Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




POCKET MONSTER RUBY



第48話 『BET!』




『1月4日 時刻7:00 トクサネジム・食堂』


ハルカ 「ほいっと! 一丁あがり!!」

ラン 「わぁ…炒飯(チャーハン)だぁ!!」
フウ 「いい匂い〜!」

私は早朝から中華鍋を振るって中華料理を披露する。
とりあえず、一品目は炒飯(チャーハン)だ。
続いて、私は餃子を焼き始め、焼売(シューマイ)と豚まんも蒸しておく。

ハルカ 「よっと…ほい餃子もあがりよ!」

ラン 「わーい! いい香りだよ〜♪」

フウ 「ラン、タレ取って!」

ラン 「ほい!」

フウ 「ありがと! いただきま〜す!!」

ふたりは満を持して食べ始める。
本当にいい食いっぷりね…このふたり、私よりもたくさん食べるもんね…。
よくよく考えたら、相当凄い。
育ち盛りとはいえ、ひとり頭でも通常の3倍は食べるのだ…こりゃ食費も馬鹿にならないわね。

ハルカ 「うっし! 豚まんと焼売(シューマイ)もOKよ♪」

私は蒸し器の蓋を開けてそれらをテーブルに並べた。
まだまだこれだけではない、私はすぐに北京ダックをさばいていく。
それなりに高級品だが、折角の正月なので奮発することにしたのだ。
ちなみに私の自腹だ。

ラン 「美味しーーー!! もう最高!!」

フウ 「はぐはぐはぐ!!」

ハルカ 「はいはい、そんなに急がなくてもまだまだあるわよ! はい北京ダック!!」

ラン 「わーー! 凄い初めて食べるよーー!!」

フウ 「もう記念だね!!」

ハルカ 「さて、最後にラーメン作るわよ!! 何ラーメンにする?」

ラン 「私、フカヒレーーー!!」

フウ 「僕は豚骨ーーー!!」

ハルカ 「ホイ来た! フカヒレはさすがに安物の奴だけど、我慢してね〜」

私は自分で打った麺を用意してスープと早速馴染ませる。
そして、出来上がった所で器に盛り、具材を投入、そしてテーブルへと輸送する。

ハルカ 「はいお待ち!」

ラン 「いっただきまーす!!」
ラン 「んー!! これも美味しーー! ラーメン万歳ーー!」

フウ 「んぐんぐ!! ぷは〜、おかわりー!」

ハルカ 「はいはい! ちょっと待ってね!」

私は次の麺と具を用意して2杯目を入れる。
ふう…休む暇もないわね。
結局、それから1時間後に私は食事をとることになった…朝食でこれだもんね。



………。
……。
…。



『時刻14:00 トクサネシティ・海岸』


ハルカ 「ふっ! ふんっ!! せやぁっ!!」

バッ! ババッ!! ズビュゥッ!!

私は昼食を終えた後、ひとりで海岸に来た。
そこで鈍りがちの体を動かすことにしたのだ。
とはいえ、私はまだまだ若い。
体が覚えているのですぐにキレは戻ってきた。
私は一通りの型を終えると、動きを止めた。

ハルカ 「…ふぅ」

大きく息を吐いて、力を抜く。
さて、これからどうしようかな…。
私はそんなことを考えながら海を見る。

ザザァ…! ザアンッ!

今日の波はやや荒れ気味で、風も強い。
周りを見ても人っ子一人いなく、私だけだった。
今日は確か、キヨミさんがジム戦をするはずだ。
昨日は偶然にも私が勝ってしまったけど、あのキヨミさんが普通に負けるとは思えない。
今回もきっと勝つだろう…それだけはわかった。

ハルカ 「…勝てるのかな、私は」

それはジム戦のことか、キヨミさんとのことか…自分でも定かではなかった。
ただ、ふとそんなことを呟いてしまう。
自信がないわけじゃない。
ただ不安が大きいのだ。
何せ、今回のジム戦はポケモンにとって初挑戦。
そう、ジュペッタとホエルオーが今回のオーダー予定だ。
ジュペッタはあの性格だから私さえしっかりすれば問題はない。
一番の不安はホエルオーだ。
あの子は『おくびょう』だけに、初めてのジム戦では緊張するかもしれない。
しかも交換で貰ったポケモンだけに、まだ私にそこまでなついていないのも問題だ。

ハルカ 「ソルロックにルナトーン…共にエスパータイプで岩タイプでもある」

私は呟きながら、モンスターボールをすべて投げる。

ボンッ!×6

バシャーモ 「シャモッ」
マッスグマ 「…グマ」
ライボルト 「ラ〜イ♪」
アーマルド 「アマッ!」
ジュペッタ 「………」
ホエルオー 「ホエ〜」

ハルカ 「…とりあえず、今日は自由! ちなみに、ホエルオーはホエルコが進化したから、皆喧嘩せずに仲良くするのよ?」

私は皆の返事を確認すると、ひとりトクサネジムに向かう。
折角なので、今回はキヨミさんのジム戦を直接に拝見することにする。
こんなチャンスは滅多にない。ランたちには悪いけど、攻略の参考にさせてもらうわ。



………。
……。
…。



バシャーモ 「何だか、思い詰めてるみたい…」

ハルカさんの背中はどうにも不安そうだ。
やっぱりジム戦のことで悩んでいるんだろう。

ジュペッタ 「………」

ライボルト 「ジュペ君、何考えてるの?」

ジュペッタ 「…さてな」

そう言って海を見るジュペ君。
何とも言えなさそうな感じもする。
ライちゃんもそれ以上は何も聞かなかった。

アーマルド 「しっかし、自由って言われても何したらいいのか…」

マッスグマ 「…私は昼寝してきます」

そう言ってグマちゃんは日陰の方に向かっていく。
何だか最近のグマちゃん、よく寝てる気がするなぁ…。

ライボルト 「ふぁ〜私も寝ようかな…」

ライちゃんは欠伸をしてその場で寝そべる。
まぁ、たまにはこんな休日も有りか…。

ホエルオー 「……」

バシャーモ 「…ん? どうかしたの、ホエ君?」

ホエルオー 「あの…出来れば海まで運んでくれません?」

バシャーモ 「…え?」

ホエ君は唐突にそう言う。
とはいえ…どうやって?
私は14.5メートル、398キロの巨体を見る。
海まではそんなに離れてないけど…。

バシャーモ 「…アマ君、持ち上げられそう?」

アーマルド 「…いや、無理っしょ」

バシャーモ 「…だよねぇ」

私たちは立ち尽くす。
だけど、このままにしておくのは可哀相だ。
何とか海に帰し…じゃなかった、運んであげないと!

ホエルオー 「やっぱり無理ですかね〜?」

ホエ君は辛そうに呟く。
このサイズだと、声の聞こえ方もかなり大きい。
う〜ん、けどどうしよう?
持ち上げるのは無理だし、押すのも引くのも無理。
とても私たちの力じゃ動かせそうにない。

ジュペッタ 「ホエ、『ころがる』だ」

ホエルオー 「ほえ?」

バシャーモ 「『ころがる』って、どうやって?」

唐突に進言するジュペ君はそんなことを言った。
が、誰もその意図を読み取れないようだった。

ジュペッタ 「…頭を使え。横に転がれば移動は十分可能だ」

ホエルオー 「ふんっ…ふんっ! …無理です〜」

ホエ君は必死に体を傾けようとするが、一行に転がれそうになかった。

ジュペッタ 「…そのやり方では無理だ、『はねる』の要領で一度体を浮かせて横に回転するんだ」

ホエルオー 「は、はい〜!!」

ホエ君は体全体を使って跳ねる。
そして、そこから体を傾けて横から地面に落ちた。

ドッ! ズウゥゥンッ!!

バシャーモ 「今よホエ君!」

ホエルオー 「ふんぬううう!!」

ズズズッ!! ドズアッパアァァンッ!!

凄まじい音と共にホエ君は浅瀬に背中から倒れこむ。
後は勢いを利用してそのままもう半回転して今度は腹から落ちる。
しかし、同時にとんでもない水飛沫が巻き起こり、私たちは一斉に逃げるしかなかった。

バシャーモ 「ひええっ!!」
アーマルド 「でえ−−!?」
ライボルト 「ひょえ〜!」
ジュペッタ 「………」



ドバババババッ!! ババンッ!! ババババァッ!!

舞い上がった飛沫が一斉に落ちてくる。
私たちは何とか回避に成功し、事無きを得る。

バシャーモ 「…ふぅ」

ライボルト 「あっぶな〜」

アーマルド 「やれやれ…」

ジュペッタ 「………」

ホエルオー 「ほえほえ〜、やっぱり海はいいですねぇ〜♪」

ホエ君はそう言い、ゆら〜りと泳ぐ。
とりあえず、喜んでくれて何より。
さて、これからどうしよう?

ジュペッタ 「…ホエ、今からスパーリングを始めるぞ」

ホエルオー 「ほえ?」

ジュペ君はそう言ってホエ君と向き合う。
ホエ君は意味がわかってないようだった。

ジュペッタ 「ジム戦の前の調整だ。本気で来い…!」

そう言ってジュペ君はホエ君を睨み付ける。
う〜ん、どうにもこのシリアスな空間に違和感があるなぁ。
普段慣れている空間と違うので、どうにも違和感がある。
いつもなら、この辺りでギャグが入ったりするはずなんだけど。

ホエルオー 「は、はいっ! お願いしますっ!」

ダメだ、ツッコミもない…私たちって、こんなに熱血パーティだったっけ?

ライボルト 「よくやるなぁ…」

バシャーモ 「う〜ん、でも今回のジムリーダーは強いし、やって損をすることはないと思う」

ライボルト 「そだね…私たちはあっさりやられちゃったし…」

アーマルド 「ですが、まだ誰が出るかは決まってないんじゃ?」

確かに。
まだハルカさんは正式にオーダーを発表したわけじゃない。
でも、何となく予想は出来る。
次のジム戦はジュペ君とホエ君だろう。
それが相性的に見て一番の組み合わせと言えるしね。

ジュペッタ 「行くぞ…これを受けられるか!?」

ホエルオー 「!?」

バチバチバチィッ!!

いきなりジュペ君は『10まんボルト』でホエ君を攻撃する。
突然の攻撃にホエ君は反応することも出来ず、まともにくらってしまった。

ホエルオー 「ふんぬぅ! まだまだ!!」

ドッギュバァッ!!

ジュペッタ 「!?」

ジュペ君の攻撃を受けてなお、ホエ君は反撃する。
さすがのジュペ君も驚いたのか全力で横に回避した。
的を失ったホエ君の『みずのはどう』は砂浜に激突して砂を吹き飛ばす。
凄い威力だ…まともに当たったら間違いなく吹っ飛ぶ。
でも…。

ジュペッタ 「いい体力だ…打たれ強さはさすがだな。だが…」

ホエルオー 「?」

ジュペッタ 「…攻撃が遅すぎる。それではまず当たらん」

やっぱりジュペ君も気付いてた。
私も同じ答えだ。
ホエ君は攻撃のモーションが大きすぎる。
威力は高いけど、それだけでは当てることが出来ない。
ましてや次のジムリーダーはエスパータイプで、なおかつ浮遊系。
相当な技術とスピードが無ければ、当てるのは難しいだろう。

ジュペッタ 「確かに当たればまさに一撃必倒だろう…だが、当たらなければ豆鉄砲と変わらん」

ホエルオー 「ほえ〜…でも一発でも当たれば!」

ジュペッタ 「無駄だ、今のままでは一発当てることすら不可能だ」
ジュペッタ 「今回のジム戦、鍵になるのはお前だ」
ホエルオー 「ほえ?」

ホエ君は内容が理解できてないのか、不思議そうな顔をする。
だけどジュペ君は無表情にこう言う。

ジュペッタ 「ジム戦は恐らく室内戦になる、そこではまずお前は動けないだろう」

ホエルオー 「ほえっ!? それじゃどうやって戦うんですかっ!?」

ホエ君の言うことももっともだ。
だけど、ジュペ君はあっさり答える。

ジュペッタ 「お前は俺が徹底的に鍛えてやる…ジム戦で勝つためにな」
ジュペッタ 「さっき『ころがる』をやらせたのも、ジム戦を想定してのことだ」

ホエルオー 「ほ、ほえほえ…」

ジュペッタ 「いいか、お前には陸でも戦えるようになってもらわなければならない」
ジュペッタ 「そのためには、まず『移動』が出来るようになれ」
ジュペッタ 「お前はその図体だ、ちょっと動くだけでも十分な効果になる」

ホエルオー 「…で、どうやって移動するんですか?」

ホエ君は本当にわからないのだろうが、そう聞く。
すると、ジュペ君は無表情のままで。

ジュペッタ 「…基本は『はねる』、『ころがる』を使え」
ジュペッタ 「『はねる』での移動が、メインになると思え。そして、『ころがる』は移動と攻撃を同時にこなせる技だ」
ジュペッタ 「今回のジム戦でなら、お前がちょっと動くだけでバトルフィールドの半分以上は埋め尽くせる」
ジュペッタ 「動き方を間違えなければ、相手の動きをかなり制限することが出来るだろう」
ジュペッタ 「攻撃はその後だ…まずは移動を的確に行えるようになれ」

ホエルオー 「は、はい〜! まずは『はねる』!!」

ズオオォォッ!!

一瞬、波が一気に引く音。
そして、次の瞬間。

ドズアアアアッパァァァァンッ!!!

バシャーモ 「ひええっ、また!?」
ライボルト 「逃げろ逃げろ〜!」
アーマルド 「いい加減にしろーーー!!」
ジュペッタ 「………」

またしても凄まじい水飛沫が飛び散り、私たちは逃げる。
しばらくは…こんなことが繰り返されることになった。





………………………。





ホエルオー 「はぁ…はぁ…」

ジュペッタ 「…及第点と言った所か」

ホエルオー 「は、はい〜…」

あれから1時間以上ホエ君は技によって移動を訓練し続けた。
その甲斐あってか、ホエ君は陸上でも若干の移動が可能になり、少なくとも実戦で戦えるレベルにはなったようだ。

ジュペッタ 「次は攻撃だ…お前の技はモーションが大きくかわされやすい」
ジュペッタ 「しかし、さっきのように移動が出来るようになれば、相手を素早く見定めて攻撃を行えるようになるだろう」
ジュペッタ 「ただ、それでも当たる保証はない…むしろ外れる可能性の方が大きい」

ホエルオー 「そ、それじゃ〜、どうするんですか〜」

ホエ君は呼吸を荒くしながら聞く。

ジュペッタ 「…方法はいくつかあるが、まずは相手の位置に合わせて使う技を考えろ」
ジュペッタ 「正面なら『みずのはどう』、左右なら『ころがる』と言った風にな」
ジュペッタ 「ただ、問題は相手が背後頭上に回った時だ」
ジュペッタ 「背後なら『はねる』を使って無理やりぶつかることも出来るだろうが、頭上はどうしようもない」

バシャーモ 「確かに…ホエ君は口から水を出すんだから、頭上には頭が上がらないもんね」

ライボルト 「でもそれだと、次の相手は空飛んでるから手も足も出ないんじゃ?」

アーマルド 「元々手も足もないけどな…」

ホエルオー 「…ほ、ほえほえ〜」

辛そうに鳴き声をあげるホエ君。
う〜ん、どうするつもりなんだろ?

ジュペッタ 「…ここからが一番重要な所だ。ホエには今から徹底的に特訓を行う」
ジュペッタ 「しばらくは、バトル続きになるが、覚悟しておけ」

ホエルオー 「ほ、ほえ〜〜…」

こうして、ホエ君の特訓バトルが始まった。
『おくびょう』な性格のホエ君は『れいせい』なジュペ君が怖いのか逆らう様子はなく、むしろ従順な位だった。
バトルは何時間も続き、ホエ君は幾度となくダメージを受け、技を繰り出す。
ダメージは『ねむる』で回復し、またバトル。
こんな、作業のようなバトルの繰り返しだった。



………。
……。
…。



そして、もう日が暮れようかという頃。
ハルカさんは、何とも疲れたような表情をして帰ってきた。



ハルカ 「…ん、皆いるわね?」

バシャーモ 「シャモ」
マッスグマ 「…グマ」
ライボルト 「ライッ」
アーマルド 「アマッ」
ジュペッタ 「………」
ホエルオー 「…ホエ〜」

ハルカ 「ん? 何でホエルオーだけそんな疲れてるの?」

ジュペッタ 「…気にするな。それよりも、何があった?」

ハルカ 「え?」

突然そう言って私を気遣うジュペッタ。
私は、今日のジム戦を思い出す。





………………………。





ハルカ (キヨミさんのジム戦か、どんなのだろう?)
ハルカ (私じゃ手も足も出なかった相手…キヨミさんはどう戦う?)

私は観客席の目立たない所で、静かに3人を見た。
すでにキヨミさんはスタンバっており、ランとフウも準備は完了している。
余裕のあるキヨミさんに対し、ランとフウは何だか余裕がなさそうだった。

ハルカ (…どうしたのかしら? 私と戦った時は堂々としてたのに)

まるで、何かを吹っ切るようにランとフウはポケモンを繰り出す。

ボボンッ!!

ソルロック 「ソルローーー!!」
ルナトーン 「ルナトーーー!!」

キヨミ 「…なるほど、それがジムリーダーのポケモンね」
キヨミ 「ダブルバトルか…それならこっちは!!」

キヨミさんはふたつのモンスターボールを同時に投げた。
そしてそこから現れるのは…。

ボボンッ!!

エアームド 「エアッ!」
キレイハナ 「ハッナ〜♪」


ハルカ (エアームドにキレイハナか…鋼と草は岩に対して相性がいい)
ハルカ (まずはセオリー通りか…)

そして、互いのポケモンが出たところでバトルは始まった。


ソルロック 「……」
ルナトーン 「……」

突然ソルロックとルナトーンは空中で停止し、何やら体からぼんやりと光を放つ。
特に攻撃している様子はない。
だが、何かある気がする…あれは一体何?


キヨミ 「…なるほどね、『めいそう』か」


キヨミさんはぼそりと呟く。
『めいそう』? 聞いた事のない技だ。
だけど、もしそれが技だとしたら…?

ハルカ (!? まさか、特殊攻撃力を増加させたりする効果!?)

単純に『めいそう』の効果を想像してみる。
人間で言うなら、瞑想は心を落ち着け、悟りを開くイメージ。
精神的に楽になるという効果もあるし、たまに私もやったりする。
だが、ポケモンがそれをやるということはつまり…能力増加の疑いがあるわね。

ハルカ (そうか…だからあのポケモンたちはやけに攻撃力や防御力が目立っていたのか)

それならば、あの強さも納得がいく。
一撃で相手を倒す『サイコキネシス』、効果抜群の攻撃にも耐える特殊防御力。
モーションも目立たず、相手に気付かれずに能力を上げることも出来る。
バシャーモの『ビルドアップ』を特殊型に変えたものなのね…要は。
まぁ、あくまで私の推測だけど、多分間違っていない気がした。
しかし、いきなり能力をアップか…。


キヨミ 「…悪いけど、長引かせる気はないの。エアームド、ソルロックに『はがねのつばさ』! キレイハナは『にほんばれ』よ!!」

エアームド 「エアーー!!」
キレイハナ 「ハナ〜♪」

エアームドは高速で突っ込み、キレイハナは踊りながら太陽を作り出す。

ラン 「!!」
フウ 「!!」

ソルロック 「! ソルロー!!」

キィィィッ!!

エアームド 「!? エアーッ!!」

ソルロックの『サイコキネシス』がエアームドを止める。
そして、その間にルナトーンはキレイハナを見定める。

ルナトーン 「ルナトーーー!!」

コォォォォッ!!

ルナトーンは鼻から『れいとうビーム』を繰り出す。
当たれば効果抜群…だけど、そこにはすでにキレイハナはいなかった。

ハルカ (速い! 一瞬であそこまで!?)

コキィィンッ!!

『れいとうビーム』は地面に当たり、地面を凍らせる。
キレイハナは一足飛びで数メートルは移動していた。
あのポケモンはあんなに早く動けるの!?

エアームド 「エアーーー!!」

ソルロック 「ソルロッ!?」

ドッガァァッ!!

エアームドは無理やり『サイコキネシス』の呪縛を振り切り、ソルロックに『はがねのつばさ』を見舞う。
カウンターみたいな物だったのか、ソルロックは回避できずに直撃する。
そして、そのまま地面へと落下した。

ドッ! ズゥゥンッ!!

ラン 「ソルロック!?」

キヨミ 「…キレイハナ『ソーラービーム』」

キレイハナ 「ハッナーーー!!」

キュィィ…ドッギャアアアアアアアアアンッ!!!!

ルナトーン 「ルナッ!?」

バババババババァァァァッン!!

いつの間にか、キレイハナに背後に回られていたルナトーンは背面から『ソーラービーム』と言う技を受けて地面に落ちる。
これで、終わりだった。


フウ 「ルナトーン!!」

キヨミ 「…戻って」

シュボボンッ!!

キヨミさんはポケモンをボールに戻し、ふたりの元に歩いていく。

キヨミ 「…私の勝ちね」

ラン 「…私たちの」

フウ 「…負けです」

ラン 「…これが」

フウ 「…マインドバッジです」

そう言ってランはバッジをキヨミさんに渡す。
キヨミさんはそれを確認すると、懐に収める。
そして、何も言わずに去っていった。





………………………。





ハルカ 「……」

ジュペッタ 「…どうした?」

ハルカ 「え? 何?」

ジュペッタ 「…聞いてなかったのか? 何があったと聞いているんだ」

ジュペッタはもう一度質問を繰り返す。
どうやら、思い出している内に言葉を失ったらしい。
何とも、強敵である。
私は、アレを越えなければならないのか…。
想像以上だった…もう少し苦戦すると思っていた。
だけど、苦戦なんてとんでもなかった…まさに勝って当たり前。
ポケモンのレベルも去ることながら、トレーナーとしての器の違いをまざまざと見せつけられた感じだ。
あれが…チャンピオンの実力か。

ハルカ (キヨミさんのポケモンは、私が見た中だとヘルガー、クロバット、マンタイン、アブソル、トドゼルガ、エアームド、そしてキレイハナか)
ハルカ (1体多いけど、入れ替えたのかな? アブソルとトドゼルガはまだまだ鍛えている途中みたいな感じだったけど)
ハルカ (それ以外のは、ハナからレベルが違う…まだ私じゃ相手にならない)

あれから、私自身もそれなりにレベルアップしたと思っていた。
でも、キヨミさんはそれを遥かに上回ってる…まだまだ追いつけない。

ジュペッタ 「…どうやら、余程のショックを受けているようだな」

ハルカ 「…ん? 何が?」

ジュペッタ 「…もういい、それよりもジム戦はどうするつもりだ?」

ハルカ 「…ああ、それなら」
ハルカ 「今回は、どうせ室内戦だし…とりあえずジュペッタとマッスグマで行くつもりよ」

ジュペッタ 「そのことだが…ホエを使え」

ハルカ 「…は?」

思わず聞き返してしまう。
だが、ジュペッタは表情も変えずに繰り返す。

ジュペッタ 「ホエを使えと言ったんだ」

ハルカ 「ジュペッタ…あなたわかってて言ってるの? 今回のジム戦は室内! 外じゃないのよ?」
ハルカ 「ホエルオーはどう見ても海上移動系! 陸上じゃ動きようもないでしょう!?」

ジュペッタ 「だが、ホエの水タイプは有効だ」
ジュペッタ 「今回、俺がまだ『シャドーボール』を使えない以上、最も有効な攻撃を放てるのはホエだ」
ジュペッタ 「…選択の余地は無いと俺は判断する」

ハルカ 「…何言ってるのよ! そんなの無理に決まってるじゃない! 相手は空飛んでるのよ!? 頭上に回られたらどうしようもないじゃない!」

ジュペッタ 「その弱点は既に克服させた…問題ない」

ジュペッタは冷静にそう言う。
何なのよこの自信…どこから来るわけ?
しかしながら、ポケモンの知識に関しては、私よりもジュペッタの方が多分上。
特に技の効果や範囲などの知識は明らかに私より上だろう。
そのジュペッタがここまで推すなんて…私がいない間にホエルオーが疲れていたのがどうやら鍵のようね。

ハルカ 「…いいわ。どうせ元々分の悪い勝負…あなたに賭けてみるわ、オールチップ」

ジュペッタ 「グッドだ…大穴の活躍を見せてやろう」

そう言って、ジュペッタは微かに笑った。
その笑みの裏には、確実な『勝利の鍵』が隠されているようだった。



…To be continued




Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




inserted by FC2 system