!」

ネイ 「私は、それがわかる…多分、他の誰にもわからない!!」
ネイ 「私が、1番ユウを理解できる!!」

ガキィィンッ!!

レイナ 「きゃあっ!!」



ウォーズ 「おおっと! これは一方的な闘いになってきたか!? レイナ選手、手も足も出ない!!」


ユミリア 「レイナ…」


レイナ 「…安心した」

ネイ 「レイナ…?」

レイナ 「……これで」
てっきり記憶が戻ったと思ったわ

レイナ 「本気で闘える!」

カアアアアアァァァァッ!!


ウォーズ 「な、何だぁ!? レイナ選手の体が輝く!?」



ユウ 「光の翼!?」

バル 「レイナも本気になったか…」

ガイ 「な、何だ!?」

エイリィ 「凄い魔力ね…」

ルーシィ 「これが、飛翼族王家の力」



ネイ 「…!!」

レイナ 「いくわよ! ホーリー・ブラスター!!!」

レイナの右手から巨大な光の帯が生まれる。

ネイ 「くっ!!」

私は魔力を全快にして防御に徹する。

ギュアアアアアアアァァァァァッ!!!


ウォーズ 「レイナ選手の大技炸裂!! ネイ選手は大丈夫なのかぁ!?」


レイナ 「……!」

ネイ 「…さっすが」

私はかろうじて受け止める。
と言っても、何割かは喰らってる。
さすが、ゼイラムに勝っただけあるわね。


アリア 「あれを受け止めるなんて…」

ユウ 「………」


ネイ 「でも、物理的な攻撃力はこっちの方が!!」

私はそう言って、魔法を詠唱する。


ウォーズ 「ネイ選手の反撃!! 闇の弾幕がレイナ選手を襲う!!」

レイナ 「くっ!」

私は空中に上がりながら、弾を2発、3発と避けていく。

ゴウッ、ゴウッ、ゴウッ!!

ネイ 「これでどう!?」

レイナ 「上から!?」

ネイ 「ハアアァッ!!」

ガキィンッ!!

レイナ 「くうぅっ!!」

レイナはかろうじて受け止めるが、私はそのままレイナごと地面に落下する。

ズドオオオンッ!!

レイナ 「う…!」

ネイ 「はぁっ!」

私は馬乗りのまま、剣を突こうとする。

レイナ 「!!」

ピィンッ!

ネイ 「あう!」

突然、背中が…!

レイナ 「このっ!!」

ドスッ!

ネイ 「うっ!」

レイナは私を蹴り剥がす。

ネイ 「!?」

何か、光の球が私の周りに…。

レイナ 「ホーリー・ビット!!」

ピィンッ、ピィンッ!!

光の球が自由に動き、それぞれが私を狙う。

ネイ 「ああっ!」

2発はかわしても、それ以上は…。

レイナ 「ごめんなさい…私は勝つわ!!」

ネイ 「!」

私が怯んだ所で、レイナが正面から突っ込んでくる。

レイナ 「はあああああっ!!!」

レイナは剣を大きく振りかぶり、横一文字に薙ぎ払う。

ネイ 「くうっ!!」

私はそれをかろうじて受け止める。
手がしびれる…かなりの衝撃。
でも…。

ネイ 「隙だらけよ!!」

私は動きの止まったレイナに向かって剣を振り下ろす。


ガキィン!


ユウ 「何ぃ!?」

ガイ 「レイナが消えた!?」

バル 「いや、上だ!!」


ネイ 「残像!?」

ぞくっとした物が背中を走る。

ザシュウッ!!

レイナ 「そんな…!!」

ネイ 「…!!」


ユウ 「あれを…」

バル 「かわすか…!」


ネイ 「くっ…!」

途端に私の頬と体から鮮血が飛び散る。
服も縦一文字に切り裂かれた。
とりあえず、死にはしない。

レイナ 「シャイニング・クロスが…かわされた!?」

レイナは力を使い果たしたのか、その場でがくりと膝を折る。

ネイ 「……く」

私はかろうじて足を動かす。
かわしたといっても、かなり無理をした。
出血が多い…このままだと。

ネイ 「!!」

私は剣を振り下ろす。

レイナ 「!!」

レイナは目を瞑る。
そして、私は剣をレイナの眼前で止める。

ユミリア 「勝負あり! 勝者ネイ!!」


ウワアアアアアァァァァァァッ!!!


ウォーズ 「ついに決着!! まさに命を賭け、全ての魔力と気力を出し切った、すばらしい闘いでした!!!」

ネイ 「………」

ユミリア 「ネイ! すぐに治療を…!」

ネイ 「……」

私はユミリアさんの腕の中でぐったりと倒れる。

レイナ 「ネイ…」



ウォーズ 「血まみれの勝者の姿が、激戦を物語ります…本当にすばらしい闘いだった!!」
ウォーズ 「皆さん、今回の勝者に、今一度大きな拍手を!!!」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!



ユウ 「………」

ぞっとした。
レイナは本当に殺す気で必殺技を放った。
それでも、ネイはかわした…。
俺とバルとの闘いとはまるで内容が違う…。
あれは死合だ…。
むしろ、どちらも死ななかったことがせめてもの救いかもしれない…。

バル 「震えているのかユウ?」

ユウ 「お前こそ、そうじゃないのか?」

バル 「…かもな」

わかる人間にはわかる…。
さっきの闘いの激しさが。



………。
……。
…。



ウォーズ 「さて、この後に模擬団体戦を行う予定でしたが、急遽中止となりました!」


ユウ 「はぁ…何で?」

俺たちは控え室で待ちながら、放送を聞いた。

アリア 「相手がいないからよ」

突然、アリアさんとユミリアさんが現れる。

ユウ 「?」

ユミリア 「Cクラスを除いて、参加者のほぼ全てが棄権…さっきの個人戦で思い知ったんでしょうね。ネイもこれ以上は無理だし」

ユウ 「えっ! ネイやばいんですか!?」

ユミリア 「命には問題ないけど、出血がかなりあったから、これ以上の運動は無理ね」

ガイ 「おいおい、じゃあ不戦勝?」

ジェイク 「いや、中止だから無得点だろう」

レイラ 「ネイ…大丈夫かな?」

ユウ 「俺、行ってくるわ」

俺はそう言って、医務室に向かう。


………。


ユウ 「…って、入って大丈夫かな?」

一応ノックする。

コンコン…

返事がない…ただの屍のようだ。

ユウ 「じゃなくて! もしかしてネイ!?」

俺はドアを開け、中に入る。

ユウ 「ネイ…?」

見ると、ネイは眠っていた。
俺はベッドの側に寄り、近くの椅子に座る。

ネイ 「………」

ユウ 「何だ、寝てたのか…」

俺はネイの寝顔をしばし見る。


………。


さっきの闘い。
明らかにいつものネイとは違った。
確かに、どこか戦争時のネイを思い出させた。

ネイ 「う…」

ユウ 「……?」

ネイ 「う…ん……」

ネイは突如、起き上がる。

ユウ 「だぁっ!?」

俺は途端に、目を瞑る。

ネイ 「ユウ…? どうしたの?」

ユウ 「服服!!」

俺は目を瞑ってそう叫ぶ。

ネイ 「服…?って、いやあっ!!」

ネイは甲高い声をあげて、近くにあった上着を着る。


………。


ユウ 「もういいか?」

ネイ 「あ、うん…」

俺は目を開いて、ネイの姿を見る。

白いカッターシャツを着た、どことなく綺麗に見えるネイが、はにかんだ様子で俺を見ていた。

ネイ 「また、見ちゃった…?」

ユウ 「一瞬な…」

俺はおずおずとそう答える。

ネイ 「また…見られちゃったか。私の傷…」

ユウ 「傷…?」

ネイ 「見たでしょ…? これ」

ネイはシャツの胸の部分を少しだけ開いて、谷間を見せる。

ユウ 「だぁっ!…え?」

俺は一瞬見て、絶句する。
ネイはすぐに胸を隠し、少し辛そうに顔を俯ける。

ネイ 「大きいでしょ…記憶を無くす前からあったんだ」
ネイ 「胸から、腹にかけて、大きく切り裂かれた痕」

ユウ 「………」

ユシルさんとの戦い。
バルはそれで傷を負ったと言っていた。
そのことだろう。

ネイ 「気持ち悪いでしょ…? こんな傷持ってたら…やっぱり、嫌だよね」
ネイ 「美少女コンテストとかで、優勝しても、こんな傷見ちゃったら、やっぱり…皆嫌がるもの」

ネイは、体にコンプレックスを持っていたのか…。
そういえば、戦争中に比べて、ネイは体が特に成長した。
小さかった胸も、立派に大きくなったし、身長も…俺とあまり変わらない。
顔つきも、子供のような面影はなくなった。

ユウ 「俺は嫌がらねぇよ」

ネイ 「え…?」

ユウ 「ネイは友達だろ…? だったら、そんなことで嫌になったりはしねぇよ」

ネイ 「ユウ…」

ネイは突然、涙ぐむ。
見てるこっちも辛くなる。

ネイ 「わあぁっ!!」

ネイは突然抱きついてくる。

ユウ 「お、おい!」

ネイ 「今だけ!!」

ネイは強くそう言った。

ネイ 「今だけ…このままで」

ネイは俺の胸の中で泣いた。
痛い程、ネイの気持ちがわかった。
ネイは記憶がない。
でも、体に戦いの記憶が残ってる。
そして、俺を唯一の拠り所にしている…。
俺以外に、ネイは心を開いていない。
自分の傷を明かしたことはない。
レイナとかだったら、見たこともあるんだろうけど…。
レイナは何も言わないだろう。
逆に、その気を使わせたことで、ネイは傷ついたのかもしれない。
傷があるから…。
無い記憶と、残った記憶。
ネイにとっては地獄のような結果かもしれない。
記憶をなくしたことで、俺と関わってしまったことで、こいつは不幸になったのかもしれない。
なら、責任を取らないと…。



これで、本日の学園体育祭、全ての種目は終了いたしました…。

最後の放送が流れ、俺はまだネイの側にいた。

ネイ 「いいの? 行かなくて…」

ユウ 「いいさ、ここでも放送が聞こえるから」

ネイ 「MVP…誰かな?」

ユウ 「お前かもな」

俺は冗談混じりにそう言う。

ネイ 「ユウだよ、きっと…」

ユウ 「ネイだったらどうするんだ?」

俺は意地悪っぽく聞いてみる。

ネイ 「えっと…その、秘密だよ♪」

ネイは顔を真っ赤にしながら、そう言った。

ネイ 「ユウは…どうなの?」

ユウ 「俺はな…」

俺が言いかけたところで、最後の放送が流れる。

ウォーズ(放送) 「今回のMVPは…ユウ・プルート選手だ!!」


ネイ 「あ…」

ユウ 「…俺がMVPになったら」

ネイ 「え…?」

俺は真剣な顔で、こう答えた。

ユウ 「美少女コンテスト1位の娘を彼女にする!」



…To be continued



次回予告

ネイ:ユウの言葉で変わった関係。
私とユウ…。
お互い意識していながら、声に出せなかった。
迷いがあった。
でも、きっと…。

次回 Eternal Fantasia 2nd Destiny
第11話 「恋人」


ネイ 「ユウ!」



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