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POCKET MONSTER RUBY



第59話 『結末』




『3月14日 時刻10:00 ミナモシティ・コンテスト会場』


ワアアアアアアアアァァァァァァァッ!!

司会 「さぁ、皆ーーー!! 気合は入っているかーーー!?」

オオオオオオオオォォォッ!!

司会の叫びに、会場が燃え上がる。
今日は、ついにグランドフェスティバルの優勝者が決まる。
予選を通過した、64名がこの会場で、アピールを繰り広げることとなるのだ。

司会 「第2次予選と本戦は、トーナメント!! そして、この予選で勝ち残った8名が、本戦トーナメントへ出場だーー!!」
司会 「さぁ、電光掲示板を注目!! まずは第1試合の組み合わせだー!!」

ピピピピピピッ!!

観客全員の目が、会場に設置されている巨大電光掲示板に注目する。
64名の中から、ランダムに選ばれる組み合わせ。
果たして、最初の組み合わせは…。

ピピピピッ…ジャンッ!!

画面に、組み合わせが表示される。
そこに映し出されたのは…

司会 「出たーー! 最初の戦いは、ミカゲさん対ハチローさん!」

ハルカ 「…いきなり、ミカゲか」

キヨミ 「…第2次予選は、コンテストバトル。見せてもらおうかしら」

キヨハ 「ええ…どんなポケモンを使うのか、ね」

確かに、それは興味がある。
強さも去ることながら、どんなタイプのポケモンを使うのか、純粋に興味があった。


ハチロー 「行けっ、『ベトベトン』!」

ボンッ!

ベトベトン 「ベト〜」

司会 「お〜っと! ハチローさんが繰り出したのはベトベトンだ!!」
司会 「ヘドロの体から繰り出される技は、どんな技なのか!?」
司会 「さ〜って、対するミカゲさんのポケモンは!?」

ミカゲ 「…出なさぁい、『ムクホーク』」

ボンッ!

ムクホーク 「ムクホーー!!」

ミカゲはやる気のなさそうな声でボールからポケモンを出す。
相手のコーディネイターはやる気満々で、今にも飛び掛りそうな感じだけど、ミカゲは嫌なほど冷静ね。

ハルカ (って言うか…相手見てないし)

ミカゲは特に興味も無さそうに、やや俯き加減に目を瞑っていた。
完全に相手を舐めているとしか思えない…。

司会 「さぁ、それじゃあ行ってみようかぁ!? バトル・スタートーー!!」

ワアアアアアァァァァァァッ!!

ついに、コンテストバトルが始まる。
実際に見るのは初めてだ…一体どんな戦い方が見れるのか。

ハチロー 「ベトベトン、『ヘドロこうげき』!!」

ベトベトン 「ベト〜」

ゴバァッ!

ベトベトンは、口から毒の塊を吐き出す。
あれを食らうと、たまに毒になる。
ミカゲのムクホークは動こうともせず、足を地面につけて静止していた。

ミカゲ 「…『ブレイブバード』」

ムクホーク 「! ムクホーーーー!!」

カァァッ! ギュオォォォッ!!

ハルカ 「な、何!?」

キヨミ 「…厄介な技を使うわね」

ムクホークが突然白い光に包まれたかと思うと、凄まじい速度でヘドロを突き破ってベトベトンへ一直線。
そのまま体当たりをするように突撃する。

ギュォォォッ!!

ベトベトン 「ベト〜〜〜…」

ヒュルルル…ドスゥンッ!!

ムクホーク 「ホーク!!」

バサァッ!!

ワアアアアァァァァァッ!!

司会 「決まったー!! ベトベトン・バトルオフ!! ミカゲさんの圧倒的勝利だーーー!!」

ナミ 「凄いです! 技を決めた後の羽ばたきがとても力強く感じました!」

ゴンゾウ 「いやぁ、見てるこっちも元気ななりそうな技でしたねぇ…」

テスタ 「相手の技を出させて、自分の技を引き立たせる…見事としか言えません!」

ワアアアアァァァァッ!!

ミカゲはそのまま、つまらなさそうに舞台を出て行く。
少し位嬉しそうな顔したらいいのに。

キヨミ 「…姉さん、どう思う?」

キヨハ 「あの威力だと、反動も相当でしょうね」
キヨハ 「ためらいもなく、あの技を使うのはどうかと思うけれど」

ヒビキ (レベルその物が違う。やはり、全てのポケモンにおいて、隙は無さそうだな)

フィーナ 「………」

メフィー 「どうしたの? フィーナちゃん」

フィーナ 「…別に」

ハルカ 「…? 何でもないって顔じゃないと思うけど?」

私がそう言うと、全員がフィーナちゃんに注目する。
フィーナちゃんは、無言で、ただ俯いていた。

メフィー 「フィーナちゃん?」

フィーナ 「…何でもないってば」
フィーナ 「……ごめんなさい、ちょっとトイレに行って来ます」

何か思いつめたような表情で、フィーナちゃんは出て行く。
私はその背中が何故か気になった。

ハルカ 「…ごめんなさい、私もちょっと行って来ます」

メフィー 「ハルカさんもですか〜?」

キヨミ 「いいじゃない…でも、すぐに戻ってきなさいよ」

ハルカ 「はい」

私はそう言って、フィーナちゃんの後を追う。
フィーナちゃんにバレないように、そっと後をつけた。



………。



『時刻10:10 廊下』


ミカゲ 「…あらぁ、あなたは確か」

フィーナ 「!! お前は…」

ハルカ (…ミカゲ)

1階まで降りると、廊下でミカゲに出くわす。
不適な笑顔を見せるミカゲに対し、明らかな敵意を見せるフィーナちゃん。
まるで、今からケンカでも始めようかと言う雰囲気だ。

ミカゲ 「うふふ、どうしたのぉ? 昨日の続きでもしたくなったぁ?」

フィーナ 「! …っ!!」

ミカゲは明らかに挑発する。
だけど、フィーナちゃんはきつく拳を握り、肩を振るわせ耐えていた。
フィーナちゃんにしては、大人な行動ね。

ミカゲ 「あらぁ? 震えてるの?」

フィーナ 「う、うるせぇ! 武者震いだ!!」

ハルカ (…あらあら、このままじゃちょっとまずいか)

さすがに見ていられなさそうね。
このままじゃ殴り合いになりそうだわ。
私は止めようと思い、その場から出て行こうとする。

? 「ルカリオ『はどうだん』!!」

ルカリオ 「バゥ!」

ミカゲ 「!?」

フィーナ 「わぁっ!?」

ドォンッ!!

ハルカ 「!?」

私が出るよりも早く、誰かがポケモンで仲裁する。
犬のような顔をした青黒のポケモンが技を繰り出し、ミカゲとフィーナちゃんの間を割った。

ミカゲ 「…危ないわねぇ」

ノリカ 「こんな所で、ケンカはしないでください!」

ハルカ (あ、あの娘確か…)

昨日見た『ノリカ』と言う少女だ。
私のファンで、信者。

フィーナ 「けほっ! いきなり過ぎるだろ…!」

フィーナちゃんは咳き込んでいた。
今の爆発でやられたのね。

ノリカ 「ケンカしようとするからですよ! 今、殴りかかろうとしたでしょ?」

フィーナ 「そ、それは…」

ハルカ 「言い訳の余地はないわよ、フィーナちゃん」

ミカゲ 「……」

フィーナ 「!? ハルカさん…」

ノリカ 「ぴぽぱぺぶりゃあぁ!?」

ルカリオ 「バゥ…」

ビシッ!

ハルカ 「おお…ポケモンがツッコンだ」

ノリカの暴走にポケモンがチョップで止める。
何かいいコンビだ。

ハルカ 「…全く、落ち着きなさいよね」

ルカリオ 「バゥ!」

ハルカ 「うん? …『ノリカはハルカさんのことになると、手がつけられない』」

ルカリオ 「バゥ!」

ノリカのポケモンは、スケッチブックに綺麗な字を書いてそう私に伝える。
あの肉球みたいな手で、よく書けるわね…。

ノリカ 「はぶべびょぷひぃ!!」

ルカリオ 「…バゥ!」

ビシィ!

ノリカ 「うぶぅ…」

またしても止められる。
凄いポケモンとトレーナーね…ある意味馬鹿かも。

ルカリオ 「バゥ!」

ハルカ 「えっと…『この度は、ご迷惑をおかけして申し訳ない』」

ルカリオ 「バウバゥ!」
『私からもきつく言っておくので、許してほしい』

ハルカ 「あ、あはは…まぁ、いいけどね」

ミカゲ 「……」

フィーナ 「…あっ、ま、待ちやがれ!!」

ミカゲ 「…その震えを直したら、相手をしてあげてもいいわよぉ、お譲ちゃん」
ミカゲ 「あっははっ! じゃあねぇ〜♪」

ミカゲはそう言い残して去っていく。
完全におちょくっている。
フィーナちゃんはいつ爆発してもおかしくない状態だ。
これは大変なことになりそうねぇ。

ノリカ 「はう…落ち着いた」

ルカリオ 「バゥ」

ノリカ 「ふぅ…いつもごめんねルカリオ」

ルカリオ 「バウバゥ」
『気にするな』

ハルカ 「やれやれ…こっちはこっちで厄介だし」
ハルカ 「もしかして、そろそろあなたの出番なの?」

ノリカ 「あ、えっと…はい! 次の試合です!」

ハルカ 「そう、さっきは止めてくれてありがとね、応援してあげるから頑張りなさい」

ノリカ 「は、はいっ!! このノリカ!! 容赦せずに頑張ります!!」

ビシィッ!と敬礼をしてノリカはルカリオというポケモンを連れ、舞台に向かう。
私はひとり立ち尽くす、フィーナちゃんを見て。

ハルカ 「…昨日、何かあったの? あれからおかしい気がするんだけど」

フィーナ 「…実は」



………。
……。
…。



『時刻10:20 客席』


メフィー 「あ、フィーナちゃん、ハルカさん!! 遅いですよーー!!」
メフィー 「もう、ノリカちゃんの試合始まってますよ!?」

ハルカ 「ごめんごめん、ちょっとトラブルがあって…」

フィーナ 「…あ、あのポケモン」


ノリカ 「ルカリオ『はどうだん』!」

ルカリオ 「バゥッ!」

ドォンッ!!

グラエナ 「グラ…」

ズゥンッ!

司会 「グラエナ・バトルオフ!! このバトルは、ノリカさんの勝利だー!」

ワアアアァァァァァァッ!!


ハルカ 「あらら、終わっちゃった」

フィーナ 「……」

駆けつけたらすでに遅し、試合は終わっていた。
ポイントの差を見ても、圧倒的。
さすがにやるわね…あの娘。

ハルカ (しかし…ミカゲがそこまでとは)

さっき、フィーナちゃんから聞いた話を思い出す。
フィーナちゃんが偶然見た、ミカゲとヒビキさんのバトル。
圧倒的な差でヒビキさんを打ち負かしたミカゲ。
やはり、キヨミさんやキヨハさんが言う通り、どうしようもない強さをしているらしい。
少なくとも、今の私ではとても敵わないかもしれない。
あれから、私自身もかなりポケモンのLvは上がっている。
今なら、フィーナちゃんやメフィーちゃんと互角に戦うことができるほどだ。
それでも、キヨミさんやキヨハさん、ヒビキさんは一際レベルが違った。
私たちの中じゃ図抜けてレベルが高い、加えてトレーナーとしての経験値もまるで違う。
その中のひとりである、ヒビキさんがどうにもならないのだから、どうしようもない。
まだまだ、強くならないと駄目らしい…キヨミさんやキヨハさんがそうしているように。

ハルカ (キヨミさんとキヨハさんは、絶対に諦めないって気持ちが強い)
ハルカ (だから、圧倒的なミカゲの力を見ても、諦めず勝てるように努力する)
ハルカ (でも、フィーナちゃんはそれを見て、止まってしまった)
ハルカ (誰だって、絶対に勝てない相手を見たら普通は逃げる)
ハルカ (でも、逃げているだけじゃ、ポケモンは強くならない)





………………………。





『時刻13:05 コンテスト会場・食堂』


ノリカ 「いや〜、運がよかったと言えばそうですね〜」

サヤ 「…そうね、確かに」

メフィー 「見事に、予選ではぶつからないですね」

キヨミ 「ええ、偶然とはいえ、ふたりともミカゲに当たらなくてよかったわね」

サヤ 「…どちらにせよ、決勝ではいずれぶつかります」

ノリカ 「確かに! でも、私は負けない! 絶対に勝って優勝するんだから!」

ふたりの意気込みは十分と思えた。
まずは予選の32試合が全て終わり、今は昼休み。
続きは14時からスタートだから、結構時間がある。
折角だから、私もできることをやっておこうかな。

フィーナ 「……」

食事にもほとんど手をつけようとしないフィーナちゃん。
どうやら、本当に重症のようね。
私は、この際荒療治を行うことにした。

ハルカ 「フィーナちゃん、悪いけど…食後の運動に付き合ってくれない?」

フィーナ 「え? どうしたんですか…急に」

ハルカ 「ちょっと、バトルを見てたら私も暑くなってきちゃって。相手、してくれない?」

フィーナ 「え…でも、今は…」

メフィー 「フィーナちゃん、らしくないですよ〜? いつもなら、『やぁってやるぜー!!』って突っ走るのに」

それはどこぞの○戦機隊ですか…まぁ、あってるっちゃあ、あってるけど。

ハルカ 「ほらほらっ! いつものフィーナちゃんみたいに、頼むわよ!」
ハルカ 「…じゃないと、ミカゲどころか、私相手でも勝負にならないわよ、きっと」

フィーナ 「!? ハルカさん……わかったぜ!!」

メフィー 「やったぁ! さっすがフィーナちゃん!」

やれやれ、いつものフィーナちゃんに戻ったわね。
これで、元気になればシナリオ通りね。



………。



『時刻13:15 コンテスト会場・広場』


ハルカ 「ルールは1対1のシングルバトル!」

フィーナ 「単純だな、だったらこっちから行くぜ! 行け『アブソル』!!」

ボンッ!

アブソル 「……」

出てきたのはアブソル。
キヨミさんも育てているが、あのポケモンはパワーが凄い。
攻撃力は類を見ないだけに、一発が怖い。
侮れないわね。

ハルカ 「よっし、じゃあこっちはこの子よ! 行けっ『フィオネ』!!」

ボンッ!

フィオネ 「フィオ〜♪」

ガバッ!

ハルカ 「こらこらっ! 離れなさい! 今日はポケモンバトル!」

フィオネ 「フィオ〜…」

フィオネは、残念そうに地上に降りる。
全く、子供なのか、甘えん坊ねぇ。
とはいえ、甘やかすわけには行かない。
そろそろ、この子にも経験をさせていかないと!

フィーナ 「…フィオネか、Lvが低くても容赦しないぜ!?」

アブソル 「…気をつけろ、フィーナ。あのポケモン、侮れん」

フィーナ 「!? …わかった、気を引き締めるか」

さて、不思議に思う人もいるだろうが、フィーナのアブソルは喋るのだ。
うちのジュペッタも喋るし、案外そう言うポケモンも少なくはないのかもしれない。
マナフィは学習してやっと名前が言える位だったのに…侮れないわ。

フィオネ 「フィオ〜♪」

フィオネはその場でクルクル回りながら踊る。
…不安だわ。

フィーナ 「先行は俺が貰う! アブソル『かまいたち』!!」

アブソル 「!!」

ハルカ 「…いきなり、余裕見せてくれるわね。フィオネ『あまごい』よ!!」

フィオネ 「フィオ〜♪」

ポツポツ…ザアアアアアアァァァァァァァァァッ!!

メフィー 「きゃっ、雨が…」

キヨミ 「…まずは、様子見かしら」

キヨハ 「ええ、ハルカちゃん有利のね」

ヒビキ (雨を降らせて、有利な状況を作る…並の水ポケモンならともかく、フィオネが相手では、苦戦は免れんだろうな)
ヒビキ (最初から、隙の大きい『かまいたち』は選択ミスと言わざるを得ん)

ノリカ 「フィオネって…初めて見るんだけど」

サヤ 「…説明は、また今度してあげるわ」


ハルカ (スピードでは分が悪そうね、ここは落ち着いていきましょうか)

フィーナ 「よしっ、行けーーアブソル!!」

アブソル 「ふんっ!!」

ドギュアァッ!!

ハルカ 「フィオネ『とける』!!」

フィオネ 「フィ〜♪」

ドロッ…バシャァァンッ!!

アブソルの『かまいたち』は水面を吹き飛ばしただけだった。
フィオネの体は完全に水と同化する。
雨に紛れ、フィオネの姿は水溜りと一体化してしまったのだ。

フィーナ 「ど、どこにいやがる!?」

アブソル 「落ち着けフィーナ! 目の届かない場所にはいない!」

フィーナちゃんは予想通り慌てる。
ここまではこちらのシナリオ通り、さてどうなるかしら?

フィーナ 「くそっ…アブソル水面に『かみなり』だ!!」

ハルカ 「フィオネ『たきのぼり』!!」

フィオネ 「フィッ!」

ズバシャアァンッ!!

アブソル 「グウッ!!」

突然、アブソルの足元からフィオネが飛び上がる。
不意を付かれたアブソルは怯んで動けなかった。

フィーナ 「ちっ…アブソル、地面に『れいとうビーム』!」

アブソル 「こおおぉっ!!」

コォォォキィィィィンッ!!!

ハルカ 「!? 足元が…!」

フィオネ 「フィオ〜♪」

足元が氷に変わり、フィオネは溶け込めなくなった。
しかし、別に足場の悪さは関係ないという風に、フィオネはスケートのように滑って氷上を移動する。

ハルカ (同じ手はさすがにできないか…さて、ここからは正攻法ね!)
ハルカ 「フィオネ『ふぶき』よ!!」

フィオネ 「フィー!!」

ビュゴゴゴゴゴオオオオォォッ!!

フィーナ 「アブソル『まもる』!!」

アブソル 「ふんっ!」

ピキィィンッ!!

アブソルは『まもる』で完全防御する。
『ふぶき』のダメージはない。
でも、目的はそれだけじゃないのよね〜。

パラパラパラッ!!

アブソル 「!?」

フィーナ 「くっ!? 雨が…!?」

予想通り、さっきの『ふぶき』で、アブソル頭上の雨が霰に変わる。
こうなれば、アブソルも少しはダメージを受ける。
加えて、動きを一瞬止める効果もある。
連続で『まもる』は成功し辛い。

ハルカ 「フィオネ『みずのはどう』!!」
フィーナ 「アブソル『ふいうち』だ!!」

アブソル 「!!」

ヒュンッ! ドガァッ!!

フィオネ 「フィオー!!」

攻撃モーションに入った瞬間、アブソルは姿を消し、フィオネを吹き飛ばす。
何が起こったのか、一瞬わからなかった。
とてつもないスピードでアブソルは高速移動してフィオネに攻撃を加えたのだ。

ハルカ 「く…知らない技を考えていても仕方がない! フィオネ『たきのぼり』!」
フィーナ 「アブソル『アイアンテール』で弾き飛ばせ!」

フィオネ 「フィオー!!」

アブソル 「むんっ!!」

ドバッシャアアンッ!!

フィオネ 「フィーー!!」

アブソル 「ぐうぅっ!!」

互いに吹き飛ぶ。
攻撃は当たったはず…。

アブソル 「!? ぐぅ…!」

フィオネ 「フィ…フィオ」

ドサッ!

ハルカ 「!! ……」

フィオネは無造作に前のめりに倒れた。
体力の限界だ…ここまでね。

ハルカ 「お疲れ様、フィオネ」

シュボンッ!

私はフィオネをボールに戻す。
上出来だろう、これからが期待できるわね。
時間は少ないけど、できるだけこの子にも時間を割いてあげないと。

フィーナ 「…よくやった、アブソル」

シュボンッ!

フィーナちゃんもポケモンをボールに戻す。
やれやれ…とりあえず、こんな所でしょうね。
私はつかつかとフィーナちゃんの側まで歩く。

フィーナ 「…ハルカさん、あの」

ハルカ 「ほらっ、握手!」

フィーナ 「? ハルカさん…?」

私は笑って、右手を差し出す。
わけがわからないと言った表情のフィーナちゃんは、おずおずとためらいながら右手を差し出す。
私は、その右手をぎゅっと握り締めてあげた。

ハルカ 「…震えは、止まったわね?」

フィーナ 「…ハルカさん」

私がそう言うと、フィーナちゃんはハッとなって、私の顔を見る。
私は笑って答えてあげた。

フィーナ (そっか、ハルカさんは私のために)
フィーナ 「ハルカさん、私…」

ハルカ 「ほらっ、もうそろそろ行くわよ! コンテストが始まるわ」

そう言って、私はフィーナちゃんの手を引く。
全く、不器用ね。私もそうだけど。


キヨミ (ハルカちゃん、どんどん大きくなるわね)
キヨミ (あの、小さかったハルカちゃんが、いつの間にか皆を引っ張ろうとしている)
キヨミ (すでに、Lv以外の要素は私を超えているのかもしれない)
キヨミ (元々、バトルセンスはすこぶるいいみたいだしね…)

キヨハ 「……」

ヒビキ (…確かに強い。ルネのジム戦でてこずっていた頃に比べれば、大きな成長だ)
ヒビキ (だが、ミカゲとは比較にならんな…)

ノリカ 「はう…ハルカ様が負けてしまった」

サヤ 「……」


それぞれが、その場を離れていく。
さすがに会場の広場でバトルをしたのは目立ったようで、いくらか観客が集まっていた。
バトルが終われば、何事もなかったかのように散っていく。
後は、コンテストの再開を待つばかりね。



ミカゲ (…やっぱりつまらないわねぇ。あれじゃあ面白くないわ)
ミカゲ (面白いポケモンは見れたけど、トレーナーがまるで駄目ね)
ミカゲ 「はぁ…決勝までは楽しめそうにないわね」





………………………。





『時刻14:00 コンテスト会場・舞台』


司会 「決まったーーー!! 最初に本戦出場を果たしたのは、ミカゲさんだーーー!!」

ミカゲ 「………」

ミカゲは相変わらずつまらなさそうな顔で、退場していく。
結局、ここまで3回戦って、一度も相手から攻撃を受けなかった。
相手が弱いんじゃない…ミカゲがただ、強すぎたのだ。



………。



ワアアアァァァァァァッ!!

ノリカ 「ルカリオ『インファイト』!!」

ルカリオ 「バゥッ!!」

ドガガガガガガァッ!!

カイリキー 「カイ〜…」

ズウゥゥンッ!

司会 「カイリキー・バトルオフ! 次に本戦出場を果たしたのは、ノリカさんだーー!!」

ノリカ 「やったーー!! よくやったわねルカリオ!」

ルカリオ 「バゥ!」
『まだまだ、気を抜くな』

ノリカはルカリオを抱きしめて、喜ぶ。
素直に感情を表現する娘よね…ミカゲとは全く正反対ね。
ルカリオはどこから取り出したのか、スケッチブックに台詞を書いてるし。

ノリカ 「ハルカ様ーーーー!! 見てくれてますかーーー!!」

ノリカは大観衆の前で、そう叫ぶ。
は、恥ずい…せめて様付けは止めてよね。



………。



司会 「さぁ、ついに本戦への切符は残り1枚! 手にするのはどっちだーーー!?」
司会 「第2次予選、最終戦! サヤさん対クラギさん!」


サヤ 「…出てきて、『カビゴン』」

ボンッ!

カビゴン 「カンビ〜」

サヤちゃんは、カビゴンを繰り出し、臨戦態勢に入る。
カビゴンの調子はいい。
ここまで、パーフェクトに近いバトルで勝ち抜いてきた。
でも、相手も相当強い…果たして、どう出るのか。

司会 「ここまで、凄いパワーを見せてきたカビゴン! 次の相手にどう戦うのか!?」

クラギ 「出なさい、『ケッキング』!」

ボンッ!

ケッキング 「ケ〜ック」

白いコートに身を包む、ややボーイッシュな少女が出したのはケッキング。
父さんも使う、怠け者だ。
しかし、パワーはとんでもない…サヤちゃん、大丈夫かしら?

司会 「それじゃあ、行ってみよう! コンテストバトル・スタート!!」

ワアアァァァァッ!!

クラギ 「ケッキング『はかいこうせん』!!」

ケッキング 「ケッーーーック!!」

キュィィィィ…ドギュバァァァッ!!

ケッキングはいきなり遠距離から『はかいこうせん』で攻撃してくる。
ケッキングはどの道1回動いたら、すぐには動けないので相性のいい技だ。

サヤ 「! カビゴン『まもる』!!」

クラギ 「!?」

カビゴン 「カビ〜」

ピキィィンッ!!

司会 「おーっとぉ! カビゴン『まもる』で『はかいこうせん』を無力化ーー!!」
司会 「いきなり大技に出たクラギさん! これは裏目に出たーー!!」

カビゴンは『はかいこうせん』を無傷で乗り越える。
ケッキングはこれでしばらく動けない。
カビゴンのスピードを考えても、十分に攻撃チャンスはある。

ケッキング 「…ケ〜ック」

サヤ 「カビゴン『きあいパンチ』」

カビゴン 「カッビー!」

ズシンズシンズシンッ!!

サヤちゃんのカビゴンは舞台を揺らしながら、走る。
スピードは遅くても、十分に間に合う。
カビゴンは射程距離に入ると、寝そべっているケッキングの体に向かって、集中力を高めた拳を放つ。

ドッガァァァッ!! ズズズズドオオォッ!!

ケッキング 「ケ…ケクッ」

司会 「ケッキング・バトルオフ! 勝者サヤさん!!」

サヤ 「………」 ぺこり

サヤちゃんは、観客に一礼してカビゴンをボールに戻す。
結局、危なげなくクリアしてしまった。
まぁ、実力を考えたら、当たり前なのかもしれない。
サヤさんは特に表情を変えることなく退場した。


司会 「さぁ、ついに本戦への出場メンバーが出揃った!!」
司会 「まずは組み合わせの発表だけど、その前に休憩を挟むわね!!」
司会 「本戦開始は夕方の5時から! ちょっと長い休憩だけど、遅刻は駄目よ!?」
司会 「それじゃあ、まだまだテンション高めて行こうーー!!」

ワアアアアアアアアァァァァァッ!!



………。
……。
…。



『時刻16:00 コンテスト会場・控え室』


キヨミ 「さすがサヤちゃんね、見事な演技だったわ」

サヤ 「いえ、運がよかったんです。私はいつも通りにやっただけですから」

そう言って、サヤちゃんは謙遜する。
本人が本当にそう思っているかは疑問だけれど、サヤちゃんは決して運だけで勝ちあがったとは思えなかった。

ハルカ 「やっぱり、コーディネイターって、全然違う…バトルに華があるもんね」

フィーナ 「そうですよね…バトルって、勝負だから勝つことだけを普通考えますけど」

ノリカ 「魅せるバトルですからね! コンテストバトルは!!」
ノリカ 「う〜ん、本戦が待ち遠しい! 早くサヤと戦いたいな!!」

メフィー 「でも、その前にあのミカゲって人と当たっちゃうと、大変ですよね〜」

ノリカ 「それでも勝ちます! どの道、優勝は私が貰うんだから!!」

ノリカは強気に前向きに考える。
とんでもなくプラス思考ね。

ヒビキ 「…どの道、勝てないなら優勝は出来んだろうがな」

キヨハ 「…それよりも、組み合わせが決まったようよ」

ハルカ 「…あ」

ノリカ 「……」

サヤ 「…!」

私たちは、備え付けの液晶モニターを見て、組み合わせを確認する。
すると、注目の第1試合は…。

ハルカ (ノリカVSミカゲ…!)

メフィー 「…あ、当たっちゃいましたね」

ノリカ 「…ミカゲ、さんと」

ノリカは少なからず衝撃を受けているようだった。
覚悟はしていたはず、でもいきなりとはね。
本人はサヤと戦いたかった。
でも、ここで負けたら、その希望は叶えられない。

キヨハ 「…サヤちゃんは、第2試合。ミカゲかノリカちゃんと当たるのは2回戦ね」

サヤ (…ファイナルじゃ、なかったか)

ハルカ 「…? どうかしたの、サヤちゃん」

サヤ 「…いえ、何でもありません」
サヤ 「…ノリカ、私は信じてるから」

ノリカ 「…え?」

サヤ 「あなたが、上がってくるって…」

そう言い残し、サヤちゃんは部屋を出て行く。
思う所はあるのだろう。
でも、サヤちゃんはああ言った。
それは、ノリカと戦いたい…そう言う気持ちが、サヤちゃんにもあるということなのね。

ノリカ 「…サヤ」

ハルカ 「ほらっ、もっと気合入れなさい! そんなんじゃミカゲには勝てないわよ!?」

ノリカ 「ハ、ハルカ様…」

ノリカは瞳を潤ませ、私を見る。
全く、やっぱり子供ね。

ノリカ 「わかりました! 不肖このノリカ! ハルカ様のために勝ちます!!」

ハルカ 「全然わかっとらんじゃないか! この阿呆!!」

ビシィッ!!

私は乗りで思いっきりノリカの頭を引っぱたく。
しまった、思いっきりツッコンでしまった。
ノリカは前のめりに地面とぶつかる。
そのまま1秒ほど反応がなかったが、ノリカはすぐに起き上がる。

ノリカ 「ぽえあぱろぷぴぃ〜」

意味不明の単語を並べて、ノリカはふらふらと部屋を出て行った。
う〜ん、やりすぎたかも。

キヨミ (…よく、あれで立てたわね)
フィーナ (確実にKOビンタだったんだけどなぁ…)
メフィー (丈夫な体が羨ましい…)

キヨハ 「…ふたりとも、全力が出せるといいんだけどね」

ヒビキ 「…そうでなくても、あいつには勝てないだろうがな」

ハルカ 「…まるで、以前に戦ったことがあるかのような言い方ですね」

ヒビキ 「………」

私が突っ込むと、ヒビキさんは黙る。
もっとも、私はわかってて言っているんだけど。
ヒビキさんだって、少なからずショックを受けている。
それほど、ミカゲの強さはインパクトが強い。

ヒビキ 「…隠しても仕方あるまい。俺は、つい昨日ミカゲと戦った」

メフィー 「ええー!? あの人とですかー!?」

キヨハ 「…結果は、聞かなくてもわかるわ」

ヒビキ 「…察しの通りだ」

フィーナ 「………」

キヨミ 「…ヒビキ君でも、勝てないか」

キヨハ 「…まだまだ、私たちも成長する必要があるわね」

あれから、まだ強くなると言うのだろうか?
だったら、私は後どの位頑張ったらいいのか…。
気が遠くなりそうだけど、それが出来なければポケモンリーグの優勝は、無理…か。





………………………。





『時刻17:00 コンテスト会場・舞台』


司会 「さぁ、ついにグランドフェスティバルも大詰め!」
司会 「ここまで残った8人は、確実にホウエン地方のベスト8!!」
司会 「さぁ、最後まで気合を入れてアピールをしてね!! それじゃあ、第一回戦第1試合!!」
司会 「ノリカさん対ミカゲさん!!」

ワアアアアアァァァァァァァァッ!!

ノリカ (勝つのよノリカ! 絶対勝って、優勝するの!!)

ミカゲ 「うふふ…少しは楽しませてくれるといいんだけど」

司会 「ここまで、高い成績で上がってきたふたり! 果たして、勝負の行方は!?」
司会 「Hear we goーー!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!!

ハルカ 「……」
キヨミ 「……」
キヨハ 「………」
フィーナ 「頑張れノリカちゃーん!」
メフィー 「油断しないでーー!!」
ヒビキ (さて、ダブルバトルでの戦いを見せてもらうとするか)

ついに始まった、ノリカとミカゲの戦い。
本戦はダブルバトル。
今までと違って、ポケモンのパワーだけで押すのは難しい。
ミカゲがどんな戦法を使うのか、興味はある。

ノリカ 「……」

ノリカは胸に右手を当て、目を瞑って落ち着く。
あれだけ落ち着きのない娘が、落ち着こうとしている。
それだけ、ミカゲが強いことも感じているのね。

ミカゲ 「…出なさい『マニューラ』、『チェリム』」

ボボンッ!!

マニューラ 「マニュ」
チェリム 「……」

ミカゲは先にポケモンを出してくる。
1匹は、予選で出てきたマニューラ。
もう一匹は…見たこともない、まるで茄子の様な姿にも見えるポケモンだった。


キヨハ 「…チェリムね、草タイプのポケモンで天候によっては姿を変えるポケモンよ」

ハルカ 「…それって、ポワルンみたいな?」

確か、一度見たことがある。
天候で姿や性格まで変わるポケモン、ポワルン。
あれは、確か特性『てんきや』で変化するらしいけど…。

キヨミ 「…確か『ネガフォルム』、だったっけ?」

キヨハ 「そうよ、あの形態はそう呼ぶわ」

フィーナ 「…どんな技を使うんだろ?」

メフィー 「初めて見ますもんね…」

ヒビキ (なるほど…ダブルに置いて、これほど脅威のあるポケモンは多くないだろうな)


ノリカ 「…先に出すなんて、余裕ね。だったら、こっちは!」

ボボンッ!

バシャーモ 「シャモッ!」

ルカリオ 「バゥ!!」


ハルカ 「おおっ、使うポケモンまでパクリ!?」

ノリカが出したのは、ご存知バシャーモと第2次予選で活躍したルカリオ。
どっちも気合十分で、やる気は満々。
相性を見ても、バシャーモは草、悪、氷に強いから、頼もしいわね。

キヨミ 「…相性だけならいいけど」

キヨハ 「ええ…まずチェリムが取るであろう行動は」

ミカゲ 「チェリム…『にほんばれ』よ」

チェリム 「チェリ〜♪」

ノリカ 「バシャーモ! チェリムに『かえんほうしゃ』! ルカリオはマニューラに『しんそく』!!」

バシャーモ 「シャモーー!!」

ゴオオオオォォォッ!!

ルカリオ 「バゥッ!!」

ギュンッ!!

まずはノリカが2体同時に攻撃を開始する。
ミカゲはやや遅れてマニューラに指示を出す。

ミカゲ 「マニューラ、チェリムの足元に『れいとうビーム』」

マニューラ 「マニュッ!」

コオオオキィィィッ!!

ルカリオ 「! バウッ!」

ドゴォッ!!

マニューラ 「マ、マニュッ!!」

マニューラはルカリオの攻撃を受けて、後ろに吹っ飛ぶ。
しかし、チェリムの目の前に氷柱が立ち、『かえんほうしゃ』を遮った。

司会 「いきなり激しい攻防!! マニューラがダメージ覚悟でチェリムを守ったぁ!!」
司会 「これで一気に会場は日差しが強くなったぞーー!?」

カァァァァァッ!!

チェリム 「チェリ〜〜!!」

パァァァッ…!


ハルカ 「あ、あれが変化!?」

キヨハ 「…『ポジフォルム』よ、これで一気にミカゲのポケモンはパワーアップするわね」

キヨミ 「『フラワーギフト』…」

フィーナ 「…な、何ですそれ?」

メフィー 「聞いたことないです…」

ヒビキ 「…チェリムの特性だ。日差しが強くなると、チェリムはあの形態になり、『フラワーギフト』と言う特性を発揮する」

キヨハ 「効果は、ポケモンの『こうげき』と『とくぼう』を高める」
キヨハ 「ダブルバトルにおいては、味方のポケモンにも影響を与えるわ」

ハルカ 「って言うことは…あのマニューラは」

フィーナ 「パワーアップ!?」


ミカゲ 「マニューラ、ルカリオに『かわらわり』」
ミカゲ 「チェリムは『てだすけ』よ」

チェリム 「チェリチェリ♪」

チェリムはその場で踊るような動きでマニューラを応援する。
すると、マニューラの周りに何やらオーラのような物がまとわり着く。
そして、凄まじいスピードでルカリオに接近し、右爪を頭上から振り下ろす。

ノリカ 「まずい! ルカリオ『こらえる』!! バシャーモはマニューラに『ブレイズキック』!!」

ドガガァッ!!

ルカリオ 「バウゥゥッ!!」

ルカリオは気合を入れてマニューラの攻撃を『こらえる』
ダウンすることはなく、何とかルカリオは持ちこたえて見せた。
そして、攻撃の終わったマニューラに向かってバシャーモは空中に跳んで蹴りを放つ。

ミカゲ 「チェリム、バシャーモに『ソーラービーム』」

チェリム 「チェリーーー!!」

ドギュアアアアアアァァァッ!!

バシャーモ 「!?」

ズドオオオオオオオオオオォォォンッ!!

ノリカ 「バシャーモ!?」

空中に跳んだバシャーモをチェリムが的確に狙撃する。
いくら効果が今ひとつとはいえ、バシャーモは後ろに吹き飛んでしまった。

ノリカ 「くっ、ルカリオ! マニューラに『インファイト』!!」
ミカゲ 「マニューラ『氷のつぶて』」

マニューラ 「マニュッ!」

ドドドッ!!

ルカリオ 「バゥーー!!」

ズシャアッ!!

ノリカ 「ルカリオ!?」

司会 「あーっとぉ! マニューラの素早い攻撃! ルカリオついにバトルオフ!!」
司会 「これで、2対1だ! ノリカさん追い詰められたーー!!」


ハルカ 「…つ、強い」

フィーナ 「…まるで、隙がない」

メフィー 「……」

キヨミ (ノリカちゃんほどのコーディネイターでさえ、手も足も出せないのね)

キヨハ (残りはバシャーモだけ…いくら相性が良くても、試合がひっくり返るとは、残念だけど思えない)

ヒビキ (やはり、並大抵の強さではない…2体で1体倒すだけでも、至難だろうな)


ノリカ 「私は諦めない! バシャーモ、マニューラに『スカイアッパー』!!」

ミカゲ 「マニューラ『つばめがえし』…」

バシャーモ 「シャモーー!!」

マニューラ 「マニュッ!」

ヒュンッ! ズバァァッ!!

ノリカ 「バシャーーーモーーー!!!」

ノリカの叫びが会場に響く。
マニューラは一瞬でバシャーモの前から姿を消し、逆さまの状態で空中から、バシャーモの背後に現れる。
そして、前に突進するバシャーモの背中を両爪で切り裂いた。
背中を切り裂かれたバシャーモは、ゆっくりと前のめりに倒れる。

ズゥゥンッ!!

司会 「バシャーモ・バトルオフ!! 勝ったのは、ミカゲさんだーーー!!」

ナミ 「素晴らしい試合でした! どちらもよく戦ったと思います!」

ゴンゾウ 「いやぁ…思わず見とれてしまいました」

テスタ 「本当に素晴らしい! 負けたノリカさんのポケモンも、よくあそこまで育てられたものです」
テスタ 「勝ったミカゲさんのポケモンは、非の打ち所がない! 賢さ、美しさ、格好良さ、どれを取っても文句のつけようがありませんでした!!」

司会 「見事勝利した、ミカゲさんに皆拍手!! 負けたノリカさんにも、声援を送ってあげて!!」

ワアアアアアアアァァァァァァッ!! パチパチパチパチパチパチパチッ!!

ノリカ 「……っ」

ミカゲ (…ま、こんな物でしょうね)

カツカツカツ…

ミカゲはポケモンをボールに戻すと、すぐに退場する。
そして、ノリカは…

ノリカ 「………」

数秒、その場で立ち尽くし、生気の抜けたような顔で、退場していった…。



………。



サヤ (…ノリカ、駄目だったのね)
サヤ (………)

私は、どうすれば勝てるのをかを考える。
でも、何も思い浮かばない。
ノリカが何も出来なかったのなら、私もきっと同じ。
でも、負けたくはないし、負ける気はない。
勝つためにここまで頑張ってみた…でも、勝つその方法が見つからない。
やれるだけのことをやって、負けるのは恥ではないけど、敗者には何も残らないのも勝負。
考えても駄目…だったら、もう戦うか逃げるかの二択しかない。

サヤ 「…ごめんね、ノリカ。私がもっと強かったら…仇を討ってあげるって言えるのに」

あのバトルを見た後で、その台詞を吐く気にはなれなかった。
言って、負ければ恥をかくだけ。
勝てる可能性の方がきっと少ない。
だから…

サヤ (いつも通りやろう…私は、ポケモンのために…ポケモンは、私のために…)



………。
……。
…。



『時刻17:30 コンテスト会場・舞台』


司会 「さぁ、お次はセミファイナル!! 第1試合はミカゲさん対サヤさん!!」

ワアアアアアァァァァァァッ!!



………。



ノリカ 「……サヤ」



………。



サヤ 「…出てきて、『エイパム』、『カビゴン』」

ボボンッ!

エイパム 「エイパッ」
カビゴン 「カビ〜」

サヤちゃんは、いきなりポケモンを出す。
ミカゲはまるで動じない。
まるで作業をこなすかのような動作で、ボールをふたつ放った。

ボボンッ!

マニューラ 「マニュ」
チェリム 「……」

司会 「さぁ、準備はいいか〜!? コンテストバトル! スターート!!」


サヤ 「…エイパム『スピードスター』」
サヤ 「カビゴンはチェリムに『だいもんじ』」

エイパム 「エイッパ!!」

ヒュヒュヒュッ!!

エイパムは尻尾を薙ぎ払う様に動かし、無数の星を飛ばす。
あの技は回避が不能。
まずは出鼻を挫こうってわけね。

ミカゲ 「マニューラ、星に『こおりのつぶて』、チェリム『にほんばれ』」

マニューラ 「マニュ!!」

ヒュヒュヒュッ!! ドガガガガガッ!!

司会 「これは鮮やか!! 正確無比な『こおりのつぶて』が、『スピードスター』を全て打ち落とす!!」
司会 「スピード、パワー、どちらを取っても、ミカゲさんのマニューラの方が上かー!?」

カビゴン 「カ〜ビーーー!!」

ゴォゥッ!!

遅れて、カビゴンが炎を口から放つ。
大技だけに、当たれば威力は大きい。
チェリムはまだモーションに入ってない。


ハルカ (って、まさか!?)

いくらなんでもあのカビゴンより行動が遅いとは思えない。
と言うことは、チェリムが狙っているのは…。

チェリム 「…!」

ゴォバアアアアァァァァッ!!

司会 「今度はチェリムが魅せる!! 『にほんばれ』の太陽で『だいもんじ』を掻き消したぁ!!」
司会 「サヤさん、先制攻撃が仇になったか!? ポイントがどんどん減っていくーー!!」

チェリム 「チェリ〜♪」

そして、チェリムはフォルムチェンジして、強くなる。
同時に、マニューラの攻撃力も増加してしまった。

サヤ 「…エイパム『マニューラ』に『かわらわり』! カビゴンはマニューラに『のしかかり』!」

エイパム 「エイパッ!」

カビゴン 「カンビカンビ〜」

スタタタタッ! ドスンッ! ドスンッ!

素早いエイパムに対して、鈍足なカビゴン。
この微妙なテンポ差が、逆に怖い。

ミカゲ 「…マニューラ、エイパムに『かわらわり』、チェリムはカビゴンに『やどりぎのタネ』よ」

マニューラ 「マニュッ!!」

バッ!

エイパム 「エイパーッ!!」

司会 「おーっとぉ! 互いに同じ技で対決!! 決めるのはどっちだーー!?」

ドッガッァッ!!

エイパム 「エ、エイパーー!!」

マニューラ 「マ、マニュッ!」

エイパムは尻尾で『かわらわり』、マニューラは右腕で『かわらわり』を放つ。
互いの技がぶつかり合い、押し合いになった。

チェリム 「チェリ〜♪」

ヒュッ!

カビゴン 「カ、カビ〜…」

シュルシュル!

チェリムはカビゴンに『やどりぎのタネ』を放ち、種はカビゴンにくっつくと、一気に成長してカビゴンを縛る。
とはいえ、動きを止めるほどの効果ではなく、徐々に体力を奪い取るのが目的の技だ。
カビゴンは一瞬動きを止めるが、すぐに走り出す。
そして、エイパムとぶつかりあっているマニューラに向かって、のしかかろうとする。

サヤ 「エイパム、退いて!」

ミカゲ 「マニューラ、カビゴンに『つばめがえし』よ」

エイパム 「エイパッ!」

マニューラ 「マニュッ!」

ヒュンッ!

サヤ 「カビゴン、後ろに『のしかかり』!」

ミカゲ 「何ですって…?」

カビゴン 「カンビ〜」

マニューラ 「マ、マニュッ!?」

ズバァッ!

カビゴンは顔面に『つばめがえし』をモロに食らう。
しかし、そのまま倒れこんでマニューラを押し潰した。

ズッドォォォォンッ!!

爆発音に近い地響き。
舞台に穴が空くのでは?と思うほどの衝撃に見えた。
さすがにこれでマニューラは…

ミカゲ 「チェリム、カビゴンに『ソーラービーム』!」

チェリム 「チェリーー!!」

ギュアアアアアアァァァァァッ!!!

カビゴン 「カ、カビーーー!!」

ズッドオオオオォォンッ!!

カビゴンは『ソーラービームを』食らい、壁際まで吹き飛ぶ。
しかし、まだ大丈夫なのか、カビゴンは首を振って起き上がる。

サヤ (チャンスはもう少ない! ここで決める!)
サヤ 「エイパム、チェリムに『ダブルアタック』!!」
サヤ 「カビゴンはチェリムに『だいもんじ』!!」

エイパム 「エイパッ!」

カビゴン 「カビー!」

サヤちゃんは勝負を仕掛ける。
マニューラはまだダウンを宣告されていない、でもサヤちゃんはチェリムに照準を絞った。
マニューラはさっきののしかかりが効いて、まだ動けない。
今の内にどちらかを叩くのが勝利への近道。

ミカゲ 「甘いわね…チェリム『まもる』、マニューラはカビゴンに『かわらわり』」

サヤ 「!?」

チェリム 「チェリ〜♪」

ピキィィンッ!!

エイパム 「エ、エイパッ!?」

エイパムの技が弾かれる。
そして、ほぼ同時にカビゴンの炎がチェリムを襲う。

ゴオオオゥッ!!

チェリム 「チェリ〜☆」

司会 「お〜っとぉ、サヤさん痛恨のミス!! ここで攻撃は防がれてしまったぁ!!」
司会 「そして、マニューラはその間に起き上がる!」

マニューラ 「マニュッ!」

ドッガァッ!!

カビゴン 「カンビーー!!」

ズウウウウウウウゥゥゥンッ!!

起き上がったマニューラは、すぐにカビゴンの顔面を殴りつけた。
効果抜群の技にカビゴンはダウンしてしまう。
起き上がる様子は…ない。

司会 「カビゴン・バトルオフ!! これで一気に不利になったサヤさん!! 挽回できるのかぁ!?」

サヤ 「…ごめんなさいカビゴン、私がしっかりしていれば」

ミカゲ 「……」

サヤちゃんは抱きしめるようにカビゴンのボールを握り締めた。
対するミカゲは、そんなサヤちゃんをあざ笑うかのような、微笑を見せる。


ハルカ 「頑張れサヤちゃん! まだ負けたわけじゃないわよ!!」

フィーナ 「そうだーー! 頑張れサヤ!!」

メフィー 「ふぁーいとっ!!」

キヨミ (どんな時も希望は捨てない…それがポケモントレーナー)
キヨミ (あなたとミカゲは違うわ…それを忘れないでね、サヤちゃん)

キヨハ 「…形勢はどう考えても不利」

ヒビキ 「勝ち目はないに等しい…が」


サヤ 「…!」

ミカゲ 「……?」

サヤちゃんの表情は死んでない。
むしろ、強い意志を感じる。
そんな顔を見てか、ミカゲは不思議そうな表情をした。

サヤ 「エイパム、マニューラに『かわらわり』!」

エイパム 「エイパッ!」

ミカゲ 「マニューラ、『つじぎり』」
ミカゲ 「チェリムは『てだすけ』よ」

マニューラ 「マニュ!」
チェリム 「チェリ!」

タタタタッ!!

エイパムとマニューラが互いに接近する。
スピードは明らかにマニューラの方が速い。
更にチェリムがマニューラを『てだすけ』し、攻撃力は上がる。
まとも食らったら、間違いなく倒れる。

サヤ 「エイパム、マニューラの手を狙うのよ!」

エイパム 「! エイパッ!!」

ガキィィ!!」

司会 「おーっとぉ! エイパム、マニューラの右爪を右腕の『かわらわり』で止めたぁ!」
司会 「しかし! マニューラのパワーが凄い!! 徐々に押されているぞ〜!?」

エイパム 「エ、エイパッ!」
サヤ 「頑張ってエイパム! 尻尾で『ダブルアタック』!!」

エイパム 「エ、エイパーー!!」

ドガァッ!!

マニューラ 「マニュ〜!!」

司会 「これは見事! エイパム、器用な尻尾でマニューラの顔面を殴りつけたぁ!!」
司会 「マニューラ、これに怯んで後ろに退がる! 絶好のチャンスだぁ!!」

エイパム 「エ〜イ〜パッ!!」

ドッガァッ!!

マニューラ 「マ、マニューー!!」

ズザザザザァッ!!

マニューラは2発目も食らって派手に吹っ飛ぶ。
さすがにこれは立てない…はず。

司会 「マニューラ・バトルオフ!! ついにミカゲさんのポケモンが倒れてしまったぁ!!」
司会 「これで、互いに残ったのは1体! だが、チェリムはまだまだ元気! 一方エイパムは……おおっ!?」

カァァァァァッ!!

サヤ 「…!? この『気』は、まさかエイパム!?」


ハルカ 「…エ、エイパムが!」

フィーナ 「姿を、変える!?」

キヨハ 「…進化よ、まさかこのタイミングで」

キヨミ 「これも、サヤちゃんが引き寄せた運かもしれないわね」

ヒビキ 「エイパムの進化系は…確か」


エイパム? 「エテボーーー!!」

エイパムの尻尾がふたつに増え、体も少し大きくなった。
益々ひょうきんな顔になったのが気になるけど、パワーは上がっていそうね。

ハルカ 「って言うか、何てポケモン?」

フィーナ 「え〜っと…」

メフィー 「何でしょう〜?」

キヨミ 「…『エテボース』、だったかしら?」

キヨハ 「ご明察…その通りよ」
キヨハ 「エイパムが『ダブルアタック』と言う技を覚えていると、進化することができるそうなの」
キヨハ 「問題は『ダブルアタック』と言う技は、シンオウ地方でしかほとんど見ることができない、ゆえに他の地方では覚えることすら困難な技よ」
キヨハ 「サヤちゃんの、努力が…実ったわね」

ヒビキ 「シンオウに行ったことがあると言っていたからな…これも必然だったのかもしれんな」


ワアアアアァァァァッ!!

ミカゲ 「…進化ですって、くだらないわね、こんな時に」
ミカゲ 「どの道、残り少ない時間で、何をするつもりなのかしら?」

サヤ 「私は、諦めません!」

ミカゲ 「!?」

サヤちゃんは強くそう言った。
珍しく、サヤちゃんが感情を表に出した瞬間だった。
さすがのミカゲも、表情を曇らせる。

サヤ 「ポケモンは私に応えてくれた、今度は私が応える番!」
サヤ 「エテボース『ダブルアタック』!!」

エテボース 「エテッ!!」

司会 「俄然ヒートアップしてきた、このバトル! 残り時間はもうほとんどありません! どうなるこの勝負!?」

ミカゲ 「…クスッ、だから甘いのよ。チェリム『まもる』」

チェリム 「チェリ〜♪」

ピキィィィンッ!!

エテボース 「エテッ!?」

またしても、『まもる』で防がれる。
エテボースは左の尻尾で殴りつけるが弾かれてしまった。

司会 「これはまずい! サヤさんのポイントは更に減って時間も残り10秒!」

サヤ 「まだよ! エテボース2発目をチェリムの足元に!」

エテボース 「エッテボーー!!」

ズガァッ!!

チェリム 「チェリ?」

ミカゲ 「一体何を…っ!?」

ゴバァァァァッ!!

司会 「こ、これはっ!? チェリムの足元から煙のようなものが!?」


キヨハ 「あそこは、確か…前にカビゴンが『だいもんじ』を放った辺り」

キヨミ 「焦げた床の灰を巻き上げた?」


司会 「残り時間は…5、4、3!」

サヤ 「エテボース! 『きあいパンチ』!!」

チェリム 「!?」

エテボース 「エッテボーーーー!!」

ミカゲ 「…チェリム『フラッシュ』」

チェリム 「チェリ〜〜♪」

ピカアアアアアアァァァァァァァッ!!

サヤ 「!?」

エテボース 「エ、エテーーッ!!」

ビーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!

舞台が発光したかと思うと、大きな音が鳴り響く。
それは、時間切れの合図だった…



………。



司会 「ここで無念のタイムアーーーーーップ!!!」
司会 「サヤさん、残念!! 後一歩、届かなかったーーー!!」

サヤ 「………」


ハルカ 「…あ」

エテボースの尻尾は、チェリムの眼前まで迫っていた。
ほんの一秒の差。
あの光がなければ、多分決まってた…


司会 「判定は……ポイント、67対31でミカゲさんだーーー!!」

ワアアアアアアアアアァァァァァァァッ!!!

場内は、今までにない声援を送られる。
多分、事実上の決勝戦と言っていい。
これで、サヤちゃんのコンテストは…終わり、か。


司会 「最後まで健闘したサヤさんに皆拍手!!」
司会 「そして、この戦いを勝利したミカゲさんにも大拍手!!」

ウオオオオオオオオオオオオォォォッ!! パチパチパチッ!!!!

ナミ 「素晴らしいバトルでした! 今までこんな凄いコンテストバトルは見たことありませんでした!」

ゴンゾウ 「いやぁ、どっちも本当に素晴らしい…もう言うことがありません」

テスタ 「互いに、素晴らしい演技の応酬、グランドフェスティバルに恥じない、名勝負でした!!」


ワアアアアァァァァァァァァッ!!!



………。
……。
…。



『時刻17:40 コンテスト会場・選手控え室』


サヤ 「…すみません、負けました」

キヨミ 「いいのよ、あなたはよく頑張ったわ」

ハルカ 「そうそう! あそこまでやれば十分!」
ハルカ 「って、私が言うのもなんだけど、ね」

フィーナ 「ハルカさんだったら、絶対悔しがりますもんね…」

メフィー 「闘う女ですものね♪」

ハルカ 「……」

ノリカ 「ううう、まさかサヤまで負けるなんて…はぁ、今回は何だか散々」

キヨハ 「…そろそろファイナルね」

ヒビキ 「ミカゲの勝ちは決まっている、見なくても結果はわかりきっているだろうな」

結局、ミカゲのファイナルステージは、控え室のモニターから見ることになった。
相手はすでにスタンバっている、ミカゲはまだ現れていないようだった。

ハルカ 「あれ? 遅いわね、ミカゲ」

フィーナ 「もう、時間なのに…」


司会 『ミカゲさーん!? どこに行ったんですかーー!?』

スタッフA 『駄目です、どこにもいません!』

スタッフB 『…いなくなってしまった』


ハルカ 「…まさか」

キヨミ 「…ボイコットしたわね、逃げたとも言うけど」

キヨハ 「…ミカゲらしいわね、やることやったらサヨナラってことね」

フィーナ 「うわ…タチ悪ぅ」

メフィー 「最悪のファイナルですね…」



………。



結局、制限時間内にミカゲは現れず、特に目立ちもしなかったコーディネイターが表彰されると言う、何とも言えない結果が残ってしまった。
熱くなっていた会場も、すっかり冷め切り、今大会は歴史上でも、別の意味で語り継がれるであろう、伝説的な日となった。





………………………。





『時刻19:00 ?????』


研究員 「まぁ、こんな所でしょうね」

総帥 「ふん、くだらんな…あの程度のお遊びでは、最良の結果は出はしない」

研究員 「ま、まぁまぁ…これも本番への調整ですから」
研究員 「この調子なら、ポケモンリーグも安定でしょう。ミカゲは晴れてホウエン最強になりますよ」

総帥 「…くだらん、たかだかホウエン地方で最強なったからと言って、私の望むサンプルにはならん」

カツカツカツ…

そう言い残して、総帥は部屋を出て行く。
やれやれ…厳しいお方だ。
ミカゲも、これじゃあ報われないなぁ。

研究員 「…あ〜あ、総帥は何考えてるのかわからないし、ミカゲはいつ『暴走』するかもわからないし」
研究員 「…不確定要素が多いね、特に今回は」

そう呟き、僕は机に置いてあったミルクチョコをかじる。
そして、僕はあるモニターに映る数値に目をやった。



『38%……精神面は問題なし、肉体面にやや影響あり』



…To be continued




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