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POCKET MONSTER RUBY



第27話 『天下無双色即是空のお嬢様、再び!!』




ツツジ 「それでは、ハルカさん…ルールはどうしたしましょうか?」

ハルカ 「お任せしますよ」

ツツジ 「では、ポケモンを4体使用したダブルバトルではいかがですか?」

ハルカ 「ダブルバトル…ですか? って、4体? ツツジさんの手持ちは2体じゃ…」

私の記憶が間違っていなければ2体だったはずだ。
しかし、ツツジさんは4体使用と言う…それはつまり。

リンカ 「ハルカちゃ〜ん、そのデータは古いよ…」

リンカちゃんが右手の人差し指を左右に振りながら、『チッチッチ』と舌打ちする。
なるほど…以前とは違うと言うことね。

ハルカ 「OK、それで行きましょう…後のルールは?」

ツツジ 「交換と道具の使用は、今回禁止としますね」
ツツジ 「後は、時間無制限、先に全滅させた方の勝ち…ということで」

ハルカ 「わかりました、それじゃあこっちはまず…!」

私はふたつのモンスターボールを同時に投げる。
そしてそこから出てくるポケモンは。

ボボンッ!!

ペリッパー 「ペリ〜」
コノハナ 「コノ〜」

リンカ 「お、水タイプに草タイプ…ハルカちゃん、ちゃんとセオリー通りじゃない」
リンカ 「ツツジはどれで行くの?」

ツツジ 「それでは、私はこれです!」

ボンボンッ!!

? 「ゴー!」
ノスパス 「ノパー」

ハルカ 「!? ノズパスが先手…? それにあのポケモンは…?」

私は見慣れない、いかにも岩の塊と言った感じの巨大なポケモンを図鑑検索する。


ポケモン図鑑 『ゴローン:がんせきポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.0m 重さ:105.0Kg タイプ1:いわ タイプ2:じめん』
ポケモン図鑑 『岩を食べて成長するポケモンだ。苔の着いた岩の方が好きらしい。1日1トンの岩を食べてしまうぞ』


ハルカ 「『がんせきポケモン』…もしかして、イシツブテの進化系」

だとしたら、相当な硬さだろう。
体もかなり大きくなっており、ノズパスでさえ小さく見える。
だけど、弱点が変わったわけじゃない…これなら一気にいけるかも。

ハルカ 「よーし、まずは先手を取るわよ! ペリッパー、ゴローンに『みずでっぽう』! コノハナは『しぜんのちから』よ!!」

ペリッパー 「ペリー!」
コノハナ 「コノ〜」

ツツジ 「ゴローン『まもる』! ノズパスはペリッパーに『かみなり』!!」

ハルカ 「!? 『かみなり』…ですって!?」

いきなり危険な響きだ。
こちらのポケモンはどちらもモーションに入ってる、どうしようも…!

ゴローン 「ゴーー!!」

バシャーーーンッ!!

ゴローン 「ゴーー!!」

ゴローンは『みずでっぽう』を受けて全くの無傷。
元々『まもる』と言う技は、相手からの受ける技を無効化してくれる技だから当然だ。
そして、次はコノハナの『しぜんのちから』が発動する。
このフィールドは前回同様、岩のフィールド…何が出る?

コノハナ 「コノッ」

ガラガラガラッ!! ドガガガガッ!!

ハルカ 「おお? 全体攻撃か!」

コノハナの『しぜんのちから』はゴローンとノズパスの周りの岩を雪崩のように降り注がせた。
ゴローンは『まもる』のため無傷だが、ノズパスはそうもいかないようだ。

ノズパス 「ノズ〜!」

ツツジ 「くっ…『いわなだれ』ですか! ですが!!」

ノズパス 「ノ〜パー!!」

カッ! ピシャアァァァンッ!!!

ペリッパー「!? ペリーーー!!」

ドッシャアアアァァァッ!!

大きな『かみなり』の音がしたかと思うと、ペリッパーは叫び声を上げて墜落する。
そして、派手な音を立てて地面にめり込んだ。
間違いなく致命傷ね。

リンカ 「ペリッパー戦闘不能!」

ハルカ 「…まさか、電気タイプの技が使えるなんて」

ツツジ 「水タイプに弱いのは、当たり前ですからね…対策のひとつやふたつは用意するものです」
ツツジ 「さぁ、どうします? 次は誰を出すのですか?」

ツツジさんは余裕を持ってそう言う。
さて、いきなり恥かいちゃったわね…これじゃあバッジ返上しなきゃならないわ。
そうならないためにも、ここで抑えないとね!

ハルカ 「頼むわよ、『クチート』!!」

ボンッ

クチート 「クチクチッ!!」

ツツジ 「鋼タイプですか…確かに岩タイプには相性がいいですね」
ツツジ 「とことん、私のポケモンはハルカさんのポケモンに相性が悪いようです…」

ハルカ 「だけど、タイプ相性が全てじゃあない…そうじゃなかったら、ツツジさん笑えないはずだもんね」

ツツジ 「ふふ…やっぱり、バトルはいいですわね。特に、ハルカさんとのバトルは」

ハルカ 「私もよ…やっぱり挑んでよかった! さぁ、行くわよコノハナ、クチート!」

コノハナ 「コノ〜」
クチート 「クチッ!」

この2体は、互いに相手をかき乱すことが出来る。
ここで一気に流れを変えないと…!

ハルカ 「コノハナ、ノズパスに『だましうち』! クチートはゴローンに『ちょうはつ』よ!」

コノハナ 「コ〜ノ〜」

ノズパス 「ノパ?」

ドガァッ!!

ノズパス 「〜〜!!」

出た、コノハナの『よそ見』…あれをやられたら、人間でも引っかかる。
恐るべき技ね…。
さすがのノズパスもダメージを受けたようだ。

クチート 「クチクチ!!」

ゴローン 「ゴーー!!」

クチートはゴローンを手招きで『ちょうはつ』する。
『ちょうはつ』に乗ったゴローンは、そのまま突っ込んできた。

ツツジ 「く、ゴローン『マグニチュード』!! ノズパスは『まもる』」

ハルカ 「え!?」

いきなり危険な技を宣言される。
確か、その技は全体攻撃の地面技!

ゴゴゴゴゴゴゴ…!!!

ハルカ 「…!!」

突然、地面が揺れ始める。
そして、次の瞬間。

ドッガァアァァァァンッ!!

コノハナ 「コノ〜!」
クチート 「クチーーー!!」

ノズパス 「ノパー!」

フィールドの中心から大きな亀裂が走り、地面が『隆起』する。
そして、コノハナとクチートの2体はそれに巻き込まれて思いっきり吹っ飛ぶ。

ズッシャァァ!!

コノハナ 「コ…コノ」

クチート 「クチ〜〜〜…」

リンカ 「クチート戦闘不能!」

ハルカ 「そ、そんな…」

鋼タイプのクチートがたった一撃で…いや、まさか!

ハルカ (効果が抜群だった…!)

鋼タイプは地面タイプに弱いの? だとしたら、あのダメージも納得かもしれない。
だけど…あれほどの技を持っているなんて。
これじゃあ、まずい! このままじゃ…!

ツツジ 「ハルカさん、余程計算外だったようですね…」
ツツジ 「自分のポケモンの弱点は把握しておくべきですよ?」

ハルカ 「…もっともな意見ありがとうございます」
ハルカ 「こんな結果になるとは思ってなかった…後は、あなただけ」
ハルカ 「頼むわよ、『ワカシャモ』!!」

ボンッ!

ワカシャモ 「シャモ!」

ツツジ 「やはり出ましたね…ですが、炎タイプもまた地面タイプに弱い…そのことは知っていますか?」

ハルカ 「……」

知っている…ユウキ君とのバトルで経験している。
ワカシャモは地面タイプに弱い…。
それでも、勝ったのは私よ。
だから、今も信じてる。
この娘が勝利に導いてくれるって!

ハルカ 「コノハナ…大丈夫?」

コノハナ 「コ、コノッ」

どうやら、大したことは無いようだ。
元々草タイプだけに、地面タイプには相性がいいのだろう。
防御力も低くはないから、まだ戦える。

ハルカ (ゴローンはまだ『ちょうはつ』の効果が残ってる…今なら『まもる』は使えないはず)
ハルカ 「ワカシャモ! ゴローンに『にどげり』! コノハナはゴローンに『だましうち』よ!!」

ツツジ 「集中攻撃ですか…でしたら、こちらは! ゴローン『ころがる』! ノズパスは『すなあらし』!」

ゴローン 「ゴー!!」

ゴローンは体を丸め、『ころがる』の態勢に入る。
続いてノズパスが技の発動に入る。

ノズパス 「ノパ〜!」

ゴォォォッ!!

ノズパスを中心に『すなあらし』が巻き起こる。
多少視界が悪くなるが、そこまで問題はない。
問題は、長期戦になれば負けと言うこと。

ワカシャモ 「シャモーー!!」

ドガッ! ガゴォッ!!

ゴローン 「ゴーーー!!」

コノハナ 「コ〜〜〜ノ!!」

ゴローン 「?」

ドガァッ!!

ゴローン 「…ゴー!!」

ハルカ 「耐えられた…! でも、これなら行ける! ワカシャモ、ゴローンに『オーバーヒート』!!」

ツツジ 「!? その技は…!」

ワカシャモ 「シャー!! モーーーー!!!」

ドオオッ! ズッドオオオオオォォンッ!!

爆炎を巻き上げ、ゴローンは吹き飛ぶ。
そして、そのまま起き上がることはなかった。

ゴローン 「〜〜〜」

リンカ 「ゴローン戦闘不能!」

ツツジ 「…まさか『オーバーヒート』とは」
ツツジ 「あの技を使われては、効果が今ひとつでもそうそう耐えられるものではないですね」

ハルカ 「…自分でも驚いてる、そこまでとはね」

アスナさんのを食らった時点である程度は予想できたことだけど。
しかし、これでこの先ワカシャモは炎技の威力がなくなってしまう。
だけど、相手は岩タイプとわかっているのなら、そこまで問題はないかもしれない。

ツツジ 「では、次のポケモンを出します出なさい『カブト』!!」

ボンッ

カブト 「カブー!」

ハルカ 「知らないポケモン…?」

ポケモン図鑑 『データ参照失敗…未登録のポケモンです』

ハルカ 「んがっ!? 冗談でしょ!?」

図鑑に登録されていないらしい…キヨミさんのヘルガーみたいなものか。
見た目はどう見てもカブトガニだけど…何だか地面を這いずり回る虫にも見える。
虫タイプかしら?

ツツジ 「ふふ…このポケモンはホウエン地方に生息していませんからね」
ツツジ 「付け加えるなら、このポケモンは岩タイプと言っても、水タイプでもありますから」

ハルカ 「!? 水タイプ…」

それはまた絶望的な響き…。
ただでさえ、こっちはワカシャモに頼らざるをえないのに。
さて…どうしたものかしら?

ハルカ 「ワカシャモ、体力は大丈夫よね? …ワカシャモ?」

ワカシャモ 「……」

ワカシャモは返事をしない。
ちょ、ちょっと!? こんな時にアクシデントはやめてよ!?

ツツジ 「…まさか」

ハルカ 「え?」

ワカシャモ 「シャ…モーーーー!!!」

カァァァァァァッ!!

突然、ワカシャモの体が光り輝く。
これは、もう何度も見た光。
まさか、ついにこの娘も!?

? 「…シャ〜モ」

ハルカ 「わ…でかい!」

大きさだけで言えば、倍近い。
砂嵐で多少視界が悪いが、その瞳からは確かな力強さを感じた。
何だか、本当の格等家みたいな格好だ…マーシャルアーツ系? それともケンカ拳法かしら?
ぱっと見だと、マスク超人のようにも見える…。
私はその姿に多少圧倒されながらも、図鑑を参照した。


ポケモン図鑑 『バシャーモ:もうかポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.9m 重さ:52.0Kg タイプ1:ほのお タイプ2:かくとう』
ポケモン図鑑 『戦いになると、手首から灼熱の炎を吹き上げ勇敢に挑みかかる。相手が手強いほど激しく燃え上がる』


ハルカ 「や、やった…これなら!」

ツツジ 「とうとう、進化してしまいましたか…これで、わからなくなってしまいましたね」
ツツジ 「ですが、まだまだこちらの方が有利です! ノズパス、コノハナに『がんせきふうじ』!」
ツツジ 「カブトはバシャーモに『マッドショット』!」

ハルカ 「バシャーモ、コノハナを抱いてジャンプ!!」

バシャーモ 「シャモ!!」

バッ!

コノハナ 「コノ〜♪」

バシャーモは私の声に素早く反応し、砂嵐の中、ふたつの攻撃をかわす。
そしてそのまま、砂嵐さえ及ばないほど高い、岩山の上にまで登ってしまった。

ツツジ 「さ、さすがバシャーモですね…ひと跳びであそこまで」
ツツジ 「ですが、そこなら…! ノズパス、バシャーモに『かみなり』!!」

ハルカ 「バシャーモ、カブトに『にどげり』! コノハナは『しぜんのちから』!」

バシャーモ 「シャモー!」

コノハナ 「コノ〜」

カッ! ピシャァァッ!!

バシャーモはコノハナを抱いたまま岩から飛び降り、砂嵐を突き抜けてカブトに向う。
そして、空中でコノハナを上に投げる。
後はそのままの勢いで。

ドガァッ! バキィッ!!

カブト 「カブーーーー!!」

ザシャァッ!!

空中で『にどげり』を浴びせ、バシャーモはカブトのいた場所に着地する。
カブトは、後ろへと勢いよく吹っ飛んだ。

カブト 「〜〜☆〜〜☆」

リンカ 「カブト戦闘不能!」


コノハナ 「コノ〜!」

ゴゴゴゴガラガラガラ!!!

ノズパス 「!!」

ノズパスは無防備な所で『しぜんのちから』による『いわなだれ』をモロに浴びる。
だけど、まだまだダウンとまでは行かない…さすがに硬いわね。

ツツジ 「…カブトが一撃とは、さすがに最終進化系が相手では分が悪いですか」
ツツジ 「ですけど、こちらはまだいます! 出てきて『オムナイト』!!」

ボンッ

オムナイト 「ム〜」

ハルカ 「…これも生息不明のポケモンですか?」

ツツジ 「ええ、そうです…カントー地方では見ることが出来るそうですよ」

何でそんなポケモンをツツジさんが持っているのかはわからないけど…今度はアンモナイトだ。
どう考えても水中に棲んでいそうだけど、ちゃんと地面を動いてる。
触手が結構キモイわね…目は可愛いのに。
ただわかることは、あれも水タイプでしょうね…雰囲気的に。

ツツジ 「さぁ、続きを始めましょう! オムナイト、バシャーモに『みずでっぽう』!」
ツツジ 「ノズパスはバシャーモに『がんせきふうじ』!!」

ハルカ 「集中攻撃か…だけどそれじゃあ芸がない!! バシャーモ、もう一度コノハナを抱いてジャンプよ! 今度は相手に向かって!!」

バシャーモ 「シャモ!」

ダッ!

コノハナ 「コノ〜♪」

コノハナは楽しそうに喜ぶ。
ジェットコースターでも乗っている気分なのだろうか?
私もちょっと味わってみたいかも…。

ドガァッ!

ノズパスの『がんせきふうじ』を回避し、バシャーモは低空ジャンプで2体の上空まで跳ぶ。
だけど、オムナイトはそれを狙っていたようだ。

オムナイト 「ムーーー!!」

ブシャァアアッ!!

空中のバシャーモに向かって『みずでっぽう』が放たれる。
当然ながら、空中ではかわしようがない。
でも、それも折り込み済みだ。

ハルカ 「芸がないって言ったでしょ! コノハナ、『みずでっぽう』を受け止めて!」

ツツジ 「しまっ…!」

バシャアンッ!!

コノハナ 「〜! コノ〜」

バシャーモはコノハナを盾にして『みずでっぽう』から身を守る。
何とか、コノハナは耐え切るが、衝撃でバシャーモごと地面に落ちてしまった。
だけど、距離は近い…これならすぐに踏み込める。

ハルカ (ん…? 『すなあらし』が収まった)

気がつくと、『すなあらし』は収まっている。
だが、それまでの間で、バシャーモとコノハナは結構ダメージを負っていたようだ。
向こうはそれが効かないからね…単純に有利不利が出てくるわ。
もう短期決戦は目に見えてる…だったら、一気に行くしかない!

ハルカ 「バシャーモ、ノズパスに『にどげり』! コノハナはオムナイトに『いちゃもん』よ!!」

バシャーモ 「シャモッ!」

コノハナ 「コノ〜ッ、コノ〜ッ!」

オムナイト 「ム、ム〜…」

コノハナは何やらオムナイトに対してクレーム(?)をつける。
それに対してオムナイトはしゅん…と何だか気が小さくなってしまった。
効果は…てきめんのようね。

ツツジ 「く、オムナイト、バシャーモに『マッドショット』! ノズパスは…」

ドガァッ! バキィッ!!

ノズパス 「ノパ〜……」

リンカ 「ノズパス戦闘不能!」

ツツジ 「そんな! 速い…!」

ツツジさんは、ワカシャモの頃とは比較にならないバシャーモの速度に驚く。
明らかに指示が遅かったわね、これで後は…!

オムナイト 「ムー!」

ズパァンッ!!

バシャーモ 「シャモ!」

バシャーモは攻撃後、オムナイトの技をまともに浴びる。
あの技は、食らったら泥がまとわりついてスピードが落ちる!

ツツジ 「く、オムナイト、バシャーモに『みずでっぽう』!」

ハルカ 「コノハナ、バシャーモの前に立って『がまん』! バシャーモはコノハナを盾に突っ込んで!!」

バシャーモ 「シャモ!」

コノハナ 「コノ〜〜!!」

バシャアァァァァァァッ!!

オムナイトの『みずでっぽう』をまともに受けながらコノハナは『がまん』する。
だが、さすがのコノハナも限界のようだった。
無理させてごめんなさい…でも、これで終わるから!!

ハルカ 「バシャーモ! オムナイトに『にどげり』!!」

バシャーモ 「シャモーーー!!」

ドガァッ! バキィッ!!

コノハナを抱いたまま、バシャーモは空中で回転して回し蹴りを二度浴びせる。
オムナイトは後ろに吹っ飛び、岩に激突した。

オムナイト 「…ム〜……」

リンカ 「オムナイト戦闘不能! よって、勝者ハルカ!!」

ハルカ 「…や、やった〜」

ツツジ 「…ふぅ、まさかあそこから負けるなんて。私も修行が足りませんね」

ツツジさんはそう言ってため息をつく。
そして、モンスターボールにポケモンを戻した。
正直、進化がなかったら絶対負けてた。

リンカ 「いやぁ…あそこで進化とはねぇ。ハルカちゃん、運に助けられたかな?」

ツツジ 「ううん、あそこで進化したのは必然…だから、ハルカさんが勝ったのも、必然だと思うわ」

リンカ 「う〜ん、でもこの調子でセンリさんに勝てるのかなぁ〜」
リンカ 「正直、辛いと思うけど」

ハルカ 「あ、あはは…そうですね」

自信つけるつもりが、なくなったかも…。

ツツジ 「確かに、今の私とセンリさんとでは、圧倒的にセンリさんの方が強いでしょうけど…それでも、ハルカさんにだって勝ち目はあると思うわ」
ツツジ 「タイプ的な相性もあるし、私はいい勝負をすると思うな」

ツツジさんは笑ってそう言う。
こういう時はツツジさんの笑顔に救われる気がする。
気持ちで負けてたら…最初から勝負になんかならないもんね。

リンカ 「まっ、勝負は時の運とも言うし! 全力でぶつかればいいのよ! ハルカちゃんは『挑戦者』なんだから!」

ハルカ 「そ、そうですね…うん!」

私は気持ちを強く持ち、自信を着ける。
自己暗示だけど、それも重要よね。

ハルカ 「あ、そうだ…聞きたかったんですけど、ツツジさんのカブトとオムナイトって、どこで手に入れたんですか?」

ツツジ 「え? ああ…あの2体は、ついこの間この街に来た、グレンタウンの研究員の方から貰ったポケモンなんです」

ハルカ 「グレンタウン…? えっと、確かカントー地方の」

ツツジ 「はい。正確には『化石』だったんですけど、ね」

ハルカ 「『化石』!? もしかして化石から復元したんですか!?」

確か、デボンコーポレーションで化石の再生をやっていたはずだ。
そこで、化石をねぇ…なるほど。

ハルカ (うん? もしかして…私のアレも)

私は急に気になってきた。
今すぐにでも行きたくなる。

ハルカ 「あ、ツツジさんごめん! ちょっと私用事思い出した!!」

ツツジ 「はい?」

私はそう言って、すぐにその場を後にする。
そして、一気に部屋に戻って荷物を担いだ。



………。



ツツジ 「ハルカさん、どこに行くんですか?」

リンカ 「もう、そろそろ日が暮れるわよ?」

ハルカ 「多分すぐに戻ってくると思いますから!」

そう言って、ジムを走り出る。
後は、真っ直ぐデボンへと向かった。



………。



ハルカ 「すみませーん! ちょっとお願いがあるんですけど!」

受付 「あら、確かあなたは…ハルカさんでしたよね? 今日は一体何の用でしょうか?」

ハルカ 「あ、ちょっと化石のことで…」

社員 「あー! キミはハルカちゃん!! 久し振りだね〜!」

ハルカ 「はい? あ〜あなたはドジな社員さん!」

私は相手を見ていきなり失礼なことを言う。
しかしながら、事実なのだから仕方ない。

ドジ社員 「あ、あはは…面目ない」
ドジ社員 「でも、今日はどうしたんだい? また社長に会いに来たのかな?」

ハルカ 「あ、いえ…今日は別の用事で」

ドジ社員 「ふむふむ…じゃあ、何の用かな?」

ハルカ 「実は…これを」

私はズシリと重い袋の中から化石を取り出す。
それを見て、ドジ社員はかなり驚く。

ドジ社員 「うわっ! これ『ツメの化石』じゃない!! 凄いよ本物だ!!」

ハルカ 「あ、やっぱり凄いんですか?」

ドジ社員 「当然! これなら完璧に再生できると思うよ!! すぐに再生するかい?」

ハルカ 「はい! そのつもりで持って来ましたから!!」

ドジ社員 「よし、じゃあすぐに2階に上がろう!」

私たちは駆け足で2階へと走っていった。



………。



ドジ社員 「どう? いけそう?」

社員 「ああ、これなら大丈夫だ! ただ、少し時間がかかるな…明日にならないと」

ハルカ 「あ、それなら私明日の朝に取りに来ます」
ハルカ 「それで、大丈夫ですよね?」

社員 「ああ、OKだよ! それじゃあ、責任を持って化石は預かるよ!」

ドジ社員 「あ、ハルカちゃん! ちょっと待って! これをあげるよ」

そう言って、ドジ社員さんは私にふたつのボールをくれる。
見たところ、モンスターボールのようだが、どちらもデザインが違った。
ひとつはモンスターボールに黄色い∞∞のラインが入っているボール。
もうひとつは、何だか某3分間しか戦えないヒーローの頭のようなデザインのボールだった。

ドジ社員 「それは、デボンの新製品『リピートボール』と『タイマーボール』さ!」
ドジ社員 「赤い方がリピート、白黒の方がタイマーだよ」
ドジ社員 「リピートボールは、今まで捕まえたことのあるポケモンを捕まえやすく、タイマーボールは時間が経てば経つほど捕まえやすくなるボールさ」

ハルカ 「へぇ…そんなボールも作ったんですか〜」

ドジ社員 「ただ、タイマーボールはひとつ気をつけてくれ」
ドジ社員 「時間経過で効果は増すんだけど、ボタンを押して1時間たったら使用不可能になってしまうから」

ハルカ 「…つまり、使う時を考えて使わないと意味がないってわけですね」

ドジ社員 「そういうこと。でも、どちらのボールも条件が揃えばハイパーボールを上回る性能だから、きっとこれからバカ売れするはずだよ!!」
ドジ社員 「まだ、世間には出回ってないから、カナズミシティのフレンドリィショップでしか売ってないから」

なるほど…それは結構レア物だ。
使い所を間違えなければいい物ね。
ありがたく頂いておこう。
とは言え…何でまた私に?

ハルカ 「あの…タダでいいんですか?」

ドジ社員 「ああ、気にしないで! 君には色々世話になったし! 社長もハルカちゃんのこと気に入ってるみたいだよ!」

ハルカ 「あ、あはは…恐縮です」
ハルカ 「そ、それじゃあ、私そろそろ戻ります!」

ドジ社員 「ああ、いつでも来てね! 君なら大歓迎だよ!!」



………。



ハルカ 「すみません、ポケモンの回復お願いします」

受付 「はい、それではお預かりいたします…受け取りはどういたしますか?」

ハルカ 「あ、明日取りに来ますので、それまでお願いします」

受付 「はい、それでは責任を持ってお預かりいたします」

私はそのまま、ジムの方に戻ることにした。



………。



ハルカ 「ふぅ〜」

リンカ 「あ、ハルカちゃんお帰り♪ 今から夕飯作ろうかと思ったんだけど、すぐに食べる? ツツジはまだお腹減ってないそうだから遅めに作ろうかと思うけど」

戻ってくると、受付でリンカちゃんにそう聞かれる。
さすがに昼食が遅かっただけに、あまり減ってはいなかった。

ハルカ 「あ、私もそれでいいです。そこまでお腹減ってませんから」

リンカ 「そ、じゃあ今夜は夜食になるかな…あ、時間になったら部屋の方に連絡入れるから、部屋で待っててね」

ハルカ 「あ、はい…」

そう言って、リンカちゃんは厨房の方に向かったようだ。
自分だけでも何か食べるのだろうか?
私は少し気になったが、部屋でゆっくり休むことにした。



………。



やがて、21時を越えた所で夜食を3人で摂り、今日は皆休むことになった。
そして、私は明日の朝9時にアラームをセットしておいた。



………。
……。
…。



『次の日、デボンコーポレーション2階にて…』


ハルカ 「うわ…何かどきどきする」

ツツジ 「何が再生されるのでしょうか? 楽しみですね」

今朝、ツツジさんとばったり会い、そのままツツジさんも同行することになった。
やっぱり、ツツジさんも興味があるらしい。
リンカちゃんは受付の業務があるため、留守番だ。

社員 「あ、化石の方はもう再生が終わってるよ! はい、これがそのポケモンの入ったモンスターボール」

ハルカ 「あ、外に出してもいいんですよね?」

社員 「もちろん! 気に入るかどうかはわからないけど、ね」

ハルカ 「? そんなに見た目が変なんですか?」

社員 「いや、そう言うわけじゃないけど…ほら、あんまり女の子には気に入られないかもね…」

私は少々疑問を抱きながらも、ボールからポケモンを出した。
そして、その中から現れたのは…。

? 「アノー!」

ハルカ 「わっ!? 何このポケモン?」

ツツジ 「あ、アノプスですね〜…可愛いじゃないですか〜♪」

社員 「あはは…さすがツツジちゃん、岩好きだね…」

ハルカ 「あ、岩タイプなんですか?」

見た所、どう見ても虫だけど。
何だか、体は薄っぺらく、足と言うか、羽と言うか…そんな物がうねうねと蠢いていた。
そして、左右に飛び出た目と鋭い…鎌?
いかにもいかつそうなポケモンだけど…私はとりあえず図鑑を参照してみる。


ポケモン図鑑 『アノプス:むかしエビポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.7m 重さ:12.5Kg タイプ1:いわ タイプ2:むし』
ポケモン図鑑 『太古の化石から蘇ったポケモン。暖かい海に生息し、発達した2本の爪で獲物をがっちり掴む』


ハルカ 「…アノプスねぇ、岩と虫タイプかぁ」

タイプ的には珍しそうだ。
攻撃力はいかにも高そうな説明なのだけど…。

アノプス 「アノッ! アノッ!」

何だか、その場でびちびちうねうねと蠢いているだけだった。
ひょっとして…このポケモン。

ハルカ 「あ、あの…ツツジさん、もしかしてこのポケモンって、地上では…?」

ツツジ 「そ、そうですね…私も現物を見るのは初めてなんですけど、水中で生息していたようですので…やはり」

社員 「地上ではアノプスはほとんど動けないからね…育てるのは相当大変だと思うよ」
社員 「その分、水中ではかなりの動きを見せるから、海や湖で釣りでもしながらバトルさせればいいと思うよ」

ツツジ 「そうですね…どの道ヒワマキに行くには海を越えなければなりませんし、その時にでも集中的に育ててみては?」

ハルカ 「う〜ん、でもねぇ…」

少々考えていた。
今は、メンバーも6体いるし、無理に癖のあるポケモンを使うこともないかもしれない。

ツツジ 「アノプスは、進化することで陸でも戦えるようになりますから、気長に育てればきっとハルカさんの期待に答えてくれると思いますよ」

ハルカ 「え? そうなんですか?」

社員 「そ、アノプスは進化するとアーマルドと言うポケモンになるから、陸でも自由に動けるようになるよ」
社員 「どの道、ポケモンリーグを目指すなら、海でのバトルは必須になるからね、案外使いやすいかもしれないよ?」

ハルカ 「そうですね…とりあえず、戻ってアノプス」

アノプス 「アノッ!」

シュボンッ!

私はアノプスをボールに戻し、懐にしまう。

ハルカ 「それじゃあ、一旦ポケモンセンターに戻ります。ツツジさんはどうします?」

ツツジ 「私は、そろそろジムの方がありますのでそっちに戻ります」
ツツジ 「ハルカさん、センリさんはとても強い方ですが、気持ちだけは強く持ってください」
ツツジ 「私は、ハルカさんなら超えられる…と、信じていますから!」

そう言って、ツツジさんは一足先に降りて行った。
ツツジさんの背中が今まで一番強く見えた。
これは…負けてられないわね!



………。



『そして…カナズミシティ・ポケモンセンター』


ハルカ 「…え?」

受付 「ですから…あなたのクチートは、少し傷が深くて…治療には時間がかかります」

私がポケモンセンターでポケモンを引き取ろうとすると、いきなりそう言われる。
私はさすがに呆然とした。
まさか…あの時の『マグニチュード』が原因で?

受付 「しばらくは、集中治療を受けた方がいいと思います」

ハルカ 「あ、そ、それじゃあお願いします…クチートには早く元気になって、とだけ伝えてください」

受付 「…はい、必ず伝えておきます」

ハルカ 「どうも…すみませんでした」

私は誰が見ても明らかに落ち込んでいると言う表情であろうまま、ポケモンセンターを後にした。
私の手持ちはこれで丁度6体。
どうやら、否が応でもアノプスに期待せざるをえなかったようだ。
私はしばらくその場で立ち尽くしていた。

リンカ 「あ、いたいた! ハルカちゃーん!!」

ハルカ 「あ、リンカちゃん…」

リンカ 「…ど、どうしたのハルカちゃん!? 何だか顔が蒼いけど…!」

ハルカ 「あ、あはは…ごめんなさい、ちょっと」

私はリンカちゃんにいきさつを説明した。

リンカ 「ああ…それは、大変だったね。まさか…あれがそこまで効いてたとは」

ハルカ 「はい…予想外でした」

リンカ 「まぁ…『マグニチュード』は威力にばらつきがあるから、仕方なかったかもね」

ハルカ 「ばらつき…?」

リンカ 「そ、あの技は使う度に威力が違うのよ…マグニチュード4〜10位まで」

それは全然違うじゃありませんか…つまり、あの時くらったのは10と言うことでしょうね…それ位の地震だったわ。
それで効果抜群、急所に当たって、タイプは一致ですか…そりゃ痛いわ。

リンカ 「う〜ん、まさかツツジの心配が当たるとはねぇ…」
リンカ 「ツツジ、ね。あなたのクチートのこと気付いてたみたいなの」

ハルカ 「え?」

リンカ 「だから、お詫び…って言うのもおこがましいけど、これ…貰ってあげて」

そう言って、控えめに差し出された物は、『わざマシン』だった。
私はそれを受け取って、リンカちゃんを見る。

リンカ 「…中身は39番『がんせきふうじ』よ」
リンカ 「使ってあげて、あの娘の気持ちだから」

ハルカ 「…はい、ツツジさんにありがとうございます…って伝えてください!」

リンカ 「うん、必ず伝えるよ! ハルカちゃんも、次のジム戦頑張ってね? 私も応援してるから!!」

ハルカ 「はい!!」

私は決意を新たに固め、走り出そうとする。

リンカ 「あ、ごめん! まだこれもあった!! はい!」

ハルカ 「は、はい?」

リンカちゃんはもうひとつ『わざマシン』を私に渡す。
これは…?

リンカ 「それは、私からのプレゼント! 中身は9番『タネマシンガン』よ!」
リンカ 「あなたのコノハナ…草技が使えないでしょ? あまり強い技じゃないけど、きっと役に立つと思う!」

ハルカ 「うわ…ありがとうリンカちゃん! 活用させてもらいます!!」

これでコノハナもようやく草タイプの技が使える!
ここに来て、戦力の増加はありがたい…もちろん低下もあったけど。
ただ、寄るだけのつもりだったのに、色んなことがあった。
今回のことで、クチートは怪我をし、新たにアノプスが加わった。
ワカシャモもバシャーモへと進化し、これで父さんに向かって少しは抵抗できる要素が増えたと言えるかもしれない。
私は、想いを胸に走り出す。
次は…父さんとの戦いだ。



…To be continued




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