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POCKET MONSTER RUBY



第44話 『マグマ団アジト・潜入作戦』




『12月25日 時刻5:00 ミナモシティ・ポケモンセンター』


ハルカ 「…さて、準備はOK。だけど」

問題点はどうやって進入するか。
いくらマグマ団とはいえ、対人戦闘となれば所詮素人の集団だろう。
その気になれば正面突破も可能だろうが、法律を盾にされたら元も子もない。
この場合、違法をするのは私の方なのだから。
立派な不法侵入ということになる、私は生憎警察じゃないのだから。
と言うことは、確実な『潜入』が目的となる。
敵に見つからないように潜入して、何とかマツブサを止めるしかない。
事態は一刻を争う…迷いは許されない。

ハルカ (これも血、かしらね…母さんの)

心は驚くほど冷静だった。
今はただ、任務を遂行するために動く。
戦闘マシーンのような、正確性と非常さ。
私の中に流れる、暗殺者の血が脈々と流れているのを実感する。
私は、最小限必要な荷物を持って部屋を後にする。
部屋は、まだ借りておくことにした。
鍵は受付に預け、私は外に出る。



………。
……。
…。



時刻的にはまだ払暁(夜明け)前…私は海岸にいた。
注意して周りを見渡す…が、見張りはいないようだ。

ハルカ (案外、杜撰(ずさん)なのね…てっきりガチガチに守っているのかと思ったら)

しかし、潜入するにはうってつけだ。
私はキヨミさんの情報を頼りに、海沿いに北へと歩いていく。

ビュウウゥゥ…!

ハルカ (寒いわね…やっぱり)

結局、服装はそのままだった。
何だかんだで動きやすい分、変えるのが忍びなかったのだ。
愛着もあるし、まぁ我慢すれば問題はない。

ハルカ (…あれか)

ずっと歩いていくと、やがて海の向こうの岩壁に洞穴があるのを見つける。
間違いなくあそこだろう。
私はもう一度周りを見てペリッパーを出すことにした。

ハルカ 「…あれ?」

思わず声が出る。
そして、思い出す。

ハルカ (しまったーーー! ペリッパーはカイナに預けたままだ!!)

がっでむ…しかしながら、いない物は仕方がない…私はもう1体の『なみのり』使いを召喚する。

ボンッ

マッスグマ 「…グマ」

ハルカ 「…いい? あそこまで頼むわ…出来るだけ静かにね」

マッスグマ 「……」

マッスグマは一度だけ頷き、海へと入っていく。
そして、私はマッスグマの背中に跨った。

マッスグマ 「……」

すい〜…

と、そんな音をたてるかのように海を静かに進んでいく。
幸い波の音があるため、接近する音は気付かれそうになかった。
私は問題なく洞穴の中に入る。



『時刻5:30 マグマだんアジト・入り口』


シュボンッ

私はマッスグマをボールに戻して、中を見る。
左右には岩壁があり、正面に広めの階段がある。
階段は人工物のようで、鉄で出来ている。
わざと足音が聞こえるように、そうしているのかもしれない。
震動でも十分気配は伝わりそうだ。

ハルカ (階段が3つか)

更に前(やや上の視点で)を見ると、後ふたつ階段が見つかった。
各階段、たった二段だけしかないので、そんなに高低差はない。
私は左右をよく確認しながら、階段をひとつづつ上がっていく。
ひとつめの階段を昇ると、左右に通路があった。

ハルカ (…左右対称にほぼ同じ距離で壁か)

通路の奥には機械の様な物も見える、特に何も有りそうにはなかった。
私は次の階段を昇る。

ハルカ (…ここも同じね)

左右には対象の距離で壁があるだけ。
今度は機械はなかった。
ちなみに、通路外側には柵が強いてあり、隠れる場所は全くない。
もし下から敵が来たら簡単に見つかってしまうだろう。
私はそう思ってすぐに最後の階段を上がった。

ハルカ (岩壁…の上に柵があるわね)

最後の階段を昇ると、正面には横長の岩壁。
岩壁は高さ3メートル程で、天井には柵が設置されている…恐らくは見張りを配置するためでしょうね。
しかしながら、見張りの気配は感じない。
どうやら、まだ警備は手薄のようだった。

ハルカ (さて、左か右か…?)

道はふたつある。
どちらに進むかは賭け同然だが、私は迷わず左を選ぶ。
勘だ…こっちが正しいと言う。

ハルカ (ダンボール? それもかなり大きいわね)

突き当たりのカーブで私はダンボールを見つける。
かなりの大きさで、横長3〜4メートルのダンボールがいくつか積み上げられていた。
中に何が入っているのか知らないが、下手に触らない方がいいかもしれない。
私はカーブを曲がり、道を確認する。

ハルカ (ん? 見張りがいるわね)

どうやら、左右どちらから進んでも同じ場所に繋がっているだけのようで、先へ進む道はひとつだった。
ただ、その道には見張りの下っ端がひとりおり、真面目な顔で突っ立っている。

ハルカ (…ひとりか、それならおびき出せば)

と思った瞬間、下っ端が動きを見せた。
私は岩壁に背を預けて、見つからないように下っ端の動きを観察する。

下っ端 「……」

カツ…カツ…カツ……

何と、見張りは私がいる通路とは逆の方に歩いて行ってしまう。
当然見張りはもういない。いともたやすく先へと進めるようだった。

ハルカ (普通、こう言う造りなら見張りはふたり以上配置するのが普通でしょうに)

所詮は素人の集団だと言うのがよくわかった。
私は足音に気をつけて素早く先へと進む。
通路の前に立つと、先には下への階段があった。
今度は長い…間違いなく地下への階段だろう。
私はゆっくりと階段を降りていく。



………。



『時刻5:45 マグマだんアジト・地下1階』


ハルカ (…見張りはまたいない)

本当にズサンな管理である…しかし、先には何もなかった。
そこは狭い部屋で、3畳ほどの広さだった。
妙な機械がふたつ設置されてあり、他には何もない。
私は機械の方を見てみる。

ハルカ (…これ、何かの起動装置のようね)

わざわざ、ふたつ並べて置いてあると言うのも不自然だ。
私はもう一度注意深く部屋を調べる。
すると、足元にふたつの『何か』を見つける。

ハルカ (…? 何これ?)

それは円形のサークルみたいな物で、直径2メートル程度。
大の男が2〜3人乗ればそれで調度位の大きさだ。
しかしながら、これが何なのかはわからない。
だけど、間違いなくあの機械と連動していることはわかった。

ハルカ (…駆動音からして、このサークルに電源や電力を供給している機械のはず)
ハルカ (となると、このサークル自体がスイッチ?)

私は懐から未使用のモンスターボールをひとつ取り出して、スイッチを入れずにサークルの上へと転がす。

コロコロ……ヒュンッ!

ハルカ (消えた!?)

これでピンと来た、どうやらこれは転送装置らしい。
モンスターボールをパソコンで転送するように、人を別のフロアに転送してしまうのだ。
なるほど…それで他の道がなかったのか。
でも、逆に賭けでもある。
何故なら、ふたつあるのだ…転送装置が。
この先には何があるのかわからない。
転送した先に団員がいたらそれでアウトだ。
私は覚悟を決める。
私がモンスターボールを送ったのは北側の装置。
私は南側の装置に足を踏み入れる。

ヒュンッ!



………。



『時刻6:00 ??????』


ハルカ (…ここは、倉庫?)

転送した先は、もはやどこなのかもわからない。
下手をしたらもうアジトの中ですらないのかもしれない。
私は周りを見てみる。
中は薄暗く、何やらゴゴゴゴゴゴと大きな音が聞こえていた。
そして何よりも…。

ハルカ (さ、寒い…まさかここって冷蔵庫!?)

後ろを見ると、巨大なクーラーが置いてあった。
私は他に何かないか見てみる。
開封されているダンボールがひとつ。
中身は…モンスターボールが山積み。
さすがにこれを失敬するのも荷物なので、私は元の部屋に戻ることにした。



………。



ハルカ (うう…また風邪ひくかも)

やはりこの格好はもはや無謀なのか?
とはいえ、今更言っていても仕方ない。私はもうひとつの装置に…。

? 「異常ないか?」

? 「ああ、大丈夫だ」

ハルカ (まずい、誰か来る!)

私は隠れる場所を探すが、何もない。
転送装置はふたつ…先へ進むには残りひとつ!
しかし、この先に罠があると考えるのが普通だ。
足音は近づいている…もう迷ってはいられない。
私は覚悟を決めた。

ヒュンッ!



………。



ハルカ (こうなったら、我慢できる所まで我慢するわよ!!)

私は冷凍刑の道を選んだ…いや冷蔵刑か。
私は開封されているモンスターボール箱の中に身を隠す。
幸い、モンスターボールで埋め尽くされているので、中に隠れるには十分だった。
私は内側からダンボールの蓋を閉め、しばらく隠れる。



………。



ヒュンッ!

ハルカ (誰か来た!?)

転送した時の駆動音が微かに聞こえ、私は呼吸を安定させる。
落ち着け…ここはクーラーの駆動音で音はほとんど聞こえない。
動きさえしなければやり過ごせるはずだ。
とはいえ、これからどうすればいい?
少なくとも、前の部屋にはふたりいた可能性が高い。
つまり、見張りが追加されている可能性があるのだ。
だが、どれだけ考えてもいい案は浮かばない。
今は、やり過ごすことを考えよう。

下っ端A 「…えっと、これだよな?」

下っ端B 「ああ、蓋が開いてるだろう? それを運ぶんだよ」

下っ端A 「よし、動かすぞ!」

下っ端B 「ああ!」

グラグラ!

ハルカ (!? まさか、運ばれてるの!?)

いきなりダンボールが揺れだし、私は音をたてないように細心の注意を払う。
どうやら、別のフロアに運んでくれるらしい。
これはある意味幸運。
この中なら開けられない内はバレないし、音は筒抜け。
場合によっては情報も入るかもしれない。
ただ、開けられたら終わりだけど…その時は開き直ろう。
どちらにしても、もう後戻りは出来ないのだから。
そして、私はこのまま移動することになったのだった…。



………。



『時刻6:10 マグマ団アジト・地下1階』


下っ端A 「しっかし…結構重いなぁ」

下っ端B 「まぁふたりだけだからな…モンスターボールつっても、集めれば重くもなるさ」

下っ端A 「よし、階段だ…気をつけろよ?」

下っ端B 「OKだ! 降りてくれ!」

グラグラッ!

ハルカ (…く! さすがに揺れるわね)

私は上手くバランスを取って、怪しまれないようにする。
何とか団員にはバレていない様で、階段を乗り切った。



………。



『時刻6:15 マグマだんアジト・地下2階』


下っ端C 「あら、物資の輸送? ご苦労様」

下っ端A 「そっちは問題ないか?」

下っ端C 「ええ、怪しいものは見てないわ」

下っ端B 「よし、早く運ぶぞ!」

グラグラ…!

更に先へと進んでいく。
この先、一体どこへ行くのだろうか?



………。



下っ端A 「おはようございます! 輸送入ります!」

下っ端D 「おっ、ご苦労さん!!」

下っ端E 「おはよう! 物資はあっちよ…道は間違えないでね?」

下っ端B 「はい! ありがとうございます!!」

どうやら、上司と部下の挨拶のようだ。
へぇ、意外と人員管理はしっかりしているようね。
そして、さらに転送を繰り返し、別のフロアへと進んでいく。



………。



下っ端A 「ええと…ここはどう進むんだったっけ?」

下っ端B 「覚えてないのか? ここはまず真ん中に進むんだよ」

下っ端A 「あ、そうか…」

何の話をしているのだろうか?
どう進むって…何か仕掛けがある?
声だけでは状況は確認できなかったが、すぐに転送した所を見ると、装置に乗って移動したようだ。
そしてすぐにまた会話が始まる。

下っ端B 「次が一番重要だ…皆これに引っかかるからな」
下っ端B 「ここでは、左右どちらに行っても最初に戻される。つまり…」

下っ端A 「ああ! この足元の奴をもう一回作動させるんだな!?」

下っ端B 「その通り、このフロアだけは片道だから、進む時は注意しろよ?」

下っ端A 「よし、次々!」

ヒュンッ!

また転送…どうやら、転送ルートが特殊な様ね。
と言うことは、よほど厳重な管理をされている物がある場所に向かっているようだ。
もしかしたら、運がいいのかもしれない…ここに来て運勢上昇!?

下っ端B 「後は、簡単だ左を2回」

下っ端A 「中2、左2か…覚え易いな」

下っ端B 「だったら忘れるな!」

下手な漫才をかまして先へと進んでいく。
そして、ようやく終着点に着いた様だった。



………。



『時刻6:30 マグマだんアジト・特別保管室』


下っ端A 「よし、ここでいいんだよな?」

下っ端B 「ああ! ゆっくり下ろせよ?」

そう言い合って、ふたりはダンボールを下ろす。
ようやく、着いたか…。

下っ端A 「しかし…これだけのモンスターボールどうするんだ?」

下っ端B 「馬鹿か…ここに何があるのか知ってるだろう?」

下っ端A 「えっと…マスターボールだろ?」

下っ端はそんなことを口走る。
マスターボール? それは凄いのだろうか?
残念ながら聞いた事はない…ハイパーボールの上位系だろうか?

下っ端B 「そうだ、野生ならどんなポケモンでも100%捕獲可能と言われている究極のボールだ」

100%!? そいつぁ驚きだ!!
それはまさに究極ね…。
しかしながら、そんな物があるとは…やっぱり非売品なんでしょうね。

下っ端A 「で、結局それがどうかしたのか?」

下っ端B 「木を隠すなら…」

下っ端A 「…? 森の中?」

そこで、ふたりは黙る。
どうやら、相槌でも打ったのか…もしかして。

下っ端B 「マスターボールはモンスターボールとデザインが違うが、このダンボールに潜ませておけばそうそう見つからないだろう」

下っ端A 「まぁ…アレもあるしな」

下っ端B 「そうだ…よし、マスターボールを取ってくれ」

下っ端A 「了解…よしよし動くなよ?」

ハルカ (…まずいかもしれないわね)

このままだとダンボールを開けられる。
一応、このダンボールはかなり大きめで、縦1メートルはある。
腰を下ろして座っていれば、多分開けられてもボールに埋もれて見えないはず。
足はギリギリまで広げれば何とか膝を軽く曲げる位に収まる。
後は、やり過ごせることを祈ろう。

下っ端A 「取ってきたぞ」

下っ端B 「よし、じゃあこれを開けて…」

ハルカ (……)

下っ端A 「あれ? こんなにギリギリまで入ってたっけ?」

下っ端B 「さぁ? 誰かが補充したのかもな…よし」

ゴソゴソ!

ハルカ (ぐはぁっ!? 手が潜り込んできた!!)

どうやらマスターボールとやらを深い場所に置くようである。
状況説明をすると。

○○○足足膝○○○○   頭:ハルカの頭部
○○○○○膝腿腿○○   胸:ハルカのバスト (86) ハルカ(って、バラしてんじゃないわよぉ!!)
○○○○○手手腰胸頭   腰:ハルカのウェスト(65) ハルカ(い〜や〜〜!!)
○○○○○手手腰胸頭   尻:ハルカのヒップ (92) ハルカ(ギャフンッ! そんな項目無いでしょうが!!)
○○○○○膝腿腿○○   腿:ハルカのふともも
○○○足足膝○○○○   手:下っ端の手(おおよその位置…大きさは無視)

上面図にするとこんな感じ。
かなりわかりにくくて悪いけど、とてもまずい所に手が突っ込んできている。
このまま進むと、とんでもない所に…。

ハルカ (やられる前にやるしかない!?)

もはや見つかることを怖がっていられない。
女として、そこを触られるわけには行かないのだ!
と言うわけで実力行使に!

下っ端A 「おい、さっさとしろよ…先行くぞ?」

下っ端B 「ああ、待て! わかったよ!!」

ハルカ (……)

どうやら、手はギリギリの所で止まった様だ。
何とか女の意地は守れた…ふぅ。
私は転送の音を確認し、ダンボールから出ることにする。
誰もいない…わね。

ハルカ 「…あ〜危なかった」

我ながらギリギリだった…もうダンボール作戦は止めよう。
毎度ながら、アレで潜入する○リッド蛇は凄いと思う…尊敬に値する軍人だわ。
私は改めてダンボールに入っているマスターボールを回収しておく。
使うかどうかは…定かじゃないけど、ね。

ハルカ (…へぇ、色は紫なんだ)

ボールの中心に『M』と書いてあり、モンスターボールとは違うということを象徴している。
頭文字は一緒だけどね…。
私はそれを懐に入れ、他に何かないか見てみる…と、とんでもないものを見つける。

マルマイン 「…マル〜」

ハルカ 「……うわ」

正直ウザイ。
何せ、マルマインに囲まれているのだ。
これでは、動くに動けない。
何せ、このポケモンは『じばく』するのだ…。
当然爆発すれば音が出る。
そして当然のように見つかってしまう。
見事な警備システムだわ…手も出したくない。

ハルカ (とはいえ、突破しないことには…)

私は何とかマルマインに気付かれないように歩を進める。
マルマインの間を見事に潜り、部屋の壁に到達する。
そして気を休める。
私はすぐそこの転送円に乗って移動することにした。

ヒュンッ!

ハルカ 「…えっと」

見ると2択…いや3択か。
一瞬迷うが、帰る時は何選んでもいいような気がした。
罠だったらアレだけど…まぁ何となるだろう。
もうここまで来たら開き直った方が早いと思った。
私は真ん中の転送円に入る。

ヒュンッ!

ハルカ 「…お、一発で戻れた」

どうやら、当たりだったようである。
いや、正確にはハズレなのだけど…この場合は当たりでもいいでしょ。
私は更に孤立している転送円に乗る。

ヒュンッ!

そして、私は次の部屋でも転送し、先へと進んでいった…。



………。



『時刻7:00 マグマだんアジト・地下2階』


ハルカ (見張りがふたりか…)

奥に男がひとり、手前に女がひとり。
距離は両者、数メートル離れている。
片方が気付けばもう片方も気付くだろう。
そして、何がまずいって…。

女 「!? あ、あなたどうやってここに!?」

男 「いつの間に侵入していたんだ!!」

ハルカ 「さのばびっち」

隠れる場所が一切無いではありませんか〜。
転送した時点で見つかるっつーの…。
ここまでほとんど完璧な潜入だったのに…まぁ仕方ないか。

女 「行け、『ポチエナ』!」
男 「行け、『ドンメル』!」

ボボンッ!

ポチエナ 「ポッチ!」
ドンメル 「メルッ」

ふたりは同時にポケモンを出す。
よかった…この人たち馬鹿だ。
普通なら仲間を呼ぶでしょうに、わざわざバトルを仕掛けてくれる。
警報でも鳴らされたらどうしようかと思ったけど、これなら切り抜ければどうにかなる…私はボールをふたつ取り出す。

ハルカ 「行け、『カゲボウズ』、『アノプス』!」

ボボンッ!

カゲボウズ 「……」
アノプス 「アノ〜!!」

私は早速新参者の『カゲボウズ』を出してみた。
どんな攻撃かイマイチよくわかってないので、マニュアル片手だが。

ハルカ (えっと…技は『はたきおとす』、『いやなおと』、『ナイトヘッド』、『のろい』、『うらみ』)

どれも悪霊っぽい…さすがゴースト。
しかしながら、効果はどれも高そうな気がする。
私は早速コンビネーションで行くことにする。

ハルカ 「カゲボウズ! ポチエナに『いやなおと』!! アノプスはポチエナに『メタルクロー』よ!」

カゲボウズ 「…ボ〜」

きぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃ!!

ハルカ 「でっ!? こっちも効くしっ!!」

思わず耳を塞ぎたくなる。
歯軋りと言うか何と言うか…とにかく『いやなおと』
しかしながら、アノプスやドンメルは何とも無い様子。
どうやら、効果は1体だけの様だ。
人とポケモンじゃ聴覚が違うんだろうなぁ…。

ポチエナ 「ポチ〜〜!!」

アノプス 「アノッ!!」

ドガァッ!!

ポチエナは『いやなおと』で防御力をがくっと下げられ、アノプスの『メタルクロー』を直撃する。
さすがに一撃でダウン、まずは1体ね。

女 「このぉ…行け『ドンメル』!!」

ボンッ!

ドンメルB 「ド〜ン」

今度はドンメルを出してくる。
2体持っていたのか…それは考えてなかった。
と言うことは、最高12体戦うことも考えなければならないのか…うわ、きつそう。

男 「ドンメル、アノプスに『とっしん』だ!!」

ドンメルA 「メルッ!!」

ドドドドドッ!!

ドンメルがアノプスに向かって突っ込んでくる。
アノプスは攻撃を終わって無防備、かわせない。

ハルカ 「くっ、アノプス耐えて!」

アノプス 「!!」

カゲボウズ 「……」

ドンメルA 「!?」

ドーンッ!!

強烈な音をたてて、カゲボウズは後方に吹っ飛ぶ。
そして、ドンメルも衝撃で頭を振っていた。

ハルカ 「カゲボウズ、大丈夫!?」

カゲボウズ 「…?」

カゲボウズは何ら問題なさそうにケロッとしていた。
どう見ても直撃だったのに…もしかして打たれ強いの?

男 「ちっ、ノーマル技は無駄だったか!」

女 「炎タイプで攻めるのよ! ドンメル、カゲボウズに『ひのこ』!!」

ドンメルB 「ド〜ン!」

ボボボボボッ!!

ハルカ 「させないわ! アノプス、カゲボウズの前に出て『まもる』!!」

アノプス 「アノッ!」

ピキィィンッ!!

アノプスはカゲボウズの前に踊り出て、『ひのこ』を受け止める。
そしてすかさず反撃の指示を出す。

ハルカ 「カゲボウズ、手前のドンメルに『ナイトヘッド』よ!!」

カゲボウズ 「!!」

ビビビビビッ!!

ドンメルA 「メル〜!」

男 「大丈夫かドンメル!?」

ドンメルA 「メルッ!」

どうやら、そこまでの攻撃力はないようだった。
さすがに、野生を捕まえたばかりでは仕方ないか…でも、何か強そうな技に見えたんだけどな。
どうにも名前負けしているようである…。
そこで、私は図鑑を見て気付く。
『ナイトヘッド』の効果は固定ダメージ…。
つまり、どんな相手にでも常に同じダメージを与えることが出来る。
これは使いようによってはとても強い…ポケモンの強さによって威力が変わるって言うのが曖昧だけど、面白い技だ。

女 「ドンメル、アノプスに『ひのこ』!!」
男 「ドンメル、カゲボウズに『ひのこ』!!」

ふたりが同時に指示を出す。
今度は分散してる、『まもる』の連発は不安だし…。

ハルカ 「打って出るわ! アノプス、左のドンメルに『げんしのちから』! カゲボウズは右のドンメルに『ナイトヘッド』!!」

ドンメルA 「メルー!」
ドンメルB 「ドンー!」

アノプス 「アノッ!」
カゲボウズ 「……」

ドンメルが『ひのこ』を吹き、アノプスはそれに突っ込む。
カゲボウズはギリギリで回避して『ナイトヘッド』を放つ。

ズドォンッ!!

ドンメルB 「ドンーー!!」

アノプスは『ひのこ』を貫いてドンメルに突撃する。
さすがは岩タイプ、炎でもビクともしない。
まぁ、虫でもあるんだけどね…。

ビビビビビビッ!!

ドンメルA 「メル…」

ドサッ!

二発目の『ナイトヘッド』でもう1体もダウンする。
さぁ、次は!?

男 「ちっ、残るはこいつだけか…『ズバット』!!」

ボンッ!

ズバット 「ズバ〜ット」

ハルカ 「1体だけか、それなら一気に決めるわよアノプス、『げん…じゃなくて『つばめがえし』!!」

思わず『げんしのちから』を使いそうになる。
あの技はPPが低いから、ここぞと言う時まで控えた方がいい。
なので、新しく覚えさせた新技を披露しましょう!

アノプス 「アノッ!!」

ズバット 「!?」

ズバァッ!!

突如ズバットの目の前からアノプスは消え去る。
瞬時にズバットの真上へとジャンプしたアノプスは、そこから爪を振り下ろしたのだ。
アノプスの力と相性も良く、効果は上場。
ズバットを一撃で倒してくれた、これでまたアノプスが強くなったわね。

男 「く…何も出来なかったとは」

女 「いやぁ〜ん…もう最低!」

ハルカ 「…さ〜て、あんたたちはとりあえず…」



………。



ハルカ 「これでよしっと…」

男 「!!!!」
女 「んー!! んー!!」

私はふたりを手早く縛り付ける。
猿轡(さるぐつわ)をしているので、声も出せない。
しばらくは安心ね。
さぁ、先を急ぎましょうか。
私は正面先にあった転送円に乗り、先へと進む。



………。



ハルカ (…見張りはひとりっ、て)

下っ端 「あ!? いつの間…」

ドゴッ!!

下っ端 「きゅうぅ…」

ハルカ 「悪く思わないでね♪」

私は素早く相手の背後に回り、三半規管を左裏拳で強打し、手早く畳む。
見つかったら、隠れるか倒すか二択しかないのよ♪
誰もいないし、問題ないでしょ。
私は先へと進む。



………。



ハルカ (…まだ先があるのね)

いい加減、終わりが見えそうなものだけど、まだ先があるようだった。
だけど、その先には終わりっぽさがあった。

ハルカ (海!? まさか発着場…)

と、言うことは『かいえんいちごう』が停泊している可能性が高い。
ようやくここまで来たって感じね。
さて、後は見張りをひとり何とかして。

ハルカ (…ワンパターンね)

見張りは大きな機械の周りをグルグルと回っているだけだった。
私は気付かれないように、見張りの死角を突いて切り抜ける。
そして、その奥へと辿り着いた。

ハルカ (転送円…ここから海を見ても何も無い)

と言うことは、転送円で進むのがセオリーだ。
私はすぐに転送円へと入る。
そして、私はようやく目当ての場所に辿り着いた。



………。



『時刻7:30 マグマだんアジト・発着場』


ハルカ 「見つけたわよマグマ団!!」

ホムラ 「ウヒョッ!? いつのまに!?」

見ると、いつぞやの幹部がいた。
と言うことは、間違いなくここにマツブサも。

ハルカ 「どきなさい! 痛い目見るわよ!?」

ホムラ 「ウヒョヒョ…そう上手く行くかな?」
ホムラ 「って、ウッヒョーーー!?」

バキィッ!! バッシャァァァンッ!!

やや鈍い音がしたが気にしない。
私は右後ろ回し蹴りで幹部を蹴り、海へと落とす。
そして、私は海を見る…が。

ゴゴゴゴゴゴッ!!

ハルカ 「そ、そんなっ!?」

健闘空しく、潜水艦は外海へと進んでいく。
何て言うこと…ここまで来て。

ホムラ 「ウ、ウヒョヒョ…ざ、残念だったな」

いつの間にか浮かんできた幹部がそう言う。
ちぃ…当たりが浅かったか。

ホムラ 「これでマグマ団の野望は達成する! もう誰もリーダーを追う事は出来ない」

ハルカ 「そんなのやってみなければわからないでしょう!?」

ホムラ 「無理だ…それとも、この広い海の底を手当たり次第に探すつもりか?」
ホムラ 「そんなことをしていても手遅れになるだけだ…もう全てが遅いんだよ」

ハルカ 「……それでも、私は諦めない!!」

私はそう言って、走る。
そして、近くにあった転送円に迷わず乗る。
どこに飛ぶのかもわからないのに…だ。

ヒュンッ!

ホムラ 「ウヒョヒョ…威勢のいい女だ。カガリが妙に気に入っていたが、なるほどなぁ」
ホムラ 「カガリがいる限り、誰もリーダーには手を出せない…あいつは、次元が違う」
ホムラ 「リーダーでさえも黙認するほどの実力者だ…四天王相手でさえも互角か、それ以上」
ホムラ 「…そんな化け物に、勝てるかねぇ?」





………………………。





『時刻8:00 ミナモシティ・海岸』


ハルカ 「…間に合わなかった」

結局…何も出来なかった。
でも、諦めるにはいかなかった。
ふと、ポケットに入っていた『べにいろのたま』が気になった。
海平線から上がった朝日を受け、それは何故か悲しい輝きを放っているように見えた。



…To be continued




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