Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




POCKET MONSTER RUBY



第22話 『互いの未来』




ドードリオ 「ドードーリオーーーー!!!」



ハルカ 「…ちにゃっ!?」

某日、某時刻、某鳥ポケモンに起こされる。
寝ぼけて、断末魔の叫び声をあげてしまったようだが、気にしない。
寝ぼけ眼で時刻を確認すると、6:30。
部屋はいつもの…ワンボックス・ルームでは到底無かったが、今日は何だか清々しかった。

ハルカ 「…ん〜、何だか本当にいい朝だな〜」

思わず鍵盤を叩きたくなってしまう。
もちろん自称ヘビーユーザーの私は7鍵で♪
最近は14鍵も頑張らないと思っているが、中々手が回らない。
さて、そろそろ冗談は終わりにして状況を確認する。

ハルカ 「あれ、アスナさんもう起きてるんだ」

部屋の外では、まだガンゴン!!と工事の音がする。
まだ終わらないようね…ジム戦はいつになるやら。
そんなことを思いながら、私はバッグから歯磨きセットを取り出す。
そして、2階にあるアスナさんの部屋から、1階の洗面所へと降りた。



………。



ハルカ 「ふぅ〜毛穴までさっぱり♪」

等と言ってはいるが、ただ水で顔を洗っただけだ。
さすがにいちいち洗顔フォームなんて使ってられないわ!
しかしながら、アスナさん専用と思われる洗顔フォームが目の前に…。
やるじゃない…。

ハルカ 「さて、朝食でも取りましょうかね」

ポケモンのことも気になるので、さっさと食べてさっさと見に行こう。
私はキッチンの方に顔を出す。



………。



ハルカ 「あれ、ここにもいないってことは…」

アスナさんは外出中だろうか?
とりあえず置手紙があった。

『とりあえず、焼き飯だけでも作っておいたから、冷めてたらチンして食べてね♪』

嬉しい配慮である。
幸い、まだ温もりが保ってあり、美味しい状態で朝食を摂る事が出来た。
私は心の中で感謝する。



………。
……。
…。



ミヨ 「はい、あなたのポケモンは皆元気になりましたよ」

ハルカ 「ありがとうございます」

私はミヨさんからモンスターボールを受け取り、腰のボールラックに装着する。
これからどうしよう? また特訓でもした方がいいかなぁ…。
だが、昨日のように怪我をされては問題がある。
やるのだったら、流す程度にした方がいいだろう。
私はとりあえず広場に向かうことにした。



………。



ハルカ 「それじゃあ、今日は1日自由時間! と言っても、ジム戦やる可能性もあるから、ハシャギ過ぎないように!!」

ワカシャモ 「シャモ〜」
マッスグマ 「…グマ」
コノハナ 「コノ〜」
ペリッパー 「ペリ〜」
クチート 「クチクチッ♪」
ライボルト 「ラ〜イ」

全員が頷き、その場で自由に過ごし始める。
私はとりあえずミヨさんに広場のポケモンたちをお願いし、ひとり町に出た。



………。
……。
…。



ライボルト 「自由時間…って言っても、何もすることないよねぇ」

クチート 「そうね…広場っていってもスペースは限られてるし」

ワカシャモ 「まぁ、昨日は特訓での疲れがあると思うし、今日は体を休めましょ…」

コノハナ 「とは言っても〜…ポケモンセンターの回復で〜…ちゃんと皆さん〜…全快してますけどねぇ〜〜」

間延びした口調でコノちゃんがそう言う。
確かにそうだ。
体を休めると言っても、疲れは全くない。
どちらかと言うと、精神的な静養が目的になるのだろう。

ペリッパー 「それよりも、マッスグマさんが無事で何よりです」

ライボルト 「そうだよ! あれから心配したんだからね〜!」

マッスグマ 「…ど、どうも。恐縮です」

ライちゃんはそう言ってグマちゃんにじゃれ付く。
グマちゃんは相変わらず照れた表情で赤くなっていた。
女の子同士なのに…。

クチート 「はぁ〜でも退屈ね〜…私は体動かしてる方が好きだわ〜」

そう言ってパタパタと走り回るクゥちゃん。
まぁ、気持ちはわからないでもない。
確かにこのまま一日中ボ〜ッとしているのも問題だろう。

ワカシャモ 「う〜ん、じゃあ何かした方がいいよね…何か提案のある人!」

そう言って私は案を求める。
そして最初に上がったのは…。

コノハナ 「皆で、お昼寝がいいと思います〜〜〜」

クチート 「やだ! 私は動きたいの!!」

地団太を踏んで却下するクゥちゃん…まぁ、気持ちはわからなくも無いけど、ね。

ワカシャモ 「えっと、じゃあ他の案は…?」

ライボルト 「はいはい! 私、私!!」

ピョンピョン飛び跳ねてアピールするライちゃん。
そして出した案は。

ライボルト 「鬼ごっこ!!」

ワカシャモ 「う〜ん、ここじゃ狭すぎないかな…それに、長続きしないと思うし」

特に、コノちゃんとペリちゃんは苦手だろう。
一度鬼になったら、永遠に続きかねない。

クチート 「じゃあこんなのどう!? かくれんぼ!!」

ライボルト 「それは、ここじゃもっと狭すぎると思うけど…」

クチート 「何言ってるのよ! だからこそ外に出るんじゃない!!」

ワカシャモ 「ええ!? 脱走するの!?」

クチート 「そこっ! 言い方が悪い! これは『冒険』よ〜♪」

ペリッパー 「扉は鍵閉まってますけどね…」

クチート 「そ〜んなの私の『かえんほうしゃ』でイチコロよ〜ん☆ 私の燃え上がった情熱は誰にも消せはしないわ〜!」

その場でトリップするクゥちゃん。
しかしながら、冗談にならないので却下する。

ワカシャモ 「と、とりあえず、ここで出来ることをやりましょう」

クチート 「だから、やることがないんでしょうが!!」

コノハナ 「お昼寝なら〜」
クチート 「だからそれは却下!!」

そんな調子で一時間ほど経ったがロクな案は出なかった。
まぁ、これはこれで面白かったけど。
結局グマちゃんは1回も案を出さなかったし…。
あ、それは私もか…。





………………………。





ハルカ 「あれ? アスナさんどこ行ったんだろう…ジム戦のこと聞きたいのに」

またジムの方に戻ってきたが、アスナさんが帰って来ている様子はなかった。
戻った形跡もないようなので、ちょっとジムの裏庭の方に行ってみる。
すると、声が聞こえた。



………。



アスナ 「はぁ…ダメねやっぱり。私って本当に才能ないなぁ」
アスナ 「努力で埋めるには大変だよ…ハルカちゃんのポケモン、相当強いんだろうなぁ」

マグマッグA 「マグマグ…」
マグマッグB 「マグマグ…」

アスナさんが2体のマグマッグを相手に悩んでいた。
内容は聞く限り、ジム戦のことだろう。
アスナさんはアスナさんで、努力していたようだ。
ここは立ち去った方がいいわね。
盗み聞きしちゃまずいわ。
私は気付かれないように立ち去る。



アスナ 「はぁ…ジムリーダーって、何なんだろう?」

マグマッグ? 「マグ〜?」
マグマッグ? 「マグ〜?」

アスナ 「ううん、ごめんね…マグ、メグ。私のせいであなたたちに苦労かけて」

マグ 「マグマグ!」
メグ 「マグマグ!」

マグとメグは私を慰めてくれる。
こんな健気なポケモンたちのために、やっぱりいい勝負をしたいな。
私にどこまで出来るのかわからないけど、ジム戦とか、ジムリーダーとか抜きにして、本気でハルカちゃんと戦いたいな。
そして、その結果次第で、これからどうするか…本気で決めよう。
自分のために。

アスナ 「よし、もうひと頑張りするよ! マグ、メグ、頑張って!!」

マグ 「マッグ!」
メグ 「マッグ!」





………………………。





ハルカ 「…はぁ、今日はどうしようかな?」

とりあえず次のジム戦が決まらないことには、どうにも動きようが無い。
ポケモンの体調も悪くなければすぐにでもジム戦が出来るだろう。
だけど今のままじゃ足止めを喰らいっぱなしになってしまう。
いつまでもここに滞在するつもりは無いし…。

ハルカ 「無駄とわかっていても、聞いてみるべきかな…」

ジム戦なんて、その気になればジムの外でも出来るはずだ。
個人的感情で、嫌だとか言われてもこちらは困る。
こっちも…待たせている人がいるんだし。
特に、今回のジム戦は私にとって大きな節目となるはずなのだ。

ハルカ (…やっと、父さんに挑むことが出来るかもしれないんだから)

私にとって偉大過ぎる父親。
全国的に有名なジムリーダー、センリ。
まだ駆け出しのポケモントレーナーである私が、父さんと戦って勝てるかどうかなんてわからない。
でも、戦うのは私だけじゃない…ポケモンもなんだから。
だからと言って、父さんのポケモンが弱いわけなんて無い。
多分、恐ろしい位強いんだろう。
でも、私だってキヨミさんのポケモンとバトルして確かめたことがある。
どれだけ実力差があったって、どれだけ経験の差があったって。

ハルカ (頑張って出来ないことなんてない!)

だったら、私が父さんに勝つことも、決して不可能ではないはず。
何より、あのキヨミさんよりも強いトレーナーなんて、私には思い浮かばない。
いくら父さんでも、チャンピオンになった時のままのポケモンを連れているとは到底思えないし。
だったら、まだ勝つ糸目はきっとあるはずだ。

ハルカ 「……」

はぁ、溜息をつく。
何で、もう次のこと考えてるんだろう?
まだ、ここでのジム戦があるのに。
気がついたら、父さんとの戦いのことを考えている。
アスナさんを軽視しているわけじゃないけど、つまずくつもりはない。
絶対に勝って、絶対に前に進む。
これは、私の中で決めたことなんだから。
何があっても、絶対に勝ってみせる。
私は自分に言い聞かせて、町をぶらついた。
しばらく、ボ〜ッとしていてもいいだろう。





…………………………。





そして、時刻は流れ…夕方に。

クチート 「あ〜〜、もう〜、暇〜!!」
クチート 「何でこんなにやることないのぉ!」

ワカシャモ 「まぁまぁ、少し位は我慢しましょうよ…」

ライボルト 「そうそう…結局何にも浮かばなかったんだし〜」

だけどクゥちゃんはご不満の表情。
今にも脱出したいと言わんばかりだ。
結局あれから何をやっても案など出なかった。
当然のように、無駄な時間が流れていったのだ。
しかしながら、そろそろ時間が時間なので…。



………。



ハルカ 「皆、元気にしてた〜?」

ワカシャモ 「シャモ…」
マッスグマ 「…グマ」
コノハナ 「コノ〜〜」
ペリッパー 「ペリ〜」
クチート 「クチクチクチッ!!」
ライボルト 「ラ〜イ」

どうやら、問題はないようだ。
むしろクチートなんか、動きたくてしょうがないといった風にさえ見える。
意外と暇を持て余していたみたいね。
まぁ、1日丸ごと休養なんて初めてだったしね。

ハルカ 「あははっ、まぁたまにはこういうのもいいでしょ! 仲間内でもっと交流広めとかないと」

しかしながら、全員仲は悪くない。
むしろ、性別の統一感があるため、かなり仲はいい。
問題があるとすれば唯一♂のペリッパーだが、特に仲が悪いようには感じなかった。

ハルカ 「さて、とりあえず後のジム戦の予定を発表するわ!」
ハルカ 「もし、仮に次のジム戦が3体で行われる場合、出てもらうのはまずワカシャモ、ペリッパー!」

ワカシャモ 「シャモッ」
ペリッパー 「ペリッ」

ハルカ 「そして、3匹目は…」

マッスグマ 「……」
ライボルト 「……」

今頃心の中ではドラムの音がダララララララララッ!!と鳴っている事であろう。
私はあえてもったいぶり。

ハルカ 「ライボルトに決定! というわけで、3匹とも頼むわね!!」

ワカシャモ 「シャモッ」
ペリッパー 「ペリッ」
ライボルト 「ライッ」

結局、このメンバーで行くことにした。
あくまで『予定』だが、多分変わりは無いだろう。
問題は結局ジム戦がどうなるか、だ。
まだやる日程さえ決まってないんだから…結局どうしようもない。

ハルカ 「…まっ、とりあえず皆戻って」

そう言って私は全員をボールに戻し、ラックに装着した。
とりあえず小腹が空いてきたので、一旦アスナさんの所に顔出そうかな?
私はまずポケモンセンターの玄関に向かった。



………。



ミヨ 「あ、ハルカさん…」

ハルカ 「ミヨさん、ポケモンのことどうもですっ」

一応お礼を言っておく。
だけど、ミヨさんは少し複雑そう表情で。

ミヨ 「あ、ええ…それはいいんですけど、アスナさんから連絡が入っているんですよ」
ミヨ 「その、すぐにジムの方に来てくださいって」

ハルカ 「…わかりました、すぐに行きます」

私はそう言ってポケモンセンターを出る。
ひょっとしたら、ジム戦のことが聞けるかもしれない。
私は、複雑な期待を胸にジムまで走った。



………。
……。
…。



ハルカ 「…あ、アスナさん」

ジムに着くと、アスナさんは外で待っていた。
何だか、小さな鞄を持っていたけど…どこかへ行くつもりなんだろうか?

アスナ 「あ、ハルカちゃん! 待ってたよー!!」

ハルカ 「あ、あの…一体何が?」

呼び出したからには、それなりの話があるのだろうと思ったのだけれど…。
アスナさんの笑顔からはそれが読み取れない。

アスナ 「ハルカちゃん、今日は外食にしよう!!」

ハルカ 「…はぁ?」

急に何故?
いやまさか、それを伝えたいがためにわざわざ呼び出したのか!?

アスナ 「外食外食! いやね、家にある食材が心もとなくって…今から買い漁るのもアレだし、折角だから焼肉食べに行こう!」

ハルカ 「焼肉ですか…それはまた豪勢ですね」

アスナ 「まぁいいじゃない! 今回は奢ってあげるから!!」

アスナさんは切符のいいことを言う。
何かいいことでもあったのだろうか?
とにかく、アスナさんと私は焼肉を食べに向かった。



………。
……。
…。



ハルカ 「こんな所にあるんですか?」

アスナ 「そうそう、目立たない所にわざわざ作ったらしいよ〜、意味はわからないけど」
アスナ 「ここだよ、ほら」

割と古い感じの路地裏をいくつか抜けた所に、確かに焼肉のいい匂いが漂う店があった。
そこはまさに目立たない場所で、こんな所に店を構えてもほとんど客は来ないのでは?と思うほどだ。
アスナさんは、どうも常連客なのか、何の違和感もなく店に入って行った。

店長 「らっしゃい! おっ、アスナちゃんじゃねぇか!!」

まずは店長の威勢。
やはりアスナさんとは知り合いなのか、アスナさんを歓迎していた。
そして、後ろについている私を見て。

店長 「お、今日は連れがいるのかい?」

ハルカ 「あ、どうも…」

アスナ 「あははっ、今日は友達連れてきたのよ! 今夜はいっちょ頼みます!」

店長 「おお、任しときな! 今日はまだ他の客がいねぇから、どこでも好きな所に座ってくんな!!」

アスナ 「は〜い、よしっハルカちゃん! 奥の座敷に行くよ!」

ハルカ 「あ、はい」

中は右手側にカウンター、左手側にはテーブルが3個ほど設置されている。
更に奥には、座敷があって、畳が敷いてあった。
アスナさんは靴を脱いで畳に上がる。
どうも、この座敷は特別席のような感じなのか、ひとつしかなかった。
私はアスナさんの向かい側に座り、バッグを側に置く。

アスナ 「ふ〜んふ〜ん♪ 何頼む、ハルカちゃん?」

ハルカ 「あ、お任せしますよ」

私がそう言うと、アスナさんはメニューを読み上げる。

アスナ 「じゃあ、カルビとハラミを2人前ーー! 後、ビールとコーラ!!」

店長 「あいよー!! ちょっと待ってくれな!!」

アスナ 「って、勝手に飲み物コーラにしちゃったけど大丈夫?」

ハルカ 「あ、はい…大丈夫です」

と言うよりも、アスナさん…お酒飲むのね。
それは意外だった。
少なくとも冷蔵庫には見当たらなかったけど。



………。



店長 「へい、お待ち! ゆっくりしてくんな!!」

そう言って、注文した肉がずらりと並ぶ大皿を小さな机に置く。
そして、その隣にビールとコーラの瓶、及びコップ2つを置いていった。

アスナ 「よ〜っし、今日は食うわよ〜!! 火は入ってる?」

ハルカ 「あ、入れてありますよ。すぐにでも焼けます」

アスナ 「よっし、じゃんじゃん焼いて食うわよ!! はいハルカちゃん、焼肉のタレ」

私はそれを受け取って小皿にタレを注ぐ。
後は、焼けていった肉からじゃんじゃん食っていった。
ちゃんと網焼きになっており、かなり美味い。
さすがにまともな焼肉を食べるのは久し振りで、私もどんどん食が進んだ。

アスナ 「んぐんぐんぐっ! ぷっは〜〜〜!! 店長、ビールお代わりーーー!! 後、塩カルビと塩タン追加ーーー!!」

店長 「うーーーいっ! すぐに持っていくからなーーー!!」

ハルカ 「ア、アスナさん…今日はまた一段と食べますね」

すでに2人前は軽く平らげてしまっていた。
かく言う私も平らげようとしているのだが。
そして、追加を頼んだ分も結局ふたりであっさり平らげてしまった。



………。
……。
…。



アスナ 「あっはっは! いやぁ〜食べた食べた!!」

ハルカ 「どうも、ご馳走様です…」

店長 「はっはっは! ふたりともいい食いっ振りだ! 見ていてこっちまで腹が減らぁ!」

アスナ 「今日も美味しかったよ店長! また近い内に食べに来るから!」

店長 「おう! 待ってるぜ!! 代金は少し安くしとくからよ!!」

他の客がいないことをいいことに、凄まじく良心的なことを言ってくれる店長。
アスナさんはよっぽど常連なのだろうか?
とりあえず、代金を払って店を出るアスナさん。
私もその後を追った。



………。



アスナ 「はぁ〜…やっぱりひとりで食べるのとは全然違うねぇ〜」

ハルカ 「いつも、ひとりで食べているんですか?」

アスナ 「ん〜、たまにミヨさんと行く位かなぁ…大抵はひとりだよ」

ハルカ 「…私は、何年振りかな? 家族で一度行ったっきり…」

思い出すのが難しい位、過去のことを振り返る。
結局、家族で外食すること自体が少なすぎたため、ほとんどうろ覚え状態だ。

アスナ 「そっか〜、でも私なんて家族と外食した記憶もないし…」

どこか遠い目をして呟くアスナさん。
そっか、アスナさんは家族外食に行った事もないんだ。

アスナ 「まっ、折角最後の食事になるんだし、パッと行かないとね♪」

ハルカ 「え…最後?」

確かにアスナさんは『最後』と言った。
どういう意味だろうか?
まさか、アスナさん…この町出るとか?
でも、それだったらまた来る…何て言わないだろうし。

アスナ 「…ハルカちゃん。明日の朝9時、ジム戦やるよ」

ハルカ 「!?」

突然、真剣な眼差しでアスナさんがそう言う。
迷いの全くないその瞳からは、確かな意思が伝わってくる。

『全力で戦おう』

アスナさんの目はそう言っている気がした。

アスナ 「使用ポケモンは3体! 道具の使用はとりあえず面倒だからなし!」
アスナ 「後の細かい説明は他と同じだからいらないよね?」

ハルカ 「は、はいっ!」

ついにこの時が来た。
フエンタウンでのジム戦。
しかし、やはりアスナさんの『最後』と言う言葉が気にかかる。
どういう意味なのだろうか?

アスナ 「…ハルカちゃん、悪いけど今夜はポケモンセンターで泊まってくれるかな?」
アスナ 「ミヨさんには頼んであるから、部屋を貸してもらえると思う」
アスナ 「明日のジム戦…本気でやりたいから、余計な感情は抜きにしましょう」
アスナ 「じゃ、明日…待ってるから」

そう言って、駆け足にアスナさんは走り去った。
私はすぐに感情を切り替える。
明日のジム戦が決まった。
予想通り、使用ポケモンは3体。
そして、そのうちの2体はマグマッグ。
覗き見てしまったのがアレだけど、パーティに変化はない。
私も全力で挑もう!



………。
……。
…。



ミヨ 「あ、ハルカさん…話は聞いてます」

ハルカ 「あ、すみません…何だか急だったみたいで」

ミヨ 「いえ、他ならぬアスナさんの頼みですから…気になさらないでください」

相変わらず、丁寧すぎる物腰でミヨさんはそう笑った。
そう言えば、結局ミヨさんとアスナさんって、どの位長い付き合いなのだろうか?
折角だから聞いてみようかな?

ハルカ 「あの、つかぬ事を聞くんですけど…ミヨさんって、アスナさんとはどれ位長い付き合いなんですか?」

ミヨ 「え? そうですねぇ…もう15年位ですかね」

ハルカ 「…ちなみに、今おふたりは何歳ですか?」

ミヨ 「私は27です、アスナさんは20ちょうどですよ」

なるほど、つまりはアスナさんが5歳の頃からってことね…私にとってのキヨミさんと言った所か。
と言うよりも、ミヨさんって27だったのか…もうちょっと若いと思ってたら、かなり年上だったのね。

ミヨ 「えっと、店員用の宿泊場になるんですけど…大丈夫ですよね?」

ハルカ 「はぁ、どこでも寝られる体質なんで大丈夫ですよ、多分」

そう言って、ミヨさんに案内された場所は…。



………。



ハルカ 「…あれ、何だ普通じゃないですか」

ミヨ 「そうですか? まぁ、何もないのがあれですけど」

確かに、4畳半の部屋にはまさに押入れ以外何もなかった。
辛うじてエアコンだけは設置されているようで、後は本当に寝ること以外何もできそうになかった。

ミヨ 「じゃあ、これが鍵です…」

ハルカ 「はい、明日の朝に受付に返せば大丈夫ですよね?」

ミヨ 「ええ、それじゃあ私はそろそろ自宅に帰りますので」

私は一礼してミヨさんを見送る。
そして、畳と布団以外何もないこの空間にどさりと体を倒した。

ハルカ 「…今日は早く寝よう」

と、その前に私は温泉に入って体を流すことにした。
さすがにこのまま眠るのは気になる。
焼肉の匂いが染み付いているしね…。
ついでにクリーニングも頼もうかしら?
と思うが時刻はすでに21時。
仕方ないので、今夜は浴衣を借りて、服は干しておこう…。





………………………。





アスナ 「…明日、ついにハルカちゃんと戦う」
アスナ 「私に出来ることはただひとつ…全力戦うことだけ」
アスナ 「そして、その結果次第で、私はこれからの道を決める!!」

私に出来ることなんて、たかが知れてる。
ジムリーダーとして経験の浅い私が、すでにバッジを3つもゲットしているハルカちゃんに勝つのは正直困難だろう。
でも、私に才能がなくたってポケモンたちは違う。
ハルカちゃんが言ってくれたように、トレーナーの弱さはポケモンが補ってくれる。
私はそれを信じて戦う。





………………………。





ハルカ (明日はジム戦…)
ハルカ (思ったよりも今日はよく眠れそう…)
ハルカ (余計なことを考えるのは止めよう…今はアスナさんに勝つことだけを考える)
ハルカ (勝負は勝負…手は抜きませんから、あっさり終わっても気落ちしないでくださいね、アスナさん!)



…To be continued




Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




inserted by FC2 system