ポケットモンスター パール編




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おまけ





『ポケットモンスター…縮めてポケモン』

『この星の不思議な不思議な生き物』

『その数は100…200…300…400…それ以上かもれしれない』

『ポケモンと人間は友として、パートナーとして』

『またある時は敵として世界中のいたるところで暮らしていた』


−とある語りより抜粋〜−





『マサゴタウン:ナナカマド研究所』


ナナカマド 「ヒカリ君、忘れ物はないか?」

ヒカリ 「モンスターボールも大丈夫、ポッチャマの体調も大丈夫、お金、道具も大丈〜夫♪」

ナナカマド 「新型ポケモン図鑑は?」

ヒカリ 「え…ああ! 忘れてましたー!」







第2話 『負けて負けても…』




『某日 時刻08:10 マサゴタウン ナナカマド研究所』


ヒカリ 「あ〜、あったあった! 良かった〜これがなかったら元も子もないもんね!」

ナナカマド 「まったく…昨日のうちにちゃんと用意しとかないからだぞ」

ヒカリ 「すいません…」

コウキ 「あの…」

午前もまだ早い頃。
ヒカリちゃんは忙しそうに準備を行っていた。
僕は僕でいうと…。

ヒカリ 「あ、コウキ君おはよう! その服似合っているよ♪」

ナナカマド 「ふむ、私の用意した服だが似合っているぞ」

コウキ 「なんだかごちゃごちゃしてて動きにくい…」

僕はナナカマド博士に言われて、ナナカマド博士が用意してくれたいわゆる『今時』の服を着ていた。
これにはわけがあってそれは昨日の夜に遡るのだが…。



…………。



ナナカマド 「…というわけなんだが」

ヒカリ 「わかりました! このヒカリに任せておけば大丈〜夫!」

コウキ 「…?」

夕食の後、ヒカリちゃんとナナカマド博士はなにやら二人きりで話し合っていた。
僕はじゃれついてくるナエトルと遊んでいるところだった。
僕はつい気になって二人を見た。

ヒカリ 「ねぇ、コウキ君」

コウキ 「なに?」

ヒカリちゃんはなにやらニコニコ顔でこちらに歩み寄ってきた。

ヒカリ 「あたしね、明日からシンオウ地方のポケモンの調査のため旅に出るの!」
ヒカリ 「それでね、良かったらコウキ君も一緒に行かない?」

コウキ 「僕も?」

ナナカマド 「そう、君のことは一切情報もないし、捜索届けも出ていないようだ」
ナナカマド 「ここは君もヒカリ君について行ってシンオウを回ってみれば記憶も戻るのではないかと思うのだ」
ナナカマド 「君が何故ポケモンに嫌われるのかは私にもさっぱりだがこれを機に世界中のポケモンと触れ合ってみるといい」

コウキ 「世界中のポケモンと…」

ヒカリ 「そう! きっと世界には君を好きになってくれるポケモンはいっぱいいるよ!」

ナナカマド 「どうだ? もちろん旅にはそのナエトルも一緒に連れて行くといい」
ナナカマド 「ナエトルは君になついているし、そのナエトルに正式なトレーナーはいない」

ヒカリ 「ねぇ、コウキ君、コウキ君はこれからどうしたいの?」

コウキ 「…僕は、僕は世界中のポケモンと友達になりたい、僕も一緒に旅をしたいです!」

ヒカリ 「決まり!」

ナナカマド 「ふむ、ならば明日朝からこれを着るといい」

コウキ 「これは?」

ナナカマド博士はあらかじめ用意していたのであろう服とズボン、それに帽子を渡してきた。

ヒカリ 「じゃーん! あたしとナナカマド博士で選んだあなた用の服よ!」
ヒカリ 「旅するからにはあたしのパジャマのままじゃね」

ナナカマド 「君が最初から着ていた服もぼろぼろだったし新調したんだが、問題ないな?」

コウキ 「はぁ…」

ヒカリ 「じゃ、今日は早く寝よーっと!」

ヒカリちゃんはなんだかニコヤカにその場を去るのだった。

コウキ 「明日から僕も…」

僕は少し明日に期待してその日は早めに眠るのだった。



…………。



…と、いうわけで僕は新しい服を着てヒカリちゃんとポケモン調査の旅に出るのだ。

ヒカリ 「うんうん、似合ってる似合ってる!」

コウキ 「なんだか逆に恥ずかしいよ…」

僕の服装は半そでのシャツに青い長ズボン、赤いニットキャップも一緒についていた。
しょうがなく被っているけど頭が重たい。
さらにつける意味のわからない赤い2メートルくらいの帯を首に巻いていた。
マフラーらしいけど…これって意味あるの?

ナナカマド 「これは、君用のバッグだ」

ナナカマド博士は最後に黄色いリュックサックを渡してきた。
あまり重くはなく中身はほとんど入っていないみたいだった。

ヒカリ 「さて、ポケッチもあるし、コウキ君も大丈夫だしこれで問題なーし!」

ナナカマド 「コウキ君、これは君用のポケモン図鑑と空のモンスターボールだ」
ナナカマド 「これからの旅に良き運命を祈るぞ」

コウキ 「はい」

僕はポケモン図鑑を腰のベルトに引っ掛け、空のモンスターボール5つをもらうとそれをバッグのボールラックに入れた。
ナエトルの入っているモンスターボールは腰のベルトに装備した。

ヒカリ 「それじゃ、博士行ってきまーす!」

コウキ 「行ってきます」

ナナカマド 「うむ、しっかり頼むぞ」

僕たちはナナカマド博士に見送られて旅に出る。
これから一体どんな出会いがあるんだろう…期待と不安が入れ混じっていた。



ナナカマド 「ふぅ…さて私の手元にある3つのポケモン図鑑、あと一つ受け取りにくる少年がくるはずだが…」

? 「おおーい、じいさん! きたぜー!」

ナナカマド 「む、来たか」

? 「じいさん、俺に頼みって何なんだよ」

ナナカマド 「ふむ、実はだな…」



…………。



『202番道路』


ヒカリ 「いい? ポケモンを捕まえる時はまずはポケモンバトルで弱らせることから始めるのよ?」

コウキ 「うん」

ヒカリ 「見ていて、あたしが捕まえるところを実際に見せてあげるから」

コウキ 「うん」

ヒカリ 「さぁ、出てきなさい野生のポケモン!」

シーン…。

コウキ 「…見事にここにはいないね」

僕たちは202番道路にいた。
ここでヒカリちゃんにポケモンの捕まえ方を教えてもらう手はずだった。
だけど、草むらに入ってもポケモンは出てきてくれない。

ヒカリ 「ま、まぁ草むらに入っても必ず出るとは限らないから…」

コウキ 「……」

よく見ると遠くで怯えているポケモンが横目で見えた。
ヒカリちゃんは気づいていない。

コウキ (動く『くろいビードロ』…)

昨日ヒカリちゃんに言われたこの言葉がぐさりと胸に突き刺さった。
どうやら、僕がいるだけで普通の野生のポケモンは近づいてくれさえしないらしい…。

コウキ 「……」

ヒカリ 「て、あ! コウキ君どこ行くのーっ!」

コウキ 「遠くから見てる…」

僕は10メートル程ヒカリちゃんから離れた。
これならヒカリちゃんの近くには野生のポケモンも現れるはず…。

コリンク 「コリン!」

ヒカリ 「あ、コリンク!」

コウキ 「コリンク…」

ヒカリちゃんの前に突然、青色の四足のポケモンが姿を現した。
コリンクというポケモンらしく目は黄色かった。

ヒカリ 「お願い! ポッチャマ!」

ポッチャマ 「ポッチャマーッ!」

ヒカリちゃんはポッチャマをボールから出す。
コリンクはやる気満々でヒカリちゃんたちと対峙していた。

コリンク 「コリーッ!」

コリンクは鋭い目でポッチャマを睨み付けた。
ポッチャマは少なからず怯んでいるように見える。

ヒカリ 「コリンクの『にらみつける』ね! だったらポッチャマ『なきごえ』よ!」

ポッチャマ 「チャマ〜♪」

ポッチャマは可愛い鳴き声で鳴いた。
コリンクもそれで少し警戒が揺るいだように見える…。

コウキ (全然技の効果がわからない…どういう効果があるの?)

見ている分には一体何の意味があるのかさっぱりだった。

コリンク 「コリー!」

ヒカリ 「ポッチャマ! 『はたく』こうげきよ!」

ポッチャマ 「ポッチャマー!」

コリンクはポッチャマに『たいあたり』するが、ヒカリちゃんのポッチャマの『はたく』をカウンターで食らった。
コリンクは1メートルほど後ろに退いて首を左右に振った。

ヒカリ 「もう一度! ポッチャマ『はたく』!」

ポッチャマ 「ポッチャマー!」

バチィン!

コリンク 「コリーン!?」

ポッチャマはもう一度コリンクの顔をはたくのだった。

ヒカリ 「よーし、モンスターボール!」

コリンク 「!?」

ヒカリちゃんはチャンスと見てモンスターボールをコリンクに投げつけた。
ボールはコリンクに当たるとボールはコリンクをボールの中に閉じ込める。
そのまましばらくボールは地面で暴れるけど、やがて大人しくなるのだった。

ボフゥン!

ヒカリ 「コリンク、ゲット!」

ヒカリちゃんはそう言ってコリンクの入ったボールを手に取った。

ヒカリ 「出てきてコリンク」

ヒカリちゃんは早速コリンクをボールから出す。

コリンク 「コリン?」

ヒカリ 「ん〜、このコリンクは男の子か、コリン君だね」

ヒカリちゃんはなにやらポケモン図鑑を見て呟いた。
僕はいい加減ヒカリちゃんに近寄る。

コウキ 「そうやってゲットするんだね」

ヒカリ 「あ、コウキ君」

ポッチャマ 「!」
コリンク 「!?」

ポッチャマとコリンクは僕を見ると慌ててヒカリちゃんの後ろに隠れてしまった。

ヒカリ 「あ、ああ…もう、どうしてみんなコウキ君を嫌うんだろう…」

コウキ 「……」

ヒカリ 「あ、ちなみに説明忘れていたけど、ポケモン図鑑でポケモンのデータが見れるからね」

コウキ 「そうなんだ」

ヒカリ 「さて、後はコウキ君の実践なんだけど…コウキ君には現れてくれないんだよね〜…」

コウキ 「……」

そう、強気なポケモンはともかくここら辺りのポケモンは僕が怖いらしく現れてくれない。

ヒカリ 「しょうがない、ここはナエトルのレベル上げといこっか?」

コウキ 「レベル上げ?」

ヒカリ 「コウキ君のナエトルはほとんどバトルしたことがないからね、これから徹底的に鍛えるよー!?」
ヒカリ 「さ、ポケモン出して出して!」

コウキ 「うん…わかった、出てきてナエトル!」

ナエトル 「ナエー♪」

僕はボールからナエトルを出すとナエトルは嬉しそうに僕にじゃれついてきた。

ヒカリ 「ナエトルはこんなにコウキ君のこと好きなのになぁ〜」

複雑な表情をするヒカリちゃん。
でも、それを見てかコリンクが少しこっちに近づいてくる。

ヒカリ 「ん? コリンク、興味があるの?」

コリンク 「コリン…」

コリンクは俯いたまま沈黙する。
もしかして控えめ?

ヒカリ 「相性良くてもポッチャマはナエトルとはレベルが違うからバトルにならないし、ここはコリンク! 君に決めた!」

コリンク 「…コリン!」

コリンクはやや重い足取りで僕たちの前に立った。
少し躊躇うな…さっきの戦いで疲れているはずなのに…。

ヒカリ 「コウキ君は今、このコリンクはさっきのポッチャマの戦いで傷ついて戦えないと思っているでしょ?」
ヒカリ 「そこはこれで大丈〜夫♪ ほら、コリンク、『きずぐすり』よ!」

コリンク 「…! コリン!」

コウキ 「! 元気になった」

コリンクはヒカリちゃんがなにやらバッグから道具を取り出して使うとすぐに元気になる。

ヒカリ 「傷ついたポケモンはこうやって道具を使って回復してあげるのよ、そうすればまた戦えるから!」
ヒカリ 「それじゃ、行くよ!」

ヒカリちゃんはそう言って構える。
ポケモンバトルでトレーナーが構える必要ってあるのかな…?

ヒカリ 「ちなみに、ポケモンの技は図鑑の参照でわかるわよ」

コウキ 「…ありがとう」

僕は早速図鑑でナエトルを参照する。
ポケモンにセンサーを向けるとそれでそのポケモンを認識するらしいから便利だ。

『ナエトル♂ LV5』
『使える技 たいあたり・からにこもる』

コウキ (これってコリンクも見れるのかな?)

僕は試しにコリンクにセンサーを向けてみた。

『コリンク♂ LV4』
『このポケモンのIDはプロテクトがかかっています、参照できません』

ヒカリ 「どう? ポケモン図鑑はあたしのコリンクはレベルと名前、性別しか見れなかったでしょ?」
ヒカリ 「モンスターボールで捕まえられたポケモンはね、個人情報保護法により、そこまでしか見れないの」
ヒカリ 「でも、自分のは詳しく見れるから活用してね?」

コウキ 「成る程…」

でも、レベルがわかるだけで十分かもしれない。
少なくともこのコリンクは僕のナエトルよりレベルが低いらしい。

ヒカリ (レベルが低いからって侮っているな〜、ポケモンにはタイプや性格だってあるんだから)
ヒカリ (ここは先輩トレーナーとして良いトコ見せないとね!)

コウキ (えと…『たいあたり』はそのまま相手に体当たりをする技、タイプはノーマルで物理で攻撃力35。PP35)
コウキ (『からにこもる』は殻や甲羅に篭って防御力を上げる技、タイプ水、PP40…覚えること多いよ)

いきなり半泣きになりそうな情報量が掲示される。
今は二つだからいいけどこれから増えていくとなると…。

ヒカリ 「先手はいただくよ! コリンク『にらみつける』!」

コリンク 「コリー!」

コリンクは鋭い目つきでナエトルを睨んだ。
ナエトルはそれで少し後ろずさる。

コウキ 「『にみつける』って…えと…」

ヒカリ 「図鑑の技一覧、50音順、な行!」

コウキ (技一覧…検索50音順…な行…)

僕は図鑑で『にらみつける』の効果を調べる。
一体あれってどういう効果があるんだろうか?

コウキ (ニードルアーム…にぎりつぶす…にどげり…にほんばれ…にらみつける…あった!)

僕は『にらみつける』を参照した。

『にらみつける タイプ:ノーマル PP30 複数相手に有効 非接触 効果:相手の『ぼうぎょ』を一段階下げる』

コウキ (防御力を下げる技だったのか…でも、一段階ってどれくらいなんだろう?)

どうやら、一つわかるとまたわからない問題が出てくるらしい。
防御力を下げられたのなら…こっちは上げればいいんだね!

コウキ 「ナエトル、『からにこもる』!」

ナエトル 「ナエッ!」

ナエトルはその場で背中の甲羅に丸まった。
これは殻に篭るというより丸まっただけに見えるけど?

ヒカリ 「判断としては別に問題ないけど、ベストとは言えないね!」
ヒカリ 「『たいあたり』よ! コリンク!」

コリンク 「コリーン!」

ドッカァ!

ナエトル 「ナエーッ!?」

コウキ 「嘘!? 強い!?」

ナエトルは1メートルほどコリンクの『たいあたり』で宙を舞った。
ナエトルはそのまま受身を取るが思ったよりダメージがあるように思えた。

コウキ (どうして!? コリンクの方がレベルは低いのに!)

単純に考えればこっちのほうが有利のはずなのに…。

コウキ 「わからないけどやるしかない! こっちも『たいあたり』だ!」

ナエトル 「ナエー!」

ヒカリ 「単純すぎるよ! コリンク、ナエトルのバックを取って『たいあたり』!」

コリンク 「コリーン!」

ナエトル 「ナエー!」

ナエトルはコリンクに『たいあたり』するがコリンクはナエトルの頭上を飛び越えてナエトルのバックを取った。
そのままコリンクはナエトルに思いっきり『たいあたり』を浴びせた。

ナエトル 「ナエーッ!?」

コウキ 「ナエトル!?」

ナエトルは後ろから『たいあたり』を受けて気絶してしまった。
そんな…こんなにあっさり負けちゃうなんて…。

ヒカリ 「いいこと教えてあげる、ポケモンは何かしら『特性』というものを持っているのよ」

コウキ 「特性…?」

ヒカリ 「ナエトルの特性『しんりょく』、ピンチになると草タイプの技の威力が上がるの」
ヒカリ 「そしてコリンクの特性は『とうそうしん』、これは相手が同じ性別だったら攻撃力が増すの」

コウキ 「そうか…それで『たいあたり』があんなに痛かったんだ…」

僕のナエトルは男の子、だからコリンクの攻撃力が上がっていた。
だからレベルはこっちが上でも負けたのか…。

ヒカリ 「いい? ポケモンバトルはレベルだけじゃなくタイプ相性や特性や性格まで把握しないと勝てないよ?」
ヒカリ 「まぁ、ずぶの素人のコウキ君じゃまずは負けて負けて強くなるしかないんだけどね」

コウキ 「…うん」

少し悔しかった。
負けるって悔しいな…。

ヒカリ 「じゃ、コトブキシティに着くまで時間も余裕あるし、ここで何戦も特訓するよ!」

こうして今日はバトルが終わったら回復を繰り返してナエトルと僕はバトルの特訓をするのだった。
午前8時から11時までひたすらヒカリちゃんや稀に現れる野性のポケモンとバトル。
それから先はコトブキシティに向かい、途中出会ったトレーナーたちとは僕がバトル。
何とか勝てて、僕たちはコトブキシティを目指した。



…………。



『同日 時刻13:33 コトブキシティ』


コウキ 「……」(唖然)

ヒカリ 「ふぅ、やっと着いたーっ!」

僕たちはお昼が少し過ぎた頃やっとコトブキシティに辿り着いた。
僕はこの街というところに入って唖然とする。
なんだか…マサゴタウンとはスケールが違うんだけど…。

コウキ 「これが…街なんだ」

この街は大きな建物が多く目に付き、マサゴタウンとは比較にならないほどの人が街を歩いていた。
地面はしっかり舗装されており、道路もしっかり整備されている。
すごい…何もかもすごい…。

ヒカリ 「…コウキ君、あんまり田舎者みたいにキョロキョロしないでよ…こっちが恥ずかしいから…」

コウキ 「あ、ごめん…」

さすがに物珍しげにキョロキョロとしていたらヒカリちゃんに注意されてしまう。
僕は正面を見る。

ヒカリ 「さてと、まずはお昼ご飯を摂って、ポケモンをポケモンセンターに預けて回復ね」
ヒカリ 「それが終わったら次はソノオタウンに向かわないと」

ヒカリちゃんはポケッチと呼ばれる時計のような機械とスケジュール帳を交互に見て呟いた。

コウキ 「ポケモンセンターって?」

ヒカリ 「ん? ああ、ポケモンセンターっていうのはポケモントレーナーのための施設よ」
ヒカリ 「傷ついたポケモンは無料で回復してくれるし、宿として無料で部屋を貸してもくれるわ」
ヒカリ 「また、ポケモントレーナーたちが集まるから絶好の交流の場であるから交換とかもここでするのよ?」

コウキ 「交換?」

ヒカリ 「えっと、今日図鑑でIDがどうとかって言われたでしょ?」
ヒカリ 「ポケモンはモンスターボールで捕まえると自分のIDで登録されるの、これは自分のポケモンという証拠よ」
ヒカリ 「で、交換っていうのは違うIDの人とポケモンを交換することよ」

コウキ 「成る程…」

ヒカリ 「じゃ、早速ポケモンセンターに…」

? 「おおーい!」

コウキ 「?」

ヒカリ 「…へ?」

突然、後ろから大きな声が聞こえた。
どうもこっちに向けられているようで僕たちは同時に後ろを振り返った。

? 「おおーい! て、おお!? 可愛い娘ちゃんだーっ!!」

ヒカリ 「へ…? て、げ…!?」

突然、僕たちとそんなに身長差のない少年がこっちに突っ込んできた。
黄色い髪の毛が派手で爆発しているかのように髪の毛がおっ立っていた。
少年はヒカリちゃんを見るとまるでターゲットロックしたかのように一直線にヒカリちゃんに向かった。

ヒカリ 「キャアアアアアーッ!!?」

バッキィィ!!

? 「げぶっ!?」

ヒカリちゃんは咄嗟に拳をグーで握って相手の顎をカチ上げた。
少年は少し体を宙に浮かせて背中から豪快に倒れた。

ドッサァァァァ!

コウキ 「だ、大丈夫ですか!?」

僕は慌てて少年の安否を確認する。

ヒカリ 「はぁ…はぁ…! あなた何者よ!? いきなり抱きつこうとするなんて!」

? 「あ…はは…見事なアッパーで…効いたよ」
? 「だけど、ますます気に入った! その花のような可憐な顔、スラッとしたボディ! そして猛々しいアクション!」
? 「惚れたぜ! 俺はジュン! 君はヒカリちゃんだろ?」

ヒカリ 「へ? なんであたしのこと知っているの!?」
ヒカリ 「まさかストーカー!?」

ジュン 「違う違う! こいつを見ればわかるだろう?」

ジュンと呼ばれる少年はそう言うと持っていたショルダーバッグから赤い機械を取り出した。

ヒカリ 「ポケモン図鑑…!?」

ジュン 「これでわかったろう?」

ヒカリ 「あなたまさか…」

ヒカリちゃんはなにやらわなわな震えていた。
なんだか僕は状況がわからなくなる。

ジュン 「そう、そのまさか」

ヒカリ 「あなたストーカーで痴漢行為まで働く上に、ナナカマド研究所に泥棒まで入った大悪党ね!?」

ジュン 「て、ちっがーう!!!」

コウキ (ナイス突っ込み…?)

いまいちよくわからないがなにか笑いのノリを感じた。
で、結局この人誰なの?

ジュン 「俺はナナカマドのじいさんに頼まれてポケモン調査に出た三人目だーっ!!」

ヒカリ 「へ?」

コウキ 「三人目…」

僕たちはキョトンとする。
三人目…いたんだ。

ジュン 「はぁ…はぁ…これで理解してくれた?」

ヒカリ 「…痴漢行為は消えないわよ…」

ジュン 「うぐ…そこはすまない…で、そっちのガキンチョがコウキってやつか?」

コウキ 「……」

ジュンという少年は僕を見るとヒカリちゃんを見る目とは違った目で僕を見た。
ガキンチョって…君も僕と歳変わらなさそうだけど…。

ジュン 「ふ〜ん、お前初心者なんだってな」

コウキ 「……」

ヒカリ 「なによ、ここでやろうっての? だったらあたしが相手するわよ!?」

ジュン 「いや、君とはむしろ犯りたい…」

ヒカリ 「このぉ…変態!!」

バッキィィ!

ヒカリちゃんはまたもやグーで相手のコメカミを容赦なく叩く。
さすがにそれは効いたらしくしばらくジュン君は地面で蹲っていた。

コウキ 「大丈夫?」

またもや安否を確認する僕。

ジュン 「ふっふふ…それで、お前ヒカリちゃんとどういう関係なんだ?」

コウキ 「え? それは大切なともだ…」
ヒカリ 「友達に決まっているでしょ!」

僕が言うより先にヒカリちゃんが上書きするように大声で言った。

ジュン 「ふ〜ん、成る程、じゃさ! 俺と一緒に旅をしない!? そんな優男より俺のほうが断然頼りになるぜ!?」

コウキ 「…!」

僕は少しジュン君の言葉に動揺した。
でも、ヒカリちゃんは。

ヒカリ 「お断りよ、あんたなんかに付いて行ったら毎晩貞操の危機だわ」

ジュン 「そう、そりゃ残念」

ヒカリ 「もういい? あなたはあなたでナナカマド博士に調査を頼まれたんでしょうけど、あたしたちは関係ないわ」

ジュン 「まぁいいや、それでお前ジムバッジはもう持っているの?」

コウキ 「ジムバッジ?」

ヒカリ 「シンオウ地方に点在するジムと呼ばれる施設で、ジムリーダーに勝ったら手に入るバッジよ」

ジュン 「そういうこと、こいつが8つ以上あればその年のポケモンリーグに出場する権利を得られる」

ヒカリ 「それがどうしたのよ? あたしたちはポケモンの調査をしているの、リーグなんて関係ないわ」

ジュン 「だけど、このバッジには他にも恩恵があるのは知っているよな? ヒカリちゃんは」

コウキ 「恩恵って?」

僕はいまいち会話に入り込めない。
ジムってなんなのさ…。

ヒカリ 「…秘伝技」

ジュン 「そう! ポケモン調査には欠かせない秘伝技を使用するのにはバッジが必要なのさ!」
ジュン 「さて、俺はこれからクロガネシティに向かう、そこでジムに挑戦するんだ!」
ジュン 「コウキとやら! ジム戦前の調整手伝ってもらうぜ!」

ジュン君はそう言うとボールを手に取った。
ポケモンバトルをする気か!?

ヒカリ 「待ちなさい! それならあたしが相手をするって言ったでしょ!?」

ジュン 「悪いけどヒカリちゃんはお呼びじゃないんだな、さぁ、こいよ優男!」

ジュン君はそう言ってボールからポケモンを出す。

ヒコザル 「キーッ!」

ヒカリ 「ヒコザル!?」

コウキ 「…いけ、ナエトル!」

ナエトル 「ナエーッ!」

僕は相手のポケモンに対してナエトルを繰り出す。
僕はナエトルしか持っていないんだからこの子で対抗するしかない!

ジュン 「おいおい、ヒコザル相手にナエトルかよ、本当にずぶの素人なんだな」
ジュン 「グリーンボーイには特別サービスだ。このヒコザルは炎タイプ、草タイプのナエトルは相性悪いぜ?」

コウキ 「!? 炎タイプ…」

コトブキシティにくるまでにヒカリちゃんの説明で草タイプの有利不利は聞いていた。
草タイプが有利なのは水、地面、岩。
逆に不利なのは飛行、虫、毒、氷、そして…。

コウキ (炎!)

ジュン 「水タイプや岩タイプに変えた方が身のためだぜ? グリーンボーイ」

ヒカリ 「生憎…コウキ君はまだナエトルしか持ってないのよ」

コウキ 「……」

ジュン 「おいおい…ゲットもしてないのかよ、まぁいいさそっちからこいよ!」

ジュン君はこっちを挑発してくる。
僕はナエトルに。

コウキ 「ナエトル! 『たいあたり』!」

ナエトル 「ナエーッ!」

ジュン 「かわして『ひっかく』攻撃!」

ヒコザル 「ウッキーッ!」

ザシュゥッ!

ナエトル 「ナエーッ!?」

ナエトルはあっさり攻撃を回避されると横っ面を引っかかれる。
僕はすぐに図鑑を参照した。
見るのは…ナエトルの情報!

コウキ (この技…! 相性は悪いけど…!)

ジュン 「悪いがあんまりたらたらやる気もないんでね! ヒコザル『ひのこ』!」

コウキ 「ナエトル! 『はっぱカッター』!」

ヒコザル 「キーッ!」
ナエトル 「ナエーッ!」

ナエトルの技とヒコザルの技がぶつかり合う。
向こうの技は威力が低いのかなんとか草技の『はっぱカッター』で相殺できた。

ジュン 「ち! やるじゃねぇか! 構うな! もう一度『ひのこ』!」

コウキ 「今度はこっちの番だ! かわして『はっぱカッター』!」

ナエトル 「ナエーッ!」

ヒコザル 「キーッ!?」

ナエトルはジャンプして『ひのこ』を回避すると同時に上から『はっぱカッター』でヒコザルを攻撃した。

ザシュザシュザシュ!

ヒコザル 「キーッ!?」

ヒコザルは、『はっぱカッター』を受けて、1回転して、後ろに倒れた。
倒したかと、思ったが案外すぐ起き上がる。
ダメージは確実にあったはずだけど…。

ジュン (ち!? 急所に当たったか!? 急所に当たりやすい技だからな…!)

ヒカリ (コウキ君のペース! これならいける!)

コウキ 「ナエトル! もう一度『はっぱカッター』!」

僕は次の一撃で倒せると確信して、ナエトルに命令を下す。
しかし、それは早計だったと次のヒコザルの攻撃で、思うのだった。

ジュン 「仕方ねぇ…ジム戦まで取っとくつもりだったが…ヒコザル『かえんぐるま』だ!」

ヒカリ 「!? その技は…!?」

コウキ 「!?」

ヒコザル 「キーッ!!」

ヒコザルは炎を全身にまとい火車になったままナエトルに突進した。
ナエトルの『はっぱカッター』はヒコザルの体に触れる前に身に纏った炎で燃え尽きてしまう。
そのままヒコザルは。

ヒコザル 「ウッキーッ!!」

ドッカァァァッ!!

ナエトル 「ナエーッ!!?」

ズッシャァァァッ!!

コウキ 「ナエトルーッ!?」

ナエトルは一撃でダウンしてしまう。
凄い技だ…効果抜群とはいえこれほどのダメージを与えるなんて…。

ジュン 「ち…、素人相手に本気になっちまったぜ、まぁいい、じゃ俺はクロガネシティに行く! あばよ!」

ジュン君はヒコザルをボールに戻すとそのまま走って東側の街の外へと向かって行った。
僕は呆然と立ち尽くしていた。

ヒカリ 「…コウキ君」

コウキ 「また負けた…やっぱり悔しい…後もうちょっとで勝てる…そう思ったのにあんなに鮮やかに負けちゃうなんて…」

ヒカリ 「ヒコザルの特性『もうか』よ」
ヒカリ 「あなたのナエトルがヒコザルを追い詰めたからあの威力は発揮されたのよ」

コウキ 「まさか…効果は…」

ヒカリ 「そう、炎技の威力を上げるの」
ヒカリ (それにあのヒコザルはすでに進化できるレベルだった…勝てなくて不思議じゃない)
ヒカリ (今のあたしと同等のレベルをしていたわ…)

コウキ 「く…ナエトル…うぅ…」

ヒカリ 「泣いちゃダメよ、悔しいのはわかるけど泣いたらナエトルも悲しむわ」
ヒカリ 「さぁ、予定狂っちゃったけどポケモンセンターに行こう?」

コウキ 「うん…」

僕はナエトルを抱えてヒカリちゃんと一緒にポケモンセンターというところに向かうのだった。



…………。



ヒカリ 「ええ…それでコウキ君が…」

ナナカマド 『そうか、ジュン君と戦ったのか…』

あたしはポケモンセンターに着くとポッチャマとコリンクを預けて、ナナカマド博士に電話をかけていた。
あたしは今日起きたことをナナカマド博士に報告する。

ナナカマド 『それで今コウキ君は』

ヒカリ 「思いの他ショックが大きいです…あたしに負けた時はやはり知り合いに負けたからまだましだったでしょうけど…」

ナナカマド 『見ず知らずの他人に負けたのが悔しいか…』
ナナカマド 『それで、これから君たちはどうする?』

ヒカリ 「予定通りソノオタウンを越えてハクタイの森を目指そうと思います」

ナナカマド 『そうか、わかったポケモン調査頑張ってくれ』

ヒカリ 「はい」

あたしはそう言ってナナカマド博士との電話を切る。
あたしは急いでコウキ君の下に向かった。

コウキ 「……」

ヒカリ 「コウキ君…」

コウキ君は凄く落ち込んでいる。
なんて言葉をかければいいかわからない。
気休めは彼を傷つけるかもしれないし…。

コウキ 「ヒカリちゃん…僕、頼みがある」

ヒカリ 「え!? 一体何…?」

コウキ君は突然真剣な眼差しで頼みがあると言った。
一体どうしたんだろう…?

コウキ 「僕たちもクロガネシティに向かおう!」

ヒカリ 「!? それってジム戦をする気!?」

コウキ 「僕、強くなりたい! 誰にも負けないくらい強く!」

コウキ君は強い眼差しでそう懇願した。
あたしは迷う…はたしてそれでいいのか?

ヒカリ 「コウキ君には悪いけどお勧めできないわ」
ヒカリ 「コウキ君は優しい…優しすぎるわ、ジム戦はとても過酷よ? きっとコウキ君には耐えられない」
ヒカリ 「それにコウキ君はバトルに向かないわ、バトルはこれからはあたしが受けるから」

コウキ 「ダメだよ…それじゃ僕は何時までも逃げてしまう…弱いままだ」
コウキ 「僕は僕自身も強くなりたいんだ! 負けても負けても立ち上がって! そして強くなりたい!」

ヒカリ 「コウキ君…」

コウキ君は本気だった。
普段弱気で脆い印象を受けるコウキ君が大きく見えた。
それであたしは覚悟が決まった。

ヒカリ 「やるからには勝つわよ? どんな悲惨なことになっても耐えられるわね?」

コウキ 「うん!」

ヒカリ 「わかったわ、それじゃあたしたちもクロガネシティに針路変更よ!」

あたしはコウキ君に賭けてみることにした。
たしかにジムバッジがあればいろいろ恩恵がある。
ジムバッジが一つあれば『いわくだき』を使うことができる。
やってみる価値はある…。
でも…ジム戦なんてずぶの素人のコウキ君にできるんだろうか…?
不安がある…でも、期待のほうが大きいのが自分でもわかった。

ヒカリ (頑張ってね…コウキ君!)




ポケットモンスターパール編 第2話 「負けて負けても…」 完







おまけ

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