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ポケットモンスター 水の街外伝



序章第2話 『ふたりの悪タイプ』




? 「…大変です! 隊長!」

ここはアクアレイク中央部にある自警団本署。
ここでは多くの自警団員がいる。
それらは、自警団総団長によって統括されている。
とはいっても、その全てをいつも見ているわけにもいかなく、そこで団員たちを部隊分けしてる。
部隊は治安維持特化の第1部隊。
災害救助特化の第2部隊。
雑用、苦情処理の第3部隊。
アクアレイク周辺の警備、第4部隊。
情報処理の第5部隊。

そして、今回はもっとも力のある第1部隊の話である。

? 「…どうした?」

自警団、第1部隊屯所、そこに血相を変えて入ってくる一人のヘイガニ種の隊員があった。
そして、そこには第一部隊の隊長を任されている、一人のシザリガー種の男がいた。
その隊長の名はキサラ…通称『片バサミのキサラ』。
その由縁は肩から無くなって義手を付けた右腕だった。
本来シザリガー種は巨大なはさみが両腕になっている。
ところが、このキサラはそれが左腕だけなのだ。

隊員 「ま、またっ!」

隊員はあたふた手やら足やらを動かすだけでちっとも報告が出来ていない。
かなり落ち着きのない性格のようだ。

キサラ 「どうした、ちゃんと言わないとわからんぞ、ディド」

ディド 「は、す、すいません! そのっ! ロ、ロアがっ!」

キサラ 「なに…?」

キサラは『ロア』と言う名を聞くと神妙な顔で立ち上がった。



…………
………
……



ロア 「まぁちぃやぁがぁれぇぇぇぇっ!!!」

男 「待てと言われて、待てるわけねぇだろっ!!」

ロア、それはサメハダー種の少年だった。
ロアはそれほどまっとうな人間じゃない。
だが、少々、道は外してしまっているがその真っ直ぐな性格と嘘を言わない性格は街の人たちからも好かれていた。
ただ、あることを除いて…。

ロア 「こ、のぉ!!」

ロアは走り逃げていく男を捕らえ、一気に加速する。
その足はとても速く逃げていく男など一瞬で追い着くほどだ。

男 「くっ!?」

ロア 「うげっ!?」

ただ、唯一の弱点は…直角に曲がれないことだ…。
相手に街角を曲がられると止まれないのだ…。

男 「へっ、へへ…っが!?」

男はロアが曲がりきれないのを見ると安心しきってしまうが、その途端、ある集団にぶつかってしまう。

男A 「おっと、ここで各駅停車だぜ?」

男B 「ここでゲームオーバーだ」

男 「は、はわわ…」

男を囲んだ集団はみなキバニアの集団だった。
それらは男を囲むとただでは帰さない…というか生きては帰さないという雰囲気だった。

ロア 「たくっ、苦労させやがって…」

キバニアA 「ロアさん、走り出したら曲がれないんですから無茶しないでくださいよ」

キバニアB 「そうですよ、ただでさえロアさん猪突猛進なんすから」

ロア 「いや〜、悪ぃ悪ぃ、これからは気をつけるぜ。…ま、それより」

男 「ひ、ひぃぃ…」

ロア 「せぇのっ!!」



………



ディド 「はわわ…まただよぉ…」

キサラ 「あのクソガキども…」

キサラたち第1部隊が来たときには男はボコボコに殴られ、今にも死にそうだった。
すでにその場にロアたちの姿はない。
一足遅かったようだった。

ディド 「この男どうします?」

キサラ 「牢にぶち込んどけ…一応窃盗犯だ」

キサラはそう言うとどこかへと歩き始めた。

ディド 「どこ行くんですか? 隊長?」

キサラ 「野暮用だ…すぐに署には帰る…」

キサラはそう言うとある場所へ向かうのだった。


………


キサラ 「おい…」

ロア 「…あん?」

ドガァ!

ロア 「ぶっ…!?」

とある街角でキサラはロアを見つけると後から近づいて右手をロアの肩に乗せるとロアは何かと振り向く。
そこへキサラはいきなり左のはさみでロアをぶん殴った。

街人 「あ、あ〜あ…」

それは街の人たちを皆振りかえさせた。
しかし、それに誰も驚く者はいない。
むしろ、『ああ、またか…』、といった顔だった。
そう、こんな光景など日常茶飯事だったのだ。

ロアの問題…それは二つある。
ひとつは正義感こそ強いが手加減というものを知らないこと。
人口が増えるにつれ犯罪は増えていく一方。
それは自警団も着いていけなくなっている今、このロアの存在が犯罪を抑制している。

それはロアに狙われたら、地平線の彼方まで追いかけられ、捕まれば死んだほうがマシ、というような仕打ちを受けてしまうからだ。
それが問題で本来一日で終わるはずだった事件が容疑者の傷が治るまで3ヶ月間も停止して、その隙に大本に逃げられる、などと言うこともあった。

そして、2つ目の問題。
それはロアの周りだ。
ロアは大変困ったことに体力の余った青年達を集め、暴走族にも近いことをやっていた。
無論、ロアの性格上、問題の発生するような大事は起こしていないが、ロアと一緒にやりすぎてしまうのだ。
いわゆる不良という奴の頭、なのだ。

これらが、ロアの問題点。
そして、ロアが何かをやる度にキサラはこうやって、ぶん殴り自警団屯所まで引きずっていく、というわけだ。

そんなことはしょっちゅう、特に変わりばえも無く、いつも通り繰り返されるのだった。










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