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OPERATION 15 『サナリィただいま夏真っ盛り!!』




マリア 「ねぇ、海行かない?」

クレス 「…は?」

それは、あまりに突発的だった。
あまりに突然だったのでわけもわからず素っ頓狂な声をあげてしまう。
海って…なぜ?

クレス 「何の話だ…?」

マリア 「だから、海へ行かない?」

クレス 「どうしてだ?」

マリア 「そりゃ、泳ぐのよ。夏なんだし」

クレス 「明後日にはここを発つというのにか?」

マリア 「だってこの日を逃したら今年泳ぐチャンスはなくなりそうなんだもん…」

マリアはそんな単純なことを言ってくれる。
それ以前今年無事生き残れるかどうかもわからないというのに…。
余裕か…それとも?

マリア 「でさ、一緒に海行こうよ」

クレス 「しかし…」

グレッグ 「いいんじゃないか? 折角だからみんなで行こうじゃないか」

マリア 「え? 私はクレスと二人で…」

シュウイチ 「いいですね! 行きましょう!」

カルタ 「そうだね、たまにはちゃんと息抜きしないと」
カルタ 「でも、そうなると急いで支度しなくちゃ!」

マリア (私はクレスと二人っきりで行きたかったんだけど…まぁ、いいか)

クレス 「まだ仕事が残っているんだが…」(困)



…………。
………。
……。



こうして、サナリィは近所の海へと出かけるのだった。



マリア 「これはどういうことかな?」

シュウイチ 「クレスさんとマリーナさんは水着じゃないんですね」

デルタ 「泳がないんですか…?」

マリーナ 「私は皮膚が弱いので紫外線は…」

クレス 「俺は見学しとくさ…」

今回サナリィはガルムさんとガンズを残して皆、海に来ていた。
そんな中俺たちは浜辺でビーチパラソルの下にいた。
さすがにアメリカは夏のため、暑いので普段のコートは着ておらず、真っ白なTシャツと長ズボンだけだった。
こんな時は金髪の長髪が暑くて大変だ…。
マリーナは薄い真っ白なレースのような服を着てちょこんと正座気味に座っていた。
汗で肌が透けそうだな…。

マリア 「でも、それじゃ海来た意味ないじゃん!」

クレス 「お前達が勝手に連れてきたんだろうが…」

本来なら俺はフリーダムのドッグでユニットの整備をしていたはずだ。
万が一敵襲があっても困る。
ここは動きやすい服装で常に動ける状態でいることが重要だ。

セシル 「相変わらず堅者だな、クレス!」

メシア 「……」

クレス 「!? セシル…!」

マリーナ 「あら、セシルさん、偶然ですね」

突然、セシルが水着姿で現れる。
なんでこんな所にこいつが…?

セシル「いや、君たちが海にバカンスにへ来ていると聞いたんでね」

クレス 「大富豪の主がこんな民営の海に来ていいのか?」

本当はエグザイルの統治者とはっきり言ってやりたいがここは抑える。
昨日の敵は今日の友というが、こいつは永遠に敵だ。
しかし、立場が弱いため俺には何も出来ない。
せめてこいつが先に化けの皮はいでくれたらいっそ楽なんだが…。
無意味な模索だな…。

セシル 「ふ、どこで休暇を楽しもうが個人自由だろう?」
セシル 「まぁ、堅者の君には問題だらけかな?」

セシルはあざ笑うかのようにうすら笑う。
ちょっとむかつく…。
どうにもこいつはこっちのペースをかき乱してくれる。

セシル 「働く時は働く、遊ぶ時は遊ぶ! ケジメはつけろよ?」

マリア 「あはは! そうよクレス! あなた頭堅いんだからもうちょっとやわらかくならないとね!」

セシル 「うまいこと言うね」

シュウイチ 「アハハ、たしかにですね」

マリーナ 「クスッ」

カルタ 「ハハハ!」

そう言ってみんな笑い始める。

クレス (…そんなに俺は堅いんだろうか?)

ちょっと考えてしまう。
自分ではわからない物だが、そんなに堅いのか…。

マリア 「ところで、どうしてあなたはこの真夏の日差しの中、黒いスーツなんですかね〜?」

メシア 「私ですか?」

それはメシアさんだった。
メシアさんはいつでもどこでもどんな状況下でも黒服だった。
サングラスまでかけているからな…大した徹底振りだ。

マリア 「そう、そこのあなた、いくらなんでも真夏のビーチでその格好は暑すぎない?」

メシア 「いえ、私は大丈夫ですよ」

クレス 「とてもそうは思えんが…」

デルタ 「熱中症…」

普通なら1時間もあれば脱水症状を起こすであろう格好だ。
実はクールビズというやつなのだろうか?
どっちにしろ俺の格好でも暑いのだからスーツはなおさら暑いと思うが…。

セシル 「メシア、水着に着替えてこい」

メシア 「しかし、セシル様、私は現在水着を持ち合わせておりませんので…」

マリア 「海の家で貸し出してるから大丈夫よ!」

セシル 「…ということだ」

メシア 「わかりました…」

メシアさんは少し嫌がった様子だが大人しくセシルに従う。
大変だな、セシルの部下になると…。

マリア 「ついでにクレスもつれてって」

そして、俺に着替えることに。

クレス 「て、なに!? 俺もか!?」

なぜか俺も着替える羽目になったらしい。
俺の場合は思いっきり抗議するが…。

マリア 「遊ぶ時は遊ぶ! 行ってらっしゃい!」

クレス 「MM〜…」

抗議する前におもいっきり押し切られる。
…しかたないな。



……………。



『一方、フリーダム艦内』


ガンズ 「あ〜あ、やっぱり俺も海行けばよかったな〜…」

ガルム 「ぼやく前にさっさと仕事を終えましょう…暑くてかないません…」

ガンズ 「ちくしょう…よりにもよってエアコン壊れるなんてな〜ついてね〜」

ガルム 「ドッグは大変ですな…」

ガンズ 「まぁ、新型も運搬されたし、トイトイかな?」

そう、今日やっとクレイドル社の試作ユニットがフリーダムに運搬されたのだ。
可変型の中量ユニットだが、一体誰が乗るのか?

ガンズ 「あぁ〜、気になるな〜あの変形機構どうなっているんだろうな〜」
ガンズ 「プログラムはどういう風に組まれているんだろう〜?」
ガンズ 「気になるな〜バラしたいな〜」

ガルム 「…はぁ、暑い…」



…………。



マリア 「遅かったわね」

クレス 「そうか?」

シュウイチ 「……」

クレス 「どうしたシュウイチ?」

アレからしばらくして脱衣室で着替えを終えると、砂浜に戻ってきた。
戻ったはいいがシュウイチは明らかに異様な目でこちらを見ていた。
いや、正確には俺を見ているのではなく…。

シュウイチ 「メシアさん…水着でもサングラス着用するんですね…」

メシア 「ええ…まぁ」

クレス 「秘書の必需品らしい…」

マリア 「へぇ〜、そうなんだ〜…」

マリアは明らかにそれは違うだろう言う顔で言う。
なんというか表現のしにくい顔だな…。

マリア (秘書って言うより秘密工作員よね〜)

シュウイチ (やっぱりMIB? いや、女性だからLIB?)

クレス 「ところで他のみんなは?」

戻ってきたはいいがマリアとシュウイチ以外の姿が見当たらない。
一体どこへ行ったのだろうか?

マリア 「あっちの海の家で腹ごしらえしているわ」

シュウイチ 「今頃ヤキソバでも食べているんでしょうかね?」

クレス 「?」

今、聞きなれない言葉が出た。
ヤキソバ?

マリア 「ヤキソバ…?」

シュウイチ 「あ、あれはやっぱり日本にしかないのかな? 海の家では…」

マリア 「まぁいいわ、それでクレスはどうする? お腹空いてる?」

クレス 「いや、別に大丈夫だ、だが一応行こう」

マリア 「オッケー、こっちよ」

俺たちはそのままグレッグたちがいるであろう海の家を目指した。



『海の家』


グレッグ 「おお、クレスたち、やっと来たか」

カルタ 「クレスさんも昼飯ですか?」

クレス 「いや、あまり離れるとまずいと思ってきただけだ」

グレッグ 「今日ぐらいは好きにしていいぞ、たまには息抜きも必要だからな」

クレス 「しかし…」

マリア 「なーにやってんの! 折角海に来てるよ? ほら、クレス! 泳ご!」

クレス 「お、おい…マリア!」

マリアはそう言って俺の腕を引っ張る。
しょうがないので俺は素直にマリアについていくのだった。



…………。



デルタ 「…あ、大佐…」

クレス 「デルタ…?」

マリア 「どうしたの? デルタ?」

外に出てみると、海の側でしゃがみこむデルタの姿があった。
水着は着ているが、海に入る様子はない。

クレス 「デルタ…まさか」

マリア 「泳げないの?」

デルタ 「…習ったことないです」

クレス 「……」

そういえば、泳ぎ方は教えた覚えはないな。
エグザイル時代、遊んでいる暇もなかったしな…。

マリア 「何だかねぇ〜、いい年の若いもんが泳いだことはねぇ〜

そう言ってマリアは俺を流し目で見る。

クレス 「俺のせいだ…」

それは間違いないだろう。
ろくに子供らしい人生をデルタに遅らせることが出来なかったのは俺のふがいなさだろう。

マリア 「しょうがない、今日は私が海での楽しみ方を存分に教えてあげましょうか!」
マリア 「デルタ! まずは浮き輪でも使って海に慣れましょうか?」

デルタ 「はい…」

クレス 「……」

マリアはデルタを連れると海に入るのだった。
俺は浜辺からその姿を見守った。

クレス (デルタの奴…日に日に子供らしさを取り戻しつつある気がするな…)

それはマリアのお陰だろう。
俺たちは戦いの日々しかなかった。
デルタはその間、たとえ戦いの中でも楽しみを知っていたのだろう。
それがデルタにいい影響を与えていると思う。

マリア 「ほ〜ら! クレスもきなさーい!」

クレス 「…わかったわかった」

俺は遠くから手を振って招くマリアの元へと向かうのだった。



…………。



『そして、その夜…』


ホーホー…ホーホー…。

マリア 「…やだなぁ、フクロウ? なにか不気味だな〜…」

クレス 「…」

カルタ 「あと、5分で日付が変わりますね」

つまり、時刻23時55分。
俺たちはセシルに呼ばれて、セシルの巨大な屋敷の裏庭に集合していた。
ここに来ているのは俺、マリア、カルタ、シュウイチ、マリーナ、グレッグ、ガンズ、デルタの8人だった。

セシル 「やぁ、こんばんわ、サナリィのみなさん」

クレス 「こんな真夜中に一体何の用だ?」

やがて、セシルが現れる。
その後ろにはやはり黒服の女性、すなわちメシアさんがいた。

セシル 「ふふ、相変わらず機嫌が悪いな、クレスよ」

シュウイチ 「そういえば、たしかにクレスさんってこっち来てから妙に機嫌悪いですよね?」

グレッグ 「一応、スポンサーなんだから、あんまり嫌な顔するのはよしてくれよ?」

カルタ 「嫌いなんですか? セシルさん…」

クレス 「……」

まわりからは散々言われる。
エグザイルの癖に何故俺より味方が多いセシル?
セシル…恐るべきやつめ。

グレッグ 「で、一体どうしたんですかセシルさん」

マリア 「そ、そうですよ〜? ここってなんだかすっごい不気味なんですけど〜?」

デルタ 「? マリアさん、大丈夫ですか?」

マリアは明らかに震えていた。
もしかして、夜が怖いのか?
どう見ても若い頃は夜遊びもしてそうなんだが?

マリア 「怖いのよ、こういう雰囲気、なんか出そうで」

マリーナ 「幽霊が怖いんですか?」

マリア 「悪い? どうせ私はお化け屋敷も怖くて入れませんよーだ!」

マリアは突然、逆ギレする。
なぜ、怒る?

セシル 「ふっふ、そうこなくては面白くない!」

クレス 「何の話だ?」

セシル 「本日、夏、最後の祭典…肝試し大会を行う!」

クレス 「…は?」

マリーナ 「肝試し…?」

マリア 「いやー! 絶対いや!! 大反対! 良い子は寝る時間!」

カルタ 「22歳が駄々こねないでください」

セシル 「なるほど、22だったのか」

マリア 「ちょっと! なんで私の年齢知ってるのよ!?」

カルタ 「名簿見ればわかります…」

マリア 「くぅ…と・に・か・く! 肝試しなんて反対です!」

セシル 「別に参加しなくても構わないが、その場合は一人で帰ってもらうよ?」
セシル 「ああ、ちなみにここら辺出るらしいか、幽霊が」

マリア 「……」
マリア 「行くも帰るも絶望じゃん…」

さすが、セシル…実に嫌な性格している。
ああ、言われれば心底怖がっているマリアは帰られないだろう…。

セシル 「とりあえず2人一組のペアを作ってもらう」
セシル 「メシア、アレの用意を」

メシア 「皆さん、こちらをお引きください」

そう言ってメシアさんは何やら紐を取り出した。
…そういうことか。

メシア 「この8本の紐にはそれぞれ赤、青、黄色、緑の色が先に塗られています」
メシア 「同じ色同士がペアとなります」

セシル 「ちなみに、私とメシアも参加はするが、紐は引かない」

シュウイチ 「もう、ペアってことですね」

セシル 「そういうことだ」

メシア 「では、マリアさんからどうぞ」

マリア 「うぅ〜、どうして肝試しなんてする羽目に〜…」(泣)

とは言いつつも素直にマリアは紐を引く。

マリア 「赤よ…血のように赤い、ね」

メシア 「次はデルタさんどうぞ」

デルタ 「…青」

デルタは青だった。
その後シュウイチが黄色を引き、マリーナが緑を引く。
そしてカルタが黄色を引くと、ガンズが緑を引いて、俺の番が来るのだった。

マリア (これってもしかして…クレスとペアに!?)
マリア (ちょ、こんな夜中に二人っきりはさすがに…で、でも!)
マリア (これは! まさにロマンスの予感!?)

クレス 「…青だ」



………。



セシル 「よし、これで全員決まったな」

マリア 「はぁ…」

グレッグ 「マリア…そんなに俺と一緒はイヤか?」

マリア 「別に〜、そんなことはないけど〜」

しかし、マリア明らかにダレていた。
結局俺が青を引いたので、俺とデルタ、シュウイチ&カルタ、マリーナ&ガンズ、そしてマリア&グレッグとなったのだった。

セシル 「ルールは簡単だ、この公園内の道を進んでもらって、フリーダムまで行けばゴールだ」
セシル 「ペアは5分おきにスタートとする」

メシア 「まずは黄色からどうぞ…」

シュウイチ 「じゃ、行こうよカルタ」

カルタ 「そうだね、シュウ」

まずはシュウイチ達が行く。
二人はまるで物怖じした様子はない。
まぁ、当然か。

メシア 「5分経過…次、緑です」

マリーナ 「ふふ、それでは参りましょうか、ガンズさん?」

ガンズ 「ええ、しっかり守りますよ!」

マリーナ 「ふふ、ではエスコートしてもらいましょうか」

マリーナはマイペースにそう言ってスタートする。
さすがにあの二人も物怖じしないか。
まぁいい年して肝試しするのもどうかと思うが。
そして、さらに5分経過する。

マリーナ 「次、赤です」

グレッグ 「おーし、さっさとMyホームに帰るぞ」

マリア 「お、お願いだからさきさき行かないでよ…頼むから」

クレス 「……」

そして、残ったのは俺とデルタ、そしてセシルとメシアだけになった。

セシル 「これでエグザイルが残ったな」

クレス 「元、だ…俺とデルタはすでにエグザイルじゃない」

メシア 「……」

セシル 「まぁ、別にどうでもいいがな、今は所属は関係ないだろう」

クレス 「十分ある、戦争中だ」

セシル 「今は、戦争していない」

クレス 「……」

メシア 「…5分です」

デルタ 「大佐…」

クレス 「妙な真似したら迷わず狙撃するからな」

セシル 「やれやれ、信用ゼロだな…」

メシア 「……」

俺はそう言うとスタートするのだった。
利用価値があるうちはセシルも何もしないだろうが、やはり油断はできない。



セシル 「みんな行ったな…」

メシア 「…ここから先行すれば3分以内に黄色組みに追いつきます」

セシル 「じゃあ行こうか、折角仕組んだし」

メシア 「了解しました、近道はこちらです」

俺たちは全員が出発すると森の中を進む。
ここは俺の領地、当然ながらその道の構成も熟知している。



…………。



セシル 「おお、本当に3分で追いついたな」

メシア 「あれが最初の仕掛けです」

セシル 「ん?」

後ろからはシュウイチ、カルタコンビが来ており、そしてその進路上にはメシアに一任した『仕掛け』があった。
当然ながらただ、夜道を歩くだけでは面白みがない。
面白くする工夫は重々…。

セシル 「お、あれは火の玉か、妙にリアリティがあるな、ホログラフか?」

進路上には3つ、野球のボールくらいの火の玉が浮いていた。
炎の色は青い、うむ、なかなかいい仕掛けじゃないか。
今回の企画は全てメシアに一任したがさすが、いい仕事している。

セシル 「で、あれはどういう造りなんだ?」

メシア 「上からピアノ線引いて玉は野球ボールに化学物質を塗って青く燃やしています」

セシル 「…うわぁ、なんか聞かなかったらいい気がしてたまんないんですが…」

なんだか、聞いてみると凄く安価な方法とっているよ。
今時そんなの中学生でも用意できるって…。

セシル 「まぁいい、仕掛けは旧時代のやり方だが言わなければ中々リアルでいい仕掛けだ」

さてさて、サナリィのメンバーの反応が楽しみだ。


シュウイチ 「でさ、その時砂糖と塩間違えてね」

カルタ 「あはは、そりゃ災難だったね」

シュウイチ 「もう、笑い事じゃなかったよ、あの時は」

カルタ 「あはは」

スタスタスタスタ…。


セシル 「…おいおい、気付いてもらえなかったぞ?」

メシア 「……」

アウトオブガンチュー?
…仕掛けの意味ないじゃん、気付いてもらえなかったら。

セシル 「…まぁ、あと3組ある、ほかに期待しよう」



…………。



メシア 「緑組、きました」

セシル 「う〜む、マリーナとガンズのコンビか」
セシル 「あの二人はどんな反応するかさっぱりわからんな」

まぁ、期待しておこうか。

マリーナ 「あら、あれは?」

ガンズ 「案の定仕掛けられていましたな、しかし、妙に長い道のりだった」

マリーナ 「ふふ、そうですね、夜も遅いですし急いで帰りましょう」

ガンズ 「そうですな」

スタスタスタ…。


セシル 「…気付いてもらえたけど、まるで反応なし」

メシア 「今更驚く歳でもないということでしょうね…」

セシル 「……」



…………。



メシア 「赤組、来ました」

セシル 「やっと本命が来たか」

今度はあのマリア&グレッグだ。
グレッグ君ともかくマリア君は思う存分絶叫してくれるだろう。
やっと面白いリアクションに会えそうだ。

マリア 「ふみぃ〜ん…もうやだ〜早く帰りたい〜」(泣)

グレッグ 「…やれやれ」

マリア 「ひぃ!? 今、せ、背中冷たい感覚が…」

グレッグ 「ああ、幽霊がびっしり後ろにくっついていやがるな」

マリア 「ヒッ!?」

グレッグ 「なーんて冗だ…」

マリア 「イヤァァァァァッ!!」

ズドドドドドドド!!

グレッグ 「あ!? ま、待てマリアー!!?」

マリアはそのまま火の玉に目もくれず突っ走ってしまう。
そして、グレッグも急いでマリアを追うあまり、火の玉に気付かない。

セシル 「あれはあれで面白い反応だったが…」

火の玉の意味またしてもなし。
こうなったらクレスたちに期待するしかないのか…。



…………。



メシア 「青組来ましたね」

セシル 「…さぁて、どんな反応するかな?」

まぁ、半分諦めてるけどな。

デルタ 「!? 大佐、前方!」

クレス 「!」

タァンタァン! ボトッ!

クレス 「…なんだ、ただ化学反応で燃える野球球か」

デルタ 「……」

クレス 「まったく、セシルめ…妙な仕掛けを作りおって…」

デルタ 「早く行きましょう、大佐…さっきマリアさんの絶叫も聞こえましたし…」

クレス 「そうだな…」

スタスタスタ…。

セシル 「…何も銃を取り出さなくてもいいじゃないか…」

メシア 「冗談の通用しないお相手ですからね」

セシル 「まったくあの堅者は」
セシル 「まぁいい、そろそろ第2の仕掛けに向かわないと、先行している連中に追いつかないな」



…………。



セシル 「で、第2の仕掛けはなんなんだ?」

メシア 「あれです…」

セシル 「あれ?」

見ると第2のエリアには顔を白塗りした太った男がいた。
妖怪?

カルタ 「あ、やっぱり仕掛けあったね」

シュウイチ 「仕掛けっていうか仕掛け人?」

カルタ 「長かったねぇ〜」

セシル (思いっきり最初の奴気付いていなかったもんな…)

? 「お皿が一枚…お皿が2枚…お皿が3枚…あ、一枚足りない…」
? 「チクショーッ!!」

セシル (うおっ!?)

突然、謎の妖怪は豹変したように叫んだ。

カルタ 「ご愁傷様」

シュウイチ 「お勤めご苦労様でーす」

? 「……」

セシル 「うわ…反応薄…てかあれじゃあいつが可哀相だよ」

なんだか同情してくる。
…それにしてもありゃ一体誰だ?
ウチ(クレイドル社)にあんな社員いたか?



…………。



セシル 「お、マリーナたちがきたな」

メシア 「……」


マリーナ 「誰かいますね…」

ガンズ 「な、なんだ…ありゃ?」

? 「お皿が一枚…お皿が二枚…お皿が…」

ガンズ 「どうせ足りないんだろ?」

? 「言われた…チクショー!!」

マリーナ 「さ、先に進みましょう」

ガンズ 「そうですな」

スタスタスタ…。

セシル (…なんだかなぁ〜)

メシア 「…あれが彼の限界でしょう」

セシル 「登用したメシアもどうかと思うが?」
セシル 「もういい、さっさと先に進もう」



タァンタァン!!

セシル 「銃声聞こえているよ…」

メシア 「また、クレスさんでしょう…」

セシル 「逆噴射か…あいつは」



………。



セシル 「で、第三の仕掛けは?」

メシア 「あれです」

例によってまた仕掛けが通路上に現れる。

セシル 「…ピアノ?」

通路のど真ん中にイヤでも目立つようなグランドピアノがあった。
中に死体が隠されるのは基本だな。

メシア 「7不思議…音楽室の怪です」

セシル 「ああ、学校の七不思議だな」
セシル 「て、なんで肝試しで学校の七不思議なんだよ!?」

メシア 「怖いでしょう?」

セシル 「…一つ一つは軽いジャブみたいなものな気がするが…」

なんとも微妙だ。
どうせ、音がなるんだろうが。

メシア 「ちなみに仕掛けは…」

セシル 「どうせ、勝手にピアノが引かれるんだろう?」

メシア 「…はい、その通りです」

セシル 「…ちなみにどういう仕組みだ?」

メシア 「ピアノの中にラジカセを入れてます…」

セシル 「…なんでそんなことを…せめて機械で統制して、プログラムで…」

メシア 「予算がなかったんです」

セシル 「……」
セシル (…そんなに低予算で組んだっけな?)

ちょっと考えてしまう。
たしか、3000ドル予算として用意したはずだが…。


シュウイチ 「あれ、なんだ…? ピアノ?」

カルタ 「…また、変な仕掛けがあるんじゃない?」

♪〜♪♪〜♪〜。

シュウイチ君たちがピアノに近づくピアノは勝手に鳴り出す。
センサーでもついているのか?

シュウイチ 「これって…」

カルタ 「7不思議のひとつ…音楽室の怪?」

シュウイチ 「だよね…」

ピアノはずっと鳴り続ける。
なんだか今までで一番しょうもないな。
仕掛け2の人件費がかかりすぎたか?

♪〜…ピタ。

セシル 「?」

シュウイチ 「あれ? 止まっちゃった」

カルタ 「…?」

突然、ピアノの音が止む。
なんだ? 電池切れか?
しかし、そう思った瞬間。

ガシャァーン!!

カルタ 「ヘッ!?」

セシル (んな!?)

シュウイチ 「う、うわぁーっ!?」

突然、ピアノの中から白骨死体が飛び出してくる。
そういう仕掛けだったのか…。
お、俺まで驚いたぞ…。

メシア 「良い出来でしょう?」

セシル 「メシア…やるようになった…」

グッジョブ…良い仕事してるよメシア。
さすがにシュウイチたちもこれには度肝を抜かされたようだった。
俺も含めて…。



…………。



その後、マリーナさえも驚かした怪奇、7不思議のひとつ音楽室の怪は好調に稼動した。


セシル 「そろそろ、グレッグ君たちがくるな…」

メシア 「…クレスさんたち、驚きますかね?」

セシル 「また銃を取り出すかもな…」

あの逆噴射は何をしでかすかわからないからな。

メシア 「あ、きました…」

セシル 「さて、どんな絶叫を見せてくれるのか?」


♪〜♪♪〜♪〜。

マリア 「ヒッ! な、なに…?」

グレッグ 「ピアノが鳴っているな?」

マリア 「な、なんて不気味な…」

グレッグ 「しかもシューベルトか…旧時代の音楽だな」

実際はかなりいい曲なんだが、今は不気味さに覆われていて、その曲の雰囲気は台無しのようだ。

♪〜ピタ。

セシル (…くる!)

俺の内部で戦慄が走る。
あ、あの驚きは一回や2回では止まらない…。

ガッシャーン!!

グレッグ 「!?!?!?!?!?!?!?!?!」

マリア 「い、い、いいい…いやあああああああああああああああああ!!!?」

マリア君こっちも驚くほど絶叫を上げる。
そして。

グレッグ 「あ! おい! そっちは森だぞ!?」

マリア 「いやあああああああああ!?」

セシル 「あ!?」

メシア 「あ…」

なんと予想外にもマリア君は道を逸れて森に入ってしまった。
なんてこった…。
ちょっと悪乗りしすぎたか…。



『一方、クレスたちは』


クレス 「ふ」

デルタ 「? どうしたんですか、大佐?」

クレス 「こんな日も悪くないか…そう思ってな」

デルタ 「……」

何だかんだで、今日は平和に、そう誰が見ても平和に進んでいる。
色々騒がしかったがまぁ、これもいいだろう。

クレス 「…明日は晴れるかな?」

デルタ 「どうでしょう…」

俺たちは静かな夜を歩く。
デルタと二人っきりで歩くのも何年ぶりだろうか?

デルタ 「大佐…」

クレス 「どうした、デルタ?」

珍しくデルタから喋りだす。
本当に、珍しいな…。

デルタ 「ちょっと…森を歩きませんか?」

クレス 「道じゃないぞ、大丈夫か?」

デルタ 「祖国ドイツの森はもっと深くて…そして黒かったです、これくらい大丈夫です」

クレス 「なら、いくか…」

俺たちは道を外れて森の中へ進む。
デルタは迷うことなく、そして歩きなれたように進んだ。

デルタ 「大佐…こっちです」

クレス 「意外と足が早いな、デルタ…」

デルタは足早に奥へと進んだ。
やがて、視界が急に広がった。
森が終わったのだ。
森の奥には小さな泉があった。
そして、空には大きな月が浮かんでいる。

デルタ 「……」

デルタは泉のそばに立つとゆっくり顔を上げて、月を見上げた。

クレス 「何を考えているんだ?」

デルタ 「…今までのこと、これからのこと、大佐のこと、自分のこと、いろんな…こと…」

クレス 「……」

デルタ 「大佐…私はどうしたら良いんでしょう?」

クレス 「…なにをだ?」

俺はデルタの横に立って月を見る。
綺麗な月だ…本当に。

デルタ 「この想いはどうすればいいんですか…?」

クレス 「デルタ…?」

突然、デルタが俺に体を預けてくる。
それには少し、驚いてしまった。
気付かないうちに、デルタはこんなに大きくなったんだな。
出会った頃はあんなに小さかったのに。

クレス 「大きくなったんだな…」

デルタ 「いつまでも子供じゃないですよ…心も体も…想いも…」

クレス 「……」

デルタが俺を求めている…?
今までそんな素振りはなかった。
隠していたのか?

クレス 「デルタ…」

デルタ 「好きって気持ちは最初からずっと変わっていません…」
デルタ 「でも、その好きがちょっとずついけない方に向かっていました」
デルタ 「他人であり、家族であり、上司と部下であり…どうすればいいんでしょう…この想い」

クレス 「そればっかりは…俺には何も言えない…」

たとえ、どう思っていてもそれはデルタにとっては残酷でしかないだろう。
だから、俺は離すしかない…。
デルタには悪いが…。

デルタ 「クレ…ス…さん」

クレス 「デルタ…?」

突然、デルタが顔を近づけてくる。
俺は動けなかった。

マリア 「う〜…どうしよう〜道に迷ったぁ〜」(泣)

クレス 「!?」

デルタ 「!?」

突然、マリアが現れる。
俺もデルタも驚いてしまった。
なぜ、ここにマリアが!?

マリア 「あ! クレス〜! なんでこんな所にいるのか知らないけどこれぞ天佑〜!」

クレス 「なぜここにいる…? あと、グレッグは?」

マリア 「うぅ…それはそれ、これはこれ」
マリア 「とにかく、もう帰ろう〜、てか一緒に帰ってぇ〜」(泣)

マリアはそう言って泣きついてくる。
デルタはもう離れていた。

クレス 「わかったわかった…ここからならすぐに民家でも見つかるだろう…」

デルタ 「…大佐、マリアさん、こっちです」

デルタは気がついたら先行していた。
もう、元のデルタに戻ったようだな。

マリア 「あ! デルタ、ひとりで行かない!」

デルタ 「マリアさん…?」

マリア 「ほら、手を組んで♪」

マリアはそう言うと俺を左手で、デルタを右手で捕まえて横一列に歩き出す。

マリア 「こっちの方が良いでしょ? ね、デルタ?」

デルタ 「…はい」

なんというか、マリアらしいな。

クレス 「…まるで親子だな…」

マリア 「ん? 何か言った、クレス?」

クレス 「いや、なんでも…」

俺は少し微笑む。
俺たちサナリィの短い夏は今日で終わり。
そしてまた戦場へと戻るのだな…。
しかし、今日は終わりではない。
また、いつの日か、平和な…この日の続きがやってくるだろう。
そして、その日を得るために、俺たちは戦う…。

…NEXT OPERATION A GO




Strategy of the following!


ついに行動を開始するサナリィ。
次の目的地はブラジル、ここに統治者の一人、南アメリカを統治するナルミがいた。
新機体に新たな仲間を得たサナリィはセシルという後ろ盾もってブラジルの奥地アマゾンを進む。
しかし、サナリィの空気は不穏だった。
そして、サナリィのメンバーシュウイチが異様な反応を示す。
この暑き地でサナリィの新たなる戦いは始まるのだった…。

次回 UNIT

OPERATION 16 『暑き地での再会 〜ブラジル戦線〜』


クレス 「シュウイチ…お前は…」




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