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POCKET MONSTER RUBY



第25話 『ハルカ、タッグバトルを追求する…の巻き』




『11月10日:キンセツシティ』



ハルカ 「…ふぅ、何だか久し振りな気がするわね」

自転車を一旦バッグへ収納し、ここからは自分の足で歩き始める。
さて、今のところここに用があるわけではない。
が、少々腹が減り始めているのに気づく。

ハルカ 「…ふむ」

携帯時計で確認すると、時間はちょうど16時。
小腹が空き始める頃ね。
化石探しに思ったより時間がかかったのがまずかったか…。
まぁ、そのおかげで手に入れた物もあるんだけど。
化石はもとより、他にも『わざマシン37』の『すなあらし』!
この技は、使うことでどうにも111番道路の砂嵐みたいな状況に出来るらしい。
場合によっては面白いかもしれない。
しかしながら、メリットとデメリットがいまいち良くわかっていないのだが。

ハルカ 「考えられることといえば、地面タイプのポケモン(?)がやけに動くことかしら?」

正確には、やたらと攻撃がかわされる。
こっちの視界が悪いことももっともだけど、それを踏まえても当たり難い気がした。
特に、サンド、サボネアが良く回避する。
ああ言った、砂地を好むポケモンは砂嵐のような状況が得意なのかもしれない。

ハルカ 「私のポケモンで『すなあらし』に影響を受けないのは、クチートだけかぁ…」

鋼タイプという性質もあってか、クチートは全然問題なく動いてくれた。
もっとも、地面タイプの攻撃は相性が悪いのであまり前に出し難いのだけど。
そろそろ戦いが厳しくなってきたこともあって、パーティのバランス面から考えた方がいいのかもしれない。



………。



ハルカ 「…ん?」

そんなことを考えていたら、段々と薄暗くなってきたことに気づく。
もう日が落ちるのも早くなってきたわね…。
私は適当に歩いて、食事を採ることにした。



………。



ハルカ 「お、ここいいかも」

見ると、『食事処』と書いてある。
どうやら、定食屋のようだ。
私は迷わず入ることにした。
暖簾を押しのけ、開けっ放しのドアを潜ると、熱気を感じる。

店員 「いらっしゃい!」

ハルカ 「お、結構空いてる…」

中の熱気とは裏腹に、あまり客はいなかった。
私はカウンターの所にある椅子に座り、置いてあったメニューを見る。
それなりにラインナップは多く、少々迷ったがすぐに決める。

ハルカ 「豚生姜焼き定食! 後、温泉卵も付けて!!」

店員 「へいっ、ありがとうございます! 少々お待ちを!!」

威勢のいい声で、若い店員さんが動き回る。
他の店員はいないのか、ひとりだけのようだった。
もう、いい時間なのに、どうしてこんなに客が少ないんだろう?

ハルカ (繁盛してないのかな?)

とはいえ、ここから匂ってくる香りは半端ではない。
正直、いい物が来る予感がした。
やがて、数分した所で…。



………。



店員 「豚生姜焼き定食お待ち!! どうぞごゆっくり!!」

ハルカ 「ほ〜、いい匂いね〜♪」

香りからして美味しそうだ。
私は早速備え付けの箸立てから割り箸を一本取り、それを割る。
そしてまずは箸で突付いて豚肉の柔らかさを確認する。

ぐにっ、ぐにっ

ハルカ 「うむ、いい柔らかさね♪」

非常に食欲がそそられる。
しかしながら、まずは味噌汁から頂くことにする。
体を暖めてからゆっくり頂こう。

ずぞぞぞぞ…

箸でやや掻き混ぜ、ワカメ、ネギと一緒に啜る。
初めはインスタントかと思ったが、違うらしい。
バランスの非常にいい味噌汁だ。
それなりに熟達していなければこの味は出ないだろう。

ハルカ (うむむ…まさかこんな都会にこのようなレベルの高い店があろうとは)

侮れないものである。
私は心の中でオススメポイントとしてこの店を登録した。
ちなみにその後は一気に平らげた。
時間にして10分程…ゆっくり食べるつもりが。



………。



店員 「ありがとうございましたーー!!」

食事を終え、私は店を出る。
お腹も一杯になったことだし、さてどうしようかしら?

ハルカ 「このまま一泊するのも手だけど…」

シダケに向かってからでもいいかもしれない。
時間はまだまだ夜が始まったばかり。
シダケまでの距離は大したこと無いので、すぐにでも着くだろう。
しかしながら、意外に疲れは溜まっている。
化石が結構重いのだ。
さすがの私でも、バッグに詰め込んだまま自転車を転がすのはしんどい。
あ、ちなみに化石はまず皮の袋に包んでからバッグに入れてるわよ?
そのままだとバッグが破れる可能性があるからね。

ハルカ 「…一旦休むか」

私はそう思ってポケモンセンターに向かった。
時間が詰まってるわけじゃないので、ここは余裕を持って動こう。



………。
……。
…。



ハルカ 「さて、例によってワンボックスルールなんだけど…」

時刻はまだ18時。
これで寝るのは正直早すぎる。
かと言って、未成年のいたいけない(?)少女が夜で歩くというのもそれはそれで問題ある。
こう言う時に、暇を潰せるアイデアが無いのが寂しいわね…。



………。



ハルカ 「……」

ワカシャモ 「シャモ〜」
マッスグマ 「グマ…」
ライボルト 「ライッ」
ペリッパー 「ペリ…」
コノハナ 「コノ〜」
クチート 「クチクチッ!」

結局ポケモンたちの特訓をすることにした。
と言っても、やることはそんなに多くない。
今の私だと、出来ることは限られてる。
戦うのはあくまでポケモン自身なので、どうやって効率的に鍛えるか…。

ハルカ 「ちょっと新しいことにも挑戦しようかな? それじゃあ、まずパートナーを『自分』で選んで!」
ハルカ 「自分たちでパートナーを決めたら、説明するわ!」

私がそう言うと、ポケモンたちはやや躊躇いがちに動き始める。
言葉の意味はわかっているようだけど…。


ワカシャモ 「ね、ねぇ…グマちゃん、私と組まない?」

マッスグマ 「……」こくり


やや慌てた様子で、まずワカシャモがマッスグマに声をかける。
あの2体は特に仲がいいので、まぁ妥当と言えば妥当か。

ハルカ (ふむ…)


クチート 「むぅ、グマちゃんが取られちゃったか…」
クチート 「だとしたら、残っているのは…?」

ライボルト 「コノちゃん、私と組も組も!!」

コノハナ 「はい、よろしいですよ〜…」


ライボルトとコノハナもあっさり決まる。
これで残ったのは、クチートとペリッパーね。

ハルカ (しかし、せっかちのクチートにしては行動が遅かったわね)

呑気なペリッパーはともかく、クチートは珍しいと思えた。


クチート 「……強制一択じゃない」

ペリッパー 「…そうですね」


互いに、何やら複雑な表情のクチートとペリッパー。
まぁ、仲が悪いわけではないようなので安心はしている。
さて、ここで何故今回はこのような選別方法を取ったのか、その理由をお聞かせしましょう。

ハルカ (理由は、単に相性が知りたかっただけ…)

それもタイプ相性ではなく、タッグの相性。
今回は、タッグバトルの特訓をするつもりなのだ。

ハルカ 「よし、決まったみたいね! じゃあ、割り振りを言うわよ!」
ハルカ 「ワカシャモ、マッスグマのタッグは、クチート、ペリッパーの2体とタッグバトルよ!」
ハルカ 「余った2体は、適当に休んでていいわよ!」


ワカシャモ 「ええー!? タッグバトルだったんだ〜」

マッスグマ 「……」

クチート 「何よ、だったら回りくどいことせずにタッグバトルだと言えばいいのに」

ペリッパー 「…クチートさん、楽しようと思ってたでしょ?」

クチート 「……言うな」

しょうがないので、ここは開き直る。
私は改めてシャモちゃんとグマちゃんを睨む。

クチート 「こうなったら手加減しないから、覚悟しなさいよ!」

ワカシャモ 「うう、でもこっちだって2体なんだし、何とかなるよね!」

マッスグマ 「……」こくり

ペリッパー 「では、行きますよ〜」


こうして、ワカシャモ・マッスグマ対クチート・ペリッパーのタッグバトルが始まった。


クチート 「よし、まずは先制攻撃! ペリ君『みずでっぽう』よ!」

ペリッパー 「はいっ!」

シュゴッ!

クゥちゃんの命令を受けてペリ君が私めがけて『みずでっぽう』を放つ。
私は横にステップして何とかかわす。

ワカシャモ 「わっと! いきなりだなぁ…」

マッスグマ 「…!」

ビビビビッ!!

その後、グマちゃんは『10まんボルト』でペリ君を狙う。

ペリッパー 「上昇〜」

ペリ君は上昇して難を逃れる。
だけど、そのせいでクゥちゃんへの注意が逸れる。
私は一気に突っ込んで、クゥちゃんの体に向かって蹴りを放つ。

ヒュッ!

クゥ 「そんなに簡単に当たるわけ無いでしょ!」

ゴガッ!

一撃目の蹴りが外れ、すぐに二撃目でフォローする。
さしものクゥちゃんも後ろに吹っ飛ぶ。

クゥ 「あたた…このぉ!」

ゴオオオオオォォォッ!!

クゥちゃんは吹っ飛んだ後、すぐに体勢を立て直し、私に向かって『かえんほうしゃ』を放つ。
効果は低くても、ダメージはある。
私は正面から、それを受け止めた。

ワカシャモ 「これ位…私だって!」

バシャアアアッ!!

ペリッパー 「甘いですよ!」

途端にペリ君が真上から『みずでっぽう』を放ってきた。
これはさすがに効いた。
私はその場で右膝を地面に着く。

ワカシャモ 「…くっ」

クゥ 「これで終わりよ!」

そう言ってクゥちゃんが角で私に『はさむ』をする。
私には、すぐにかわせる体力が無かった。

ドガァッ!

ワカシャモ 「!?」

ペリッパー 「あ!」

突然、私の目の前でクゥちゃんが吹っ飛ぶ。
そして、肩に一瞬の重みを感じ、上から踏みつけられるような衝撃を感じた。

バチバチバチィ!!

ペリッパー 「バババビビビ!!!」

ドッシャアアアアァァァッ!!!

ペリ君がそのまま地面に落ちる。
なるほど…そう言うことだったのか。

マッスグマ 「甘いのは…皆同じ」

結局、グマちゃんだけで何とかしてしまっている。
私がピンチになった時、グマちゃんが私の背中越しから飛び出て、クゥちゃんの角に『いわくだき』を空中からお見舞いし。
そのまま空中での慣性で私の肩に乗り、私を踏み台にしてペリ君の方に飛び上がった。
そして、『10まんボルト』…さすがのペリ君も耐えられなかったようだ。

クゥ 「くっそ…でも、まだ終わりじゃないわよ!」

クゥちゃんが角で、また私を狙ってくる。
だけど、私はもう立ち上がっている。
今度はグマちゃんがフォローできない。
試すなら、今だ!

ドォウンッ!!

クゥ 「!? しまっ!」

私が全身に力を込めると、爆発したような音と共に私の周りで爆炎が巻き起こる。
そして、次の瞬間、私は思いっきりクゥちゃんを殴りつける。

ズバアァァァンッ!!!

右拳を、とにかく思いっきり振りぬく。
フック気味の拳がクゥちゃんの角にヒットし、爆音を上げてクゥちゃんの体は燃え上がった。

ワカシャモ 「…や、やった。 …!?」

途端に立っていられなくなる。
まるで、生気を吸い取られたように体から力が抜けてしまう。
これが…『オーバーヒート』の副作用、か。
予想以上に、気力が失われる。
体力が少なかったことも災いしたのか、そのまま今度は両膝を地面に着く。

マッスグマ 「シャモちゃん!」

ワカシャモ 「…だ、大丈夫。まだ…動けるから」

私は無理やり笑顔を作って立ち上がってみせる。
立つことは立てたけど…凄く頭がぼ〜っとする。
体力はまだ残ってるはずだけど、頭が働かなかった。


ハルカ (見せてもらったわよ、ワカシャモ)
ハルカ (だけど、副作用が予想以上に激しいわね…初めて使ったということも要因になっていそうだわ)
ハルカ (それでも、あの威力は凄まじいわね…切り札としては申し分ないわ)
ハルカ (体力が減っていたからこそ、あの威力が出たのよね…確か『もうか』って言う特性)

ワカシャモは、追い詰められた時に、突然炎タイプの技が強くなる。
臆病なワカシャモはそれに気づいていないかもしれないけど、間違いなく持っている。
クチートはメンバー内ではそこまで打たれ弱くないのに、あの結果だ。
マッスグマとの相性も良く、間違いなくメインの中核を成すポケモンへと成長できたようだ。
私は満足げに見て、もうひとつのタッグを見る。

ハルカ 「それじゃあ、今度はそのまま残りのタッグとバトルよ!」


ワカシャモ 「ええっ! このまま続けるの!?」

マッスグマ 「……」

ライボルト 「ほえ?」

コノハナ 「あらあら〜…」


ハルカ 「さぁ、始めて! ここはポケモンセンターなんだから、少しくらい追い詰める特訓をした方がいいんだから!」

自分でもかなり無茶を言っているつもりだ。
だけど、それを承知でやらせることに意味がある。
これから先、戦いはきっともっと激化していく。
先に進めば進むほど、私と同じようにポケモンリーグを目指すトレーナーと戦う機会が多くなるだろう。
それらのトレーナーは、私と同じようにバッジを得て、先を目指す者たち…相対すれば、その時点で戦いが拮抗することは明白。
その戦いでボロボロになってから、連戦で別のトレーナーを相手にすることも、きっと少なくない。
その時負けたら、言い訳なんて効かない。
だから、今の内に自分のポケモンを追い詰める練習をさせておくべきだろう、と思ったのだ。


マッスグマ 「シャモちゃん…動ける?」

ワカシャモ 「大丈夫! まだやれるよ!!」

本当はかなり辛い。
それでも、弱音なんて吐いてられない。
ハルカさんがああ言う以上、私たちに何らかの期待をしているはずだから、それに答えなきゃ…。
私は臆病な性格だけど、逃げてばかりじゃない!

ライボルト 「う〜ん、何か気が進まないけど…向こうがやる気になってるし、やってみますか!」

コノハナ 「やるからには、全力を出させていただきます〜…」

そう言ってライちゃんとコノちゃんが攻撃態勢を取る。
コノちゃんは後方で待機し、ライちゃんが『でんこうせっか』で突っ込んできた。
回避は無理、受け止めるしか…!

ドガッ!

マッスグマ 「う…!」

ライボルト 「止められた…!?」

ワカシャモ 「グマちゃん!」

グマちゃんが間に入って強制的に止める。
グマちゃんはほとんど無傷だったので、この位の無茶はすると思ってたけど…やっぱり驚くわね。

コノハナ 「それでは、こちからも行きます〜」

コノちゃんは『しぜんのちから』使う。
コノちゃんの右手に小さな星が集まり、それらが一気に私たちへと向けられる。
広範囲攻撃!?

ズドドドドドドドッ!!

速射砲のように、『スピードスター』が私とグマちゃんを傷つける。
グマちゃんはあくまで私の前に立ち、全てを受け止めようとしていたが、それでも私にダメージはあった。
それぞれが不規則な軌道を描く、大量の『スピードスター』はかわせるものではない。
でも、ダメージはそんなに大したことは無かった。
これ位なら…まだ動ける。

ワカシャモ 「せぇいっ!!」

ドッカアッ!!

私は『スピードスター』の終わり際を狙い、グマちゃんの横から突然現れる。
そして、驚いた顔のライちゃんに思いっきり『でんこうせっか』で体ごと肩からぶつかる。
さすがのライちゃんも吹っ飛ぶ。
体重が違うから、そんなに吹っ飛ばなかったけど、十分ダメージはあった…はず。

ライボルト 「!! ふい〜驚いたよ♪」

前言撤回、全然効いてない。
そう言えばライちゃんって、性格のせいか、防御がちょっと高いんだっけ。
何で『のうてんき』な性格だと防御が高くなるのか、全然分からないけど…。

コノハナ 「もう一発、行きますよ〜」

またコノちゃんが『しぜんのちから』を使おうとする。
だけど、今度は何かが違う。

ワカシャモ (うわ! いつの間にかコノちゃんが、備え付けの泉に浸かってる!!)

だとしたら、かなりまずい!
来るのは間違いなく『ハイドロポンプ』だ!!

マッスグマ 「させない!!」

ドカッ! バシャァンッ!!

コノハナ 「?〜?〜?〜?」

グマちゃんが間髪入れずに『ずつき』をコノちゃんに放つ。
そのまま、グマちゃんとコノちゃんは泉に浸かってしまった。
これで、コノちゃんとグマちゃんはすぐには動けない。
私はライちゃんに注意を絞る。
残り少ない体力で、どこまで押し切れるか。

ライボルト 「手加減はしないよ! これも勝負だからね!!」

バチバチィッ!

そう言って、ライちゃんは放電する。
『スパーク』で突っ込む気だろう。
現状、全メンバー内の技でも恐らく最高威力の技。
食らえば、間違いなく私は倒れる。
だからと言って、ライちゃんのスピードから逃げられるわけはない。

ワカシャモ 「結論はひとつ…こうなったら、私も残りの力を全部使い切るまで!!

ライボルト 「!?」

私は『きあいだめ』をし、すぐに『オーバーヒート』を発動させる!
威力はかなり落ちるけど、それでも十分のはず!!

ドオオオッ!!

私の周りにまた爆炎が上がる。
今度はやや小さいが、やれるところまでやろう!

ライボルト 「急には止まれないよ! 覚悟してね!!」
ワカシャモ 「やあぁぁぁぁっ!!!」

カッ! ズッドオオオオオオンッ!!!


マッスグマ 「!?」
コノハナ 「〜?」

爆発に驚いて、思わずコノちゃんと一緒に振り向く。
私たちどころか、他のトレーナーのポケモンたちまで振り向いていた。
そして、爆発の後に残ったのは…。

ワカシャモ 「……」
ライボルト 「うう…鳩尾」

どうやら両者ダウンのようだ。
見事にライちゃんの急所にシャモちゃんの一撃が決まったらしい。
元々体力が少なかったシャモちゃんは耐えられるはずもなかった。
これで、後は私とコノちゃんが戦うだけだ。

コノハナ 「あらあら〜…」

マッスグマ 「!!」

まだ目を逸らしているコノちゃんに向かって右爪を固め、私は『いわくだき』を放つ。
不意打ちだけど、勝負だから仕方ない!

ドガッ!!

マッスグマ 「痛ぅ…!」

コノハナ 「ふふふ〜、甘いですよ〜?」

見事に私がダメージを受ける。
『だましうち』に気づかなかった。
しかも、かなり痛い…カウンター気味で貰ったのはまずかった。

コノハナ 「『ずつき』のおかえしです〜…そして次は〜」

ドガァッ!!

今度こそ私は『いわくだき』を当てる。
悪タイプに効果が抜群なので、いくらコノちゃんでも…。

コノハナ 「もう〜…不意打ちは卑怯ですよ〜…」

マッスグマ 「油断してるコノちゃんが悪い」

私はそのままコノちゃんに向かって突っ込む。
もう『だましうち』は貰わない。

コノハナ 「こんな技はどうですか〜?」

コノちゃんは泉から脱出し、草むらの地形に出る。
また、『しぜんのちから』? だとしたら『スピードスター』だろうか…?
だけど、私は冷静に考える。
確か、『スピードスター』を使った時は、草のない平地の地形だったはず。
そして、今は草むら…と言うことは。

バフッ!

粉が舞うような音と共に、コノちゃんの右手から『しびれごな』が散布される。

マッスグマ 「やっぱり! 近づかなくて良かった…」

さすがに当たらなければどうと言う事はない。
コノちゃんは遠距離攻撃系の技はないから、離れてしまえば、攻撃手段は自ずと『しぜんのちから』に限られる。
今コノちゃんがいる辺りに平地はない。
『スピードスター』は来ないだろう、『しびれごな』なら十分逃げ切れる。
私は遠距離から『10まんボルト』を放つ。

バチバチバチィッ!!

マッスグマ (う…さっきまで水に浸かってたから、私もちょっと痺れる)

だけど、弱音は吐かない。
私は両腕に電気を集め、それをコノちゃんに向かって放った。

コノハナ 「く…!」

コノちゃんもさすがに少しは効いているのか、動きが明らかに鈍る。
『10まんボルト』の副作用で『まひ』したのかもしれない。
私は、大きく横に回り、コノちゃんの注意を横にひきつける。

マッスグマ (チャンスは今しかない…!)

コノハナ (ふぅ〜…体が痺れてうまく動けませんね〜)

コノちゃんの表情からは何も読み取れない。
相変わらずのポーカーフェイスだ。
それだけに、『だましうち』のタイミングもわかりにくい。
だけど、スピードなら私の方が数段上、上手く撹乱すれば…!

マッスグマ 「…! …!!」

私は左右に高速で移動しながら、コノちゃんとの間合いを詰めていく。
コノちゃんは反応しているのかしていないのか、目で追ってはいるが全然追いついていなかった。
私はコノちゃんの目の前まで間を詰めると、そこから左にずれる。

コノハナ 「!?」

コノちゃんからは、恐らく一瞬視界から消えたと思う。
私はそのままコノちゃんの背後に回り、後頭部に向かって『ずつき』を放つ。

ガゴンッ!!

コノハナ 「〜!? 〜!!」

声にならない声を上げてコノちゃんは前のめりに倒れる。
立ち上がる様子は…なかった。
私は、大きく息を吐く。


ハルカ (結果は、ワカシャモ、マッスグマのタッグが勝利か…)

連戦は正直無理だと思っていたのに、何とかしてしまった。
そこまで実力に差は無いと思うんだけど…タッグの相性が悪かったのかもしれないわね。
少なくとも、今回の特訓で相性は大体わかった。
ワカシャモはマッスグマやライボルトとタッグの相性はいい。
タイプ的にも補う形だし、それぞれの特徴を生かせる気がする。

ハルカ (対して、クチートはコノハナと相性が良いわね、多分)

見た所、二匹とも知力的な戦いをこなす。
何を考えているのかはあまりわからないけど、いい意味でずる賢い。

ハルカ (そして、誰とも相性が良くないのがペリッパーか…)

電気に恐ろしく弱く、メンバーの中で唯一の♂で、やや孤立した存在。
実力的には、今の所高い方なのに、タッグを組ませると言う意味では少々相性がよろしくない。
タイプ的に見るなら、電気技が効き難いライボルトやコノハナがまだマシな方だろう。
唯一の飛行タイプと言うところも、ポイントなのだけれど、生かし切れていないのかもしれない。

ハルカ 「ご苦労様、皆ボールに戻って!!」

私は全員をボールに戻し、その場を後にする。
それから、すぐにポケモンを回復するため、受付に預け、私は入浴してから部屋に戻った。



………。



ハルカ 「…ふぅ」

ワンボックスの狭い部屋も、随分慣れてしまった。
明日は、起きたらすぐに出発しよう。
シダケタウンに何があるのか知らないけど、珍しい物でもあるかな?
多少は期待しながらも、私は次第に目を瞑って眠りに落ちていく。
疲労は、随分溜まっている…。
フエンタウンで楽をしすぎたせいか、どうも調子がすぐに戻らない。
気が抜けてしまっているのね…。

ハルカ (でも、弱音なんて吐いてられない…キヨミさんはどんどん前に進んでしまう)
ハルカ (私のことを待ってくれるは言ってくれた、でも…)
ハルカ 「私は…追いつくためじゃなくて、追い抜くために、進むんだから…」

最後は声に出し、そのまま眠りの淵へと沈んでいった。





………………………。





ハルカ 「…さて、早速行きますか」

私は朝7時に起床して外に出る。
ここから西に向かえば、すぐにシダケタウンだ。
だが、この先にはトレーナーも大勢いたはず。
すぐにはたどり着けそうに無いわね…。

ハルカ 「…まぁ、2〜3人相手にしたら着くでしょ」



………。
……。
…。



しかし、予想に反しこの後私は7人のトレーナーとバトルをする羽目になった。
そして、時間は12時を回り、私はシダケタウンへと到着した。



−ここはシダケタウン、草の匂いの風吹く高原−




ハルカ 「やっと到着か…距離は近いのに、何でこんな遅くなってるのよ」

トレーナーと戦っていたのはともかく、それに加えてエントリーコール登録者がかなりいた。
確か、6人だ…よくよく頑張ったと思う。
気がつけば、エントリーコールの登録数も多くなってきた。
アスナさんの番号もちゃんと登録してあるので、いつでも連絡を取ることは可能だ。

ハルカ 「しっかし…空気のいい所ね〜」

キンセツシティがかなりゴミゴミした空気だけに、かなりの差を感じる。
高原と言うだけあって、景色もすこぶる良かった。
小さな町で、静かな所だ…静養するには文句なしね。
私はとりあえず、すぐに見つかったポケモンセンターへと足を向ける。



………。



受付 「いらっしゃいませ! ポケモンセンターへようこそ!!」

元気のいい声で挨拶をされる。
私は特に答えずに、まずトレーナーカードを提示した。

ハルカ 「ポケモンの回復をお願いします…」

今回は泊まる必要は無いだろう。
まだ昼も始まったばかりだし、やれることは多いはずだ。

受付 「かしこまりました…それでは、ポケモンをお預かりいたします」
受付 「部屋の方はどうなされますか? 今ならどの部屋も空いておりますが…?」

ハルカ 「今はいいです、とりあえず外に出てきますので、ポケモンたちをお願いします」

受付 「かしこまりました。それでは、ごゆっくりどうぞ」

私はそれを聞いてすぐに外に出た。
途端にいい風が吹く。
髪が靡くほど強い風だったけど、気持ちのいい風だった。

ハルカ 「さて、まずはどうしようかな?」

時間的には食事をすればちょうど良いかもしれない。
でも、この町には大きなレストランとかそう言った飲食店は見当たらなかった。
あると言えば、ポケモンセンターとコンテスト会場くらい。
おっと追加、フレンドリィショップもあった。

ハルカ 「…持ち物も整理しておかないと」

私は、まずショップで物を売買することにした。
マッスグマが拾ってくるアイテムも結構溜まっている。
『きんのたま』なんかは、高額なので大助かりだ。



………。
……。
…。



ハルカ 「さて、コンテストは今の所参加するつもりはないし、どうしようかな?」

そんなこんなで途方に暮れていると、トンネルを発見する。
どうやら、例の『岩』があるトンネルだろう。
以前言った時は通れなかった。
今でも、変わってはいないようだ。

ハルカ 「食事が外で取れなさそうだし、ポケモンセンターに戻るとしますか」

私はポケモンセンターに戻ることにして、歩を進める。
小さな町なので、ぐるっと一周してもそんなに時間はかからない。
トンネルから数分でポケモンセンターに到着できる。
私はあの『大岩』をどうにかする算段を考えながら、戻って行った。



…To be continued




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