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この語説には、残酷な表現が含まれております!

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POCKET MONSTER 特別編



ヒトクイ
-Eat The Meat-




…遥か過去に惨劇が起こった
まだ人類とポケモンの間に僅かな隔たりがある時代…
そんな中、たった一人の少女が生まれ、育った…

少女に名前は無く、いつ産まれたのか…誰が産んだのかもわからない
ただ、少女は……



『ヒトクイ』ダッタ…











『14世紀後期 某日 某時刻 とある街』


少女 「…はぁ……はぁ………うぅ」

ひとりの少女がいた。
金色の美しい髪の色。
長さは首の下までで、あまり手入れはされていない。
バラバラに切り裂かれた適当な長さの髪は、下手な散髪を想像させる。
服は黒い薄着。
一見、Tシャツのようにも見えるが、胸元にはボタンがついており、襟は開かれている。
脚には紺のズボンを履いており、靴はどこにでもある茶色の布靴。
靴下は身に着けておらず、裸足で靴を履いているようだった。

カゲボウズ 「クカ〜?」

少女 「……黙ってて…ぅぅ…心配なんかしないで」

少女の側には1体の『カゲボウズ』がいる。
今、少女がいる場所は街の中。
しかし…そこはもはや街と呼べる場所ではなかった。

…腐臭…

腐った肉の香り…
この街にはもう…生きた『人間』は住んでいない。
何故なら、全て死に絶えたのだから。



少女 「…気持ち悪いよぉ〜」
少女 「何で? 何で!? 何でぇ!!??」
少女 「食べたいのに……お肉が食べたいのにぃ!!!」

少女は誰もいなくなった街中で、天を仰いで叫ぶ。
それは、今までの行為に後悔してなのか…それとも。

カゲボウズ 「カカカッ!! カカッ!!」

カゲボウズが狂気の笑みを浮かべ笑う。
いつもなら、少女も同じ様に笑うはずだった。
だが、今の少女は…笑うことさえできないほど、衰弱し始めていた。

少女 「…やだよぉ……食べたいよぉ………お、肉…」

ドサッ!!

カゲボウズ 「クカッ!? クカカッ!!」

少女が硬い石の通路に倒れる。
倒れた衝撃で、頭を打ったのか、少女の額から血が滲む。
その姿を見て、カゲボウズは慌てたように仲間を呼んだ。

ジュペッタ 「ペペッ!?」
ヨマワル 「ヨ〜…」
サマヨール 「マー」
ヨノワール 「ルー…」
ゴース 「ゴガッ!!」
ゴースト 「ゴーン…」
ゲンガー 「ガー!!」
ムウマ 「ムゥ〜!」
ムウマージ 「マジマジ!!」
ロトム 「トーム!」
ユキメノコ 「ミョ〜…」
ヌケニン 「………」
ヤミラミ 「ラミー」
ミカルゲ 「ルゲ〜」

少女及びカゲボウズの仲間たちがすぐに駆けつける。
彼女にとって、『家族』と呼べる存在たちだ。
朦朧とする意識の中…彼女は、思い出す。





………それは、その日より1週間前………






女 「どうなっているんですか!? まだ許可は下りないのですか!?」

男 「そう叫ばれても困る…決定権は他にもあるのだから」

やや堅苦しい、貴族の様な格好をした女が、ひとりの男性貴族に詰め寄る。
短気というわけではなさそうだが、彼女は非常に激昂していた。
彼女は薄い茶色のロングヘアーで、やや鋭い目つき。
強気な口調で、相手の男を圧倒していた。
対する男は中年で、やや小太り。
偉そうな態度を取ってはいるが、ややオドオドとした小心者の様にも思えた。

女 「これ以上、犠牲を出し続けるのですか!?」
女 「あの『森』は即刻閉鎖すべきです!!」

男 「ミアンさん、それはいけない! そんなことをすれば、『彼女』は人里へ降りてしまう!!」
男 「そうなったら、どうしようもない! 我々は絶滅するのを待つだけだ!!」

男はミアンという女性にそう言い返す。
すると、ミアンは更に怒りを露にして言い返す。

ミアン 「でしたら! あなたは『生贄』を捧げ続けることで何とかしようと言うのですか!?」

男 「…それしか方法はない」
男 「もう、何人もの討伐隊が帰らぬ人になっている…」
男 「この地方で屈指のモンスター使いと呼ばれた者も、音沙汰は無い」

男は、絶望した目でそう言う。
そう…この街では、ひとつの事件にずっと付きまとわれていた。

『ヒトクイ』

そう呼ばれる『少女』が、この街の北方の『森』にある、『古びた館』に住んでいる。
少女は、何も知らずに近づく『人間』を『捕食』する。
少女は、狡猾で純粋。
人を食らう事を『常識』と考え、それだけで育った。
知能は7歳にしてすでに世界一の知能者と名高い。
誰も彼女の裏はかけない…下手な兵法は返り討ちにされていた…

もう…3年以上もの間、この街は『生贄』を捧げることで被害を抑えていた。





………………………





『森の古びた館』


男 「はぁ! はぁ! はぁ!! た、助けて!!」

女 「待ってぇ!! 置いていかないでぇ!!!」

男は走っていた。
古びた館の中をひとりで走る。
女は、男の向かう方向とは逆の壁にロープで括り付けられており、動くことはできない。
ただ…男が身勝手に逃げる様を見ているだけしかできなかった。

ガチャガチャ!!

男 「く、くそっ!! 早く、早く逃げるんだ!」

男は乱雑にドアのノブを回そうとする。
だが、あまりに慌てているためか、古びて錆びているドアノブは回ってくれない。

女 「いやぁ!! 置いていかないでぇぇ!!」

女が叫び声をあげる。
その声を無視するかのように男は一心不乱にドアを開けようとする。

ガタンッ!!

男 「やった! これで逃げ…」

バクンッ!!

女 「キャアアアアアアアアアアアァァァァッ!!!」

女が叫ぶ。
男がドアを開け、歓喜の声を上げた瞬間だった。
男の真下から、黒い渦の様な物が男の下半身を切り離す。
足を失った男は、大量の血を下半身から噴出し、床に上半身を叩きつけられた。

少女 「キャハハッ!! ひ〜っかかった! ひ〜っかかった!!」

館に、少女の高らかな声が響き渡る。
下半身を失った男は、大量の出血に耐えられず、やがて動かなくなる。
そして男の真下、床をすり抜けるように、『ヨノワール』がゆっくりと現れた。

ヨノワール 「ル〜…」

少女 「アハハッ! 『ワール』、美味しかった!?」
少女 「あれは不味そうな足だと思ったから、私は食べないけど♪」

ヨノワール 「ルル…」

ヨノワールは腕組みをし、うんうん…と頷いた。
私に共感しているようだ。

少女 「やっぱりね〜…あの足は絶対不味そうだと思ったもん!」
少女 「でも、内臓は美味しそう♪ …じゅるり」

私は舌なめずりして、男の死体に歩み寄る。
お腹が減ってるから、すぐにでも食べたい。
でも、まずは調理しないとね…♪

少女 「フワピ〜…焼いて♪」

フワライド 「ワワ〜…」

ボボボッ!!

私が天井に向かってそう言うと、シャンデリアの側にいた『フワライド』が蒼い火で肉をほどよく焼いてくれる。
邪魔な服は焼き払われ、肉がいい感じに焦げてくる。
私はその匂いを嗅いで涎を拭く。

少女 「ウヒヒッ! でも、今日のメインデッシュはこっちなのよね〜!」

私はそう言って、ある部分を指差す。
すると、私の背後に待ち構えていた『ジュペッタ』が、大き目の木槌を振り下ろす。

ブンッ! グチャァァツ!! ビチャチャッ!!

女 「イヤアアアアアアァァァァッ!!」

女が更に叫ぶ。
木槌が、男の頭を叩き潰し、肉とともに脳味噌が飛び散ったのだ。
周りに酷く血は飛び散り、目の前の私にいたってはモロに臓物を顔に受けていた。

少女 「あ〜ん! もうー!!」

私は首を横にぶんぶんと振り、肉片や血を吹き飛ばす。
そして、無残にも飛び散った今夜のメインディッシュを見て私はジュペッタを睨み付ける…

少女 「ペ〜タ〜〜…!?」

ジュペッタ 「ペ、ペペッ!!」

ジュペッタは『しまった』…と言わんばかりに後ずさる。
私が楽しみにしていた『脳味噌』は、ペタの馬鹿力で四散…
これでは、歯ごたえを楽しめない…あのツル〜リ、ジュルジュル!という食感が好きなのにぃ…

少女 「ペタは今日ご飯抜き!」

ジュペッタ 「ペターーーンッ!?」



………。



ジュペッタ 「…ペタ〜」

ペタは悲しそうに部屋の四隅で落ち込んでいた。
むぅ…今日こそはいけるとおもったのにぃ。

少女 「まぁいいや、まずは大腸から〜」

グチッ! ブチチィッ!! ミチチッ!!

私は程よく焼けた肉をナイフで切り、内臓を露出させる。
いい感じの色で焼けてる…♪
私はまず大腸を適度に切り離し、端っこからハフハフと口にほお張る。

少女 「ハフフッ!!(熱つッ!!) ん〜!! デリシャ〜ス♪」

女 「…イヤァ…イヤ……!! 止めて…食べないで!!!」

女が声を上げて、懇願する。
って言うか、いい加減うるさい。
今まで我慢してたけど、そろそろイライラしてきた。

少女 「はぁ…これ以上はお肉が不味くなるよ。ゲンター! 私、アレいらないから適当に刻んで捨てといて〜!」

ゲンガー 「ガッガッガッ!!」

私がそう言って肉を食べていると、女が括り付けられている壁の向こう側から『ゲンガー』が現れる。
待ってました!とばかりに、ゲンタは両手を黒く光らせ自慢の爪で女の首を切り離した。

ザシュッ!! ゴトンッ!! ゴロロ……ブシュアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!

少女 「こらーー!! 床汚れるからそれ止めれーーー!!」

ゲンガー 「ゲッ!?」

私はゲンタを叱る。
刻めとは言ったけど、汚せとは言ってない!
ちゃんと血の抜き方位計算しなさいよねぇ…はぁ。
しかしながら、言ってる側から床に血が流れ、手のつけようがなかった…

少女 「も〜!! 後で掃除するの大変でしょうが!! ゲンタもご飯抜き!!」

ゲンガー 「ガーーーーーーンッ!?」



………。



ゲンガー 「…ゲッ」
ジュペッタ 「ペタ…」

こうして、ゲンタもペタと仲良く隅で悲しむ。
もう…折角の食事が冷めちゃうじゃない!

少女 「はぁ…何か最悪」

フワンテ 「フワ〜♪」

ボボボッ!

少女 「アチチッ! もう、いきなり燃やさないでよ〜」
少女 「でも、ありがとフワリン♪ 暖めなおしてくれたんだね♪」

フワンテ 「フワワ〜(照)」

フワリンはまだ小さい。
まだ子供だから、上手く技も使えてない。
だけど、この娘は私によく懐いてくれる可愛い子だ♪
ちなみにフワピーとフワリンは♀、ついでに言うならワール、ペタ、ゲンタは♂よ。



………。



少女 「う〜ん、美味しかった〜♪ やっぱ内臓はいいね〜♪」
少女 「女の体は脂肪ばっかりだから飽きるんだよね〜…やっぱ男の方が内臓は美味しい!」

私はそう力説しながら食事を終える。
そして、片付けの時…



………。



少女 「ユキメ〜、食べられそうな所で余ったのは冷凍しといて〜」

ユキメノコ 「メ〜…」

コォォォォォォッ!!

今日の食事であまった分は、いつものようにユキメが冷凍してくれる。
こうしておけば、肉は腐らずに保存ができるのよ。
まぁ、ちょっばかし不味くなっちゃうけど、ね。

少女 「ワール〜灰をお願い!」

ヨノワール 「ワーーール!!」

ビュゴゴオオオオォッ!!

床に散らばった灰は、ワールがお腹で吸い込んでくれる。
これで灰はOK…それで。

少女 「ユキメ! 水!」

ユキメノコ 「メ〜」

バシャシャッ!!

ユキメが水を床に浴びせる。
そして、いよいよ私のモップが登場!
ちゃんと、働いてるんだから!

少女 「ふっふ〜ふ〜ん♪ おっそうじおっそうじ!」

カゲボウズ 「クカカカ〜!」

いつの間にやら私の耳元にゲボーが現れる。
この子は♂で、私の最初の友達。
…って言うか、気がついたら一緒だった。
3歳位の頃だったかなぁ…? 気がついたらゲボーと一緒で。
で、気がついたら人の肉を食べてた。
最初は、通りかかる人を襲った。
ゲボーが念動力で獲物の動きを止め、私が包丁で首を切る。
これが最初は楽だった。

でも、獲物も知恵をつけ始めた。
モンスターを従え歩くようになった。
私は悩んだ。
ゲボーはあまり強くない。
強そうなモンスターと戦うには力不足だ…

そんな時、ペタが現れた。
ペタはすっごく力持ちで、そこらへんのモンスター位、軽く投げ飛ばす力があった。
私はペタと友達になった。
それからは、大抵のモンスターは薙ぎ倒し、獲物を捕らえられた。

しばらくそれを続けていると、段々友達が増えていった。


ゴースのゴンス(♂)…ゴーストのスー(♀)、ゲンガーのゲンタ。
ムウマのムミー(♀)、ムウマージのマジジ(♀)
ヨマワルのヨミー(♂)、サマヨールのマン(♂)、ヨノワールのワール。
ユキメノコのユキメにロトムのトム、ヌケニンのヌケサク。
最期はヤミラミのミラミー(♀)とミカルゲのカーズ(♂)

皆、私の友達だ…
いつも、私と一緒に遊んで戦ってくれる。
友達がいるから…私はこうやって食べていけるのだから。


でも、人間は怒り狂った。
私の存在を嫌に思い始めた。
次第に、人間は自分を守るのではなく、私を殺すために動き始めた。

モンスター使い。
戦うためのモンスターを従える、嫌な奴ら。
でも私たちに勝てる奴なんかいなかった。
もう何人も刺客が来たけど、全員殺した…
2〜3体まとめて使う奴もいたけど、まるで相手にならなかった。
中には5〜6体使う奴もいた…こっちは家族全員で戦ったから余裕で勝った。
そして、その内数人の使い手がまとめて攻めてきた…全員罠にハメて皆殺しにした。
私はモンスターは嫌いじゃない、むしろ好き。
だから、使い手を殺して食ったら、モンスターは森に放つ。
ゲンタやマジジが混乱させて森に放てば、もうモンスターは襲ってこない。
来ても無駄だって、わかってるだろうから…
そんな感じで殺し続けてたら、いつのまにか来なくなった。

その時気づいた…人間は、私を殺すことを諦めた、と。
そしてある日、南の街に住んでいる長が館に来て、私にこう言った。

長 「あなた様に生贄を捧げます…ですから、他の者には手を出さないでください」

正直笑えた。
当時、たった4歳の少女に大人が頭を下げて懇願した。
私は、自分で言うのもなんだけど『天才』だった。
罠を仕掛けて獲物を仕留め、荷物をいただくのは得意分野だ。
勉強は、頭のいいマジジが教えてくれる。
マジジは人間の言葉を話せないけど、人間の言葉を理解できる。
だから、私はマジジに言葉を教えてもらった。
ちなみに、私は家族の言葉がわかる。
と言っても、モンスター全ての言葉がわかるわけじゃない。
あくまで、家族のモンスターだけ…長い間一緒にいることで、言葉の様な物を理解する。
普通の人には…理解しにくいかもね。

で、話を戻すと、私は長にこう言ってあげた。

少女 「いいよ♪ だけど…最初の生贄はあなたね?」

私は飛び切りの笑顔でそう言った。
その直後に見せたあの長の顔…笑えたなぁ。
今でも思い出す…。

少女 「…肉は正直! 不味かったね…やっぱり年代者はダメだよ〜」
少女 「プクク! キャハッ!! キャハハハハハハハハハハハハッ!!!」

カゲボウズ 「クカカカカカカカカカカッ!!」

私の笑い声が響き渡る。
ゲボーも笑った。
私はこの瞬間が好き。
思いっきり笑える…それがとってもすっきりするから♪





………………………。





ミアン 「…生贄など、何の意味があるのでしょうか?」
ミアン 「どの道、このまま時が経てば、少女は成人しましょう」
ミアン 「その時、誰が彼女を森に括り付けるのです?」
ミアン 「いずれ、彼女は世に出ます…その時が、世界の最期となるかもしれません…」

男 「どっちにしろ、君のやりかたでも犠牲は出る」
男 「この件に着いては、追って連絡をする。今は自宅で待機していたまえ!」

そう言って、男はさっさと歩き去る。
ミアンは行き場の無い怒りをぶつけることも無く、その場を後にした。



………。



『ミアンの自宅』


ミアン 「…あら、いたの?」

ミアンの家にはすでに先客がいた。
茶色のテンガロンハットに、茶色のローブ。
口には煙草を咥えており、そこから煙が出ていた。
体の大きな男で、身長は190cmある。
髪はバサバサで前髪が鼻の上にかかっていた。
服はローブ以外、この辺りでは見られない服装。
靴も、普通に売られているものには見えない。

男 「…で、許可は下りたのか?」

男はそう聞くが、ミアンは首を横に振る。
それを見てか、男は面倒そうな顔をした。

男 「やれやれ…ラチがあかねぇな」

ミアン 「ヘブン…準備はできてるの?」

ヘブンと呼ばれたテンガロンハットの男は、ミアンを真っ直ぐな目で見る。
そして、やや鋭い視線で睨み。

ヘブン 「初めからできてるぜ…やるのか?」

ミアン 「これ以上は、待っていられないわ…許可を取って後腐れなくやろうかと思ったけど」
ミアン 「『カオス』をこれ以上は放っておけない」

ヘブン 「…そうか」

ガシャッ!!

ヘブンは何やら巨大な『バズーカ』を肩に担いだ。
2メートルほどある巨大なバズーカは、この時代にありえない『兵器』だった。
そう、彼は…この時代の人間ではない。
信じられないかもしれないが、彼は未来からの来訪者…そして、彼女も。

ミアン 「頼むわよ…『クラッシャー(壊し屋)・ヘブン』!」

ヘブン 「……」





………………………。





少女 「…何? 何が来るの?」

カゲボウズ 「クカ…」

ゲボーが何やら警戒する。
妙な気配を感じるようだ。
館の家族が皆警戒し始めている。
こんな感覚…初めて。

ドガァッ!!

少女 「!?」

突然、館の壁が破られる。
大きな音と煙に包まれ、何者かが入ってきた。

ガツッ! ガツッ!!

ヘブン 「…テメェが『ヒトクイ』か」

少女 「!? 何…あなた」

私は見たことの無いモノを見て驚く。
一言で言うなら筒。
2メートルは越える金属でできた筒だ。
かなり重そうだけど、片手で担いでいる。
一体、あれは…?

ヘブン 「…俺はクラッシャー、『クラッシャー・ヘブン』だ」
ヘブン 「とある女からの依頼でね、テメェを壊しに来た」

少女 「! ゲボー!」

カゲボウズ 「クカーーーーーーー!!」

ゲボーが号令をあげる。
すると、壁から床から仲間が全員集合する。

ヘブン 「なるほど、ゴーストタイプを使うのか…情報通りだな」

少女 「あなた、何なのよ? 誰に断って勝手に穴開けてるの?」
少女 「自殺志願者? それとも、ただのイカレた中毒者?」

私が適当に挑発してみるも、全く動じない。
どうやら、本気でヤバイ相手のようだ。

少女 「ワール!」

ヨノワール 「ワーーール!!」

バチィッ!!

少女 「!? 嘘…!」

男は、ワールの右拳を左手で簡単に受け止める。
電気を纏った拳なのに、何とも無いの!?
普通なら全身が麻痺するはず…

ヘブン 「ぬるい攻撃だ…そんなモンで俺が倒せるか」
ヘブン 「悪いが、こっちも仕事だ…時間かけるつもりはねぇ」

ジャキィンッ!!

少女 「!?」

男は筒の穴をこちらへ向ける。
まさか、あれは何かを射出するモノ…?

ヘブン 「じゃあな…」

カゲボウズ 「!!」

少女 「!?」



カッ! ボババアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!

それは、巨大な爆発だった。
少女を中心に半径50kmの大爆発。
近くの街も一緒に吹き飛ぶほど衝撃だった。





………………………。





ミアン 「…終わったわね、ヘブン聞こえる?」

私は、吹き飛んだ街の外から通信回線を開く。
数秒後、ヘブンからの返答が入った。

ヘブン 『こちらヘブンだ、終わったぜ…』

ミアン 「こちらでも爆発は確認したわ。小型とはいえ、さすがに『核』を受けて耐えられるとは思えないわね」

ヘブン 『街ひとつ潰す羽目になったが、よかったのか?』

ヘブンにしては、妙なことを言う。
仕事の達成のためなら、街のひとつやふたつは気にしない男なのに。

ミアン 「代わりにこの世界の『混沌』を片付けられたわ…それに比べた小事よ」
ミアン 「それより、あなたは大丈夫なの? 核爆発を近距離で受けてるでしょうに…」

ヘブン 『ヤワな体だと思うな…とはいえ、「アトミック・ガード」のおかげと言っておく』

ヘブンは軽くそう言う。
この時代よりも遥かに未来の技術が作り出した防御装置のおかげ…か

ミアン 「…対核装置ってわけね、了解」
ミアン 「この世界での仕事は終わりよ…後は好き任せるわ」
ミアン 「報酬は…その内渡すわ」

ヘブン 『…了解だ、期待しないでおく』

それを聞き、私は通信を終える。
『混沌』…私たちが常に戦い続ける相手でもある。
私たちは『調和』せし者…





………………………。





『1週間後 某時刻 死臭漂う街』


少女 「…げほっ!! ごぼっ!!」

私は、嘔吐していた。
今、私がいるのはあの街…
私に生贄を捧げていた街…
でも、もうその面影は微塵も無い。
凄まじい空気で汚染されている。
感じたことの無い恐怖と苦しみが私の体を苛む。
私は何度も嘔吐し、その場を転がりまわった。

少女 「はぁ…はぁ…」

カゲボウズ 「クカーー!」

ゲボーが私の体を心配する。
私は首を振って心配するなと言う。
でも、実際には全く、無事じゃない。
体が、肉を見るのを嫌がった。

この街臭いは…最悪だった。
大好きな肉から嫌な臭いが出ている…今まで嗅いだことの無い臭いだ。
私はまた嘔吐する。
もう、胃の中の物は出し尽くした。
そんななか、私の口から嫌な肉が吐き出される。
それを見て、更に吐く。

少女 「…はぁ……はぁ………うぅ」

カゲボウズ 「クカ〜?」

ゲボーがなおも心配そうに私の顔を見る。
だけど、私は突っぱねた。

少女 「……黙ってて…ぅぅ…心配なんかしないで」

腐った肉の香り…
この街にはもう…生きた『人間』は住んでいない。
あの爆発…で、皆吹き飛んでしまった。

少女 「…気持ち悪いよぉ〜」
少女 「何で? 何で!? 何でぇ!!??」
少女 「食べたいのに……お肉が食べたいのにぃ!!!」

私は誰もいなくなった街中で、天を仰いで叫ぶ。
今まで肉を食べて生きてきた。
でも、食べられなくなってしまった。
食べても吐いてしまう…今ではさらに酷くなり、見ているだけ、臭いを嗅ぐだけでも吐くようになってしまった。

カゲボウズ 「カカカッ!! カカッ!!」

カゲボウズが狂気の笑みを浮かべ笑う。
私を元気付けようと、空笑いをしている。
いつもなら、私も一緒になって笑うのに…今はそんな力も出ない。
私は、自分が衰弱し始めていることを…

少女 「…やだよぉ……食べたいよぉ………お、肉…」

ドサッ!!

カゲボウズ 「クカッ!? クカカッ!!」

私は硬い石の通路に倒れる。
倒れた衝撃で、頭を打ったのか、額から血が滲む。
その姿を見てか、ゲボーは慌てたように仲間を呼んだ。

ジュペッタ 「ペペッ!?」
ヨマワル 「ヨ〜…」
サマヨール 「マー」
ヨノワール 「ルー…」
ゴース 「ゴガッ!!」
ゴースト 「ゴーン…」
ゲンガー 「ガー!!」
ムウマ 「ムゥ〜!」
ムウマージ 「マジマジ!!」
ロトム 「トーム!」
ユキメノコ 「ミョ〜…」
ヌケニン 「………」
ヤミラミ 「ラミー」
ミカルゲ 「ルゲ〜」


少女 (1週間…何も食べてない)
少女 (お肉…食べたかったのに…今は?)

カァァァァァ…

少女 「……」

突然、私の体を照らす光が差し込む。
夜明けだった。
この通路を少しづつ…太陽の光が照らし始める。
最近は、こうやって時折太陽の光を浴びるようになった。
こうしていると、何だか癒される気がした。
私は、太陽の光で体を満たし、もう一度立ち上がる。

少女 「……」

気がつくと、吐き気は消える。
空腹感も消えた。
何故だろう…? もう…何も食べたくない。

私は虚ろな目で太陽を見る。
その光に、私は何かを感じる。
私は…生きてる。
生きてて…いいの?

ヘブン 「…どうやって生き残ったかはわからねぇが」
ヘブン 「テメェは、生き残った…もうここでやることはテメェにもねぇはずだ」

少女 「…殺せば? 別にいい」

背後に突然現れた男に対し、私は振り向かずに言う。
太陽の下で死ねるなら、別にいいと思った。
だけど、男は何もしなかった。

ヘブン 「…俺の仕事は終わった」
ヘブン 「後は、テメェ次第だ…生きたきゃ生きろ」
ヘブン 「死にたきゃ、テメェで死ね」

ザッザッザッ!!

男はそう言って去る。
どこに行こうというのだろう?
だけど、私は何も言わずに走り出した。

タタタッ!

ヘブン 「…何のつもりだ?」

少女 「…連れてって、どこでもいい」
少女 「私が生きてもいい場所…そこに連れてって」
少女 「ここには…いたくない」

ヘブン 「…ふざけんな! テメェのことはテメェでやれ!!」

少女 「…あなたなら連れて行けるでしょ?」
少女 「わかってる…あなた、別の世界から来たんでしょ?」

ヘブン 「!!」

男は一瞬顔をしかめる。
想像は当たってた。
服装、装備…どれを取っても見たことの無い物ばかり。
もしかしたら…って思ってた。

少女 「これでも『天才』だから、色々知ってるの」
少女 「『時渡り』のモンスター…? それ使ったんでしょ?」
少女 「時間を越えたとか…普通ありえないけど」

ヘブン 「…テメェ、知ってどうする?」

少女 「…連れてって、どこでもいい」
少女 「太陽の光と水があれば、今はどこでも…」

私は俯いてそう言う。
もう何も食べたくない…でも、この光と飲む水だけは…最低限必要だ。

ヘブン 「……『セス』」

ボンッ!!

少女 「!? 何、それ…」

私は男が取り出した赤い玉を指差して聞く。
すると、男は鬱陶しそうに答える。

ヘブン 「…『モンスターボール』だ」
ヘブン 「これが生み出されるには、後何百年も先の話だ」

セレビィ 「ビィ〜♪」

少女 「…! これが…『時渡り』のモンスター」

ヘブン 「行けよ…道は作ってやる」
ヘブン 「ただし、そこまでだ…後はテメェでやれ」

少女 「…わかったわ、それでいい」

セレビィ 「ビィ…」

パァァァァァァァ…!

緑のモンスターが、光の道を紡ぐ。
私はその道に足を踏み入れようとする。
が、一度立ち止まる。

少女 「ゲボー…皆を呼んで」

カゲボウズ 「クカッ!?」

ゲボーは驚いた顔をする。
どうやら、連れて行かないとでも思ってたらしい。
私は、久しぶりの笑顔を見せてこう言う。

少女 「馬鹿…家族皆で一緒だよ♪」

カゲボウズ 「クカカ〜!!」

ジュペッタ 「ペペッ!」
ヨマワル 「ヨ〜」
サマヨール 「マー!」
ヨノワール 「ルー」
ゴース 「ゴガガッ!!」
ゴースト 「ゴーン」
ゲンガー 「ガー!!」
ムウマ 「ムゥ〜♪」
ムウマージ 「マジジ!!」
ロトム 「トムム!」
ユキメノコ 「ミョ〜…」
ヌケニン 「………」
ヤミラミ 「ラミミー」
ミカルゲ 「ルッゲ〜」

家族一同、気持ちは同じだ。
この先に何があるかわからない。
でも、何かに辿り着けたらいい…
新しい……何かに。



………。



ヘブン 「…やれやれ」

セレビィ 「ビィ?」

ヘブン 「さて…俺たちも行くぞセス」

セレビィ 「ビィ!」

ヘブン 「次の混沌を壊しに行くぜ…」

俺はセスの作り上げた空間を越える。
そして、次の仕事場に向かうことにした…
俺は壊し屋…『混沌』を壊す者。
クラッシャー・ヘブン、別名『カオス・クラッシャー』だからな…



…To The Another Stage!




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