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POCKET MONSTER RUBY



第7話 『トウキとの出会い』




ハルカ 「……」

ワカシャモ 「シャモシャモ!!」

ジグザグマ 「ジグジグ」

コノハナ 「コノ…コノ…」

アゲハント 「ハ〜ン、ハ〜ン」

キャモメ 「キャモキャモ…」

今回の早朝トレーニング。
アメタマの姿は無い。
昨日の怪我が治らず、一向に回復の兆しが無い。
私はそんな悩みを抱えながら一心不乱に走っていた。
着いてくるポケモンたちは愚痴ひとつ言わずに付き合ってくれる。
つくづくいいポケモンに出会えたんだと私は実感した。

ハルカ 「はぁ…はぁ…!」

もう何時間走っただろうか? すでに日は昇り切って、正午が近いことを感じる。

ざざぁ…! ざぶんっ!

波の音が聞こえ、潮風が頬を撫でる。
私はバンダナを外し、タオルで顔の汗を拭く。
服は昨日のままなので、汗が染み込み、かなりベト着く。

ハルカ 「ムロに着いたら、着替え買った方がいいかな」

せめて、トレーニング用のトレーナー位は買うべきのようだ。
私はポケモンたちに休憩を指示し、一旦海を見る。

ざざぁ…ざぱんっ!!

本来ならすでにムロに着いているはずの航海。
ハギ老人の話だと、エンジンがかなり寿命らしい。
動くかどうか、かなり微妙だそうだ。
一応、ムロの方に救援要請を送っているそうなので、早ければ今日中に来てくれるそうだ。
そんなことを考えていると、海の方から船が見える。
こっちに向かってきているようだ。
方角からすると、ムロの方からだろう。
私は、『なるほど』と思い、ポケモンたちと一緒にそれが上陸するのを待った。



………。
……。
…。



男A 「どうだ?」

男B 「エンジンが大分やられてるな…これはかなりパーツを取り替えないと、おい! 予備パーツ全部持ってきてくれ!!」

ふたりの男がそんな感じで他のスタッフに指示する。
どうやら、直る見込みはあるようだ。
私がそんな感じで作業を遠目に見ていると、ふと背後に気配を感じる。

ハルカ 「…誰?」

? 「やあ」

後ろを見ると、やけに爽やかな男性。
半袖短パンと、かなり身軽な格好で、いかにもスポーツマンといった感じの男性だ。
男性は、爽やかな笑顔を崩さずに私に声をかける。

? 「君、ポケモントレーナーだよね?」

ハルカ 「え…あ、はい」

思わずそう言う。
見た感じ年上のように感じるので、敬語を使うことにした。
男性は気にした風もなく、笑顔で言葉を続ける言葉を続ける。

? 「やっぱり! 君のポケモンだよね、あれは」

ハルカ 「…は、はい」

男性は私のポケモンたちを指差してそう言う。
私が頷くと、男性はうんうんと品定めをするように頷いた。
どこか軽い感じがする…けど。

ハルカ (目が、違うわね)

明らかに、興味本位だけであの目をするとは思えない。
間違いなく、獲物を見る目だ。
明らかに、何かを心待ちにするように男性は笑っている。
一瞬、恐怖に近い物を覚えた。
この人もポケモントレーナーだろう。それも凄腕の。

? 「君は、ムロに向かっているのかい?」

気がつくと男性が私を見てそう聞いていた。
やや反応が遅れた私は、『はい…』と答えた。

? 「そうか…それは楽しみだな! そう言えば、まだ自己紹介をしていなかったね」

ハルカ 「……」

男性はきっ、とした顔で私を見る。
純粋に格好いいと言うのだろう、どうやら軟派な男共とは全く違うようだ。
私もいつのまにか、真剣な顔つきになっていた。

トウキ 「僕の名はトウキ、ムロタウンでジムリーダーをやっている」

ハルカ 「!?」

やはり。
何となく予想はしていた。
これが、次のジムリーダー。
まさしく強敵だと、本能が告げる。
私は、この人を相手にするのか…。
そして、トウキと名乗った男性も、私と戦えることを楽しみにしているのだと言うことを実感した。

トウキ 「ムロに着いたら、いつでもジムに来てくれ! 君と戦えるのを心待ちにしているよ!!」

トウキさんはこっちの予想通りに、そう言う。
その目は真っ直ぐに私を見ていた。
私も目を逸らさずに対抗する。
互いの視線がぶつかり合い、漫画とかで言えば火花でも出ているのだろう。
そんな状況を楽しむように、トウキさんは振り返る。

トウキ 「それじゃあ、僕はこれで…」

ハルカ 「…はい」

トウキさんは船の方に向かう。
どうやら、救援スタッフと一緒に来たらしい。
救援スタッフの船はこちらよりも遥かに高速で、すぐに見えない所まで行ってしまった。
船の方も直ったようで、とりあえずは一安心ね。
私は自分のポケモンたちをボールに戻す。

ハルカ 「……」

ムロタウンのジムリーダー、トウキ。
次の目標が決まった。
でも、勝てるのだろうか?
かなり勝負強そうな感じはする。
私だって、格闘界ではそれなりに修羅場を潜り抜けてきた。
気後れすることはそうそう無いけど…。
それでも、不安ばかりが募った。



………。
……。
…。



ハギ 「さて、それじゃワシらも、ムロタウンへ向かうか」

ハルカ 「…はい」

ハギさんがそう言うと、私たちは船に乗る。
修理作業は1時間程で済み、現在時刻は1時。
ハギさんが、船にエンジンをかけると船は再びムロを目指す。

ハルカ 「…今度こそ、ムロタウンに着くのよね」

仕事の方もあるし、どちらからやるべきかちょっと迷った。
すぐにジム挑戦したいのは本音だけど…。

ハルカ (生半可な力じゃまず勝てない)

ここは、仕事の方を先に片付けて、もっと訓練した方がいいかもしれない。
色々タイプ相性も考えないといけないし、ジムのルールもそう言えば聞いてなかった。
プランも全く出来ていないので、さすがに何とも言えない。
私は四苦八苦しながら、船室で横になっていた。
すると、いつのまにか眠気が押し寄せる。
私は、それに逆らわずに眠りに着くことにした。





………………。





カガミ 「…ようやく来るわね」

私はムロタウンである男を待つ。
今は夕方だけど、ジム戦はすぐにでも出来るでしょう。
今日は早朝からジムリーダーが留守だった。
仕方ないから、しばらく待っていたけど…まさか『あの男』に会えるとは思ってなかった。
今の私でも同等かそれ以上…さすがに一筋縄ではいきそうにないわね。
私は、今帰還したジムリーダーを待ち、ジム戦へ意識を切り替える。

ヘルガー 「……ガゥ」

カガミ 「今回も、あなたに任せるわ…それで十分」

私はそう言いながら、海を見る。
どうせ、あの娘も海を見ていたんだろう…。
そう思い、私はジムの中に入っていった。





………………。





ハルカ 「……」

私は目を覚ます。
気がつくと暗闇。
船室の明かりを探すが、スイッチが中々見つからない。

ガチャ!

ピーコ 「! キャモー!」

突然ドアが開き、中から光が差し込む。
私は目を一瞬細め、船室の外を見る。
そこには、ピーコちゃんとハギさんの姿があった。

ハギ 「眠っておったのか…?」

ハルカ 「…女の子の部屋に入る時はノック位してください」

私はそう言う。
幸い服はそのままなので、まぁ見られて困るような物はない。
ハギさんは髭を擦りながら、困った顔をする。

ハギ 「…ふむ、確かにな。悪かったよ」

ハギさんはそう謝って、やや真面目な顔をする。

ハギ 「それよりも、ムロタウンに着いたぞ」

ハルカ 「…!」

私はそう言われて、船室の窓から外を見る。

ハルカ 「…町が」

いつのまにか、着いていたらしい。
ただ、既に時刻は深夜近くで、町の明かりはほとんど無かった。
私は荷物を確認し、忘れ物が無いように船室を出る。



………
……




ハルカ 「…ここが、ムロタウン」

町と言うよりも島と言う方が近いかもしれない。
それだけ小さな町だった。
昼間なら活気もあるのだろうけど、今の時間じゃ人もあまりいない。
いると言えば、夜釣りをしている釣り人位だ。

ハギ 「…どうする? 何なら船室で泊まっていくか?」

ハルカ 「いえ、アメタマのことが心配なんで、すぐにポケモンセンターに行きます」
ハルカ 「今日は、そっちの方で泊まると思うんで」

私は船から降りるとそう言う。
すると、ハギさんは笑って私を送り出してくれる。

ハギ 「そうか、ハルカちゃんはポケモンのことが大好きなんじゃな…では行ってくるがいい!」
ハギ 「まずは、ダイゴと言う男に手紙を渡すんじゃろう? ワシはここで待っておるから、出発する時は声をかけてくれ」

ハルカ 「はい、どうもありがとうございます!」

私はそう礼を言って走り出す。
少しでも早くポケモンセンターに着きたかった。



………。
……。
…。



『ポケモンセンター ムロ支店』



店員 「こんばんわ! こんな遅くまでご苦労様です!」

駆け足気味に入ると、店員さんがそう言ってくれる。
例によってマニュアル人間系だが、気にしない。

ハルカ 「あ、あのポケモンの回復をお願いします!」

店員 「かしこまりました、それではボールをお預かりします」

私はボールを6個渡し、カードを提示する。
店員さんはそれを受け取り、作業を始める。

店員 「あら…? この娘…」

店員さんが何やら不思議そうにパソコンの画面を見ていた。
どうやら、『嫌な予感』がまた当たったらしい。

店員 「あの、ハルカさん…あなたのアメタマなのですが、かなりの傷があります」

ハルカ 「!!」

予想はしていたことだけど…。
やっぱり、アメタマは重症らしい。
店員の顔が申し訳なさそうに歪む。
余程、酷い怪我なのだろう。
私は勇気を出して聞いてみる。

ハルカ 「…酷いんですね、やっぱり」

店員 「……」

店員はコクリと頷く。
かなり優しい性格なのか、店員さんは自分のことのように辛そうな顔をした。
そして、覚悟を決めたのか、真剣な顔つきで説明を始める。



………。
……。
…。



ハルカ 「……」

今はポケモンセンターの寝室。
例によってワンボッックスだけど、今はどこでもよかった。

ハルカ 「…アメタマ」

前足の神経組織が断裂。
回復の見込みは今の所無し。
バトルなんてもってのほか、絶対安静とのことだけど、ここの施設では完全に治すことは出来ないらしい。
パソコン転送でキンセツシティの支店に移されるそうだけど、そこでも完全に治るかはわからないそうだ。
今、私のポケモンは5匹。
ひとり分少なくなった空きが、妙に悲しい。

ハルカ 「……」

だけど、挫けてはいられない。
アメタマの分まで頑張らないと!
私は気持ちを半ば無理矢理切り替える。
そうでもしないと、『心が壊れてしまうから』
私は眠った。
眠れる気はしなかったけど、目を瞑る。
何も考えずに時間が過ぎていく。
その日の夜は、とても…とても長い夜だった。



………。
……。
…。



ハルカ 「…よしっ!」

結局あまり眠った気はしない。
だけど、気持ちはすっかり切り替わった。
アメタマはいつか回復してまた一緒に闘う時が来る!
その時を信じて、私は頭を切り替えた。



店員 「おはようございます、ハルカさん。よく、眠れましたか?」

ハルカ 「あ、その…実はあんまり」

私は苦笑しながら答える。
この店員さん、かなり心配性なのか、私のことを気にかけてくれた。
何でも、本人も小さい頃に、同じような経験をしたそうだ。

店員 「心の傷は、完全に直ることは無いですから…」

ハルカ 「うん…でも、それでダメになったらもっと傷つく娘がいるから」
ハルカ 「だから、私は前に進みます!」

私が強くそう言うと、店員さんは優しい笑みを向けてくれる。

店員 「強いんですね、ハルカさんは。…はい、あなたのポケモンは皆、元気になっていますよ」

その言葉の最後の方は弱々しかった。
そう、皆ではないのだ。
マニュアルの台詞がとても辛く聞こえる。
私はそんな店員さんを励ますように笑顔でボールを受け取る。

ハルカ 「それじゃあ、行ってきます!」

店員 「はい、気をつけてくださいね」

私は外に出る。
すると、朝の光が差し込む、いい朝だった。
やや暑苦しいが、風が気持ちいい。
まだ朝の7時だけど、子供たちは元気に遊びまわっていた。
私はまずダイゴさんを捜すことにした。



………。



色々、町の人に聞いてみたところ、どうも石の洞窟と言う所にいるらしい。
ポケモンセンターから海岸沿いに北西の方角に向かえば着くそうだ。
私はポケナビを起動させる。

ピッ!

ホウエンマップを開いて、調べてみる。
なるほど、確かに石の洞窟って書いてあるわね。

ハルカ 「…とりあえず行ってみないとね」



………。



ハルカ 「ジグザグマ、『ずつき』よ!」

ジグザグマ 「ジグ」

ドオォーン!

コイキング 「げっげっ!」

釣り人 「ああ、コイキング〜!」

ここまで来るのに、二回バトルを挑まれた。
両方釣り人で、本格的な水タイプとの戦いは初めてだった。

ハルカ 「ふぅ…にしても、コイキングの『はねる』って何の効果が?」

釣り人 「さぁ…? わからないな…それよりも! 君強いねぇ…よければ、エントリーコールに登録しない?」

ハルカ 「…? エントリーコール…?」

聞きなれない言葉が出てきた。
私が不思議そうな顔をしていると、親切に教えてくれる。

釣り人 「ポケナビのトレーナーアイってあるだろ? それに番号を登録しようってこと」
釣り人 「ポケナビ同士で電話するのをエントリーコールって言うんだよ」

私はなるほどと頷く。
こういうのは実際にやってみて覚えるのが一番だ。
別に物理的なデメリットがあるわけではないので、私は承諾する。

釣り人 「それじゃあ、俺の番号は…」

ハルカ 「…これが私の番号です」

互いに番号を交換する。
これで、ポケナビに入力し、トレーナーアイを改めて見る。

ハルカ (…ん? 詳細?)

何やら、そんな物が書いてあった。
私はおもむろにボタンを押してみる。

ピッ



釣り人:アキヒコ

作戦:じっくり戦う

持ってるポケモン:水ポケモンで勝負!

自己紹介:あんなにでっかいポケモンを釣ったのは世界で俺だけ



ハルカ 「…なるほど」

こんな機能まで着いているのね…でかいポケモン? あのコイキングのことだろうか…?
確かに前に見た奴よりも随分大きい気はした。

アキヒコ 「あれ? 君はまだ詳細を登録してないの?」

ハルカ 「えっと…まだ使い方がよくわからなくて」

アキヒコ 「詳細は、ポケモンセンターの機械で編集できるよ」
アキヒコ 「編集が完了した時点で、登録されている全てのトレーナーのポケナビに反映するから、編集しておくといい」

ハルカ 「えっと、はい! どうも親切にありがとうございます!」

アキヒコ 「気にしないで! それよりも、またポケモンを育て直すから、いつかまたバトルしよう!」
アキヒコ 「その時はエントリーコールで連絡するから!」

ハルカ 「はい、わかりました!」

私はそう言って、アキヒコさんと別れる。
何でもここがお気に入りのポイントだそうだから、大抵ここで釣りをしているそうだ。
今回のバトルでまたポケモンは強くなったみたいだし、少しはジム戦に向けて手応えを感じてきたと思う。

そして、ようやく『いしのどうくつ』にたどり着いた。
と言っても時刻はまだ正午。
少しお腹が空いて来たけど、ここまで来たらさっさと中に入ろう。
この洞窟、入り口は比較的大きく、中も広いようだ。
なので、意外と中は明るく、洞窟と言うには周りがしっかり見えた。

ハルカ 「天井は…意外と高いんだ」

見上げると天井付近にポケモンが飛んでいる。
見たことの無いポケモンだ。
私は図鑑を開く。

ポケモン図鑑 『ズバット:こうもりポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.8m 重さ:7.5Kg タイプ1:どく タイプ2:ひこう』
ポケモン図鑑 『昼間、暗闇でじっとしているのは、太陽の光を長い時間浴びると、全身が軽くやけどしてしまうからだ。』

ハルカ 「へぇ…蝙蝠(こうもり)ポケモンかぁ。かなり動きが速いわね」

見た感じ相当なスピードだ。
飛行タイプならではだろう。
小さいからと言って、侮らない方がいいわね。
そんな感じで歩いていると、ふと山男を見つける。
確か、カナズミの方でもひとりかふたり見たことがある。
岩タイプや格闘タイプを主に使ってくるから、最初は色々大変だったのよね…。

山男 「あ、おい! この先は真っ暗で何も見えなくなるから行くのは止めた方がいいぞ!」

ハルカ 「…そうなんですか?」

さすがに先に進めば暗くなるようだ。
灯りを持っていないので、無装備で行くのは無謀かもしれない。

山男 「さっき、降りていったダイゴという男は、『フラッシュ』を使えるポケモンを連れているから問題ないが…」

ハルカ 「ダイゴ!?…さんって、ここにいるんですか?」

山男 「あ、ああ…何だ、知り合いなのか?」

ハルカ 「あ、いえ…そう言うわけではないですけど」

私は考える。
どうにもこの先には『フラッシュ』と言う技が必要らしい。
通常の懐中電灯でもいけなくは無いが、いきなりポケモンに襲われたりしたら大変だろう。

山男 「よしっ、困った人を見たら助けるのが山男のモットーだ! これをあげよう!」

そう言って、山男のおじさんはディスクを私に渡す。

ハルカ 「…CD? それともDVD? はたまたGD−ROM!?」

山男 「全部違う! それは『ひでんマシン』だ」

ハルカ 「『ひでんマシン』?」

聞きなれない言葉が出てくる。
どうにもポケモン用語はわからない。

山男 「それを使えば、『フラッシュ』をポケモンに覚えさせることができるんだ」
山男 「と言っても、使うにはムロのバッジが必要だけどな」

ハルカ 「がくっ! そうなの!?」

思わず項垂れる。
どうやら、捜索は諦めた方がいいらしい。
でも、外で出てくるのを待つというのも策よね。

山男 「ちなみに、ダイゴという男は、ここしばらくここで調べ物をするそうだから、先にジム戦をやった方がいいかもな」

ハルカ 「……」

見事に期待は打ち破られた。
やはりジム戦なのね…。



………。
……。
…。



ハルカ 「はぁ…結局戻ってきちゃった」

ダイゴ捜索は一旦打ち止め。
しょうがないのでムロタウンにトンボ帰り。
んで、今はジムの前。



『ムロタウン ポケモンジム リーダー:トウキ −格闘ビッグウェーブ!−』




ハルカ 「…う〜ん、度胸だけで勝てるとは思えないんだけど」

トウキ 「やぁ、待ってたよ!!」

ハルカ 「うひゃぁ! いつのまに!?」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
本当に気付かなかった…。

トウキ 「はっはっは! どうだい、すぐにでも挑戦するかい? 僕はいつでもOKだよ…と、言いたい所なんだけど」

突然トウキさんは苦笑して頬を掻く。

ハルカ 「どうか、したんですか?」

トウキ 「う〜ん、実は先日ジム戦があってね…ちょっと派手な負け方をしたもんだから」
トウキ 「今日一日はポケモンを休ませようと思ってね…」

ハルカ 「…カガミ」

私がその名を呟くと、トウキさんは真剣な眼差しに変わる。

トウキ 「…知っているのかい? 彼女のこと」

ハルカ 「…ええ、一度だけ。会ったことがあります」

トウキ 「戦ったことは?」

ハルカ 「…あります、あまり思い出したくないですけど」

私が俯いてそう言うと、トウキさんは心中を察してくれたのか、笑ってくれる。

トウキ 「そうか、まぁ…僕も似たような物だから、その…今日はジム戦パスさせてもらえるかな?」

ハルカ 「そんな、気にしないでください! 私も…今日はルールを確認しに来ただけでしたから」

私がそう言うと、トウキさんは明るい笑顔で、笑ってくれる。
でも、私の心は晴れない。
カガミは…すでにここにいない、もう次のジムに向かっているのだろう。

トウキ 「…そんなに気になるのかい? カガミって女性が」

ハルカ 「…はい、その…何だか他人のような気がしなくて」

トウキさんはう〜ん、と思い出すような仕草で考えた。
そして、私の顔を見て、やや控えめに。

トウキ 「そう、だな…確かに感じは似ているかもしれないな。だけど、強さは全く別物だ」
トウキ 「格闘タイプに相性の悪い、悪タイプのポケモンで、なおかつ炎に耐性のあるマクノシタが、『かえんほうしゃ』一撃で倒れた」
トウキ 「普通のレベルじゃないだろう…ハルカちゃんも、彼女を追うのなら覚悟はした方がいい」

ハルカ 「…はい」

またしても一撃。
一体どこまでカガミは強いのだろう?
それよりも…炎に耐性のあるマクノシタ?

ハルカ 「あの…『マクノシタ』って、どんなポケモンなんですか?」

トウキ 「おっ、敵情視察かな? まぁいいだろう。マクノシタは格闘タイプのポケモンさ!」
トウキ 「『あついしぼう』と言う特性を持っていて、炎タイプと氷タイプの技で受けるダメージを半減してくれるんだ」
トウキ 「また、『こんじょう』と言う特性を持っている場合もあるが、こっちは状態異常になると攻撃力が倍増する!」
トウキ 「体力は抜群で、頭はいい方じゃないけど、僕の最高のパートナーだ!」

ハルカ 「そうなんですか…なるほど」

どうやら、ワカシャモといえども苦戦は免れないようだ。
炎が効きにくいと言う事は、格闘だけで戦わなければならないから。

トウキ 「…その顔だと、君も炎タイプを使うのかい?」

ハルカ 「!? え、ええ…」

私はためらいがちに答える。
相手の事を教えてもらって、こちらが答えないわけにはいかない。

トウキ 「なるほど、とりあえずジム戦は明日で良いかな?」

ハルカ 「あ、はい!」

トウキ 「よし、それじゃあ先にルールを説明しておくよ! まず使用ポケモンは2体!」
トウキ 「道具は『いいキズぐすり』がひとつ。後は…」

ハルカ 「カナズミシティと同じ…ですか?」

トウキ 「そうそう! ということは、ストーンバッジは持っているのかい?」

ハルカ 「はい…最初のバッジですけど」

トウキ 「そっか…これは本当に楽しみだな。明日の10時にジム戦を始めるから、それまでに来ておいてくれよ!」
トウキ 「それじゃあ、僕はこれで!」

そう言ってトウキさんは走っていく。
常日頃からトレーニングを惜しまない。
強いはずよね…でも。

ハルカ (カガミは比較にならない位強い…)

さすがに気持ちが萎えそうだ。
本当に追いつけるのか不安になってきた。
でも、今は頑張るしかない!
私は一旦ポケモンセンターに帰ることにした。



………。
……。
…。



ハルカ 「えっと、この機械で編集を…」

私は教えてもらったばかりの機能を編集する。
ポケナビに接続できる機械が例によって置いてあり、私はそれにひとつづつ入力していく。


流離のトレーナー:ハルカ

作戦:臨機応変

持ってるポケモン:その時に応じて

自己紹介:目標はいつだって高く!


ハルカ 「…こんな所かな? まぁこれでいいでしょ」

私は編集を終えると、ポケナビを仕舞って部屋に戻る。
今度はジム戦へのプランを固めないと。



………。



ハルカ 「…やっぱりアゲハントね」

相性上一番いい。
飛行タイプの技もあるし、耐性もある。
この子が対マクノシタになるだろう。

ハルカ 「残りはやっぱり…」

ワカシャモが妥当だろう。
進化形であり、格闘タイプ。
能力的にも抜くメリットはあまりない。
先発はこの娘で決定ね。

ハルカ 「…さて、後は少しでも訓練しようかな?」

ふたりをもうちょっと鍛えた方がいい。
少しでもレベルが高い方が勝てるはずだから。



………。
……。
…。



そして、その日はあっという間に過ぎていく。
ワカシャモとアゲハントを集中的に鍛えた所、ひとつの発見があった。

ハルカ 「ワカシャモは『つつく』が使えるんだ…」

これは飛行タイプの技。ワカシャモも一応鳥らしく、『つつく』が使えるのだ。
進化した直後に覚えていたようで、アゲハントに効果が抜群。
格闘に対しても、当然効果は抜群だろう。
ただ、威力はあまり高くはなく、実質『にどげり』の方がダメージは大きいことが多かった。
アゲハントのように、格闘が効きにくい相手には効果的だけど、そうでなければあまり頼ることはなさそうだ。
対して、アゲハントは何とも面白い技が使えるようになった。

ハルカ 「『あさのひざし』かぁ…自分で体力を回復する技なんだ」

しかも朝に使えば効果は上がる…でもジム戦って室内よね。
一応室内でも使えなくは無いらしく、効果はあるようだった。
他にも『しびれごな』と言う技も使える。
これはダメージは無いが、相手を『まひ』させる技だ。
戦況を上手く変えることができるかもしれない。
予想していたよりも、明るい方向に向かっている。
まだ勝ち目はある。

ハルカ 「よしっ、明日は気合で頑張ろう!!」

そう思い、どさっとベッドに横たわる。
昨夜はほとんど眠れなかったので今度はすぐに眠れた…。



…To be continued




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