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FC学園



第3話外伝4 『FC学園、模擬戦…擬人集 VS DOLL's』




ケイン 「おい、まだ決まらねぇのか?」

カルマ 「黙ってろ……もうすぐ終わる」

白羽 「やれやれ、相手は少女ばかりだぞ? そんなに本気になることもないだろう……」

レイジ 「まぁ……適当にやって終わらせりゃいいだろうな」

リィザ (お腹空いたなぁ……)

結局、それから時間ギリギリまでカルマがオーダーを悩んでいた。
まぉ、悩んだ割に割と普通のオーダーになったのは言うまでも無い。




…………。




ティアル 「はぁ……某先生じゃないけど、かったる」

アリス 「おお……ティアルがパクリネタを」

イェス 「う〜ん、とりあえずこんな感じでいいんでしょうか?」

雪野 「そうね、悪くないと思うわ」
雪野 「相手は人外系だし、とにかく情報が少ないわ」
雪野 「出来る限り、先発で相手を見極めていきたいわね」

イェスとマリオンがふたりで作戦会議を仕切ってしまっている。
まぁ、私たちではこう言った考えが及ばないから、仕方ないだろう。

蛍 「はぁ……何か、嫌な予感がするなぁ〜」





ワァァァァァァッ!!


ウォーズ 「さぁ! 今回は俄然盛り上がってきております!」
ウォーズ 「注目度合いは今大会でも最高クラスの『DOLL's』が登場です!!」
ウォーズ 「何と、メンバーのいずれもが超! とびっきりクラスの美少女揃い!!」
ウォーズ 「対する『擬人集』メンバーはいずれも男臭い!!」
ウォーズ 「もちろん、そんな中紅一点のリィザ選手には少なからずの注目が集まっておりますが、果たして……?」




…………。



カルマ 「……やれやれ、まぁ適当にな」

雪野 「そうですね、お互いに」

相手は軽く笑ってそう返した。
ふん、自信ありってわけか……面白ぇな。
俺も苦笑し、やれやれと背中を見せる。
さ〜て……後は頼むぜ、チャンピオン。



………。



ウォーズ 「さぁ、リーダー同士の挨拶も終わった所でオーダーの発表です!!」
ウォーズ 「先鋒戦! ケイン選手 対 蛍選手!」
ウォーズ 「次鋒戦! 白羽選手 対 白姫選手!」
ウォーズ 「中堅戦! カルマ選手 対 ティアル選手!」
ウォーズ 「副将戦! レイジ選手 対 イェス選手!」
ウォーズ 「大将戦! リィザ選手 対 アリス選手!!」


ワアアアアアアァァァァァァァァァッ!!



ケイン 「やれやれ……よりによって、一番弱そうなお嬢さんかよ」

蛍 「う……そんなはっきり言わなくても」

ユウキ 「こら、私語は慎め」


男A 「そうだそうだーー!! 蛍ちゃんを馬鹿にすんじゃねぇぞーー!!」
男B 「そんな鳥頭はのしちゃってください蛍ちゃーーーん!!」
男C 「メガネ最高ーーー!! 巨乳バンザーーーーイ!!」



………。



ケイン 「……あの声援で満足か?」

蛍 「あ、えっと……あまり」(赤面)

ユウキ 「かったる……もういいから始め」

ケイン 「……はぁ、俺までかったるくなってきそうだ」

とにかく、俺は軽くその場で地面を踏み鳴らす。
悪くはねぇな……動きにくくは無い。
相手は、鞭か……射程距離は高そうだが、どの位使えるのか……。

蛍 「――! 行きます!!」

ビュォッ!! バチィィンッ!!

ケイン 「!!」

俺はガードをあえて上段に上げ、腹部に直接もらう。
スピードは凄まじいな……想像以上だ。
だが、ダメージとしちゃイマイチ……これじゃ、相撲の平手とそんな変わんねぇな。
俺は相手の表情を見て、まずは様子を見る。

蛍 「嘘……本気で打ったのに」

ケイン 「それだけか? ならこっちからも行くぜ!?」

ダンッ!!

俺は思いっきり前に踏み込む。
距離はおよそ3メートル、1秒で踏み込め……。

蛍 「!」

ヒュンッ!!

ケイン 「ぬ!? 速ぇ!?」

俺が踏み込んだ先には対象は存在せず、相手は数メートル後ろに移動していた。
どんな足の動きをしてんのか知らねぇが、一足飛びであれかよ……。


ウォーズ 「一瞬の閃光!! これこそが黄DOLLの真骨頂!」
ウォーズ 「格闘チャンプのケイン選手ですが、蛍選手のスピードに面食らっているようです!!」



ケイン (ちっ……ただの学生じゃねぇとは思ってたが、こんな足持ってるとはな)
ケイツ (やれやれ……こりゃ捕まえるのは少々面倒そうだ)

蛍 「はぁっ!!」

バチィンッ!!

甲高い音が俺の顔面を叩く。
威力はそれほどじゃねぇが、さすがに喰らった部分が腫れる。
顔面にもらうのはチトヤバイな……できる限り捌くか。

蛍 (うぅ〜……2発ともまともに入ったのに全然効いてない……これは相当大変そうだよ)

ケイン 「っしゃぁっ!!」

蛍 「!?」

ダンッ!! ビュンッ!!

俺が一歩踏み込むと、蛍もすぐに距離を開ける。
いい反応だ、常に鞭の射程ギリギリで留まっているな。
面倒臭ぇが、とにかく今は近づくしかねぇ。

ダンッ! ビュンッ! バチィッ!!
ダンッ! ビュンッ! バチィッ!!
ダンッ! ビュンッ! バチィッ!!



………。



白羽 「どうしてケインは炎技を使わないんだ?」

カルマ 「……使えば警戒されるからな」
カルマ 「相手の速度を見てみろ、あれは適当に撃っても当たらない的だ」
カルマ 「当てるには、それ相応の時間と粘りがいる」
カルマ 「飛び道具があるとバレてしまったらいざ近づいた時に詰めきれないこともある」
カルマ 「ギリギリまでは、使わないほうがいいだろうな」

レイジ 「……よくわかんねぇな、飛び道具なら鞭の外から攻撃できるのに」
レイジ 「向うが近づく瞬間を見切って突っ込むことは考えねぇのか?」

カルマ 「……タイミング合わせて踏み込めても距離があるだろうが」
カルマ 「向うさんみたく一足で距離を0にできるならいいが、無理な話だろ?」

白羽 「……時間がかかりそうだな」

リィザ (はぁ……早くご飯食べたい)



………。



ダンッ! ビュンッ! バチィッ!!

ケイン 「……!」

蛍 「もう……しつこいなぁ! こんなに打ってるのに!!」

ダンッ! ビュンッ! バチィッ!!

あれから、どの位同じことを繰り返したかな……。
俺の体にはかなりの腫れができてしまっていた。
だが、その苦労もそろそろ実を結ぶ……!
もう少し……だな!!

ダンッ! ビュッ! ドッ!!

蛍 「!? う、嘘っ!?」

俺の予想通り、相手は背中を壁にぶつける。
この瞬間を待っていた。
俺は相手が戸惑った一瞬の隙に射程距離に入った。

ダンッ!!

蛍 (くっ! 横に逃げ……)

ケイン 「遅ぇ!!」

ドボォッ!!

蛍 「げほぉっ!?」

俺は相手が逃げる方向を予測して左のボディーブローを浴びせた。
明らかに軽量の少女は俺の拳一発で軽くダウンする。
まぁ、時間はかかったがこんなもんだろう。

ケイン 「まだやるかい?」

蛍 「げふ……うぅ……まいりました〜〜……」(泣)

ユウキ 「うっし、勝者ケイン!」


ウオオオオオオォォォォォッ!!


ウォーズ 「何と言う幕切れ!! 蛍選手の圧倒的有利かと思われたこの戦いですが、勝ったのはケイン選手!」
ウォーズ 「最後は蛍選手が自分から壁にぶつかり、何とも情けない終わり方でした……」



………。



ケイン 「やれやれ……一番手じゃあまり楽しめなかったかな」

カルマ 「よく言うぜ、きっちり相手誘導させて追い詰めるなんざ、本気出してんじゃねぇのか?」

ケイン 「さてな……そんなもん適当に想像してくれ」
ケイン 「俺は寝る……」

そう言って俺は控え室で横になった。


白羽 「……寝る、か。思ったよりダメージを食らっていたようだな」

レイジ 「だな、強がっちゃいるが、鞭のダメージってのは馬鹿にならねぇ」
レイジ 「痛みでショック死してもおかしくないからな……」

リィザ 「そ、そんなに辛いんですか?」

カルマ 「鞭打ちの処刑や拷問がある位だからな、相当と思っていいだろう」

リィザ 「うわ……そんなのあるんですね」



………。



ティアル 「何よ、結局あっさり終わったわね……」

蛍 「……うぅ、最悪だよ」

アリス 「むぅ……これが噛ませ犬と言う奴か!?」

雪野 (思ったより、持たなかったか……想像以上と思った方がいいのかも)

イェス 「かなり苦しくなりそうですね……残りのメンバーでどこまでやれるか」



………



ワァァァァァァッ!!


ウォーズ 「さぁ、次は次峰戦!! 擬人集からは鋼鉄の翼こと白羽選手が入場!」
ウォーズ 「無骨なイメージからは想像の着きにくい好青年ですが、実力は果たしてどうか!?」
ウォーズ 「対するDOLL'sは皆のアイドル! 白姫選手だーーー!!」
ウォーズ 「ご存知、頭脳明晰! 容姿端麗! 文武両道のパーフェクトガール!!」
ウォーズ 「ファンも多い中、果たしてどんなバトルを見せてくれるのか! 期待が高まります!!」



………。



白羽 「……」

雪野 「……」

俺たちは互いに静かに佇む。
いくら戦いとはいえ、相手は女の子……俺はどうするべきか。

ユウキ 「んじゃ、始め」

雪野 「はっ!」

シャキィンッ!! ガキィィンッ!!

白羽 「!!」

雪野 「くっ……!」

試合開始と同時に相手が剣で切りかかってくる。
縦から振り下ろされた剣は俺の翼に遮られ、弾かれた。

白羽 「……手加減か? 不意打ちにしては優しいんだな」

雪野 「……どうも、本気になられていないようなので」

なるほど、相手にそんなことを気遣われるとは思わなかった。
本気……か、どうも俺は女には優しすぎるようだな。
だが、相手がそれを望むのであれば仕方ない!

白羽 「いいだろう! ならばこの試合、俺は全力で相手をする!!」

ブォンッ!!

雪野 「!!」

ガキィィンッ!!

俺は右翼を『はがねのつばさ』で硬質化させ、相手の頭上から振り下ろす。
だが、相手は二刀の剣を持って受け止めて見せた。
俺の翼は鋼鉄を切り裂く鋭さなんだがな……相当な強度の剣と言うことか!

雪野 「はっ!!」

ガァシィィッ!!

白羽 (!? 俺の皮膚を切り裂いたか! 大した切れ味だ!!)

相手の一撃は俺の腹部を切り裂き、俺の体からは血が滲む。
並の一撃では俺の体を切り裂く等不可能……だがそれを可能とするとは。

白羽 (なるほど! 舐めて掛かるようでは俺の方が五体満足で済まんな!)

俺は気を引き締めなおし、その場から空中に飛ぶ。
卑怯……と思われても仕方ないが、本気と言うからには俺は最大限の戦術で対応させてもらう。


ウォーズ 「さすがは白羽選手! 相手の攻撃力を高いと見るや、すぐさま空中に避難!」
ウォーズ 「白姫選手も、これにはお手上げか!?」


雪野 「やっぱりそう来たわね……だけどそれも折り込んでいるわ!!」

ヒュヒュヒュ!!

白羽 「そんな短剣など!!」

キキキィンッ!!

俺は相手がストールの裾から出した短剣を弾き落とす。
スピードは中々だったが、威力は所詮並の鉄程度。
俺の皮膚を貫けるほどじゃない。

白羽 「次はこっちの…ぅっ!?」

俺は相手がいた場所を見下ろすが姿がいないことに気づく。
そして、俺が『しまった』……と思う前に頭上に違和感を感じた。

白姫 「ハァァァァッ!!」

ザシュシュゥゥゥゥゥッ!!

白羽 「!? ぐぅぅぅぅぅっ!!」

頭上から、二刀の剣が振り下ろされ、俺の翼が切り落とされた。
さすがに間接部分はモロイ……が、こうもあっさり頭上を取られるとは……!

ヒュゥゥゥゥゥ……ズドォンッ!!

白羽 「……くっ」


チャキッ!

雪野 「……さぁ、続けるか否か、好きにするといいわ」

白羽 「……俺の負けだな、降参する」

ユウキ 「うむ、この勝負、白姫先輩の勝ち!」

ワァァァァァァァァァァッ!!


ウォーズ 「決まりました! 何と華麗な戦い!!」
ウォーズ 「不利と思われた空中の相手を見事に落として見せました!!」
ウォーズ 「なお、白羽選手の切られた翼はちゃんと元通りにされるのでご安心を!」



………。
……。
…。



カルマ 「……あっさり逝ったな」

リィザ 「あ、いや、まだ白羽さん死んで無いですよ……」

レイジ 「やれやれ……こりゃ想像以上にてこずりそうだな」

ケイン 「ZZZ……」



………。



雪野 「……」

ティアル 「お疲れさん! さっすが白DOLLね〜」

アリス 「うむ、鮮やかだったぞ、雪野」

イェス 「これで1勝1敗……タイですね」

雪野 「油断はしない方がいいわね……考えているよりも遥かに相手は強いわよ?」
雪野 (たまたま、私の魂命が相手の装甲を超えていたから良かった)
雪野 (もし、私の魂命で切れない相手だったら……私に勝ち目は無かったかもしれない)



………。



ワァァァァァァァァッ!!


ウォーズ 「さぁ、俄然盛り上がってまいりました!!」
ウォーズ 「取られれば取り返す! 擬人集ももDOLL'sも負けず劣らず!!」
ウォーズ 「さぁ、次は擬人集のリーダー、カルマ選手が入場!」
ウォーズ 「大してDOLL'sは赤い髪とツンデレが好印象のティアル選手!!」


ウォォォォォッ!!


カルマ 「さて、どんなもんか……」

ティアル 「……まっ、やれるだけやりますかね」

相手は特に退いた様子も無く、落ち着いていた。
中々肝は座っているようだな……手加減の必要は無さそうだ。

白羽の奴は相手の能力を甘く見たからあんな結果になったが、実際には負ける要素は少ない勝負だった。
俺はその点、初めから甘く見るつもりは無い。
赤DOLLの性能はデウス先生の戦いで見せてもらった、特徴は大体わかってる。

カルマ (パワーは相当、だがスピードはイマイチって所か)
カルマ (防御力はただの人間並、一撃放り込めればほぼ終わる!)

ティアル (くっそ〜、相当強そうね、こりゃ不意打ち一発でどうにかなる相手じゃ無さそうね)

ユウキ 「よし、始め」

カルマ 「ウラァッ!!」

ティアル 「ちょっ! いきなりぃ!?」

ビュォオンッ! ドガァッ!! ズザザァッ!!

カルマ 「ち……力入れすぎたか」

ティアル 「ア、アンタねぇ! こんな可憐な美少女相手に開幕から全力で切りかかる!?」

カルマ 「安心しろ、俺は見た目で女は信用しないタチでな」
カルマ 「初っ端から、切り捨ててやるから安心しな!!」

チャキィッ!

俺は愛刀の『風林火山』を手に相手をしっかりと睨みつける。
いきなりの一撃に驚いたのか、相手は顔を苦めていた。

ティアル (こんのぉ……さすがにティアルちゃんを舐めないでよね!!)

チャキキィッ!!

カルマ 「ぅっ!? チャカだと!?」

相手が二丁構えた物体を見て俺は驚く。
さすがにこの獲物は予想してなかった……まさか飛び道具とは。

ティアル 「とりあえず吹き飛べぇ!!」

ダァンッ! ダァンッ!!

カルマ 「大いなること、山の如し!!」

バキィンッ!!

俺は相手の銃から放たれた銃弾を『一発』、弾き返す。
だが、もう一発までは無理だった……残りは俺の頬を掠めて通り過ぎる。

カルマ (……ちっ、何て重さの弾丸だ、俺の力で振るった剣を痺れさせやがった)

本当は二発とも弾くつもりだったが、一発目だけで次が打ち込めなかった。
自慢じゃないが、俺は力には相当な自信がある。
単純な力比べならケインやレイジにも勝てるつもりだ。
だが、こいつの弾丸は俺の一刀に匹敵する威力を叩き出した。
ぶっちゃけると、喰らったら死ぬ!

カルマ 「マジか……これはさすがに予想GUYだぜ!」

ティアル 「ふっふ〜ん♪ 私の実力に気づいた頃には遅いわよ!」
ティアル 「大人しく蜂の巣になりなさい!!」

ダダダダダダダッ!!

カルマ 「ちょっ! 弾幕かよ!?」

相手は調子に乗ったのか、連射してくる。
軌道も全部デタラメで、叩き落すのは無理だ!
一発でも当たれば、それこそロディマス○ンボイの様に宇宙の塵となるだろう……。

カルマ 「だが! このカルマ!! そんな攻撃に対処する術も心得てある!!」
カルマ 「秘技!! 絶対拒絶領域!!」

ピキィィィィンッ!! カカカカカカカカカカカァンッ!!

ティアル 「ば、馬鹿な……無傷だとぉ!?」

カルマ 「ふはははははっ! 見たか俺の○Tフィールドを!!」
カルマ 「貴様の攻撃など、俺には通用せん!!」

俺は相手のうろたえた顔を見て馬鹿笑いする。
さすがに『まもる』の絶対防御は予想できなかっただろうな!
とはいえ、この場は凌げた物の、連続して打ち続けられると洒落にならん……。
この技は連発する○子力バリア並に脆くなるからな……。(汗)

カルマ 「とりあえず、反撃をさせていたただく!!」

ゴォォッ! ゴワァァァァァッ!!

ティアル 「うっそっ!? 剣から火が!?」

相手は咄嗟の判断でその場から横に飛ぶ。
俺の剣から放たれた『だいもんじ』は地面に着弾し、大の字に燃え上がった。
ちっ、さすがにこの距離じゃ命中しにくいか……。

カルマ (だが、何とかするしかねぇ! この距離をどうにかしねぇと、ジリ貧だからな!)

相手にスピードはあまり無い、懐とれりゃあ楽勝のはずだ!

ダダダダダッ!!

ティアル (突っ込んできた! だけど、そうは問屋が卸さないっての!!)

ダダダダダダダダァンッ!!

カルマ 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

バビュゥゥゥッ!! ゴゥワァァァァァァァァッ!!

俺は渾身の力を込めて『かまいたち』を放つ。
ギリギリまで溜めた真空の刃で弾丸を全て逸らし、そのまま攻撃にした。

ティアル 「キャアアァッ!!」

バァァァンッ!!

相手は辛うじて直撃は避けるものの、風圧で吹き飛び、地面に転がる。
モロいな! やはり防御力はその程度か!

俺は相手の隙を突いて一気に踏み込む。
相手がこちらに向く前に十分距離は詰められる。
後は一撃入れれば終了! ちょろいもんだぜ!!

カルマ 「覚悟しやがれ!」

ティアル 「舐めんじゃないわよーー!!」

ガキィィィンッ!!

カルマ 「な、何っ!?」

何と、相手は俺の振り下ろした剣を二丁銃を交差させて受け止めていた。
冗談じゃねぇ……俺の剣は岩をも切り裂く切れ味だぜ!?
それが、こんな銃ごときで止められただと……?

ティアル 「ふふふ……銃は剣よりも強し! ンッン〜! 名言ねこれは!!」

キィィンッ!!

カルマ 「!?」

相手は銃を一気に振り上げ、俺の剣をカチ上げる。
マジかよ……パワー勝負で俺が負けるか!?
当然、俺のガードはがら空き、相手はすでに銃を構えている。

ティアル 「チェックメイトよ!!」

カルマ 「まだ終わるか!!」

ピキィィィィィィンッ!!

俺は『まもる』を使い、何とか今の状況の脱出を試みる。
だが、俺が思っているよりも遥かに相手の方が上手と言うことに気づいた。

ダァァァンッ!! シュイィンッ!! ブシュゥゥゥッ!!

カルマ 「……がっ!?」

俺は『まもる』を使い、完全に攻撃をシャットできるはずだった。
だが、相手の銃弾はそのフィールドをすり抜けて俺を射撃しやがった……。
マジかよ……反則だろ、そりゃ……。

ズシィィィンッ!!

ユウキ 「……勝負あり、TRの勝ち」

ティアル 「待てコラ!! 何でお前がそのネタ知ってる!?」


ワアアァァァァァァァァァッ!!


ウォーズ 「お見事! TRの必殺技でカルマ選手見事にダウン!」
ウォーズ 「これでDOLL'sは2連勝! 先にリーチをかけました!!」
ウォーズ 「追い詰められた擬人集! 果たして踏み止まれるのかぁ!?」



………。



リィザ 「……負けちゃいましたね」

レイジ 「……う〜む、こりゃ想像以上にヤバそうだな」

リィザ 「……って言うか、この時点で私が戦うこと確定ですよね?」

レイジ 「……俺が負けなければな」

リィザ 「あ、いや! レイジさんに負けてほしいわけではなく……!」

レイジ 「いいよいいよ、別に気を使わなくても……」
レイジ 「誰だって好き好んで戦いたいわけじゃないだろうし」
レイジ 「まっ、俺は負けるのが嫌いだけどね」



………。



アリス 「よくやったぞティアル!」

ティアル 「あったりきしゃかりきよぉ!! こんこんちきしよぉ!!」

バチィンッ!!

私はアリスのハイタッチに応えて笑う。

ティアル 「いや〜、ただの噛ませ犬と思った連中には悪いけど、私の圧勝だったわね!」

雪野 「少々、出来すぎだと思ったけど……まぁいいわ」
雪野 (って言うか、いつの間にあんな能力を?)

イェス (あの銃弾、明らかに特殊弾でしたよね……)

ティアル 「だっはっはーー!! ティアルちゃん強い!! 最強! 」

アリス 「うむっ、調子のノリかたのも実に小物だ!」

ティアル 「じゃかぁしぃ! 勝てば官軍よ!!」



………。



ワァァァァァァァァッ!!


ウォーズ 「さぁ、この試合もいよいよ後半戦!」
ウォーズ 「DOLL'sはここで決めてしまうのかぁ!?」
ウォーズ 「それとも、擬人集が巻き返すのか!」



レイジ (やれやれ……な〜んか、嫌な予感がするねぇ)

イェス (体は大きいですね、ですが素早くは無さそう……相性は悪くない、か)

ユウキ 「よし、始め」

ダンンンンッ!!

イェス 「きゃっ!?」

レイジ 「うらぁぁぁぁっ!!」

ブォンッ!! ガキィィィンッ!!

イェス 「あぅぅぅっ!!」

ドンッ! ズザザザザザァッ!!

俺は開幕から軽く地面を踏み抜き、地面を揺らして相手のバランスを崩す。
そして、そこから一気に踏み込んで右拳を振りぬいた。
相手は槍で止めようとガードはしたが、バランスが悪く簡単に後ろへと吹っ飛ぶ。
後は人形みたいなもんだ、地面に落ちて滑っていきやがった。

レイジ 「うっし! 本日も好調!!」

イェス 「くっ……これほどのパワーとは!」

相手は予想以上に簡単に起き上がってきた。
思ったよりもタフだな……ガードの上からでも気絶させるつもりだったんだが。
今までの相手を見ると、とにかく武器が硬いことと、防御力は低いことが目立ってた。
こいつも同じかと思ったんだが……予想外だぜ。

レイジ (なるほどな、白羽もカルマも、この予想外に負けたんだ)
レイジ (相手のことがわからないってのは本当に怖い)
レイジ (ポケモン相手ならともかく、それ以外が相手ってのは、想像以上にきついもんなんだな)

俺は頭の中でもう一度整理して、相手を見据える。
慎重になるに越したことは無いが、俺の流儀は守るより攻めるだ!
相手の防御力が気になる所ではあるが、ここは攻めきって見せるぜ!!

イェス (こんなレベルの相手に……よくマリオンやティアルは勝てましたね)
イェス (ですが、私も負けるつもりはありません! 相手の大将の実力がわからない以上、ここで終わらせないと!)

チャキィッ!!

相手は槍を構え、俺の攻撃を待つようだった。
なるほど、受けきるってわけかよ……つまり、防御力には自信ありってことだ。
しゃあねぇな……なら受けて立つぜ!!

レイジ 「1tの大岩をも持ち上げるラグラージ種のパワー! 舐めてもらっちゃ困るぜ!?」

ドドドドドドッ!!

俺は相手に向って一直線に進む。
相手は腰を落とし、迎え撃つ態勢だが、向うから攻撃してくる意思は感じない。
むしろ、俺の攻撃を受けた上で反撃してくる気だろう。
反撃を受けたら俺の体でもヤバイだろうな。

レイジ (だが、攻撃こそ最大の防御ってねっ!!)

俺は相手の近くまで移動すると、その場で強く両足で地面を踏み、腰を落とす。

ズシイイイイイィィィィンッ!!

イェス 「くっ……そう何度も!!」

さすがに相手も同じ手は食わない、しっかりと踏ん張って地震に対抗した。
だが、今回は相手のバランスを崩すのが目的じゃない。

バァッ!!

イェス (嘘……!!)

ガキィィィィィィンッ!!

甲高い音が鳴り響き、俺は相手の槍を弾き上げた。
方法は単純、俺は地面を踏み抜いた後、そのまま1回転後方ジャンプを行ったのだ。
要はバック宙だが、その際に尻尾で相手の槍を下から突き上げ、弾き飛ばしたってわけ。
相手は完全に俺の尻尾技はノーマークだったようで、いとも容易く弾き上げられた。
そして、俺はそのままもう一度地面を強く踏み抜く。

ドォォォォォォォッン!!!

イェス 「あっ……!?」

レイジ 「ちょいさぁっ!!」

ズダンッ! ドッギャアアァァァァァァァンッ!!

レイジ 「……」

イェス 「………ぁ」

パラパラ……。

ユウキ 「……ん、この勝負レイジの勝ち」

俺は地面に突き刺さった腕を引き抜く。
俺の地面揺らしで相手はまたバランスを崩し、地面に倒れた所で俺はすぐさま追撃で上から殴りかかったのだ。
だが、そこは一応温情、相手は殴らず、地面を殴った。
モチロン、衝撃で地面にはクレーターができている。
まともに殴ったら今頃ミンチだっての……。
まっ、とにかく勝ちは勝ちだ、後は頼むぜ……リィザ。



………。



リィザ 「…あの、お疲れ様です」

レイジ 「おう、悪ぃな!」


ゴクゴクゴクッ!

俺はリィザから差し入れられたミネラルウォーターを飲んだ。
久しぶりに戦闘すると意外に体が渇くぜ。

ケイン 「ZZZ……」

レイジ 「で、コイツはまだ寝てるのか……?」

リィザ 「あ、ハイ……多分起きないかと」



………。



イェス 「……面目ありません」

アリス 「落ち込むなイェス、後は私に任せろ!」

ティアル 「全く……蛍といいアンタといい、何で格闘系には負けるのよ!」

雪野 「センスの違いかしらね……やっぱり一対一での戦いに慣れている格闘家って言うのは怖いのよ」
雪野 「イェスは相性も良くなかった……回復力の高い緑DOLLとはいえ、あんなパワーの相手には小石と同じだわ」

ティアル 「……そんなもんかねぇ〜」

アリス 「何はともあれ、後は私が勝つ……それで最後は優勝だ!」
アリス (うむ、勝ってラーメンの屋台をもらうぞ! それで皆にラーメンを作ってあげるんだ!)



………。



ワァァァァァァァァァァッ!!


ウォーズ 「さぁ! いよいよ最後の戦い!!」
ウォーズ 「泣いても笑ってもこれで勝負が決まる!!」
ウォーズ 「擬人集からはついに皆が待っていた紅一点!!」
ウォーズ 「不思議な雰囲気の見た目は魔女っ娘! ちょっと黒ミサ入ってるがマニアには馬鹿受け!!」
ウォーズ 「しかも大食いの属性とただの地味キャラではない!!」
ウォーズ 「リィザ選手の入場です!!」


ワァァァァァァッ!!


リィザ 「うわぁ……こんなに盛り上がってるんだ」


ウォーズ 「対するDOLL'sからは青DOLLことアリス選手の入場です!」
ウォーズ 「普段無口ながらも行動力は高い!」
ウォーズ 「空も飛べる、ラーメンも食べる! 何かと不思議属性だが、実は結構やり手!?」
ウォーズ 「野郎どもの期待も高まっております! 果たして強いのか!?」


ワァァァァァァァッ!!


アリス 「……うむ、今日もいい調子だ」

ビュオンッ!

相手は、剣を一振り振るい、感触を確かめていた。
あれが、魂命と呼ばれる彼女の剣。
その強度は、白羽さんの体を切り裂き、カルマさんの剣をも止めた。
私にはあれを砕くことはできそうも無い……倒すなら本体、だけど。

リィザ (……できれば戦いたくなかったな)

私は戦いは好まない、可能なら戦わずに過ごしたかった……。
今回はたまたま、人数合わせで私が出ることになっちゃったけど。
相手はやる気のようだし、避けられそうも無かった。

リィザ (それに……皆が戦ったのに、私だけ戦わないって言うのは……ちょっと)

私は強引にそう理由付けて、一歩前に出た。
首に巻いているスカーフを調え、相対する。

リィザ 「……」

アリス 「………」

ユウキ 「よし、始め」

アリス 「!!」

ドガァッ!!

オオオオオオォォォッ!!

アリス (かわされた!? それも、簡単に……!)

リィザ (危なかった……スカーフの効力が無かったら今のでやられていたかも)

私は装備している『みかわしスカーフ』を手に、しっかりと首に巻き直す。
このスカーフがあれば、いかなる物理攻撃も私には通用しなくなる。
ただし! この効果が発動すると……。

リィザ (お腹空くんだよね……一発ごとに)
リィザ (持ってくれるといいけど……)

アリス 「ハァッ!!」

ビュォンッ! ブォォンッ!!

私は次々と繰り出される彼女の剣を巧みに回避する。
とは言っても、半分以上はこのスカーフの力。
じゃなければ、私のスピードでも回避なんて出来ない速度だ。
一撃でももらえば終わり……でももらわなければ、私の勝ち。

リィザ 「……降参する気はない?」

アリス 「? どうしてだ?」

彼女は不思議な顔をしてそう言った。
う〜ん、そんな顔されても困っちゃうんだけど……。

リィザ 「このまま続ければ、あなたはきっと負ける」
リィザ 「できれば、怪我はさせたくないの……だから、降参して」

私が真剣にそう言うと、彼女は少し考え始める。

アリス 「……お前は優しいんだな」
アリス 「だけど、私は負けないぞ……負けるとは思わない」
アリス 「きっと勝つ! だから心配はいらないぞ! お前も本気で来い!!」
アリス 「私は……それでも勝ってみせる!」

彼女は強い意志を込めて剣を構える。
退くつもりは一切無い、彼女はそう言っているのだ。
何となく予想はしていた……できるなら戦わずに済ませたかった。

リィザ (でも……やらなければならないのね)
リィザ 「わかったわ、でも私の力はあなたが思っているよりも遥かに強いわ」
リィザ 「危険と思ったら、すぐに降参して……」

アリス 「そんなことはわからない! 私は最後まで諦めないからな!!」

彼女はそう言って剣を振り下ろしてくる。
私はそれに合わせて、『言魂(ことだま)』を放った。

バァンッ!!

アリス 「!?」

爆発音と共に、彼女の剣は弾かれる。
だが、彼女はしっかりと剣を握り締め、手を離すことは無かった。

アリス 「……な、何だ今のは? 魔法か?」

リィザ 「そうね、そう思ってもらってもいいわ」
リィザ 「あなたが私に打ち込んで来る限り、迎撃をさせてもらうわ」
リィザ 「もちろん、来る度に徐々に力は強くしていく……あなたの心が折れるまで」

私はそう言って、無防備に立つ。
構えはいらない、スカーフがある限り攻撃は当たらないのだから。
私の攻撃に武器はいらない、私の言葉その物が武器なのだから。

アリス 「はぁぁっ!!」

リィザ 『ヴェン』

ゴバァンッ!!

アリス 「うぅっ!!」

今度は彼女の手元を爆発させる。
炎と風の『言魂』で簡単に爆風を作り、ダメージを与えたのだ。
今の一撃で、確実に彼女の手は火傷し、激痛が伴っているはず。
それでも、彼女は私に強い視線を投げかけていた。

リィザ (どうして? そうまでしてこの試合に勝ちたい理由があるの?)

アリス 「つ、強いな……お前は」
アリス 「近づこうとしたら、手が爆発した……火傷して、剣も握りにくい」
アリス 「でも、私は負けないぞ……! 皆にラーメンを作ってあげたいからな!」

リィザ (ラ、ラーメン……? そ、そんなことのために……?)

一体どんな理由があったのかと思ったら、ラーメンだとは……。
いや、でも彼女にとっては大事なことなんだろうけど。

アリス 「行くぞ! 私はまだ戦える!!」

リィザ 「! 『フィズ』」

ビキィッ!!

アリス 「うああぁっ!!」

私は氷の言魂で彼女の足を凍らせる。
そのまま無理に動かそうとすれば、足が千切れるだろう。
動きは封じた、これでもう……。

アリス 「うぉぉぉぉっ!!」

リィザ 「止めるのよ! 足が無くなってもいいの!?」

ブチチィッ!!

彼女は無理に足を引き千切り、空を飛んだ。
無茶苦茶だ……そんな姿になってまで。
いくら、回復が可能だからって、こんな……!

アリス 「うぉぉぉぉぉぉっ!!」

リィザ 『スレィ』

ドシュゥッ!! ガチャァァンッ!!

アリス 「あ…ぅ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

彼女は悲鳴を上げて地上へと落下する。
私は風の言魂で彼女の両腕を切り落とした。
もう、両手も両足も使えない……彼女は完全に敗北だ。

リィザ 「審判! 彼女はもう戦闘不能です!」

ユウキ 「……だな、こりゃさすがにヤベェわ……この勝負、リィザの……」

ギュゥゥゥゥゥンッ!!

リィザ 「な、何……こ……こ、の……か、感…覚……わ!?」

審判が私の勝利を宣言しようとした瞬間、突然空間がねじれたように……訳がわからなく!?



………。



リィザ 「……こ、ここは!?」

? 「………」

リィザ 「うっ!? あ、あなたは一体!?」

? 『我はガーディアン「テラー」、運命を司るIFを守護する者……それを傷つける者を駆逐する』

リィザ 「く、駆逐!? 敵……なのっ!?」

とにかくわけがわからない!
ただ、相手は確実な殺意と敵意を持っていることがわかった。
私がアリスと言う少女を傷つけたのが、原因なのだろう。

リィザ 「やるしかない、のね……!」
リィザ 『ラゥバ!!』

シ〜ン……。

リィザ 「え……? 嘘……どうして!? 言魂が発動しない!?」

テラー 『私の世界に言葉の力は宿らない』
テラー 『この世界で発生する言語は全て私の理解の内だからだ』
テラー 『お前の言語はここでは意味を成さない』

リィザ 「そ、そんな……!」

最悪だ……まさかこんなことになるなんて。
言魂が無くても戦う術はあるけれど、通用するだろうか?
無理だ……何故か、そんな予感だけが過ぎる。
私は、ここで死ぬの?

テラー 『ちなみに、私は死すら許さない。この世界で死ぬとどう言う意味を持つか……わかるか?』

リィザ 「……?」

テラー 『この世界で死ぬと。それは現実世界との別れを意味する……すなわち、お前という存在は無かったことになる』

何よそれ……それじゃ、私は。

リィザ (解き放たれるのだろうか……この運命から?)

一瞬、そんなことを頭が過ぎる。
確実に訪れる悲しい運命……私はいずれそうなる定めだ。
だけど、ここで死ねば、それら全ても無くなってしまうのだろうか?
そう思うと、不思議に私は死ぬのが怖くなくなってしまった。

テラー 『私は全にして、壱なる者』
テラー 『私よ。IFを狙う者を駆逐せよ』

ヒュンヒュンヒュン!!

彼女が言うと、突然無数の彼女が出現した。
どれも同じ容姿、体格で、ほとんど同位体のようだった。

テラー 『私はこの無数に私の中の一人だ』
テラー 『この場に居るのは全て私本人ではあるが、この私たちを統率するのは一人の私だ』
テラー 『わかるか? この『666』体いる、統率を司る私が?』

リィザ 「……」

わかるわけがない、だけど確実に言える。
私は『終わり』だ……ここで、全てを終える。
もう……終わろう、こんな運命から。

テラー 『さらばだ、愚かな者よ』

ババババッ!!

無数の彼女が私に絡みついてくる。
冷たい……体中の体温が奪われていくようだ。
次第に私の意識は失われていった……だけど、不思議と痛みも無く、苦しくもなかった……。



………。



テラー 『これで、脅威は去った……アリスの復元も完了』
テラー 『後は、何事も無いように、現実に戻すだけ……』

? 「……残念だが、このまま終わらせる気は無い」

テラー 『!? 馬鹿な……何故、この世界に異物が?』

? 「我が名は『レイソムリア』、巫女に害成す者を排除する!」

テラー 『レイソムリア……? 私を排除? それは無理だ』

レイ 「無理と言ったのか? だとしたら哀れだな」
レイ 「お前にも私を倒すことは無理だ」
レイ 「私はこの世の裏側に存在する世界を統べる者」
レイ 「我が『鎌』に切り裂かれた者は、速やかに世界との綱を切り離される」
レイ 「平たく言えば、『死』だ……それはお前の世界とて例外ではない」

バシュゥゥッ!

私は巫女に纏わり着いていた者を全て切り裂いた。
切り裂かれた者は世界の理から切り離され、存在を維持できなくなる。
それを目の当たりにしてか、奴は考え始める。

テラー 『……なるほど、確かにこの戦いは危険と判断する』
テラー 『続ければ、互いが消滅することもありうる』
テラー 『また、お前を倒すことで世界のバランスを破壊することになりかねない』
テラー 『よって、結論を出す……私は退く』
テラー 『それにより、双方が無傷でこの状況を抜ける……』

レイ 「……私は一向に構わん、貴様が手を出さぬのなら、私は巫女を連れ帰るだけだ」

テラー 『双方の意見が一致したと判断する』
テラー 『私はアリスを護り』

レイ 「私はリィザを護る」

私たちはそう言って、しばし黙る。
そして私はリィザを抱え、世界に穴を開けてそこから元の世界に戻った。


テラー 『……忘れるな、愚かな者たちよ』
テラー 『IFの力を欲する者は何人たりとも私が許しはしない』
テラー 『その度に、私は何度でも牙を剥こう……』



………。
……。
…。



ユウキ 「……一体、何がなんだか」

ドサッ!

リィザ 「………」

ユウキ 「おっ、帰ってきたか! 無傷……とも思えねぇが」

アリス 「……良かった、私のせいで、リィザが死んだらと思うと」

私はリィザが帰ってきたことに何より喜んだ。
あれから、何が起こったのか全くわからない。
ただ、私はいつの間にか体が再生し、リィザは世界から消えた。
これが、私の持つIFの力なのだろうか? だとしたら……あまりに危険すぎる気がした。

アリス 「……この勝負、完全に私の負けだ」

ユウキ 「……う〜ん、まぁ前の判定からもそれははっきりしてるしな」
ユウキ 「ってなわけで! 改めて、勝者リィザ!!」


ワァァァァァァァァァァァッ!!


ウォーズ 「終わりました! リィザ選手が突然の失踪に驚かされましたが、どうにか帰還!!」
ウォーズ 「何が起こるかわからないこの模擬戦! まだまだ波乱が待っていそうです!!」



………。
……。
…。



リィザ 「……」

アリス 「じゃ、後はよろしく頼む」

レイジ 「任せな、お前さんは大丈夫なのか?」

アリス 「私は大丈夫だ。いつの間にか治った」

自分でも不思議に思う。
だが、これもIFの力なのだろう。
私は負けたく無いと思った、死んでも負けたく無いと思った。
そう思ったら、こんなことになった。
リィザが生きていて良かった……もし帰ってこなかったら、私は自分の首を切り落としてでも償うつもりだった。

レイジ 「…\まぁ、深く落ち込むなよ? 生きていりゃそれでいいんだから」
レイジ 「まぁ、結果は結果。俺たちゃ、お前さんたちの分まで戦ってやるよ」

アリス 「うん、そう言ってくれると私も嬉しい」
アリス 「頼んだ」

レイジ 「つかまつる!」





ユウキ (……テラーにレイソムリアか……『ジャッジメント』に報告義務があるが……かったりぃなぁ……)
ユウキ 「見なかったことにしよっと」

この外史の根幹を突き崩すかもしれない2つの事象、それぞれは独立していれば何の害も無いが、もし同調すればすべての破滅を呼ぶ可能性さえある。
だが、信じようじゃないか……『ヒト』の持つ可能性とやらを。
ああ、かったるいかったるい……なにはともあれ第2回戦か。





…To be continued




なお、ここから『おまけ…敗北者トーク』へ。




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