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POCKET MONSTER RUBY



第12話 『カラクリ屋敷の逆襲』




ハルカ 「……」

私は改めて持ち物を確認する。
『いいキズぐすり』10個、『なんでもなおし』3個、『まひなおし』10個、『げんきのかけら』1個。
とりあえず、これで万全といえば万全でしょうね。
新しく入ったラクライは、まだ電気タイプの攻撃技を使えない。
これは、かなりてこずりそうだ…。
しかしながら、ラクライには類稀なスピードがある。
塵も積もれば山となる…実が実るまで頑張るしかない。

ハルカ 「よし、じゃあ今度こそ」

昨日は結局『まひ』に悩まされて前に進めなかった。
今回は『まひなおし』も多く持っているので準備万端。
私は意気揚揚と、カイナシティを出た。



………。
……。
…。



そして…。



ハルカ 「……」

それは一枚の看板だった。
その看板には大きく目立つ字で。


『ここより→へ3歩、↑へ2歩行けば、 そこは更に素敵になった「新カラクリ屋敷」!!』



………。



ハルカ 「たのもーーーー!!」

私はまたしても道場破りのように入る。
そしてやはり誰もいなかった…ように見えただけ。

ハルカ 「たわけ…!」

ドカッ!

私は掛け軸から右側近くの植木蜂を蹴る。
ちゃんと手加減しているので、音をたてて揺れただけだ。
すると、その後から例によって変なオヤジが現れた。

カラクリ大王 「む…な、何故我輩が植木鉢の後に隠れていると気がついたのだ!? やはり、できる!」

本気で一度殴ろうかしら…子供のかくれんぼじゃあるまいし。

ハルカ (…一応私も子供か)

妙に納得してしまい、私はそのまま立ち尽くしてしまった。
すると、カラクリ大王は満面の笑みを浮かべ、高らかに笑い出す。

カラクリ 「はっはっは! あんたまた我輩のカラクリに挑戦しに来てくれたんだな! 結構結構、挑戦を認めよう!!」
カラクリ 「そこの扉からまた挑戦してくれ! 我輩はまた奥で待っているからな!!」

そう言って、また煙に消える。
本当に器用なオヤジね…。
でも、悪い人間ではないと、不思議とそう思える。
ただ純粋に、子供の遊びと割り切れば、気のいいオヤジだろう。
中では他にもトレーナーがいたりして、ポケモンバトルも楽しめる。
それだけでも、交流の場として結構いいのかもしれない。
私はそう思い、再び掛け軸の後ろにある扉を潜った。



………。
……。
…。



ハルカ 「あれ…随分変わってる」

見ると、迷路が全く違う構造になっていた。
あれから一日しか経っていないのに、どうやって仕込んだのか…。
しかも、所々に穴があり、先には進めないようにしてある。
と言っても…。

ハルカ 「せいぜい、4〜5mか…私なら飛べなくはないし」

ポケモンの力があればなお簡単であろう。
と言っても、折角仕掛けてくれているのだ、ちゃんと解いてあげなければ失礼と言うものでしょうね。
というわけで、私は怪しそうな物を探すことにした。

ハルカ 「…う〜ん、また巻物とかに何かあるのかな?」

そんなことを思いつつ、私は歩いていると、妙な感触を踏みしめる。

カチリ…ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

それは間違いなくスイッチだった。
足元を見ると、直径10cm程度の四角形スイッチがあったのだ。

ハルカ 「今の音って…」

私は穴があった場所に戻る。
すると、やはり穴が塞がっていた。
どうやら、ここはスイッチを踏んで穴を塞ぐシステムらしい。
これぐらいであれば、まだまだ子供だましと言った所ね。

ハルカ (私も子供だったわね…)

つい忘れてしまいがち…それだけ、私って大人だと自分で思っているのね。
ちょっと自粛しよう…一応子供だし。
そんなこんなで、さほど苦労することなく全ての穴を塞いで私は扉の前に立った。
当然、合言葉もゲットしている。

ハルカ 「さてと…合言葉は」

『カラクリ大王様素敵』

カチリと音が鳴り、扉が開く。
私はその先に進む。
先は地下になっており、出口に続くのだろう…。

ハルカ 「ってあれ? 次のフロアもカラクリ!?」

見ると予想に反し、地下に降りたらそこは一本通路で、分岐路はない。
そして、壁の側に変なオヤジ人形が備え付けられていた。
私は不思議に思いつつ、歩を進める。

人形 「私はカラクリ大王様が作った天才ロボ1号!」
人形 「ここから先はクイズに正解しないと先に進めません」

なるほどと、人形の後ろを見る。
分厚い壁だ…あれはぶち抜けそうにないわね。
厚さ1mmとかじゃなければ。

ハルカ 「で、クイズって?」

これでも一般知識はあると思ってる。
子供程度の知識なら問題ないと…。

1号 「それでは第1問! 次の中で水タイプが入っていないポケモンはどれ? 1:ルリリ 2:ハスボー 3:キャモメ」

ハルカ 「……」

しまった…まさかポケモンクイズとは。
自慢じゃないけどポケモンの知識はガキンチョ以下。
いきなり冷たい汗が流れる。
とりあえず、冷静に考えてみよう。

まずルリリ。
カイナで見たことあったわね…水色の奴。
いかにも水タイプって色してるわ。

ハルカ (でも、他のは…)

ハスボー。
これも一度戦ったことがある。
草タイプだったと思うけど…。

ハルカ (確か、水タイプも混じってたような…)

あまり確信はないが、ワカシャモの『ひのこ』が普通にしか効かなかった。
草なら効果抜群のはずだけど…。

ハルカ (自信ないわね…)

最後にキャモメは当然水タイプ。
これは私も使っているんだからあってる。
というわけで、減算法で答えを出そう。

キャモメはハズレ、ハスボーも多分ハズレ。
と言うことは…ルリリになるのかなぁ?
よくわかってないのが問題だった。
とりあえず切りがないので答える。

ハルカ 「1番…?」

1号 「正解です! では次へどうぞ!!」

ゴゴゴゴゴゴッ!!

大きな音と共に、分厚い壁が上にせり上がる。
本当に、どうやって仕掛けたのか…。



………。



ハルカ 「…ん、まだあるの?」

また同じ様な人形が壁のすぐ前に立っている。
どうやら、同じパターンが何回かあるらしい…。

2号 「問題! 次の中で110番道路にいないポケモンはどれ? 1:ナゾノクサ 2:ジグザグマ 3:スバメ」

ハルカ 「…えっと、110番ってここがある所よね」

昨日さんざん戦ったので、よく覚えている。
あそこで出会ったのは、ラクライ、ジグザグマ、プラスル、マイナン、ゴクリン…でナゾノクサだった気が。
確か飛行タイプは出てこなかった記憶がある。
なので。

ハルカ 「ってなわけで3番!」

私は自信満々に答える。
さすがに昨日のことは忘れてないでしょう。

2号 「正解です! では次へどうぞ!!」

ゴゴゴゴゴゴッ!!

同じ様に私は先へと進む。
当然、まだクイズは続く。



………。



3号 「それでは問題! 次の中で『きゅうけつ』を使えないポケモンはどれ? 1:ドクケイル 2:ズバット 3:ツチニン」

ハルカ 「『きゅうけつ』…って確か」

血を吸う技よね、ってそのまんまやん!
確か虫タイプの技だったと思うけど。
ズバットが得意なのよね…で、ドクケイル、ツチニンか。
ドクケイルは確か、アゲハントと対になってるポケモンよね。
多分『蛾(が)』なので、血は吸わないと予想。
というわけで、ドクケイルに決定!

ハルカ 「1番!」

3号 「正解です! では次へどうぞ!!」

ゴゴゴゴゴッ!!

つまり…まだあるのね。
私はさっさと先に進む。



………。



4号 「問題! 『スーパーボール』を売って『キズぐすり』を買うといくら残る? 1:60円 2:55円 3:残らない」

ハルカ 「…えっと」

確か今日買い物したので、値段は覚えている。
売値は基本的に半額なので(コガネではちょっと例外あったけど)、『スーパーボール』1個で300円の売値。ゆえに『キズぐすり』と同値段!

ハルカ 「3番ね、これでも買い物上手なんだから!」

4号 「正解です、では先へどうぞ!」

ゴゴゴゴゴッ!!

一体いつまでこれが続くんだろう…さすがにしんどくなってきた。



………。



5号 「私は最高傑作の5号!! これが最終問題です! 今までに確認された、全てのポケモンの中でもっとも大きいと言われているポケモン、ホエルオー」
5号 「主に、図鑑等で登録されている体長は何m? 1:14.0m 2:15.0m 3:14.5m」

ハルカ 「…はい?」

全く聞いた事のない問題を出される。
と言うか、ホエルオー? 何それ…。
しかしながら、少し引っかかる所があった。
確かハギさんが何か言ってたような…。
私は少し以前の記憶を思い出してみる。





………………。





ハルカ 「そういえば、ハギさんってホウエンの海を全部渡ったりしたんですか?」

ハギ 「もちろんじゃよ! ホウエンどころか、カントー、ジョウト、大抵の所は行った事がある」

ハルカ 「へぇ、じゃあ今まで沢山の水ポケモンを見てきたんですよね〜」

ハギ 「そうじゃな、さすがに深海とかにいるポケモンは滅多に見られないが、このホウエン地方の海には凄いのがいるんじゃよ」

ハルカ 「凄いの? それって…?」

私は興味津々に聞く。
すると、ハギさんは思い出すように。

ハギ 「あれは、もう30年位前じゃのぉ…確か129番水道で、野生のホエルオーと遭遇したのはあれが初めてじゃったよ」

ハルカ 「ホエルオー…?」

聞いた事のないポケモン名だった。
名前からは想像できない。

ハギ 「うむ、ポケモンの中でも最も大きいと言われているポケモンじゃよ…確か14.5mじゃったかなぁワシが計ったのは」
ハギ 「あの時の、ホエルオーは本当に元気な奴じゃった。今でもたまに位なら見れるかもな」

ハルカ 「14.5m!? 桁が違いますけど!?」

ハギ 「はっはっは、そりゃそうじゃろう! 海は広いからのぉ〜」





………………。





ハルカ 「そうだ14.5m! だから3番だ!!」

私は何とか思い出した、ありがとうハギさん。
私が答えると、5号は。

5号 「おめでとうございます! 全問正解です! それでは先にどうぞ」

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

一際大きい音で壁はせり上がる。
先には扉があった。
そのすぐ前に巻物。

私は合言葉を確認し、言葉を書く。

『カラクリ大王様凄い』

カチリと音が鳴り、扉は開かれる。

ハルカ 「およ、また地下…?」

梯子があり、以前と同じように降りろと言うことだろう。
すでに結構な時間が経っている気がするわね。
私はそう思いながらも、梯子を降りるが…

ハルカ 「…嘘でしょ?」

そこはまたしてもだだっ広い迷路。
しかも、今度は変な壁がある。

ハルカ 「何これ…突っかかってる」

どうも回転する壁のようなのだが、変な風に形が決められていて、決まった方向にしか回らない。
壁の隙間なども見ると、ちゃんと計算されて配置されているようだ。
私は適当にまずは回してみる。

ハルカ 「えっと、これがこうなって…ここが通れるようになるから」

私は先に進んでまた立ち止まる。
回転壁があるのだ。
しかも、ここからじゃ回せない。

ハルカ 「あれぇ…? ってことは…」

私は戻って、別の角度から調べてみる。
すると、私はある法則に気付いた。

ハルカ 「あっ、な〜るほど。つまり、回転させるだけさせて通る必要はないってことか」

そうすれば、別のルートから通れるようになる。
それにより、色々なルートが出てくるわけだ。
こうして、私は1時間近くかけて全ての回転壁を解いた。



………。
……。
…。



ハルカ 「で、まだあると…今度は何これ?」

すでにここまで来たらトレーナーの姿ひとつ見えなかった。
私だけがここまで来たらしい。
ここのフロアは、なにやら高速で動く床があった。

ハルカ 「つまり、乗れと?」

私はとりあえず乗ってみる。
何だか懐かしい。
コガネシティでもこう言う移動床あったっけ…。

ハルカ 「お、曲がるんだ」

そして、気がつくと、下ろされていた。
私はそこから歩いて迷路を進む。



………。



ハルカ 「で、最初に戻ると…」

見事に入り口だった。
どうやら、何か仕掛けがあるらしい。
私は床に乗らず、地上を探してみる。
スイッチらしき物がどこかにあるはず…。

ハルカ 「って、何だかトロッコのアレみたいな、レバーがあるわね…要するにこれで切り替えろと」

何が起こったのかわからないが、これで恐らく移動床が変わるはず…。
私は再び同じ様に床に乗って移動する。

ハルカ 「お、今度は真っ直ぐ行った」

予想通り、道が変わっている。
これでこのフロアの謎は解いたも同然だ。
私は全てのスイッチをチェックし、またかなりの時間をかけて攻略することに成功した。



………。
……。
…。



ハルカ 「まだ…あるのかしら?」

というか、これ以上はさすがに時間が…。
まさかここまでやるとは思ってなかった。
恐るべし…カラクリ屋敷。



………。



ハルカ 「今度は何〜?」

もう半分諦めていた。
今日もカイナで休もう…。
私はそう思って先を見る。
ここはどうやら氷で床を作っているらしい。
踏んでみるが、分厚く穴が空くようには見えない。
私はとりあえず進むが…。

ハルカ 「でぇっ!?」

ズデンッ!と、派手な音を立てて転ぶ。
当然、尻餅で。
お約束だけど、服が濡れる。

ハルカ 「……」

スパッツで良かった…スカートとかだったらかなり危険だったわね。
私は何とか立ち上がろうとするが、気がついたら滑り落ちていることに気付く。
坂になっていたようだ。

ハルカ 「って言うか…ただの氷にしては何でこんなに滑るのよ」

ランニングシューズとはいえ、予想以上に滑る。
今気付いたが、この部屋はそんなに気温が低くない。
なので、氷が軽く溶け始めているのだ。

ハルカ 「だから、余計滑るわけか…にしても」

かなりだだっ広い。
正直、気が遠くなりそうだ。
この滑る床、しかも軽い坂になっているため、真っ直ぐ扉まで行くことが出来ない。
しかも、例によってやや高い位置に巻物がある。
あれに合言葉があるのは明白。
かなり厄介だった。

ハルカ 「もう…ただでさえ何だか足が寒くなってきたのに」

一度転んだのが効いている。
高めの気温とはいえ、十分寒い。
ずっと待っているなどと言う消極的な策はとても取れない。
私は、この際滑っていくことにした。
状況的には、今いる場所が坂の一番下で、壁際。
所々に柱のような物が見え、あれを掴みながら行けと言う事だろう。
私はまず壁に沿って巻物と直線で結べるラインに着く。
この位置なら、坂を真っ直ぐ登って巻物にたどり着く…。
が、真っ直ぐ進んでも巻物は取れない。
何故なら、正面側からは壁になってあり、後ろから行かないと取れそうもなかった。
しかし、今の私は『本気』と書いて『マジ』である!
不可能はない!!

ハルカ 「行くわよ!」

私は思いっきり、ジャンプしてまず真っ直ぐ跳ぶ。
そして、氷の床を思いっきり踏み抜く!

バキィッ!

当然のように私の足が床にめり込む。
これなら落ちることはない。
私は同じ要領で2度、3度とジャンプして巻物を一直線に目指す。



………。



ハルカ 「で、ようやく壁までたどり着いたわね」

正面には巨大な壁、だが、板張りでそんなに分厚くはない。
私は深呼吸し、右足で前に全力で踏み込む。
氷の床はひび割れ、私の右手に力が集約される。
これが八極拳の『震脚』よ!!

ドガァッ!!

渾身の力を込めた、私の『崩拳』が壁を突き崩す。
そして、壁の後ろにあったであろう巻物を私は取る。

ハルカ 「よし」

私はそれを確認し、扉のある方向まで同じようにして向かう。
こうして、私の長い戦いは終わりを…。

ハルカ 「ん?」

扉に着いた時点で、何やら地震が起こっているのを感じた。
ちょっと、冗談じゃないわよ!?

ハルカ 「ここ地下なんだから、地震はかなりやばい!」

私は扉に合言葉を何とか書き、先に進む。
そして、おもむろに後ろを向くと…。

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ズズズズンッ!!!

凄まじい音をたてて、氷の床が砕けた。
まるで地割れのように。
それっきり、地震は止んだようだった。

ハルカ 「…もう大丈夫なのかな?」

私は先に進む。
すると、今度こそ終わりだった。



………。
……。
…。



カラクリ大王 「おお、ついにここまで来たのか!! 見事なもんだ!!」

ハルカ 「…もう嫌、早く地上に戻して」

私は疲れきっていた。
さすがに時間もかなり経っており、もはや先に進むどころじゃなかった。

カラクリ大王 「はっはっは! 楽しんでもらえたようで良かった! これが今回の景品だ!!」

そう言って、カラクリ大王は何やら小さな器を渡す。
器…と言うかカラクリ?

カラクリ大王 「それはな、『あかいテント』だ」
カラクリ大王 「我輩の知恵と知識でつい最近完成した持ち運びに便利な携帯テントだ!」

ハルカ 「携帯テント〜?」

カラクリ大王 「うむ、当然非売品だ。スイッチがあるからそれを押すといきなりテントが出来上がる」
カラクリ大王 「モンスターボールでも似たようなことはやっているだろう?」

確かに。
モンスターボールは使用しない時はビー玉位の大きさで収納できる。
使用する時はスイッチを押して元のサイズに戻るのだ。
それをテントに応用か…やるじゃない。

カラクリ大王 「見た所、あんたは旅のトレーナーみたいだし、よかったら使ってみてくれ」
カラクリ大王 「まだ試作品で、ただのテントとしてしか使えないが、ヒワマキみたいに突然雨が降ってきたりする時は結構便利なはずだ」

ハルカ 「ありがたくいただきます…」

私はそれを貰い、バッグに仕舞った。

カラクリ大王 「しかし、まさか全部のカラクリを突破してくるとは思わなかった」
カラクリ大王 「途中、ちゃんと戻るための道があったろうに、一気に突破してくるとは」
カラクリ大王 「あんたも、よっぽどカラクリが好きなんだな! 我輩は嬉しいぞ!」
カラクリ大王 「しかし、さすがにネタがもう尽きてしまった…我輩は一度旅に出ることにするよ」
カラクリ大王 「そして、我輩が新しいカラクリのネタを手に入れたら、また遊びに来ておくれ」
カラクリ大王 「それじゃあ、またいつか会う時までな!!」

そう言って、カラクリ大王は消えてしまった。
煙をあげて。

ハルカ 「…はぁ、まぁいっか」

私は心の中で妙に納得して外に出た。
それは、まさに半日振りの外だった。

ハルカ 「もう暗いし…はぁカイナに戻ろ」

私はこうしてカイナに戻って一晩過ごす事にした。
明日こそは本当にキンセツに向かおう!
と、決意を固め。



………。



だけど、私はこの時気にもしていなかった。
何故、あの時不意に地震は訪れたのか、しかもあれほどの地震で、カラクリ大王は何事もなさそうだったのか。
恐らくマグニチュード7以上はあったはずだ。
確実に、危険な震度。
だけど、もし…私だけを狙っている者がいたなら?
それは、今の私にはわかるはずもなかった。





………………。





カガミ 「…胸騒ぎがするわね」

私はキンセツジムから出てふとそう思う。
バッジは問題なく手に入った、だけど。

カガミ (あの娘に何かあった…?)

そんなことを思う。
ちょっとやそっとで危険になるような娘じゃない。
でも、前に見たマグマ団がやや引っ掛かった。
あの娘の性格だと、マグマ団相手に戦っていてもおかしくない。
それだけに、無茶をするだろう…。
命を狙われることも十分考えられる。
そうなったら、どうなる?
考えても嫌な結果しか出てこない。
私は信じるしかなかった。
今はどうすることも出来ない。
その時は、運命が私とあの娘を引き寄せるだろう。
私は次の目的地、『フエンタウン』目指す。





………………。





ハルカ 「…結局、地震のことはわからずじまいか」

カイナでは観測されなかったらしい。
となると、やはりあれは人工的に起こされた地震だという線が強い。
だけど、カラクリ大王は気付いていなかったようだ。
あれだけの地震があったというのに…。

ハルカ 「それとも、あのフロアだけに起こすことが可能だったのかな?」

ポケモンの力があるなら、不可能ではないのかもしれない。
カラクリ屋敷の構造上、不可能がなさそうだ…予測不能と言うことも含めて。

ハルカ 「結局…何もわからない、か」
ハルカ 「気にしても仕方がない! こう言う時は体を動かす!!」

私はそう思い、夜中にもかかわらず砂浜に向かった。
ポケモンたちも一緒に。



………。
……。
…。



ハルカ 「ダッシュ!!」

ワカシャモ 「シャモ」

マッスグマ 「グマ…」

ラクライ 「ライ!」

キャモメ 「キャモ〜」

アゲハント 「ハ〜ント」



………。



夜の砂浜で私たちは走る(飛ぶ)。
砂浜では爪先に力がないと速く走れない。
マッスグマやラクライは問題なかったけど、意外にもワカシャモがてこずっていた。

ハルカ 「う〜ん、ワカシャモは爪先が弱いのかな…」

ワカシャモ 「シャモ…」

ワカシャモは申し訳なさそうに俯く。
私は仕方ないので、ワカシャモには特別メニュー与えることにした。

ハルカ 「いい、ワカシャモ…あなたは爪先に力が足りないの! 爪先に力を溜めて、蹴る!」

ワカシャモ 「シャモ!」

さすがに元々脚力はあるだけに、飲み込みが速い。
爪先の使い方さえわかれば、後は簡単だった。

ハルカ 「…ふぅ、そろそろ戻ろうかな」

私は全員をボールに戻し、ポケモンセンターに向かった。



………。



店員 「こんな夜遅くまで、ご苦労様です」

ハルカ 「それじゃあ、ポケモンをお願いします」

店員 「はい、ではお預かりします…今夜はどうしますか? もうお休みになられるのでしたら、明日の朝にお渡ししますが…」

ハルカ 「いえ、30分程したら受け取りに来ますから」

店員 「そうですか、ではお待ちしています」

ハルカ 「はい」

私はそう答えて部屋に戻る。
相変わらずのワンボックスだが、不思議と慣れてしまった。



………。



ハルカ 「はぁ、風呂に入って休もう…」

と言っても、個室のシャワールームなどないので、大衆浴場と言う奴だ。
ポケモンセンターの地下にあるので、大抵誰もが使っている。
今の時間でも人はいるだろう。



………。



ハルカ 「はぁ〜…生き返るわね」

私は湯船に使って力を抜く。
今日は珍しく人がいなかった。
まさに貸しきり状態だ。
しかし、中々悪くなかった。

ハルカ 「もうしばらくこうしてよ〜っと…」

だけど、別の誰かが入ってくるようだった。
ひとりだけど…。

ハルカ (…わお、ダイナマイト)

まさに大人の女性と言った感じのプロポーション。
髪は頭でタオル巻きにしてるのでよくわからない。
目はややきつそうだ…細い釣り目。
しかし…。

ハルカ (な〜んか見られてるような…)

確実に目が合っている。
まさかここでポケモンバトルはないと思うけど、女性は私の方に近寄ってくる。

女性 「…へぇ、もしかしてあなたがハルカ?」

ハルカ 「はい?」

いきなり名を呼ばれる。
私はいつの間に有名になったのか…私は少なくともこの人を知らない。

ハルカ 「あの…どこかで会いました?」

女性 「ええ、直接話すのは初めてね、今日は変な屋敷で尾行していただけだし」

ハルカ 「…尾行?」

物騒な言葉が出てくる。
はっ!? まさかあの時の暴行がばれて!?
思いっきり、思い当たる所があるじゃない!!
だけど、そんなことは関係ないといった感じで、女性は笑っていた。
な、何かこの人怖いよぉ…。

女性 「ふふふ…可愛いわねあなた。マツブサさんが気にかけるわけだわ」

ハルカ 「!?」

反射的に後に退がる。
と言っても、湯船の中なので、すぐ後ろに詰まる。

女性 「あはは…そんなに硬くならなくてもいいわよ、今はどうこうする気はないから」

嘘を言っているようには見えない。
だけど、本能がこの人を避けている。

女性 「まぁ、今はただの女同士…争うのは止めにしましょう」

ハルカ 「あなた、一体…?」

少なくとも、マグマ団と関わりがあるのは間違いなかった。
女性は冷たい笑みを浮かべて笑う。
うう…やっぱ怖いって。

女性 「私は『カガリ』…まぁ、マグマ団で幹部をやっている女よ」

ハルカ 「は…?」

幹部…って、マジデ!?
いきなりそんなやばそうな人が…なんで私に?

カガリ 「マツブサさんが、やけにあなたを高く買っているようだから、ちょっと様子見がてら着けさせてもらったのよ」

ハルカ 「…もしかして、あの時の地震って」

カガリ 「あ、やっぱり気付いた? あれ私の『バクーダ』で起こした『マグニチュード』よ…7程度だったみたいだけどね」

ハルカ 「やっぱり…私を狙ってるんですか?」

私がそう言うと、笑いながらカガリさんは答える。

カガリ 「ええ、そうね…まぁ今はどうだっていいわ、まだマグマ団にどうこうできるレベルじゃないみたいだし」
カガリ 「だけど、あんまり邪魔するようなら…どうなっても文句は言えないかもしれないわね」

そう言って、カガリさんは顔を近づける。
この人、やっぱ怖い。
何か普通じゃないオーラを感じる。

ハルカ 「あ、あの…私そろそろ」

私はそう言ってそそくさに出ようとする。

カガリ 「あら、そう? 仕方ないわね…それじゃ、またね」

そう言って、カガリさんは手を振ってサヨナラしてくれる。
またね…か、できれば会いたくないけど。
正直、ああいうロクでもない組織とは金輪際関わりたくないものだ。
私は即座に体をタオルで拭き、着替えを済ませる。
そして、受付に戻りポケモンを受け取る。
後は、そのまま眠るだけだった。
もしかして、マグマ団も同じようにこのポケモンセンターで寝泊りしているのか?と思うとあまり眠れなかった…。



…To be continued




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