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POCKET MONSTER RUBY



第35話 『アノプス猛特訓』




『時刻15:00 119番道路・川下流』


ザザザザザアアアァ!!

ハルカ 「…くっ!!」

私は何とか浅瀬に到達する。
が、思ったよりも流されたようだ…ヒワマキからかなり離れてしまった。
周りを確認する…周りは高い崖と深い森。
陸から帰るのは難しい…とはいえ。

ハルカ 「…この流れに逆らって帰るのもねぇ」

ザザザザザアアアァ!!

なおも流れ続ける川。
さすがにもう濁流と言うほどではないけど、それでもきつい。
マッスグマの『なみのり』で帰るのは正直、危険臭い…。

ハルカ 「…長居はできないわね」

空を見ると雨雲が集まり始めている。
この調子だと、1時間以内には降り始めるだろう。
私は改めて周りを確認する。

ハルカ 「テントを張る位はできそうだけど…」

ここで1日明かすことになるだろう…それは出来れば避けたい。
理由はポケモンの回復をしたいからだ。
このままでも、ある程度は体力は回復するが、傷の手当ては難しい。
あのバトルの後だけに、出来ればゆっくりポケモンセンターで休ませたいわ。

ハルカ 「そうだ! エントリーコール!」

私は思い出したようにポケナビを取り出す。
これで助けを…と思って、思い出す。

ハルカ 「しまった…この近くに該当者がいない…」

思いっきりうなだれる。
せめて、ナギさんの番号を聞いておくんだった…。

ハルカ 「そういえば、ユウキはどうしてるのよ!?」

私は思う。
そもそも、この現況を作り出した張本人はどうしているというのだ!?
まさか今頃、どこかの病弱短命美少女と乳繰りあっているんじゃないでしょうね!?
だとしたら、死なす! 問答無用で死なす!!

ハルカ 「まずは、母さんに…」

ピピピピピッ…!

2回ほどコールがなり、すぐに相手は出る。

チトセ 「はい、もしもし」

ハルカ 「あ、母さん!? ちょっと聞きたいんだけど、オダマキ博士の息子の番号知ってる!?」

チトセ 「え? それってユウキ君のことよね…私は知らないけど」

突然の私の詰問に、母さんは驚いているようだった。
だけど私はそれどころじゃない。
私は次の質問する。

ハルカ 「じゃ、オダマキ博士のはわかる!? それ教えて!!」

チトセ 「え、ええ…ちょっと待ってね………いい? 言うわよ?」

ハルカ 「いいわよ」

私は母さんが言う番号を記憶して、切る。
そしてすぐにオダマキ博士の番号を登録する。

ピピピピピッ…!

今度は5回のコールがかかった。そして、久し振りとも思える声がスピーカーから聞こえる。

オダマキ 「は−い、もしもし−!?」

ポチエナ 「ポチポチ−!」
ジグザグマ 「ジグジグー!」

オダマキ博士 「こらこら、また後でな〜♪ ああ、すみませんね〜どちら様でしょうかー?」

どうやらポケモンと戯れているようね…まぁ、それはいいとして。

ハルカ 「ハルカです! あの聞きたいんですけど、ユウキの番号教えてくれませんか!?」

オダマキ 「ん? ユウキのを…?」

ハルカ 「そうです! 迅速にお願いします!!」

私が強くそう言うと、博士は一旦保留にしてしまう。
そして、少ししてから再び博士は出る。

オダマキ 「お待たせ〜いいかい?」

ハルカ 「はいっ!」



………。



こうして、私は何とかユウキの番号を入手する。
そして最速の入力で番号を入力する。

ピピピピピッ…!

3回ほどのコールで目的の相手は出た。

ユウキ 「もしもし…?」

やや控えめにそう言うユウキ。
こちらは急を要する。まずは居場所を聞こう。

ハルカ 「…どこにいるの?」

ユウキ 「……」

プツ……

それが最後の通信だった…。

ハルカ 「あの馬鹿! 速攻で切りやがった!!」

ジーザス…まさかこうなるとはね。
もはや絶望か…サノバビッチ。

ハルカ 「…しょうがないわね、とりあえずテント張るか…」

私は雨に打たれる前にテントを張ることにした。
とは言っても、○イポイカプセルみたくボタンひとつで完成なんだけどね。

ボンッ!!

モンスターボールに比べてやや大きめの音と共にそれは姿を現す。

ハルカ 「はぁ…最悪」

私はそう呟いて、テントの入り口を潜った。



………。
……。
…。



『時刻20:00 119番道路・川下流』


サアアアアアァァァ…

ハルカ 「……」

外は依然、雨が降り続けている。
もしかしたら止むかもしれない…とか思っていたけれど、やっぱり無理臭い。
このまま一晩明かすか…。

ハルカ 「くっそう…絶対恨んでやるんだから」

そんなことを思ってしまう。
とは言っても、憎しみで人が殺せるなら苦労はない。
今回のことはツケということで、次に会った時にまとめて払ってもらおう。

ハルカ 「…まだ寝るには早いけど」

他にやることがあるかな…?
とか思ってたら、考えることはあった。

ハルカ 「ナギさんのポケモン…飛行タイプがメイン」

弱点は…電気、岩、氷。
逆に有利なのは格闘、草、虫。
私のポケモンで有利なのはライボルト、アノプス。
逆はバシャーモとコノハナか。
ペリッパーとマッスグマは損得無し、ただし電気技があるから意外に有利だろう。

ハルカ 「ライボルトは安定、アノプスはまだ無理でしょうね」

まだ自分のタイプの技を覚えていないから、今回も出番はないわね。

ハルカ 「と、なると…残りは自ずとマッスグマ、ペリッパーになるわね」

電気タイプの技を中心に戦うことになるけど、安定とも思える。
気になると言えば…。

ハルカ 「…弱点は百も承知」

当然ながらナギさんも何かしらの対策を用意してるでしょうね。
もし、電気タイプの効かないようなポケモンが出てきたら全滅の可能性もある。
ここはあえてアノプスを投入するという手もあるわね…。

ハルカ 「攻撃力は文句無し、でも空を飛ぶような相手に攻撃は…出来なさそうね」

あれで戦えるとは思いがたい。
ユウキとの戦いでも感じたことだけど、素早い飛行タイプを捉えるのは難しい。
ペリッパーの『でんげきは』なら、命中率は安定…でも威力が高いわけじゃない。

ハルカ 「そう言えば、ナギさんもペリッパーを使うのよね…」

最近、考えるようになった。
ジム戦をやるに当たって、相手のポケモンを研究するということ。
相手は決まっているんだから、対策の取りようはいくらでもあるだろう。
逆に相手を知らないことほど恐いことはない…今までの戦い、全部ぶっつけ本番でやってきたけど、もう通用しない気がしてきた。
今日のユウキとのバトルで痛感した。

ハルカ 「…私は無知過ぎる」

今に始まったことじゃないけど、これからはしっかりと対策を立てよう!
楽に勝つことに越したことはない…目指している場所があるんだから。
そこに辿り着けなければ…意味はない。

ハルカ (それでも…後悔する戦いはしたくないな)



………。



それから1時間ほど経った。
未だに雨は降り続いている。止むことはないだろう。

ハルカ 「…もう、寝ようかな?」

これ以上煮詰めても、机上論にしかならない。
やはりしっかりとバトルの訓練をしないと…。
この辺りの雨は、突然降ったり止んだりするから、明日には止んでいるかもしれない。
そう思ったら、急に脱力しそうになる。
何とか眠れそうね。
その時…。

ピピピピピッ!! ピピピピピッ!!

ハルカ 「な、何っ!?」

寝袋に入ろうとすると、いきなりエントリコールの着信音が鳴り響く。私は慌ててポケナビを取る。
誰からかはわからない…未登録の番号が表示されていた。
とりあえず、私は応対する。

ハルカ 「はい…もしもし?」

? 「ハルカさん! ナギです!! 今、赤いテントの真上にいます。そこにいるんですか!?」

外は雨が降っているせいかかなり聞き取りにくいが、確かにナギさんの声のようだった。
私は慌てて答える。

ハルカ 「はい! もしかして救けに来て…」
ナギ 「すぐに外に出てください!! 危険です!!」

ナギさんの声がかなり強烈に聞こえる。
どうやら、相当ヤバイらしい。
私は急いで荷物を確認して外に出る。

ザザザザザアアアァ!!

気が付くと、相当な雨が降っていることに気付く。

ハルカ 「…ナギさんは?」

私はテントを戻して上空を見上げる、だけどナギさんの姿は見えなかった。
雨は段々と強さを増し、少なからず危機感が増す。

ゴゴゴゴゴゴゴ……!!

何か地響きのような音が聞こえる。
それは段々と近づいてくるようだった。

ハルカ 「まさか…!? 地滑り…!!」

気が付いた時にはもう遅い。
すでにここに向かって雪崩のような土やら木やらが滑り落ちて来ていた。

ハルカ 「!!」

正直…助からないと思った。
いくら私でも、あれに巻き込まれたら助からないだろう。

ナギ 「…ハルカさん!!」

ハルカ 「!? ナギさ……!!」

ゴゴゴゴゴゴゴガガガアアアァァッ!!!

瞬間、凄まじい音と共に私のいた場所は地滑りに飲み込まれる。

ハルカ 「……」

エアームド 「エアッ!」

ナギ 「どうにか間に合いましたね…」

バサッバサッ!!

私の側でそんな羽ばたき音が聞こえる。
どうやら…生きているようだ。

ハルカ 「ナギさん…どうしてここに?」

正直、絶体絶命だと思っていた。
絶対に誰も来ないと思っていたからだ。
だけどナギさんは至って笑顔で答える。
よく見たらナギさんは透明のレインコートを来ていた。

ナギ 「まぁ、その話は戻ってからにしましょう。エアームド! 急いでヒワマキに戻って!!」

エアームド 「エアッ!」

エアームドはそう答えて一気に加速する。
私はナギさんの背中に抱きついて振り落とされないようにした。

ギリギリ……

ナギ 「あ、あの…ハルカさん、痛いです」

ハルカ 「あっ! ご、ごめんなさい…!!」

つい締め付けてしまった…あまりの状況に力加減を忘れてしまったのね。
でも、本当に助かったぁ〜。
思わずため息が零れる…。

ナギ 「しばらく我慢してくださいね…後5分位で到着しますから!!」

ハルカ 「は、はいっ」

容赦なく打ち付ける雨の中、私たちは漆黒の夜を抜けてヒワマキを目指すのだった……。





………………………。





『翌日 時刻12:00 ヒワマキシティ・ヒワマキジム』


チルット 「チルチル〜♪」

ハルカ 「……う」

目覚めはあまり良くなかった。
ポケモンの鳴き声で目を覚ました私は、いきなり頭痛に襲われた。
頭が重く、思考がまとまらない。
額に手を当てると、明らかに熱があった。

ハルカ 「…流行性感冒ね」

とどのつまりは風邪だ…あれだけ濡れればね。
ちなみに濡れたって言っても、変な想像しないでね…あ・く・ま・で! 雨や川水にだから!

ハルカ 「はぁ…何かここの所、運が悪いなぁ〜」

何かに憑かれているのでは?とさえ思う。
折角やる気になったのに、結局こうなるのか…。

ガチャ…

やや控えめに扉をゆっくりと開け、中に入ってきたのはナギさんだった。
今になって気付いたが、この部屋はナギさんの部屋だ。
白色がよく目につくこの部屋を、見間違うことはないだろう。
ナギさんの手には、私の着替えが握られていた。
結局、お世話になりっぱなしね…。

ナギ 「ハルカさん、具合はどうですか?」
ナギ 「昨晩は熱を出して大変でしたけど…」

なるほど…それで昨晩の記憶がないのか。
結構重傷だったのね。

ハルカ 「まだ、頭が重いですけど…まぁ動けなくはないです」

ナギ 「そうですか、でも大事を取って今日1日はここで休んでくださいね?」

ナギさんは優しくそう言ってくれる。
私は申し訳なくなって、こう答える。

ハルカ 「…すみません、何から何まで」

ナギ 「気にしないでください…私は、ハルカさんと早くバトルがしたいですから」

ナギさんは本当に楽しみな様だった。
私は着替えを受け取ると、その新しいパジャマに着替えた。



………。
……。
…。



『時刻13:00 ヒワマキシティ・ポケモンセンター・ポケモン広場』


ハルカ 「皆、今日は私の調子が悪いから自習にするわ」

バシャーモ 「シャモシャモ〜?」

バシャーモが心配そうに近づいてくるが、私は手を前に出して制する。

ハルカ 「…いい? 皆よく聞いて。明後日にジム戦をするわ!」

私のポケモンたちは、それを聞いて緊張感を高める。今この場にペリッパーはいない。
残念ながら、ペリッパーは今回休ませることにした。
ペリッパーが復帰するのは明後日。
その後にジム戦を行ってもいいけど、個人的にはそれは止めておきたい。
ただでさえ足止めを食らっているのだから、ここで時間をかけたくないのだ。
なので私は、今の状態で考えられる最高のメンバーでいくことにした。

ハルカ 「出るメンバーは4体! バシャーモ、ライボルト、マッスグマ、アノプスよ!」

バシャーモ 「…シャモ」
ライボルト 「ライッ」
マッスグマ 「グマ…」
アノプス 「アーノーー!!」

それぞれがそうやって答える。
特にアノプスはかなり嬉しい様で、飛び跳ねていた。

ハルカ 「とりあえず、今日はそれだけ…後は各自で練習をしておいて」
ハルカ 「何かあったら、すぐに店員さんに助けてもらうのよ?」

私は皆の答えを聞いてから戻ることにした。
外ではナギさんが待ってくれている…あまり待たせるわけにはいかないわ。



………。



バシャーモ 「…結局、ペリ君は出られないのね」

ライボルト 「う〜ん、今回は仕方ないね」

アノプス 「なんの! 不肖このアノプスが蹴散らしてくれるわー!!」

マッスグマ 「…それが一番不安」

アノプス 「なんの! あっしの実力はすでに証明済みでさぁ!! さっそくバトルで特訓と行きやしょう!!」

アノ君は張り切ってそう主張する。
でもバトルを勝手にやってもいいのかなぁ?
一応周りを見ては見るけど、そんなに邪魔になるとは思えなかった。

ライボルト 「別にいいんじゃないの? やられたってここで回復できるんだから」

ライちゃんは能天気にそう言う。
やられ方にも問題あると思うんだけどなぁ…。

マッスグマ 「なら…私が相手をします」

バシャーモ 「グ、グマちゃんが自分から…?」

ライボルト 「へぇ〜グマちゃん、やる気満々だねぇ♪」

アノプス 「うおっしゃあ! よろしく頼んますグマさん!!」

アノ君もやる気満々で、今にも飛び付きそうだった。
仕方ないか…グマちゃんなら、そんなに派手なことはしないだろうし。

バシャーモ 「じゃ、せめてあっちの方に行こうよ。外の方が広いし」

私はそう言って、その方向を指差す。
ここの広場はかなりの広さで、屋外のエリアもあった。
バトルをするなら、そこの方がいいだろう。

ライボルト 「そうだね〜その方が動き回れるし!」

コノハナ 「それでは、行きましょうか〜…」



………。



アノプス 「っしゃあ! んじゃあ行きまっせーー!!」

マッスグマ 「…ん」

アノ君が戦闘態勢を取ると、グマちゃんも立ち上がって前傾姿勢に構える。
まずはアノ君が先に動いた。

アノプス 「WRYYYYYYYYYYYY!!」

アノ君は吸血鬼のような叫び声をあげてグマちゃんに飛び掛かる。
『ひっかく』攻撃だ。

マッスグマ 「……」

ドガッ!

アノプス 「うおっ!?」

グマちゃんは横の動きだけでアノ君の攻撃をかわす。
そして地面に爪が突き刺さったアノ君は動きが止まる。
グマちゃんはそれを見逃さない。

マッスグマ 「…!!」

ドゴォ!!

アノプス 「ぶっぎゃあぁ!!」

グマちゃんの『いわくだき』がヒットしてアノ君は吹っ飛ぶ。
ちょうど備え付けの池が後ろにあったので、そこに落ちた。

バチャァン!!

マッスグマ 「……」

グマちゃんはつかつかと池の方に歩いていき、アノ君の様子を確認しようとする。

バシャーモ (アノ君は水中の方が動けるんだから、そっちの方が有利になるのよね…)

まだ上がって来ない所を見ると、誘っているようにも思えた。

マッスグマ 「……」

グマちゃんは前脚を地に着けたまま、池の前で止まる。
すると間髪入れずに。

バシャアッ!!

アノプス 「WRYYYYYHAAAAAA!! ブッ潰れろよぉぉぉぉぉーーー!!!」

またしても奇声をあげながらアノ君が飛び掛かる。
今度はかなり速い。
でも、グマちゃんはその上を行く。

マッスグマ 「!!」

ザッパアァァンッ!!

アノプス 「SYHAAAAAAAAAA!?」

なんと、グマちゃんは口から水を吐きながら、クルリとその場で一回転し、波を作り上げてアノ君に叩きつけたのだ。
紛れもなく『なみのり』だろう。
グマちゃんの技で水タイプの攻撃技はそれしかない。
さすがに効果抜群でアノ君は再び池に落ちる。

バチャン!

アノプス 「無、無念…」

マッスグマ 「…その程度じゃ、ジム戦なんてまだまだ」

アノプス 「そ、そんな…」

さすがのアノ君もかなり落ち込む。
でも、グマちゃんがあんな事言うなんて…。

マッスグマ 「…次の相手は、きっと凄く強い」
マッスグマ 「本当なら、ペリ君が最後のメンバーに選ばれるはずだったんだと思う」

アノプス 「!!」ガーン!

余程、今の言葉が効いたのか、声も出ないアノ君。
それでもグマちゃんは話を続ける。

マッスグマ 「…多分、次の相手は飛行タイプ」

バシャーモ 「え…わかるの?」

思わず聞いてしまう。すると、グマちゃんはコクリと頷く。

マッスグマ 「ライちゃんと私…そしてペリ君が共通して持っているタイプの技は?」

バシャーモ 「電気タイプ…よね? ノーマルタイプもあるけど」

またまたグマちゃんは頷く。
どうやら、当たりのようだ。

マッスグマ 「相手が水タイプなら、岩タイプのアノ君を入れる理由がわからないし、シャモちゃんも不利」
マッスグマ 「それだったらコノちゃんが入っている方が普通…」
マッスグマ 「だから、このメンバーで行くと言うことは、相手は飛行タイプ…と考えるのが普通」

グマちゃんの答えに全員納得する。
確かに、そう考えるのが普通か…。

ライボルト 「でも、それだったらペリ君が復帰してからの方が楽なんじゃないの?」

コノハナ 「そうですね〜…でも、それだと時間の問題が出てしまいますね〜」

バシャーモ 「おお…コノちゃんまで、解説役に?」

何だか、新鮮な感じがする。
クゥちゃんがいた時は全部解説してくれたけど、今はそれがないもんね〜。

マッスグマ 「そう…多分、時間を気にしたんだと思う」
マッスグマ 「私たちが思っているよりも、時間は厳しいと思った方が良いかもしれない」
マッスグマ 「だから、アノ君にはもっと強くなってもらわないと困る」

アノプス 「はっ!? もしやグマさんは、あっしのために…!?」
マッスグマ 「…違う、ハルカさんのため」

アノプス 「ガッデム!」ドシャアッ!

そう言ってアノプス君は海老反りにずっこける。
グマちゃんも突っ込み速いわね…いつの間に。
普段見慣れない姿だから、新鮮だわ…。

バシャーモ 「ま、まぁとにかく…アノ君を集中的に特訓するしかないね」

ライボルト 「おお〜、だったら私も協力するよ〜! 次、私が行きまーす!!」

そう言って、今度はライちゃんがアノ君の前に出る。
何だか凄くやる気満々なのが気になる…。

アノプス 「しゃあっ! お願いしやす!!」

ライボルト 「SPARKING!!」

ビシャアンッ!!

アノプス 「あべーし!!」

ドッシャアッ!!

と、見事にアノ君は痺れる。
…か、体持つのかな?

ライボルト 「う〜ん、ストレス解消〜♪」

アノプス 「そりゃあないぜ! ライ姉さん〜!!」

ライボルト 「あははっ、冗談冗談♪ って言うか、アノ君のその動きじゃどう考えても飛行タイプには相性悪いと思うけど?」

アノプス 「はっ!? 確かに…」

アノ君は気付いたようにうな垂れる。
ま、まぁ…本来水中で活動しているのに、陸で空飛ぶ相手を捕まえるのはねぇ…。

バシャーモ 「でも、ハルカさんは戦わせる気みたいだし…何か策があるんじゃ?」

マッスグマ 「…ただ単に相性の悪い、コノちゃんよりもマシだと思っただけ…としか思えない」

アノプス 「ジーザス! 俺にだって空の敵位!!」

アノ君はそう言うけど、そう上手くはいかない気がする。

バシャーモ 「…はぁ、不安だなぁ」

マッスグマ 「まぁ…ライちゃんが圧倒的に有利なんだから、そこまで煮詰めなくても良いのかもしれない」
マッスグマ 「万が一のための穴埋め…とも言えるから」

バシャーモ 「…でも、もしライちゃんがいきなりやられちゃったら?」

私がそう聞くと、グマちゃんは迷うことなく。

マッスグマ 「…その時は、諦めるしかない」
マッスグマ 「甘い考えで勝てるほど、ここから先の相手は優しくないと思うから…」

軽くそう言ってしまう。
はぁ…何だか気が重いなぁ。
ペリ君が何ともなかったら、こんなことにはならないんだろうけど…。

アノプス 「畜生…俺だって、俺だって〜」

バシャーモ 「……」

必死に何とかしようと頑張るアノ君。
彼は彼で、必死に役立とうとしている。
今までの戦いでも、あの体で戦ってきた。
ただ、今はその才能が開花していないだけ…か。

ライボルト 「でもさぁ…アノ君は岩タイプの技が使えないのに、どうやって飛行タイプと戦わせる気なんだろうね?」

コノハナ 「…そうですねぇ、飛行タイプの技は虫タイプに効果抜群なので、岩タイプでも攻撃受けるのは難しいですからね〜」

マッスグマ 「…『わざマシン』、と言う方法もあるけど。一応、明日があるから…それで決めるんだと思う」
マッスグマ 「後は…ハルカさんと、アノ君次第…」

アノプス 「うおりゃあー!!」

ライボルト 「遅い遅い…それじゃあ空を飛ぶ相手には当たらないよ?」

ライちゃんはスピードでアノ君を翻弄する。
地上の相手でもああいう風に円状に回られたら、それだけでアノ君は反応できなくなってしまう。
結局の所、アノ君は力があっても、スピードが皆無なのだ。
遅い相手なら、例え岩でも砕く力を持っているけど、電気タイプや飛行タイプのようなスピードの速い相手には全く攻撃が当たらない。
あの体じゃしょうがないけど、それでも今回の戦いはアノ君を使うと、ハルカさんは言う。

アノプス 「これならどうだーー!!」

ライボルト 「あ〜あ、どこ狙ってるのよ〜」

アノ君は直線的な動きなら何とか飛び跳ねて移動ができるけど、常に相手に動き回られたらどうにもならないようだった。
野生のポケモンが相手ならそんなに気にすることもなかったけど、トレーナーのポケモンが相手だとそうもいかない。
弱点がばれてしまったら終わりなのだ。

コノハナ (ハルカさんは、アノ君を使うみたいですけど…一体どうする気なんでしょうかね〜?)
コノハナ (私の方が、アノ君よりも攻撃を当てると言う意味では確実…それでもハルカさんはアノ君を選んだ)
コノハナ (それは、アノ君の進化を見越してのことなんでしょうか? でも、そう上手くはいかないでしょうね)

アノプス 「くそぉ…せめてもっと動けたら」

マッスグマ 「…そんなことする必要はない」

グマちゃんはアノ君に向かってそう言い放つ。
キョトンとした顔でアノ君はグマちゃんを見つめる。

アノプス 「そ、それは一体どういうことですかい!?」

マッスグマ 「…元々アノ君に動き回る戦法は不向き」
マッスグマ 「特に動きの速い相手を捉える為には、動かない方がいい」

アノプス 「で、ですけど! それじゃあ飛び道具きたらどうするんですかい!?」

マッスグマ 「…そこまでは考えてない」

がくっ!とずっこけそうになる私。
それは計算外なのね。

マッスグマ 「でも、下手に動き回るよりかは、止まって相手の動きをよく見ることが重要」
マッスグマ 「幸い、アノ君は攻撃力が高いから、相手を捕まえてしまえば十分倒せる」
マッスグマ 「飛行タイプといえども、攻撃する時は近づいてくるのがほとんど…それだったら、待った方がきっといい」

コノハナ 「そうですねぇ…きっとハルカさんもそう指示するでしょうし」

アノプス 「そ、そうか…待つのか」

ライボルト 「まぁ、それで上手く行けば良いけど」

バシャーモ 「…難しいと思うけど、私だってその指示をされたけど…結局やられちゃったよ?」
バシャーモ 「私でも無理なのに…アノ君にいきなりできるのかなぁ?」

私がオオスバメと戦った時は、止まっていてもどうにもならなかった。
スピードの差があると、あそこまで決定的に差が出来る。
アノ君の方が防御力は高いかもしれないけど、それでも死角から直撃食らえばまず耐えられない。

アノプス 「むぅ…せめて俺にも強力な飛び道具があればいいのだが」

マッスグマ 「無いものねだりをしてもしょうがない…今は出来る事で何とかする」

アノプス 「っしゃあ! もう一本お願いします!!」

ライボルト 「じゃあ、次はシャモちゃんだね〜」

バシャーモ 「え、私?」

急に指名される。
ま、まぁ…別に良いけど。
とまぁ、こんな調子で私たちはアノ君を重点的に特訓した。
その甲斐あってか、アノ君はついに待望の岩タイプ技、『げんしのちから』を習得。
とはいえ、やはり突進系の技なので当てるのは難しい…それでも。
飛行タイプに対して効果の高い技のため、当てることが出来れば強力な技だった。
そして、明日はハルカさんが直々に特訓をしてくれるはず…私たちは、それを待ってその日は休むことになった。



…To be continued




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