勇者と魔王〜嗚呼、魔王も辛いよ…〜




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ルシファー 「ふ…ふふふ…見事…です…」

ルシファーさんは壁に背を持たれかかりながら、横になる。
魔王城には対魔抗体が施されているから、魔法によるダメージはまるでないが、そとにはかなりの衝撃が走っただろう。

ルシファー 「正直…いくら…勇者でも…レベル8までマスターするとは…思っていませんでした…」

レオン 「…どうして、攻撃を仕掛けなかったんですか?」
レオン 「俺が魔法を唱えている間…いや、唱えた後でもあなたの実力なら俺の魔法を軽々と回避して俺を仕留めれたはず」

ルシファー 「ふふ…見てみたくなったんですよ…あなたの勇気を…」

レオン 「……」

ルシファー 「…ふふ、ごめんなさいね、こんな所で道草食わせてしまって…」

レオン 「…いえ、きっとルシファーさんと戦わなかったら、魔王にはなにも出来ませんでした…」

実際、俺はルシファーさんと戦い、更にレベルアップできた。
まだ、魔王に追いついているかはわからないが、俺は強くなっている。

ルシファー 「ふ…ふふ…それは違いますね…運命は勇者に微笑むだけですよ…私は…友を見捨てることが出来ず…抗ってしまった…」
ルシファー 「結果は…ご覧の通りですけど…ね?」

ルシファーさんはボロボロだ。
本人なら死にはしないだろうが、すぐにまた戦闘とはいかない。
当然か、俺の魔法を受け続けたんだから。

ルシファー 「…レオン君、これを…」

レオン 「? これは…?」

ルシファーさんは何やら小瓶に入った薬を差し出してきた。

ルシファー 「それは…エリクサーです、疲れたでしょう? 魔王のとの戦いに万全の状態で挑みたいでしょう?」

レオン 「…いいんですか?」

ルシファー 「ええ、あなたが使ってください」

レオン 「…ありがとうございます、ルシファーさん」

俺は小瓶の蓋を開け、その中のクスリをグイッと飲んだ。
ちょっと苦いが…すぐにその効果が分かった。

レオン 「…おし!」

俺は体力が完全に回復したことがわかった。
後は…魔王だけだ…!










タッタッタッタッタ…!










俺は…駆けた。










魔王城に永遠と続くかと思える通路…。










その先に…魔王が待ち構えているかと思うと…。










リアウの森で感じた恐怖感とは別に…。










信じられない高揚感があった…。










胸が高鳴る…。










遂に…勇者としての…ラストバトルが…始まる。










最終話 『勇者と魔王』




ガタァァァァァァァンッ!!

レオン 「魔王ッ!!」

サタン 「よく来たな…勇者よ…しかし、貴様の命運もここまでだ!」

俺は勢いよく扉を開き、謁見の間へと突入する。
中には赤い絨毯が敷かれ、その先に3段ほど段差があり、玉座がある。
そして、魔王が玉座に座らず、ただ段差の上で立ちふさがっていた。
距離にして10メートル、しかし両者ここから戦いを仕掛ける気はないようだ。
少なくとも…俺は。

レオン 「俺は…強くなった、勇者として決して諦めず…戦った!」
レオン 「アンタに…勝つために!」

俺はゼウスをサタンに突き出す。
魔王は俺とそう歳の変わらなさそうな若い魔王だった。
もっとも、魔族なのだから俺と同じ感覚では計れないのだろうが…。
金色の髪をセミロングで肩に当たる位まで伸ばし、目つきは鋭い…いわゆる一般的な魔族。



サタン 「勇者…俺は…運命に抗う…お前に勝って俺は勇魔大戦を終わらせる…!」

俺は段差を一段一段ゆっくりと降り、勇者を睨み付ける。
勇者は俺から目線を落とさず、ずっと剣を突き出し続けた。
勇者は俺とあまり年齢が変わりそうにない。
人間だから俺に比べたら大して生きてはいないだろうが、18歳くらいだろうな。
やや、優しそうな黒い瞳をし、凛とした顔立ちに、やや整えの悪い、セミロングの黒い髪の毛。
同じ高さに立つと、身長は俺の方が若干高いことが分かる。
俺が174センチに大して、勇者は166センチくらいだろう…。

サタン 「勇者…名は?」



レオン 「…レオン!」

俺は越えたからかにそう叫ぶ。
それを聞いて魔王は…。

サタン 「そうか…俺はサタン、行くぞレオン!」

レオン 「おおっ!!」

俺達の全力の一撃が謁見の間の中央でぶつかりあい、火花が飛び散る。
互いの一撃で距離が離れた。

サタン 「やるな! 俺と打ち合いで互角か!」
サタン 「だが! 伊達に魔王ではないということを教えてやる!」

サタンはその手に持たれた禍々しい剣を上にかざす。

サタン 「これが魔王の神器! 包め! ディアボロス!」

レオン (!? あれがディアボロス!?)

ディアボロスが黒い光を放つと、突然体が重くなる。
これが…ディアボロスの力!?
ゼウスが重くなった…というより俺の力がなくなったのか!?

レオン 「なるほど! たしかにこれじゃゼウス無しでは勝ち目がないかっ!」

だが、俺にはそのゼウスがある!

レオン 「帰せ! ゼウス!」

カァァァァァ!!

俺のゼウスから光が放たれる。
すると、急に力が戻った…なるほど…これは便利だ。

サタン 「…報告には聞いていたが…本当だったな…ならば! 神器など必要ない!」
サタン 「俺の力が上か!? それとも下か! 実力勝負だ!!」

サタンはそう言うと再び剣を構え、切りかかってくる。
俺も剣を構える。

キィィン! カァン!! キキィィン!

サタンの剣を俺は弾き、また攻撃も仕掛ける。
パワーも、スピードもすごい…!

レオン 「だけど…俺は負けない!」

サタン 「勝つのは俺だぁっ!!」

ガッキィィィン!!

俺もサタンも力の調整なんて考えていない。
互い、力の限り剣をぶつけて、後ろに吹っ飛ぶ。

サタン 「く…やるな!」

レオン 「そっちこそ…!」

互い、退くことを知らない。
まるでこりゃ…子供の喧嘩だな…。
絶対に退かない…高度な戦略もない…やった方が勝ちか…。
最後には相応しくない力任せの戦いだな…。

サタン 「てぇい!」

レオン 「! はぁ…なっ!?」

サタンは俺に剣をかざして、切りかかってくる。
俺は一歩前に出て受けて立とうとするが、足が動かなかった。

サタン 「ふん!」

ガッキィィン!

レオン 「うおおおおっ!?」

俺はなんとかサタンの攻撃を受け止めるが、一方的な一撃に吹き飛ばされた。

レオン (馬鹿な…なんで足が…!? これは…!)

俺は足元を見て、驚愕する。

小さなモンスター 「キキキッ!」

バシュウッ!

小さな黒いモンスターが俺の脚を掴んでいた。
モンスターはすぐに消えてなくなったが…。

サタン 「ふ…、気付かなかったのか? おめでたいな…この魔王ただ切りあっているだけだと思ったか?」

レオン 「…さっきのはなんだ?」

サタン 「切りあいながら、召喚陣を描いたのさ、簡単な…グレムリンのな…」

レオン (なるほど…グレムリンが俺の足を掴んで離さなかったわけか)

ちょっと迂闊すぎたな…。
やっぱ魔王だわ…。
まさか、あんな切り合いの中で召喚魔法までするなんて…。

サタン 「はぁ! ダークブリッド!」

レオン 「! てぇい!」

俺はゼウスでダークブリットを弾く。
ダークブリッドは3発の礫となって俺に襲い掛かる。
俺は的確にそれを打ち落とした。
そしてそのまま。

レオン 「光の理よ、闇を貫く閃光となれ! ライトアロー!」

俺はライトアローを放つ。
6本の光の矢はランダムに軌道を描き、魔王に襲い掛かる。
こいつを打ち落とすのは難しいぞ!?

レオン 「ついでだ! 持っていけ! 閃きたる光よ、破壊の力となりて彼の者を爆ろ! シャイニングボム!」

サタン 「!?」

カッ! ドォォォン!

シャイニングボムがサタンを捕らえると同時に、ライトアローがサタンを襲う。

レオン 「どうだっ!?」

サタン 「コンボとしてはいいが…」

レオン 「!? 後ろ!?」

カキィィン!

俺はいきなり後ろにいたサタンに振り返り、剣を振る。
サタンはそれを受け止め、鍔迫り合いになった。

レオン 「直撃だったはずだぞ!?」

サタン 「ああ、ただし俺の分身にな…」

レオン 「! ちぃ! てぇやあっ!」

俺は力で強引にサタンを押し切る。
こいつ…まじで強ぇ…!

サタン 「ライトニングボルト!」

バッチィィン!

レオン 「!? ぐあああっ!?」

突然、体に電撃が走る。
効いたな…こりゃ。

サタン 「その程度か勇者? なんのためにここまで来た? 俺に勝つんじゃないのか…?」

レオン 「く…超余裕だな…ああ、勝つさ!」
レオン (とは言いつつも…現実問題どうする!? やっぱ向こうが一枚上手かよ!?)

俺は距離をとりながら、勝つ方法を考える。
剣は…たぶん互角…ちょい俺有利と思いたいけど怪しい。
魔法合戦は…バリエーションで完璧に負けとるな…。
その他技能…完璧に俺負けてるじゃん。

レオン (やっべぇ…完璧に準備不足じゃねぇか…どうするよマジで!?)

素晴らしく詰まった。
こうなったら…。

レオン 「……」

俺は剣を構え、ただ目を瞑った。
俺は殺気だけを感じ取ることにする。
初めてやるから失敗する確率の方がどう考えても高い…だが、まともに戦っていたらサタンには通用しない。
召喚魔法は使うわ、イリュージョンで惑わすわ、正攻法じゃ全く対応できない。

サタン 「なんのつもりだ? まさか、諦めたわけではあるまい?」

レオン (音を聞くな、温度を感じるな、感覚を忘れろ…心を無にしろ…)

俺はだんだん、意識を無へと近づける。
不思議と…音がなくなり、そして意識も…なくなっていった。



サタン 「…殺気もなにも、完全になくなった…?」

レオンがまるでただの置物のようになった。
どういうことだ…これは?

サタン (嫌な汗が流れる…な)

今、勇者たまらなく恐ろしい。
まるでなにも感じないからだ…。

サタン 「試してみるか…てぇい!」

レオン 「……!」

ガキィン!

サタン (なに!? 受け止めた!?)

俺の斬撃はレオンに簡単に止められてしまう。
馬鹿な!? 見えているのか!?

サタン (違う! こいつ…気配を感じているのでも…殺気を感じているのでも違う…!)



レオン (受け止めた…?)

俺は全てを常闇に沈めていた。
その中で、かすかにサタンの斬撃を受け止めたような気がした。
実際には分からない…あまりにまどろみが強く、曖昧だ。
ただ、意識を集中すると…だんだんと、光を感じた。
ちかくに大きくも、暖かい光を感じる…魔王だ。
そして、遠くにちらほら小さな光を感じた。
この光が何かはわからない。
だけど、色々な光を感じて取れた。

サタン (てぇい!)

ポトン…。

レオン 「! 見えた! そこ!」

ガキィ!

ふと…一滴、水滴が落ちる感覚を感じ取る。
俺は目を見開き、相手を目視せず剣を構えた。
すると待ち構えた位置にサタンの剣がやってくる。

サタン 「!? 貴様…何者だ…!?」

サタンは俺から離れるとそんなことを言い出した。

レオン 「俺はレオン、トートス村のただの勇者だ!」

今、聞こうと思えばサタンの鼓動さえ聞こえる気がした。
そうか…わかった。

レオン (俺は…人の心を感じたんだ…)

昔から俺は人の気配を感じ取るのが上手かった。
でも、俺が感じていたのは気配じゃないんだ…心だったんだ。
このサタンの光は綺麗だ、だけど猛々しくすこし痛々しい。
でも、真っ白で…邪心のない綺麗な光だ。

サタン 「ちぃぃ! 俺はぁぁぁ! 勝って勇魔大戦の歴史を変えるんだぁ!!」

レオン 「ハァァァッ!!」

ガキィィン!! キィィン!

俺はサタンの攻撃を的確に捌く。
サタンの動きが手に取る…というわけにはいかないが、判る気がした。
サタンは焦っている…俺は…逆にとても落ち着いていた。
ただ、サタンを倒すという闘争心のみを残して…!

サタン 「くっ!」

サタンが魔力を集中し始める。
俺は下に剣を突き刺す。

ドスッ!

サタン 「!?」

レオン 「魔力集中はフェイントだな!? 本命は召喚魔法!」

俺は召喚陣には致命的な切り傷をつけてやった。
これで、召喚はできない!

レオン 「てぇい!!」

ガッキィィン!!

サタン 「ぐあっ!?」

俺は無防備なサタンに下から切りかかった。
サタンはそれを剣の腹で受け止めるが、体勢が悪く、吹き飛んだ。

サタン 「…く、なるほど…お前に小細工が通用しないことはわかった」

サタンは俺達の剣の届かない、4メートルほど離れた位置で剣を左自然体で構える。

サタン 「貴様に驚かされる…これが勇者の力なのだなと…だが、俺も魔王だ! 魔王としての意地はある!」

サタンの剣から闇の波動がとても強く感じ取れた。
俺とは真逆の力だ。
俺は体全体から、光の力を感じとった。

サタン 「! 貴様の体から光が見える…実体化するほど強力な光のマナか…」

レオン 「サタンの体からは闇のマナが実体化しているぞ…」

マナはあまりに高密度に集まると、実体化し、目視することが可能になる。
俺達の技はそれらを極端に上げるようだな…。

レオン 「どうやら…互い次が最後かな…?」

サタン 「ふ…そうだな、俺がこれから出す技は…俺の最大の必殺技だ」

サタンの黒いマナが剣に集まる。
俺の白いマナも剣へと集まっていた。

レオン 「俺が使う技は初めてだ…ただ、失敗する気はしない、心がこいつの使い方を教えてくれる」

キィィィィィィン!

互いの力がぶつかり合い、共鳴現象を起こしていた。
だが、その力も更に圧縮され、遂に剣に纏わりつく程度にまで圧縮された。

レオン 「……」

サタン 「……」

静かだった…だけど、互いの闘争心だけが見える。
時が止まっているようにも感じる…だけど…。

サタン 「いくぞぉぉぉっ!!」

レオン 「うおおおおっ!!」

互いに走り出す。
距離を詰め、両者の技が炸裂する。

サタン 「受けろ! 我が奥義! ダークブレイク!」

サタンの剣が常闇に染まった時、サタンの技が放たれる。

レオン 「この一撃で決める!! シャイングストラッシュ!!」

真っ白に輝くゼウス…俺は力の凝縮したゼウスを振り切る。

ガッキィィィン! ドオオオオオッ!!

ゼウスとディアボロスがぶつかると、圧縮されていたマナが大量放出される。

ガガガガガガガガガッ!

俺の力とサタンの力がぶつかり続ける。
力を抜けば、一瞬で持っていかれるだろう…。

サタン 「く…うううぅ…! 負けるもの…かぁぁぁ!」

レオン 「…! くぅ…!」

サタン 「俺は…負けるわけには…いかないんだぁぁぁ!!」

サタンに押される。
まずい…サタンの気迫に押される。

レオン 「サタン…負けられないのは…俺も…同じだぁぁぁぁぁ!!」

サタン 「な…なにぃ!?」

俺はサタンの力を飲み込む、決して交わらない白と黒。
俺は黒を白で飲み込み、最後の一撃を叩き込む。

ズカァァァン!! ドコォォォォ!!

サタン 「ぐふ…!? 馬鹿…な…」

ズサァ!

俺はサタンを吹き飛ばす。
俺はサタンを壁に叩きつけた。
サタンは壁にもたれながら、地に倒れた。

レオン 「はぁ…はぁ…!」

俺はゼウスを握り締めるが、体が非常に重く、ゼウスを地面につける。

サタン 「く…勇…者…レオン…く!」

レオン 「はぁ…はぁ…魔王…サタン!」

俺はゼウスを持ち上げ、サタンに近づく。

ドタドタドタドタ…! バタァァン!

エド 「だ、大丈夫かレオン!?」
シーザー 「サタン様っ!?」
スケルトン 「自分、馬鹿ダカラワリマセ〜ン」

アルル 「レオン!?」
アンダイン 「サタン!」
ルーヴィス 「生きているか、サタン!?」

シーラ 「レオンさん!?」
ヴァルキリー 「サタンちゃん!?」

ルシファー 「サタン! レオン君!」

サタン 「お前たち…?」

レオン 「皆…?」

突然、一斉に外で戦っていたはずの皆が入ってくる。
エドはシーザーさんと肩を組んで、スケルトンに押されて中へと入ってくる。
また、アルルもアンダインさんやルーヴィスさん共に。
そして一番後ろからシーラさんがヴァルキリー様に肩を貸して入ってきた。

ティナ 「お兄ちゃん…」
ペティ 「ま…魔王さまぁ〜…」

謁見の間の裏から、二人の女性が現われる。
片方は知っている子だ。

サタン 「お前ら…なんでここに…!?」

セリア 「……」

サタン 「セリア…」

レオン 「セリア王女…」

二人の後ろからセリア王女がそっと入ってきた。

セリア 「無様ですわね…魔王」

サタン 「! セリア…」

セリア 「勇者レオン、この私のために数々の苦難があったでしょう…」
セリア 「このセリア・ロゥ・サーディアス、王国を代表して感謝の意を述べます」

レオン 「…いえ、これが私の勤めでございます…」

俺は片膝を突いて敬意を表す。

セリア 「それでは、サーディアス王国第一王女として、勇者に命令します、魔王に最後の一撃を…」

レオン 「…! 王女様がそう申すならば…」

サタン 「…!」

俺はゼウスを構える。
そのまま動けないサタンに近づき。

セリア 「……」

レオン 「はぁぁっ!」

ブォン!!

俺はサタンの眼前を切り裂く。
我ながら素晴らしい技術だ、振った距離は1ミリ程度だろう。

レオン 「『魔王』は斬りました、『サタン』という青年は別にいいですよね?」

セリア 「ええ、上出来です、感謝いたしますわ」

レオン 「ふふ…王女様の気持ちは理解しているつもりですよ…」

サタン 「どういうことだ…セリア! レオン!」

レオン 「セリア王女、我々は席を外しましょうか?」

セリア 「ご自由に」

レオン 「ふ、エド、アルル、シーラさん! ちょっと部屋を出るぞ!」

シーザー 「…すいませんが、私も一緒でよろしいですか?」

エド 「オッケー、任せてくれ」

アンダイン 「私たちもお邪魔虫ね、行くわよルーヴィス」

ルーヴィス 「ああ…」

アルル 「えっと、ご自由に〜♪」

シーラ 「ヴァルキリー様もここは」

ヴァルキリー 「わかっているわ…」

ティナ 「ペティさん、私も出ましょう」

ペティ 「は、はい…」

ティナ 「お兄ちゃん…もう、終わりだよ…戦わなくていいんだよ…?」

サタン 「……」



…パタン!

レオンたち皆がこの謁見の間から出て行く。
そして、中に残ったのは俺とセリアだけだ。

サタン 「…セリア」

セリア 「…馬鹿」

サタン 「な…!? この魔王を愚弄する…!?」

ドサァ!!

セリアが俺の胸に飛び込んでくる。
そのままその小さな手で俺の体を叩き。

セリア 「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ! サーちゃんの馬鹿ぁ…!」

サタン 「セリア…」

セリア 「こんなに…こんなにボロボロになってまで…完全に馬鹿じゃない…」

サタン 「すまない…セリア」

セリア 「馬鹿…あなたが死んだら、また私…デートで待ちぼうけしちゃうじゃない…」

セリアは顔を上げると…大粒の涙を流していた。
だけど、少しホッとしたように顔に笑みを浮かべていた。

サタン 「…そう…だな…それは、男として格好悪いな…」

セリア 「サタン…んんっ!」

サタン 「ん…!」

俺はセリアとキスをした。
たった一時だけの、今は短いキス…。



…………。



ガチャリ。

レオン 「…! セリア王女」

扉を開き、謁見の間から出てきたのはセリア王女だった。

セリア 「帰りましょう、南側へと、勇魔大戦は…終わりました!」

エド 「おっし…!」
アルル 「ふぇえぇ…やっと終わったねぇ〜…」

シーラ 「サタンさんは…?」

セリア 「そこで、倒れてしますよ、誰か看護を」

ティナ 「あ、あたしが!」

ヴァルキリー 「立場上行きましょうかね?」

ルシファー 「回復魔法は任せて」

3人が謁見の間へと入っていく。

レオン 「さぁ、帰ろうか?」

エド 「ああ…!」

アルル 「うん!」

シーラ 「はい」

俺は皆と一緒に魔王城の外へとでる。










ついに…終わった











俺達はセリア王女と共に帰路へとついた











アルルの軽い冗談











シーラさんの出してくれるお茶











エドの苦笑い











全てが、今は楽しい











そして…











『3月6日 時刻13:15 南側:サーディアス王国 首都 サーディアス』


男 「セリア王女様が帰ってきたぞーっ!」

女 「ついに勇魔大戦が終わったのねーっ!?」



サーディアス王 「おおっ! セリアよ! よくぞ帰ってきた!」

セリア 「ええ、ただいま帰還いたしましたわ」

サーディアス王 「して、勇者一行は?」

セリア 「…さぁ、日向ぼっこでもしながら、お茶でも啜っているのではないでしょうか?」

サーディアス王 「…はぁ?」

私は実に1年ぶりにサーディアス王国へと帰ってきた。
長かったわね…本当に。

セリア (ご苦労様です、勇者一行)



…………。



『同日 同時刻 南側:とある丘』


アルル 「う〜ん、風が気持ちいいねぇ〜♪」

シーラ 「今日はご馳走です♪」

エド 「おっ、美味そうだな!」

シーラ 「はい、レオンさん、お茶をどうぞ♪」

レオン 「あ、ありがと、シーラさん」

アルル 「うう〜む、アルルはまだ負けを認めたわけじゃないんだから」

エド 「あ〜あ、やめようぜそういうの、一人身にはマジデきついから」

そう言って、エドがそっち系の話を切る。
俺達は戦争終結のこの日、旅の中約束したとおり、4人一緒に外でブルーシートを敷き、お弁当を食べていた。










3月6日 時刻12:52 勇魔大戦…終結











? 「以上が、私が見た勇魔大戦の概要です」
? 「はい、魔王も生存しています」
? 「いえ、私はあくまで信じる神のために生きます」
? 「勇者? 関係ございません」
? 「全ては、『ゾディ・アック』のために」









第1部 勇魔大戦編 完



後書き


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