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ポケットモンスター 水の街外伝



第3話 『銀色の羽』




バッツ 「街道に出て、郵便屋さんを右に曲がって、坂を登ったら〜!!」
バッツ 「…到着!」

俺はケネラド爺ちゃんの家を出ると、全速力でライト美術館の前まで来ていた。

バッツ 「…あれ?」

時間はもう6時、太陽も沈みかけている。
そして、美術館の扉も閉まっている。


『本日は都合により閉館させいて頂きます −ライト美術館館長ライト・ルドン−』


バッツ 「どう言う事だよ〜! なんで閉まってるの〜!?」

何でも都合がどうとかで閉まってる。
うう〜、インボーだ〜…。

ライト 「ふぅ…あ、あれ?」

バッツ 「あ!」

美術館の正面に立っていると、何故か裏口からライトのおっちゃんが出てくる。
俺はそれを見逃さず、ライトのおっちゃんの前に出る。

バッツ 「ねぇ! どういうこと!? なんで美術館閉まってるの!?」

ライト 「ああ〜、それはその…」

バッツ 「ちゃんと答えてよ! 銀色の羽根を見つけたのってホント!?」

ライト 「ああ〜…その…ごめんねバッツ君、ちょっと答えられないんだ…」

ライトのおっちゃんは困ったように顔を顰める。
うう〜…。

ライト 「ぼ、僕は仕方ないんだ! それじゃ!」

バッツ 「あ!?」

ライトのおっちゃんは逃げるように跡を発つ。
よ〜するに逃げられた…。

バッツ 「うう〜…」

納得できない…。
でも、もう逃げられたし…。

ミュルナ 「バッツ君…今日はどうしたの? 探したのよ?」

バッツ 「あ、ミュルナお姉ちゃん」

俺が道のど真ん中に立ち尽くしていると、赤く腰まで伸びた長い髪が特徴的な女性が現れた。
ミロカロス種のミュルナお姉ちゃんだ。
身長は160センチくらいで背中の腰の下から美しい尻尾が伸びていた。
ちなみに俺の住んでいるウンデ教会の尼さんだ。

バッツ 「ごめん…ミュルナお姉ちゃん…俺、銀色の羽根見たくって…」

ミュルナ 「でも、暗くなっても帰って来なかったら心配しちゃうでしょ?」

バッツ 「う、うん…」

ミュルナ 「美術館には明日行きましょうね? バッツ君?」

バッツ 「うん…」

どうしてもミュルナお姉ちゃんには頭が上がらない。
俺はお姉ちゃんに諭され、一緒に教会へと帰った。



…………
………
……



バッツ 「あ〜あ、銀色の羽根かぁ〜…」

女の子 「ぎんいろのはね〜? なぁにそれ?」

教会の中の皆が集まる部屋でそう呟くと、コイキング種の女の子が興味津々に顔を覗かせる。
この女の子は紫穏(しおん)、気がついたらこの教会にいた女の子だ。
正確はちょっとおどおどしていて、頼りない。
どうしてか親はいなくて俺と同じようにこの教会にいるわけだ。

バッツ 「銀色の羽根はルギアの羽根のことだよ」

紫穏 「るぎあって〜?」

バッツ 「えっとルギアって言うのは〜うう…」

どういえばいいかわからない。
というかこのままだと終わりそうになさそう…。

紫穏 「ねぇ〜、るぎあって〜?」

バッツ 「うう〜うう〜…」

紫穏はなんでどうしてと詰め寄ってくる。
こういう時無邪気なのは大変だ〜…。

ミュルナ 「どうしたの、あなたたち?」

バッツ 「あ、ミュルナお姉ちゃん〜…」

紫穏 「バッツ〜教えて〜…」

ミュルナ 「…?」

俺はミュルナお姉ちゃんに事の事情を話す。
ミュルナお姉ちゃんは事情を聞くと俺の代わりに紫穏に教えてくれた。
正直助かった…。

紫穏 「紫穏も見たい〜」

バッツ 「明日明日」

紫穏は話を聞くと自分も行きたいという。
俺も明日は朝中に美術館に行こっと。



…………
………
……



『本日は都合により閉館させいて頂きます −ライト美術館館長ライト・ルドン−』


紫穏 「閉まってる〜」

バッツ 「……」

午前10時、美術館は閉まっていた。
どういうことだよ〜…普段は9時くらいにはいつも開いているくせに〜。

ライト 「わっ、バ、バッツ君…また来たのかい」

しばらく待っているとまたもや裏口からライトのおっちゃんが現れる。
俺は昨日と同様に詰め寄った。

バッツ 「どういうこと! 何で見せないの!」

ライト 「み、見せられないんだよ〜」

紫穏 「見せられない〜?」

ライト 「銀色の羽根は本国の中央政府の役人に渡されるんだ」
ライト 「その間、最重要機密事項だったんだけど…この街じゃあっという間に広まっちゃったみたいだね…」

バッツ 「?」

紫穏 「さいじゅうおうきみつじこ〜?」

よくわからなかった。
なにそれ…?

ライト 「よ、要するに銀色の羽根は見せられないの!」

? 「なんじゃ、つまらんの〜」

バッツ 「?」

紫穏 「白いお髭〜♪」

突然後からとても年季の入った声が聞こえる。
振り向いてみると、白い髭を生やしたおじいちゃんがいた。
ケネラド爺ちゃんじゃない、誰だろ?

ライト 「あ、あなたは…!」

おじいちゃん 「見れんのか? ワシらは?」

ライト 「い、いえいえいえ! どうぞ、お入りください!!」

ライトのおっちゃんは普段からオドオドしているけど、今日は一層オドオドしていた。
なんだか、よくわからないけど、正面のドアを開けて、中へと勧めてくれる。

バッツ 「おじいちゃん誰?」

俺は白い髭を生やして、蒼いロープに身を包んだおじいちゃんに聞いた。

おじいちゃん 「ワシの名は『グラン』。ただのしがない爺じゃよ」

紫穏 「おじいちゃん〜♪」

紫穏は嬉しそうにグランと名乗るおじいちゃんに抱きついた。

グラン 「ほっほ、これこれ、さぁ中に入ろうか?」

バッツ 「うん!」

紫穏 「うん〜♪」



…………
………
……



美術館の中は薄暗く、誰もいなかった。
さっきまで閉館していたんだから当然だけど、ここは普段からあまり人はいない。
元々そこまで大きな美術館でもないし、なにより人を呼ぶような珍しい物があるというわけでもないからだ。
美術館は2階建てになっており、四角い中の角をなぞるように周り、出口へと繋がる。
美術館の真ん中となる部分はその時々の目玉を飾る部屋になっていることが多い。
部屋は6くらいだが、壁の取り外しが出来るためひとつの巨大なフロアとすることもある。
2階はひとつの巨大なフロアで主に大きい物はこっちに置かれたりする。

バッツ 「銀色のはどこにあるの〜?」

ライト 「こっちだよ…」

ライトのおっちゃんはそう言って、部屋の奥へと進む。
やがて、部屋の奥の本来一般人が立ち入ることの出来ない、鋼鉄の扉の前に来る。
扉は鍵がかけてあり、ライトのおっちゃんはひとつの大きな鍵を鍵穴に差し込むとガチャリと鈍い音を立てて扉の鍵は開く。
そして、俺たちはその重い扉の向こうへと進む。


………


ギィィィ…。

重い扉の奥には更に扉、その扉の向こうにもまだ扉があった。
そして、その三つ目の扉が開いた時、俺はこの世の物とは思えない綺麗な『羽根』を見ることになる。

ライト 「これです…これが銀色の羽根…潜水ポケモン『ルギア』、シルビィの羽根です」

グラン 「なるほどのぉ…」

紫穏 「綺麗…」

バッツ 「うん…」

銀色の羽根はガラスのケースに大事そうに保管されていた。
ガラスケースの中の羽根は薄暗い中でもその光沢を失わず、あわい光を放っている。
エアームドのような金属色の銀色じゃない…この世の物とは思えない…それが第1印象の羽根だった。

バッツ 「ライトのおっちゃん! これ、どこで発見したの!?」

ライト 「ぼ、僕が発見したんじゃないんだよ…」
ライト 「トールさんだよ…ほら、南区に住んでいるニョロボン種の漁師の…」

グラン 「して、場所は?」

ライト 「み、南のラキシス島から東に数キロ行った所の漁場で偶然網に引っ掛かったって言ってました」

グラン 「なるほどのぉ…」

グランおじいちゃんは白い髭を擦りながら何かを考えていた。
南…本当にいるんだ…ルギアは!

バッツ 「やっぱりこの付近の海域にはルギアがいるんだ!」

紫穏 「いるいる〜♪」

グラン 「どうかの〜…」

グランおじいちゃんは白い髭をまだ擦りながらそう言う。

グラン 「あの海溝は長年に渡って調べられとる…単に流れてきたという方が自然じゃろうな」

バッツ 「そんなことないよ! ケネラドじいちゃんはいるって言い伝えがあるって言ってたもん!」

ライト 「い、言い伝えは言い伝えだし…本当とは…」

グラン 「ふむ…ワシらには真実はわからぬが少なくとも、この羽根は『本物』ということは事実じゃな…」

ライト 「やっぱり、本物なのでしょうか?」

グラン 「少なくともな…問題は年代じゃ…」

紫穏 「ねんだい〜?」

バッツ 「どういうこと?」

グラン 「こいつが1000年前か昨日のかで考え方は大きく変わるからのう…」

…?
よくわからない…。
考え方?
ルギアの羽根って言うのは確かなのに…。

グラン 「もっと大きくなって、知りたいと思えばわかるよ、ほっほ」

ライト 「…もういいですか? これ、国宝級の代物ですから出来れば…」

グラン 「すまんのぅ…しかし、こんな厳重に保管せずとも良かろうに」

ライト 「いえ、万が一もありますから…」

バッツ 「怪盗が狙っていたら大変だもんね」

ライト 「……」(ピク…)

紫穏 「ほえ?」

今…ライトのおっちゃんが反応した。

グラン 「お主…まさか」

ライト 「い、いえいえいえいえいえいえいえ! 決して怪盗386面相に狙われているなど!」

バッツ 「……」
グラン 「……」
紫穏 「怪盗〜♪」

ライト 「あ…」

怪盗386面相…。
正体は誰も知らず、あらゆるポケモンに化けることが出来、盗めぬ物は無いと自負する世界的有名な怪盗。
その活動範囲は世界全体であらゆる物を盗んでのけ、そして未だ捕まっていない神出鬼没の謎の怪盗。
怪盗…386面相…。

グラン 「お主…何故、それを先に言わん」

ライト 「も、申し訳ありません…自警団の方から内密にと…」

グラン 「はぁ…」

グランおじいちゃんは首を横に振った。
まったく、これだからライトのおっちゃんは…。

グラン 「して、犯行予告時刻は?」

ライト 「ほ、本日の午後8時…」

怪盗386面相は必ず、犯行予告を記した、カードを用意する。
捕まらないと、盗んでみせるという自負の現れだ。
事実、いつ盗まれるかわかっていながら、守りきれたことは無い。

グラン 「なんとしても守りきるんじゃぞ…これは世界的な遺物じゃ」

ライト 「は、はい…!」

ライトのおっちゃんじゃ無理だろうな…。
というより、誰が守りきれるんだろう…。

グラン 「とりあえず、もう行こうかの、ふたりとも」

バッツ 「うん」

紫穏 「うん〜♪」

俺たちはグランおじいちゃんの後ろを着いていき、薄暗かった美術館を出た。
外は銀色の羽根が狙われているとは露知らずな快晴だった。
街の様子もいつもと変わらない。
そこがどこかおかしかった。

バッツ 「グランおじいちゃんはこれからどうするの?」

グラン 「ワシか? ワシは用があるからの、ちょっとな」

バッツ 「ふぅん、俺たちは教会に帰らないと、お昼ご飯の時間だよ」

紫穏 「ペコペコ〜」

時間は10時、そろそろ帰らないとまたミュルナお姉ちゃんが心配するよ…。

グラン 「そうか、それじゃ、ここでお別れじゃ」

バッツ 「うん!」

紫穏 「またね〜♪」

グランおじいちゃんはそう言うと何処かへと歩き出した。
あの方角だと町長さんの家かな?



…………
………
……



バッツ 「……」

午後7時半頃、俺は教会の窓から空を眺めていた。
俺がいる場所はここに住んでいる孤児たちの部屋でこの部屋には紫穏と俺だけがいる。
そして、窓と言うのは二つあり、ひとつは庭の方を向く、壁にある一メートル四方くらいの開け閉めが可能な窓。
もうひとつは高い天井にある丸くくりぬいたような窓ガラスだった。
そこからは真ん丸とした月が見えた。

時計を見ると既に7時39分。
皆知らないだろうけど、今日、怪盗386面相が現れる。
俺はなんだか居ても立ってもいられなくなりその場から立ち上がる。

紫穏 「どうしたの〜バッツ〜?」

バッツ 「ちょっと出かけてくる!」

俺はそう言うと、部屋の窓に手をかける。
正面から出ようとしたら間違いなくミュルナ姉ちゃんに見つかっちゃう。
そうなったら、間違いなく外に出られない。

紫穏 「バッツが行くなら紫穏も行く〜」

紫穏はそう言うと部屋の外に出て行ってしまう。
部屋を出ると通路になっておりいくつかの部屋がある。
それらを抜けると、教会の広場になっており、そこを越えると教会から出られる。
間違いなく、紫穏は普通に出て行くつもりだ。

俺はそれを無視して、窓ガラスから体を出して、素足を地面につける。
普段靴は部屋の外の靴箱に置いてあるから部屋では裸足だ。
出るときもスリッパを履くのだけど、今回は仕方ない。

俺は外にでも誰もいないことを確認するとそのまま美術館を目指した。



…………
………
……



キサラ 「どうだ、そっちは?」

自警団員 「ハッ、特に異常ありません」

キサラ 「そうか、引き続き警戒を頼む」

自警団員 「はっ!」

団員たちはそう言うと、再び持ち場に戻っていく。
時刻は既に7時50分、予告によれば後10分で現れるはず。
今回の獲物は銀色の羽、盗まれるわけにはいかない。

ディド 「現れる様子はありませんね〜」

ディドは俺に近づくと美術館の方を見てそう呟く。

キサラ 「こないならそれに越したことはないが、な…」

ディド 「ふぅ、とんでもない相手に狙われたものですよね〜」

キサラ 「まったくだ」

ディド 「じゃあ、僕は中の警備に行きます」

キサラ 「ああ」

ディドはそう言うと美術館へ入った。

キサラ 「…あいつ、本当にディドか?」

ディドが消えた後、ふとそう思ってしまう。
怪盗386面相はあらゆるポケモンに変身できるらしい。
そういうことがつい、疑う心を生んでしまう。

キサラ 「…あいつ、内部は担当じゃなかったはずだよな…」

ふと、ここで嫌なことを思い出してしまう。
そう言えば、ディドは外の第3部隊と合同で当たっていた筈だが…。

自警団員 「な、何だあの気球は!?」

キサラ 「!?」

見ると、東の空から気球が迫ってきていた。
まさか、怪盗386面相!?

キサラ 「全員! 持ち場を離れるな! 気球から出てくる影を見落とすなよ!」

自警団員 「ハッ!」



…………



バッツ 「はぁはぁ、な、なんだか物凄く騒がしくなっているよ〜」

俺はもうすぐ、美術館というところまで来ていた。
ずっと全力疾走だったから、疲れた…。

? 「モガモガッ!!」

バッツ 「! だ、だれ!?」

突然どこからか詰まったような声が聞こえた。
咄嗟にその方を向くと、なぜか羽交い絞めにされ縛られた、ディドさんがいた。
ヘイガニ種独特の自慢のはさみも縛られちゃったら役に立たないね。

ディド 「モガガッ!」

バッツ 「もう、一体何があったの?」

俺はディドさんの口に巻きつけられたハンカチを取る。

ディド 「と、突然386面相に襲われたんだ!」
ディド 「今頃、僕の姿で進入しちゃっているよ!」

バッツ 「ええっ!?」

なんてこったい!
それじゃ、もうやばいじゃないか!

ディド 「急いで戻らないと大変なんだ! さぁ、早くロープを解いてって…ちょっとー!!」

俺は急いで美術館に向かう。
大変だ! 早くしないと!
後ろからはディドさんの泣き叫ぶ声が聞こえたが特に気にしなかった。
ディドさんより、銀色の羽が大変だ!





………………





ディド? 「ふふふ、よもやこんな簡単に進入できるとはな」
ディド? 「まぁ、この程度の戦力では私を楽しませることも出来ないだろうがな…」

私はそう言って、厳重に保管されてある扉の奥へと進む。
扉は厳重といっても鍵さえあれば簡単に入れてしまうようなものだった。
そして、最後の扉を開けて…。

ディド? 「ふふふ、これだ…これこそが」

私は最後の扉を開けると、目の前に現れたガラスケースの中に入っている銀色の羽を見つける。
ガラスケースは何の細工もされておらず、簡単に取り外すことが出来た。
そして私はその銀色の羽を手に取る。

ディド? 「ふははっ! 予告どおり銀色の羽は貰った!」

? 「そして、ここにおいていってももらうわよ…」

ディド? 「だれだ!?」

後ろから声がしたと思って振り返るとひとりの小柄な女性がいた。
ラブカス種のようで、服の上からは種族的特徴はわからない。
ただ、全く気配を感じさせずに後ろに立っていた。

ディド? 「同業者か」

女性 「そういうことよ、その羽は置いていってもらうわよ怪盗386面相」

女性は気が強いらしく鋭い目で私を睨みつけてくる。
この女聞いたことがある。

怪盗 「そうだ、たしか『小夜』(さよ)…貴様、ラブカス種の小夜だな」

小夜 「ご名答、わかっているなら早いわ、さぁ、さっさと渡しなさい」

怪盗 「ふ、みすみす渡すと思うか?」

小夜 「でしょうね、だからここで奪わせてもらうわよ?」

怪盗 「ふ…はぁ!」

私は両手のはさみからバブル光線を小夜に向けて放つ。
小夜はそれをいともたやすく避けるが私はその隙にその場から逃げ出す。

小夜 「待ちなさい!」

小夜は当然追いかけてくる。
ふふふ、少しは私を楽しませてくれるようだな…。



…………



バッツ 「はぁはぁ…!」

キサラ 「! 君はバッツ君!? ここは危険だ! 教会に帰ってなさい!」

俺は美術館の前まで来るとキサラのおじちゃんが驚いた顔で立っていた。

バッツ 「大変だよ! 怪盗は今、ディドにいちゃんに化けているんだ!」

俺はそうキサラのおじちゃんに告げるとおじちゃんは更に驚いた顔で美術館の方を見る。

キサラ 「まさか、あれが怪盗386面相だったのか!?」

キサラのおじちゃんはそういうと美術館の中に入っていく。
俺も急いでその後を追った。

キサラ 「! まて! 怪盗386面相!!」

中に入るとディドにいちゃんの姿をした怪盗がいた。
手には銀色に神々しく輝く羽がある。
一足遅かった!

怪盗 「ふっ! 雑兵が!」

いやらしく笑った怪盗はキサラおじちゃんに当たると見せかけてかわし、こっちに向かってくる。

キサラ 「しまった!?」

バッツ 「う、うわっ!?」

怪盗 「邪魔だ! 小僧!」

小夜 「!?」

ドカァ!

怪盗は俺を払いのけるよう突き飛ばす。
俺はそのまま壁に激突する。
背中が痛いがそれ所ではない。
銀色の羽が…!!

小夜 「危ない!」

バッツ 「え…うわ!?」

見ると、壁に当たった衝撃で近くの机から重そうな銅像が落ちようとしている。
当たったらやばすぎるよ!?

小夜 「くっ!?」

ズズーン!!

銅像はそんな音を立てて床に落ちる。
幸い、謎の女性が守ってくれたお陰で俺に怪我はない。

小夜 「大丈夫?」

バッツ 「う、うん…」

女性は優しい笑みでそう言う。
正直見とれてしまいそうだった。
それくらい綺麗に見えた。

バッツ 「そうだ! 羽が!?」

小夜 「もう、無理よ…悔しいけど怪盗386面相の勝ちよ…」

バッツ 「そんな…」

銀色の羽が奪われるなんて…。
そんなぁ…。

小夜 「でも、大丈夫よ」

バッツ 「? どうして?」

小夜 「あれはきっとその内それが必要な者の手に渡るわ」

バッツ 「何でわかるの?」

小夜 「勘よ、それじゃね、坊や」

女性はそう言うとその場から走り去ってしまった。
俺はしばらく呆然としているしかなかった。
呆気に取られた。
その後、俺に銀色の羽の行方はわからない。

あの女性の言っていたことが本当ならばきっとあれは渡るべき場所に渡るんだろう…。
俺にはどうすることも出来ないことだった。










To be continued
















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