Fantasic Company Panic


第6話『少女の檻』



『物質界 午前0時 水瀬家』


メビウス 「やはり…あの学校から特殊な力が検出される…一度調べておかないと」


………


トラン 「なに? この感じ…私を呼んでいるの?」


………


あゆ 「うぐぅ…なんなんだろう…祐一君、なの…?」


………


零 「舞…俺はお前が好きだ…会いに行く」


………

ガチャ。

ハルカ 「どこへ行くの? 零?」

零 「ハルカ…待ち伏せしていたのか?」

私は何となく、家の外にいた。
中からは零が出てきた。
別に待ち伏せをしていたわけではない。
ゆえにちょっと驚いているけど。
しかも背中にはなにやら変な棒を布で包んでいるし。

零 「……」

ハルカ 「だんまりってわけ、なら、私も勝手についていくわよ」

零 「……」

零は何も答えない。
正直この零は異質な存在なだけに気になる。
彼はどこへ行くのか。
どこだっていいか。
私は私のするべきことをする。
なんとなく…零に答えがある気がした。



…………
………
……



零 「……」

ハルカ 「学校…」

トラン 「零さん…ハルカさんまで」

ハルカ 「トランちゃん?」

なんと先客がいた。
なんでトランちゃんが?

ハルカ 「トランちゃんどうしたのこんな時間に…」

トラン 「気になったんです…この学校から呼ばれている気がして…」

零 「……」

呼ばれている。 たしかに夜の校舎ってどこか不気味でなにかいるって気はする。
でも、零が向かってトランちゃんくるっていうのはちょっと妖しいわね。

零 「……」

ハルカ 「あ、待ってよ!」

零は構わず進む。
私も後を追う。
トランちゃんも横からとことこ追ってきた。



…………



メビウス 「あれ? ハルカさん達?」

ハルカ 「今度はメビちゃん?」

あゆ 「うぐぅ…僕もいるよ…」

トラン 「こんばんわです…」

零 「……」

校舎内に入ると今度はメビちゃんとあゆがいた。
どうやら、いろいろとここは人気スポットのようね。

ハルカ 「ここに何があるの零…?」

零 「……」

零は何も答えない。
というより目を瞑ったまま立ってる。
一体なんだっていうの?

ガキィ…。

ハルカ 「え?」

トラン 「敵意!?」

あゆ 「うぐぅ!?」

突然変な音が聞こえた。
瞬間寒気がする。
まるで殺されるような!

ブォン!!

ハルカ 「!?」

あゆ 「きゃあ!?」

突然、零が何も無いところを変な大鎌で切り裂く。
どこから持ってきたのかと思ったが、どうやらあの布の中身だったようだ。
零の鎌は死神の鎌のようにも見えるが、なぜか刃が二つもついていた。

零 「いるんだろ…舞?」

ハルカ 「え?」

零がそう言うと、突然校舎の向こうから気配を感じた。
やがて、暗い校舎に月の光が差し、近づいてくる者の正体がわかった。

零 「舞…」

舞 「私は…魔物を討つ者だから」

舞…川澄舞だ。
何故ここにいるのかそんなことはどうでもいいのかもしれない。
特に…零にとっては。

ガキィ。

ハルカ 「また!?」

舞 「…!」

零 「よせ! 舞!」

ブォン!

突然舞も何も無い空間を持っていた剣で切り裂いた。
いったいなんなのこれは!

舞 「私は魔物を討たないといけない…」

零 「舞! 魔物なんていない! 祐一の言うように!」

舞 「ちがう…魔物がいるから…祐一は…」

零 「くっ…舞! 魔物はお前だ! それはすでにわかっているだろう!」
零 「魔物は舞の能力なんだ! 魔物を討つ度に舞は弱る!」

舞 「…零は私を好きって言ってくれた…」

零 「いまでも、これからもずっと好きだ!」
零 「俺は舞と一緒にいたいんだ!」

舞 「どうしたらいいか…わからない…祐一も好きだ…零も…嫌いじゃない」
舞 「ううん…好き…」

トラン 「舞さん…私はなにがあったのかはよく知らないですけど、あなたはいい人です」
トラン 「だから、悩む必要なんてないと思います」
トラン 「受け入れてください…零さんは受け止めてくれます…」
トラン 「一緒に行きましょう…舞さんは零さんも祐一さんも両方とも好きでいいと思います」
トラン 「きっと受け止めてくれます…」

トランちゃんはそう聖母のように言う。
トランちゃんが凄いと私は素直に思う。
この娘は強い…本当に天使のようだ。

メビウス 「!? この反応…ポケモン!? いや!」

あゆ 「う、うぐぅ!?」

舞 「!」
零 「!」

ハルカ 「な、何よ!?」

突然また、気配が増える。
囲まれるように気配がある。
10人くらいかしら?

荒罪 「いやぁ、美しいですねぇ〜」

零 「お前は…?」

荒罪 「私、荒罪と申します…」

相手は礼儀正しく頭を下げる。
何…こいつ?

トラン 「敵です…!」

あゆ 「うぐぅ!? 敵なの!?」

荒罪 「やれやれ、まぁ、あなた方には消えてもらいましょうかね?」
荒罪 「この世界のことあまり知らないので…」
荒罪 「でてきなさい…みなさん」

ブラッキー 「……」

10人ほど隠れていた奴らが姿を現す。
全員黒い服装に黒い髪の毛をして、剣を持った同い年くらいの少女達だった。
これが敵の兵隊?

あゆ 「うぐぅ…みんな女の子だよ〜」

トラン 「心が支配されている…なんてことを!」

舞 「…あなたは敵…零の敵…いく!」

零 「舞!」

荒罪 「ほう! きますか!」

舞は敵の大将と思われる荒罪とかいう男に切りかかる。
て、こっちも切りかかられてるし!


『川澄舞VS荒罪』

川澄 舞 LV17 HP730
荒罪   LV19 HP900


舞 「!」

荒罪 「当たりませんよ!」

荒罪は私の横薙ぎの一撃をかわす。
結構素早い…。
でも、負けない。
この場所で私は負けるわけにはいかない。

荒罪 「あなた、こんな攻撃知らないでしょう!?」

荒罪は何やら手の平を向ける。
警戒はするけど、止まるつもりはない。
このまま斬らせてもらう。

荒罪 「はぁ!」

ゴォォォ!

舞 「!?」

突然、炎が飛び出す。
咄嗟にジャンプしてかわした。
これなら同時に頭上という死角も取れる。
このまま頭を割らせてもらう!

舞 (もらった!)

荒罪 「ふ…」

ブォン!

また、かわされる。
それと同時に後ろの尻尾が光っている。
着地で反応が遅れる…。
受けるしかない。

荒罪 「はぁ!」

ドカァ!

舞 「うぅ!」

尻尾で払いのけられるように一撃を貰う。
まるで鉄の尻尾…ふさふさしていてとても柔らかそうだったのに凄く硬かった…。

舞 「く…」

零 「舞!」

『水瀬零 LV20 HP1000』


零 「はぁ!」

ブォン!

荒罪 「無駄ですよ!」

俺の攻撃もことごとく回避される。
素早いというよりも動きに無駄が無い。
無手なだけによく戦い方を心得ている。
厄介な相手だ。
ゴルギアスにもこれほどの戦士はそうそういない。

荒罪 「鬼火!」

零 「!?」

ブォン!!

突然蒼い炎の玉が俺の周りを回った。
瞬間俺はツインサイズを薙ぎって炎を消す。
そして、次の瞬間俺は何やら怪しげな光に包まれた。
これでは周りがよくみえない。
同士討ちは問題だ…ならば!

舞 「零?」

荒罪 「目を瞑った? 心眼というわけですか」

俺はその場で目を瞑る。
視覚的効果ならこれでは意味を成さない。

荒罪 「どこまでが本気か、ためさせてもらいますよ!」

零 「!」

気配が近づいてくる。
俺はサイズを構える。

荒罪 「はぁ!」

零 「! そこ!」

俺は気配のする方にサイズを振るう。
しかし、感覚は空を切っていた。

荒罪 「やりますね! 正確ですよ! ですが!」

舞 「まだ! 零!」

零 「舞!?」

目を開けると舞が荒罪の後ろにいた。
これなら!

荒罪 「!?」

零 「もらった!」
舞 「はぁ!」

スパァン!!

俺の鎌と舞の剣が重なるようにして荒罪を切り裂く。
俺達の…勝ちだ!

荒罪 「いやぁ…さすがに2対1はつらいですね…」

舞 「生きている!?」

荒罪 「これはみがわりなんですよ…もうすぐ効果が切れますがね…」
荒罪 「今回は負けです…みなさん、さようなら」

そういうと荒罪の体は煙を上げる。
そして、煙の中には人形があるだけだった。
まさか…あれが身代わりだったのか?

ブラッキー 「……」

メビウス 「…動きが止まった?」

トラン 「敵意が消えました…」

あゆ 「う、うぐぅ…もう戦わなくていいの?」

ハルカ 「……」

相手の少女達は剣を収めると一斉にこの場から去り始めた。
なかなか統率力が取れている…。

ガキィ。

ハルカ 「今度は何!?」

舞 「……」

零 「……」

トラン 「魔物さんです…」

そう、魔物だ。
俺が舞と出会うきっかけになった魔物…。
今は祝福をしてくれるのか?

舞 「呼んでる…ずっと感じていた…魔物以外の気配…くる!」

零 「なに!?」

あゆ 「う、うぐぅ!? か、らだが重いよ!?」

トラン 「こ、れが…私を呼んでいた…も…の…」

メビウス 「これはなんだ!? 魔力、精霊力、マナ…あらゆるエネルギーがこの場から検出されている!?」

ハルカ 「なにか、嫌な予感するわね…」

なにか、体がおかしい…まるで鉛のように重い…。
重力が増したのか…いや…これは!?

? 「おっしゃ! 今度は間に合った!」

零 「!?」

突然、黒髪の少年が現れる。
この状態でまともに動けるのか!?

ハルカ 「あんたあの時の!?」

? 「よぉ、チャンピオン! 今度こそ動くなよ!?」

ハルカは知っている?
ということは味方か?

? 「我、魂魄を元に、かの者達を導かん!」

少年は何やら唱え始める。
一体何をする気だ!?

? 「…やばい…もう、間に合わない!?」

ハルカ 「ちょっと、一体どうしたのよ!?」

? 「わりぃ…間に合わん!」
? 「もう一度転移だ! どこ跳ぶか覚悟しといてくれ!」

ハルカ 「なによそれー!」

? 「怒るなチャンピオン! 俺の名はS、機会あれば今度こそ救う!」

ハルカ 「あのね! 名前なんてどうでもいいのよ!」

舞 「…私は行けないの?」

S 「!? あんた、まさか!?」

舞 「私は…」

ヒュン!



第7話『未来』


『物質界超未来:サナリィ軍事基地』


マリア 「あ〜もう! 一体どうなっているわけ!?」

ゾンビA 「ああ〜…」
ゾンビB 「あ〜…」
ゾンビC 「ああ…」

マリア 「S・H・I・T! SHIT!」
マリア 「なんで基地内にゾンビがいるのよ!? これはエグザイルの差し金!?」
マリア 「フリーダムは突然消失するし、ゾンビは徘徊するしこれがいわゆる世紀末!?」

ゾンビD 「ああ〜…」

私の名前はマリア・レウス。
フランス人よ。
ここはサナリィの軍事基地のひとつ。
今この基地の中にはゾンビが腐るほどいる。
まぁ、本当に腐っているけど…。

マリア 「この!」

ダンダン!!

ゾンビA 「ああ〜…」

私はゾンビに向かって短銃を放つ。
デザートイーグルの威力じゃ即死を狙えない。
せめて、ショットガンなら!

マリア 「くそ! 頭吹き飛んだら動けないでしょうが!」

私はゾンビの眉間を狙って放つ。
ゾンビは頭が吹き飛び倒れて動かなくなる。

マリア 「UN!(ひとつ!)」

ダンダン!

ゾンビB 「あ〜…」

マリア 「DEUX!(ふたつ!) TROIS!(みっつ!)」

私は的確に3匹のゾンビを撃ち倒す。
とはいってもあと50匹くらいはいるかしら?
これじゃあ残弾がもたないっての!

マリア 「くっ!」

私はこの部屋から出る。
ちなみにさっきいた部屋は談話室。
せめて、武器貯蔵庫とかだったら!

ゾンビG 「ああ…」

マリア 「! この!」

ザシュゥ!

私はラージスタンガンで切り裂く。
本来切り裂く兵器ではないがゾンビには十分効く。
ゾンビは銃で撃てってか!?
残弾もたないってマジで!!

シュウイチ 『マリアさん! だ、大丈夫ですか!?』
シュウイチ 『聞こえているなら急いで司令室に着てください! 繰り返します! 聞こえているなら…!』

マリア 「シュウイチ…とりあえず生きているみたいね…」

どうやら逃げる場所は決まったみたいだ。
たく、修羅場は潜ってきたけど、こういうのは心臓に悪いっての!

ゾンビH 「ああ…」
ゾンビI 「ああ〜」
ゾンビJ 「あ…」

アリア 「やば…囲まれた…」

やばいことに狭い通路上でゾンビに挟み撃ちを喰らってしまった。
何とか切り抜けないことには司令室には行けない。

指令室に行くはまずこの陣を突破して第三郭棟に出ないといけない。
その後格納庫の方に出て、一旦外に出て第一棟に入る。
そして、階段を上って3階に行けば司令塔だ。
まさに地獄の一丁目ね、ここは。

マリア 「あんたら! 邪魔よ!」

私は迷わずゾンビたちの中に入っていく。
ゾンビ程度になめられてたまりますかっての!
私はゾンビたちをたくみにかわし、広いエントランスに出る。
外に出れば、ちったぁマシでしょ!?

私はまだ機能しているシャッターを潜って外に出る。

マリア 「嘘でしょ…こんな…」

外に出るとゾンビが500くらいはいた。
どこから現れたのかはわからない。
ただ、この陣を突破しないといけないのかと思うと絶望が走った。

マリア 「くそ!」

私は走る。
一刻も早くゾンビから逃げるため。

しかし、これだけの数のゾンビ、逃げるに逃げられない…。

マリア 「囲まれた…」

最悪なことに基地の広場のど真ん中で囲まれてしまった。
空以外はゾンビで埋め尽くされたか。

マリア 「ごめんねシュウイチ…生きて帰れそうに無いわこれは…」

さすがに抵抗する気も失せる。
せめて、援軍がいればまだなんだけど。

キィィィィィン!

マリア 「!? な、なに!?」

突然空間が歪み始める。
もう何が起こっても驚かないわよ!?


ヒュン!!


ハルカ 「こ、ここは!?」

トラン …きゃあ!?」

あゆ 「う、うぐぅ〜!!!? 気持ち悪いよ〜!?」

メビウス 「ぞ、ゾンビが一杯!?」

零 「ここは一体!?」

マリア 「な、人間? でも…」

メビウス 「なんて数…」

マリア 「あなたは人間じゃない!」

ハルカ 「え? あなたは?」

マリア 「私はマリア・レウス少尉、あなた達民間人!? ここは危険よ!」

トラン 「軍人さんです…」

ハルカ 「民間人ってのも間違いないし、危険というのも間違いないわね…」

あゆ 「うぐぅ…でも、ここどこなの?」

マリア 「ここはサナリィ軍事基地! ほかに知りたいことは!?」

ハルカ 「ここはなんて世界ですか?」

マリア 「はぁ!? 地球でしょ!?」

零 「地球…ということは単に場所を移動したのか?」

メビウス 「それよりあれはどうするんですか〜?」

トラン 「倒しましょう…というよりそれしかないです…」

ハルカ 「しょうがないわね…」

零 「……」

あゆ 「うぐぅ…気持ち悪いよ〜」(泣)

マリア 「あなたたち…戦えるの?」

ハルカ 「まぁ、もう慣れてますし」

あゆ 「慣れたくはないよ〜」

なんだか、とても頼りなさそうだけど仕方ない。
援軍と思ってやるしかないわね!

マリア (にしてもどうみてもみんな未成年じゃないのよ!)
マリア (おまけにあの黄色い一つ目なんてモンスターだし…)
マリア 「ええい! やるしかない!」

もう、とっくに腹は据えたでしょうが!
やぁってやるぜ!


零 「はぁ!」

ザシュウ!

あゆ 「うぐぅ!!」

ハルカ 「バシャーモ! 火炎放射!」

バシャーモ 「シャーモ!」

ゴォォォォ!

メビウス 「熱視線発射!」

ビィィィ!

マリア (この娘たち…明らかに現実離れしているけど、やるわね)
マリア 「こりゃ、私も頑張らないとね!」

そう言って私もゾンビたちに銃を乱射する。
乱射といってもしっかり眉間を狙っているのだが。

ゾンビ 「ああ〜…」

マリア 「本当に多いわ…」

零 「倒しても倒しても…きりが無い」

ハルカ 「いわゆるジリ貧ね」

バシャーモ 「シャーモ…」

たしかに、ジリ貧だ。
どうすればいい!?

ドシュゥゥゥ!!

突然閃光。
強大なエネルギー兵器がゾンビたちをまとめて焼き払う。

零 「な、なんだ!?」

トラン 「あれは…」

ハルカ 「巨大ロボット!?」

あゆ 「おお、お、大きい!」

マリア 「あれは…ホワイトウインド…まさか!」

デルタ 『大丈夫ですか、マリアさん』

マリア 「デルタ! あなたこそ無事だったのね!」

突然援軍にきたのはデルタ。
デルタ・メラス元少佐だった。
これはありがたい、これなら余裕ね!

ハルカ 「冗談厳しいわ…いや、もう何でもありだったわね」

トラン 「人型は私達の世界にもあります」

ハルカ 「まじ?」

トラン 「まじです…」

デルタ 『急いで司令室まで向かってください』
デルタ 『ゾンビたちは私が引き受けます』

マリア 「おっしゃ任せたわよ!」
マリア 「あなた達、こっちよ!」

私はそう言って司令室を目指す。
ゾンビはデルタに任せれば一網打尽だわ!
今更ゾンビなんて古いのよ!
何世紀前の映画じゃあるまいし!



………



シュウイチ 「マリアさん! 良かった無事で!」

マリア 「いやぁ、デルタとこの子たちの助けが無かったら間違いなくゾンビの仲間入りだったわ」

ハルカ 「そりゃそうよね…」

私もそう思う。
あれだけのゾンビ。
巨大ロボットの一機や二機ないとわりに合わないもの。

零 「ここはとりあえず大丈夫のようだな…」

メビウス 「ふぅ、やっと一息つけますね」

マリア 「で、あなた達何者なの?」

ハルカ 「えと、私たちは…」

かなり説明に困るけど、私は説明できることできるだけ全て説明する。
本当の信頼を得るためには嘘偽りは必要ないわよね。
最も、信用してもらえるといいんだけど…。



………



トラン 「…本当です」

マリア 「オーマイゴット…フランス語で言うとAucun levier ? il est」

マリアさんはコメカミを抑えてそう言った。
まぁ、すぐに信用されるはずないわよね…。

マリア 「いえ、信用はするけど…その…」

シュウイチ 「あ、はは…」

メビウス 「?」

ふたりはメビウスを見つめる。
ああ、そういうことか…。

ハルカ 「メビちゃんは危ないモンスターじゃないですよ」

メビウス 「イエース、自分は敵ではないです」

あゆ 「メビちゃんは友達だよ♪」

シュウイチ 「あ、はは…」

マリア 「はぁ…タヒチのゾンビが出てくる位だものね…」

デルタ 「…状況報告」

あゆ 「うぐぅ!?」

マリア 「あ、おかえりデルタ」

ハルカ 「…おどろいた」

気がつくと突然真後ろからデルタっていう女性が出てきた。

デルタ 「ゾンビの掃討を完了。続いて周辺報告」
デルタ 「本基地より北北東120キロ先に識別信号不明の軍を発見、その先200キロには同盟基地があり生きている模様」
デルタ 「この基地は原因不明の消失事件でこの場にいる人間のみしかいない模様です」
デルタ 「…どうしますか、マリアさん?」

マリア 「にゃ〜…やばいじゃないのさ〜…」

シュウイチ 「フリーダムは依然音沙汰ありませんし、ね…」

ハルカ 「…絶体絶命ですか?」

思わず聞くとマリアさんは目を線にしながら呟くように言う。

マリア 「絶体絶命よね…」

零 「……」
トラン 「……」

もう…どうなっちゃうんだろ…?
どうしようもないわね…これって…。



第8話 『対決! 未来対過去』



ハルカ 「…で、結局この基地を離れるのね」

零 「それ以外にない…」

あゆ 「うぐぅ…でも、どうするんだろう…」

私たちはとりあえず平和になった基地の外で話をしていた。
とりあえずわかったことはここは零やあゆ、舞が生きていた時代からはるか未来らしい。
まさか時間さえも越えてしまうとはね…。

ブォン! キキッ!

マリア 「おは〜、昨日は良く眠れた?」

ハルカ 「まぁ、心臓は太い方なんで結構大丈夫だったかも…」

昨日までいたゾンビの大群はあらかた姿を消したがそれでもその跡に居座るというのはどうにも気分が悪かった。

あゆ 「僕、一睡も出来なかったよ〜…」

メビウス 「で、結局どうするんですか?」

マリア 「とりあえず、正体不明の軍っていうのも気になるしそっちへ行ってみるわ」
マリア 「私とシュウイチはユニットに乗って動くからあなた達はデルタと一緒にジープに乗って」

トラン 「はい…」

ハルカ 「わかりました」

マリアさんはそう言うと乗ってきたジープを降りて格納庫の方に向かった。
そして、それと同時に助手席からデルタさんが出てくる。

デルタ 「乗ってください…」

必要最低限にそう言うとデルタさんは運転席の方に回った。

ハルカ 「どういう風に乗る?」

零 「俺は後ろか」

トラン 「私は前でしょうか?」

あゆ 「僕は後ろが良いよ〜」

メビウス 「自分はどちらでも…」

とりあえずジープは私たち全員が乗っても問題はない。
ここは予知能力的な力を持つトランとスカウター能力を持つメビウスが前でしょうね。
万が一襲われても何とかなるでしょ。

ハルカ 「んじゃ、トランちゃんとメビちゃんは前ね」

トラン 「はい」
メビウス 「はいっす」

あゆ 「僕たち後ろだよ〜♪」

ハルカ 「あゆは真ん中ね」

零 「……」

そうして車に乗った私たちはそのまま北北東にある同盟軍基地に向かうのだった。



………



シアン 「こちらに向かってくる機体があるわね」

イェロウ 「気付かれたの?」

マゼンダ 「どんなやつなわけ?」

シアン 「この時代の兵器が2機、共に人型ね」

イェロウ 「この先の基地に向かっているのかしら?」

シアン 「ほぼ間違いないでしょうね」

マゼンダ 「当然潰すんでしょう?」

シアン 「はい、この基地に近づかせるわけにはいきませんから」

イェロウ 「……」

マゼンダ 「と、いうわけでイェロウ姉さんはお留守番ね」
マゼンダ 「『GENOCIDE』もエリカがいなければ動かないものね」

シアン 「できるだけ被害は抑えなければなりません」
シアン 「ここは搦め手として、挟み撃ちを行います」
シアン 「ここに全戦力を置きます、私は今からこの場所から遠く離れた場所で待機し、交戦に入ると同時に後ろから援護狙撃を行います」

マゼンダ 「あんまりおいしいところもっていかないでよ?」

イェロウ 「…あなた達、気をつけて」

マゼンダ 「大丈夫よ、イェロウ姉さん」

シアン 「行ってきます姉さん」

イェロウ 「……」



………



マリア 「…待ち構えてる待ち構えてる」

シュウイチ 「戦場潜り抜けて早6年…どう見るんですかマリアさん?」

私はかなり離れた所から正体不明の軍隊を見た。
見たこともない機体ばかりだが、白いいかにも量産型っていう機体が20機ほど。
明らかに隊長機ですといった感じの赤い機体が一機。
どう見たって敵ですって感じよね。

マリア 「シュウイチ、そのホワイトウインドで大丈夫そう?」

シュウイチ 「多少反応の違いにギクシャクする所はありますけど大丈夫です」

私は今、レフトハンドに乗って、シュウイチは今ホワイトウインドに乗っていた。
戦うにしても相手は未知、迂闊に近寄っていいものか?

マリア 「ジープは?」

シュウイチ 「まだ、後方です、30分もすれば追いつくかも…」

マリア 「そう…ん?」
マリア 「なんか、赤い機体近づいてきていない?」

気がついたら赤い機体がぐんぐん距離を詰めてきているように見える。
それに気付くように何機か白い機体が赤い機体を追っている。

シュウイチ 「南無三…」

マリア 「縁起でもないこといわないの! やるなら真っ向勝負よ!」

シュウイチ 「やっぱりーっ!!」

どうせ、私は短絡的な性格よ!
戦りあうのが一番わかりやすいじゃない!

と、いうわけでマリア、いっきまーす!

マリア 「シュウイチは後ろの白いのお願い!」
マリア 「目の前のは私が何とかする!」

シュウイチ 「大丈夫ですか!?」

マリア 「やってみるわ!」

私はそう言うと赤い機体含む4機を捉える。
シュウイチは私を気にしながらこいつらを突破する機会をうかがっていた。

マリア 「今よ!」

シュウイチ 「!」

私の声にシュウイチは突っ込む。
当然敵はシュウイチの方に注意が向く。
そこへ私はエネルギーライフルを撃つ。

ドカァン!

マリア 「まず、ひとつ」

私は寮機の白いのを一機撃墜する。
残り三機!

マリア 「速攻よ!」

私は距離を詰めてゼロ距離射撃に等しい位の近さで白い機体達を連続して撃つ。
敵は反応も遅れて回避できずに全員落ちる。
残りは赤いのだけ。

マゼンダ 「なかなかやるわね」

マリア 「あら? 通信…」

マゼンダ 「どうやら、あなたは私を楽しませてくれるようね! いくわよ!」

マリア 「女の子…また、えらいのきたわね〜…」

な〜んて、呑気に言っているが相手の機体スペックの上ではこっちの上のようだ。
ていうか、レフトハンドなんていうオールドユニットで頑張る私も私だけど。
相手はナイトメア並のスピードで接近してくる。
ブレードしかない所見ると接近戦用機体ね!

マリア 「私はマリア・レウスよ! あなたは?」

マゼンダ 「マゼンダよ!!」


『マリアVSマゼンダ』

マリア  機体:レフトハンド LV20 HP2200
マゼンダ 機体:R2     LV19 HP3500


そう言ってマゼンダは両腕に装備されたブレードで切りかかってくる。
私は少し動いて回避する。

マゼンダ 「はぁっ!」

マリア 「おっかなびっくり」

回避こそしているが本当に相手の機体の性能の高さに驚く。
接近戦しかできないようだがそれで十分といった感じの速度。
表面上から見ても一発二発は受けても大丈夫というような装甲。
パイロットの腕もいい、かなりのエースパイロットね。
贅沢な機体ね、全く。

マゼンダ 「このっ! ちょこまかと!」

マリア 「お〜にさんこちら♪ ってね」

私は巧みにマゼンダを翻弄する。
いい腕だけど、私を捉えきれていない。
1対1ならまだまだ負けないわよ!

マリア (とはいえ、攻撃しにくいわね…)

相手があんな幼い少女とはおもわなんだ。
どうしたものか…?

ドシュゥゥゥ!

マリア 「!?」

ドカァン!

レフトハンドの左腕がやられた。
突然後ろから攻撃!?

マゼンダ 「姉さん!?」

シアン 「苦戦しているようですね、手を貸しましょう」

マゼンダ 「必要ないわ! 私ひとりでやる!」

シアン 「あなたひとりで…ん?」

マリア (やば…!)

気がつくとデルタのジープがこの戦域に入ろうとしていた。
タイミング悪!

シアン 「…では、私はあの車両を狙います、あなたはそっちを」

マゼンダ 「くっ! 言われなくたって!」

マリア 「くぅ!」

はっきり言ってやばい!
こうなったら手段は選べないわ!

マゼンダ 「こんな形で決着なんて納得いかないけど、終わりよ!!」

マリア 「はぁぁ…」

ザシュウウ!!

マゼンダの左ブレードが私のコクピットを貫く。
それでマゼンダの動きは終わった。

マゼンダ 「…!!!?」

咄嗟にマゼンダは動こうとする。
けど…少し遅い!!

マリア 「相手が死ぬまで勝利を確信したらだめよ!!」

マゼンダ 「こいつ…死んでない!?」

私は相手より一瞬早く腰部のエネルギーキャノンで相手の機体の両腕を落とす。
それと同時に右手のサーベルでコクピットの下を貫く。

マゼンダ 「そんな…!!?」

マリア 「最終的に勝利するのは死を見た者ね…」

マゼンダの機体はもう戦えない。
なんとか…勝った。



………



あゆ 「うぐぅ!? 青くておっきいロボットが追ってくるー!!」

ハルカ 「まずいわねぇ…さすがに」

零 「……」

シアン 「さて、容赦はしませんよ…」

トラン 「右」
デルタ 「!!」

キキィ!
ドシュウ!

シアン 「!? かわした!?」

ハルカ 「ナイストラン!」

トランちゃんがいれば何だか切り抜けられそうだった。
トランちゃんの声に反応して的確にデルタさんはハンドルをきり青い機体の攻撃を回避する。

シアン 「いいかげん…!」

零 「銃弾…借りるぞ…」

零はそう言ってジープを乗り出す。

いい加減業を煮やしたのか相手はミサイルを放ってきた。
マイクロミサイル!?
さすがにこれは!?

零 「…!」

ヒュゥ! ドカァン!!

シアン 「!? まさか!?」

あゆ 「零君すごーい!」

ハルカ 「やるじゃない…」

零はライフル弾で迫ってくるミサイル群を撃ち落としていく。

零 「…!」

ヒュヒュッ! ドカァン!!

シアン 「そんな…すべて撃ち落とされた…?」

トラン 「今のうちに!」

デルタ 「!」

ジープは一気に駆け抜ける。
何一つ当たらないこのジープに戦意喪失したかしら?

シアン 「仕方ありませんね…回避するというのなら…回避できない攻撃を…」

ハルカ 「なんか…やばそうよ?」

敵の青い人型は両肩部の仰々しいキャノン砲をこちらに向ける。
なんか…ちょっとやばいかも…。

マリア 「あなたたち!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

デルタ 「!?」

トラン 「地震!?」

メビウス 「これって!?」

ハルカ 「まさか!?」

零 「空間転移!?」

あゆ 「うぐぅー!!」

ヒュン!!



シアン 「…にげられたわね」

マゼンダ 「くそ…」

シアン 「手痛くやられたわね」

マゼンダ 「あんな無茶をしてくる相手だとは思わなかったわ」

シアン 「とにかく基地に戻るわよ」

マゼンダ 「わかっているわよ…」



第9話 『剣と魔法』



ハルカ 「くぅ…!!」

なんだか嫌な感覚だ。
この門を通る時に感じる不安定な感覚。
まるで自分だけが虚無に取り残されたような感覚。
初めての時はこのざらつきに気を失った。
でも、いい加減慣れたのか何とか気を保てている。
どうして、突然こんなにも門は開きやすくなってしまったのか?

『我…持つ…よ』

ハルカ 「!? 誰!?」

『我…名…白夜…汝…側…いる…』

ハルカ 「私の側に…!?」

声は片言片言でわかりにくいけど私の側にいるという。

ハルカ 「!? まさか!」

私は後ろのバックを前に出す。
袋の口から光が漏れている!
私はその光る物体を取り出した。

ハルカ 「あなたが白夜ね」

白夜 『いか…も…我…そ…白…』

取り出したのは半分に折れた、白い剣だった。
剣が光るなんて不思議だけど、どうしてこんな物が私のバッグに?

白夜 「我…半身を…失った…半身を…」

ハルカ 「え!? 半身がどうしたの!?」

突然声が聞こえなくなる。
そして…。



『幻想界:帝国ヴェルダンド領ソルジネス北部』


ハルカ 「…で、今回はどこよ?」

零 「……」

マリア 「いたた…な、何が起こったわけ?」

デルタ 「……」

あゆ 「うぐぅ…また、空間転移したんだ…」

とりあえず私たちはジープごと転移しちゃったらしい。
今度はどこかしら?
こうなったら戦○自衛隊だって相手してやろうじゃない!

トラン 「寒い所です…」

デルタ 「雪…」

空は暗くて雪が深々降り注ぐ。
地面にはすでに雪が積もっている。
寒い…。

あゆ 「北海道にでもきたの〜?」

メビウス 「今までで一番精霊力を感じる世界です…」
メビウス 「多分全く来たことのない世界だと思います」

マリア 「こうなったからにはもう何でもこいね…」

零 「…今回は現在地も全くわからない…どうするんだ?」

ハルカ 「そうね、どうしよっか?」

とりあえず、私のスパッツはこの空気には合わなさすぎる。
改めてホウエン地方って暖かいのよね…。

メビウス 「あれ? なんか近づいてくる…」

トラン 「?」

ハルカ 「目いいわね〜メビちゃんって」

メビちゃんはそう言って空の向こうを見る。
私も目はいい方だけどメビちゃんのこの望遠鏡のような視力には敵わない。

メビウス 「人…? 鳥…? ハーピー?」

トラン 「……」
零 「……」
デルタ 「……」

あゆ 「うぐぅ…なんだか零君たち意味深な沈黙を持っているよ〜…」

マリア 「な〜んか嫌な予感がする…」

ハルカ 「……」

何となく同感…女の勘?


………
……



兵士A 「何者だ! 貴様ら!」

兵士B 「ここが帝国領だと知っているのか!?」

ハルカ 「……」

メビウス 「翼人族…」

何と現れたのは背中に翼の生えた有翼人種ってやつだった。
天使…?
などといった神秘な存在には全く感じられない。
帝国とかわけのわからないこと言っているし。

あゆ 「うぐぅ…僕たちどうなるの〜?」

トラン 「……」

零 「なんとかなる…」

マリア 「暴れちゃダメよね…」

デルタ 「……」(コクリ)

兵士C 「貴様たちを連行する!!」

結局私たちったらそのまま素直を捕まって、ヴェルダンドという場所に連れて行かれるのだった。



…………



『幻想界:旧王城 牢』


ハルカ 「最っ低!!」

あゆ 「うぐぅ…」

トラン 「大変…です」

マリア 「あたしもこっちか〜」

デルタ 「……」

私たちは早速牢屋に入れられている。
とりあえず女性組と男性組に分けられた。
メビちゃんも男性組ね。

マリア 「さて、どうなることやら」

私たち見事に身ぐるみを剥がされた状態だ。
モンスターボールのラックもバッグも取られちゃった。
素手で牢を破るなんて北○神拳伝承者じゃあるまいしね…。

マリア 「じゃ、作戦会議といきましょうか」

いきなり小声でそう言い始める。
外では兵士が見張っているし、どうすればいいんだろう。

マリア 「とりあえず、零君と相談してみるわ」

あゆ 「零君はとなりだよ〜?」

ハルカ 「外の見張りにばれたらまずいんじゃ?」

マリア 「バレなきゃいいでしょ?」

マリアさんはそう言うと壁を叩き始めた。

トン、トトトン、トトン。

あゆ 「うぐぅ?」

トラン 「…?」

突然マリアさんは壁を叩き始めた。
すると。

トントントトン、トントトン。

音が返ってきた。
これって…。

ハルカ 「まさか、モールス信号?」

マリア 「すごい、アナログなやり方だけどね」

いや、この際気にする必要はないでしょう。
まさかモールス信号でくるとは。
でも、何を言っているのかさっぱりわからないわね…。

ハルカ 「で、何を言っているの?」

デルタ 「向こうでなんとかするそうです」

ハルカ 「そ、そう…」

あゆ 「うぐぅ…僕全然わからないよ〜…」


………


メビウス 「X線スコープ!!」

零 「…何が見える?」

俺はメビウスに聞いて見る。
メビウスは壁の向こうの状態をX線で見ていた。

メビウス 「兵士がふたり立っています」
メビウス 「ひとりはこの壁のすぐ側。もうひとりは4メートル離れた所に」

零 「…了解だ」

俺はDEATHとしての力を使うことにする。
こんな世界だ、恐らく牢にもなんらからの処理をしているだろうが、分子まで分解されては意味を成さないだろう。


…………


ハルカ 「むこうは何する気かしら?」

マリア 「さぁ? 片や無敵の男の子、かたや正体不明の目玉モンスター、なんとかするんじゃない?」

デルタ 「……」

ドカァ!

あゆ 「うぐぅ?」

ひとり殴られたよう音。

兵士 「きさ…!?」

ドコォ!

続いてもう一発。
なんとかしたっぽい。

ガチャ

トラン 「…行きましょう」

あゆ 「うぐぅ…なんだか怖いよ〜…」

マリア 「なるようになるわよ♪」

というわけで私たちは手際よく脱出に成功するわけで。



ハルカ 「で、どうするの?」

零 「荷物を取り戻したい」

マリア 「私も同感」

あゆ 「うん!」

ハルカ 「それじゃ、どこにあるかわからないけど何とかしようか?」

メビウス 「了解っす!」

トラン 「はい…」

とりあえず私たちは荷物を探すためこの牢屋を抜け出すのだった。



…………



マリア 「いないみたいね…」

メビウス 「でも、どこに行けばいいのやら…」

あゆ 「うぐぅ…このお城おっきくて探すの大変だよ〜…」

ハルカ 「……」

『…よ…ハ…カ…よ…』

ハルカ (…白夜!?)

突然頭の中に声が響いた。
頭痛に近いわよこれ…。

白夜 『我…ここ…は…く…』

ハルカ 「そう…そこにいるのね?」

メビウス 「え?」

デルタ 「?」

私は何となくだけど白夜の居場所をつかんだ。
恐らく迷うことなく向かえる。
何故だか不思議だけど白夜の位置が手に取るようにわかる。
ここよりもう少し上にいるようだ。

ハルカ 「みんな! 私についてきて!」

私はそう言うと走り出す。
皆は慌てて私の後を追った。


『ヴェルダンド城:貯蔵庫』


ハルカ 「ここ!」

私は白夜の居る部屋を見つける。
部屋は貯蔵庫のようで様々なものがあった。

ハルカ 「やった! 皆の武器も…て、あれ…?」

気がつくと、後ろには誰も居なかった。
もしかして、誰も追いつけなかった。

? 「違うな…策にはまったのだ…」

ハルカ 「え!?」



…………



零 「一体…なにが?」

あゆ 「うぐぅ…?」

トラン 「…嫌な感じです」

マリア 「ツいてないな〜、って感じ?」

デルタ 「……」

メビウス 「誰かいます」

白虎 「奇怪な連中だな…」

玄武 「やつらが相手か」



第10話 『戦え』



『幻想界:ヴェルダンド城:???』


マリア 「なんか、強そうなんだけど?」

あゆ 「うぐぅ…」

零 「丸腰でふたりか…」

白虎 「どうする、玄武?」

玄武 「ふ、大したことはなさそうだが、ふたりがかりでいこうではないか、白虎よ」

零 「ちぃ…」

相手は相当の相手のようだ。
いくらなんでも素手でふたりを相手に出来るだろうか?
しかし、俺以外にまともに戦えそうにはない。
やるしかないのか…?

あゆ 「う、うぐぅ…こ、怖いけど…ぼ、僕頑張るよ!」
あゆ 「だ、だから零君はあっちお願い!」

零 「あゆ…?」

あゆは震えた声で白虎という男をさす。

零 「…わかった」

ここはあゆを信じよう。
俺は白虎という男と対峙する。

白虎 「悪いが仕事なんでな…」

零 「……」


『水瀬 零VS白虎』

水瀬 零 LV21 HP1120
白虎   LV20 HP980


相手は体は大きいが、かなり素早そうだった。
白虎…たしか中国の四神の一匹、西を指す聖獣だったか?
はたして異世界で同じ意味が通用するかは甚だ怪しいがどれほどの実力を持つのか。

零 「負けるわけにはいかない…」

無手でどこまで対抗できるか…。
いや、やるしかない…。
相手は太刀を構えている。
いわゆる通常の刀だ。

零 (スピードなら負けないと思いたいが…)

白虎 「いくぞ!」

零 「…!」

白虎は刀を中段に構えて距離を詰めてくる。
俺は注意を引くためあえて、あゆたちから離れる。

白虎 「ふっ!」

零 「…!」

白虎は確実に仕留めにきたか的確に急所を狙ってくる。
場所はあまり気にしていないようだ。
急所ならどこでもいいのか、狙える場所を確実に狙ってきている。

零 「ち…!」

攻勢に出たいところだが乱暴な振りをして、こちらの動きを制限してくる。
片腕犠牲にするくらいをやらなければならないか…。

? 「なんか…どっち味方したらいいんだろう〜?」

零 「!?」
白虎 「!?」

突然後ろから女の子のような声が聞こえた。
思わず俺達は動きが止まってしまった。

アルル 「ん〜…どうしよっかどうしよっか考え中〜」

零 「…?」

白虎 「なんだ…小娘?」

突然現れたのはいわゆる魔女のような姿をした赤毛の少女だった。
あゆより幼く見えるぞ…。

アルル 「む…おじさん、アルルのこと子供と思って侮っているね!!」

アルルというのか…。
この手のタイプは何もしなくても勝手に情報をばら撒くタイプだな…。

アルル 「おーけー! そっちが宣戦布告ってことだよね!」
アルル 「売られた喧嘩は買うのが江戸っ子!!」

零 (東京人なのか?)

とても日本人には見えない…。
というより、何者だろうか?


『アルル LV15 HP400』


アルル 「おっちんじゃえー!! ヒートストーム!!」

白虎 「なに!?」

零 「!?」

突然目には見えないが熱が迫ってくる。
敵なのか味方なのかどっちなんだ!?

アルル 「あ、そこのおにいちゃん、ちゃんとよけてよ!?」

…無茶を言う。
しかもやってから言われても困る。

白虎 「ちぃ! 貴様!」

熱風が止むと同時に白虎はアルルという少女に斬りかかる。

アルル 「べーだ! おじちゃんはアルルに近づけないよ」

白虎 「何…!?」

零 「なんだ…あれは?」

見ると白虎の周りにはなにか魔方陣のようなものが大量に設置されていた。

アルル 「魔方陣トラップ、踏んだら大変だよ?」

零 「魔方陣トラップ?」

白虎 「ふ…踏まなければいいんだろう?」

アルル 「へ? なんか…嫌な予感…」

白虎とアルルの距離は4メートル。
俺なら一足飛びか…。
恐らく白虎も…。

白虎 「ふんっ!」

アルル 「え!? うそぉ!?」

白虎は飛ぶようにアルルの元まで行く。
俺よりジャンプ力はあるかもしれない。

白虎 「もらった!」

ザシュウ!

アルルは頭から真っ二つにされた。
あっけなさすぎる…。

白虎 「!? これは!?」

アルル 「これぞミラージュ大爆弾…」
アルル 「ちなみに教え技で身代わりをかけておきましたー♪」

頭の裂けた人形(?)はペラペラそんなことを言っていた。
理解不能…。

アルル 「ハスタラビスタベイベー♪」

ドカァァァァン!!

人形は物凄い爆発を起こす。
一体どういう仕掛けだったのか…。
奇天烈な少女だった…。

白虎 「ぬぅ…」

零 「…!」

白虎はまだ立っていた。
あの爆発を直に受けてか…。

白虎 「ちぃ…ここまでか」

零 「!」

白虎はそう言うと突然白い煙を上げ始めた。
逃げる気か!?

白虎 「ふ…『あいつ』の話通り面白い時代が来そうだな…」

零 「あいつ…?」

白虎 「さらばだ、異界の戦士…」

零 「! まて…!」

しかし、遅い。
白虎は風に流されるように消えてなくなった。

零 (白虎…あれはまだ本気でなかった…強敵、か)



…………



『あゆVS玄武』

あゆ LV8  HP350
玄武 LV20 HP1300


あゆ 「うぐぅ〜!!?」

玄武 「………」

マリア 「私たちに出来ることは応援だけ! 頑張ってー!!」
デルタ 「ファイト…」

あゆ 「うぐぅ〜!!?」

メビウス 「頑張ってください!!」

あゆ 「誰か助けてよ〜!!?」

けど、マリアさんたちは高みの見物を決め込んでいた。
僕一人でこのおじさんと戦うのー!?

玄武 「ただの稚児にしか見えぬが、この玄武容赦せん」

あゆ 「うぐぅ…稚児ってなに?」

メビウス 「小さな子供ということです」

あゆ 「うぐぅ…」

どうせ、僕は小さく見えるよ…。

メビウス 「一応、戦いのイロハを教えながらやりたいと思います」

あゆ 「うぐぅ?」

メビウス 「まず、相手を殺す方法として次の三つかがあります」
メビウス 「刺す、斬る、叩く、です」
メビウス 「あゆさんの能力はこの内叩くに当たります」
メビウス 「しかし、相手は見ての通り頑丈そうです」
メビウス 「頑丈な相手には叩くという手段は地道な作業になります」
メビウス 「そこで! 相手の急所を突くのです!」

あゆ 「…うぐぅ、説明長いよ〜…」

メビウス 「えと、つまり張っ倒しましょう!」

あゆ 「うぐぅ〜!!? どうやって〜!?」

玄武 「そろそろ…こちらからいかせてもらう!」

あゆ 「うぐぅ!?」

突然、亀の甲羅を背負ったおじさんはポン刀を構えて迫ってくる!

メビウス 「とりあえず変身です!」

あゆ 「できないよ〜!!?」

もう、何でもいいから能力を使う。
よくわかんないけど僕の背中から光の翼が生えるとそのまま光を僕の正面に張り巡らせる。

玄武 「!?」

ガキィン!!

メビウス 「防御成功! そのまま反撃ですあゆさん!」

あゆ 「うぐぅ〜!!?」

攻撃って何をすれば倒せるの!?
もう、わからないよ〜!!

あゆ 「うぐぅ〜!!」

とにかくもう何も考えず攻撃することにした。
こういう時祐一君が居たら…。

あゆ 「て、うぐぅ!?」

気がついたら僕は前のめりに倒れていることに気付く。
あ、もしかしてもう負けちゃったの?

あゆ (でも…その割には…うぐぅ?)

なんだか…背中が重い…。
誰か…乗ってる?

? 「い…つつ…なんだ? ここは?」

玄武 「な…」

あゆ 「うぐぅ!? 重いー!!?」

メビウス 「わわっ! あんた誰っすか!?」

レイジ 「ん? あんだ、お前…てか、ここどこだ?」

あゆ 「どーいーてー!!!!」

レイジ 「ん…悪い」

あゆ 「はぁ…はぁ…うぐぅ…死ぬかと思ったよ〜…」

死んでもおかしくなかったよ…あれは。

レイジ 「で、ここどこ?」

いきなり人の上に乗っていたおにいちゃんは平凡そうな顔のまま周囲をうかがっていた。

レイジ 「…そうか、これは夢か!」

何を考えたのか手をポンとついてそう言った。

あゆ 「うぐぅ…よくわからないけど助けて〜…」

とりあえずこのおにいさんに助けを求めてみる。
僕一人じゃ絶対に勝てそうにないよ〜…。

レイジ 「助けるってもな…何すればいいんだ?」

あゆ 「あのおじさんが襲って来るんだよ〜!?」

レイジ 「…あれが? ふ〜ん、我ながら変な夢見ているもんだな…これがゴーストタイプの使う悪夢か?」

まだ、そんなこといってるよこの人…。

あゆ (ん…人?)

よく見るとこの人頭や腰から変なものが生えてるよ…。
耳? 尻尾?

メビウス 「奇怪な…」

あゆ (君に言われたら終わりだよ…)

心の中でそう思ってしまう。

レイジ 「まぁ、いいや! 俺の名はレイジ! いっちょ派手にやりあおうや!」

玄武 「ふ…一人ふたり増えたところで…」

あゆ 「うぐぅ…余裕だよあのおじさん」←戦力外

メビウス 「そういえば以前会った人に似ている気が…」←これも戦力外

マリア 「なんかしらんけど頑張れ〜!」←問題外
デルタ 「…ファイト」←以下略


『レイジVS玄武』

レイジ LV20 HP1500
玄武  LV20 HP1300


レイジ 「あんた、名前は?」

玄武 「我が名は玄武…傭兵王国ムゥの四天王のひとり、地を司る者」

レイジ 「そうか、俺はレイジ! さくさくいくぜ!」

俺は相手を見定めると左自然体で構える。
尻尾も耳も何にも付いていないようだが、実力は高そうだ。
相手は小刀が得手のようだが、武器のあるなしが勝敗に繋がると思わないこったな。

レイジ 「いくぜ!」

俺は玄武と距離を詰めると流れるように右回し蹴りを放つ。

玄武 「ぬぅ…!」

玄武はまともに俺の蹴りを受け止めた。
ごつい体らしく頑丈な奴だ。

玄武 「喰らえ!」

レイジ 「ちぃ!」

反撃に小刀が俺ののど元に襲い掛かる。
俺は相手の得手を持つ腕を押して、避けると同時に裏拳を放つ。

玄武 「くぅ!?」

ドカァ!

俺の裏拳は玄武の顔を捉える。
玄武はたまらず後ろの下がった。

玄武 「そうか…貴様も柔の戦い方をするのか」

レイジ 「ああ、古武術の型さ」

玄武 「ふ…久し振りに面白くなってきた!!」

そう言うと玄武は背中に背負っていた甲羅を手に持った。

レイジ 「亀甲の盾…そうか、あんたも柔の戦いをするのか…」

玄武 「はてさて…?」

玄武はとぼけてくる。
さて、どうしたものか、な?

玄武 「ふ…意外と冷静な男だ、幾つもの戦場を潜り抜けてきたのだろう…?」

レイジ 「ああ、こう見えても勘がいいんだ、戦場じゃ勘は重要だからな」
レイジ 「今、お前の空気が危険だって俺に警報を出しているんだよ」

玄武 「ふ、面白い奴だ、だが、待っているだけでは勝てんぞ!!」

玄武はそう言って亀甲の盾を構えて突進してくる。

レイジ 「チィ!」

盾が邪魔で攻撃できない。
だが向こうは盾でゴリゴリ押してきてくる。

玄武 「ふん!」

レイジ 「くっ!」

玄武は盾の後ろからが短刀で俺の脚の腱を狙ってくる。

レイジ 「ちと、ハードな技だが…いくぜ!」

俺は短刀をかわすと盾に拳を突きつけてる。
そして、足場をしっかりして…。

ピシ…!

玄武 「…!?」

バガァン!!

玄武 「なんだと!?」

玄武の亀甲の盾はものの見事に砕け散る。
さしも玄武も驚いていた。

玄武 「力で亀の甲羅は割れん! 一体何をした?」

レイジ 「亀甲の盾自身に地震を起こしたのさ」
レイジ 「内部で起こった地震は何百何万という震動となって内部で炸裂する」
レイジ 「亀甲の盾の硬さを内部からズタボロにしたのさ…」

もっともこの技は少し疲れる。
地震の強大なエネルギーを俺の腕から全部相手に放出するものだから体が物凄く疲れる。
まるで一日中全速力で走ったかのようだ。

玄武 「ふ…ふふ…こんな破り方をされたのは初めただ」

レイジ 「この奥義を使ったのは久し振りだ…」

玄武 「この技…なんという?」

レイジ 「名前なんてねぇよ…つける必要もないしな」

玄武 「ふ…我の負けだ…」

レイジ 「ふぅ…ったく、夢の癖に体がだりぃ…」

向こうは負けを認めた。
たく、ノーダメージだが疲れたぜ…。

レイジ 「ん? 一体何してんだ?」

玄武 「我を…殺さんのか?」

レイジ 「はぁ…!? 何で殺さなきゃいけねぇんだよ?」

玄武 「これは死合いだ…敗北者は死あるのみ」

レイジ 「…俺は単なる般ピーだぜ? 戦士じゃない」
レイジ 「それに、久々にワクワクするような戦いができたしな…行けよ、また、戦おうぜ」

玄武 「ふ、ふははは! 強いな…勝てぬわけだ」
玄武 「まだ、貴様のような漢がおったとはな…」

玄武 「完全敗北だ…お前には勝てそうもない…さらばだ」

玄武はそう言うと突然地面が盛り上がり玄武を覆い隠した。
そしてそのまま、地面は崩れ、元の地面に戻った。

レイジ 「夢の癖に…」



第11話 『再会』



『幻想界:ヴェルダンド城 貯蔵庫』


ハルカ 「…誰!?」

朱雀 「我が名は朱雀、ムゥの傭兵王だ」

ハルカ 「傭兵王…!?」

今、私の直感が言っている。
この男には絶対に勝てないと。
殺される…逃げることさえできずに…。
この私が…ここまで絶望感を受けるなんて…!

朱雀 「悪いがネズミの始末も仕事でな、俺と当たったことを運悪く思うんだな」

ハルカ 「う…あ…う…」

目の前に居るのは猫なんて生易しいものじゃない…。
龍…そう、まるで龍と対峙しているかのようだ。
コイツは…私とは全く異質の存在だ…。
勝てない…私には…。

朱雀 「どうやら、予想以上の小物のようだな…」
朱雀 「だが、なにか…化け物も居るようだな…?」

ハルカ 「え…?」

朱雀は険しい顔で貯蔵庫の奥を睨んだ。

? 「呼んで…いる…」

朱雀 「貴様…何者だ?」

ハルカ 「う、あ…あなた…は…」

私は驚愕する。
本来ならば歓喜しなければならないはずなのに…私は朱雀以上の恐怖をそいつから受けている。

ユウキ 「呼ん…で…いる…」

目の前に現れたのはユウキ君だった。
ユウキ君はあまりにうつろな目をしていた。
そして、何者とも知れない化け物の雰囲気を漂わせていた。
姿だけがユウキ君…そんな感じだった。

朱雀 「何者だと聞いている!」

ユウキ 「…そんなの…俺が聞きたい」

ユウキ君は虚ろな瞳で朱雀を見た。

朱雀 「貴様…」

ユウキ 「お前は、俺を殺したがっている…いいぜ、殺しあおう…」
ユウキ 「俺も…お前を殺したい…ぐちゃぐちゃにしてみたい」

ハルカ 「あ…う…」
恐怖で息がまともに出来ない。
苦しい…目の前にいる化け物が恐ろしい…。


『朱雀VSユウキ』

朱雀  LV45 HP6300
ユウキ LV81 HP34500


ハルカ 「あ…く…」

どちらも化け物だ…。
朱雀はただの化け物だ。
ユウキ君は…あれは…ただの殺人鬼だ…。
怖い…怖い…怖い…。
意識が壊れそう…。
いっそこのまま気絶したい…。

朱雀 「貴様ー!!」

朱雀は物凄いスピードでユウキ君の首を狙う。
ユウキ君はまるで何を見ているのかわからない。
ただ、朱雀の死だけを見ているようだった。

バキィン!!

朱雀 「なにぃ!?」

朱雀の刀はまるで砂で出来た刀のように塵となって砕け散る。
ユウキ君は何をしたの…?

朱雀 「何故だ!? 何故貴様からは何も力を感じない!!!?」
朱雀 「まるで赤子のようなその気配!! なのに! なのに何故この俺がこれほどの恐怖を受ける!!?」

ソレ、アマリニ無邪気デ…。
惨酷ダカラ…。
彼ハ…タダノ殺人鬼ダカラ…。

朱雀 「うおおおおおおおっ!!!!」

朱雀は物凄い炎の爆発を起こす。
まるで地獄の業火だった…。
私まで燃え尽きそうだ…。
でも、恐怖は微塵も感じない。
すでに意識は朦朧としているから?
いや、あの炎で私を焼くことなんて出来ないからだ…。

ユウキ 「……」

朱雀 「!?」

ユウキ君は服に火が付くことさえない。
よく見ると何だか珠状のの白い膜が張ってあるようだった。

白虎 「逃げろ! 朱雀! 死ぬぞ!!」

朱雀 「うおおおおおっ!!」

朱雀は蜘蛛の子のようにその場から逃げた。
誰かは知らないけど逃げるように進めた男も居ない…。
私はどうなっちゃうんだろう…?

ユウキ 「……」

ハルカ 「ユウ…キ…君…」

私の意識はそこまでだった。
私は…もう…死ぬかもしれない…。

再会した友人は…ただの殺人鬼だった…。
どうして、こうなっちゃったんだろう…?



第12話 『夢…』



夢…夢を見ている…。
それはとても不思議な夢だった。
私の夢なのに…私の夢じゃないみたいな…。

それは、子供の頃の夢。
泣いていた。
父さんが負けたから…。

それは、ちょっと大きくなった頃の夢。
わからなかった。
世界一になってわからなくなった。
私は本当はどれくらいの強さだったのかしら?

それは去年くらいの夢だった。
嬉しかった。
もう一度私と向き合った。
アチャモと出会えたから…。

それはつい最近だった。
突然私の運命は変わったんだって理解した。
私はちっぽけな存在だったんだ。

『世界ガ巡ル巡ル…』
『アア…私ハ…ドウナッチャッタンダロウ?』


ハルカ 「……」

目覚める。
天井がある…?

私は気がつくとベットに寝ているようだった。
一体…何が…?

チトセ 「あら?」 目覚めた、ハルカ?」

ハルカ 「母さん…?」

目覚めると目の前には母さんがいた。
よく見ると、ここは私の家だ。
帰ってきた…?

ハルカ 「いえ…あれは夢?」

チトセ 「どうしたの、ハルカ?」

ハルカ 「ううん…なんでもないわ母さん」
ハルカ 「て…! なんで母さんったら私の部屋に入っているのよ!」

チトセ 「あら? 早起きしないあなたがいけないのよ?」

ハルカ 「え?」

チトセ 「時計見てみなさい」

ハルカ 「…じゅ、11時…」

時計を見るとなんともう11時になっていた。
ね、寝すぎたわ。

チトセ 「じゃあ、母さんは下に降りているわよ」

ハルカ 「え、ええ…」

私は布団から出るとパジャマから着替える。
随分長い夢を見ていたものね…。


………


チトセ 「ふふ、おはようハルカ♪」

ハルカ 「おはよう…」

正直おはようというにはアレだけど。

ハルカ 「父さんは?」

チトセ 「ジムに居るわよ、行く?」

ハルカ 「うん、お昼ご飯食べた後行くわ」

チトセ 「そう、じゃあちょっと早いけど用意するわ」

ハルカ 「うん、ありがと」

そう言って母さんはお昼ご飯の用意をしてくれる。
今日はどうしようかな…?


………


ハルカ 「んじゃ、行ってきまーす」

私はお昼ご飯を食べるとすぐに家を出た。

ユウキ 「よっ、ハルカ」

ハルカ 「あら? どうしたの?」

ユウキ君だった。
なんだかとても懐かしく感じる。
でも、いとおしいとは別だから。

ユウキ 「どこか行くのか?」

ハルカ 「別に言う必要はないでしょ」

ユウキ 「つれないな、まぁいいけどな、俺は父さんの手伝いがあるから!」
ユウキ 「じゃあな!」

ユウキ君はそう言うと自転車に跨って走り去った。
なんていうか、相変わらずね。

少女 「……」

ハルカ 「? なに…?」

ふと、後ろに私をじっとみる少女が居ることに気付く。
その少女はどこかで会ったことのある気がする少女だった。
いや、でも全く知らないんだけど。

ハルカ 「一体何かしら?」

少女 「……」

タッタッタッタ…

少女は何も言わず走り去ってしまった。
一体なんだったのかしら?

ハルカ 「まぁ、いいや…さっさとトウカシティに向かおう」

私は自転車を出すとそのままトウカシティに向かった。



…………



ハルカ 「ふぅ…」

何とか夕方までには到着した。
我ながらいい脚力していると思うわ。
そのお陰でそれまでの景色には全く目が行かなかったのが残念ね。

ハルカ 「さて、トウカジムに向かうかしら…え?」

少女 「……」

私は自転車から降りると目の前にミシロタウンで見た少女と出会う。
少女は相変わらず何も言わず私の顔をじっと見た。

ハルカ 「ちょっと…何か言いたいならはっきり言いなさいよ!」

少女 「……」

タッタッタッタ…

少女はまたもや走り去ってしまう。
一体何なのよ…気味が悪いじゃない。

? 「今、見ていたのは自分だ」

ハルカ 「え!?」

突然後ろから声が聞こえた。
気配を感じさせなかったそれに驚いて私は咄嗟にその声から離れた。

ハルカ 「いきな…ユウキ君!?」

目の前に居たのはユウキ君だった。
な、なんでこんな所に?

ユウキ 「ユウキ…か…まぁ、なんでもいい」

ハルカ 「え…」

チガウ…?
ここにいるのは違う…?

ユウキ 「まだ、壊れるには少し早い…」

ハルカ 「え…?」

ユウキ 「君はわけもわからず流されていた」
ユウキ 「ずっと、流されていた…」

ハルカ 「違う…私は…」

ユウキ 「目的もなく世界を彷徨っていた…」

ハルカ 「違う私は…!」
ハルカ 「私は…!」

ユウキ 「弱い内面に強い表面…君は逆だと思っていたんだが…」

ハルカ 「私は…」

ユウキ 「とりあえず、ことの状態を教えよう」

ハルカ 「え…?」

ユウキ 「ハルカは今、自分の殻にいる」
ユウキ 「外では今も空間転移が起きているんだ」
ユウキ 「これが、何を意味するか? 今は俺にもわからない」
ユウキ 「ただ、とりあえず、体を修復したい」

ハルカ 「体…?」

ユウキ 「この世界の力に押し負けてな…叩き折れてしまったんだ」
ユウキ 「契約者は潰れてしまったし、とりあえず新しい契約者を探していた」
ユウキ 「ハルカの心はもっと強いと思っていたんだが、恐怖に負けちまったしな」
ユウキ 「まぁ、あれは無理もないかもしれないがな…」

ハルカ 「読めた…あんた白夜ね!?」

白夜 「せーかい、頼むから俺の体を直して欲しいわけよ」

ハルカ 「そのために私の心の中に入ってきたってわけ?」

白夜 「言っとくがプライバシーの侵害とかは俺には通用しないからな!」
白夜 「だって、俺人間じゃないし」

ハルカ 「はぁ…やってやろうじゃない! アンタを直せばいいでしょ!?」

白夜 「まぁ、ついででいいから」

ハルカ 「…でも、あなたそれだけのためにここまで来たの?」

白夜 「…まさか、ちょっと強くなってもらうぜ…俺が相手だ」

ハルカ 「!」

私はその場で構える。


『ハルカVS白夜』

ハルカ LV13 HP690
白夜  LV30 HP2000


白夜 「言っとくが、死ぬ気で戦ってもらうぜ…」

ハルカ 「上等よ!」



…………



ハルカ 「はぁ…はぁ…はぁ…」

ユウキ 「大分戦えるようになってきたな」

ハルカ 「化け物…」

ユウキ 「たりめーだ、こちとら産まれて1年足らずの新参神剣だが、お前ら人間とは精神力が違うんだよ…」

ハルカ 「てか、ここって精神力が勝負どころなの?」

ユウキ 「そりゃ、精神世界だからな、肉体の優劣なんてねぇよ」

ハルカ 「…ふぅ、ちょっと休憩…」

ユウキ 「やれやれ…」

ハルカ 「ねぇ、あなたってユウキ君の所持品なのよね?」

ユウキ 「物扱いされんのはむかつくがそうだな…」

ハルカ 「…ユウキ君ってどうなっちゃったの?
」 ハルカ 「私が見たユウキ君…あれはまるで人間の目をしていなかったわ」

ユウキ 「契約者…か、俺にもよくわからん」
ユウキ 「あいつ、半分は人間じゃないし、今はなんか暴走している感じだな…」

ハルカ 「暴走…」

確かにあれは暴走…という感じがしなくもなかった。
それにしても半分は人間じゃないって…。

ユウキ 「詳しいことはエメルかエグドラルにでも聞かないとわかんねぇな…」

知らない名前が出てくる。
まぁ、誰でもいいか。

ユウキ 「最終的にはお前に俺の契約者になってもらいたいんだがな」

ハルカ 「私に?」

ユウキ 「ん、そろそろ再開するぞ」
ユウキ 「精神力だけでももっと強くなってもらわないとな」

ハルカ 「…!」

情けないけど私はまだまだ弱い。
下手をしたらあゆにさえ負けてしまうのかもしれない。
せめて、心だけでも誰よりも強くなろう!
セリアも助けないといけないしね!

ハルカ 「ユウキ君…助けられるわよね!」

ユウキ 「お前次第だな…!」



第13話 『道を行け』



レイジ 「するってーと何か? これは夢じゃないってか?」

メビウス 「はい、そうです」

マリア 「夢と思いたい気持ちはよくわかるけどね」

レイジ 「信じらんね…」

零 「信じる信じないは自由だ…」

デルタ 「でも、今は一緒にいた方がいい…」

レイジ 「…しゃあねぇな、あながち嘘というわけでもなさそうだし…」

あゆ 「それより早くハルカちゃんを探さないと〜!」

マリア 「そうね、あの娘ったらどこにいるのかしら?」

メビウス 「そう言えば、あのアルルって娘はどこに行ったんだろ?」

零 「爆弾で爆発したきり姿は見ないな…」

レイジ 「何でもいいから行動起こそうぜ?」

マリア 「そうね、いない人間を気にしてもしょうがないわ、行きましょう!」

あゆ 「うん!」



…………



ハルカ 「たく…白夜め…頭がガンガンするじゃない…」

私はずきずきする頭を抑えて目を覚ました。
目覚めたらそこは貯蔵庫で、皆の荷物もしっかりあった。

ハルカ 「ユウキ君は…もう、いないみたいね」

どうやらユウキ君はもう行ってしまったようだった。
いない人間を気にしてもしょうがないわ!
とりあえず、荷物を皆に渡さないと!

ハルカ 「出てきて! マッスグマ!」

マッスグマ 「グマ…」

ハルカ 「マッスグマ、あゆたちの匂いを探して、色んな匂いがあると思うからすぐわかると思うんだけど?」

マッスグマ 「グマ」

マッスグマは鼻をくんくんさせて動き始める。
私は皆の荷物を背中に抱えるとマッスグマのあとを追った。

白夜 『ハ…カ…』

ハルカ 「ん? なに白夜?」

白夜 『こ……………ど…』

ハルカ 「悪いけどさっぱりわからない!」
ハルカ 「電波状況で表したらはっきり言って最悪だから黙ってなさい!」

白夜 『……』

それっきり白夜は静まる。
心なしか白夜の声って少し頭痛を伴うのよね。
ウザイからできればやめて欲しい。

マッスグマ 「グマ!」

ハルカ 「見つけたの? あ!」

あゆ 「あ! ハルカちゃん〜♪」

デルタ 「いた…」

トラン 「ハルカさんです」

レイジ 「あれか」

みんなを発見。
なんか人外が一人居るみたいだけど…。

ハルカ 「はい、みんな」

零 「ありがとう…」

あゆ 「ありがと〜ハルカちゃん♪」

マリア 「チャカぐらいないとしまらないわよね」

デルタ 「……」

メビウス 「私はなにもいりませんけどね」

トラン 「……」

ハルカ 「で、あなた誰?」

私は人際ガタイのいいやつに声をかける。
どう見ても人間じゃない。
皆と居るということは敵じゃないみたいだけど。

レイジ 「俺はレイジだ、あんたがハルカ?」

ハルカ 「そうよ、とりあえずよろしくね」

私はそう言うと握手を求める。
レイジは気さくに手を差し出した。
体つきを見る限り素人の体じゃないわね。

ハルカ 「失礼だけど、格闘技でもやっていた?」

レイジ 「ん? いや、格闘技っつっても古武術だがな」

ハルカ 「へぇ、古武術」

見る限り少々かなりいい体だ。
身長の割りにはかなり腕や足が太いし、プロレスでもやっているのかと思ったわ。

ハルカ 「でも、あなた何かに似ている気が…」

どうも、このレイジっていうのなにかを髣髴させる…。
なんていうか…。

マッスグマ 「グマ…?」

レイジ 「?」

ハルカ 「ああ! そうか! ラグラージだ!」

思い出した!
そういや以前ユウキ君のラグラージと戦ったっけ!

ハルカ 「耳といい、尻尾といいそっくりだわ…」

レイジ 「何驚いているのか知らないが…そりゃそうだ、俺はラグラージ種のレイジだからな」

ハルカ 「ん? ラグラージ種の?」

メビウス 「校舎での戦い覚えてますか?」
メビウス 「あの時交戦した荒罪や少女達はポケモンと同じ反応が出ました」
メビウス 「どうやら、似て異なるポケモン達がいるみたいなんです」

ハルカ 「…そうなの?」

レイジ 「俺に聞かれても…?」

マッスグマ 「グマ…?」

マリア 「あ〜、もしもし?」

ハルカ 「ん? 何ですかマリアさん?」

マリア 「とりあえず、この城は危険だと思うからさっさと脱出したほうがいいと思うんだけど」

零 「そうだな、一応脱獄囚だからな」

あゆ 「うぐぅ…僕たち悪いことしていないのに…」

マリア 「罪と罰が正等に下されるんだったら迫害なんて起きないわよ」

レイジ 「…さっさと行こうぜ」

トラン 「………」

と、いうわけで私たちはその場から動いていく。



…………



タァンタァンタァン!!


マリア 「FREEZE」

兵士A 「ひ、ひぃぃ…」

隊長 「何をやっている! たかがひとりに!」

兵士C 「し、しかしやつの使う銃器は見たことがありません!」

隊長 「くっ! ムゥの傭兵共は何をしているんだ!」

私は曲がり角の壁を使いながら足止めをしている。
銃は剣より強というようにとりあえず近づかせない。
魔法は怖いけどこの程度なら何とかなる。

マリア 「1世紀変われば武器の性能も一騎当千に変わるわね…ほい!」

私はパイナップルを投げるとその場から一目散に逃げ出した。

ヒュっ!

兵士A 「こ、これは…?」

ドカァァァァァァァン!!!

マリア 「パイナップルはハンドグレネードのことよ♪」
マリア 「狭い通路や込み入った室内では絶大な力を発揮するのよ♪」



………



レイジ 「ふんふんふん!!」

ドカバキゴスッ!!

忍者A 「ゲブ…」

ドサァ!

レイジ 「次に死にたい奴、前に出ろ!」

忍者B 「こ、こいつ化け物か!?」

零 「…!」

ザシュウ!

忍者C 「グアァ!?」

忍者D 「まずい! このままでは全滅だ!」

俺達はあるフロアに入ると待ち構えたように忍者たちが現れた。
玄武に比べれば小物も小物…ルナトーンとゼニガメくらい違うな。

レイジ 「おい! 零! そっち大丈夫か?」

零 「…問題ない」

とりあえずあと10人。
初めは30人くらいいたんだがな。
ちなみにこの部屋には俺と零しかいない。
他の皆はもっと先に進んだ。
上に逃げるわけにもいかないからどんどん下っているが下に敵は固まっていたようだ。
普通…空間転移なんて想定しないもんな…。

レイジ (先に下った連中は大丈夫かな…?)

忍者B 「くっ! きええええ!!」

レイジ 「あまい!!」



…………



ハルカ 「…どう? いる?」

ジュペッタ 「……」(フルフル)

ジュペッタは首を横に振る。
ジュペッタに壁抜けしてもらって壁の向こうの様子を調べてもらっていたのだ。

あゆ 「うぐぅ…おばけ怖いよ〜…」

トラン 「……」
デルタ 「……」

メビウス 「もう少しで城から脱出できます! 頑張りましょう!」

ハルカ 「そうね…」

トラン 「…ハルカさん、どうにも浮かない顔をしています」
トラン 「一体どうしたんですか…?」

ハルカ 「え? 別にどうともないけど…?」

トラン 「そうですか…」

そんなに浮かない顔していたかしら…?
でも、何か嫌な予感はする…なんだろ…?

ハルカ 「…一気に行くわよ!」

私は意を決して扉を開けて、外に出る。

トラン 「誰か…います!」

メビウス 「え!? 反応なんてどこにも!?」

あゆ 「う、うぐぅ…なんなの…?」

ハルカ 「…まだ、いたんだ…」

私たちは城の外に出ると、不安の塊の気配を感じる。
私は城の方を振り向く。

ユウキ 「……」

ハルカ 「ユウキ…君!!」

白夜 『契約…者…!?』

城の二階辺りの屋根の上にはユウキ君が立っていた。
案の定まだ城に居たみたいね。

ユウキ 「…そうか、お前が俺の敵か…」

あゆ 「うぐぅ…知り合いなのハルカちゃん…」

ハルカ 「ええ…一応ね」

トラン 「……あ…う…」

メビウス 「ま、全く力を感じない…まるで人形だ…」

デルタ 「……」

ユウキ 「……」

フワァ…ストッ。

ユウキ君はまるで綿毛のように地面に降り立ち、私の前に立つ。
距離3メートル、向こうは既に殺傷圏内…下手な動きしたらその場で死にそうね。

ユウキ 「…人間…か、まぁいい…殺し合いを始めよう…」

ハルカ 「構えもなし? 余裕かしらそれは?」

ユウキ 「必要ない…」

ハルカ 「そう…」

マリア 「到着!」

零 「…!」

レイジ 「なんだ、あいつ!?」

ユウキ君の後ろから足止めをしていた三人が現れる。
ユウキ君はさして興味なさそうだった。
眼中にないってことか…。

ハルカ 「みんな…彼には手を出さないで」

ユウキ君は私ひとりで相手する。
て、いうかそうしないと全員死にそう…。

白夜 『ま…て…』

ハルカ (白夜…?)

突然白夜が語りかけてくる。

白夜 『精神…を…か…む…けろ…』

ハルカ 「?」

精神をかむけろ?
精神を…傾けろ?

ハルカ (なんだか…わからないけど…)

よくわからないけど精神統一の要領で傾けてみる。

白夜 『繋がったな…』

ハルカ 『一体なによ…? これから戦うっていうのに!』

白夜 『契約だ…やつと戦う力をやる…』
白夜 『その代わり…汝には同等の代価を払ってもらう』

ハルカ 『あんた…折れてるくせに力なんてあるの?』

白夜 『完全ではない…』

ハルカ 「…代価って何よ?」

白夜 「『マナを集めてもらう…折れたことによりマナが足りない…』
白夜 『この欲求に答えてもらう』

ハルカ 『…力小出しにしないでよね…』

白夜 『契約…完了!』

ハルカ 「……」

体の中に力が巡る。
これが白夜の力…。
まるで…自分じゃないみたい…。

ユウキ 「人を…やめたか」

ハルカ 「いくわよ! ユウキ君!」


『ハルカVSユウキ』

ハルカ LV23+α HP1300+α
ユウキ LV81   HP34500


ハルカ 「はぁ!!」

私はリュックを背負ったまま拳で殴りかかる。
ユウキ君とは3メートルは離れていたはずだけど僅か一歩に等しかった。
零君の戦っている視点がわかるわ。
いえ、零君よりさらに上…。

ユウキ 「……」

ユウキ君はまるで反応に追いついていない。
でも…。

ズッ!!

零 「…!」

レイジ 「おい…まじかよ…」

トラン 「触れてない…」

ハルカ 「また妙な膜を…」

ユウキ君は半透明な球体のなにかで私の拳を僅かに触れさせなかった。
朱雀のあの圧倒的な攻撃さえもまるで空気のようにしてしまったこの珠…一体?

ユウキ 「……」

ハルカ 「!?」

私は殺られるという野生の勘的なもので瞬時にその場から離れる。

ボォン!!

さっき自分の立っていた位置の空間が歪む。
そしてペットボトルを潰したような音が起きると同時に歪みは収まった。
あそこにいたら、ひでぶってなっていたのかしら…?

白夜 『我を持て…そのままでは不完全だ』

ハルカ 「く…」

私はバッグから白夜を取り出す。
そして、バッグはその場にほうり捨てた。

私は邪魔にならないように左手で白夜を持つ。
結局は全力で殴った方がいい。

ハルカ 「はぁ!!」

ユウキ 「……」

ボォンボォン!!

空間が爆発する。
私はそれを前進しながらも回避する。
全く正体不明の攻撃だけどそれを勘で回避している私も恐ろしいかもね。
改めて母さんの血が流れているのがわかるわ。

ハルカ 「はぁああっ!!」

ユウキ 「!!?」

ガッ!!

拳はユウキ君に触れることはない。
けれどユウキ君の無感情な表情を変えさせれた。

ハルカ 「このぉ!!」

私は白夜を膜に突き刺す。

ユウキ 「ち…」

ユウキ君は逃げるように離れる。


ユウキ 「白夜の特殊能力『空間断絶』…」
ユウキ 「無我のように独自の空間を作り出すほどの能力は有しないが空間を切り裂く能力は持つ」

ハルカ 「説明…ありがとう」

ユウキ 「……」

なんで説明をしたのかはわからないがそれっきりまたユウキ君は黙ってしまう。

ユウキ 「…このまま消した方がいいのはたしかだ」
ユウキ 「まだ…どうひっくり返っても勝てないうちに…だが…」

ユウキ君の虚ろな瞳は一瞬憂いを戻した。
…ように見えただけだけど。

ハルカ (迷っているの?)

ユウキ 「……」

マリア 「逃げる!?」

ユウキ君は突然背を向ける。
どうやら、逃げるようだった…。

ユウキ 「逃げるまでもない…もう、転移は始まっているのだから」

ハルカ 「へっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

レイジ 「うおっ!?」

ハルカ 「ま、また!?」

ユウキ 「…さらばだ」

ユウキ君は平然と歩き去ってしまう。
こっちは直下型地震でテンヤワンヤなのに!!

ハルカ 「どーしてこーなるのっ!!」

ヒュン!!

続く




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