K-O パニック +AM♪ 第14話
ちゅん…ちゅん…
雀の鳴き声…。
そっか…今日も朝が来たんだ。
でも…私にはそれを確認する事はできない。
私は部屋から出てリビングに降りる。
声 「あら、みさき…起きたの。ちょっと待っててね…」
今の声はお母さん…。
みさき 「うん…いいよ。待つから」
私はしばらく待つ。
母 「はい…ごめんね、食パンぐらいしかないけど」
みさき 「うん、いいよ。ありがとう、お母さん」
私はそう言ってパンを触る。
いつもの食パン。
大きさは大体1斤。
私はそれにバターを塗って食べ始める。
みさき 「出かけてきます」
母 「出かけるって…制服を着てるけど、学校?」
みさき 「うん…友達が待ってるから」
母 「そう…気をつけてね」
みさき 「うん」
私はそう言って、学校に向かう。
と言っても、直進50メートル。
私が外に出たとほぼ同時に声が上がる。
声 「みさきっ、遅いわよ」
みさき 「ごめん、雪ちゃん…」
深山 「まぁいいわよ…しょうがないし」
みさき 「そのかわり、埋め合わせはするよ」
深山 「期待してるよ」
そう言って、私たちは演劇部の部室に向かう。
深山 「みんなおはよう〜」
一年女子 「おはようございます先輩!」
みさき 「おはようみんな〜」
2年女子 「あっ、川名先輩おはようございま〜す!」
くいくい
その時、私の袖を誰かが引っ張った。
みさき 「?」
深山 「上月さんよ…おはようだって」
みさき 「あっ、澪ちゃん…おはよう」
私は笑顔でそう言った。
澪 「………」
きゅっ、きゅっ…
何か書いているようだ。
澪 「……♪」
書き終わったようだ…でも、私には確認する事はできない。
浩平 「お〜っす、澪。先輩たちもおはよう」
深山 「あら、早かったわね折原君」
みさき 「あっ…浩平君だったんだ」
浩平 「おう。みさき先輩、今日は手伝いか?」
みさき 「そうなんだよ…極悪商人に騙されて…」
深山 「誰が極悪商人よっ! みさきが掃除サボってばっかりだから、その埋め合わせに手伝ってくれるんでしょ?」
浩平 「…俺も掃除はサボってばっかだがな」
みさき 「そうなんだ、じゃあ仲間だね♪」
浩平 「ああ…そうだな」
深山 「ほら、だべってないで部活始めるわよ!」
澪 「……」
浩平 「ん?」
澪 「……」
『あのね』
浩平 「ふんふん」
『がんばるの』
浩平 「ああ、頑張ろうな…」
深山 「それじゃあ、折原君は上月さんのことお願い」
浩平 「う〜っす」
深山 「それから…」
みさき 「ねぇ雪ちゃん…」
深山 「ん…何?」
みさき 「私も、澪ちゃんたちと一緒でいいかな?」
深山 「え? 別にいいけど…」
みさき 「ありがと、雪ちゃん」
私はそう言って、浩平君の声の方に向かう。
浩平 「みさき先輩、こっちだ」
みさき 「うん、ありがと」
私は浩平君に手を引かれて、歩き出す。
澪 「……」
はっし
みさき 「きゃっ…」
左腕を誰かに掴まれる。
みさき 「な、何…?」
浩平 「ははは、澪だよ」
みさき 「あっ…なんだ、澪ちゃんか…驚いちゃったよ」
澪 「……」
『ごめんなさいなの』
浩平 「ごめんなさいだってよ」
みさき 「ううん…いいよ澪ちゃん」
澪 「♪」
澪ちゃんはご機嫌のようだった。
それから、私たちは食堂に行き、澪ちゃんの演技を手伝った。
と言っても、私は目が見えないから何もできなかったけど…。
深山 「それじゃあ、今日はここまで! みんなお疲れ様ーーー!!」
みさき 「………」
浩平 「先輩…帰らないのか?」
みさき 「えっ…? あっ…うん、帰るよ…」
私は…ここにいて意味があるのかな…?
何だか、邪魔してるような気もする。
くいっ
そして袖を引っ張られる。
みさき 「…澪ちゃん?」
澪 「……」
きゅっきゅっ
何かを書いてる。
澪 「……」
『おつかれさまなの』
浩平 「お疲れ様だってさ」
みさき 「あはっ…私は何の役にも立ってないけどね」
深山 「そんなことないわよ…」
みさき 「えっ…?」
深山 「みさきは、ちゃんと役に立ってるよ」
浩平 「そうだな、十分だよ」
澪 「……」
『うんっ』
浩平 「澪もそう言ってる」
みさき 「でも…私は何も」
深山 「みさきはいるだけでも、上月さんや折原君を元気付けてあげる事ができてるのよ」
みさき 「…そうなの?」
浩平 「ま、まぁ…そうだな」
澪 「……」
『うれしいの』
浩平 「ほ、ほらっ、澪も嬉しいってさ」
みさき 「…うん」
私は少し自分に自信が持てた。
今まで、雪ちゃんのおかげでここにいられたと思ってた。
雪ちゃんが無理して私をここにいさせてくれてると思ってた。
私は…信じられなかったんだね。
くいっ
みさき 「……?」
澪 「……」
『一緒に帰るの』
浩平 「ああ、3人で帰ろうな」
深山 「私もいるわよ…」
浩平 「4人になったな…」
みさき 「浩平君…澪ちゃん…雪ちゃん……」
こつん
誰かが私の頭を小突く。
深山 「ほら…帰るわよ」
みさき 「うんっ」
浩平 「しかし…50メートルって、意外と長いな」
澪 「……」
『うんっ』
深山 「あはっ、たまにはこういうのもいいか…」
みさき 「うんっ、楽しいよ」
そして、私たちは50メートルをゆっくりと4人で歩いていく。
私はその1歩1歩が、すごく嬉しかった…。
…To be continued