Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




POCKET MONSTER RUBY



第16話 『すれ違う姉妹』




ハルカ 「…ふぅ」

とりあえず、朝早く私はハジツゲに向かって歩いていた。
途中トレーナーと戦うこともあった。
エリートトレーナーがふたりで、さすがに今まで戦った野良トレーナーとは比較にならない強さだった。
戦いの後、番号交換をし、再戦を誓った。
そして、私はその先の113番道路を歩いていた。

ハルカ 「地球が持たん時が来ているのだ!!」

…などと言うことはない。
少なくとも私はユウキ君(?)のように急いでもいなければ、それほどポケモン(?)に絶望してもいないからだ!
…と言うギャグは置いておいて。
この辺りは、空で灰が太陽の日差しを遮っており、比較的寒く感じる。
いや、もちろん私の服装が問題なのであって、正直10月も半ばに入ろうかと言う時期に半袖短パンはハジケ過ぎなようね…。

ハルカ 「…にしても、ハジツゲタウンって…何があるんだろう?」

少なくともジムがあるわけではない。
特に目立った情報もなく、悪く言えば地味な街だろう…。

ハルカ 「問題は、フエンにはどうやって行こうかな?」

バッジが4つ集まらないことには、父さんとは戦えない。
つまり今カナズミ戻る必要はないということだ。
しかしながら、フエンから帰りに使う分にはいいのかもしれない…。
というわけで、『りゅうせいのたき』からの道も調べておく方がいいかもしれない。
色んなポケモンに出会うことも考えられるし、ポケモンの成長に繋がるかもしれないし。

ハルカ 「よしっ、じゃあ目的が決まった所で行きましょうか!」

気合を入れ、灰の中を進む。
これが死の灰だったら今頃死んでるわね…さすがに1兆倍の致死量には堪えられる自信が無いわ。
と言うギャグは置いておいて、私はトレーナーを蹴散らしながら進んでいく。
すると、気がついたら私の体はかなり寒くなっていることに気付く。
いや、寒いと言うよりも冷たい…。

ザパァン!

忍者ごっこの少年 「砂の中からドロロロンッ!! 勝負でござる!」

ハルカ 「……」

私はため息をつく気力もなくなりそうだった。
しかし、挑まれれば受けるのが私のポリシー。
戦いは避けられないわね。

少年 「いざ! 任せたでござる、『ドガース』!」

ボンッ!

ドガース 「ドガァ〜ス」

ドガースか…『ほのおのぬけみち』ではいくらでも出てきたわね。
あの時は図鑑確認する余裕無かったけど、今なら見れるか…。
私は図鑑を開く。

ポケモン図鑑 『ドガース:どくガスポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.6m 重さ:1.0Kg タイプ1:どく』
ポケモン図鑑 『刺激を与えるとガスの毒素が強まり、体のあちこちから勢いよく噴出す。真ん丸に膨らんだ後大爆発する』

ハルカ 「…うわ、最悪」

爆発すると言うことは、物理的な衝撃や炎は危険ね…有毒ガスと化学反応しても嫌だし。
ということは、電気も危険…しかしながら毒にかかるのはできれば避けたい。
ならば使うポケモンは決定。

ハルカ 「『クチート』、任せたわよ!」

ボンッ!

クチート 「クチクチッ!」

クチートは鋼タイプ。
ノーマルタイプの技は効果今ひとつな上、毒タイプの技は全く通用しない。
技も多彩で、何かと役に立つことの多いポケモンだ。

少年 「先手必勝でござる! ドガース、『たいあたり』!」

少年はそう言って、いきなりクチートに『たいあたり』をしてくる。

ハルカ 「クチート、『かみつく』!!」

クチート 「クチッ!」

クチートは後ろを向き、大きな角でドガースに噛み付いた。

ガブッ!

ドガース 「!?」

ハルカ 「よし、そのまま投げ捨てて!!」

クチート 「クチッ!」

ヒュンッ!

クチートはドガースを咥えたまま、上空高くに放り投げた。

少年 「ドガース、立て直せ!!」

ドガース 「ガスッ」

ドガースは空高い位置で停止する。
私はそれを見計らってクチートに指示を出す。

ハルカ 「この位置なら! クチート『かえんほうしゃ』!!」

クチート 「クチーーーッ!!」

ゴオオオオオオオオッ!!

ドガース 「!!」

ズンッ!!

ドガースは黒焦げになりながら、灰と共に地面へと墜落した。

少年 「ド、ドガース!?」

ドガースは間違いなく戦闘不能に見える。
私は勝ちを確信してクチートをボールに収めた。



………。
……。
…。



ハルカ 「ふぅ、まだ灰が積もってる。って言うか止みそうにないなぁ…」

私は近くに小屋を見つけ、そこに一旦逃げ込むことにした。



………。



ハルカ 「ふぅ…暖かいわねここ。ごめんくださーい! ちょっといいですか〜?」

少女 「は〜い、何ですか〜?」

玄関で私が挨拶すると、奥から少女がやってくる。
見た所小学生と言った所だ。

ハルカ 「ちょっと、休ませてもらえないかな? 外は灰が酷くって…」

少女 「この辺りはいつもそうですから、傘を持った方がいいですよ〜」

ハルカ 「う〜ん、持って無くって…」

少女 「まぁいいです、とりあえず上がってください! 工房の方で暖まってください!」

そう言って、少女はトテトテと奥に駆けて行った。
私は靴のまま中を歩いている少女に習ってそのまま歩いて行く。



………。



ハルカ 「うわ…これは暑いわ」

見ると、何とここはガラス工房だった。
そう言えば聞いたことがある、確か灰を使ってガラスを作る技術があるって…と言っても細かいことは知らないのでちょっとわかりかねるけど。

少女 「♪〜♪♪〜♪」

少女は何やら楽しそうに笛を吹いていた。
いやもとい、ビードロという奴だ。
見るのは初めてだけど、成る程。不思議な音がするのね。

おじさん 「おお、いらっしゃい! 傘も差さないでその格好は寒かっただろう?」

ハルカ 「あ、どうも…お邪魔してます」

私は頭を下げてそう挨拶する。
気のいいおじさんで、温かく迎えてくれた。

おじさん 「旅のトレーナーかい? そんな格好で来た所を見ると、あまりこの辺は詳しくないのかな?」

ハルカ 「えと、はい…最近ホウエン地方に来たばかりで、全然知らないことだらけなんです」

少女 「そうなんだ! じゃあ、お姉さんは灰を集めることも知らないんだね」

少女はそう言うと、何やら大き目の袋を私に渡してくれた。
しっかりとした作りの袋で、かなり丈夫だ。
しかも中は灰の香りが凄い。

少女 「それに灰を沢山入れて持って来たら、ガラスの道具を作ってあげるよ♪」

ハルカ 「ガラスの道具…?」

おじさん 「ガラスの机や椅子を作ることもできるよ、他にはトレーナーだったら…ビードロを作ってあげるよ」

ハルカ 「ビードロですか…何かの役に立つのかなぁ?」

少女 「『あおいビードロ』なら、眠っているポケモンを起こすことができるよ、『きいろいビードロ』なら混乱を治すの」
少女 「『あかいビードロ』なら、メロメロ状態を治せるし、『しろいビードロ』は野生のポケモンを引き寄せるのよ」

おじさん 「そして、『くろいビードロ』なら野生のポケモンを遠ざけるんだ」

ハルカ 「おお、使い道多し! でも、どうして色で効果が変わるの?」

もっともな疑問だろう、本当は聞いてはいけないことかもしれないが。

おじさん 「ん、色に意味はないよ…単に効果がわかりやすいようにね」
おじさん 「別に好きな色を言ってくれれば、効果を付加してあげるよ?」

ハルカ 「あ、いえ…そのままでいいです、確かにわかりやすいですし」

私はそう言って、『はいぶくろ』を貰う。
こうして、私はポケモンの修行も兼ねて灰を集めることにする。
単純に外で袋を開けていれば勝手に入ってくるので、楽な物だ。



………。
……。
…。



ハルカ 「よし、キャモメ『みずでっぽう』!!」

キャモメ 「キャモ〜!」

バシャァンッ!

サンド 「サ〜ン!」



………。



ハルカ 「ワカシャモ、『にどげり』!!」

ワカシャモ 「シャモ!」

ドガガッ!

パッチール 「パッチ〜…」



………。



ハルカ 「ふぅ、結構倒したわね…」

すでに皆のレベルも相当上がってきたと思う。
中でもキャモメの成長がかなりよく、ひょっとしたら進化をするのかもしれない。
他にも全体的に色んな成長を見せている仲間たち。
この調子なら次のジム戦も期待は出来そうだ。

ハルカ 「でも、次のジム戦って…どんなジムなのかな?」

ふと思う。
今度は何体で戦うんだろう…?
そんなことを思っていると、ふと私はUFO(未確認飛行物体を発見する!)

ハルカ 「あれは…?」

ポケモン図鑑 『エアームド:よろいどりポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.7m 重さ:50.5Kg タイプ1:はがね タイプ2:ひこう』
ポケモン図鑑 『全身が硬い鎧に覆われている。時速300キロのスピードで空を飛び、刀の切れ味を持つ羽根で切り裂く』

ハルカ 「あれ、鳥なの!?」

ぱっと見ただけでは、一瞬機械かとも思った。
だけど、その翼はしっかりと羽ばたいており、生物だと言うことを認識させる。
しかしながら、そのスピードに驚かせる。
50キロという鋼タイプならではの重さに加え、あれだけの体長だ。
キャモメよりも速いかもしれない…こう言う場合、単純に相性のいいポケモンで戦うのが妥当!

ハルカ 「行くわよ、『ラクライ』!!」

ボンッ!

ラクライ 「ライッ!!」

このエアームドは間違いなく私を狙っている、下手に背を向けたらそれこそ危険ね。
鋼と飛行は私も大体、相性がわかってきている。
鋼に有効なのは、炎、格闘、地面…飛行なら、電気、岩。
つまり、炎タイプのワカシャモ、電気タイプのラクライ、『かえんほうしゃ』を使えるクチート、『でんげきは』を覚えたキャモメ…と対策はほぼ万全!
どこかの方向音痴とは違うわ!!
ただし、この中でもマッスグマは相性がよろしくない…物理攻撃しかないマッスグマではチト不利なのだ。
こう考えると、マッスグマにも色々考えて覚えさせた方がいいのかもしれない。
コノハナに関しては草なのでここは出ない方がいい。

エアームド 「ムドーーー!!」

ギュンッ!

ハルカ 「くっ、速いだけで…!」
ハルカ 「ラクライ、『スパーク』よ!!」

ラクライ 「ライ……」

ハルカ 「って…降りて来なさいよ、このバカーーーー!!」

エアームド 「……」

エアームドはあざ笑うように空中で羽ばたく。
その際、灰がやたらとこっちに舞い上がってくる。
コノヤロウ…。

ハルカ 「ラクライ、『でんじは』!!」

ラクライ 「ライ!!」

バチチィッ!!

エアームド 「ムドー!」

ラクライは『でんじは』を放つが、見当違いの方向に『でんじは』を撃つ。
当然エアームドには当たらない。

ハルカ 「ちょ、何で!?」

ラクライ 「ライ〜…」

よく見ると、ラクライは目を擦っていた。
まさか『すなかけ』!?…いや灰かけ!?
どちらにしてもラクライは目をやられたようだ。
ううむ、『スパーク』は体当たり技だから、空を飛ばれると届かない…。
仕方ないので、ここはあえてこちらも鳥で対抗する。

ハルカ 「『キャモメ』、頼んだわよ!!」

ボンッ!

キャモメ 「キャモ〜」

呑気な鳴き声でラクライと交代するキャモメ。
こちらも飛行だけに、攻撃が届かないことは無い。
まずは牽制で…。

ハルカ 「キャモメ、『みずでっぽう』よ!」

キャモメ 「キャモッ!」

エアームド 「ムドー!!」

ヒュンッ!!

ハルカ 「く…また速くなった!?」

先ほどよりも数段速くなっている。
正直、あそこまで速いとは思わなかった。

エアームド 「ムドーー!!」

キャモメ 「キャモ!?」

ズドドドドッ!!

エアームドの口から星が無数に飛んでくる。
あれは、確か『スピードスター』とか言う回避不能の技…!

キャモメ 「キャモ〜…!」

キャモメは空中で落ちそうになるが、何とか持ち直す。
ダメージはありありだ…キャモメは打たれ強い方ではない。
長引くと不利…だけどあのスピードを撃ち落すには…。

ハルカ (あの技しかない…でもぶっつけ本番でいけるのかな?)

迷っている暇は無い。
相手の攻撃は回避不能。
こちらの攻撃はほとんど当たらない…だったら。

エアームド 「ムドー!!」

ヒュヒュヒュンッ!!

エアームドはなおも『スピードスター』を連発する。
キャモメはなおも耐える、もうこれ以上は無理だ。
私は決断する…が、その前に何かキャモメに予兆が訪れる。

カァァァァァァッ!!

ハルカ 「…え!?」

エアームド 「?」

キャモメ 「……キャモーーー!!」

キャモメの体を光が包み込み、眩い光と共に体が再構成されていく。
それは、全く別の生き物に見えた…。

? 「ペリーーー!!」

ポケモン図鑑 『ペリッパー:みずどりポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.2m 重さ:28.0Kg タイプ1:みず タイプ2:ひこう』
ポケモン図鑑 『小さいポケモンや卵を嘴(くちばし)に入れて運ぶ、空の運び屋だ。海辺の険しい崖に巣を作る』

ハルカ 「え、えと、とりあえずペリッパー、『でんげきは』よ!!」

突然進化したペリッパーに向かって、私はぶっつけ本番でそう指示する。

ペリッパー 「ペリ〜!」

ペリッパーは大きな顎を開き、そこから高速の電撃を放つ。
まさに電光…あれじゃあかわし様は無いわね。

バシィンッ!!!

まさに閃光。
光ったかと思うと、エアームドは地に落ちた。
さすがに驚いた…。
私は改めてペリッパーを見る。

ペリッパー 「ペリ〜?」

ハルカ 「…か、鴎(かもめ)がペリカンになった」

さすがに驚く、ま、まぁ進化なんだからいいのかな?
猿が人間になったくらいだし…まぁねぇ。
私はペリッパーをボールに戻し、一度工房に戻った。
さすがに灰もかなり溜まったし、これならビードロを作ってもらえるだろう。



………。



おじさん 「おお、灰が集まったのかい? どれどれ…」
おじさん 「うん、これならビードロを作れるよ! で、どれを作る?」

ハルカ 「えっと…『くろいビードロ』を」

おじさん 「よ〜し、じゃあ今日はここで泊まっていくといい。明日には出来上がっているから」

ハルカ 「あ、はい…今夜はお世話になります」

少女 「じゃあ、今夜は三人分ですね!」

ハルカ 「チッチッチ♪ ポケモンの分も6匹分よ! 今日は私が料理を披露するから楽しみにしててね!」

少女 「おお、お姉さん強気ですの! 楽しみですの!」



………。
……。
…。



こうして、私はおじさんと少女に特性スタミナ料理をプレゼントし、次の日私はビードロを受け取って外に出た。



………。



ハルカ 「『はいぶくろ』は…無駄にはならないわね」

私は未だ降ってくる灰を見てそう思う。
そして私は灰の中を駆け抜けた。



−ここはハジツゲタウン。小さな畑がある農村−



ハルカ 「農村なのにタウンとはこれ如何に?」

などと言うお約束のツッコミを入れながらも、私はポケモンセンターに向かうことにした。
これだけ小さな町(村)でもポケモンセンターは健在で、普通に平均サイズの土地のようだった。

ハルカ 「どうも〜…ポケモンの回復と貸し部屋お願いしま〜す」

受付 「こんにちは、それではカードを確認させてもらいます……はい、それではハルカさん、ポケモンをお預かりしますね」

ハルカ 「しばらくしたら取りに来ますので、お願いします」

受付 「はい、それではお気をつけて」

例によってマニュアルな受付さん。
私は一旦パソコンに向かうことにした。
持ち物をちょっと整理しよう…。



女性 「……」

だが、先客がいた。
しかも、何やら細かい作業をしている。
もしかして修理中だろうか?
その女性は思ったよりも若いようで、眼鏡にお下げと…見た目は地味な女性だ。
服装も、一般人とは違う服装で、どっちかと言うと作業着のような感じがする。
私はちょっと聞いてみることにした。

ハルカ 「あの、もしかして修理中ですか?」

女性は私に気付くと、振り向く。
目をキョトンとさせながら、女性は私を見ていた。
意外だったんだろうか?
しばらく見合っていると…。

女性 「あら、あなたは…トレーナーさんですか?」
女性 「ここに立っているということは…パソコンを使うんですよね?」

ハルカ 「は? あ、まぁ…」

女性 「失礼ですが、あなたの名前は…?」

ハルカ 「ハ、ハルカと言います…」

何だかこの人やりにくい…。
いわゆる、『ですます』口調と言う奴だ…こう言う硬いのはちょっと苦手。
しかしながら、気にもしないでその人は話を進める。

女性 「ハルカさんと言うのですか。あなたトレーナーなんですね」
女性 「と言うことは、あたしの作った預かりシステムを使ってくれているんですよね?」

ハルカ 「え? あ…はい」

と、言っても…実の所今は利用していない状態だった気が。
預けているポケモンもいないので、実質預かりシステムは空だ。

女性 「申し遅れました、あたしはマユミと言います」
女性 「預かりシステムを使っているトレーナーに会えて、凄く嬉しいです」

マユミという女性はそう名乗り、本当に嬉しそうにしていた。
何て言うか…この人天然だ。
私はそんなことを思っていても、マユミさんは勝手に話を進める。

マユミ 「もし良かったら、あたしの家にも遊びに来てください。114番道路にありますから」

そう言うと、マユミさんはパソコンの前からどいて、そのままポケモンセンターを出て行った。
一応作業用の道具とかも持っていたところを見ると、作業していたようである。
ここで、私はあることを思い出した。

ハルカ 「そう言えば、テッセンさんが通信機器とか作ってたんだっけ…でもマユミさんじゃなくてアズサさんとか名前言っていたような?」

考えては見るも、意味が無いことに気付いた。
私はさっさとパソコンで持ち物を整理した。



………。



男 「すみません、ここに博士は来ませんでしたか?」

突然警備員の格好をした若い男性が受付にそう言い寄る。
だが、受付嬢は首を振ると、男はその場で唸る。

男 「ああ…ってことはやっぱり『りゅうせいのたき』に!」

ハルカ 「…あの、どうかしたんですか?」

私は例によって首を突っ込む。
決して野次馬根性ではない!
ただのお節介です。

男 「え? あの君は?」

ハルカ 「ああ、別に気にしないでください…ただのポケモントレーナーですから」

私がそう言うと、男性はおおっ、と声をあげる。
そして私に向かって。

男 「あの、もし良かったらソライシ博士を追いかけてくれないかな!?」

ハルカ 「…ソライシ博士?」

聞いたことの無い人だ…オダマキ博士の知り合いかなぁ?
とりあえず、博士というからにはそれなりに偉い人なのだろう。

男 「どうにも、マグマ団の連中に目をつけられているらしいんだ!」
男 「特に、最近は『いんせき』を見つけたとかで、皆に言い触らしてたからな〜」
男 「絶対マグマ団に狙われてる…残念ながら僕にはポケモンが無い! というわけで…」

ハルカ 「…まぁ、いいですよ。話聞いちゃったし、ちょっと危なそうな話ですけど…」

正直、マグマ団と言われたらちょっと退きそうだけど…やらないわけにはいかないわね。
人の命がかかってそうだしね…。

男 「そうか、助かるよ! 『りゅうせいのたき』は114番道路にあるから」

そう言うと、男性はポケモンセンターを走り去る。
忙しい人ね…。
にしても…。

ハルカ (今回はさすがに報酬は期待できそうに無いかな?)

まぁ、見返りを求めてボランティアやるわけにもいかないけど。
この際自分のお節介と割り切ろう。
問題は…。

ハルカ 「今回の件がどう絡むのか…」

少なくとも総帥のマツブサは陸を増やすと言っていた。
そして、今度あったらタダではおかないとも…。
今度は腹をくくった方がいいかもね。
私はそんなことを思いながらも、今日はポケモンセンターで休むことにした。
今からだと夜遅くなってしまうからだ。
とりあえず明日早朝向かおう。





………………。





マツブサ 「で、例の物はどうだカガリ?」

ここはデコボコ山の山頂。
マツブサは自身自らがその場に赴き、妙な大型の機械と向き合って幹部のカガリに話し掛けた。

カガリ 「ホムラが担当しています、すぐにでも目的の物は持ち帰るでしょう」

マツブサ 「ふむ、アクア団の様子はどうだ?」

カガリ 「今の所目立った動きはありません…ただどうも『りゅうせいのたき』で動きがあるようです」

マツブサ 「ふむ、ならばお前は一旦基地に戻り、『G』の捜索を続けろ」

カガリ 「よろしいのですか? 今は『いんせき』の回収と火山の活性化が最優先だと思いますが…?」

カガリは冷静に進言する。
だが、マツブサは少々苦い顔をする。

マツブサ 「ここには私がいる、それ以上の保健が必要か?」

マツブサがそう言うと、カガリは一歩退がって敬礼する。

カガリ 「…失礼しました、ではこれより基地に帰還いたします!」

カガリはその場を後にする。
マツブサはそれを見送ることなく、火山の火口を見つめた。



………。



下っ端 「カガリさん! 自分がお送りいたします!!」

カガリ 「いえ、いいわ…あなたはここでマツブサさんを援護しなさい」

下っ端 「え、ですが…!」

カガリ 「いいから、これは命令よ…?」

カガリは強い視線で下っ端のひとりを睨む。
凄みを込めたその視線で下っ端は頷く他に無かった。



カガリ 「そろそろ出てきたらどう?」

カガミ 「…気付いてたのか」

カガリ 「姉妹ですもの…当然よ」

そう言って『姉』のカガリは私を見て笑う。
私はここで初めてローブを取る。
ホウエン地方では初めて素顔を見せる。
私の長髪がさらっと靡く。
姉は私と違い、短髪でやや髪が荒い。
普段から大雑把な姉らしい姿だ。
年齢は、私よりひとつ上…とはいえ、姉さんは私を対等の立場で見てくれている。

カガリ 「…そう言えば、私も会ったわよ。例の『ハルカ』ちゃん」

カガミ 「…会ったの? どこで?」

私がそう聞くと、姉さんは『フフフ』と笑いながら答える。

カガリ 「カイナシティのポケモンセンターで…それも大衆浴場」
カガリ 「にしても、あの娘いいスタイルねぇ…あなたよりも胸大きいんじゃない?」

カガミ 「……」

相変わらず、姉さんはからかうようにそう笑う。

カガミ 「相変わらずね…そんなに私が貧乳だと言いたいの?」

私がそう言うと、まるでわかったように姉さんは腹を抱えて笑う。
いつものペースだ。

カガリ 「あははっ、本当にあなたも変わらないわね…まぁ私みたいに牛乳を沢山飲まないからよ!」
カガリ 「それとも誰かに揉んでもらう? そうすると大きくなるそうよ!」

姉さんはこれでもかと言うほどに笑う。
余程ツボにハマッタらしい。

カガミ 「…もういい、とにかく今更説得を聞く気はないんでしょう?」

私がそう言うと、やや強い目で私を睨む。
本当に…普段大雑把でおちゃらけているくせに、こう言う顔もできるんだから…怖い物ね。

カガリ 「…それはあなたと同じ、お互い…譲れない物があるでしょう?」
カガリ 「今回は見逃してあげるわよ…もっとも次会う時は敵同士でしょうけど」

カガミ 「…これも、姉妹だからなのね」

私はやや悲しみを感じる。
マグマ団のやろうとしていることは決して、いいことではない。
姉さんにはそれがわかっているはずなのに、マグマ団の幹部としてまで動いている。
私は違う…私には、自分のするべきことがある。
私はローブを再び被り、顔を隠す。

カガリ 「わざわざそうやって顔を隠すなんて、よっぽど正体を知られたくないの?」
カガリ 「カイナでマツブサさんに会ったそうだけど、最初私が疑われたんだから…」
カガリ 「まぁ、どうせあなただと思ったけどね…」
カガリ 「わざわざ偽の『名前』まで使って、ホウエン地方を制覇…?」

カガミ 「…あの娘には言わないでよ?」

私は念を押す。
姉さんはこんな感じでも、私のことを案じてくれる人だ。
今までもずっとそうやって信じてきている。

カガリ 「…まぁ、口が滑ったらしょうがないと思ってね?」

カガミ 「いや、思いっきりぶちのめす」

私は笑いながらそう言う。
すると、姉さんはまた腹を抱えて笑う。

カガリ 「あははっ、本当にあなたってからかい甲斐があるわ! …もうそろそろ行きなさい! さすがにマツブサさんが気付くかもしれないわ」

カガミ 「…姉さん」

カガリ 「ほら早く…! クロバットを使えばすぐに逃げられるでしょ?」

カガミ 「…うん」

私はクロバットをボールから出し、それに飛び乗る。
私のクロバットは通常よりも大きいため、背中に乗っても問題ない。
クロバットは4枚の羽根を持つため、通常よりも羽ばたく力は強い。
そして、その背中に乗り、私はフエンへと飛び立つ。
ジム戦も消化しなければならない、いまここに居続ける事は無駄だ。
私は気持ちをジム戦へと切り替えた。



………。



カガリ 「…さて、私も私の『仕事』をしないとね」

私はそう呟いてあの場を後にする。
とりあえず、例の『ボール』を探さないとね…。




………………。





カガミ 「……」

ふと、温泉に目が行く。
フエンと言えば、温泉と言っても過言ではない。
とはいえ、素性がばれるのは好ましくない。
しかしながら、今までも風呂はほとんど入らずにここまで来た。
服の洗濯はしても体を洗ったのはカイナでの海水のみ。
あの時は潮のせいでえらい目にあった。

カガミ 「………」
カガミ 「……」
カガミ 「…!」

私はここでふと閃く!
そうか、タオルを顔に巻いたら素性はばれない!
でも…息苦しいかな?
だけどお風呂には入りたい〜。
うう…迷う。
普段なら迷うことも無いのに…私もほとほと面倒な道を選んだ物だ。
私はとりあえず顔を隠しながら温泉に入ることにした。
ポケモンの回復も必要だろうし、しばらくは預けておこう。
ちなみにトレーナーカードは偽造なので名前だけはカガミで登録してある。
あんまり厳しくは無いらしく、誰も気にしないのは救いだ。



………。



カガミ 「……はぁ」

女性 「あれ? もしかして…カガリさん!?」

カガミ 「ん…?」

ふと女性に話し掛けられる。
ちなみに、今の私はタオルで髪を完全に隠しており、顔面だけは丸わかりの状態だ。
本来なら髪型で姉とは区別がつくのだが、そうでないとやはり間違われるのか…姉妹とはそう言うものね。

女性 「あれ? もしかして違うの?」

どうやら、マグマ団の団員か…それで姉と間違えたんだな。

カガミ 「悪いけど、人違いよ…」

女性 「あ、ごめんなさい…凄く似ているから」

カガミ 「…世界には自分と同じ顔を持つ人が5人はいるそうよ。何かで聞いたことがあるわ」

ふとそんなことを言う。
本当に眉唾物の話だが。

女性 「え…それ本当ですか?」

カガミ 「…さぁ? 信じるかどうかは本人次第だし」

女性 「…う〜ん、やっぱり似ている気がするなぁ」
女性 「性格はまるで違う気がするけど、何だか他人のような気がしないんですよね…」

カガミ 「……」

私はふぅ…と息をつく。
たまにはこうやって休むのも本当にいい。

女性 「あの、あなたはポケモントレーナーですか?」

カガミ 「…だとしたら?」

私がそっけなくそう言うと、女性はややうろたえながら。

女性 「あ、いや…そのやっぱり強いポケモンとか使ってるのかなぁ?って…」

カガミ 「別に、ポケモンの種族で強さが決まるわけじゃないわ…ポケモンは強さじゃなく、自分との絆が強さになるのよ」

女性 「……」

女性はその言葉を聞いて目をパチクリさせていた。
そんなに染みる台詞だったのだろうか?

女性 「それ、カガリさんが教えてくれた言葉…どうしてあなたが?」

カガミ 「……」

しまった、よくよく思えば姉さんもそんなこと言ってたんだった。
不覚…ここで変に疑われるのはまずい。
どうにかしてごまかさないと。

カガミ 「た、ただの偶然でしょ? 私はそう思っているだけ」

女性 「…そうですか」

カガミ 「わ、私はとにかくこれで…!」

私はそう言って早々風呂を出た。
本当はもっとゆっくりしたいけど、こんなことになるとは思っていなかった。
はぁ…姉妹って大変。



………。
……。
…。



カガミ 「ポケモンは…?」

受付 「あ、回復は終わってますよ、今はポケモン用の広場で体を休ませています」
受付 「食事の方もそちらで摂っていると思いますが、今すぐ引き取りますか?」

カガミ 「あ、いえ…だったらそのままでいいです。明日の朝に引き取ります」

私はそう言って部屋に向かった。
荷物は少ないので問題はない。
問題があると言えば、そろそろ金がなくなりそうだ。
賞金だけで生活するのはかなり困難だな…どこか金の稼げる場所でもあれば別だが。
木の実を取っての自給自足ではかなり限界がある。
栄養が偏ってるわね…絶対。
そんなことを思うのだった。



…To be continued




Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




inserted by FC2 system