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OPERATION 17 『愛する者』



『南米 ブラジル ―エグザイル基地―』


シュウイチ 「……」

来てしまった…。
少し怖い気もする。
でも、僕は確かめないといけない。

エグザイル兵 「この扉の向こうにサクラ様はおられる、そそうがないようにな」

シュウイチ 「……」

成美ちゃん…本当に君なのか?
僕は覚悟を決めて自動ドアの前に立つ。
すると自動ドアはゆっくりと左右に開き、次のフロアを僕に示す。

ナルミ 「…よくきたわね」

シュウイチ 「成美ちゃん!」

ナルミ 「申し訳ないけど全員しばらく席を外してちょうだい」

エグザイル兵 「はっ!」

ナルミちゃんの一言で中にいた十数名の兵士たちは僕の入ってきた扉を通って部屋の外に出てしまった。
司令室となっているこの部屋は今、僕と成美ちゃんだけになった。

ナルミ 「まさか、修一がサナリィにいるなんてね…」

シュウイチ 「成美ちゃんこそどうしてエグザイルに!?」

僕はほほ同じ意味の質問を成美ちゃんに返す。

ナルミ 「…修一、私はね…戦いたくて戦っているわけじゃないわ」
ナルミ 「けどね、私は戦わないといけないというのなら戦うわ」
ナルミ 「修一、あなたこそどうしてサナリィにいるの? 優しすぎるあなたには戦争は無理よ」

シュウイチ 「…たしかに、僕は戦争は向いていないと思うよ…でも」
シュウイチ 「この戦いは僕の望んだ戦いなんだ」

ナルミ 「修一の望んだ戦い?」

シュウイチ 「旧西暦2010年…新世暦元年…第2次文明開化と呼ばれ人類が新たなステップに臨んだ時代…」
シュウイチ 「けど新たな時代は決して人類にとって平穏な物ではなかった…」
シュウイチ 「知能をもったマシンは人類の手足となって人の行為に使役し、戦争にも参加し戦火を拡大した」
シュウイチ 「やがて戦争が当たり前になって数十年…人の形(なり)をもったロボットたちは姿を消した」
シュウイチ 「しかし、戦火は消えなかった…それから300年近く経つというのに今だ戦争は終わらない…」
シュウイチ 「終わらせるどころかユニットと呼ばれる新たなる兵器を生んで戦争を拡大してしまった」

ナルミ 「……」

シュウイチ 「でも、ここでひとつの転機が生まれた」
シュウイチ 「エグザイルとサナリィ…互い国に属せず戦争を終結させることのできる組織だと思う」
シュウイチ 「ただ、僕はサナリィを選んだ…武力による統一は結局のところ武力による反抗を生んでしまう」
シュウイチ 「だから僕はサナリィを選んだ、戦争を武力なくして終わらせることの可能性を見出せるサナリィを」

ナルミ 「……」

成美ちゃんは僕の話は黙って聞いていた。
だけど、話終えると成美ちゃんは…。

ナルミ 「変わらないわね…単純で純粋で…少し羨ましいわ」
ナルミ 「けどね、純粋なだけじゃ戦争は勝てないわよ?」

チャキ!


シュウイチ 「!?」

成美ちゃんは鋭い目つきで僕を睨むと短銃の冷ややかな銃口を僕に向けた。

ナルミ 「あーだこーだ言ってもね…私たちは戦争に加担して戦争を拡大しているのよ」
ナルミ 「そうよ、たしかにエグザイルは武力のみによって世界統一を行っているわ…決して利口なやり方とはいえないかもしれない」
ナルミ 「でもね、力はね人々の憧れなのよ…現実にエグザイルに志願する兵はサナリィのそれとは遥かに規模が違う」
ナルミ 「そして、エグザイルに支持する兵士たちにとってエグザイルは希望であり正義なのよ!」

シュウイチ 「成美ちゃん…」

ナルミ 「サナリィね…不可抗力とはいえ結局のところサナリィも戦力をもって武力を持って立ち向かっている…」
ナルミ 「まぁ、平和主義なんて馬鹿馬鹿しい真似する方がどうかしているのかもね」

成美ちゃんはそういうと短銃を下ろした。
はじめから成美ちゃんは撃つつもりは無かったと思う。
だけど…。

シュウイチ 「成美ちゃんは変わったね…昔は人に銃を向けるどころか持つことさえなかったはずなのに…」

ナルミ 「変わりもするわ…あなたとは違うもの」
ナルミ 「修一が日本を離れて3年…一体なにがあったと思う?」

シュウイチ 「なにがって…」

ナルミ 「征服されたわ、エグザイルにね、無条件降伏だって」

シュウイチ 「!?」

そんな! そんな話聞いたことがないぞ!?

シュウイチ 「どういうことなの!? そんな話一度も聞いたこと無いよ!?」

ナルミ 「そりゃそうよ、表向きには今だ独立しているもの」
ナルミ 「でもね実際はね日本は人質なのよ」

シュウイチ 「人質…?」

ナルミ 「エグザイルは私たちの祖国日本の自由とエグザイルの無条件防衛と引き換えに日本政府に対してある要求をしたわ」
ナルミ 「『佐倉 成美』をエグザイルに引き渡せってね」

シュウイチ 「な、成美ちゃんを…?」

ナルミ 「エグザイルは才能を求めていたわ…『統治者』となりうる器を持つ人材を」
ナルミ 「それがたまたま日本という小さな島国にいたっていうお話」

シュウイチ 「まさか、それで日本は成美ちゃんは売ったのか!?」

ナルミ 「売られた…そうね、売られちゃったかもね♪」

シュウイチ 「! 成美ちゃん…どうして笑うんだい!?」

成美ちゃんは人身御供にとなったにも関わらず満円の笑みを浮かべていた。

ナルミ 「ふふっ、安いものじゃない? 私ひとりでひとつの国が救えるんなら、そうでしょ修一?」

シュウイチ 「な…」

僕はその言葉に驚きを隠せない。
しかし…成美ちゃんの性格を考えれば…。

シュウイチ (忘れていた…成美ちゃんはそういう娘だった…)

ナルミ 「ねぇ修一、覚えているかしら修一、言ってくれたわよね私を守ってくれるって」

シュウイチ 「忘れてなんかないよ…僕は嘘はつかない」

ナルミ 「ふふっ、だったら私に力を貸して、私の側にいて修一」

シュウイチ 「!?」

成美ちゃんに…僕が…。

ビービー!

シュウイチ 「!?」

突然、サイレンが鳴り始める。
僕は驚いて周りを見渡した。

ナルミ 「どうやら来たみたいね…各員第一種戦闘配備よ!」

成美ちゃんがそう言うと後ろの扉は勢いよく開いてエグザイルの兵士たちが持ち場に着く。

ナルミ 「ふふ、修一…私はエグザイルの統治者としてサナリィと戦うわ、シュウイチはどうする?」

シュウイチ 「!? 僕は…」



…………。



『同日 同時刻 戦艦:フリーダム艦内』


グレッグ 「クレス…このままでいいのか?」

クレス 「ああ…シュウイチが姿を消したからといってこっちは立ち止まるわけにはいかない」
クレス 「むしろ吹っ切る必要がある」

グレッグ 「シュウイチが敵として出てくると?」

クレス 「わからない…ただ、もしそうなったら覚悟はしてもらいたい…俺はマリアを抑えるので手一杯になるだろう」

グレッグ 「あいつにはシュウイチは撃てねぇ…もしものときは頼む…クレス」

クレス 「わかっている」

俺は戦闘領域に入ったにも関わらずブリッジにいた。
他の皆はすでにユニットに搭乗し戦闘区域に入っている。

クレス 「行ってくる、艦を沈めないでくれよ? 帰る場所がなくなる」

グレッグ 「わかっている!」

俺は急いで格納庫に向かう。
正念場だ!



マリア 『このぉ! 邪魔なのよ!!』

ザシュウ! ドカァン!

マリア 『シュウイチ…あの子…どうして何の相談もなく勝手に飛び出しちゃうのよ…!』

ドシュゥ! ドシュゥ! ズダダダダダッ!!

マリア 『!? くっ、さすがに凄い抵抗ね…』

クレス 「マリア! 後退しろ! 俺が撃ってでる!」

俺はナイトメアに搭乗して最前線に撃ってでる。

マリア 『冗談! シュウイチがいるんだから…退けないわよ!』

しかし、マリアは退かない。
ち…予想していたことだがマリアまで本来のペースを乱している。

クレス 「わかった…だったら俺は俺でやるだけだ!」

俺はナイトメアで戦場を駆る。
トーチカや敵ユニットの抵抗は激しいが攻略できないことはない。

クレス 「マリア、囲まれているぞ、抜けられるか?」

マリア 「当たり前よ! このまま突っ込むわよ!」

クレス 「了解だ!」

俺たちは陣を突破して更に森の奥へと進む。
もうここまで来たら味方の援護はない。

クレス (敵の数は後何機だ? 一体どれだけの規模があるんだ?)

すでに俺たちは途方もないほどの数の敵を相手にした。
正直残弾が心もとない、やはり無茶か…。

マリア 『エネルギー切れ!? こんな時に!』

クレス (マリアの方は無くなったか…)

どうやらマリアのエネルギーライフルは残弾切れのようだ。
こっちもあと少しだ…やむを得まい。

クレス(そう甘くはないということか)
クレス 「マリア撤退だ! 帰るぞ!」

マリア 『なっ! ここまで来て退くっていうの!?』

クレス 「冷静になれマリア! そんな調子じゃ死ぬだけだぞ!?」

マリア 『!? く…』

クレス 「マリア…これが最後じゃない…次にシュウイチを見つければいい…」

マリア 『後退するわ…』

俺は残りの残弾を使い切ってフリーダムまで後退するのだった。
結局、その日はナルミの攻略は叶わなかった。
やはり、シュウイチが消えたことによる動揺が大きいのだろう…。



…………。
………。
……。



『同日 18:21 フリーダム艦内』


マリア 「クレス…」

クレス 「マリア?」

フリーダムの通路内、戦闘領域から離れ夕日に晒されたジャングルを通路の窓から眺めているとマリアが現れるのだった。

マリア 「ごめんなさいクレス…私少し動揺していた」

クレス 「無理もないさ、マリアだけじゃないみんなシュウイチの行為には動揺している」

マリア 「クレスでも…?」

クレス 「ふっ、そうだな…少し動揺した」

マリア 「私ね、少しパニックになった…あの大人しいシュウイチが突然勝手に抜け出して…」
マリア 「そして怖くなっちゃった…シュウイチが敵として現れるんじゃないかって…」

クレス 「……」

マリア 「そしたらわけがわからなくなっちゃって…気がついたら一人で突っ走っちゃった…」
マリア 「情けないわね…皆を纏め上げないといけないのに…それさえできないなんて…」

クレス 「そうだな…指揮官失格だ」

マリア 「本当…ごめんなさい」

マリアはいつもの調子ではなくとても小さく見えた。
明るくお姉さんを振舞って、どんな状況にも果敢に挑むその姿はない…。
今はとても小さく、そして頼りない…マリアという小さな女性を映し出している。

クレス 「だが、気づいたんだろう?」

マリア 「え?」

クレス 「次から皆を纏めればいい、一人で辛いなら俺を頼れ、マリアを補佐してやる」

マリア 「クレス…ありがとうね…」

クレス 「ふっ、大人しいマリアは似合わないぞ? みんなを元気付けたらどうだ?」

マリア 「らしくないってあのね…たまには萎れることだってあるわよ…人間だもの」
マリア 「でも…そうね、よし! じゃ一発景気づけにグレッグでも脅かすかしらね!」

クレス 「脅かすって…おいおい、物騒な真似はやめろよ?」

マリア 「気にしない気にしない! あっはっは!」

クレス (やれやれ…)

どうやら、マリアは本調子に戻ったようだ。
こうなるとマリアは押さえが効かず、異様に疲れるが今はその姿にホッとした。
マリアらしい…そういう言葉が頭に浮かんだ。
俺は頭を掻きながらマリアの後ろに着いていくのだった。



…………。



『同日 同時刻 エグザイル基地』


ナルミ 「ふう、みんなお疲れ様、今日はサナリィももう攻めてこないでしょうし休んでいいわよ」

シュウイチ 「……」

成美ちゃんはある程度見切りをつけるとそう言ってエグザイル兵を労った。

エグザイル兵 「いえ、サクラ様、サクラ様こそお休みください我々は大丈夫です!」

ナルミ 「ふふ、ありがとう、でもこれは指揮官の務めでもあるわ、そして私は皆を無事生き残らせないといけないんだから」

エグザイル兵 「サクラ様…」

ナルミ 「さぁ、家族がいる者は家族の下にでも帰りなさい、あなたたちには近くにいるのだから」

エグザイル兵 「はっ! サクラ様こそ無理はなさらず、我々にとってサクラ様こそ主なのですから!」

エグザイル兵たちは全員立ち上がると成美ちゃんに一礼した。
成美ちゃん…こんなに信頼されているんだ。
僕はどうなんだろう…少なくともサナリィ内において成美ちゃん程の器はない。
でも、やっぱりは僕はみんなの信頼を裏切ったんだよね…。
それが凄く胸に痛かった…。

エグザイル兵 「ミクラ殿…」

シュウイチ 「え…?」

突然、エグザイル兵の一人が僕に話しかけてきた。

エグザイル兵 「我々はサクラ様に心から忠誠を誓っている」
エグザイル兵 「たとえ国が違えど…民族が違えど、まるで家族のように我々を気遣い、そして信頼してくれるサクラ様は我々の誇りだ」
エグザイル兵 「ミクラ殿はサクラ様の大切な方と見受けられる…決してサクラ様を裏切るな」
エグザイル兵 「もしサクラ様を悲しませることがあれば、この南米地区のエグザイル全てを敵に回すと思え」

シュウイチ 「…わかっていますよ」

エグザイル兵 「…失礼」

最後にその兵士は僕に一礼して、司令室を出て行った。
その人は黒人だった、恐らく現地の人なんだろう。
地球の裏側の…日本人の成美ちゃんを本当に信頼していた…そして命をかけられる人たち。
成美ちゃん…やっぱりその優しさは変わらないんだね。

ナルミ 「修一、辛いの?」

シュウイチ 「え? どうして?」

ナルミ 「さっき、私の軍がサナリィと交戦したわ、その時の修一の顔…とても苦しそうだった…」
ナルミ 「仲間がエグザイルと戦う、私が修一の仲間と戦う…それが修一には辛いんでしょ?」

シュウイチ 「ごめん…やっぱり辛い…どっちつかずな僕が…」

ナルミ 「修一は優しいものね…でも、辛い戦いはまだ続くわ…私はエグザイルの将、サナリィと戦わないといけないから」

シュウイチ 「僕も…止めはしない…成美ちゃんはエグザイルの兵士のみんなのために頑張っている…それを無下に否定は僕にはできないよ…」

ナルミ 「修一、ありがとう」
ナルミ 「修一も休んで、あなたの部屋に案内してあげるわ」

成美ちゃんはそう言うと司令室を出る。
ついてこい…ということらしい。

女性 「佐倉さん…」

ナルミ 「あら、華島さん」

突然、通路の奥から一人の女性が現れる。
その女性は華島さんと呼ばれ、僕たちと同じ黒い瞳と髪をしていた。
髪は長く、真っ黒な艶のある髪をポニーテールにして伸ばしている。
身長は僕や成美ちゃんより高く、160以上はあった。
服装はメイド服を着ている…一体誰だろう?

シュウイチ 「この人は?」

ナルミ 「華島 レオナさんよ、訳あって匿っているの」

レオナ 「華島 レオナです」

シュウイチ 「あ、三倉 修一です」

華島さんは日本語でしゃべり、行儀よく頭を下げた。
僕もつられて頭を下げる。

レオナ 「佐倉さん、あまり無理はしないでください、後で栄養のある料理を持っていきますからゆっくり休んでいてください」

ナルミ 「ありがとう、華島さん、でも悪いわ」

レオナ 「いいのですよ、佐倉さんには感謝したりませんから」
レオナ 「こんな私を匿い、あまつさえ私によくしてくれて」

ナルミ 「当然よ、同じ『日本人』なんだから」

レオナ 「佐倉さん…ありがとうございます」

シュウイチ 「……」

ナルミ 「修一…華島さんは日本人だけど人間じゃないわ」

シュウイチ 「え!?」

突然、成美ちゃんは小さな声でそんなことを言い出す。

ナルミ 「彼女はロボットなの、日本の華島博士が開発したロボット…」

シュウイチ 「で、でも…ロボットってとうの昔に廃棄されて、製造されてないんじゃ…」

そう、ロボットは新世暦元年に姿を現し、人類の愚行として放棄された存在だったはず。
それが再び造られたと?

ナルミ 「彼女はその素行ゆえ、日本国政府に身柄を狙われたの、だから私がこの南米に逃げ込んだ華島さんを匿ったの」
ナルミ 「さすがの政府もエグザイルの基地までは入り込めないからね」

シュウイチ 「…そんなことが」

ナルミ 「彼女がロボットだと知れたら無用な混乱を招くわ、これは私と修一の秘密よ?」

シュウイチ 「う、うん」

ナルミ 「ふふ、勘違いしないでね、華島さんは危ない存在じゃないわ、私たち人間と同じよ」

シュウイチ 「うん…わかってる」

レオナ 「佐倉さん、どうしたのですか?」

ナルミ 「なんでもないわ、華島さん、空いている部屋に修一を連れて行ってくれないかしら?」

レオナ 「わかりました、三倉さんこっちです」

シュウイチ 「あ、はい…」

華島さんは僕の手を取るとひっぱってくれる。

シュウイチ (温かい…それにいい匂いがする…とてもロボットだなんて信じられないよ…)

その姿はまさしく人間そのものだった。
どこがロボットなのか…もちろん人間そっくりに作っているんだろうけど、ロボットと思う方が難しいと思う。
それ位精巧だった。
でも、なぜにメイド服?

シュウイチ 「華島さん、華島さんはエグザイルに所属しているんですか?」

レオナ 「レオナでいいですよ、三倉さん、それと私は別にエグザイルに所属しているわけじゃありません」

シュウイチ 「そ、そうですか…」

レオナ 「三倉さんはどうなんですか?」

シュウイチ 「あ、僕も修一でいいですよ、僕は一応サナリィに所属しています」

レオナ 「サナリィに…?」

シュウイチ 「ええ…まぁ」

最も、今はエグザイルの基地内にいるわけだけど。
それを聞いて華島さ…レオナさんは訝しげに僕を見る。

レオナ 「きっと事情があるのでしょう、詮索はいたしません」

シュウイチ 「ありがと…」

レオナ 「…この部屋です、一応私の部屋の隣ですから、なにか困ったことがありましたら遠慮なくお申し付けください」

シュウイチ 「いや、それはさすがに…」

レオナ 「それでは、私は用意がありますから…」

レオナさんはそう言うと再びどこかへ向かった。
僕はしばらく呆然としながら、その後部屋にはいるのだった。





ナルミ 「修一…ごめんなさい…私は修一に迷惑をかけている」
ナルミ 「多分、これからも迷惑をかけることになると思う…」

レオナ 「佐倉さん、白ご飯とお味噌汁を用意しました、お食べください」

ナルミ 「華島さん…ありがとうね」

私は司令室で今の自分に悔やみ、懺悔していると華島さんが食器を持ってやってくる。
食器には温かい白ご飯と、味噌汁、そして卵焼きとたくあんの漬物があった。

ナルミ 「ありがとう華島さん、あなたのおかげでこの国でおいしい日本食が食べられるわ」

レオナ 「いえ、今の私にはこれ位でしか佐倉さんに恩を返せませんから」

ナルミ 「恩なんて…別にいいのよ、私は好きで華島さんを匿っているんだから」

レオナ 「佐倉さん、もしよろしければ私におふたりの話を教えてもらえないでしょうか?」

ナルミ 「私と修一の?」

レオナ 「はい」

ナルミ 「いいけど…一体どうして?」

レオナ 「何となく気になりました…御二方とても苦しそうに思えましたので…」

ナルミ 「…そうね、華島さんには話してもいいかもね…」

私は華島さんに私たちの話を話しはじめた。
華島さんは静かに聞いてくれて、少し気が楽になった気がした…。



…………。
………。
……。



『同日 深夜 フリーダム艦内』


カルタ 「成る程…そういうことだったのか」

僕はシュウとエグザイル統治者ナルミ サクラの関係を何とか調べてみた。
時間はかかったけど調べて成果は出た。
シュウとサクラの関係が…。
これでシュウが勝手に出て行った理由がわかった。



…そして、次の日。



『翌日 14:19 フリーダム艦内』


翌日…2度目のサクラ攻略戦の開始より少し前の時だった。
戦闘準備で皆余念のない時に突然艦内放送があり、全員ブリッジに召集された。
召集した人物はカルタだった。


カルタ 「みなさん、集まりましたね?」

マリア 「一体どうしたのカルタ?」

カルタ 「まずはみなさんこんな忙しい時にお集まりくださってありがとうございます」
カルタ 「今回皆さんを集めたのはある話をするためです」

クレス 「…それは?」

カルタはもったいぶった様子であった。
一体どうしたのだろうか?

カルタ 「皆さんの不安の種の話です」

マリーナ 「不安の種…?」

グレッグ 「まさか、シュウイチか!?」

グレッグがそう叫ぶと、カルタは『ええ』と静かに頷いた。

カルタ 「昨日僕はシュウとサクラの関係を調べてみました」

マリア 「関係? どういうことなの?」

カルタ 「まずはサクラの話です」
カルタ 「皆知っての通りサクラはシュウと同じく日本人です」
カルタ 「本名は佐倉 成美…今は没落した名家佐倉家の娘です」
カルタ 「佐倉家はシュウの家、三倉家とは関係があり、三倉家は分家に当たります」

ガンズ 「分家?」

カルタ 「そして、シュウとサクラは許婚にあたります」

マリア 「ぶっ!? い、許婚って…はぁ!?」

クレス 「さすがに…初耳だな…」

俺はマリア程とはいかずとも驚いてしまう。
よもやサクラにそんな相手がいたとは…しかもその相手がシュウイチとはな…。

カルタ 「シュウは間違いなくこの許婚に会いにいったんでしょう」

クレス 「とすると、シュウイチは今はサクラの元か」

マリア 「でも、それなら命に別状はなさそうね」

グレッグ 「たしかに、だが向こうに行ったとなると…」

ガルム 「当然、エグザイル側として出てくる可能性がありますな」

瞬間、場が凍る。
やむを得まいか…。

カルタ 「2%です」

マリア 「は?」

カルタ 「シュウイチが敵になる確率は2%です」

デルタ 「2%…」

なんといきなりカルタはシュウイチが敵として出てくるのは2%と言ってくる。

カルタ 「考えてください、あのシュウがいきなり僕たちに牙を剥くでしょうか?」
カルタ 「そんなはずはありません、遠慮なく攻略戦を始めて大丈夫です」
カルタ 「むしろ皆さん…シュウを迎えに行きましょうよ! シュウはやっぱり仲間なんですから!」

マリア 「そう…そうね…おっしゃ! やぁってやるわよ!!」

ガルム 「ふ、嫌なムードより高揚しているほうがやりやすいしな…」

アル 「はい! 自分いきなり先輩を失いたくないですから!」

グレッグ 「おし! お前ら聞いての通りだ!」

クレス (やるなカルタ…土壇場で一気に全員を纏め上げた)

昨日とは雰囲気がまるで違う。
昨日は気持ちで負けていたが、これなら…。

クレス 「グレッグ、作戦開始だ! シュウイチを迎えにいくぞ!」

グレッグ 「ああ! 各員これより本艦は第一種戦闘配備とする、全員持ち場につけ!」

マリア 「第一小隊いくわよ! 絶対シュウイチを助けるんだから!」

クレス 「ああ!」
アル 「はい!」

ガルム 「第二小隊、全員ミクラ君とはそう付き合いが長いわけではない」
ガルム 「だが、同じサナリィで戦った仲間だ、いくぞ!」

デルタ 「了解」
マリーナ 「わかりましたわ」

ガンズ 「各ユニットの整備もバッチリOKだ! いつでも出撃してくれ!」

俺たちはこの南米戦線最後の戦いへと望む。
このとき、まだこの先何が待っているのかは俺たちにはわからない。
ただ、希望が皆の胸にあったと思う。
それこそが、最大の勝利の鍵だろう…。



…………。



『同日 同時刻:エグザイル基地』


エグザイル兵 「サナリィ再び進行を開始!」
エグザイル兵 「第一防衛ライン突破! 本営に到着は時間の問題と思われます!」

ナルミ 「…はやいわね」
ナルミ (昨日は2機だけ本営前まで来たけど…今度は艦ごと?)
ナルミ (明らかにサナリィの戦い方が違う…まさかこれがサナリィの本当の戦い? だとするとこの基地の戦力だけではサナリィは抑えられないわね)
ナルミ 「援軍は間に合わないわね…仕方ないわね、私がうって出るわ!」

エグザイル兵 「サクラ様自身が!?」

ナルミ 「各員は持ち場を離れず、危なくなったら退却しなさい!」

エグザイル兵 「お、お待ちくださいサクラ様!」

ナルミ 「二度はないわよ? 各員生き残りなさい! それがこの統治者佐倉成美の命令よ!」

エグザイル兵 「は、はっ! サクラ様、どうか御武運を!」

シュウイチ 「…成美ちゃん」

ナルミ 「修一!? どうしてここに!?」

僕は基地が慌しくなったのを感じると成美ちゃんのいる作戦司令室に向かった。
成美ちゃんは丁度司令室を出るところだった。

シュウイチ 「出撃するの?」

ナルミ 「ええ、心配しないで修一、私は負けないわ」

成美ちゃんは笑って僕の横を通り過ぎようとする。

シュウイチ 「成美ちゃん、僕のエアフォースはどこ?」

ナルミ 「エアフォース? まさか、修一も出撃する気!?」

シュウイチ 「ああ、僕は嘘はつかない、成美ちゃんを守る!」

ナルミ 「だめよ、危険だわ! あなたが一番サナリィの力を知っているでしょう!?」

しかし、成美ちゃんは駄目だという。

シュウイチ 「だからだよ…だから、僕が行くんだ! 成美ちゃん! 僕のユニットはどこ!?」

ナルミ 「修一…それでいいの? 仲間と戦うことになるのよ?」

シュウイチ 「成美ちゃんを失いたくない…それだけだよ」

ナルミ 「わかったわ…こっちよ」

成美ちゃんはそう言うと先導して基地内を進む。

シュウイチ 「基地を下るの? 格納庫は下にあるわけ?」

ナルミ 「一応、サナリィのユニットだからね、あれは地下に置いてあるの」

この基地は元々アマゾンのジャングルの地下に建造された基地だけど(まるで○ャブロー)エグザイルの機体は地表近くの格納庫にあるようだった。
だけど、僕たちは逆にさらに下へと潜るのだった。

ナルミ 「この扉の向こうよ、ちょっと場所がなかったからこんなところだけど…」

成美ちゃんのいうこんなところとは分厚い鉄の扉だった。
この先にあるのか…随分厳重だな…ここまで厳重な場所にする必要があったのだろうか?

ナルミ 「私は自分のユニットをとりに行かないといけないから、修一とはここでお別れね」

シュウイチ 「うん、ありがとう成美ちゃん」

僕はそう言うとその分厚い鋼鉄製の扉を開いて中に入った。
しかし、中は真っ暗で何も見えない。

シュウイチ 「? ここは…成美ちゃ…!」

ガタァン!! ガチャ!

シュウイチ 「!? どういうこと、成美ちゃん!」

突然、扉が閉まる。
直後錠がかけられた音がした。

ナルミ 「ごめんなさい修一、あなたは戦いが終わるまでその『核シェルター』にいてもらうわ」

シュウイチ 「核シェルター!? どういうこと!?」

ナルミ 「ここならどんな戦いが起こっても潰れることはないわ」
ナルミ 「修一…ありがとうね、私を守ってくれるって言って…」
ナルミ 「でも、私にも私の戦いがある」
ナルミ 「勝手なようだけど…ここにあなたを幽閉すれば、あなたは絶対に助かるわ」

シュウイチ 「成美ちゃん…」

ナルミ 「さようなら、修一…」

シュウイチ 「成美ちゃん! 成美ちゃーん!!」





クレス 「ちぃ!」

ダァン! ドカァン!

俺は昨日と同じ様に敵陣の真っ只中で戦っていた。
敵数が多い、しかし昨日とは勝手が違う。
向こうも必死だがこっちも違う。

マリア 『クレス! 悪いけどデルタの所に行ってあげて! 囲まれて危険よ!』

クレス 「了解だ!」

アル 『このっ!!』

ドシュウ! ドシュウ!

アルもマリアもいつも以上の働きで戦場を翔けている。
俺は安心して第2小隊の方に向かう。

デルタ 『! そこ!』

ドシュウ! ドカァン!

クレス 「あれか!」

俺は第2小隊から孤立したデルタを発見する。
通常の人型ユニット4機に囲まれている。
いくらデルタでもあの数は危険だな。

クレス 「打ち抜く! 悪く思うな!」

ダァンダァン!
ドカァン!!

俺は敵の後ろから人型ユニットのジェネレーターを打ち抜き、2機撃破する。

デルタ 『大佐!?』

クレス 「はぁ!」

ザシュウ!

俺は即座にデルタのユニットの近くにいた敵ユニットをヒートブレードで切り裂く。

デルタ 『く!』

エグザイル兵 『しまっ!?』

ドシュウ! ドカァァン!!

デルタも即座に最後の1機を撃破する。

クレス 「大丈夫か、デルタ?」

デルタ 『はい、申し訳ありません大佐』

クレス 「すぐにガルム少佐の部隊に戻れ、まだ敵数は多い、孤立していると危険だ」

デルタ 『了解です』

俺はすぐにデルタを第2部隊に向かわせた。
俺もマリアたちの元に戻ろうとした時…。

カルタ 『クレスさん! クレスさんの位置から北に2キロの地点に未確認機の出撃を確認!』

突然、フリーダムから通信が入る。
未確認機…。

クレス 「未確認機? サクラか?」

カルタ 『わかりません、ですが反応が1機であるところ、間違いなく特機と思われます』

クレス 「了解した、俺が相手をすると、格パイロットには伝えてくれ」

カルタ 『了解!』

俺は機体を北に向けると、地面のエレベーターから発進する1機の機体を確認した。
なるほど、森林に隠れたこの基地ならではだな。
あれでは出撃を確認しにくい。
いつの間にか敵に囲まれるわけだ。

ナルミ 『あら? ふふ、久し振りね、アルベルトさん』

クレス 「サクラか!」

新しく出撃したユニットは全長約21メートル位、かなり細身の機体でろくな武装はなさそうだった。
色は青色で完全統一されており、その場の色から完全に浮いていた。
乗っているのはサクラのようだった。

クレス 「サクラ! シュウイチはどこだ!?」

ナルミ 『さぁてね、私を倒して基地を探してみたら?』

クレス 「そうだな…そうさせてもらおう!」



……………。



シュウイチ 「く…どうすれば…どうすればいいんだ…」

僕はあれからずっとこの核シェルターに閉じ込められている。
なんとか抜けられないかと考えていたがやはりどうにもならない。
第一外側から鍵を掛けられているから内側からはどうにもならない。

カツン…カツン…。

シュウイチ 「あれ?」

誰かが来る…誰だろうか。
足音はこっちに近づいてきて、やがて扉の前で止まる。

ギギギギギ…ガキィン!!!

シュウイチ (ヒッ!? な、なに!?)

なにか硬い物を引きちぎるような音が響いた。
一体外の人は何をしたんだ!?

ギギギィ…。

やがて、鍵のかかった扉が開いて外の光が中に差し込んだ。

シュウイチ 「う…あ!」

レオナ 「お迎えにあがりました、修一さん」

シュウイチ 「レオナさん!」

なんと現れたのはレオナさんだった。

レオナ 「お急ぎください、すでに佐倉さんは出撃しました、このままでは佐倉さんは死んでしまいます」

シュウイチ 「!?」

レオナ 「すでに修一さんのユニットの位置も確認しました…ついてきてください」

シュウイチ 「う、うん!」

僕はレオナさんに再び手を持たれる。
やがて、階段に…。

シュウイチ 「え!? ちょ、エレベーターは!? なんで階段!?」

エレベーターの隣に非常用の階段があるわけだけど、レオナさんはこの階段を選んだ。

レオナ 「こちらの方がエレベーターより速く着きます、申し訳ありませんが…」

シュウイチ 「え!?」

レオナさんは僕を突然抱え上げる。
瞬間…。

シュウイチ 「な、なんか体軽くなった気が!?」

レオナ 「重力緩和装置の影響です、今修一さんの体重は−50減です」
レオナ 「ショートカットします、しっかりつかまっていてください!」

シュウイチ 「ひぇぇっ!?」

レオナさんは助走無しで階段の折り返し地点まで一歩(1っ跳び?)で上り、再び一歩でまた折り返しまで…。

シュウイチ (ここら辺はロボットかも〜!?)

しかし、スピードが尋常じゃない。
通常人の一歩感覚で上っているわけだからものすごいスピードだった。

レオナ 「地表付近に到着です」

シュウイチ 「はぁ…はぁ…え?」

気がつくと作戦司令室前の通路のところに出ていた。
なんてこった。

レオナ 「時間を急ぎますので…申し訳ありませんが…」

シュウイチ 「へ?」

レオナさんは僕を抱えたまま、再び走り出す。

レオナ 「お恥ずかしいとは思いますが、こちらの方が早く着きます、格納庫までおおよそ1分です」

シュウイチ (もうどうにでもなれ!!)






クレス 「サクラ、サシで俺に勝てると思うのか?」

ナルミ 『そうね、普通にやったら勝てないわね』

クレス 「ならば投降しろ、命までとりはしない」

ナルミ 「ふふ、意外と甘い人だったのね…でも、投降するためにユニットで出撃なんて馬鹿はしないわよ!」

クレス 「!」

サクラはそう言ってエネルギーライフルを俺に放ってくる。
俺はそれを僅かな動きで回避する。

クレス 「それが答えか…サクラ」

ナルミ 「いくわよ! 裏切り者さん、このカラーマスターと佐倉成美が相手をするわ!」

クレス 「消えた!?」

突然、サクラが機体名と思われる言葉を言ったと同時にサクラのユニットはその姿を景色に溶かした。

クレス (なるほどステルスとジャマーを一体化させた代物か…)

あの無意味な青色の意味がわかった。
あれは姿を消すための複線だ。
おそらく機体のカメラに作用しているのだろう…肉眼なら確認できるのだろうな…。

クレス (恐ろしい兵器だな…)

理屈はわかった。
細身の機体は熱量を抑え、より景色への浸透を容易にするため。
そして、自身の機体を見えにくくし、なおかつ相手のカメラを壊して更に姿を消す。
こうなってはレーダーにも姿は映らず、ロックもできない。
カラーマスターとはよくいったものだ。

クレス (見える見えないで判別できると思うなよ…サクラ)

言っていることはマリーナのビットと同じだ。
むしろ、殺気が残る分、お前の方が見える!

クレス 「そこ!」

ダァン!

ナルミ 『!? 見られた…? いえ、偶然よね』

クレス (外したか…)

とはいえ、ビットより人が操る分、動きのバリエーションが多い。
特にマリーナの場合は自身も激しく機体を動かすため、ビットにまでそこまでの力を割けない。

ナルミ (…不安は否めないわね…なにせあのアルベルトさんだものね…)
ナルミ 『一撃でしとめる!』

クレス 「なら、これだ!」

俺は多弾頭ミサイルをばら撒く。
すると…。

ナルミ 『なっ!?』

爆発を貫いてエネルギー兵器が俺を襲う。

クレス 「そこだ!」

俺はその攻撃の先にライフル弾を放つ。
サクラの攻撃は被害の少ない肩で受ける。
といっても掠めただけだが。

ナルミ 『やられた…く…まさか攻撃と同時にミサイルをばら撒かれるなんて…』

サクラの機体はダメージはほとんどなさそうだがもう姿は見えていた。
ただし、形は一緒だが色が違う。
深緑色の機体でところどころ黒が混ぜられたカラーのユニットだ。

ナルミ 『さっきのでステルスがやられたわ…さすがね』

クレス 「もう一度言う、投降しろ、お前に勝ち目はない」

ナルミ 『…ステルスやられただけじゃない! まだ負けてないわ!』

クレス 「ち…馬鹿が…」

サクラは距離を離して俺をロックしてくる。
俺はサクラをロックする。

マリア 『クレス! 援護するわよ!』

クレス 「マリア!?」

ナルミ 『増援!? くっ!』

マリア 『くらいなさい!』

マリアはサクラを攻撃するが、サクラは器用にマリアの攻撃を回避する。

シュウイチ 『ま、まってください!』

ナルミ 「修一!?」
マリア 『シュウイチ!?』

突然、シュウイチがエアフォースに乗って現れる。

シュウイチ 『みんな! もう戦いを止めて!』

クレス 「シュウイチ…」

マリア 『シュウイチ…あなた、無事だったのね』

シュウイチ 『成美ちゃん、もうよそうよ、やっぱり僕は戦いは向かないんだと思う』
シュウイチ 『だから、僕は成美ちゃんを失えないし、サナリィのみんなも裏切れないんだ』

ナルミ 『修一…あなたらしいわ…でもね、私は彼を倒さないといけないのよ!』

クレス 「!」

サクラは突然俺をロックして攻撃してくる。

クレス 「くっ…サクラ!」

マリア 『クレス! く、シュウイチ…悪いけど!』

シュウイチ 『成美ちゃんにロック反応!? まさか!』

マリア 『落ちなさい!』

ナルミ 『後ろ!?』

突然のことだったろう。
サクラは真後ろからマリアに狙われる。
サクラにすでにそれを回避する術はない。
ないはずだった…。

シュウイチ 「あぶない! 成美ちゃん!」

ナルミ 「!?」

ドカァ! ズドォン!!

突然だった、シュウイチは咄嗟にサクラをマリアの攻撃から庇ったのだった。
サクラを庇ったシュウイチはコックピットを貫かれた。

クレス 「!」

マリア 『う…うそ…シュウ…イチ…?』

スピーカーからまるで信じられないといった声がこぼれる。
誰も考えなかったろう…まさか…こうなるとは…な。
しかし…一番ショックを受けたのは…。

ナルミ 『修…一…シュウ…イチ…どうして…ああ…』

シュウイチの機体は力なく地表に落ちる。
今、ナルミにはこの光景がスローモーションにでも見えているのだろう…。

ズガシャァン!!

ナルミ 「修一ーっ!!」

やがて、シュウイチの機体は爆発することなく地表に激突する。
そして、サクラの悲痛の叫び。

クレス 「……」

俺たちに争う気力はすでになかった。
みな、コックピットに綺麗に穴の開いたシュウイチのエアフォースを見ていた。
やがて、俺たち3人はエアフォースの近くに降り立つ。

ナルミ 「私のせいで…修一が…」

マリア 「どうして…あんなことを…」

クレス 「……」

? 「……い」

クレス 「…?」

ナルミ 「いま…何か?」

突然、声が聞こえた。
なんて言ったかは聞き取れなかったが。

? 「……さーい」

クレス 「エアフォースから…?」

マリア 「まさか!?」

ナルミ 「ああ…修一!」

シュウイチ 「おおーい! あけてくださーい!」

クレス 「待っていろ! 今こじ開けてやる!」

俺は急いでナイトメアに乗り込むと、エアフォースのコックピットをこじ開けた。

シュウイチ 「ふぅ…助かっ…うわっ!?」

ナルミ 「修一っ!」

ナルミはコックピットが開いてシュウイチが出てくると真っ先に抱きついた。

ナルミ 「修一…よかった…」

シュウイチ 「成美ちゃん…」

マリア 「よく生きていたわね…シュウイチ」

シュウイチ 「いえ、偶然か奇跡か僕の体をそれる様に機体に穴だけあけたんですよね」
シュウイチ 「まぁ、その性でエアフォースは完全に機能停止して出ることも出来なくなったんですけど…」

マリア 「なんにせよよかったわ…あれじゃ目覚め悪いもの…」

クレス 「サクラ…」

ナルミ 「…?」

クレス 「サクラ…お前は今のままでいいのか?」

ナルミ 「今のまま…」

クレス 「お前が何故エグザイルにいて、そして戦うのかは知っている…」
クレス 「だが、このままでいいのか…少なくとも俺はエグザイルを離れた…お前はまだエグザイルとして戦うか?」

ナルミ 「…私は…」

シュウイチ 「成美ちゃん…行こうよ、僕と一緒に…」

ナルミ 「修一…わかったわ…完敗ね…私の負けよ」

クレス 「…シュウイチの救出及びサクラの撃破を確認だ、フリーダム、敵基地に通告頼む!」

…こうして、俺たちの南米戦線は終わりを告げる。
つぎは…極東…東アジア!


…NEXT OPERATION A GO




Strategy of the following!


ナルミとの戦いを終えたサナリィは一旦アメリカのセシルの下に戻る。
次の目的地は東アジア『中国』。
しかし、中国の前には日本、朝鮮半島がサナリィの進行を遮る。
ユーラシア大陸に入るにはこの日本を攻略しなければならない。
アメリカから一気に太平洋を横断して向かうサナリィ…しかしエグザイルはこの太平洋上でサナリィを襲う。
そして…ある強敵がクレスを襲う。

次回 UNIT

OPERATION 18 『異形』


クレス 「復讐か…恐ろしいものだな…」




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