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Rozen Maiden 〜eine neue seele〜



第6話 『相棒 〜Kerl〜』




『某日 時刻8:30 通学路』


のり 「高峰君、この間はごめんなさい…本当に助かったわ」

オウ 「あん? …んなこた気にすんな」
オウ 「俺がしたくてやっただけだ…」

いつもの通学路。
今日はたまたま桜田と登校がかみ合う。
と言うか、最近はこいつが狙ってきてるのか、会う確率が高い気がする。
まぁ、今更だが…

男子学生A 「でさ〜、笑えるだろ?」

男子学生B 「ギャッハハ! 受ける受ける!!」

オウ 「……」

たまたま、前を歩いていた男子の会話が聞こえる。
他愛も無い会話のようだが、何かむかつく。
能天気なこった…

男子学生A 「!? お、おい!」

男子学生B 「ヤベッ!」

タタタタッ!

オウ 「…ちっ」

能天気に放していた男子が俺の顔を見るなり、走る。
ちなみに、奴らは2年で、俺より年上だ。
まぁ、出っぱしから上級生シメ上げたこともあったからな…顔は広まってるわな。

のり 「……高峰君」

オウ 「オメェは気にすんな! 俺の問題だ!!」

あからさまに、嫌そうな顔をする桜田。
俺に気を使っているのが見え見えだ…
俺はやや怒気を込めて気にするなと言うが、桜田はいつものようには笑っていなかった。

オウ (クッソ…気分悪ぃ)

思えば、何で俺はこいつに気を使ってるんだ?
今まで通り、無視すりゃいいのに…気がついたら、俺はこいつと馴染んじまってる。
別に、仲が良かったわけじゃなかった…むしろ俺は突っぱねてた。
テスト勉強に協力を申し出たのも、たまたま話が通じると思ったからだ…
んで…たまたま同じ様に人形持ってて……そんで。

オウ 「ああチクショウ! ふざけんな!!」

ガンッ!!

俺は足元に転がっていた空き缶を思いっきり蹴っ飛ばす。
中身が少し残っていたのか、空中で中身をこぼしながら、近くのトブ川に落ちていった。
何故かムカムカする…こんなのは俺じゃねぇ!

のり 「た、高峰君! ダメだよそんなことしちゃ!」

オウ 「うっせぇんだよ!! 誰のせいだよ!?」

のり 「あ…う……ご、ごめんなさい。また、私が…」

俺は言ってハッとなる…コイツに当たってどうする。
確かにコイツが原因なのは最もだ。
だが、何も八つ当たりをすることはなかった…
当たり前のように、桜田は涙ぐんでいる…チックショウ、無駄に罪悪感が。
しかし、ここで謝るのはどうにも、気が引ける…
俺は悩む前に、さっさと歩き始めた。
この場を去ろう! 後は時間が解決してくれる!

ザッザッザ!!

? 「くおらぁっ!! この大馬鹿者がぁ!!」

ドゲシィッ!

オウ 「ぐふぅっ!?」

ズシャアアアアァァァァッ!!!

俺は背後からいきなり飛び蹴りを浴び、前のめりに突っ伏す。
俺は擦れた顔面を抑えながら、嫌な予感を感じ取ってすぐに後ろを向く。
そして、そこには予想通りの展開が待っていた。

ゲシィッ!!

オウ 「ぶっ!!」

俺が地面に横たわりながら後ろを振り向くと、同時に顔面を踏み抜かれる。
そのまま俺の後頭部はアスファルトとごっつんこだ…
だが、今は痛みよりも恐怖が上回る。
確実に俺の体温は2℃程下がっただろう…
そして、俺は恥も捨てて相手に懇願する。

オウ 「タ、タンマ! ミオリさん!! 許して!!」

ミオリ 「あぁ〜!? 聞こえんなぁ〜?」
ミオリ 「俺の見てない間に何してたんだ、あぁん!?」

例によって聞こえないフリ…ダメだ、こうなったらもう俺にはどうすることもできん!
よりによって、何でこんな時にミオリさんが現れるかなぁ…

ミオリ 「テッメェ…よりによって女泣かせるとはいい度胸だ!!」
ミオリ 「俺が、テメェの根性を叩きなおしてやるから、覚悟しろ!!」

オウ 「ひぃぃっ!! そ、それだけは勘弁!!」

俺は顔面を踏み抜かれたまま、命乞いをする。
しかし、ミオリさんはそれを聞き分けるはずも無く、俺の襟元を掴んで片腕で引っこ抜く。

ヒョイ!

ミオリ 「嬢ちゃん悪いね! こいつには俺からビシィッ!っと言っておくから♪」
ミオリ 「んじゃ、今日はこいつ休みってことで! もらってくよ〜♪」

ズリズリ…

オウ 「いやーーーーー!! 助けてミオリ様ーーーー!!」

俺は全力で抵抗するも、空しく引きずられる。
ダメだ…絶対この人は人間じゃない!

のり 「あ…はい〜……」(汗)

桜田は半分放心してそう答える。
あいつはこう言う光景を見るのは初めてか…そうか。
さらば…俺は明日の日を拝めん。





………その後、約数時間に渡ってミオリの店にてオウは恐るべき仕打ちを受けたのであった………





『時刻11:40 鉄板焼き「好々爺」』


オウ 「………」(死)

ミオリ 「くおらぁ! 死んだ振りしてんじゃねぇぞ!?」

バッシャァッ!!

椅子に座ったまま(ロープでぐるぐる巻きに縛られた状態)で、俺は水をかけられる。
当然バケツ一杯の水だ…コップなんて生易しくは無い!
俺は、朦朧とする意識を覚醒させ、返事だけする。

オウ 「も、もう勘弁してください…もうしません」

ミオリ 「なぁにぃ〜!? 聞こえんなぁ〜!?」
ミオリ 「もっとはっきり言ってみろぉ!!」

バキィッ!!

今度は右拳が唸る。
俺の左頬が腫れあがるが、もはや痛みも感じん。
俺は、そのままぷっつりと意識を失った。

オウ 「……」(死)



ミオリ 「ちっ、気ぃ失ったか…」
ミオリ 「しゃあねぇな…今回はこれで勘弁してやるか」
ミオリ 「…いるなら、出て来い。今なら気づかん」

虹孔雀 「…ふ、随分甘やかしていたようだな?」

厨房の方から、一体の虹色人形が現れる。
こいつは『虹孔雀』…とか言うそうで、今この店で少々預かっている。

ミオリ 「はっ! まぁね…これ位馬鹿な方がシゴキ甲斐があるがね」

俺はそう言って気絶したオウを見る。
その姿を見てか、虹孔雀は軽く笑う。

虹孔雀 「これも…運命か」

ミオリ 「あん?」

虹孔雀 「気にするな…まだお前の出番は無い」

ミオリ 「…例の戦いのことか?」
ミオリ 「ミーディアムだか何だか知らないが、この指輪は何なんだ?」
ミオリ 「契約とか抜かしてやがったな? どういう意味だ?」

そう、俺はこいつの『ミーディアム』とか言う奴になってしまっている。
数日前、こいつが突然現れ、俺に契約をしろ…と言った。
意味はわからなかったが…何故か俺は断らなかった。
こいつに何か惹かれる物があったとも言える。
そして、俺は虹孔雀と契約を結んだ。

虹孔雀 「契約は契約だ…私とお前は一蓮托生…」
虹孔雀 「お前の力は、私の力となる…」
虹孔雀 「だが、まだ必要ない…使うまでも無いからな」

ミオリ 「はっ…何だか面白そうなこと考えてるんだろ?」
ミオリ 「もったいぶらずに教えて欲しいもんだね…」

俺は腕を組み、そう言って微笑する。
よくわからねぇが、こいつは何かと戦っているらしい。
詳しいことは何ひとつ言わねぇから、わかんねぇが…

虹孔雀 「…時が来れば、話す。今はその時ではない」
虹孔雀 「せいぜい、力を蓄えておけ…いざ使う時に倒れられても困るからな」

そう言って、虹孔雀は背を向ける。
俺はその背中に笑いかける。

ミオリ 「上等だ! 俺の命を使いきれるならやってみろ!」
ミオリ 「面白そうだしな…」

俺は笑いをこらえて、体を振るわせる。
虹孔雀は何も言わず、微笑だけを見せてその場からいなくなった。

ミオリ 「へっ…楽しそうな顔しやがって♪」

あいつを見てると、他人のような気がしねぇ。
あの顔は、探してた玩具を見つけたって顔だ…どうやって遊ぼうか考えてる。
似てるぜ…俺に。

オウ 「う…うぅ」

ミオリ 「おっと…起きちまったか、しゃあねぇ…メシ位作ってやっか」

俺はそう思い、すぐさま鉄板の火を強めた。



………。
……。
…。



『時刻12:00 好々爺・店内』


オウ 「んががぐっ!!」

ミオリ 「ったく! がっつくな!! 別に無くなりゃしねぇよ」

オウ 「す、すんません!」

俺はミオリさんが出してくれたメシをガツガツ食う。
やっぱウメェ〜…この人のメシだけは天使も昇天するぜ!
単純な豚丼ながらも、ミオリさんのは格別!
豚、タマネギ、汁、米、全部一味違うぜ!!

ミオリ 「これに懲りたら、二度と女は泣かせるなよ!?」

オウ 「は、はひっ!!」

俺は背筋を伸ばして、はっきり答える。
この人にだけは絶対に逆らっちゃダメだ!
俺の本能が告げている! 死ぬと…

オウ 「…ふひ〜、ご馳走様です!!」

パンッ!と、俺は両手を合わせて言う。
それを見て、ミオリさんは軽く笑ってくれた。
たま〜に、この人はこんな聖母のような顔をする時がある。
怒っている時の方が多いかもしれんが…

ミオリ 「食ったら、さっさと帰れ! んで、勉強しろ!」
ミオリ 「後、今朝の嬢ちゃんに謝れ! 今日中にな!!」

オウ 「は、はい〜!!」

俺はそう言って立ち上がり、敬礼する。
そして、鞄を確認し、俺は店を出ることにした。

ミオリ 「オイ、忘れモンだ!!」

オウ 「はぁ? って、わっ!!」

俺は突然投げつけられた封筒をキャッチする。
そこそこの分厚さがあるその封筒に入っているのは…

オウ 「って、今月まだじゃ…」

ミオリ 「どうせ、金ねぇんだろ? とっとけ!」
ミオリ 「その代わり、テストでひとつでも落としてみろ…利子10倍だからな!?」

オウ 「げっ! そ、そんな危険な金いりません!!」

ミオリ 「バッきゃろう!! オメェはそれ位追い詰めねぇと力出さねぇだろうが!」
ミオリ 「返すなら、今月分は無しにするぞ?」

究極の魔女裁判…悪魔だこの人。
結局、悩みに悩んだ末、俺はもらっておくことにした。
100%で0になるよりはマシだ…
10倍返しは冗談じゃないが…



………。
……。
…。



『時刻:13:00 高峰宅』


オウ 「てでぇま〜…はぁ」

翠星石 「いきなり、ウザイため息吐くなですぅ…こっちの気も滅入るですよ」

真紅 「全く、とんだ帰宅ね」

オウ 「……オイ」

俺はアパートのドアを開けると、いきなりの光景に目を剥く。
ちょっとマテ…ここは俺の部屋だよな?
俺は入り口を出て、表札を確認する…確かに『高峰』と書いてある。
んじゃ何か? ここは何たらのフィールドか?
ドアの間辺りに境目が…って。

真紅 「…ここには紅茶どころか、水しかないじゃないの」

翠星石 「って言うか、バター位しかないですよ」

オウ 「勝手に人の家の冷蔵庫を開けるな!!」

バンッ!と、俺は走って冷蔵庫のドアを閉める。
そして、俺は赤と緑を交互にキッ!と、睨み付けた。

翠星石 「ひっ…ヤンキーがキレるですぅ〜」

真紅 「全く、何を怒っているのか…折角客が来ているのだから、もてなし位はできないの?」

俺のメンチに緑はビビッて赤の後に隠れる。
赤は、それがどうしたと言わんばかりに、堂々と偉そうなことを言い出した。

オウ 「じゃかぁしい! 不法侵入の癖に何言ってやがる!!」

俺はもっともらしい言葉でそう言ってやる、だが…

翠星石 「何言ってるですか…薔薇水晶の奴がいてくれ、と言うからいてやっているですのに…」

真紅 「そうね、ちゃんと薔薇水晶の許可は得てあるわ」

オウ 「この部屋の主は俺だ!!」

…正確には大家のだが、この際気にしない。
いや、それよりももっと気になることが出来てしまった。

オウ 「おぅ、赤と緑…バラスイはどこだ?」

真紅 「知らないわ…nのフィードに入ったきりよ」

翠星石 「まだ、10分も経ってないですよ」

オウ 「あん? 何も言ってなかったのか?」

どうやら、バラスイはまた勝手に動き回っているようだ。
あいつ…あの放浪癖だけはどうにもならんのか?
って…俺もあまり人のことは言えんが。

真紅 「私たちは、たまたまこれを届けに来ただけよ」

そう言って、赤いのが以前に見た弁当箱を見せる。
確か、桜田の…

オウ 「…あいつ、また作ってたのか? わざわざ…」

真紅 「薔薇水晶がお腹を空かしているだろうから…のりはそう言っていたわ」
真紅 「その通りのようだし、のりの勘も侮れないわね」

翠星石 「全くですぅ! 冷蔵庫に何も入ってないとは…貧乏なミーディアムに契約されて、薔薇水晶も不憫な奴ですぅ」

言われたい放題だなチクショウ…
言い返せないのがムカツク…確かにメシ買う金も無かったからな。

オウ 「はっ! だが、今日からの俺は一味違う! 給料が入ったからな!」

どど〜ん!と、効果音が鳴るかのごとき勢いで俺は給料袋を見せつける。
それを見て、緑は少なからず感嘆の息を吐いた。

翠星石 「おぉ〜! ヤンキーにしてはやるですぅ♪ 良きに計らえですぅ〜、今すぐチョコパフェを作るですぅ〜♪」

オウ 「ドアホ! いきなり失礼なこと言うな!!」

真紅 「そうよ、翠星石…せめて紅茶にしておきなさい」
真紅 「ちなみに、ダージリンよ? 今はそれが飲みたいの」

オウ 「お前も違うだろぉが!!」

俺は思いっきりツッコミを入れる。
こいつら揃いも揃って失礼な人形だな…キンちゃんと銀ちゃんを見習えってんだ!
…あんま変わらないかも、すまねぇキンちゃん銀ちゃん…

キィィィィィンッ!!

オウ 「ぐっ!? 何だ…!」

突然、左手に火傷の様な痛みを感じる。
左手で持っていた封筒を落とし、俺は指輪が光っていることに気づく。

翠星石 「し、真紅!?」

真紅 「ええ…何かがあったのかもしれないわね」
真紅 「オウ! すぐにフィールドへ! 私たちが案内するわ!」

オウ 「い、一体何が…?」

翠星石 「そんなことはどうでもいいですぅ! 薔薇水晶は気に入らないですけど…真紅の手前、手伝ってやるですよ!」
翠星石 「さっさと着いて来るですヤンキー!」

ヒュンッ!

そう言って、赤と緑は窓に消えていく。
くっそ…何だってんだ!?



………。



『某時刻 nのフィールド』


翠星石 「な、何ですこの世界は!?」

真紅 「見たことの無い世界だわ…薔薇水晶のフィールドでもない?」

オウ 「ここは…『虹孔雀』の世界だ」

真紅 「!?」

翠星石 「な、何です? 虹孔雀ってのは…」

どうやら、緑は知らないらしいな…だが赤は、明らかに反応した。

オウ 「おい赤いの…お前、何か知ってるのか?」

翠星石 「…真紅?」

真紅 「…ちゃんと名前で呼びなさい、と言ったはずよ?」

オウ 「いいから答えろ! 虹孔雀って何だ!? 敵なのか!?」

俺は怒気を込めて言う。
むき出しの感情に真紅はややためらいがちに…

真紅 「残念だけど、知らないわ。ただ、そう言うドールがいるかもしれない…としか」

真紅はそう言って、俯いてしまう。
そうか…知らないのか。

オウ 「…くっ、また指輪が!」

キィィィィッ!!

あれからと言うもの、不定期に指輪が輝く。
その度に火傷のような痛みを感じ、俺は一瞬立ちくらむ。

翠星石 「(し、真紅…ヤンキーの指輪、何回光ったですか?)」

真紅 「(数えただけで、7回よ…それも約10分の間に)」

翠星石 「(!? それじゃ、ほぼ間違いなく…)」

真紅 「(ええ…虹孔雀と戦っているのでしょうね!)」

オウ 「くっそ! やっと収まった…おい、真紅! 生モノ! バラスイはどこだ!?」

翠星石 「だ・か・ら! 誰が生モノですかぁ!? 真紅は普通に呼んだのに、翠星石もそうしろですぅ!!」

オウ 「やかましい! お前は普通に呼べと言わなかったろうが!」

翠星石 「それ位、言わなくても気づけ! ですぅ!!」

真紅 「言い争っている場合ではないわ! 薔薇水晶は、向こうよ!!」

そう言って、真紅は先行して走り出す。
俺と翠星石はそれを追いかけた。



………。
……。
…。



オウ 「…見つけた! バラスイ!!」

薔薇水晶 「!? オウ!」

虹孔雀 「ふ…ナイトの登場か」

俺は100メートル程先に、薔薇水晶と虹孔雀の姿を見つける。
互いに、剣を携えており、交戦したということは一目にわかった。
だが、対照的なのは…

オウ (ボロボロのバラスイに対して…ほぼ無傷の虹孔雀!)

バラスイは、服もいくつか破れ、顔には泥の様な物が着いている。
何度か地面に叩き付けられた様な…そんな感じを予想できる。
大して、虹孔雀は涼しい顔だ。
泥ひとつ着いてない服と顔…そして、馬鹿デカイ剣。
実に、余裕を持った顔をしてやがる! 気にいらねぇ!!

真紅 「…? あれが、虹孔雀」

翠星石 「うわ…何か七色の服と髪で悪趣味にも見えますぅ」

真紅と翠星石は、虹孔雀と初めて対面するようで、多少なりとも戸惑っているようだった。
だが、対する虹孔雀には一切の動揺は無さそうだった。

虹孔雀 「真紅…そして翠星石か」
虹孔雀 「随分久し振りに感じるな…見たのは一度きりだが」

真紅 「!? あなた…私たちを知っているの?」

翠星石 「い、一体お前は何者ですぅ!?」

虹孔雀の意味深な言葉に対し、驚く真紅。
翠星石は、指をビシィッ!と、虹孔雀に突きつけ、問いただした。
それを見て、虹孔雀は笑う。

虹孔雀 「ふっ…そうだな、あえて言うなら」
虹孔雀 「私は…ローゼンメイデン第『0』ドール」

真紅 「第0!?」

翠星石 「んな馬鹿なですぅ! そんな話聞いたことも無いですよ!?」

薔薇水晶 「…ローゼン、メイデン?」

オウ 「大丈夫かバラスイ!?」

虹孔雀が語っている間に、俺はバラスイの側に駆け寄る。
バラスイはボロボロながらも、しっかりと虹孔雀を見た。

虹孔雀 「知らぬのは無理も無い…本当の意味でのローゼンメイデンとは少し違う」
虹孔雀 「だから、『あえて』なのだ…」

翠星石 「わけがわからないですぅ! わかるように言いやがれですぅ!!」

虹孔雀 「私には『ローザミスティカ』はない」

真紅 「!? ローザミスティカが無い…?」

虹孔雀の言ったことに、真紅と翠星石は衝撃を受けているようだった。
ローザ…なんちゃら。
確か、前にキンちゃんが言ってた…ローゼンメイデンの魂だとか。
つまり…何だ? 虹孔雀は…魂が無い?

真紅 (わからないわ…ローゼンメイデンでありながら、ローザミスティカはない)

翠星石 「全く、さっきから聞いてれば図々しいですぅ! ローゼンメイデンな証拠見せろですぅ!!」

虹孔雀 「ふむ、もっともだな…ならこれでどうだ?」

スッ…スト…

オウ 「ではっ!? いきなり何だ!?」

虹孔雀はいきなりスカート(? ドレスの下部分)を捲くり上げ、生足を見せた。
しかも、結構際どい…って、人形相手におかしいか?

虹孔雀 「…ローゼンメイデンの右大腿部には、必ず『ある物』が刻まれている」
虹孔雀 「それは知っているだろう?」

真紅 「!? お父様の…筆跡」

翠星石 「そ、そんな…それじゃあ、本物?」

虹孔雀は右大腿部を露にし、筆跡を見せる。
俺の位置じゃ小さくて見えないが、真紅たちには見えているようだった。
虹孔雀は、真紅たちの反応を見ると、すぐに足を隠した。

虹孔雀 「…これ以上の証拠は、残念ながら私には無い」
虹孔雀 「もっとも…別に信用してもらおうとは思わん」
虹孔雀 「そんな事など、些細なことだからな…」

ズシンッ!!

そう言って、虹孔雀は両手で大剣を地面に叩きつける。
見ているのはただひとり…バラスイだ!

薔薇水晶 「…!!」

オウ 「クソッたれ…何でバラスイを狙う!?」
オウ 「真紅たちと同じなんだろう!? 姉妹じゃねぇのか!?」

真紅 「…オウ」

翠星石 「……」

俺は大声で叫ぶ。
だが、虹孔雀はそれを一笑に付した。

虹孔雀 「…薔薇水晶は、ローゼンメイデンではない」
虹孔雀 「だが、それゆえに許すわけにはいかん」

ブォッ!!

虹孔雀は剣を縦に構え、振り下ろす態勢に入る。
意味がわからん! 同じ人形じゃないのか!?

真紅 「ホーリエ!」

ヒュンッ! キイィィンッ!!

虹孔雀 「!?」

翠星石 「スィドリーム!!」

キィンッ! バシャァッ!! ズドオオオオオオォォンッ!!

虹孔雀 「…くっ!」

いきなり、真紅が赤い光を放って虹孔雀を怯ませる。
その隙に、翠星石が如雨露をいきなり出し、虹孔雀の足元に水を巻いた。
すると、あら不思議…一瞬で緑の木が生長して虹孔雀の動きを止めてしまいました…とさ。

オウ 「って、スゲェ!? 生モノ強ぇ!!」

翠星石 「これ位は朝飯前ですぅ♪ って、また生モノって言ったですかぁ!?」

オウ 「あ、悪ぃ…つい」

俺は後頭部を掻いて謝る。
何か言っちまうんだよなぁ〜

虹孔雀 「…何故、邪魔をする? 私はお前たちと戦う気は無いのだがな」

木に縛りつけられ、虹孔雀はやや辛そうにそう言った。
だが、この状況ではただの強がりにも聞こえる。

真紅 「虹孔雀…あなたが例えローゼンメイデンでも、薔薇水晶を襲うことは許されない」
真紅 「もう、アリスゲームは終わったわ」
真紅 「私たちは戦わなくても、アリスになれる!!」

翠星石 「そうですぅ! お父様はそう仰ったのです! 聞き分けやがれ! ですぅ!!」

虹孔雀 「…そうか」
虹孔雀 「父上は、そう言ったか…」

オウ (……な、何だこの感覚?)
オウ (まるで、体の奥から何かを引きずり出されるような…この感覚!)

真紅 「!? 翠星石!」

翠星石 「え…?」

虹孔雀 「…『メギーナ』!!」

バァンッ!!

オウ 「!?」

突然、虹孔雀を閉じ込めていた木の中から『七色』の輝きを放つ光が放たれる。
そして、それが爆ぜると同時、虹孔雀を捕らえていた木は爆破され、破片が飛び散った。
その次の瞬間、虹孔雀は翠星石に狙いを定めて剣を振り下ろす。

虹孔雀 「おおぉっ!!」

翠星石 「ひ…! キャアアアァァァッ!!」

薔薇水晶 「…っ!!」

ガキィィィィィッ!!

虹孔雀 「!?」

翠星石 「…あ、え? ば、薔薇水晶!?」

薔薇水晶 「……っ!!」

虹孔雀の一撃を、バラスイが自分の剣で受け止める。
細い剣ながらも、両手で支え、しっかりと剣の腹で受け止める。
だが、バラスイの力じゃ押さえ切れていない。
あのままじゃいつか…!

翠星石 「な、何やってるですか!? それじゃあお前が真っ二つになっちまうですぅ!!」

薔薇水晶 「……っ! ダメ……」
薔薇水晶 「…誰かが悲しむのは……ダメ…!」

翠星石 「…ば、薔薇水晶…?」

真紅 「くっ! ホーリエ!!」

虹孔雀 「メギーナ!!」

ヒュヒュンッ!! ドバァンッ!!

真紅 「ああぁっ!!」

オウ 「真紅!?」

真紅は赤い光で攻撃しようとするも、虹孔雀の掛け声で現れた七色の光が爆ぜて真紅もろとも吹き飛ばす。
何なんだよあれ…! ホーミングミサイルか!?

翠星石 「し、真紅!」

真紅 「だ、大丈夫よ…! この位ならまだ!」
真紅 (でも、何て威力なの…? 人工精霊にあれほど攻撃力を持たせるなんて…!)

虹孔雀 「飛び込んだのは迂闊だったな…薔薇水晶」

薔薇水晶 「!!」

虹孔雀 「翠星石を見殺しにして私を攻撃すれば自分の命は助かったろうに…」
虹孔雀 「わざわざ、守るために出てくるとは…お前にとって翠星石は敵だろうに」

オウ 「!?」

翠星石 「!? 虹孔雀…テメェって奴わぁ!」

虹孔雀はこともあろうに、言わなくてもいいことを言い出す。
それを聞いた緑は怒りを露にして叫んだ。
真紅も、すぐにバラスイへ呼びかける。

真紅 「薔薇水晶! 聞く耳を持ってはダメよ!!」

薔薇水晶 「…敵? 翠星石が…?」

バラスイは戸惑いの表情を見せる。
体を小刻みに震わせ、目の焦点が虚空を見ていた…
明らかに異変が起ころうとしている…そして、虹孔雀は更に言葉を続ける。

虹孔雀 「そうだ…お前はローゼンメイデンではない」
虹孔雀 「ローゼンメイデンを抹殺するために生み出された、人形だ」

真紅 「ダメよ薔薇水晶!」

翠星石 「…い、いい加減にしろです、虹孔雀ぅ!!」

薔薇水晶 「…て、敵…? マッサ、ツ…? う…うぅ…」

薔薇水晶は苦しんでいる。
何かを思い出そうとしてるようだ。
そして、俺はキンちゃんの言葉を思い出す。


槐はお父様の弟子で、お父様を超えるために『薔薇水晶』を作ったかしら


次の瞬間、俺は叫んでいた。

オウ 「バラスィーーーーーーーーーーー!!!」

薔薇水晶 「!? …オウ」

俺は震えるバラスイの背中に向かって、全力で叫ぶ。
何やってんだ俺は! 俺は…バラスイの相棒だろ!!
相棒が辛いのに…俺がボーっとしててどうする!! 俺も…戦うぜ!!

オウ 「バラスイ! 蹴りだぁ!!」

薔薇水晶 「!! …っ!」

ドガァッ!!

虹孔雀 「ぐっ!?」

薔薇水晶は、剣を真上に一瞬押し上げ、がら空きになった虹孔雀の顎に向けて右の前蹴りを見舞った。
一瞬での反撃に、虹孔雀は蹴り上げられ、空中に浮く。
だが、すぐに体勢を立て直し、再び剣を振るった。

虹孔雀 「おおぉっ!!」

ガキィィンッ!! ズザザザザザアァッ!!!

薔薇水晶 「!!」

オウ 「バラスイ!?」

蹴りを放ったバラスイの隙を突いて、虹孔雀は横薙ぎに剣を振るう。
バラスイはかろうじて剣で受けるものの、衝撃を受け止められずに派手に吹っ飛んで地面を転がった。

虹孔雀 「メギーナ!」

キュンッ! ドォォンッ!!

薔薇水晶 「…っぅ!!」

七色の光がまた爆ぜる。
薔薇水晶は立ち上がることさえ許されない。
そして、無防備な薔薇水晶に向かって虹孔雀は一直線に飛ぶ。

真紅 「はぁっ!!」

ガキンッ!!

虹孔雀 「真紅! まだ邪魔をする気か!?」

真紅 「もうお止めなさい! お父様は戦うことをきっと望んではいないわ!!」

真紅は虹孔雀の進行方向を遮り、ピンクのステッキで虹孔雀の剣を受ける。
あ、あんなステッキでも、できるのか…やっぱり真紅も凄いんだな!

オウ 「バラスイ、大丈夫か!?」

薔薇水晶 「オウ…私は」
薔薇水晶 「私は……誰?」

それは、出会ったばかりの時に聞いた言葉だった。
バラスイは、悲しい顔をして俺に聞く。
虹孔雀の言葉が相当響いている…自分の存在を疑問視しているんだ。
だから、俺は思いっきりこう言ってやる。

オウ 「お前は『薔薇水晶』だ!! 俺のたったひとりの相棒だ!!」

薔薇水晶 「!? あい…ぼう?」

オウ 「そうだ! だから迷うな! 過去なんて何でもいい! お前は、俺と一緒に来い!!」

薔薇水晶 「…オウ……うん…」

バラスイは、微かに笑ってくれる。
俺は微かに震えるバラスイの体を優しく抱き上げてやった。

オウ 「まだ、戦えるか?」

薔薇水晶 「……」

バラスイは、コクリとゆっくり頷く。
だが、顔は悲しそうな表情だった。

オウ 「戦うのは…嫌か?」

薔薇水晶 「……」

また、コクリと頷く。
そうか…そうだよな。
誰だって、本当は傷つけるのは嫌だ。
できるなら、傷つかずに過ごしたい。
でも…コイツには敵がいる。
生きるためには…あえて戦わなきゃならない時もある。

オウ 「!? ま、また指輪が…!?」

キィィィィィィッ!!!

まるで、俺の意思に呼応するかのように、指輪が紫に輝く。
そして、次の瞬間、俺の指輪から紫の光が表へと放たれた。

オウ 「な、何だこれ!? ピンキーとかと同じ様な…」

ちなみに、ピンキーとはキンちゃんの使っていた金色のアレだ。
名前を覚えてないので、それで代用。

翠星石 「じ、人工精霊!? ヤンキーの指輪から!?」

虹孔雀 「メギーナ!!」

バァンッ!!

真紅 「きゃあっ!!」

虹孔雀はまたしても遠隔操作の光で真紅を吹き飛ばす。
見た目は、この紫もそっくりだ…ってぇことは、使い方も同じか?

オウ 「よしっ! バラスイ、これを使え!!」

薔薇水晶 「…? …??」

バラスイはよくわかっていないようだった。
そ、そうか…使い方わからないと、ダメだよな。
俺は何とか考える。
すでに虹孔雀は迫ろうとしている、マズイマズイ!!

オウ (ヒーロー物ならこう言う時は、叫べば何とかなる!!)
オウ 「バラスイ!! 『クリスタニア』と叫べーーーーーー!!」

薔薇水晶 「! …『クリスタニア』!!」

カァァッ!!

虹孔雀 「人工精霊ごとき! 私の太刀を止められると思うな!!」
虹孔雀 「はあぁっ!!」

ビシィィィィンッ!!

虹孔雀 「なっ!?」

薔薇水晶 「…?」

オウ 「やったぜ!!」

即席で考えた名前だが、どうやら使い方は間違ってなかったらしい。
バラスイが気持ち分強めに叫ぶと、紫の光はバラスイの前でシールドを張る。
その盾は虹孔雀の剣さえも受け止め、絶好の攻撃チャンスを作った。

オウ 「バラスイ!! チャンスだ!! 思いっきり…右拳を振りぬけぇぇ!!」

薔薇水晶 「……っ!!」

ガッシィィッ!!!

虹孔雀 「がはぁっ!!」

ギュンッ! ドッガアアアアアアアアァァァァァッ!!!

バラスイは盾の横へと素早く回り込み、がら空きとなっている虹孔雀の左こめかみに向かって右フックをお見舞いした。
かなりのスピードで打ち込んだためか、虹孔雀は剣を落として吹き飛び、地面へと強烈に激突した。
砂煙をあげ、かなりの派手さを見せたようだ。

オウ 「…ちょ、ちょっとやり過ぎたんじゃないか?」

薔薇水晶 「……オウが全力でって」

確かにその通り。
とはいえ…ここまで強いとは。
実はバラスイって、相当凄いのだろうか?
キンちゃんたちが全滅したみたいなこと言ってたもんな〜よく考えれば6体1で勝ったってことか?

翠星石 「ま、まだ終わってないですよ!?」

オウ 「!?」

薔薇水晶 「……」

虹孔雀 「…くっ。効いたぞ今のは」
虹孔雀 「…ミーディアムと力をリンクさせ始めたか」
虹孔雀 「いいだろう…今回は私の負けだ」

オウ 「へっ、何度来ても同じ様にしてやんよ!」

俺がそう強がると、虹孔雀は嬉しそうに笑う。

虹孔雀 「ふふふ…楽しみになってきた」
虹孔雀 「また会おう、薔薇水晶…真紅、翠星石もな」

バサッ!!

虹孔雀は、翼をはためかせ、飛び去っていく。
数秒後には見えなくなってしまった…速いなぁ。

真紅 「…く、想像以上ね」

翠星石 「真紅…本当は知ってたのではないですか?」

真紅はよろよろと起き上がり、服に着いた汚れを払う。
翠星石は真紅に虹孔雀のことを問いただそうとしているが、真紅は答えなかった。

翠星石 「…真紅」

真紅 「知っていたのは、名前だけよ…それも、水銀鐙から聞かされたわ」

翠星石 「!? 水銀鐙から…じゃあ、あいつは水銀鐙と繋がりが!?」

真紅 「それはないわ…むしろあるとすれば、水銀鐙とも戦っているであろうと言うことね」

オウ 「どういうこった? 銀ちゃん、虹孔雀を知っているのか?」

俺が尋ねるも、真紅は複雑そうな顔をする。
そして、簡単にこう答えた。

真紅 「…水銀鐙に『虹孔雀』と言うドールを知っている?と、しか言われなかったわ」
真紅 「水銀鐙も…知らないのでしょうね、詳しくは」

なるほど…銀ちゃんも真紅が知っているかも…ということで聞きに行ったってわけか。
確かに真紅は何でも知っていそうな雰囲気があるからな。
漫画で言うところの、解説役兼雑学王だ。

翠星石 「……そうですか」

翠星石も止む無く納得したようだ。
まぁ、何かと謎はまだあるだろうな…あれは。

真紅 「それより、薔薇水晶…あなた、人工精霊を?」

薔薇水晶 「…?」

翠星石 「そうですよ! いきなりヤンキーの指輪が光って、そこから出てきたですよ!!」
翠星石 「初めて見たですけど…人工精霊って、ああやって産まれるですか?」

真紅 「…私も見たことは無いわ」
真紅 「人工精霊は、私たち生まれると『恐らく』同時に生まれている…」
真紅 「作ったのはお父様のはずだけど…その誕生の瞬間は見たことが無いわ」

オウ 「…まぁ、いいんじゃね? とりあえず…」

俺は不思議がるふたりに向かって軽く言う。
実際、あれがどうやって産まれたかもよくわからん。
結果的には、俺が作ったとも言えるのかもしれないが、な。

翠星石 「とりあえず、もう一辺呼んでみるですよ!」

薔薇水晶 「……? …??」

オウ 「…『クリスタニア』だ」

薔薇水晶 「…クリス、タニア」

ポワ〜…

今度は何やら弱々しく出てくる。
これって、使い手のテンションに反映されるのか?

翠星石 「何か弱々しいですぅ…ベリーベル並みですね」

真紅 「ちゃんと躾ければ大丈夫よ…そう、クリスタニアと言うのね」
真紅 「何か意味があって名づけたの?」

そう言って真紅は興味深そうに尋ねる。
俺は、とりあえず考えた経緯を話す。

オウ 「いや、適当」

翠星石 「適当!?」

マジでそうなんだけどな…
とはいえ、一応考えた部分もある。

オウ 「んん〜、まぁあえて言うなら、水晶…で、クリスタル」
オウ 「それをちょっと変化させて『クリスタニア』ってとこかな…」

真紅 「ふぅ…どうやら、大変な名付け親につけられてしまったようね」
真紅 「まぁいいわ…速く帰りましょう」
真紅 「紅茶の時間が過ぎてしまうわ」



………。



こうして、今日の戦いは終わった。
虹孔雀は、きっとまた襲ってくるだろう。
だが、俺は退くつもりは無い。
バラスイは戦いが嫌いだと言う…だったら、なおさらだ。
戦わなきゃわからないこともきっとある…不良だったらそうする。
あいつだって…多分わかるはずだ。
喧嘩することも、時には必要だって……



………。



『時刻23:00 好々爺・厨房』


ミオリ 「おかえり…何だ、随分やられたみたいだな?」

虹孔雀 「ふ…予想以上にな」

虹孔雀は汚れた服と体で、ここに帰ってきた。
その姿から、それなりの喧嘩をしてきたことは想像できた。

ミオリ 「どんな怪物と戦った? 教えろよ」

俺は興味深く笑ってそう聞く。
だが、虹孔雀は微笑んむだけだった。
なるほど…楽しみは取っておくタイプか…やっぱり俺と同じだな。

虹孔雀 「次は、お前にも出てもらう…服を洗っておいてくれないか?」

バサッ!

そう言って、虹孔雀は服を脱いで俺に渡す。
虹孔雀は胸と股間にサラシを巻いていた。
まぁ、俺が着けさせたんだが…最初は下着を着てなかったからなぁ。
いくら人形でも、女として見せちゃいかん部分はある!
といえ、下着は相当に嫌なのか、虹孔雀は拒否。
色々議論の末、たどり着いたのがあのサラシだ。
虹孔雀も、サラシなら…と納得し、今では常に身に着けている。
う〜む、発想がやっぱ俺と似てるのか?

虹孔雀 「どうした? 私の体におかしい所でもあるか?」

ミオリ 「いや、何にも…綺麗な体じゃん♪」
ミオリ 「人形にしとくにゃもったいないね」

虹孔雀 「ふ…世辞はいい」
虹孔雀 「タオルをくれ…体を拭きたい」

ミオリ 「あいよ! ほれっ」

バッ!

俺は、人間用のハンドタオルを投げ渡す。
人形にはあれがバスタオル位になるからな。

虹孔雀 「すまんな、いつも」

ミオリ 「気にすんな! 相棒なら当然だろ?」

虹孔雀 「相棒…か」

虹孔雀は、何やら意味深な顔をする。
何かを思い出して、笑っている…?

虹孔雀 (ふふ…この女あって、あの男あり…か。面白いな…本当に)



…To be continued




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