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POCKET MONSTER RUBY



第34話 『ハルカの再起戦』




『某日 9:30 ヒワマキシティ・ヒワマキジム・ナギの部屋』


ハルカ 「……」

あれから丸2日が経った。
怪我は大分良くなり、ようやく動けるようにはなってきた。
だけど、肝心の自信が全く戻っていなかった。
私は…どうしたら良いんだろう?

ナギ 「ハルカさん…もう起きても大丈夫なんですか?」

私はベッドの近くにあった窓から外を見ていた。
今日は晴天…あれだけ降った雨が嘘のように今は空が清んでいた。
ナギさんは私の様子を見に来たのか、手に私の着替えを持ってきてくれていた。

ナギ 「これ、ハルカさんの私服です…かなりボロボロになってましたけど、ちゃんと直しておきましたので」

そう言ってナギさんは私のお気に入りの服を渡してくれる。
見た目からはほとんど新品かと思えるような手触りだった。
もしかして…これは。

ハルカ 「…零から作り直したって、ことはないですよね?」

ナギ 「いえ、ベースは前の服ですよ。ただ、あまりにも酷い破れ方だったので、半分以上の生地は新しい布で仕立てているんです」
ナギ 「そのまま修復しようとすると、継ぎ接ぎだらけになってしまうので」

ハルカ 「…え? でも半分以上って、私には全部に見えるんですけど?」

見た目からは明らかに新品同然。
触り心地も、とても着慣れた服とは思えない。

ナギ 「まぁ、とりあえず着替えてみてください、それで気に入らないのでしたら、今度はハルカさんの好きな服に仕立てて見せますよ」

ハルカ 「…まぁ、いいか」

折角直してくれたのに、文句を言うつもりは無い。
とりあえず、ありがたく貰うつもりで着替えてみよう。

ハルカ 「……」

ナギ 「……」

ハルカ 「……」

ナギ 「……」

ハルカ 「……」

ナギ 「……?」

ハルカ 「あ、あの…ずっと見られるのって、緊張するんですけど」

沈黙に耐えられなくて思わず言ってしまう。
女同士で何を言ってるのかとも思うのだけれど。
案の定、ナギさんはキョトンとしていた。

ハルカ 「…はぁ、着替えよ」

ナギ 「…?」

ナギさんは納得できないまま、私は着替えを始める。
ちなみに今まで着ていた服はナギさんから借りていたパジャマだ。
サイズが少々大きいのだが、思いの外ぴっちりとしていた。
我ながら、太い腕だと思う…。(泣)
足にしたって、腹筋にしたって、どう考えても女の子のそれとは思えないもんね…はぁ。
思わずため息が出るけど、それほど強烈な体をしているのよねぇ…私。
まぁ、そのおかげか3サイズも結構強烈…この自信はあるわよ!

ハルカ 「…うん? 着心地は以前と大差ない」

ナギ 「あは! やっぱりそうでしょ!? よかったぁ…」

着てみると、以前とほとんど変わりない着心地だった。
半分ってもしかして…裏地?

ハルカ 「そういうことか…」

ナギ 「あ、気付きました? 半分って言うのは…」

ハルカ 「表裏」

私はあっさりと言ってしまう。
自分で言いたかったのか、ナギさんはちょっとシュンとしていた。

ハルカ 「とりあえず、ありがとうございますね」

私は笑顔で礼を言っておく。
3日間の間だったけど、本当にお世話になった。
ナギさんのおかげかどうかは確信がないけど、少し気が楽になったのは確かだ。

ナギ 「いえ…私、早くハルカさんに元気になって欲しかったから」

ハルカ 「? 何故です?」

一瞬、アッチ方面の想像してしまったが、まぁソレはないだろう。
元々壊れてる作者の頭が、更にぶっ壊れてなければね。(やがましい!)

ナギ 「それでは、一緒に外に出ましょう! まだ、ハルカさんはヒワマキを見てないでしょう?」

ハルカ 「あ…はい」

とりあえず、ナギさんに手を引かれて歩き始める。
勝気な女の子に引っ張られると言うよりは、おしとやかな女の子に手を引かれる感じ。
この人…絶対モテるわね、それだけはわかる。
部屋を出てしばらく通路を進むと、開けた場所に出る。
途中には別の分岐路があったけど、無視していた。

ハルカ 「あの…ここは?」

ナギ 「…ここが、私のジムのバトルフィールドです」

ハルカ 「こ、ここが…!?」

思わず空を見上げてしまう。
そのバトルフィールドは、今まで見たものとは全く違っていた。
恐るべき空間の広さ、円形で直径200mはありそうだ。
そして、空が見えるこの空間。
特に障害物はなく、完全に空中戦を想定したこのジムは、他のジムとは一線を画している。
もしかして、ナギさんのポケモンって…。

ナギ 「もうお気づきかもしれませんけど、私の使うポケモンの種類は…これです!」

ボンッ!

チルタリス 「チル〜♪」

ハルカ 「と、鳥ポケモン…やっぱり、飛行タイプ!」

そう、ナギさんが出したのは、まさしく鳥のような姿のポケモン。
綿のような翼を持っていて、結構大きい。
私のペリッパーよりも大きいわね。
私は、図鑑を参照しようとする…が、今は持ってないことに気付く。

ハルカ 「あ、あの…私の持ち物って?」

ナギ 「ああ! 忘れてました! ご、ごめんなさい…ポケモンセンターに預けたままでした!!」
ナギ 「仕方ありません…さぁ、チルタリスに乗ってください」

ハルカ 「へ?」

ナギ 「さぁ」

ナギさんは手馴れた感じでチルタリスの大きな背中に乗る。
そして、前髪を掻き揚げておでこ全開のオールバックにする。
次に懐から何やら羽飾りの着いた帽子を取り出し、それを被る。
最後に、私に向かってそっと手を差し述べる。
掴まって、乗れということらしい。
な、何か…照れるな。
ちょっとお姫様になった気分♪
私はナギさんに手を引かれてチルタリスの背中に乗った。
身長は私の方が低いので、前に乗る。
手綱はなく、ナギさんは私の背中に少しもたれかかるようにしていた。

むにゅ…

と、まぁ男の子なら鼻血ものの感触があるわけだ。
ベタねぇ…だから頭壊れてるって言われるのよ、この作者は。(やがましい!)
まぁ、ソレはともかく、チルタリスは私たちを乗せて飛び始める。
思ったよりも振動はなく、自然と宙に浮く。
さすが、ジムリーダーのポケモン。



………。



『時刻10:00 ヒワマキシティ・上空』


ハルカ 「うわぁ…良い風」

ナギ 「でしょう? 私、ハルカさんにこの快感を味わってほしかったんです」

ハルカ 「…うん、凄くいいね。私のポケモンも、こうやって私を乗せて空が飛べたら良いのに」

ナギ 「できますよ、あの『ひでんマシン』があれば」

ハルカ 「ああ、あれですか…でもあれって」

ナギ 「はい、私の持つ『フェザーバッジ』を持っていなければ、できません」
ナギ 「だから、私に勝てば良いんです、ハルカさんは」

ハルカ 「!? でも、私は…」

気が楽にはなった…でも、ジム戦ができるとはとても思えない。
今やっても、きっと負ける。

ナギ 「ハルカさん…風を感じてください」

ハルカ 「? え…」

私は思わず後ろを見る。
すると、ナギさんは両手を左右に広げて後ろに反り返る。
そうすれば、当然のように。

ハルカ 「ナ、ナギさん!?」

ひゅぅぅぅぅ…

と、まぁ落ちるわけだ。
ここは目視できるだけでも高度100m以上。
落ちたら、死ぬわね…。
だけど、落ちていくナギさんの近くでモンスターボールの開く音が聞こえる。
その瞬間。

ペリッパー 「ペリー!!」

ナギ 「ふふ」

ハルカ 「…あ」

ナギさんが出したポケモンは、何とペリッパーだった。
私のとほとんど変わらぬ大きさのペリッパーは、ナギさんを乗せて見事に飛んで見せていた。

ナギ 「チルタリス! ハルカさんを落とさないようにこっちへ!!」

下の方からナギさんがそう叫ぶ。
すると。

チルタリス 「チル〜♪」

可愛い声をあげて、チルタリスはゆっくり降下していく。
私はチルタリスの背中に捕まって落ちないようにした。
そして。

ハルカ (あ…風が)

私の体を包むように風がまとわりつく。
そうか、ナギさんは。

ハルカ (この風が好きなんだ)



………。
……。
…。



『時刻10:15 ヒワマキシティ・ポケモンセンター』


店員 「あ、ナギさん。どうかなされましたか?」

ナギ 「ええ、こちらがハルカさんです」

ハルカ 「あ、あのどうも…私のポケモンたちがお世話になったようで」

私はナギさんに紹介され、少し前に出てお辞儀をする。
それを見て、店員さんは笑顔で応対してくれる。
今までの店員さんとは違って、ちょっと中年女性みたいだった。
でも、悪い感じはどこにもなく、むしろ母性的でとても暖かい感じがする。

店員 「そう、あなたがハルカさん…あなたのポケモンは確かに預かっていますよ」
店員 「でも、まだあなたのペリッパーは完全に回復していません」

ハルカ 「え…ペリッパーが!?」

思わず叫んでしまう。
まさかペリッパーまで怪我していたなんて。
あの時の岩雪崩が効き過ぎていたんだ…。

店員 「回復するまでは、まだ時間がかかります…後3日と言った所ですね」

ナギ 「そうですか…ええと、ハルカさんの手持ちは何匹ですか?」

ハルカ 「えっと…6体です」

ナギ 「そうですか、では今使えるだけでも5体…ジム戦をやるには問題はありませんね」

ハルカ 「?」

ナギ 「ヒワマキジムのジム戦では、ポケモン4体を使います。その他のルールは他のジムと差はないと思いますが、大丈夫ですか?」

ハルカ 「え!? ちょ、ま、待ってください!! 私まだジム戦やるとは…!!」

何だか、勝手に話が進められている。
私はまだジム戦ができるとは思えない。
もう少し…時間が欲しい。

ナギ 「わかっています…すぐに、とは言いません」
ナギ 「ポケモンの回復も必要ですし、後3日は滞在していくべきでしょう」
ナギ 「ハルカさんがその気になってからで構いません、私は…待っていますから」

ハルカ 「………」

私は返答が出来なかった。
とても、今の状態ではジム戦はできない。
いやそれよりも、ポケモンバトルができるのかさえわからなかった。

ナギ 「…ハルカさん、これだけは覚えておいてください」

ハルカ 「?」

ナギさんは突然真剣な顔になり、年上の女性らしさを見せる。
そして、静かに口を開く。

ナギ 「例え、何度翼が折れようとも…心の翼が折れない限り、何度でも羽ばたくことはできるのです」

ハルカ 「!!」

それは、まるでナギさん自身のことのような言葉だった。
ナギさんの表情がそれを物語る。
そうだ、きっと…ナギさんも幾度となく翼が折れたんだ。
それでも、ナギさんは心の翼が折れなかった。
だから…。

ハルカ 「…今は、まだ答えを出せません。でも」
ハルカ 「…必ず、近い内に」

私は俯きながらそれだけを言う。
ナギさんは納得したのかどうかわからないが、真剣な表情のままポケモンセンターを出て行った。
今この場には、私と店員さんだけが残される。

店員 「…ハルカさん、これ」

ハルカ 「あ、私の持ち物」

そこには、5つのモンスターボールもあった。
私は受け取った持ち物を身につけ、腰のボールラックに5つ装備する。
バシャーモも…何とか復活したのね、良かった。

店員 「ハルカさん…頑張って、あなたならきっと立ち直れますよ」

ハルカ 「…はい」

私は力なく頷く。
立ち直れるかどうかは、まだわからない。
でも、立ち直らなければいけない…それだけはわかった。
私は、そう思いながらポケモンセンターを出る。
見てみたい場所がある。





………………………。





『時刻12:00 てんきけんきゅうじょ』


ハルカ 「……」

そこは、すでに修復作業が進んでいた。
もう残骸はほとんど撤去され、新しく修復されていっている。
以前とは大分違うけど、明らかに全壊したということだけは理解できた。
あの建物に下敷きになったのか、私。
よく、生きていられたわね、本当に…。(汗)

ハルカ (結局、マグマ団が何を考えてあそこを破壊したのかはわからなかった)

今となっては、もうわかりようもない気がした。
私はその場を離れることにする。
これ以上あそこにいても仕方ないと思ったからだ。
私は自転車を漕いで再びヒワマキを目指す。
来る途中に、幾人かトレーナーと戦ったが、負けることはさすがになかった。
あれでも自信はつく、が…本当に立ち直るにはまだ、ね。



………。



『時刻12:30 119番道路・北』


ハルカ 「あ…」

ユウキ 「うん? ハルカか…奇遇だな、ここで会うとは」
ユウキ 「てっきり、もうジム戦をやっている物だと思っていた」

ハルカ 「ユウキ…ここでポケモンの調査?」

私がそう聞くと、ユウキは『ああ』とだけ答える。
その表情は、どことなく楽しそうだった。
ユウキはポケモンが好きなのだと実感する。
だから、楽しそう…いや楽しいのね。

ユウキ 「…暗い表情してるな、見ているこっちまで暗くなりそうだ」

ハルカ 「…ごめん」

私は素直に謝る。
確かに、そう言う表情なのだろう。
私は、まだ不安で仕方がなかった。

ユウキ 「…しゃあねぇな、おいハルカ! 今から俺とバトルだ!!」

ハルカ 「え!? ちょ…」

ユウキ 「問答無用! 行けっ、『キノココ』!!」

ボンッ!

キノココ 「キノ〜」

すでにユウキはポケモンを出してしまった。
これは、避けられない戦いね。

ユウキ 「ほら、さっさとポケモンを出しな! それとも、逃げるか?」

ハルカ 「…この、上等よ! 以前の私と思わないでよ!! 蹴散らしてあげるわ!!」

ボンッ!

バシャーモ 「シャモッ」

私はバシャーモを繰り出す。
ユウキのポケモンは変わった様子はない、強くはなっているだろうけど、進化をしていないので大きな変化はないはず。
と、普通なら甘く見るところだろう。
だけど一応警戒はしておく。
いつだって、戦いは非情さ…。
でも…。

ハルカ (あの馬鹿…こっちを励ますためにわざとやったわね)

無駄に嬉しい事をする。
私にとっては、これが再起戦ということになりそうね。
気持ち良く勝って、ナギさんとの戦いに備えさせてもらうわよ!!

ハルカ 「まずは小手調べ! バシャーモ『ひのこ』!!」

バシャーモ 「シャモッ!」

ボボボボッ!!

ユウキ 「かわせキノココ! そして『ずつき』!」

キノココ 「キノッ!!」

ハルカ 「かわして、『にどげり』!」

バシャーモ 「シャモッ!!」

『ひのこ』を横にかわして突っ込んでくるキノココ。
バシャーモはそれを横にかわして回し蹴りを2回叩き込む。

ドカッ! バキィッ!!

キノココ 「キノ〜!!」

キノココの小さい体は簡単に吹っ飛んで、地面に転がる。
どう見ても再起不能リタイアね。

ユウキ 「ち…ならこいつでどうだ! 行け、『オオスバメ』!!」

ボンッ!

オオスバメ 「スバーー!!」

ハルカ 「!? 飛行タイプ…」

もっとも、ノーマルタイプでもあるのだが、どちらにしても分は悪いだろう。
しかしながら、バシャーモとて並のポケモンではない…はず。
こちらの攻撃が通用しないわけではないのだから、強気で行こう!!

ハルカ 「バシャーモ、『ブレイズキック』!!」

ユウキ 「上昇して回避だ!!」

オオスバメ 「スバッ!!」

バシャーモ 「シャモ!?」

バシャーモの蹴りよりも速くオオスバメは上昇する。
それも生半可な上昇ではなく、かなりの高度まで上がった。
空は見事に晴れていて、ちょっと空が見え難い。

ユウキ 「よし、オオスバメ『でんこうせっか』!!」

ハルカ 「…バシャーモ、よく見てかわすのよ!!」

私はそう指示する。
恐らくは、太陽の光に乗じて突っ込んでくる作戦なんでしょうけど、バシャーモの動体視力なら十分見てかわすこともできるはず。

バシャーモ 「……!」

オオスバメ 「スバーー!!」

ズガァッ!!

ハルカ 「く…さすがに速いわね」

以前、トウカジムで見た奴よりも滅法速かった。
少なくとも私のどのポケモンよりも速い。
スピードで対抗するのは不可能だ。
バシャーモは何とか体を反らして直撃は避けたけど、そうそう上手くはいかないだろう。
オオスバメは攻撃後すぐに空中へと逃げる。
定番のヒット・アンド・アウェイね…だけど、それは打たれ弱いことの証明でもあるわよ…。

ユウキ (…何だ、思ったよりも冷静に対処してるじゃないか)
ユウキ (てっきり、落ち込んでたから、もっとハチャメチャな戦いするかと思ってたのに…つまらんな)
ユウキ 「…まぁ、いいか。オオスバメ、いい加減決めるぞ! 『つばさでうつ』!!」

ハルカ 「バシャーモ、受け止めるのよ!!」

オオスバメ 「スバッ!!」

バシャーモ 「シャモッ!!」

バシャーモは足を踏ん張り重心を前に置く。
攻撃を受け止める体勢だ、後はオオスバメの攻撃を待つのみ。

オオスバメ 「スバーー!!」

ユウキ 「…正面から受ける気かよ、まぁらしいちゃあらしいけど、これならどうだ? 『かげぶんしん』しながら攻撃だ!!」

ハルカ 「! なぬ!?」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
『かげぶんしん』しながらって…。

オオスバメ 「スバッ!!」

ヒュヒュヒュヒュ!!

何と、某マンガばりにオオスバメは分身しながら襲ってくる。
Oh My God…ニンジャも真っ青ね。

バシャーモ 「シャ、シャモ!?」

案の定うろたえてくれる。
予想外のことにてんで弱いのがバシャーモの弱点ね…さて、どうしましょうか。

ハルカ (って、考えてる暇ないか)

オオスバメ 「スバー!!」

ザシュウッ!!

バシャーモ 「シャモー!!」

背後からの『つばさでうつ』がバシャーモの背中を直撃。
前のめりにバシャーモは倒れそうになるが、何とか踏ん張る。

ハルカ 「よし、バシャーモ『ほのおのパンチ』!!」

バシャーモ 「シャモー!!」

ユウキ 「トドメだ、『つばめがえし』!!」

オオスバメ 「スバッ!!」

ハルカ 「何…!?」

バシャーモ 「!?」

バシャーモ攻撃は完全に空振りする。
オオスバメの姿はすでにそこにはない、そして…。

ドガァッ!!

バシャーモ 「シャモーー!!」

ズシャァァァ!!

バシャーモはまたしても背後からの攻撃をくらう。
今度は思いっきり吹っ飛んだ、効果は抜群ね。

ハルカ 「…あんな技もあるのね」

理屈は簡単だ。
単に高速で上昇し、近距離でそれを行うことによって相手からは消えたように見せる。
後はそのスピードを維持しながら死角からの攻撃…よくできた技だわ。
断じて、どこかの某侍魂の技ではない…飛び道具は飛んでこない辺りが救いね、バックステップからのアレが懐かしい…。

シュゥボンッ!

私はバシャーモを戻して、次のポケモンを繰り出す。
ああいう、素早い相手にはペリッパーの『でんげきは』で…って!

ハルカ 「しまったぁ!! ペリッパーはリタイア(再起不能)中だ!!」

ユウキ 「? 何だ…急にハチャメチャになってきたぞ」
ユウキ 「どうでもいいから、次のポケモン出しなよ」

ハルカ 「MMMM〜! 仕方あるまい…スピードにはスピードよ! 行け『ライボルト』!!」

ライボルト 「ライ〜♪」

ユウキ 「電気ポケモンか…セオリー通りだな、ちっ」

ユウキは舌打ちして嫌がる。
どうやら、あんまり効果的な手がないようね。
今度はこっちの反撃と行きますか!

ハルカ 「ライボルト『でんじは』!!」

ユウキ 「おいおい…マジかよ」

ライボルト 「ライ〜!」

ビビビビッ!!

オオスバメ 「スバーー!!」

オオスバメはかわすこともなく直撃する。
これで『まひ』した…もう動き回るのは無理よ。

ハルカ 「一気に止めよ!! 『スパーク』!!」

ライボルト 「ライーーー!!」

ユウキ 「よしっ、オオスバメ『からげんき』だ!!」

ハルカ 「うげぇっ!?」

何と、オオスバメは正面から特攻を敢行する。
しかも『からげんき』…父さんの得意技で秘密兵器。
状態異常時に使うと、とんでもない威力に…。
思わず以前のアレがフィードバックする。

ライボルト 「ラーイッ!!」

オオスバメ 「スバーー!!」

ドガァッ!! バチィッ!!

嫌な音が鈍く響く。
同時に電気が回りに散らばった。
だけど、倒れたのは…。

オオスバメ 「…ス、スバ〜…」

ハルカ 「あ、あれ…?」

ライボルト 「ライ〜?」

何か知らないけど、オオスバメが倒れていた。
何があったのかしら…。

ユウキ (…痺れて動けなかったか、『やけど』や『どく』と違って『まひ』は行動できない時があるからな、壱か罰かの賭けだったが…無理だったか)
ユウキ (さて…どうすっかな〜こっちは無駄に地面タイプが2体いるからな)
ユウキ (ハルカの手持ちは…以前で考えればマッスグマ辺りが残ってる、アゲハントもいたような)
ユウキ (飛行タイプがまだいると考えると…ドンメルを後にした方がいいか)
ユウキ 「よしっ、頼む! ヌマクロー!!」

ヌマクロー 「ヌマッ!!」

ハルカ 「あれ? 進化してない…」

少なくとも私のワカシャモはとうに進化している。
ヌマクローはアレで進化が終わりなんだろうか?
少なくとも、まだ進化しそうな雰囲気はある気がした。
それとも…意図的に進化させてないのかな?

ハルカ (キノココもそうだったわね…あれって、割と早い段階でキノガッサに進化するって、マモルさんが言ってたけど)
ハルカ (ヌマクローにしろ、進化を止める…なんてことでもできるのかしら?)

実は、進化に関してはよくは知らない。
ただ、唐突にそれが訪れる…位にしか。
ただ、どこかで聞いた話、進化キャンセルとか言うことがあるらしい。
そうすることで、特殊な育成方を取る…なんてこともできるらしいけど。
それなんだろうか?

ユウキ 「何考えてるか知らないが…地面タイプに手があるのかないのか。ヌマクロー『マッドショット』!!

ヌマクロー 「ヌムー!!」

ドババババッ!!

ハルカ 「ライボルト、横にかわして…何しよう?」

ライボルト 「ラ、ライ〜!?」

ライボルトは何とかかわすが、こっちを見て呆れているようにも見える。
う〜む、どう考えてもあの頑丈そうな膝を揺らす技は見当たらないわね…。

ハルカ 「リタイアするわ! ライボルト戻りなさい!!」

シュボンッ!

ユウキ 「おいおい…それで仕舞いかよ」
ユウキ 「まぁ、わからんでもないがな」

今のところ、ライボルトは電気技以外に有効な技を持っていない。
とても相性を覆せるほどにはなれないだろう。
というわけで、相性抜群の抜群で勝負する。

ハルカ 「行け、コノハナ!!」

ボンッ!

コノハナ 「コノ〜♪」

ユウキ 「…そんなのもいたのか」
ユウキ (これは迂闊…草タイプがいたとはな)
ユウキ (ヌマクローは草に弱すぎる…やべぇな)
ユウキ (また分の悪い賭けになりそうだな…)

ハルカ 「とりあえず、少なからず動揺しているようね…よーし、コノハナ『タネマシンガ…」
ユウキ 「リタイアする! 戻れヌマクロー!!」

シュボンッ!

ハルカ 「…やるじゃない」

ユウキ 「ポケモンの交換は常套手段だからな」
ユウキ 「さて、今度はそっちが燃える番だ! 行けドンメル!!」

ボンッ!

ドンメル 「ドン〜」

今度も地面タイプが出てくる…炎タイプでもあるけど。
こちらの攻撃が効かない訳じゃないけど、相性は悪いわね。
とはいえ、この娘に限って、決して戦えないわけじゃないだろう…何とかなるかも。

ユウキ 「よし、ドンメル『ひのこ』だ!!」

ドンメル 「ドン!!」

ボボボボッ!!

ハルカ 「かわして、『だましうち』!!」

コノハナ 「コノ〜♪」

コノハナは見た目スローモーションのように『ひのこ』をかわして、今度は即座に懐へと踏み込む。
このアップダウンの動きが曲者なのよね…本当に凄いわ。

ユウキ 「ち! ドンメル『たいあたり』!!」

コノハナ 「コノ〜?」

ドンメル 「?」

ユウキ 「?」

ドガァッ!!

ドンメル 「ドン〜!?」

ユウキ 「あ、あれっ!?」

何か知らないけど、ユウキまでかかってる…何やってるのよアイツ。
まぁ、わからなくもないけどね、しばらくは私も引っかかってたし。
とにかく、ドンメルは攻撃を喰らってうろたえている、ユウキが怯んでいる今がチャンスね!

ハルカ 「コノハナ『タネマシンガン』!!」

ユウキ 「ドンメル『ひのこ』だ!」

コノハナ 「コ〜ノ〜〜」

ドンメル 「ドンッ!」

ボボボボボッ!!

ハルカ 「…相変わらず、変な所でトロイ」

本当に『ナニゴトモナ〜イ』を装備してそうね。
まぁ、何とか攻撃には耐えたようで安心…よし、発射!

ズバババババババッ!!

まるで某緑色スプラッシュのようにコノハナの口から『タネマシンガン』が散らばる。
さすがにかわすことも出来ずにドンメルは直撃を食らう…7割って所ね。

ドンメル 「ド、ドン…」

ユウキ 「あちゃあ…やられちまったか」
ユウキ 「しゃあねぇな、行け『ヌマクロー』!」

ボンッ!

ヌマクロー 「ヌマッ!!」

どうやら、他にポケモンがないのか再度ヌマクローが出てくる。
コノハナも『ひのこ』を喰らったおかげでダメージはアリアリだ。
もちろんこのままアリーデヴェルチする気はない。

ハルカ 「コノハナ『タネマシンガン』!」

コノハナ 「コ〜ノ〜〜」

ユウキ 「ヌマクロー『だくりゅう』だ!!」

ハルカ 「!?」

ヌマクロー 「ヌ〜マーーーーーー!!!」

こっちのコノハナがゆっくりと技を繰り出す前に、ヌマクローは口から大量の水…いやもとい文字通り『だくりゅう』を引き起こす。
かなりの量で、正直こっちもヤバイ。

ハルカ 「って、こんな場所でなんて技使うのよ〜〜!?」

私の背は何気に崖…このままやられると、思いっきり紐無しバンジー敢行なんだけど!?

ユウキ 「あ、忘れてた…ワリィ」

ハルカ 「アイ・シャル・リターン!! …I’LL BE BACK!!」(ドップラー効果)

…ザッパ〜ン♪

コノハナ 「……コノ〜♪」

……ザッパ〜ン☆



ユウキ 「……」

ヌマクロー 「……」

ユウキ 「お前は行かなくても良いからな?」

ヌマクロー 「…! ヌマ…」

何か残念そうだ…行きたかったのか。
コノハナは楽しそうだったもんな。
でも、必要ないっつーの。

シュボンッ!

ユウキ 「…どうなってるかな?」

一応、死亡確認だけでもしておくか。
俺は恐る恐る崖下を見る。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴガッッ!!

ユウキ 「見なかったことにしよう」

崖下はヌマクローの『だくりゅう』のせいか、思いっきり本当に『だくりゅう』していた。
流木やら何やらが凄い勢いで流れているので、もう助からんだろう。

ユウキ 「ハスタ・ラビスタ・ベイベー!」

俺はそう言い残してこの場を去る。
さて、今度はミナモに向かうとしますかな…



…To be continued




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