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POCKET MONSTER RUBY



第5話 『目標はいつだって高く!』




現在位置:116番道路側出口
時刻はまだ昼時だが、かなり気分は鬱。



ハルカ 「はぁ…何でこんなに疲れてるんだろ?」

まずはため息、若いって言うのに自分でも不安になってくる。
私は右手に持っている鞄を見て項垂れる。

ハルカ 「何でこんなことしてるんだろ私?」

ジグザグマ 「ジグ…?」

いつものように外に出しておいているジグザグマが首を傾げる。
いや、説明してもわからないでしょ…。
私がそんなことを考えながらカナズミシティの前に着くと、声が聞こえた。

デボンの馬鹿社員 「あ〜その荷物は…よかった無事だったんだね!」

ハルカ 「……」

引っ掛かる言い方をしてくれる。
私が無事なのが嬉しいのか、荷物が嬉しいのか…。
多分後者だろうけど…私に限ってそんなミスするとも思われないだろうし。
以前にこの人の目の前で胴回し回転蹴りを披露したのが脳裏によぎる。
私ロクな死に方しないかも…。

デボンの馬鹿社員 「本当にありがとう! えっとこの前は急ぎでお礼できなかったけど、これをあげちゃおう!」

ハルカ 「? モンスターボール?」

が、通常のものとは少し違った。
色は青色で、見たことのないタイプだった。
私はそれを両手で受け取る…しかも二個。

デボンの馬鹿社員 「あれ、もしかして見たことなかった? それは『スーパーボール』って言って、『モンスターボール』よりも捕まえやすいボールなんだよ」
デボンの馬鹿社員 「進化系とかなると、通常のモンスターボールでは捕まえにくいから、そう言うのに使うといいと思うよ」

ハルカ 「へぇ…あ、それってこれとどっちが強いんですか?」

私はバッグから、ジグザグマが拾ってきたボールを社員に見せる。
かなり強いとは聞いたけど、これとはどうなんだろ?
社員はそれを見ると、ぎょっと驚く。

デボンの馬鹿社員 「わっ! これは『ハイパーボール』だよ!? 『スーパーボール』よりも更に強力な奴だよ…この辺りには売ってないのになぁ」

この辺りでは手に入らないらしい…どこまでレアなのよ。
ジグザグマ恐るべし。

ジグザグマ 「ジグジグ…?」

デボンの馬鹿社員 「ああ…なるほど、ジグザグマが拾ってきたんだね」

社員は意外にも気付く。
結構鋭いじゃない…それでどうしてあんなにトロイかな。

ハルカ 「ええ…そうなんですよ、色々拾ってきてくれるんですけど、意味のわからないものも多くて」

デボンの馬鹿社員 「じゃあ、見せてみてよ…良かったら説明してあげるよ」

ハルカ 「本当ですか…助かります」

正直嬉しかった。
私ってばこう言う知識がないから、覚えていかないと色々大変になるだろうから。
心の中でこの人のランクをアップさせた。
まず、私は一番使い道のわからない金色の玉を取り出した。

デボンのトロ社員 「それは文字通り『きんのたま』だね…今の所使い道はなくて、換金用って言われてるんだ」

ハルカ 「そうなんですか…いくら位なんでしょう?」

私はそれを見ながら聞く。
大きさは大粒の飴玉くらいで、さすがにそこまで価値があるとは思えない。

デボンのトロ社員 「そうだね、5000円位にはなるよ」

ハルカ 「5000円ーーー!?」

かなり驚く。
さすがは金。
これひとつで3日は食べられそうね…。
私は期待に震えながらも、この前アチャモに食べさせた飴を見せる。
これを食べた後に進化したと言うまさに不思議な飴だわ。

デボンのトロ社員 「お、これは『ふしぎなアメ』だよ」

そのままらしい…何て言うか特別な名称があるわけじゃないのね。

デボンのトロ社員 「実は、この飴自体がどこで生産されているのかわからないんだよね…だから名前とかもなくて」
デボンのトロ社員 「それでも、大昔の頃からあるまさに不思議な飴なんだ」

ハルカ 「…は、はぁ。で、結局効果は?」

デボンのトロ社員 「凄いよこれは、何とポケモンに食べさせるとレベルが上がるんだ!」

ハルカ 「は…?」

デボンのトロ社員 「えっと、まぁわかりにくいかもしれないけど、単純にポケモンが強くなるとか、成長するとか思えばいい」

ハルカ 「グ○コみたいなものですか?」

デボンのトロ社員 「そ、そうだね…一粒1レベルってとこ」

微妙な所だ。
実際にはそれほど効果があるものなのだろうか?

デボンのトロ社員 「でも、あまり多用はしないほうがいいと思う、やっぱりちゃんと努力して成長した方がポケモンは強くなるから」

ハルカ 「そうですか…気をつけます」

なるほど、楽して強くなるのにデメリットがないわけないもんね。
私は次に最初の頃ジグザグマが拾ってきた薬を見せる。
瀕死のアチャモを助けた凄い薬らしい。

デボンのトロ社員 「うん…これは『げんきのかけら』だね」
デボンのトロ社員 「これもこの辺りでは売ってないんだ…効果も凄いよ、『ひんし』のポケモンを再び戦わせることができる位」

ハルカ 「あ、やっぱり凄いんだ…」

これで納得、アチャモが助かったのは必然らしい。
私は意味のわからない薬を4つほど出す。
社員はひとつひとつ眼を通して説明してくれる。

デボンのトロ社員 「えっと、左から行くけど、まずこれは『かいふくのくすり』だよ、『ひんし』でなければどんなポケモンでも全快する最高級の薬だ」
デボンのトロ社員 「そして、その隣が『なんでもなおし』…やけど、こおり、ねむり、どく、こんらん、体力以外なら何でも治してくれるよ」
デボンのトロ社員 「次は『タウリン』だね…ポケモンに使うとちょっと力が強くなるよ。と言っても、栄養剤みたいなものだから安心して使ってね」
デボンのトロ社員 「最後は『ポイントアップ』…非売品って言われてるからちょっと効果が曖昧だけど、どうも『パワーポイント』を増やす効果があるみたい」

ハルカ 「…??」

最後は意味がわからない。
パワーポイント?

デボンのトロ社員 「えっとね、ポケモンには技を出す時にある力を使っているって言われているんだ」
デボンのトロ社員 「それが『パワーポイント』、一般的には『PP』って呼ばれてる。そして、『ポイントアップ』は文字通りそれを上げる効果がある」
デボンのトロ社員 「と言っても、実際どれ位上がるかわからないし、ポケモンの体調や能力によって全然差が違うみたいだからよくわからないんだ…」

ハルカ 「デメリットはあるんですか?」

デボンのトロ社員 「う〜ん、とりあえずはないよ。まぁ、レアな道具を失ったって言うのはある意味デメリットかもね」

とりあえず一通り聞き終わる…。
結構長かったわね。
私は道具を全てバッグにしまう。
そして、一礼する。

ハルカ 「どうもすみませんでした、忙しい所に」

デボンのトロ社員 「いやいや、役に立てて嬉しいよ…本当に世話になったし」
デボンのトロ社員 「あ! そうだ、もしよかったら会社の方に来てよ。社長に会って欲しいんだ」

ハルカ 「は、はぁ…」

社長とまで言われてはさすがに断るのもためらわれた。
ってなわけで、まだもう少しカナズミに滞在しそうである。



………。
……。
…。



デボンのトロ社員 「到着! さぁ遠慮なく入ってよ」

社員はそう言って中に入っていく。

ハルカ (へぇ、ここがデボンコーポレーションの本社…)

入り口付近に配置されていた、大理石の石柱に大きくそう彫られてあった。
確かカントー地方でものシルフカンパニーとかが有名だったわね…。
とりあえず私は中に入ってみた。
ジグザグマはさすがにボールにしまっておいたけど。

ハルカ 「……」

中に入るとまず空気が違った。
会社独特の空気清浄機が外とは違うと言うことを教えてくれる。
そして、入ってすぐの所にスーツに身を包んだ受付嬢が礼をする。

受付嬢 「ようこそ『デボンコーポレーション』へ」

ハルカ 「あ、どうも…」

さすがに一流の会社。
思わず頭が下がるってこう言うことを言うのね。

デボンのトロ社員 「さぁ、こっちこっち」

社員は手招きして階段の方に向かう。
どうやら上の方にいるようね。
そして、3階に着いた所で社員が止まる。

デボンのトロ社員 「…ちょっと待っててね」

ハルカ 「……」

私は無言で頷く。
そこは、ある部屋の前だった。
社員はその部屋に入っていく。
扉はまさに高級感溢れ、ネームプレートにはこう書いてある。

『社長室』

ハルカ (社長ねぇ…本当に会わせる気かしら?)

かなり不安がよぎるが、すぐに社員がドアを開けて手招きする。

デボンのトロ社員 「さぁさぁ入って入って!」

ハルカ 「は、はぁ…」

軽すぎるでしょいくらなんでも…社長室なのに。
さすがに礼儀を忘れないように私は部屋へと入っていく。



………。



中は結構広く、会議室にあるような大きい長方形テーブルが中央に配置されていた。
その通り会議ができるようにだろう。
壁際には大事にケースに入れてある石もあった。
飾られているってことは凄い石なんだろう…多分。
そんなこんなで私は社長のテーブルの前に立っていた。
思わず社長と目が合う。
細目でとても威厳のある顔だった。
初老…と言うには若すぎる顔つきで、まだまだ現役と言った感じの若さは感じられる。
私はさすがにちょっと退いた…。

社長 「成る程…君が例の荷物を取り返してくれたというハルカちゃんか」

やや低音と言った声で、優しく語り掛けてくる。
ダンディーだわ…。

ハルカ 「…どうも、お初お目にかかります」
ハルカ 「私、ミシロタウンからやってきました、ハルカと申します」
ハルカ 「お会いできて光栄です、ツワブキ社長」

私は知りうる限りの丁寧さでまさしく教科書通りの自己紹介をする。
すると、社長は驚いたように私を見る。

ツワブキ 「…私のことは知っていたのかい? 少し意外だったよ」

ハルカ 「…まぁ、こちらでは有名な方ですし。TVでも見たことがあります」

と言っても偶然だが、まぁそれを気にすることもないでしょう。
私が当然のようにそう言うと、社長はやや照れくさそうにする。

ツワブキ 「そうか…まぁとりあえずそれは置いておこう」
ツワブキ 「実は、どうしても君に頼みたいことがあるんだ」

ハルカ 「私に…それは?」

私がそう言うと、社長は少々困った顔をして語りだす。

ツワブキ 「ふむ、実は…この荷物をカイナシティにいるクスノキと言う男に届けてほしいんだ」

ハルカ 「なるほど…護衛も兼ねて、ということですか」

ツワブキ 「うむ、今回のこともあるので、安全に届けたいんだ」
ツワブキ 「今回、マグマ団が関わっている以上、ポケモントレーナーに頼むのが適任だと思ってな」

ハルカ 「マグマ団…?」

私が疑問を浮かべていると、社長は語りだす。

ツワブキ 「…最近、特に活発に動いている集団だ」
ツワブキ 「君も何回か見ていると思うが、赤い装束に見を包んだ連中だ」

私はそこでコスプレ野郎と一致する。
間違いないわね。
あいつら…マグマ団って言うんだ。

ツワブキ 「目的は今の所詳細がわかっていない…ただ言えることは、今回この荷物を確実に狙っていると言うことだ」
ツワブキ 「子供の君にこんなことを頼むのは大人として最低だと思う…だが、子供が持っているとも思いにくいだろうからな」

ハルカ 「……」

私は少し考えた。
今の所、出来ることはない。
他に進む道がない以上、やってもいいと思った。
マグマ団がポケモントレーナーの集団であるなら、いい修行にもなりそうだ。
私は心の中で納得する。

ハルカ 「わかりました、引き受けます」
ハルカ 「マグマ団にはもう関わってしまいましたし、社長が頭を下げてまで頼まれては、嫌とは言えません」

ツワブキ 「…すまない、本当に助かるよ」
ツワブキ 「ああ、そうだ…カイナシティに向かうには、ムロタウンを経由するしか今の所道はないと思う」
ツワブキ 「海を越える必要があるのだが、トウカシティの西に居を構えているはずの『ハギ』と言う男に頼むといい」
ツワブキ 「紹介状も書いておくので、持っていくといい」

ハルカ 「はい、わかりました」

確か『ハギ』ってこの前助けた老人よね。
何て言うか、偶然と呼ぶには出来すぎてるわ。

ツワブキ 「後、ムロタウンに着いたら、この手紙を『ダイゴ』と言う男に渡してくれないか? 恐らくはまだムロタウンにいると思う」

そう言って社長は手紙を2枚私に渡す。
ひとつは紹介状、もうひとつの方がその手紙だろう。
私はそれらをバッグに入れる。

ハルカ 「じゃあ、引き受けました」
ハルカ 「ただ、いつになるかはちょっと…」

ツワブキ 「わかっている、君の時間を束縛するつもりはない」
ツワブキ 「旅のついでと言う感じで構わない、街に着いたら思い出してくれるくらいでな」

ハルカ 「そう言ってもらえると気が楽になります」

私は微笑してバッグを背負う。
とりあえずやることは出来た。
今は出来ることをひとつひとつやっていこう。
カガミとは結局会えなかったけれど、案外向こうで会えるかもしれない。
私がそんなことを考えて背中を向けると、社長が立ち上がって呼び止める。

ツワブキ 「待ってくれハルカちゃん! よければこれを持っていってくれ」

そう言って社長は何やら黄色の小型機械を差し出す。
使ったことはないが見たことはある。
確か…リンカちゃんが私に貸した物と同じ奴だ。
携帯と言ってたけど、ただの電話にしては大きい気がする。

ハルカ 「ちなみに…これは何ですか?」

ツワブキ 「それは『ポケナビ』と言ってね…最近のトレーナーなら大抵は持っているものだ」
ツワブキ 「機能は多数搭載している、使い方は実際に使ってみるといいだろう。ただ、私のお古で悪いが」

ハルカ 「いえ、ありがとうございます! これって結構高価なものなんでしょう?」

私がそう言って礼を言うと、ツワブキ社長は嬉しそうに微笑んでくれる。
う〜ん、やっぱりダンディーだわ。

ツワブキ 「一応、何ができるかだけは説明しておくよ」
ツワブキ 「まず、タウンマップ。ナビと言うだけあって、自分の現在位置とホウエン地方のマップを見ることが出来る」
ツワブキ 「拡大縮小もできるので、迷った時は頼るといい」
ツワブキ 「次に、トレーナーアイ。これはトレーナー同士で使いあえばわかると思う」
ツワブキ 「ちゃんと電話をかけることも出来るから、登録なども自由にするといい」
ツワブキ 「最後にコンディションとリボン確認機能だ」
ツワブキ 「コンディションは、ポケモンをモニターすることで大まかだがコンディションを表示してくれる」
ツワブキ 「リボン確認は、トレーナーカードとの連動で今まで取得したリボンを登録することが出来るよ」

ハルカ 「リボンですか…それってどういったものなんですか?」

私はリボンについて聞いてみる。
まだ手に入れたことはなかった。

ツワブキ 「そうだね、一番身近なのはコンテストリボンだろう」

ハルカ 「コンテスト…?」

またしても聞きなれない言葉が。

ツワブキ 「各開催場所にて行われるポケモンコンテストのことだよ」
ツワブキ 「バトルとは違い、ポケモンの強さではなく内面的な勝負をしようということさ」
ツワブキ 「と言っても、口では説明しづらいな…興味があればカイナで見てみるといい」
ツワブキ 「参加はできないが、見学くらいはできるだろうから」

ハルカ 「はぁ…」

とりあえず今の所どうでも良さそうだった。
私は改めてポケナビを見る。
ちゃんとポケットにも入るサイズなので安心だ。
私はもう一度バッグを確認し、今度こそ背中を向けた。

ハルカ 「それじゃあ、行ってきます!」

ツワブキ 「ああ、気をつけてな…」

私はひとつ頷いて会社を出る。
そして、改めて空を見上げると…。

ハルカ 「もう夕方やん…」

さすがに今日はもう一泊することにした。
そう思ったところでふと嫌な予感がする。

ハルカ 「空いてるのかな?」

以前は空いてなかった。
大抵カナズミは込むだろう。
と言うことは…。

ハルカ (まぁ、嫌とは言わないでしょうけどね…)

それでも、頼るのはどうかと思い、私はポケモンセンターに向かった。



………。
……。
…。



受付嬢 「ようこそ、あらハルカさん」

ハルカ 「あはは…今日は部屋空いてます?」

私はそう言って苦笑しながら聞く。
すると、受付嬢も苦笑して…。

受付嬢 「も、申し訳ございません…今日も満席で」

ハルカ 「…トップだけ?」

受付嬢 「……」

コクリと頷かれる。
正直ダレる…今回は本気で野宿しようかな。
と思っていると、妙な視線を感じる。
私はその方向におもむろに視線を移す。
そして、私はこの時ほど偶然を疑ったことはありませんでした…。



………。



ツツジ 「あはは…やっぱりハルカさん往生したんですね」

ハルカ 「は、ははは…」

もう笑うしかなかった。
結局またツツジさんのお宅に泊まる事に。
まぁ、ツツジさん曰く親友だからいいんだけど…。



………。



リンカ 「あ、お帰りツツジ〜って、ハルカちゃん…あははやっぱり」

ハルカ 「やっぱりですか…そうですか」

もはやリンカちゃんもわかっていたようだ。
こうなることを…。
私は改めてため息をついた。

リンカ 「で、ツツジ…どうだった?」

ツツジ 「ええ、問題はなかったですよ」

ハルカ 「…? 何かあったんですか?」

私は不思議に思ってそう聞く。
すると、ツツジさんは少々困った顔で。

ツツジ 「ええ、ちょっと…ポケモンが大きなダメージを受けて」

ハルカ 「バトルで…ですか?」

私がそう言うと、ツツジさんはやや暗い顔で頷く。
よっぽどの負け方をしたんだろう…かなり沈んでた。

リンカ 「…まぁ、あれじゃあね。相手が悪かったわね」

ツツジ 「それでも…あんな負け方をしたのは初めてです」

ハルカ 「…どんな相手だったんですか?」

ツツジ 「…使っていたのは『ヘルガー』でした。相性は明らかにこちらが有利なのにも関わらず、『かえんほうしゃ』一撃で負けてしまいました」

私はそこで凍りついたような戦慄を覚える。
間違いない…カガミだわ。

リンカ 「ヘルガーなんてこのホウエン地方にはいないポケモンよね…見たことなかったもん」
リンカ 「それでもあれだけレベルが違うと、ねぇ…」

ハルカ 「……」

私は驚愕する。
あのツツジさんでさえ、一撃だった。
経験上、ツツジさんのノズパスはかなり固い。
炎タイプの技では恐らくほとんどダメージを与えられないはずだわ。
それでも一撃…かぁ、私のポケモンじゃどうにもならないわ。
カガミに勝つのは今は無理だわ。

ハルカ (会ってどうすればいいんだろう?)

途端にそんな疑問が出てきた。
実力の差は明白。
だったら強くなればいいのだが…。
そんなに簡単に埋まる差ではなく思えた。

ツツジ 「ハルカ、さん?」

ハルカ 「え…? あ、はい?」

私はやや反応が遅れる。
すると、ツツジさんが心配そうに見ていた。

ツツジ 「…どうかしたんですか? 怖い顔をしてますけど」

ツツジさんはまるで自分のことのように心配してくれる。
本当にお人好しなんだから…私は心配かけないように強がる。

ハルカ 「あははっ、ちょっとね〜…まぁ気にしないでよ」

空笑いが響く。
正直、笑って済ませられないよね…。

リンカ 「ハルカちゃん…もしかして心当たりあるの?」

ハルカ 「う…」

痛い所を突かれる。
でも隠すのもあれだし…。

ハルカ 「まぁ。ちょっと…ね、戦ったことあるのよ」

リンカ 「で、負けたと…」

…そうだけどさ。
私は答えられなかった。

ツツジ 「えっと…その、知り合いなんですか?」

ハルカ 「…ううん、前に一度会っただけ」
ハルカ 「もしかして、ジムバッジを集めてるのかな?」

ツツジ 「ええ、多分そうだと思いますよ…そのために来たようでしたし」

ハルカ 「……」

だとしたら、最終目的地は同じ…?
私は考える。
なら、歩けばいい。
最後にたどり着く場なら、きっと追いついている。
そうでなければその場に立てないだろうから。
腹は決まった! 結局やるならそれ位目標が高くないと!
改めて、私は目標を決める。
まずはジムを全部周る!
そしてバッジをゲットする!
その後はポケモンリーグに進む!
そして最後にカガミをぶっ倒す、以上!!

ツツジ 「とりあえず、ハルカさんはこれからどうするんですか?」

ハルカ 「う〜ん、まずはムロって所に行く予定」

ツワブキ社長の依頼があるからね。
海を越えるのは意外だったけど。

リンカ 「なるほど、ムロジムかぁ〜…あそこはハルカちゃんならいけそうだもんね」

ハルカ 「え? ジムあるんですか?」

そこまでは知らなかった。
思いの他意味がありそうだ。

ツツジ 「ええ、ありますよ…あそこのジムは格闘タイプですので、ハルカさんも色々学ぶことは多いと思います」

ハルカ 「格闘タイプかぁ…えっと」

岩に強いんだったわよね…私のポケモンに岩はいないわね。
でもそう言えば、格闘って何に弱いんだろう…?
私がひとりで唸っているとツツジさんが私を見る。

ツツジ 「どうか…したんですか?」

ハルカ 「え? あ〜その、格闘タイプって何に強かったり弱かったりするのかな?って…」

私がそう言うと、ツツジさんがクスクスと笑う。
うう…どうせ無知よ。

ツツジ 「えっとですね、格闘タイプは…飛行とエスパーに弱いんです」

飛行…キャモメ、アゲハント。
エスパー…該当無し。

ハルカ 「う〜ん…じゃあ逆に格闘に相性が悪いのは?」

ツツジ 「岩、悪、氷、ノーマル、鋼と言った所ですね」

岩…該当無し。
悪…該当無し。
氷…該当無し。
ノーマル…ジグザグマ。
鋼…該当無し。

ハルカ 「悪くもないか…結構ガチンコになりそうね」

リンカ 「まぁ、ハルカちゃんなら何とかするでしょ! さぁ、今日も張り切って夕食作りますかな♪」

ツツジ 「ええ、期待してますね☆」

ハルカ 「あはは…楽しみにしてます」

こうして、今日も1日お世話になった。
そして、次の朝7時に私は出発する。



………。
……。
…。



ハルカ 「……」

私はカナズミシティを出て歩く。
そしてトウカの森を抜けて私はハギ老人の館に着いていた。
私はそれを見据えて歩く。
そして、私はおもむろに海を見た。
あの先にカガミがいるかもしれない。
私は決意を込めて一歩一歩踏み出した。





………………。





ここからは、まだカナズミにいた時、ハルカのポケモンたちが何をやっていたかと言うお話です。
夕食後、誰もいないジム内で自由に放されたポケモンたちは、ハルカが寝ている間に何をやっているのか…?

ワカシャモ 「……」

ジグザグマ 「……」

アメタマ 「……」

タネボ− 「……」

キャモメ 「……」

アゲハント (…どうしようかなぁ)

女4匹の中、男はアゲハントとキャモメのみ。
その内の一匹、アゲハントは悩んでいた。

アゲハント (何で、こうも静かなのかなぁ…?)

全員がそこまでまだ親しくないと言うのが理由の一つだが、他の理由としてそう言う性格のポケモンが集まってしまったことが問題であった。
かく言うアゲハントもおっとりな性格故に騒がしいわけではない。
だが、どう考えても輪に入りきれないのが彼の悩みだった。

アゲハント (はぁ〜、でも動かないと何も進みませんよね〜)

しかし彼は行動が遅かった。
おっとりだったから…。
しかしながら、彼は今回全力で頑張ることに決めていた。
まずは、リーダー的な役割を持っているワカシャモに近づいて話し掛けることにした。

アゲハント 「あの〜…」

ワカシャモ 「ひっ!?」

ワカシャモはびくぅっと体を震わせて後ずさる。
一番実力もあり、ハルカの信頼も厚いワカシャモだが、この娘は臆病である。

アゲハント 「あ、すみません〜…驚かすつもりはなくて…その〜」

ワカシャモ 「あ…ごめん、そういうつもりじゃ」

ワカシャモは深呼吸をして落ち着く。
リーダーとしての自覚を一応持っているのか、自分で取り締まろうと皆を見る。

ワカシャモ 「み、皆〜! ちょっと聞いて〜!」

ジグザグマ 「うん?」

タネボー 「…はい〜?」

アメタマ 「……?」

キャモメ 「ん〜?」

アゲハント 「……」

みんなの注目を集め、ワカシャモが手を合わせて言葉を進める。

ワカシャモ 「皆! 折角の機会だから自己紹介をしませんか?」

皆は注目して頷く。
ここまでは順当だった。

ワカシャモ 「えっと、まずは私から…私はワカシャモ。以前はアチャモだったけど、進化したのよろしくね♪」

ワカシャモはそう言ってジグザグマに振る。
ジグザグマはややうろたえながら少しづつ声を絞り出す。

ジグザグマ 「え、え、え…えっと、その、その…あう」

ジグザグマはジグザグと左右に往復しながらひとつづつ声を出していく。

ワカシャモ 「ジグちゃん! 落ち着いて…」

ジグザグマ 「う、うん…す〜…は〜…」

ワカシャモ 「落ち着いた?」

ジグザグマ 「……」こくこく

ジグザグマは控えめに二回頷くと、もう一度声を出す。

ジグザグマ 「えっと…ジグザグマです。まだ進化はしてませんけど、仲良くしてください」

ジグザグマが何とか終えると、次はワカシャモがタネボーに振る。
すると、タネボーはゆっくりと声を出す。

タネボー 「え〜っと〜〜…わたしは〜……タネボ〜…です〜」
タネボー 「みなさん〜〜仲良く、してくださいね〜〜〜…」

タネボーは至極ゆっくりと笑顔でそう自己紹介する。
普通に接していると、まさに『おっとり』な性格のようだが、この娘は『ずぶとい』性格である。
何事にも動じないその姿は確かに、納得する所があるだろう…。
タネボーの自己紹介に、皆の表情はやや和らぎ、徐々に皆の間が狭まってくる。
次はアメタマが自分から自己紹介を始める。

アメタマ 「えっと、アメタマです! あんまりバトルは強くないですけど、よろしくお願いします!」

そして、ハイッとキャモメに回す、それを受けてキャモメは。

キャモメ 「僕はキャモメ〜、あんまり飛行技は使えないけど一応鳥ポケモンだよ〜」

そして、最後に残ったアゲハント。

アゲハント 「えっと〜…色々と迷惑をかけるかもしれませんが、仲良くしてください〜」
アゲハント 「何かと行動が遅かったりするので〜…気長に見てくださいね〜…」

こうして、全員の紹介が終わる。
そんなこんなで、どうにか皆の中に会話が生まれた。
ひとまず、成功と言うべきでしょう。

ワカシャモ 「ジグちゃんは、控えめだから…もうちょっと頑張ったほうがいいかもね」

ジグザグマ 「うう、頑張る」

アメタマ 「私も頑張らないと…でもいつまで経ってもいい技を覚えないんですよね〜」

タネボー 「私もです〜…いつまでも前線に出れなくて〜〜」

アメタマ 「いいよね〜ワカシャモさんやジグザグマさんは…私たちもそろそろメンバーチェンジになるのかも」

タネボー 「あ〜…そうかも〜しれませんね〜…」

タネボーはまるで危機感の無い声でそう言う。
アメタマは苦笑していたが、タネボーはまるで気にした様子はなかった。


キャモメ 「……」

アゲハント 「女性陣は楽しそうですね〜〜」

キャモメ 「そうですね〜、でも女性を守るのも男の仕事ですからね〜」

キャモメは呑気に言葉を返す。
アゲハントはそれ以上言葉を繋げることが出来ずにやや落ち込むのだった…。


………。
……。
…。



そんなこんなで夜は終わるまで、仲良く過ごしましたとさ…。
え? これだけですよ?
まぁ、次をお楽しみに…。



…To be continued




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