勇者と魔王〜嗚呼、魔王も辛いよ…〜




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第4話 『優しきゴブリン』




『魔王城 休憩室』


サタン 「…今日はセリアはいないな」

俺は日々の疲れのため休憩室に入った。
中は丁度誰もおらず、貸切状態だった。
俺の寝室はセリアの牢獄の隣だから結構うるさい。
元々は脱走されないために俺の寝室の隣にしたのだが、かえって裏目に出た。
セリアに脱走する気はない、それ所かなまじ部屋が隣なだけにさんざん話しかけてくる。
しかも、自由に部屋を行き来できる状態だから、まるでネズミのようにどこにでも出没する。
やはり、個室ではなく鉄格子にするべきだったか…さすがに可哀相と思ったんだが…。

サタン 「まぁいい…今日はここで休もう…」

と言うわけで休憩室にあったソファーで横になる。
はぁ、眠い…。



………。
……。
…。



ガチャ…。

セリア 「あら? 誰もいないわね…ん?」

サタン 「………」(眠)

中に入ると最初は誰もいないかと思ったらサーちゃんがソファーで寝ていた。
わざわざこんな所で寝なくても。

セリア 「仕方ありませんわね、たしか、タンスに掛け布団があったはず」

私はタンスの中を調べる。
そう言えば、サーちゃんへそくりとか持っているのかしら?
て、言っているうちにタンスの中にありましたわ。

セリア 「これは、魔札ですわね」

中に入っていたのは魔札と呼ばれる魔界のお金だった。
噂によれば人間界のお金と換金できる場所があると聞きましたが、基本的にはこの世界では通用しない金ですわね。
とりあえず、置いておきましょうか。

セリア 「まったく、風邪でも引いたらどうするおつもりですの」

私はそう言ってサーちゃんに掛け布団を掛ける。
サーちゃんはまるで子供のような顔で眠っていた。
ふふ、可愛いわね。

セリア 「今日はゆっくり寝かせてあげますか♪」

メビウス 「あれ? セリアさんいたんですか?」

セリア 「あら? メーちゃん、今日は休憩室は使用禁止よ」

メビウス 「え?何故ですか?」

セリア 「ふふ、サーちゃんが眠っているからね♪」

メビウス 「…なるほど、それにしてもセリアさん上機嫌ですね」

セリア 「あら? そうですか? たまにはそんな日もありますわ♪」

私はそう言って休憩室を出て、扉を静かに閉める。

セリア 「さて、たまには私も囚われの姫らしく牢獄で大人しくしておきましょうか♪」

私はそう言うと、そのまま牢獄(個室)に向かう。
今日くらいはよろしいですわね♪




…………。




さて、その頃勇者一行は?


エド 「そろそろ、ゴールの村が見えてくるな」

アルル 「つっても私たちのゴールはまだまだ先だけどね♪」

シーラ 「とりあえず、これで休めますわね」

レオン 「ああ」

俺たちは今日もリアウの森にいた。
目の前にはいつもと違い、大きな岩山が見える。
ようやっとリアウの森も終わりか。
そして、俺たちはいよいよこの森の最後の村に着こうとしていた。


『ゴールの村』


アルル 「…誰もいないよ?」

エド 「おかしいな…?」

村に入ると人っ子一人いなかった。
これはさすがにおかしい。
別に崩壊したようには見えないのだが…?

ホブゴブリン 「ゴォ!!」

アルル 「きゃあ!? 村の中にモンスターが!?」

エド 「まさか、コイツが!?」

シーラ 「そんな!? たしかこの村は…!?」

レオン 「くっ!? たぁぁぁ!」

俺はただの聖剣を構えて切りかかる。
ホブゴブリンは3メートル近い体格を持つゴブリンの一種だ。
二の腕が人間の首くらいあって物凄いパワーを持つ。
タフさも半端じゃない、だが、勝てない相手ではない!

シーラ (おかしい、たしかホブゴブリンはこの村の…!)

エド 「シーラさん! 援護してくれ!」

シーラ 「くっ…、聖なる光よ、彼らをその光で包め、プロテクション!」

ホブゴブリン 「くらえ!!」

ガキィン!!

ホブゴブリン 「なんだと!?」

レオン 「くぅ…さすがにすげぇ力だ…魔法の援護がなかったら剣ごと死んでいたな…」

俺はホブゴブリンの豪腕からなる棍棒の一撃をただの聖剣で受け止める。
そして、同時に。

アルル 「いっくよ! 火球の魔法、ファイアーボール!」

ドゴォン!!

ホブゴブリン 「グゥゥゥ!?」

ホブゴブリンは見事に直撃する。
まともに喰らえば並みのモンスターはそれで終わりだ。

エド 「トドメー!」

? 「待って!」

レオン 「!?」

エド 「はい…?」

アルル 「こ、子供…?」

シーラ 「やはり…」

なんと、突然子供が現れる。
そして、子供は手を地面に突くホブゴブリンの前に立ち、俺たちに立ちふさがる。
なんか、シーラさんだけやっぱりとか言っていたけど?

子供A 「ホブをいじめないで!」

子供B 「ホブは戦いたくて戦っているんじゃないんだ!」

ホブゴブリン 「…みんな」

シーラ 「一応説明しましょう」
シーラ 「ゴールの村は昔からホブゴブリンと共生活をしているのです」
シーラ 「だから、いて当然なのです」

エド 「…そうだったのか」

アルル 「でも、なんで私たちに襲い掛かってきたわけ?」

レオン 「戦いたくないのに戦っているって言っていたよな?」

子供A 「ホブはコボルト達にこの村の子供たちを人質にとられたんだ!」
子供A 「返して欲しかったら勇者を倒せって…」

シーラ 「なんと! それはあまりに非道! 許しておけません!」

エド 「野郎…コボルト達め…」

ホブゴブリン 「俺、戦うの嫌い…でも、この村のため、仕方ない…」

アルル 「ねぇ! コボルトってどこに住んでいるの?」

子供B 「コボルト達はこの先の山に住んでいるんだ、たぶん人質も…」

シーラ 「決まりましたね! 早速助けに行きましょう!」

レオン 「ああ!」
エド 「当然だ!」
アルル 「おっけー!」

俺たちは一致団結する。
さすがにコボルト達を許しておくわけにはいかない。

ホブゴブリン 「待ってくれ、それ困る…人質助けたい…だから普通にはむかえない」

アルル 「う…たしかに」

たしかに、そのために人質にしているんだもんな。
普通に行ったら人質は確実に殺されるな…。

シーラ 「それなら簡単ですわ!」

レオン 「シーラさん?」

シーラさんは考えがあるのか簡単だという。

シーラ 「大丈夫、私に考えがありますわ!」

えらく今日のシーラさんは強気だ。
何をする気だ…?




…………。
………。
……。




『コボルト達が根城にする山』


コボルトA 「おい! ホブゴブリンが近づいてくるぜ!」

コボルトB 「本当だ、てことは勇者一行を倒したのか!?」

コボルトC 「見ろ! 背中に勇者一行の三人が縛り上げられているぞ!」

コボルトD 「ん? 三人…4人のはずだろ?」

…………。

コボルト達 「どういうことだよ!?」




ゴールの村に着いてから1時間後、俺達はシーラさんの作戦でこの山に来ていた。
もっとも俺だけは別行動だけど。

んで、シーラさんたちは。


ホブゴブリン 「勇者一行倒した、子供返して」

コボルトA 「何言ってんだ! ちゃんと殺してこいよ! 大体ひとり足りねぇじゃねぇか!」

ホブゴブリン 「殺せとは聞いていない、ちゃんと倒した、勇者には逃げられた」
ホブゴブリン 「もういい筈、子供返して」

コボルトB 「ダメだ! 勇者を倒して来い! そしたら返してやる!」

ホブゴブリン 「……」

コボルトC 「おい! こいつらはガキと同じ牢屋に入れとけ!」

アルル 「…ちょっとやばそうね」

エド 「ここまでは作戦内だよな?」

シーラ 「ええ…一応」

コボルトD 「なにてめぇら、話しあってんだ!?」

シーラ 「コボルト達あなた方に問います、何故子供を人質にとったのです」

コボルトA 「ああ〜ん? その方が楽にてめぇらを倒せるからに決まっているだろうがよ!」
コボルトA 「こいつはただのでくのぼうだが、力はすげぇからな!」

コボルトB 「俺達は楽できるんなら何だってするぜ!」

アルル 「外道…」

コボルトC 「そりゃ最高の誉め言葉だぜぇ!? ギャハハハ!」

アルル 「こいつら…マジでむかつく」



さて、その頃勇者、レオンは…?


レオン 「ふぅ、少し遅れて山に到着」

俺はシーラさんの作戦で一人単独で少し遅れて山に来た。
これなら仲間を取り戻しに来たという名目で怪しまれないな。
後は、俺がコボルト達を倒せば万事解決だな。

コボルトE 「勇者だ! 勇者が仲間を取り戻しにやってきた!」

コボルトF 「ケケケ! たった一人で何ができるんだよ! やっちまえお前ら!」

レオン 「…五体か、ひとり30秒としてまぁ、3分あればか」

コボルトG 「しねぇ!」

レオン 「ふん! 一匹!」

ザシュウ!

俺はコボルトを一匹斬殺する。
あと、4匹だ。

コボルトE 「く!? 全員でかかれー!」

レオン 「やれやれ、だぜ…」

ザシュウ!!

俺はそのまま陣を崩すようにもう一匹斬る。
あと3匹…。

コボルトF 「やばい! い、いそいで上に報告だ、人質をもってこい!」

レオン (…手はず通りいっているよな?)

残りのコボルト3匹のうち2匹は山を登っていった。
しかたないから、このコボルトを斬殺するか。

ホブゴブリン 「勇者、俺相手」

レオン 「ホブ!?」

突然、ホブが俺の前に立ちふさがる。
やばいな…ケース2が起きちまったよ。

ホブゴブリン (俺、シーラたち信じるしかない)

レオン (頼むぜ、シーラさん!)



…………。



コボルトA 「さぁ、入ってろ!」

アルル 「にゃあ!?」

シーラ 「いたた…」

コボルトは強引に私達を蹴飛ばし、牢屋に入れる。
そしてすぐに鍵を掛けた。
中は洞穴で、鉄格子の牢獄ではあるが、物凄く自然的だった。
正直中は薄暗い。

子供 「あなたたちは?」

エド 「おっと、君が人質にされた子供か」

シーラ 「私はシーラ、あなたを助けに来たの」

子供 「助けに…? でも…どうやって?」

子供は不安そうに聞いた。
大丈夫、思ったよりコボルト達の頭が悪くて助かりましたわ。

エド 「ふぅ、解きやすい縛り方とは知らなかったようだな」

アルル 「所詮はモンスターの知能よね〜」

シーラ 「では、行動を開始しましょう!」

私達はそう言うと縄を解く。
無事、子供は確保できた。

エド 「俺、剣はゴールの村においてきたから頼むぜアルル?」

アルル 「任っかせといてよ! ファイアーボール!!」

ドカァァァァン!!

コボルトA 「な、なんだ!?」

コボルトB 「だ、脱走だ! 人質達が逃げたぞ!?」

アルル 「そこそこ! 邪魔邪魔! アイストーネード!!」

ヒュウウウ!! ゴォォォォォ!!

コボルト達 「ギャアアア!?」

コボルト達はアルルの氷の竜巻で吹き飛ばされてしまう。
その隙にこの洞窟を抜け出す。



………。



レオン 「はぁはぁ…」

ホブゴブリン 「く、うう…」

あれから10分。
なんとか騙しながら戦っている。
しかし、しんどい…普通に戦えるって幸せなことだな…。

コボルトN 「いつまでだらだらやっているんだよ! 早く倒せよ!」

コボルトT 「待てよ、今の勇者なら俺達で倒せるんじゃないか?」

コボルトZ 「たしかに! 10分近く戦って疲労が顔に出てやがる!」

コボルトW 「よーし! やっちまおうぜ!」

レオン 「やば…」

コボルト達が痺れを切らし始めた。
さすがに今の状態ではまとも戦えないぞ…。

ホブゴブリン 「ここまでなのか…」

レオン 「諦めんなよ…まだ、神は見捨ててないぜ」

ホブゴブリン 「?」

コボルトK 「泣いて謝っても許さねぇぜ!?」

シーラ 「それはこっちの台詞です!」

コボルトM 「!? どこだ!?」

コボルトQ 「あ、あそこ!?」

レオン 「ふぅ、やっとか…」

見ると、後ろの小高い丘の上にはシーラたちがいた。
エドの背中には子供もいる、どうやら作戦成功のようだな。

シーラ 「あなた達の非道、神が許しても私が許しません!」

アルル 「外道死すべし!」

コボルトZ 「くそ! 上の奴らは何をしていたんだ!?」

コボルトY 「ぶち殺せー!」

アルル 「わー、きたきた、いっくよー! シーラさん!」

シーラ 「はい! アルル!」

アルル 「アイス…」

シーラ 「ウインド…」

アルル&シーラ 「トーネード!!」


コボルト達 「ギャアアアア!!?」

物凄い合体魔法により、コボルト達は皆吹き飛ぶ。
そして、何匹かは俺達の足元に落ちてきた。

レオン 「さて、形勢逆転だな」

コボルト 「ひぃぃぃ…! ゆ、許してくれ!」

レオン 「許すか許さないか、ホブに聞いてみな」

コボルト 「ホ、ホブ、もう悪さしねぇからよぉ、もう魔王軍につかなから許してくれよぉ!!」

ホブゴブリン 「俺…お前達許さない!」

コボルト 「ひぃぃぃぃ!!」

レオン 「んじゃ、いくぜ駄目押し!!」


コボルト 「ぎゃああああああああっ!!!?」




…………。




『夕刻:ゴールの村』


ホブゴブリン 「勇者レオン、そしてその一行、俺この恩一生忘れない」

シーラ 「別に気にしないでください、悪党を見過ごせなかっただけですから」

レオン 「そうだぜ、おかげでお礼ももらえたしな…」

長老 「これからの旅…さらに過酷になるでしょう…それ位の備えはあったほうがいいはずです」

アルル 「長老様、ありがとうございますね♪」

俺達は助けた俺にと、多額の報酬を貰った。
これからの旅お金が必要になるのは確かだ、今はありがたく貰っておこう。

ホブゴブリン 「あの山越えたら、霊海にでる、気をつけろ」

エド 「霊海って迂回できるんじゃなかったっけ?」

長老 「最近、霊海が広がりまして、迂回できなくなってしまいました…お陰で向町にも音信不通で…」

シーラ 「困りましたね…しかし、通らねばならないのならば仕方ありません…行きましょう」

アルル 「そうだね、アンデットタイプとか明らかに怖いけど行かないといけないんだもんね!」

エド 「じゃ、決まった所で早速行こうぜレオン!」

レオン 「…ああ!」

こうして、俺たちはゴールの村を出る。
名前はゴールだが俺達のゴールはまだまだ先だ。
俺達の旅はまだまだ続く…。



『同時刻:魔王城:休憩室』


サタン 「ふぁあ…良く寝た」

気がつくともう太陽が沈みかけている。
久し振りにゆっくり寝たな。

サタン 「ん? 掛け布団?」

見ると、俺に布団が掛けてあった。
おかしいな、俺はそのまま寝たはずなんだが…。
まさか、メビウスが…?

サタン 「ふん、まぁいい…」

俺はそのまま立ち上がると、休憩室を出た。

シーザー 「これはサタン殿…セリア殿は見かけませんでしたか?」

サタン 「セリア? いや、見ていない」

そういえば、今日に限ってどうしたんだ?
まったく姿を見せないが…。

メビウス 「セリアさんなら自室で昼寝していますよ」

サタン 「昼寝…? 珍しいな」

メビウス 「きっと、だれかに影響されたんですよ♪」

サタン 「誰かって…だれだ?」

シーザー 「なるほど…」

メビウス 「ふふふ…♪」

サタン 「お、おい…お前ら?」

何故か二人とも笑っている。
おかしい…いつもと調子が違う。
何か今日は変だ。
やけに平和だし…。

サタン (一体全体どうなっているんだ!?)


結局この日はまったく平凡に過ぎるのだったとさ…。






To be continued



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