ポケットモンスター パール外伝




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外伝第3話 『攻略! ミオジム!』




ヘラクロス 「ヘラ?」

森の中に一本そびえる、大き目のポケモンたちが好む目立つ木。
ヘラクロスが空中散歩をするように飛び回っていると、それが目に入った。
ふと、ヘラクロスの嗅覚が刺激されると、ヘラクロスはすぐさまその木に向かっていった。

ヘラクロス 「ヘラー♪」

ヘラクロスはその木に塗られた『あまいミツ』に夢中になる。
そしてその様子をずっと見続ける少年が。


ジュン 「おーー!! ヘラクロス!! 俺と勝負だーーーっ!!」

俺は草むらから姿を現し、モンスターボールをヘラクロスに突きつけてポケモンバトルを挑む。

ヘラクロス 「ヘラ?」

ヘラクロスはこちらに気づき、しばし『あまいミツ』を舐めるのをやめてこちらをじっと見つめる。
俺はこの大物をゲットする気でいた。
さぁ、こいヘラクロス、俺一緒に最強になろう! そう思っていた。
しかしぃ……。

ヘラクロス 「ヘラ♪」

ヘラクロスは俺より『あまいミツ』の方がいいらしく。
俺を無視してすぐさまミツを舐め始めた。
俺はそれにはさすがに頭からこける。
ジョウト風に言うとズッコケだ。

ジュン 「お、おいぃヘラクロスゥ〜!!」

俺はヨロヨロと立ち上がる虫だけに無視を決め込むヘラクロスの背中を必死で引っ張る。

ヘラクロス 「ヘラッ!」

しかし俺はヘラクロスが羽をばたつかせると、簡単に弾き飛ばされてしまった。
ヘラクロスは再びミツをずっと舐める。

ジュン 「くそぉ……そんなに『あまいミツ』が好きかぁぁぁぁぁっ!!?」

俺はそう叫びながらバッグからある物を取り出す。

ヘラクロス 「ヘラ?」

ジュン 「これを見ろ! お前の大好きな『あまいミツ』だ!」

ヘラクロス 「ヘラ、ヘラ〜♪」

俺はバッグから『あまいミツ』の入ったビンを取り出す。
ヘラクロスはそれを見ると嬉しそうに俺の方を向いた。

ジュン 「よーしヘラクロス、俺とバトルだ! バトルが終わったらこの『あまいミツ』を好きなだけ舐めさせてやるぜ!」

ヘラクロス 「ヘラ〜♪ ヘラッ!」

ヘラクロスは嬉しそうに喜ぶが、すぐに目をキリッとさせて戦闘態勢をとる。

ジュン 「へへ、安心しな、勝っても負けてもお前にくれてやるよ、ていうか食べてくれ」

実を言うと、ソノオで『あまいミツ』を買いすぎた。
バッグに入れていても重いし、賞味期限やばいしで今は急いで消化しているところなのだ。
この木に『あまいミツ』を塗ったのも俺だ。

ジュン 「いけ! モウカザル!」

モウカザル 「ウッキーッ!」

俺は左手に空のモンスターボールを持って、モウカザルを出す。
ヘラクロスなんて滅多にお目にかかれない大物だ。
絶対にゲットだぜ!

ジュン 「よしモウカザル! まずは『マッハパンチ』!」

俺は牽制で『マッハパンチ』を命令する。
モウカザルは右手を引き、そこから文字通りマッハのパンチを繰り出した。

ヘラクロス 「ヘラッ!?」

ジュン 「おし! どうだ!?」

ヘラクロス 「ヘラーッ!」

モウカザル 「ウキッ!?」

ヘラクロスはまるで平気そうな顔をしてモウカザルを『つのでつく』で攻撃してくる。

ジュン 「げっ……全然効いてねぇ……て、そうか虫タイプは格闘タイプの技を半減するんだっけ」

いわゆる効果は今ひとつって奴か。
てぇすると、最初は炎タイプの技で戦うしかないか。

ジュン (しかしそうすると……)

今度は効果が抜群だ。
ポケモンが戦えないほどのダメージを受けた状態ではゲットができない。
ギリギリのラインまで相手を追い詰めるのに炎技は軽くオーバーキルする可能性がある。

ジュン 「ええい、やるっきゃない! モウカザル、『ひのこ』!」

モウカザル 「キッキーーッ!」

モウカザルは口から『ひのこ』を放つ。
大した攻撃力ではないが、ヘラクロスを頭を手で覆って怯んだ。

ヘラクロス 「! ヘラーーッ!」

モウカザル 「!? ウッキーーッ!?」

ジュン 「! モウカザル!?」

ヘラクロスは一瞬怯んだが、すぐに反撃に出る。
なんとこのヘラクロス、『つばめがえし』で攻撃してきた。
モウカザルには効果抜群だ。

ジュン 「やべぇ! 一気にいくぞ! 『みだれひっかき』!」

モウカザル 「キキッ! ウキキキキーーッ!!」

ヘラクロス 「ヘ、ヘラーーッ!?」

ヘラクロスは顔面をモウカザルに引っかきまくられ、今にも倒れそうになる。
俺はチャンスと見て。

ジュン 「いっけーーーっ! モンスターボール!!」

俺はずっと構えていたモンスターボールをついに投げる。
ヘラクロスを赤い粒子状に変えると、モンスターボールの中に閉じ込められ、ここからゲットされるかどうかが決まる。

カチンッ!

ジュン 「……ぅおっしゃぁぁぁ!!!」

俺はゲットを確認すると、大ジャンプして喜ぶ。
すぐにモンスターボールを回収すると、ヘラクロスを外に出すのだった。

ヘラクロス 「ヘラ?」

ジュン 「ヘラクロス、俺はジュン! よろしくな!」

ヘラクロス 「ヘララ? ヘラ!」

ヘラクロスはビシッと敬礼するように手を頭の上に持って返事をする。
中々俺と息が合いそうなヘラクロスだな。

ジュン 「おーし、じゃあ……ん?」

パチパチパチパチ……。

突然どこからか、拍手が聞こえてくる。
俺は後ろを振り向くと、黒ずくめの女性がこちらに拍手していた。
全身を黒い洋服で包み、銀色の髪を伸ばした少し目つきのきつい女性だった。
左目だけを覆う髪は赤く、部分的に髪を染めているのか、嫌に目立つ。
素直に美人であり、俺のストライクゾーンにはバッチリヒットだったが……。

ジュン 「……あの、なんすか?」

黒ずくめの女性 「あら? ごめんなさい、あまりにも嬉しそうにゲットしていたから、つい祝福しちゃったわ」

ジュン (怪しい女性だな……ギンガ団関係じゃないだろうな? まずは様子見だ!)

俺はあくまでその女性を警戒する。
俺は強くなりたい、だから今は女性に構っていられる場合じゃないんだ。
それに……今は誰を信じて、誰を疑えばいいのか……それもわからない。

ジュン 「失礼かと思いますけど、あなたは?」

黒ずくめの女性 「私? そうねぇ、魔女……かな?」

ジュン 「魔女? あのなぁお姉さん、ふざけないでくれないか?」

黒ずくめの女性 「あら? ふざけているつもりは無いわよ?」

ジュン 「……」

その女性はあくまで譲る様子はなく、こっちをじっと見てくる。

ジュン 「……はぁ、俺はジュン、あなたは?」

黒ずくめの女性 「はい、よくできました。そうねぇクロさんとでも呼んでもらえるかしら?」

ジュン 「クロさん?」

クロ 「そう、クロさん」

ジュン 「はぁ、オーケー。 それでなんの用?」

クロ 「だから、あなたがあまりに嬉しそうにしてたから、祝福を、ね?」

……繰り返しか。

ジュン 「はぁ、まぁいいや……」

どうにもそんなに悪い奴には思えない。
とはいえ、必ずしも絶対的な悪ばかりが全てではない以上、その性格や行動がギンガ団とつながるかはわからない。

クロ 「ポケモントレーナーみたいね」

ジュン 「クロさんもトレーナーですか?」

クロ 「ううん、私はトレーナーじゃないわ」

ジュン 「……」

その言葉、嘘だと思った。
今俺がいる場所は野生のポケモンもウヨウヨいて、トレーナー以外がとても近づける場所じゃなかった。
だが、この女性がとても嘘をついている顔には見えない。
もっとも、嘘を嘘とは思わない顔で平気で言いのける奴もいるから、一概確信できないが。

クロ 「あら? 信じてないわね?」

ジュン 「あなたの目が嘘をついていないので、信じてしまいそうですが現実的にはねぇ」

極力女性のことは信じてあげたいけど、信じるだけが全てじゃないしな。

クロ 「ふふふ、本当に嘘はついてないのよ、つく必要が無いし」

そりゃそうだ。

クロ 「それにね、私は強いからポケモンに襲われても大丈夫なの♪」

ジュン 「……」

そりゃ、ルビーの主人公のような強さがあれば、伝説のポケモンだって裸足で逃げ出しそうだが……。
どうにも強そうに見えない見た目、俺じゃなくても振り返りそうな美貌は逆を言えば、とても貧弱そうに見える。
特に何かを携帯しているようにも見えないし、やっぱり強そうに見えない。

ジュン 「とにかくここは危険です、安全なところまで俺が案内しますよ」
ジュン 「ヘラクロス、悪いな。ボールに戻っていてくれ」

俺はそう言うと、ヘラクロスとともどもモウカザルもボールに戻す。
ヘラクロスはまだミツをもらっていないので不満そうだったが、一息ついたらたらふくあげよう。

クロ 「優しいのね、ありがとう」

ジュン 「いえいえ、女性に優しくするのは当然であります」

俺は紳士のようにして、女性をエスコートするように頭を下げる。

クロ 「ふふふ、それじゃお言葉に甘えてコトブキシティまでお願いできるかしら?」

ジュン 「畏まりました」

俺はそれから、クロさんを丁重に案内して(意外とコトブキが近くだったので2時間程度だが)、コトブキシティに着くのだった。



…………。



ジュン 「コトブキシティでございます」

クロ 「ふふふ、別にいいわよ、普段どおりで」

ジュン 「いえいえ、私は普段からこうですよ」

クロ 「ふふ、変わった子ね」

ジュン 「女性に対してだけですがね」

俺はそう言ってクロさんのエスコートを終える。
ここからナンパでもしようかと思ったが、今の俺にうつつ抜かす余裕がある訳がないため、ここは自粛する。
畜生、世界最強のポケモントレーナーになったら、今の耐えを一気に開放してやる!

クロ 「あなたはこれからどうするの?」

ジュン 「私はミオシティに向かおうと思います」

クロ 「そう、ジム戦ね?」

ジュン 「恐縮ながら」

クロ 「ふふ、頑張ってね。応援しているわ」

ジュン 「ありがとうございます」

俺はそう言ってクロさんと別れる。
あれから2時間クロさんと一緒にいたが、クロさんが見た目のキツさに反して優しい人なこと。
悪い人ではないこと、ポケモンに優しい人だということが分かった。
本当だったら、真っ先にナンパしているが、ちょっと大人になった俺、自重している。

ジュン 「……おし、次はジム戦だ」

俺はクロさんと別れることで次のジム戦を意識するのだった。



…………。



『翌日 時刻10:10 ミオシティ ミオジム前』


ジュン 「……おっし、んじゃいくぜ!」

翌日、俺は船に乗ってミオシティに到着した。
ミオジムは街の西側にあり、俺はそのジムの前で気合を入れる。

ジュン 「たのもーっ!!」

男 「オーッス! 未来のチャンピオン!」

俺は気合を入れてジムに入ると、いきなり目の前にいつものアレが登場する。

ジュン 「なんなんだよっ!? つーか、またアンタかっ!?」

もはやいつもの事ながら、何故いつも俺の寄るジムにこいつはいるんだ!?
しかし、こいつはそんなことお構い無にいつものごとく、このジムのことを話し始めた。

男 「ここのジムリーダーはトウガンは鋼タイプの使い手!」
男 「鋼タイプは防御力が高くて生半可な攻撃じゃビクともしないぞ!」
男 「やるからには、確実に弱点をつきたいが、この鋼タイプは弱点が少ない! なんと炎と地面と格闘だけだ!」
男 「加えて、ノーマル、飛行、虫、岩、毒、ゴースト、鋼、氷、草、エスパー、悪、ドラゴン……実に12タイプの攻撃に強いのだ!」
男 「厳しい戦いになると思うが、頑張れ未来のチャンピオンよ! ちなみにもう予約は済ませてあるぞ!」

ジュン 「アンタ相変わらず用意周到だな……てか、なんなんだアンタ?」

いつもこうだ。
本来ジム戦は事前に予約をする必要がある。
なのに、いつもこの謎の男が俺の分を予約しており、俺はいつも顔パス状態だった。

男 「ちなみに、ジムリーダーももうスタンバイしているから、この通路をまっすぐな」

ジュン 「はいはい……全く変な奴」

俺はジムリーダーの待つというフィールドに向かう。
何匹つかうのか、どんな戦術を取ってくるのか?
頭で色々考えながら、ジムリーダーとのバトルをイメージする。

カツン、カツンカツンと床が俺の足音を鳴らして、前へと進ませる。
フィールドに近づくにつれ、胸が高鳴り、緊張する。
だが、それが高揚感になり……やがてハイになっていく。

ガタァン……!

フィールドに入る前には扉がある。
鉄の扉を開くと、以外にも軽快な音と共に、簡単に開いた。
フィールドの中は……。

ジュン (鋼のフィールド……!)

今回のフィールドは特になにか障害物があったりはしない。
だが、地面が完全に金属であり、非常に重厚であり、そして痛そうだった。
今回は地面に叩きつけられるだけで、土の地面とは比べ物にならなさそうなダメージが容易に予想できた。

トウガン 「……よく来たな、クロツグのせがれ!」

ジュン 「!? 親父のことを知っているのか!?」

目の前のジムリーダーは俺を確認すると、開口一番に親父の名前を出すのだった。
さすがに、こんなところで親父の名前を聞くとは思っていなかっただけに俺は大いに驚いた。

トウガン 「ああ、知っているとも! お前の親父クロツグは俺にとって宿命のライバル! もっとも奴はそう思っちゃいないだろうがな!」

ジュン 「お、親父! 親父は今どこにいるんだ!?」

トウガン 「ん? さぁな……あいつは風来坊だからなぁ、俺も知らん!」

ジュン 「あ、そ、そうか……」

トウガン 「……その顔を見ると、あの馬鹿は家庭に帰っとらんようだな! 全くけしからん奴だ!」

俺の親父クロツグはシンオウでは凄腕のトレーナーとして知られている。
だが、その性格が災いしてか、俺が生まれた後もあまりに家にいないことが多い。
お袋はそんな親父を気にしてはいなかったが、俺にとってはただ一人の親父だ。
それに……。

ジュン (親父はすっげぇ強い……親父だったらギンガ団なんて……)

トウガン 「……まぁいい、それじゃジム戦を始めるぞ!」

ジュン 「! おう!」

トウガン 「おーし! 審判!」

審判 「それではこれより、ミオジム、ジム戦を始めます!」
審判 「使用ポケモンは3匹、交換は挑戦者のみ有効!」
審判 「道具の使用及び、道具の所持は原則として禁止といたします」
審判 「挑戦者、なにか質問は?」

ジュン 「いや、大丈夫っす!」

審判 「それでは、ジムリーダー、最初のポケモンを!」

トウガン 「おーし! でてこいタテトプス!」

タテトプス 「タテー!」

ジュン 「タテトプス!? あの化石ポケモンの!?」

俺はすかさず、タテトプスを参照する。


『タテトプス シールドポケモン』
『高さ0.5m 重さ57.0kg』
『大木の幹に擦り付けて硬い顔を磨く習性』
『後ろからの攻撃に弱い』


ジュン (確か、岩もちでもあったよな……だったらここは!)
ジュン 「いけ! ヘラクロス!」

ヘラクロス 「ヘラクロッ!」

俺はヘラクロスを出す。
ヘラクロスは格闘タイプのポケモン、すなわち鋼に弱点がつける!

ジュン 「おーし! ヘラクロス、『かわらわり』!」

ヘラクロス 「ヘッラーッ!!」

ヘラクロスはフィールドの反対側にいるタテトプスに突撃する。
タテトプスは鈍重なのか、動く様子を見せずヘラクロス相手に身構えるだけだった。

ヘラクロス 「ヘッラー!!」

トウガン 「タテトプス! 『げんしのちから』!!」

タテトプス 「! タテ!」

タテトプスは絶妙なところで、トウガンの命令を受けて自分の体から岩石を生成し(?)、それを周囲に纏わせる。
そこへヘラクロスの『かわらわり』、突撃したら止まれないので、その岩石ごとタテトプスを叩く。

ドカァン!!

タテトプス 「タテェッ!?」

思いっきり、岩を破砕する音と共にタテトプスの体が鉄板の地面に押さえつけられる。
だが、同時に破砕された岩がヘラクロスを襲う。

ドカカカカカッ!!

ヘラクロス 「ヘ、ヘラーッ!?」

小さく砕かれた石、厄介な武器となってヘラクロスを襲う。
ヘラクロスはたまらず、引き剥がされた。

トウガン 「やるなぁ! 命令のタイミングを間違えていたら確実にやられていたぞ!」

ジュン (俺の計算だと一撃KOだったんだけどな……4倍を耐えるかよ)

タテトプスは岩と鋼のタイプを持つポケモンだ。
格闘タイプの攻撃にはすこぶる弱い。
まして格闘タイプのヘラクロスの攻撃を耐えてくるとは思っていない。
それが、よもや『げんしのちから』で周囲に武器となるはずの岩を防御に使い、しかも絶妙のタイミングでヘラクロスを引き剥がしてきた。

ジュン (やっぱりジムリーダーだな……へへ、だからこそ俺を更に強くしてくれる!)

俺はとにかく強くなりたい。
強くならなければいけない。

トウガン 「さぁて、次はこちらの番だ! タテトプス、『ラスターカノン』!」

タテトプス 「タッテーーッ!!」

タテトプスは前方にエネルギーを集約させ、ひとつの砲弾としてエネルギー弾を発射してくる。
銀色に輝く、エネルギー体は高速で、かわせるかどうかは分からなかったが、俺はそれでも命令する。

ジュン 「かわせ! ヘラクロス!」

ヘラクロス 「ヘラッ!」

ヘラクロスは羽を羽ばたかせてなんとか、その砲弾を避ける。
放物線を描き、発射される『ラスターカノン』は地面に着弾すると爆発。
白銀の光を放って、分厚い鉄板をわずかに凹ませる。

ジュン (思ったより威力が高いな! こりゃ食らったらひとたまりもない!)

さすがにヘラクロスがくらったことを思うとゾッとした。
だが、安全に戦えばそうそう当たることはない。
相手の体力だってそんなに多くはないからな……ここは確実に攻め落とす!

トウガン 「ちぃ……! やはり素早いな! ならば『いばる』!」

ジュン 「なっ!? その技は!?」

トウガン 「さよう! 相手の攻撃力を上げる代わりに、混乱状態にする技だ!」
トウガン 「さぁこい! ヘラクロス!!」

タテトプスがなにかやる素振りをすると、ヘラクロスは逆上するように怒り出した。
もう俺の命令を聞くかはわからない。

ジュン 「ええい! こうなりゃヤケだ! 『かわらわり』!!」

ヘラクロス 「ヘッヘラーーッ!?」

ヘラクロスはふらふらと飛びながらも、タテトプスめがけて一直線に向かう。
こうなってしまった以上、相手の策に乗るしかない。

トウガン 「いけぇいタテトプスよ! 『ラスターカノン』!」

タテトプス 「タテーーッ!!」
ヘラクロス 「ヘーラララーッ!?」

ヘラクロスが予想以上に速い。
ヘラクロスはタテトプスが『ラスターカノン』を放つ前、タテトプスに頭を『かわらわり』する。
しかし、直後ヘラクロスが壁になってよく分からないが、タテトプスの辺りで、『ラスターカノン』の爆発が起きる。
俺は、ヘラクロスの様子を凝視した。

タテトプス 「タ……タテェ……」

審判 「タテトプス戦闘不能! ヘラクロスの勝ち!」

トウガン 「むぅ……口の中で爆発しちまったか……こりゃたまらん」

そう言いながらトウガンさんはタテトプスをボールに戻す。
なんとか、勝てたか……やっぱり混乱は怖いな、うん。

トウガン 「次はお前だ! いけぇい! ドータクンよ!」

ドータクン 「ドーッタ!」

ジュン 「おーし! 戻れヘラクロス!」

俺はすぐにヘラクロスをボールに戻す。
とりあえず混乱は怖いもんな、うん。

ジュン (さって、相手は鋼タイプだけど、エスパーでもある。となると格闘では押しにくい! だったら!)
ジュン 「今度はお前の出番だ! モウカザル!」

モウカザル 「ウッキキーッ!!」

俺は次にモウカザルを繰り出す。
モウカザルも格闘タイプだけど、こっちは炎タイプでもある。
鋼の弱点その2! 鋼は燃やす!

ジュン 「モウカザル! 『かえんぐるま』だ!」

モウカザル 「ウキキーーッ!!」

モウカザルは自らの体に火を纏うと、火車となって相手を襲う。

トウガン 「ふん! 鋼に炎? そんなもの対策できているわ!! 見せてみよドータクン!!」

ドータクン 「ドーッタ!」

ドータクンはなんとモウカザルの『かえんぐるま』を真っ向から受けてくる。
しかも、受けた上でモウカザルを弾き飛ばしてきた。

モウカザル 「キキッ!?」

ジュン 「んなっ!?」

トウガン 「みたか! これがドータクンの特性、『たいねつ』だ!」

ジュン (ドータクンの特性は『ふゆう』だけじゃねぇのか……)

初めて知ったな、そういえば何度か妙に炎が効かないドーミラーと戦ったっけ……そういうことか。

トウガン 「さぁ、反撃だ! 『じんつうりき』!」

ドータクン 「ドーターーッ!」

ドータクンの目が赤く光ると、モウカザルの様子がおかしくなる。
モウカザルはドータクンの『じんつうりき』でありえない光景を見せられているんだ。

ジュン 「しっかりしろモウカザルーーッ! 『いわくだき』だ!!」

モウカザル 「! キ……キキーッ!!!」

ガコォン!!!

ドータクンの中身は空洞のせいか、叩くと非常に気持ちのいい反響音が聞こえる。
なんというか、ダメージを与えた! て感じの音が……実際にはそんなにダメージないんだがね。
だが、俺の狙いは。

トウガン (む!? 防御が下がったか!?)

ドータクンはヨロっとする。
『いわくだき』には稀に相手の防御力を下げる効果がある。
俺の経験だとたしかに『たいねつ』は普段より炎に強くなっている……だけど。

ジュン 「炎を克服したわけじゃねぇっ!! 『かえんぐるま』!!」

モウカザル 「キ……キーーーッ!!!」

モウカザルも代償として大きなダメージを受けた。
モウカザルはエスパータイプの技にはすこぶる弱い。
ドータクンの『じんつうりき』一発でフラフラだ。
だが、そんな状況に陥った時、モウカザルは内なる力を解放する。
そう、『もうか』の特性だ!

ドータクン 「ド……ドォォォーーッ!?」

『もうか』により、より威力を上げた『かえんぐるま』はドータクンを飲み込む。
炎の中で苦しむドータクン、こちらの渾身の一撃は『たいねつ』という鎧にヒビを入れる。

ドガァァァン!!!

炎の温度が一定ラインを超えた時、自然爆発が起きる。
爆発により吹き飛ばされた、両者……俺は息を呑み、審判の言葉を待つ。

審判 「……両ポケモン、戦闘不能!」

ジュン 「もどれモウカザル! よくやった」

トウガン 「戻ってくれドータクンよ! すまん」

俺たちは審判の宣言を受けてポケモンをボールに戻す。
予想以上にドータクンが耐えてきた、おかげで炎が空気中で爆発しちまった。
なんとか、ドータクンを倒せたし、まぁよしとするか。

トウガン 「もう最後のポケモンか! もっと戦いたい気分だが仕方がない! でてこいトリデプス!」

トリデプス 「トリーッ!!」

ジュン (タテトプスの進化系か!?)

最後にトウガンさんが出したのはトリデプスと呼ばれるポケモンだった。
タテトプスを大きくしたようなポケモンで、その体色や容姿から進化系だと予測される。

ジュン (どうする、ヘラクロスが安定だけどなぁ?)

不安がある、若干とはいえヘラクロスはダメージを受けているだけに、いきなり出すのは危険性が高い気がした。
幸い、こっちは一匹リードしている。

ジュン 「よし! ここは任せたぞ! ブイゼル!」

ブイゼル 「ブイブイーッ!」

俺はヘラクロスの前にブイゼルを出す。
岩タイプでもあるはずだから水タイプの攻撃は効くはずだ。
願わくば、ブイゼルでトリデプスを倒す!

ジュン 「よし! 先制攻撃だ! ブイゼル『なみのり』!」

ブイゼル 「ブッブブイーーッ!!!」

ブイゼルはその小さな体からは想像のできない、大波を作り出してトリデプスを攻撃する。
フィールドを覆って攻撃するこの技は鈍重なトリデプスには回避できないだろう!
さぁどうするんだ!?

トウガン 「ぬうっ!? トリデプス『まもる』!」

トリデプス 「ト、トリーッ!」

トリデプスは全身を覆うバリアーのような物を発生させてブイゼルの『なみのり』を防いでくる。
さすがにトリデプスにはたまらないか! じゃ、この調子でガンガンいくぜ!

ジュン 「よーし! もう一発――!」
トウガン 「トリデプス! 『いちゃもん』!」

トリデプス 「トリーッ! トリトリ!!」

ブイゼル 「ブイッ!? ブ、ブイ……」

ジュン 「……へ?」

俺が『なみのり』を命令する前にトリデプスに『いちゃもん』をされる。
これをされると、こっちは同じ技を連続で使えない。
つまり『なみのり』が封じられた。

トウガン 「止まってる暇があるのか!? トリデプス、『げんしのちから』!」

トリデプス 「トーリーーッ!!」

トリデプスはタテトプスと同じやり方で周囲に岩を浮かばせる。
そしてそれを一気にブイゼルに放出してきた。
これには俺の命令も間に合わず、ブイゼルも直撃してしまう。

ブイゼル 「ブ……ブイーーッ!?」

ジュン 「ブイゼル!? くそ! 『みずでっぽう』だ!」

ブイゼル 「ブ……ブイーーッ!」

ブイゼルは態勢を立て直して『みずでっぽう』を放つ。
正直心もとないが、仮にも効果は抜群! 当たればタダではすまない!
かわしても、『なみのり』をぶち込む!

トウガン 「トリデプス! 『ラスターカノン』だっ!!」

トリデプス 「トーーリデーーッ!!」

トリデプスは口にエネルギーを集める。
しかし、次の瞬間、俺は仰天した。

なんと、トリデプスの口から放たれたのは白銀の光を放つレーザーだった。
一直線にまっすぐ伸びた光線は『みずでっぽう』をいとも簡単に弾き飛ばし、ブイゼルに直撃する。
威力は進化系だけあってタテトプスの放ったそれよりも強力で、ブイゼルはまるで人形のように吹き飛ばされた。

ジュン 「! ブイゼルー!! うおおおおっ!!」

俺はヤバイと感じて走り出す。
ブイゼルが硬く冷たい鉄板の地面にぶつかる前に俺はヘッドスライディングでブイゼルをキャッチした。

ジュン 「だ、大丈夫か……ブイゼル?」

ブイゼル 「ブ……ブィ……」

審判 「ブイゼル! 戦闘不能!」

ジュン 「……お疲れ、ブイゼル」

俺は審判の宣言を受けると、立ち上がりブイゼルを抱きかかえたままボールに戻した。

ジュン (……あのトリデプス、想像以上だ……さすがジムリーダー)

まさかブイゼルが全くダメージを与えられないとは思わなかった。
いや、もうブイゼルでは仕方が無いのかもしれない……並み居る進化系ポケモンたちと戦うには進化前のブイゼルではもう厳しい。

ジュン 「いけ! ヘラクロス!」

俺は覚悟を決めて、最後のポケモンヘラクロスを出す。
正直負けるかもしれない……いや、負ける可能性のほうが高いだろう。

ジュン (だけど……このギリギリが……俺を強くするよなぁ!!)

こんなピンチに限って気分はどんどんハイになっていく。
今がまさに最高にハイってやつか。

トウガン 「最後に残ったのはそのヘラクロスか……ならば、最終決戦だっ!! いくぞ!!」

ジュン 「おおっ!! ヘラクロス!! お前の根性見せてやれ!!(といっても特性は『むしのしらせ』)」

トウガン 「トリデプス、『ラスターカノン』!!」

ジュン 「つきすすめーーっ!! 『かわらわり』!!」

ヘラクロス 「ヘッラーーッ!!」

ヘラクロスはタテトプス戦で見せた素早い動きで一直線にトリデプスを襲う。
トリデプスが口にエネルギーを貯めている所にヘラクロスの強烈な一撃、ズコォン! と大きな音を立てて、トリデプスの体が傾く。
しかし。

トウガン 「! いけぇぇ!!」

ジュン 「ヘラクロス! 『こらえる』!」

トリデプス 「トーーリーーー!!!」

ゼロ距離。
回避できない距離からのトリデプスの攻撃。

ヘラクロス 「ヘ……ヘラーーーッ!!!!」

しかし、ヘラクロスは両手をクロスさせてトリデプスの『ラスターカノン』を耐える。
『こらえる』は相手の攻撃を絶対に耐える技……ただしその体力は倒れないギリギリまで減ってしまう。

ヘラクロス 「ヘ……ヘラッ!」

ジュン 「よし! ヘラクロス、そのまま――ッ!」

トウガン 「そこまでだ!!」

俺はそのまま攻撃を命令しようとした。
だが、そこでトウガンさんに止められる。
俺はビックリして口を止めると。

トリデプス 「ト……リ……!」

ズドォン!!

トリデプスの体が地面に落ちた。
決して倒れなさそうな要塞は……あっけなく沈黙したのだ。

審判 「トリデプス戦闘不能! よって勝者チャレンジャーのジュン!」

トウガン 「お前の渾身の一撃見せてもらった! さしものトリデプスも耐えられなかったな……」
トウガン 「おめでとう! これが我がミオジムのジム戦に勝利した証、マインバッジだ!」

トウガンさんは、前に出てくると俺にバッジを差し出してくる。
俺はそれを受け取ると。

ジュン 「うおっしゃぁぁぁ!!! マインバッジゲットだぜ!!」

俺はマインバッジを持つとそれを天高く掲げ、ポケモンと一緒に喜ぶ。
ヘラクロスも嬉しいのか、一緒に小躍りしていた。

トウガン 「ふぅ……! 全く末恐ろしい奴だな、伊達にクロツグの子じゃねぇか」
トウガン 「そうだ、そういえばあいつ、ハードマウンテンの方行くって前に行っていたぞ?」

ジュン 「ハードマウンテン!? て……どこ?」

トウガン 「シンオウ地方から北東にある島にある山だ。あそこはバトルタワーもあるし、あいつならあそこにいる可能性は高いだろうな」

ジュン 「親父……そんなところに」

トウガン 「行くか?」

トウガンさんは親父の所に行くかと聞いてくるが、少し間をおいては俺は首を横に振った。
俺にはポケモンリーグに出るという目的もあるし、親父は今は後回しでもいい。
ただ、正月にも家に顔をださないようだったら、ぶっ飛ばしに行くかもしれねぇけどな。

ジュン 「よし、ヘラクロス! ご褒美の『あまいミツ』だ! 食え!」

ヘラクロス 「ヘラ〜♪」

俺は一息つくとヘラクロスの大好物の『あまいミツ』を出す。
ヘラクロスはこのご褒美に嬉しそうになめるのだった。

ジュン 「そんじゃ、ありがとうございました!」

トウガン 「おう!」






ポケットモンスターパール編外伝 第3話 「攻略! ミオジム!」 完







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