ポケットモンスター パール編




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おまけ





『正義 −せいぎ−』

『1、正しい道義。人が従うべき正しい道理』

『2、他者や人々の権利を尊重することで、各人に権利義務・報奨・制裁などを正当に割り当てること』




−正義の訳−





マキシ 「…じょうぶか…?」

コウキ 「…う?」

マキシ 「大丈夫か…?」

ヒカリ 「コウキ君?」

コウキ 「ここ…は?」







第19話 『それぞれの正義、それぞれの道』




『某日 時刻9:09 ノモセシティ:ノモセジム』


マキシ 「おお、目を覚ましたぞ!」

ヒカリ 「よかったぁ…コウキ君…」

コウキ 「…ここは?」

マキシ 「ノモセジムだ。お前はジム戦に勝利したと同時にぷっつり倒れてな」

コウキ 「ジム戦…勝利…?」

どういうことだ?
ここはノモセジム、たしか僕はバトルの途中で気を失って…。
気がついたら…勝利していた?

マキシ 「これが、我がノモセジムに勝利した証、フェンバッジだ」

コウキ 「え? あ……どうも」

僕はマキシさんからジムバッジを受け取る。

コウキ (僕、どうやってジム戦に勝ったんだろう?)

僕はジムバッジを受け取るが、なんだか釈然としなかった。
いつ勝ったんだろうか?

マキシ 「なんだか、バトル中様子が変だったが、不安があるならこの後、病院へ行ったほうがいいぞ」

コウキ 「え…あ、はぁ…」

ヒカリ 「どうも、ご迷惑おかけしました」

マキシ 「ああ、ポケモンリーグ頑張ってくれ」

ヒカリ 「ええ、ありがとうございました」

コウキ 「えと…ありがとうございました」

僕はなんだか釈然としないが、ジムバッジを持って、ジムを後にした。



…………。



コウキ 「ねぇ…ヒカリちゃん…ジム戦の途中、記憶ないんだけど、何があったの?」

ヒカリ 「え、あ…えーと…その、あはは〜」

コウキ 「? どうしたの?」

ヒカリ 「ごめん! 丁度その時席外しててさ! あたしも知らないの! ごめんね!?」

コウキ 「え? あ、そう? じゃあ仕方ないか…」

ヒカリ (なんか隠しちゃったけど…まずかったかな? けど、あんなコウキ君知らない方がいい気もするし…)

コウキ (なんかよそよそしいな…どうしたんだろうヒカリちゃん?)

なんだかヒカリちゃんが随分慌てている。
一体どうしたんだろう?

コウキ 「ん? あれ?」

ヒカリ 「どうしたの?」

コウキ 「ジュン君だ…」

ジュン君がサファリパークの前で神妙な面持ちで立っていた。
ジュン君ってヒカリちゃんの前でおちゃらけているけど、あんな真面目な顔も出来るんだよね。
でも、どうしたんだろう?

ヒカリ 「…ジュン!」

ジュン 「! あっれーヒカリちゃーん!? てことはジム戦を終わったのか…勝ったんだろうな?」

コウキ 「! う…うん、一応…」

ジュン君はヒカリちゃんを見つけたにも関わらず、いつもの様に飛び掛らない。
それどころか、僕を気にかけて、勝ったかと真剣な眼差しで聞いてきた。

ヒカリ (こいつ、普段の顔と今の顔…どっちが本当の顔なの?)

ジュン 「さっき、ここにギンガ団がいた」
ジュン 「ちょっと聞き耳を立てたんだが、トバリから例のブツが届いたとか呟いていた」

ヒカリ 「例のブツ…て、トバリの倉庫で聞いていた!?」

コウキ 「発電所で奪ったエネルギーで作ったていうアレだね」

ジュン 「そいつを湖で試すとかどうとか言ってやがった」

ヒカリ 「試すって…一体、それなんなの?」

ジュン 「わからねぇ、ただギンガ団のことだ、どうせろくなことじゃない!」

ヒカリ 「違いないわね…だったらやることはひとつね」

コウキ 「止めるんだね?」

ジュン 「あったりまえだ!」

ヒカリ 「それじゃ、向かうのはリッシ湖ね、行くわよ!」

こうして、僕たちはギンガ団を追うため、これまで来た道を逆走しギンガ団を探すのだった。



…………。



ジュン 「…にしてもギンガ団の奴ら今度は何をしでかす気だ?」

僕たちはリッシ湖に向かう途中、リゾート地帯を通過して、ギンガ団を追っていた。

ヒカリ 「一度、情報を統合してみようか?」

コウキ 「最初、谷間の発電所を襲った時はポケモンが目的ではなく、発電エネルギーが目的だった」

ヒカリ 「ハクタイシティではピィを誘拐していたわね、宇宙がどうとか言っていたわ」

ジュン 「で、発電所のエネルギーで作った何かをノモセに運び、それをリッシ湖で試そうとしてやがる!」

ヒカリ 「……と、見つけたわ!」

リゾート地帯抜けた先、リッシ湖の目の前でようやくギンガ団を発見することができた。

ギンガ団員 「ふふふ…ボスの言う宇宙か…すごくワクワクする…」
ギンガ団員 「それに『コレ』の実験も…ふふふ」

ヒカリ 「待てぇい!」

ギンガ団員 「な…なんだぁ!?」

ヒカリ 「己が欲望のために罪無きポケモンたちを苦しめる…」
ヒカリ 「人…それを外道と言う!」

ギンガ団員 「何者だ!? 名を名乗れ!!」

ヒカリ 「あなたたちに…名乗る名前は無いわっ!!」

ギンガ団員 「くそっ!? なんだかよくわからないが出て来いニャルマー!」

ヒカリ 「でてきて、ルクシオ!」

ニャルマー 「ニャアッ!」

ルクシオ 「ルクッ!」

ヒカリちゃんが前に出る。
任せろ…ということらしい。

ギンガ団員 「ニャルマー、『みだれひっかき』!」

ニャルマー 「ニャーッ!」

ヒカリ 「ルクシオ、かわして『スパーク』!」

ルクシオ 「ルクッ!」

ルクシオは素早くニャルマーの『みだれひっかき』を捌いていく。
そんなに大したことはない、ヒカリちゃんとルクシオなら余裕だろう。

ルクシオ 「ルックーッ!」

バッチィィン!!

ニャルマー 「ニャーッ!?」

ニャルマーの攻撃を捌ききった後、ルクシオの『スパーク』がニャルマーを捉える。
ニャルマーは吹っ飛ばされ、一撃で倒されてしまう。

ギンガ団員 「ああっ!? ニャ、ニャルマーがっ!?」

ヒカリ 「まだ、やるの?」

ギンガ団員 「うぐぐぐ…」

ヒカリ 「無いようね…それじゃ、あなたたちがリッシ湖で試そうとしていた例の物を渡して貰おうかしら?」

ギンガ団員 「な…!? な、何でそれを知っている!?」

ヒカリ 「そんなことはどうでもいいの! さぁ!」

ギンガ団員 「うぐぐ…!?」

? 「駄目よ…渡しちゃ駄目よ♪」

ヒカリ 「え?」

ジュン 「!?」

突然、道の小脇からギンガ団と思われる女性が現われる。

ジュン 「プルート…!?」

コウキ 「え?」

ヒカリ 「プルート…冥王星? 太陽系準惑星の一つの?」

ジュン君が突然現われた女性に異様な表情を浮かべる。

プルート 「? あら…あなたヨスガシティにいた少年?」

ジュン 「ジュンだ! 覚えとけ!」

プルート 「ああ、そう…ふふふ、なぁに? 怯えているの?」

コウキ (怯えている…? そうか、ジュン君のこの表情は恐怖を感じているんだ…)

僕はジュン君があのプルートと呼ばれる女性を見てから異様な表情をしていることに疑問を持っていたが、ようやく分かった。
ジュン君は怯えている…一体どうしてかは僕には分からない。
僕にはプルートさんを見て、恐怖を抱くような印象はなかった。

ジュン 「あの人は…?」

プルート 「あの人? ああ…ブルーのことか。さぁね、知らないわ」

ジュン (くそ、どうする…? この人に勝てるか?)

コウキ 「あの…つかぬ事お伺いしますが…」

プルート 「あらぁ? なぁに?」

プルートと呼ばれる女性はおっとりとした口調でややゆっくり喋る。
この人がそう言う性格の人ではないと言うことだけはよくわかる。

コウキ 「プルートさん、あなたはその格好からギンガ団の方だとお見受けします…それも幹部かと」

ヒカリ 「!?」
ジュン 「!」

プルート 「まぁ、このチョッキのGのマークを見れば一発か、けど私は幹部じゃないわよ」

プルートさんは銀色のチョッキを着てその右胸元にGのマークの刺繍が入っていた。

コウキ 「幹部じゃない…?」

プルート 「そう、私ってばギンガ団では嫌われ者でね、幹部にはなれない口なの」

プルートさんは軽くそう言う。
幹部ではない…でも、その実力は幹部クラスだろう。

プルート 「聞きたいことはそれだったのかしら? コウキ君?」

コウキ (! …僕の名前を…?)

どうやら、ブラックリストに乗っているのは確かのようだ。
ギンガ団の作戦をことごとくつぶしてるからなぁ…。

コウキ 「…もう一つ、あなたは何故ギンガ団に加担するのですか?」

プルート 「あら、随分野暮なこと聞くのね」

コウキ 「あなたの目が、それほど悪い人には写らなかったもので…」

ジュン (オイオイ…悪い人には写らなかったって…)

プルート 「うふふ、ありがとう。そうね…あなた、マーズと戦ったのよね?」

コウキ 「…はい」

プルート 「彼女のこと、どう感じた?」

コウキ 「…正直、悪い人じゃないかと」

ジュン 「またかいな…」

質問していたはずだが、気がついたら自分が答えている。
だけど、実際マーズさんはむしろいい人に写った。

プルート 「うふふ、正直ね…。さて、あなたの質問へのアンサーだけど」

コウキ 「……」

プルート 「正義は一つじゃないってこと」

コウキ 「…は?」

ヒカリ (そう来たか…)

プルート 「うふふ…面白い顔♪ 正義とか悪ってね…見方によって変わるの」
プルート 「私はね、自分にとって正しいことを…正義をしているだけ」

ヒカリ 「だからって…!」

プルート 「そう、全体悪、社会や大衆にとっては悪」

ヒカリちゃんがつっかかる。
そしてそれが、分かっていたかのように答えをすかさず提示するプルートさん。
ヒカリちゃんはキョトンとしていた。

ヒカリ 「え…?」

プルート 「私は全体から見れば悪、少数から見れば正義」
プルート 「今は悪だけど最終的にはどうなるのかしら?」

コウキ (悪…正義…?)

そんな物が何になる?
正義も悪も下らない…。

コウキ 「!? 今のは…!?」

ヒカリ 「? コウキ君…?」

コウキ (今、自分の意思とは異なる思考をしていた気がする。ほんの一瞬だ…一瞬自分はここに居なかった気が…)

訳がわからない。
今、さっき自分は自分じゃなくなってたのか?

プルート 「…さて、あんまりこんな所に長居したくないの、ほら、そこのしたっぱ君、帰るわよ」

ギンガ団員 「あ…は、はい」

ジュン 「!? ちょ、ちょっと待った! あんたらに行かれるわけには行かないんだよ! 特にそこのしたっぱ!」

ギンガ団員 「な、なんで俺なんだよ!?」

ヒカリ 「あんたは例の物置いていってからよ!」

プルート 「あなた…何も学んでないの?」

コウキ (プレッシャーの質が変わった…!?)

突然、プルートさんの放つプレッシャーがとても重い物に変わってしまう。
それまでのプルートさんのプレッシャーは異質な物を感じつつも、どこか安心できるプレッシャーだったのに…。

ジュン 「でてこい、ブイゼル!」

ブイゼル 「ブーイー!」

ジュン 「あんたリザードンの使い手だったよな! 覚えているぜ! 炎には水だ!」

プルート 「…そうね、確かに私はリザードンを使っている…だけどね」

ボフゥン!

サンダース 「サーンッ!」

ジュン 「!? サンダース!?」

プルート 「ひとつの事柄から全てを理解しようとする、危険よ」
プルート 「それに、実力も無いくせに粋がって先にポケモンを出す…とても格上の相手に行う行為ではないわよ」

コウキ 「サ、サンダースって…?」

ヒカリ 「電気タイプのポケモン…ブイゼルには相性最悪よ!」

ブイゼル 「ブ…ブイ…」

ジュン 「くそ! ブイゼル、『みずでっぽう』!」

プルート 「現実を知りなさい、サンダース、『10まんボルト』」

サンダース 「サーン!」

ブイゼル 「ブ…ブイーッ!?」

バッチィィィン!!

サンダースはとんでもない速度で電気をチャージし、ブイゼルが攻撃に入る前に一撃で倒してしまった。

ヒカリ 「馬鹿っ! サンダースはその速度と出力に定評あるポケモンなのよ!?」

ジュン 「う…くそ…戻ってくれブイゼル!」

プルート 「現実を知りなさい…」

ギンガ団員 「へ…馬鹿め!」

僕たちは目の前で起きた、一瞬のバトルに成す術が無い現実を知った。
僕たちはギンガ団の謎の実験を阻止できたものの、目の前でみすみすギンガ団を逃がすことになるのだった。



コウキ 「……行ったね」

ヒカリ 「ジュン…」

ジュン 「くそ…あんなの…あんなの…どうすりゃいいんだよ!?」

コウキ 「一旦、ノモセシティに帰ろうよ」

ヒカリ 「…そうね、ほら、行くわよ」

ジュン 「……くそっ」

ヒカリちゃんはジュン君の腕を引っ張って僕たちは重い足取りのままノモセシティへと向かうのだった。



…………。



『同日 時刻19:30 ポケモンセンターノモセ支店 食堂』


コウキ 「ヒカリちゃん、なにを頼んだの?」

ヒカリ 「月見ソバよ♪ コウキ君はきつねうどんか、で、ジュンは…」

ジュン 「……」

コウキ 「ジュ…ジュン君?」

ジュン君は下を俯いたまま、凄く重くなっていた。

ヒカリ 「ああ…天麩羅(てんぷら)ソバね…」

そう、ジュン君は天麩羅ソバだった、ただ食べる気はないのか、まるで目に入っていない。

ヒカリ 「やぁねぇ、このボケ不在感」

コウキ (ところでこれは何のデジャビュ?)

ヒカリ 「あ、要らないならジュンの海老天もーらい♪」

そう言ってヒカリちゃんはひょいっとジュン君の海老を掻っ攫い、口に入れてしまう。

ヒカリ 「…あれ? これでも反応なし?」

ジュン 「…ご馳走様」

コウキ 「て…まだ、一口も食べてないんじゃ…」

ジュン 「…いい、お腹空いてない…」

そう言ってジュン君は口もつけないまま、トレイを返してしまうのだった。

ヒカリ 「あれは重症ね…」

さすがに冗談では済まされないようだった。
ツッコミもボケもないなんて…。

コウキ 「どうするヒカリちゃん…?」

ヒカリ 「しばらく放っておきましょ…何言っても多分聞かないもの」

そう言ってヒカリちゃんは月見ソバの卵をかき混ぜるのだった。
僕もきつねソバを食べる。
ジュン君のことが心配であんまり味わっている暇はなかった。

ヒカリ 「ごっちそーさまー、あたし広場に行ってるから」

コウキ 「あ、うん…」

ヒカリちゃんは早めに食べ終えて、トレイを返すと食堂を出るのだった。

ヒカリ (あたしはあたしで大変だしねぇ…)



…………。



ヒカリ 「出てきて、みんな!」

ポッタイシ 「ポッター!」
ルクシオ 「ルクルク♪」
ビークイン 「ビー♪」
フワライド 「フ〜ワワ〜♪」
エレキブル 「エレーキ!」
ヒポポタス 「ヒポー!」

あたしは一斉にポケモンを広場に出す。
一部ゴツイポケモンもいるでの、既にいた先客の一部は少しビビっていた。

ビークイン 「……」

ヒカリ 「ああ、今回はアンタじゃなくて、こっちにビビっているんだと思うわよ?」

あたしはそう言ってエレキブルを指す。
ビークインってば被害妄想でもあるのかしら…?
出る度にビビられちゃヘコむのもわかるけどねぇ…。

エレキブル 「エーッキッキッキ♪」

エレキブルは非常に大らかに笑っている。
見た目は厳ついけど結構大らかな奴みたいね。

ヒカリ 「さて、今回お話しないといけないのはヒポポタス!」

ヒポポタス 「ヒ、ヒポ〜…」

ヒカリ 「あ、別に急かす訳じゃないのよ?」
ヒカリ 「だけど、ちょっと雲行き怪しくなってきているのよねぇ…ギンガ団は何をしでかすかわからないし正直危険も多くなることと思うわ」

あたしは今日現実を知った。
正直、ギンガ団の本当の実力を知ることとなってしまったのだ。
ジュピターさんも手加減バリバリだったし、あのプルートは化け物トレーナーの一言に尽きる。
『10まんボルト』の溜めの速さといい、ダメージといいこちらとは住む世界が違っていた。

ヒカリ 「…正直、6匹全員を満遍なく育てるのってとても難しいのよね…」

ヒポポタス 「ヒポッ!?」

ヒカリ 「あなたが疎ましいというわけじゃないのよ? あたしは元々はレコーダー、記録者なの」
ヒカリ 「ポケモンの分布や生態などを調査し、記録するのがあたしの仕事」
ヒカリ 「おかげでポケモンはバトル用ではなくってね、古い付き合いのポッタイシは最近までポッチャマだったんだから」
ヒカリ 「だけど、最近ね…とてもレコードなんて言っている状況じゃなくなってきた…特にギンガ団」
ヒカリ 「あたしはポケモンたちをバトル用に調整をする必要があるの、ギンガ団との戦いに耐えうるだけのポケモンに」

最近、バトルが厳しい。
負けるほどではないが、そうすんなりとはいかないのが現実。
無茶なバトルも多かったせいか、ポケモンの進化も最近急スピードで行われている状態だが、まだ意識レベルでそこまで持っていけてない。
ポケモンの力は強くなっているけど、こう急なレベルアップでは精神的にそこまでは熟成しない。

ヒカリ 「ポッタイシはレコーダーとしあたしとずっと頑張ってきたから大丈夫だけど、他はまだまだだしね」
ヒカリ 「エレキブル、あんたは前のトレーナーが良かったのかバトルにはかなり適正が高いようだけど」

これからコンテストもある。
コーディネーターとしてポケモン育成も行わないといけない、5匹なら5匹でスケジュールを組める。
だけど、ヒポポタスがいると、そこにも目を向けないといけない。
正直、いくらなんでもコンテストもこなしながらギンガ団との戦いに耐えうるだけの調整をこれだけのポケモンに行うのは厳しい。

フワライド 「フワ〜…」

ポッタイシ 「ポッタ、ポタポッタ!」

フワライドは不安がるがポッタイシがそれを励ます。

ヒカリ 「大丈夫よ、フワライド、あたしに任せて! ね?」

フワライド 「フ、フワ〜♪」

ヒポポタス 「ヒ…ヒポ〜…」

ヒカリ 「ヒポポタス、正直これからは今まで以上にあなたにかまっている暇は無くなるの」
ヒカリ 「野生に帰るか、それともあたしたちと来るか?」
ヒカリ 「今すぐに決めなくてもいいわ、だけどヨスガシティに着くまでには決めといて」

あたしたちは明日212番道路を通ってヨスガシティに戻るつもり。
ヨスガシティのジムはまだ攻略していないし、もしかしたらジムリーダーも帰ってきているかもしれない。
まぁ、居なかったら居なかったでまた考えるけど。

ヒカリ 「そんじゃ、重い話してごめんね! あとは自由時間よ、のんびりしてて♪」

ポッタイシ 「ポッタ〜♪」

ビークイン 「ビ〜♪」

ポケモンたちはお話も終わり、後は自由時間ということで一通り喜んでいる。
まぁ、最近ゆっくりする暇すくなかったからねぇ。

ヒカリ 「じゃ、あたしは行くからね、明日朝一番に迎えに来るから!」

あたしは今度はジュンの見舞いにでも行こうかと思い広場に背を向け、この場を離れることにした。

ヒポポタス 「ヒ…ヒポーッ!」

ヒカリ 「え…きゃあっ!?」

ビュオオオッ!

突然、砂嵐が巻き起こり、あたしの右足が砂に埋もれる。
ヒポポタスの特性『すなおこし』に『すなじごく』!?

ヒカリ 「く…ヒポポタス…?」

ヒポポタス 「ヒポ…ヒポー!」

ヒポポタスは何をやる気になったのか自分の特性『すなおこし』を発動させた。
これが発動してしまうと、その周囲一体は砂嵐状態になってしまう。
ここは公共施設のポケモン広場だってのに…!

ヒカリ 「あたしと…バトルがしたいってわけ?」

ヒポポタス 「ヒッポーッ!」

ヒポポタスはバトルがお望みらしい。
このままじゃ周りのポケモンに迷惑…さっさとモンスターボールに戻す方が常識的には正しいけど…。

ヒカリ 「悪いけど、速攻で決めるわよ…! ポッタイシ!」

ポッタイシ 「ポッター!」

ヒカリ 「ポッタイシ、ヒポポタスに『バブルこうせん』!」

ポッタイシ 「ポッターッ!」

ヒポポタス 「ヒッポーッ!!」

ズサササァァ!!

ポッタイシ 「!? ポッター!?」

ビビビビ! ズガァン!

突然、ポッタイシは『すなじごく』に飲まれてしまい、『バブルこうせん』は天井に向かって放たれてしまった。
ちゃあ…思ったより厄介ね…。

ヒカリ (こう言う時、『みずでっぽう』が使えればねぇ…)

『あわ』じゃ砂嵐の防御壁を突破できない…し。

ヒカリ 「ええい、この際ポケモンセンターへの被害は無視! ヒポポタスの足元へ向けて『バブルこうせん』!」

ポッタイシ 「ポッターッ!」

ビビビビビビ!!

ヒポポタス 「ヒ…ヒポ…ヒポッ!?」

『バブルこうせん』がヒポポタスの足元で爆発を起こす。
水は苦手だから怯むし、目の前で爆発が起きれば視覚が封じられるわ!

ヒカリ 「ポッタイシ! そこから気合で抜け出して! 『みだれづき』!」

ポッタイシ 「ポッター!!」

ポッタイシは『すなじごく』から一時的に抜け出しジャンプ、そしてヒポポタスの真上から『みだれづき』を繰り出す。

ヒポポタス 「ヒ…ヒポ〜…ヒポーッ!」

ポッタイシ 「ポッタッ!?」

ポッタイシはその腕をヒポポタスに噛まれてしまう。
ヒポポタスの『かみつく』ね。

ヒカリ 「距離を潰せば十分! 避けないってならなお更! 『しおみず』よ!」

ポッタイシ 「ポッターッ!」

バシャァアッ!

ヒポポタス 「ヒポッ!? ヒ…ヒポ〜…」

ヒポポタスは『しおみず』の直撃を受け、一気に弱ってしまう。

ヒカリ 「頑張っちゃって…馬鹿ね、ポッタイシとは相性も悪いし経験も違うってのに…」

ヒポポタス 「ヒ…ヒポ〜…」

ヒカリ 「ポッタイシ、よくやってくれたわ」

ポッタイシ 「ポッタ〜♪」

ヒカリ 「どう、満足ヒポポタス?」

ヒポポタス 「ヒ…ヒポッ! ヒポヒポッ!」

ヒカリ 「ヒポポタス…あなた、あたしとはバトルもせず捕まったから気負ってたのね…で、あたしに挑んだ」
ヒカリ 「あたしと、来てくれるの?」

ヒポポタス 「ヒッポーッ!」

ヒポポタスは吼える。
あたしたちに、着いてくる気らしい。

ヒカリ 「ふふ…ヒポポタス、改めてよろしくね♪」

ヒポポタス 「ヒッポ♪」

こうして、正式ヒポポタスがあたしの仲間となった。
正直、6匹も育てるのはとても大変だけど、やりがいはある。
まぁ、これも自分で選んだ道、こなしてみせるわ!

ポケモンナース 「一体、何の騒ぎです!?」

ヒカリ 「あ…やば!?」

そこへ今回の騒ぎをかぎ付けて、ポケモンナースのお姉さんがやってきた。

ポケモンナース 「まぁ…これは…!」

ヒカリ 「あ…あはは〜…す、すいません…」

あたしは事の事情を説明し、その後こっぴどく注意されるのだった。
ポケモンセンター内でバトルしちゃったからねぇ…。



…………。



ジュン 「…強くなるしかない、とにかく…強くなるしか」



…そして、次の日。


ヒカリ 「さぁってそれじゃ、これからヨスガシティに向かいまーす」

コウキ 「道を逆走するの?」

ヒカリ 「ううん、212番道路を通ってヨスガシティへ直接行くわ」

ヨスガシティ…思えば3つ目のジムと思い、向かった街。
だけど、ジムリーダーは不在だったっけ。
今度は会えるかなぁ?

ジュン 「悪い…俺はこっからは別行動するわ」

コウキ 「え? そうなの?」
コウキ 「あ、でもジュン君もヨスガでジム戦やってないんじゃないの?」

ジュン 「俺にも思うところあるわけさ…わりぃな」

ヒカリ 「気にすることないわよ…それにあなたが居なくなってせいせいするわ!」

コウキ 「ちょ、ちょっとヒカリちゃん…」

ジュン 「…相変わらず手厳しいな…」

僕はさすがに言いすぎと思い、ヒカリちゃんに注意しようとしたが、どうもジュン君も様子がおかしい。

ジュン 「俺…強くなる…!」
ジュン 「強くなって…自信が付いたら…また、一緒に旅しようぜ!」

ヒカリ 「…期待しないで待っといてあげるわ」

ジュン 「それじゃ…またな」

ヒカリ 「君の旅路に幸あれ」

コウキ 「また、いつか…」

ジュン君はそう言って一人別の道を歩んでいく。

ヒカリ 「…寂しい、なんて言わないでよコウキ君」

コウキ 「ヒカリちゃん…?」

ヒカリ 「あたしたちは元々二人で旅してきたんだから…ほら、しんみりしないで行くわよ!」

コウキ 「う…うん!」

ヒカリ 「212番道路を越えて、ヨスガへ直行よーっ!」

コウキ 「お…おーっ!」

こうして、また僕とヒカリちゃんの旅は続く…。






ポケットモンスターパール編 第19話 「それぞれの正義、それぞれの道」 完







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