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OPERATION 13 『セシル クレイドル』




『ハッテン国境付近上空:戦艦フリーダム艦内』


ガルム 「……」

クレス 「…しばらくは故国を離れることになる…やはり名残惜しいですか?」

俺は通路の窓から外をぼんやり眺めるガルムさんに声をかける。
ガルムさんは俺に気付きゆっくり振り向くと口を開いた。

ガルム 「…ええ、そうですね、今まで故国ハッテンを離れたことは一度たりともありませんでしたから…」

ガルムさんはそうやや寂しそうに言った。
思えばこのハッテンでの戦いの年月はまるで一生のように長く感じた…。
もし、俺はサナリィに移らなかったらまだこの国にいたのだろうか?
いや、もしものことを考えるなどらしくないな…。

マリア 「な〜にやってんのクレス〜?」

デルタ 「…大佐?」

クレス 「……」

突然後ろからマリアとデルタが現れた。
ここはハンガーに向かう通路なのに何故ふたりが?

ガルム 「マリア中尉殿ですか…」

マリア 「あ、別に階級なんて気にしなくていいのよ?」
マリア 「大体、ガルムさんの方が階級上だし」

確かにガルムさんは中佐だからな。
俺とデルタは階級なんて今は存在しないようなものだからな。

クレス 「それより、ふたりとも一体こんな所でどうしたんだ?」

とりあえず俺は最初に思った疑問をぶつける。
それを聞くと意外にマリアではなくデルタが口を開く。

デルタ 「…整備室に用があるんです」

クレス 「整備室に…?」

マリア 「ちなみに私じゃなくてデルタがね、私は単なる付き添い」

そこへマリアが補足する。
デルタが向かう理由…?

クレス 「ああ…、バスターランチャーの件か」

デルタ 「はい…」

俺はすぐにデルタの関連を考えて答えを出す。
デルタのホワイトウインドはバスターランチャーという専用武器がある。
ガルガンチュア戦試作段階のそれを使ったのだが、どうも調子が悪くしばらく整備していたのだ。
そろそろ、完成といった所か。

クレス 「そう言えばマリア…」

マリア 「ん? なに?」

クレス 「次の目的地はどこなんだ?」

俺はこれからの作戦について尋ねてみる。
マリアは一応副艦長なのだから聞いているだろう。

マリア 「とりあえず、補給もかねてアメリカに向かうことになったわ」

クレス 「補給でアメリカ?」

アメリカはあまりサナリィの勢力下ではなかったはずだ。
北アメリカ大陸を担当する統治者『セシル クレイドル』。
やつはエグザイル一の切れ者だ。
ゆえに、もっとも統治力が強く出ている。
その上でなぜアメリカなのだ?

マリア 「ふっふ〜、実はアメリカには私たちサナリィがエグザイルに対抗できるすっごいスポンサーがいるのよ♪」

ガルム 「そうなのですか?」

デルタ 「? そんな情報聞いた事がない…」

クレス 「諜報武官である俺でも聞いたことがないぞ?」

マリア 「ふふ、そりゃ秘密の助っ人だからね、その人のお陰でこうやって戦えるのよ?」

それ程の人物がアメリカにいたとは。
元々セシルのやつ秘密症だったからな…情報が回ってこなかっただけだろうか…?

クレス 「一体何者なんだ? それ程の人物とは?」

どうにも気になる。
それ程の財力だ、通常なら相当の有名人のはずだ。

マリア 「セシル クレイドル…軍需産業を主とする財閥の総帥よ」

クレス 「何だと!?」

俺はマリアの言った言葉に耳を疑う。

デルタ 「大佐…?」

ガルム 「いきなりどうしたんですか?」

クレス 「…いや」

マリア 「ふっふ〜、さすがに驚いたようね、世界一の金持ちがスポンサーだものね」

…ここにいる全員、元エグザイルであるデルタでさえ、セシルの正体を知らない。
元々、俺が単なる一兵士であるように統治者はエグザイルの構成員にさえほとんど正体を明かさない。
事実デルタはつい最近まで俺が統治者ということは知らなかったからな。

クレス (…しかし、もしそれが本当ならばセシルの行動は明らかに裏切り行為…!)

一体どういう腹なのか?
あいつの考えはさっぱりわからん。
エグザイルにおいて統治者という立場におりながらサナリィのスポンサーをするとは…。
奴は何を考えているんだ?

マリア 「さってと〜、それじゃ、デルタももう行きましょうか〜?」

デルタ 「…ん」

デルタは小さく頷いてマリアと共にハンガーの方に向かう。
その場には俺とガルムさんだけになった。

ガルム 「私も、そろそろ戻ります…」

クレス 「ええ」

ガルムさんもそういってその場を後にした。
残ったのは俺だけか…。

クレス 「一度…マリーナに相談してみるか」

俺はそう思うと行動を開始する。
とりあえず、独房に行くか。



………。



クレス 「マリーナ…入るぞ?」

マリーナ 「どうぞ、アルベルトさん」

俺はマリーナの居る一番奥の独房の前に立つとドアをノックしてそう言う。
するとマリーナからいつもどおりのやんわりとした返事が返ってきた。
俺はそれを聞くとドアを開けて中に入る。


マリーナ 「本日はどういったご用件で?」

マリーナはまるで何かの何かの業者のようなことを言う。
相変わらずかしこまったやつだな…。

クレス 「セシルについてだ…」

セシルの名を聞くとさすがにマリーナも顔色を変える。
さすがに知っている人物だからな。

マリーナ 「次は、セシルさんとの戦いですか…?」

クレス 「…それが、まったくわからなくなった」

それを聞くとマリーナはさすがに顔に?を浮かべていた。
当然だろうな…俺自身も半信半疑状態だ。
一体どうなるのか?
とりあえず状況をマリーナには教えておく。

クレス 「今、アメリカに向かっている、当然セシルのいるニューヨークだ」

マリーナ 「……」

クレス 「驚くかも知れないが、セシルのところでこの艦は補給を受ける」

マリーナ 「! それは…」

さすがにマリーナも驚いたようだ。
あまり表情に変化がないのだが、細い目を更に細めて驚いた。

マリーナ 「状況が理解できません…それではこの艦は鳥籠に戻るようなものです…」

当然、俺もそう考えている。
だが、鳥籠というのは案外的を射ている物だな。
文字通り俺達は籠の鳥…罠にかかる鳥であり、家へと戻る鳥でもある…。
サナリィのスポンサーでありながらエグザイル統治者の一人…セシル クレイドル…。
奴は敵か…それとも味方か?

クレス 「セシルの財閥はサナリィのスポンサーだ、つまり後ろ盾というわけだ」

マリーナ 「……」

マリーナは考える仕草をして俯く。
俺は構わず言葉を続ける。

クレス 「…しかし、当然ながらエグザイルの統治者でもある」
クレス 「奴が敵なのか…味方なのか…? マリーナの意見を聞きたい」

セシルの二面性を知っているのは現状俺とマリーナだけだ。
つまり、相談できるのもマリーナしかいない。
マリーナならどうする?

マリーナ 「様子を見る…等と悠長なことは言っていられませんよね…」

クレス 「…ああ」

俺が既に裏切っているのは統治者全員が知っているはずだ。
そして、本気と言うこともマリーナ、アストラを撃破したことでわかっているはず。
もし、敵ならばこの艦は大西洋上でセシルの艦隊に容赦のない迎撃を喰らうだろう。
セシルという人物は良く知っている。
まともに奴とぶつかってはこの艦一隻では何も出来ないだろう。
しかし、やつはスポンサーだ。
大事なこの艦をそう易々攻撃できるか?

はっきりしない部分が多すぎて作戦を組めない…。

マリーナ 「その、スポンサーというのがどうにも引っかかります…どう対処するべきか…」

クレス 「…結局同じということか」

マリーナも同じようなことを言う。
結局答えを出すことは出来ないのか…。

クレス 「ありがとう…マリーナ、とりあえず参考になった」

マリーナ 「……」

俺はそう言って席を立つ。
マリーナは珍しく何も言わない。
俺は気にせずそのまま独房を出るのだった。
結局はその時を待つしかないのか…。
俺にはカードがなさすぎる…。




……………。




あれから数時間が過ぎた。
もう、大西洋にでている。
いまだ特に動きはない。
敵軍と接触する様子も特にないしな…。


『クレスさん、至急ブリッジまで来てください。繰り返します…』


クレス 「……」

カルタの艦内放送だ。
俺は静かに立ち上がると、自分の部屋を出てブリッジに向かう。
ブリッジは部屋を出て左へ直進した所だ。
正確には直進してドアを潜るとブリッジの一階に出る。
恐らくグレッグ辺りが呼んでいるのだろう。
艦長席は二階にあるからブリッジに入ったら階段を使わないといけない。

クレス 「それにしても一体なんだろうか…?」

多少呼ばれた理由が気になる。
しかし、わかるわけもないのでそのまま向かった。



………。



グレッグ 「おお、来たかクレス」

クレス 「一体なんだ、グレッグ?」

グレッグ 「先ほどセシルさんより通信があってな…クレスを先行で送ってくれと通信があった」

クレス 「!」

どうやらセシルは俺を呼んでいるらしかった。
…俺だけは手際よく排除するつもりか…?

グレッグ 「一応ガンズに準備はさせた…どうする?」

グレッグはそう聞いてくる。
当然、行くか行かないかということだ。

クレス 「…わかった、すぐに向かう」

グレッグ 「わかった、ほぼ大丈夫と思うが一応気をつけてな」

クレス 「ああ…」

ほぼ大丈夫か…。
一体どういうつもりなのか…?
明らかに罠な気もするが、こちらに手はない。
イニシアチブは確実にセシルに取られている。
ならば俺はセシルの手に乗ってやる…それで、セシルへの対処が決定する。

クレス 「ふ…まさに籠の鳥…」

グレッグ 「? 何か言ったか?」

クレス 「いや…」

俺はそう言うとブリッジを出て格納庫に向かう。
一応その道中は少し早歩きだった。



………。



ガンズ 「ナイトメアの用意なら出来てる、いつでも出撃できるぜ」

クレス 「すまないな、ガンズ」

見るとナイトメアは既にカタパルトに乗せてあり、肩から後ろに熱核ギガブースターも装備されていた。
後は乗るだけということか。

俺はナイトメアの起動キーを確認すると、そのままナイトメアに乗り込んだ。

クレス 「システムオールグリーン、いけるな…」
クレス 「クレス…ナイトメアで出るぞ!」

俺はハッチを開いてもらい、カタパルトに乗ってそのまま出撃する。

クレス 「熱核ギガブースター、ON」

ナイトメアの最大加速に入るとすぐに熱核ギガブースターは始動する。
少々衝撃も強いが問題はない。
しかし、すぐに統治者専用の回線が開かれる。
言わずと知れたセシルだ…。

セシル 『久し振りだな…アルベルト…いや、クレス』

クレス 「…やはりお前か、セシル!」

モニターに表示されたのは間違いなくセシル クレイドル本人だった。
見間違えることはない。
髪は緑色に染めてあり、肌は白人らしく白い。
歳は若く、まだ20前後だったはずだ。
服はベージュ色のスーツだった。
サナリィの正式軍服と同じカラーとは何かのあてつけか?
目は青く、顔は細い。
どう見ても理系といった感じの容貌だ。
実際本人はあまり武人系ではない。
目はやや釣り目で何を考えているかわからないクールな目だ。

セシル 『随分と険しい顔をするな…クレス、味方だろ?』

クレス 「…どうだかな」

セシル 『やれやれ…まるで信用なしか、まぁいい、通信機越しに会話というのも無粋というものだ』
セシル 『正面に我が部隊の航空師団の編隊が見えているはずだ、丁度通路となるように航行させてある…その通路を通って基地に着陸しろ』

確かに正面には戦闘機の編隊が見えた。
数からすると300以上は確実か。
豪勢なものだな…しかし。

クレス 「後ろから撃たれるかもしれない道を通れと?」

セシル 『冗談はよせ、わかっているんだろう? 選択肢がないことくらい』

クレス 「…ち、了解だ」

くやしいが奴の言うとおりだ。
今は従うしかない。
まぁ、奴もさすがに手荒な真似はしないだろう…。
グレッグが見ているからな…。



………。



クレス 「……」

俺はニューヨークにあるセシルの軍事基地にナイトメアを着陸させる。
ここにいる兵士全てがエグザイル兵だ。
さすがに気が気じゃない…。

セシル 「ようこそ、ニューヨークへ、クレス」

ナイトメアを降りるとセシルが出迎えてくれる。
後ろにはサングラスをかけ、黒のスーツを来た女性が立っていた。
恐らく護衛のようなもだろう…。
しかし、セシル自らわざわざ来るとはな…。

クレス 「単刀直入に聞く…どういう腹だ?」

セシル 「…言っていることがわからないのだが?」

セシルはとぼけた顔で(本当にわからないのか?)そう言う。

クレス 「…質問を変えよう、何が目的だ?」

セシルは答えないことは絶対に答えない。
無駄な物は無駄ということだ。
こういうのはきっぱり話題を変えた方がいい。

セシル 「目的…聞いてどうするつもりだ?」

クレス 「貴様の立場は対極だ、場合によってはこの場で決着をつけさせてもらう」

セシル 「…ふぅ、いつからそんなに血気盛んになったのやら」
セシル 「いいか? 俺にはサナリィもエグザイルも関係ない」

クレス 「なんだと?」

セシルはマイペースに多少回りくどく喋りだす。
絶対に自分のペースは崩さない奴だからな。

セシル 「まぁ、知っているとは思うが我が財閥は軍需産業で収入の大半を得ている」
セシル 「つまり、俺は軍需商人というわけだ」
セシル 「ここまで言えば大体わかるよな…? 俺の意図していることが」

クレス 「…金か」

セシル 「いやらしく言うな、クレス。買ってくれるものに売るのは当然だ」
セシル 「まぁ、戦争が続けばそれだけ軍需が伸びるのは確かだがね」
セシル 「たとえ、多少の支出を被ってもね…」

クレス 「く…」

支出…つまり、サナリィだ。
サナリィはエグザイルに対抗できる。
サナリィには安く物を売って、エグザイルに苦戦する程度に戦力を調整する。
当然エグザイルやほかの国々には通常の値段で売る。
これで差分をとって儲けているんだ。
裏返せばその行為は悪戯に戦況を長引かせているということだ。
しかし、その反面そのお陰でここまでこれたというのも事実…。
俺には…何も出来ん。

セシル 「わかるだろ…クレス、どんなに優れた者でもその体ひとつで戦局をかえる事は不可能」
セシル 「いつだって勝利するには三つの要因で動いている」
セシル 「千歳一隅のチャンス…優れた指導者と秀でた駒達…そして、金だ」
セシル 「俺にはこれら全てが揃っている…」

クレス 「……」

セシル 「サナリィと出会えた…すなわちチャンス」
セシル 「そして、俺や君、グレッグといった優れた指導者とサナリィという駒」
セシル 「そして、俺の財閥の財力だ」
セシル 「貴様にはふたつしかない、この金の力がない…」
セシル 「おしいな…それ程の力がありながら…ま、所詮は駒になるしかないということだな」

クレス 「残念ながらそういうことのようだな…」

セシル 「物わかりが良くてありがたい、君は金の力には勝てないんだよ」
セシル 「そして、金こそが歴史を動かしてきたのだよ」
セシル 「ま、かつては兵糧とも言ったがね」

クレス 「最後にひとつ聞く…敵か? それとも味方なのか?」

セシル 「とりあえず、味方さ…『今は』、な」

部下 「セシル様、戦艦フリーダムが先ほど到着しました」

突然、後ろに立っていた黒服の女性はそうセシルに報告をする。

セシル 「そうか、聞いての通りだ、俺は一旦屋敷に戻る」
セシル 「ナイトメアは我が軍の整備兵にメンテさせよう」

クレス 「ナイトメアには触れさせん…そこは譲れんぞ」

セシル 「…わかった、好きにするといい」
セシル 「だが、ナイトメアはとりあえず工場に運んでおいてくれ、部下が案内してくれるだろう、後はあの屋敷に来てくれたらいい」
セシル 「では、さらばだ、また会おう」

クレス 「……」

セシルはそう言って遠くに見える屋敷に向かう。
3kmは離れている、歩くには少し遠い、恐らく車か何かは用意しているのだろうが。

部下 「こちらです、あのドックにナイトメアを移動させてください」

クレス 「…了解だ、後はもういい…セシルの元に帰ってくれ」

俺は指定された建物を確認するとそう言ってナイトメアに向かう。

部下 「……」



…………。



『同日:某時刻 セシルの屋敷』


セシル 「よく来てくれたグレッグ」

グレッグ 「はっ、ありがとうございます」

マリア 「いやぁ〜、それにしても相変わらず豪邸ですね〜」

セシル 「そうかな? たいして金をかけたつもりはないのだが?」

クレス 「……」

あれからしばらくして、サナリィの重要メンバーはセシルの屋敷に来ていた。
何故か、俺もいる。

セシル 「さて、来てもらってからこういうこと言うのは失礼と思うのだが、エグザイルの統治者…えと、マリーナだっけ?」
セシル 「その、捕虜のマリーナってのをちょっと連れてきてくれないかな?」

グレッグ 「今からですか?」

セシル 「ああ、頼む」

クレス 「…俺が連れてくる」

俺はそう言う。
セシルの奴、わざと今言ったに違いない。
そういう奴だ…。

マリア 「じゃ、よろしくね〜」

クレス 「……」

俺はそのまま、屋敷を出て艦に戻る。
またあの離れた基地に向かわないといけないのか…。

部下 「車で運びましょう…」

クレス 「…あんたは」

ずっとセシルの後ろにいた黒服の女性だ。
結局こっちに来る時、ずっと残っていてくれた。
案外アフターケアの効いた人だ。
ちなみに名前は『メシア シャルル』というらしい。
この7月に中旬に黒いスーツというのはかなりの根性の持ち主かもな…。

クレス 「よろしく頼む」

メシア 「はい」

俺はその好意は素直に受けておく。
正直歩いて行く気にはなれないな。
本音は車を貸してくれるだけでよかったのだが…。




…………。




マリーナ 「…一体どうしたんですか?」

俺が独房に入るとマリーナは不思議そうな顔をしていた。
本日2回目だからな…。

クレス 「もう、独房に居る必要はなさそうだぞ、出るんだ」

マリーナ 「?」

マリーナは更に不思議そうな顔をしたがとりあえず立ち上がった。

マリーナ 「アルベルトさん、これからどうなるんですか?」

クレス 「さぁな、それよりマリーナ」
クレス 「俺はもう、アルベルトという名前は捨てたつもりだ、今の俺はクレス…それを覚えておいてくれ」

マリーナ 「…ふふ、わかりました。それでは行きましょうかクレスさん」

クレス 「……」

マリーナはそう言って独房を出る。
本当にセシルはどうするつもりだろうか。
悪いようにはしないだろうが、少々気になる。
まさか同窓会を開くつもりでもあるまい…。



…………。
………。
……。



グレッグ 「お前達、今日明日はゆっくり休んでくれ」

マリア 「? どういうこと?」

グレッグ 「つまり、今、我々はやるべきことが多すぎて、今後の検討のためしばらくここに滞在することになったんだ」

シュウイチ 「ところで、クレスさんとマリーナさんがセシルさんに呼ばれたようですけど、何故でしょうか?」

グレッグ 「さぁ、興味があるのだろう、エグザイルの統治者ふたりに」

マリア 「ふ〜ん…」





セシル 「久し振りだな、マリーナ」

マリーナ 「ええ、そうですね。本当にお久し振りです」

クレス 「……」

俺達はとある部屋に呼ばれた。
部屋の中は四角い矢や黒っぽい高級感のある机とそれを挟むように皮のソファーがふたつあった。
中には俺とマリーナとセシルしかいない。

クレス 「それで、一体何の用なんだ?」

俺は単刀直入にそう尋ねる。
イマイチセシルの考えがわからない。

セシル 「ズバリ、君達の本心を聞きたい」

クレス 「本心だと?」

セシル 「そう、君は本当にエグザイルに勝てると思っているのか?」

セシルはそう聞いてくる。
その答えなら迷うことなく答えられるさ。

クレス「勝てる」

俺はそうきっぱり答える。
これは本心だ。
少なくとも勝てないなど微塵も思っていない。

セシル 「…成る程」

セシルはイマイチ読めない表情の反応をする。

マリーナ 「…そういうセシルさんもクレスさんなら覆せるかもって思っているんじゃないですか?」

セシル 「…さぁてね」

セシルはそう言ってとぼけたような仕草をする。
この男、セシルはエグザイル一のポーカーフェイスだ。
正直コイツの考えていることはいつもさっぱりわからん。

対して、マリーナはエグザイル一の読心術の持ち主だ。
どんな相手の心内も見抜いてしまう。
正直本当に心の中が見えているんじゃないかと思うほどだ。
隠し事など当然ながら全く通用しない。
あまり深く考えると気が滅入りそうだ。

セシル 「おや、そうこうしていると堅者のクレスは頭が滅入りそうだから話題を変えようか」

マリーナ 「ふふ、そうですね」

クレス (こいつら、読心術でも本当に使えるんじゃないか?)

セシル 「さて、マリーナはどっちにいるのかな?」

マリーナ 「クレスさんの側ですよ」

クレス 「……」

そう言ってくれるとありがたい。
こういう言い方するのはあれだが、マリーナの実力は助かる。

セシル 「サナリィ…そう思っていいんだね?」

マリーナ 「はい、そういうことですね」

マリーナは相変わらずニコニコ顔でそう言う。

セシル 「…OK、ふたりとも素直に本心を話してくれたみたいだな」
セシル 「ま、どうやら今のサナリィは『クレス』あってのサナリィみたいだな」

クレス 「俺あっての?」

それはどういう意味だろうか?
俺がサナリィを知らず知らずに引っ張っているということか?

セシル 「君はやはり人を惹きつける才能があるということさ」
セシル 「Ok、もういいよ、出て行っても」

クレス 「……」

俺はそれを聞くと無言のままその部屋を出た。
セシルの奴いちいち本心を隠しているな…。



セシル 「どうしたんだ? 出て行かないのか?」

マリーナ 「その前にあなたの本心を聞かせてください」

セシル 「本心?」

マリーナ 「はい」

セシル 「…俺は金が儲かればそれでいいさ」

マリーナ 「私は…クレスさんを信じています」
マリーナ 「クレスさんならこの先いい時代を創ってくれる…そう思います」
マリーナ 「私もあのクレスさんに惹きつけられた一人ですからね…」
マリーナ 「でも、私は、あなたも信じています」

セシル 「…? どういうつもりだ?」

マリーナ 「あなたは、それ程悪い人ではないということです」

セシル 「…そりゃ、自分ではそう思っているけど。根拠は?」

マリーナ 「そういう目をしています」
マリーナ 「…では、私ももう行きますね」

マリーナはそう言って部屋を出る。
部屋に残ったのは俺一人だ。

セシル 「やれやれ…だね、イマイチ相手をしにくいよ…」




…NEXT OPERATION A GO




Strategy of the following!


しばらくセシルの下に滞在することになったクレスたち。
しばらく平穏が続くかと思われていたが、しかし戦争は足を止めてはくれない。
統治者の一人ヴェイル…彼はセシルに不信を抱いていた。
やがて、それは敵意に変わる。
そして、セシルとヴェイルの戦いは始まる。

次回 UNIT

OPERATION 14 『統治者(メンバー)の戦争』


クレス 「今は、奴の駒になるしかないか…」




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