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POCKET MONSTER RUBY



第62話 『本当の強さ』




『4月1日 時刻13:30 ポケモンリーグ・食堂』


ハルカ 「はぁ…」

フィーナ 「ハ、ハルカさん、落ち込まないで」

メフィー 「そうですよ〜…たかだかワースト1位になったからって!」

ボグシャアッ!!

フィーナ 「貴様〜! いい加減にしろ!!」

メフィー 「Hiyhaaaaaaaaa!!」

ズルズル…

またしても、フィーナちゃんに引きずられるメフィーちゃん。
はぁ…帰って疲れる。
何を隠そう、私はワースト1位になってしまったのだ。
そのLv数値は何と55…ワースト2位でさえ、Lv60はあるのに、だ。
これはさすがに落ち込んでしまう。
いくら、チャンピオンロードではブランクを埋めるための過程だったとはいえ、この結果とは。
下手をしたら、チャンピオンロードで戦ったポケモンたちの方がLvは上がっている可能性があるわね。

ノリカ 「大丈夫ですよハルカさん! きっとハルカさんならどうにかなります!!」

サヤ 「そうですよ、自分を信じてください」

ハルカ 「ふたりとも…ありがとう」

心底そう思う。
こういう時、心から励ましてくれる友人は大きな存在だ。

ハルカ 「…ところで、そこのバッタ者は誰?」

私はサヤちゃんの後ろに隠れている、サヤちゃんのパクリを指差してそう聞く。
すると、サヤちゃんはバッタ者を前に出し。

サヤ 「カタナ、自己紹介」

アムカ 「うう…カタナじゃないもん。アムカだもん」

ハルカ 「…で、お名前は?」

別にロシアンルーレットではないが、私は多少凄んでそう聞いてみる。
すると、カタナだかアムカだかのバッタ者は答える。

アムカ 「だから『アムカ』」

ハルカ 「アムカでいいのね?」

サヤ 「………」

ノリカ 「…何で、ふたつも名前があるの?」

それはもっともな質問。
すると、アムカちゃんはやや膨れ面で答える。

アムカ 「…だって自分の名前嫌いだもん」

ハルカ 「親から貰った名前を、何と心得るか貴様…」

思わず説教をしたくなる。
私も、お世辞に自分の名前が好きなわけじゃないけど、嫌いではない。
ましてや、嫌いだからと言って、あっさり別の名を名乗ろうとは言語道断。

ハルカ 「全く…最近の若い者は…ブツブツ」

ノリカ 「ま、まぁまぁ…ハルカさん、爺臭いですよ?」

ハルカ 「ぐさ…爺」

心に刺さる言葉だ。とはいえ、否定もできない。
最近、変に面白キャラになりつつあるから、気をつけないと。

ハルカ 「そういえば、キヨミさんたちは?」

ノリカ 「え? 見てませんけど…」

サヤ 「…キヨミさんとキヨハさんは、それぞれ特訓を始めているみたいです」
サヤ 「ヒビキさんも、ひとりで特訓に向かいました」

ハルカ 「うわ…私も頑張らないとダメかなぁ」

ノリカ 「そんなことないですよ! ハルカさんにはハルカさんのペースがあります!」
ノリカ 「今更慌てて訓練したって、ポケモンは大して強くはなりませんよ」

サヤ 「その通りですね、むしろ…このタイミングで特訓をするということは、トレーナーとの息を合わせるためのもの」
サヤ 「本番に向けてのリハーサル…と、コーディネイターなら言うでしょう」

アムカ 「うにゅ…よくわかんない」

ハルカ 「なるほどねぇ…コーディネイターならでは、か」
ハルカ 「だったらさ、食事の後でいいから、ふたりのコンテストバトル見せてよ!」

私は突然そんなことを言い出す。
結局、グランドフェスティバルでは、ふたりの戦いは見れなかった。
それだけに、ふたりがどんなバトルをするのか気になる。

ノリカ 「え? 別にいいですけど…サヤは?」

サヤ 「…異存はありません。ハルカさんが見たいと言うなら」

アムカ 「わっ…サヤ、戦うの?」

サヤ 「…ええ、コンテストバトルだけどね」

サヤちゃんは、アムカちゃんに笑いかけてそう言う。
こうして、いきなりふたりの対決が実現されることになった。



………。
……。
…。



『同日 時刻14:00 ポケモンリーグ・自由公園』


私たちは、ポケモンリーグ敷地内にある、巨大な自由公園にやって来た。
主に、草バトル等をやるのに打ってつけらしいので、利用させてもらうことにした。
周りを見ても、他にトレーニングをしたり、バトルしたりの連中は結構いる。
これなら、そんなには目立たないだろう。

ハルカ 「えっと…そう言えば、審判はどうするの?」
ハルカ 「コンテストバトルだと、ポイント計算もいるだろうし…」

? 「ほな、ワイがやったろか?」

ハルカ 「へ?」

いきなり私の背後からそんな声が聞こえる。
しかも関西弁…懐かしい響きだ。
振り向くと、そこには男がひとりいた。
細い笑い目に、短めの髪をボサボサにし、やや茶髪に染まっている。
服装は、アバウトな無地の黒いTシャツに青のジーパン。
見た目は単なる観光客…と言った感じだけど、腰に下げられている6個のモンスターボールが、全てを物語っていた。

男 「何や、人の顔をジロジロ見てからに…惚れたらあかんで?」

ハルカ 「惚れるかっ!」

思いっきりツッコム。
う〜む、初対面の相手にはやや失礼だったか?

男 「はははっ、おもろいな自分! 結構筋あるで」

ハルカ 「そ、それはどうも…」

う〜む、またしても面白キャラの傾向が…。
ちょっと自粛しよう。

ノリカ 「でも、お兄さん、審判なんて出来るんですか?」

男 「見くびったらアカンで…一応、コーディネイターやしな」

サヤ (…この人、どこかで?)
アムカ (むぅ…何か引っかかるんだけど)

まぁ、コーディネイターなら心配はなさそうね。
断る理由もないし、頼みますか。

ハルカ 「それじゃあ、お願いします…ええと」

男 「ゴウスケや」
男 「一応、ジョウト地方『コガネシティ』出身…トレーナー兼コーディネイターや」

ハルカ 「トレーナー兼!?」

ノリカ 「コーディネイター…ミカゲみたい」

ゴウスケ 「…ミカゲ?」

ノリカ 「あ、いや…こっちの話です」
ノリカ 「えっと、私ノリカって言います! 一応コーディネイターです!」

ゴウスケ 「よろしゅう、君の事は知ってるで。グランドフェスティバル、残念やったな」
ゴウスケ 「まぁ、相手が悪いわ…あらあかん、Lvが違いすぎや」
ゴウスケ 「そっちのは、サヤちゃんやったか?」

アムカ (む? 僕と間違えてるな?)
アムカ 「は〜い! 私、サヤって言います!!」

サヤ 「………」
ノリカ 「……」
ハルカ 「……」

何故か黙る私たち。
イメージが違いすぎる。
しかし、ゴウスケさんはいともたやすく。

ゴウスケ 「嘘言うたらあかんわ…サヤちゃんは目を瞑っとる方や」
ゴウスケ 「付け加えるなら、君みたいにハキハキしとらん」
ゴウスケ 「おっと、本人には失礼やったな…堪忍」

サヤ 「いえ…見事な洞察力、感服いたします」

サヤちゃんはゴウスケさんを褒める。
う〜む、私でも騙されないとは思うんだけど…。
知らない人が見たら、間違えるのか。

アムカ 「うう…どうせ僕はおしとやかじゃないもん」

ゴウスケ 「で、こっちの娘は?」

サヤ 「この娘は…カ」
アムカ 「アムカです!!」

サヤちゃんが代弁する前に、自分で言う。
よっぽど嫌なのね、自分の名前。

ゴウスケ 「アムカちゃんか…よろしゅう」
ゴウスケ 「ほな、自己紹介も終わったし、始めよか」

ハルカ 「あ、いや、ちょっと…」

サヤ 「それじゃあ、シングルとダブル、どっちにする?」

ノリカ 「あんまり長引かせたくないし、シングルにしよ!」

ゴウスケ 「よっしゃ! ほなふたりともポケモンを!!」

ハルカ 「あーのーーー!!」

アムカ 「サヤ頑張れーー!!」

サヤ 「『ミルタンク』…お願い」

ボンッ!

ミルタンク 「ミルッ!」

ノリカ 「任せたよ、『ノクタス』!!」

ボンッ!

ノクタス 「ノック!」

ハルカ 「あのーーーーー!! まだ!! 私の自己紹介が終わって…」

ゴウスケ 「ちょっと静かにしてぇなハルカちゃん…やかましいわ」

ハルカ 「って、皆が無視するからでしょ!? まだ私の自己紹介が終わってないのに!」

ゴウスケ 「はいはい、ほなよろしゅうハルカちゃん」

ハルカ 「ああ、これはどうも…って! 何で私の名前しってるんですか!?」

ゴウスケ 「そら、有名やさかい。ジョウト地方で世界チャンピオンの名前知らん奴は、ほとんどおらへんよ」
ゴウスケ 「しかも、コガネシティの人間ならなおさらや」

そ、そうか…そう言えばそうね。
よく考えれば、そうなのね。

アムカ 「世界チャンピオンってなぁに?」

ゴウスケ 「ああ、この人はな…世界で一番強い人なんや」
ゴウスケ 「もう、ごっつ強いねんで! ワイなんか一捻りや!」

アムカ 「へぇ〜…弱そうなのに」

ハルカ 「ぐさ…」

そうか、弱そうなのか私は。
まぁ、見た目はこの際置いておこう。

ゴウスケ 「さて、ほな…スタンバイも出来てるみたいやし、始めよか!」

こうして、やや無理矢理だが、ふたりのコンテストバトルが始まった。

ノリカ 「先制いただき! ノクタス『ニードルアーム』!!」

サヤ 「ミルタンク『でんじは』」

ミルタンク 「ミル〜」

ビビビビッ!!

ノクタス 「ノ、ノクッ!!」

ノリカ 「しまった!?」

ゴウスケ 「おお、いきなりサヤちゃんのポイントやな」
ゴウスケ 「さぁ、気張りぃや〜」

ノリカ 「く…ノクタス『すなあらし』!!」

ノクタス 「ノ、ノクッ!」

ゴォォォッ!!

ノクタスは痺れながらも『すなあらし』を放つ。
これで、いきなりフィールドは『すなあらし』になった。

サヤ 「…私に目くらましは通用しないって、忘れたの?」
サヤ 「ミルタンク、左10度の角度に『れいとうビーム』!」

ミルタンク 「ミル〜!!」

ノリカ 「そんなの、初めからわかってるに決まってるでしょ!!」
ノリカ 「ノクタス、『ふいうち』!!」

サヤ 「!? その技は…!」

ノクタス 「ノーーック!!」

ドガァッ!!

ミルタンク 「ミルーー!!」

ノクタスは痺れているにも関わらず、高速でミルタンクとの距離を0にして襲い掛かった。
不意を突かれたミルタンクは、直撃を受けて怯んでしまった。

ゴウスケ 「なるほど、『すなあらし』は『ふいうち』への布石か…」

ハルカ 「さすが、コーディネイター…あんな技の連携もあるのね」

アムカ 「すご〜い」

サヤ 「く…ミルタンク『のしかかり』!」

ミルタンク 「ミルッ!」

ピョン…ズシィィンッ!!

ミルタンクはジャンプしてノクタスに向かって落ちるが、ノクタスは回避する。
そして地面に落ちて無防備になったミルタンクに向かって。

ノリカ 「ノクタス『ニードルアーム』!!」

ノクタス 「…ノ、ノクッ」

ノリカ 「!? しまった…『まひ』が」

ここ一番で、ノクタスは痺れて動きを止める。
これでサヤちゃんはまた攻撃のチャンスが出来た。

サヤ 「今がチャンス! ミルタンク『きあいパンチ』!!」

ミルタンク 「ミル〜〜!!」

ノクタス 「ノ、ノク…」

ノリカ 「根性入れるのよノクタス!! 『ミサイルばり』!!」

ミルタンク 「ミルー!!」

集中力を高めたミルタンクが攻撃のモーションに入る。
ノクタスは悪タイプ、食らえば大ダメージは免れない!

ノクタス 「! ノクッ!!」

バババババッ!!

ミルタンク 「ミルーー!!」

ドギャアアァッ!!

ノクタス 「ノクーーー!!」

ミルタンク 「ミルーー!!」

互いの技が互いに決まる。
だが、ほぼ同時のダメージだけに、決定打にならなかった。
2体はまだ闘志を失っていなかった。

サヤ 「ミルタンク!」
ノリカ 「ノクタス!」

ゴウスケ 「そこまでや! タイムアップ!!」

サヤ 「!!」
ノリカ 「!!」

もう5分が過ぎてしまったのね…短い時間だけど、コンテストバトルはいつ見ても緊張感がある。
私のジャッジでは、ややサヤちゃんの方が…。

アムカ (サヤの方が絶対上!!)

ゴウスケ 「…判定・ドロー!!」

サヤ 「……」

ノリカ 「ふい〜…また引き分けか」

ふたりは、結果にそこそこ満足なのか、いい顔をしていた。
やっぱり、コーディネイターは違うわね〜。

ハルカ 「ふたりともお疲れ様! たった1戦だけど、参考になったわ!」

ノリカ 「そう言っていただけると、このノリカ本望であります!!」

びしぃっ!とノリカは敬礼する。

サヤ 「…参考になれば、幸いです」

ふたりはポケモンを戻して、ボールを仕舞う。
そして、ゴウスケさんはふたりに拍手をする。

パチパチパチッ!

ゴウスケ 「いやぁ、お見事やふたりとも!」
ゴウスケ 「さすがグランドフェスティバルに出るだけあるわ!」
ゴウスケ 「惜しむらくは、ふたりがグランドフェスティバルで会えんかったことやな」
ゴウスケ 「もし、当たってたら、歴史に残るバトルになっとったかもしれん」

サヤ 「…それは、どうも」

ノリカ 「いや〜照れるかも〜」

ふたりはそう返す。
でも、お世辞じゃなくて、本当にそれ位のバトルになっていたのかもしれない。
草試合でこの集中力なんだから、実戦だったら相当なぶつかり合いになっているだろうしね。

アムカ 「うにゅ…よくわからないけど、凄いんだねふたり共」

ゴウスケ 「ホンマに凄い! いやぁ、ホウエン地方も侮れへんなぁ〜」

サヤ 「…そろそろ、本当のことを言ったらどうですか? シンオウ・トップコーディネイターのゴウスケさん?」

ノリカ 「え、ええっ!?」

ハルカ 「ト、トップコ〜ディネイタ〜!?」

アムカ 「ほえ?」

いきなり、とんでもない言葉が飛び出す。
トップコーディネイターって…確かグランドフェスティバル・チャンピオンの称号。
この人が、そうなの!?

ゴウスケ 「何や、バレとったんかいな…」

サヤ 「…付け加えるなら、つい1ヶ月前に行われた、シンオウ地方・ポケモンリーグにて準優勝の成績でもありますね」

ハルカ 「じゅ、準優勝!?」

どんだけ凄いのよこの人!?
トレーナーとしても、コーディネイターとしても、Lvが違うんじゃない!

ゴウスケ 「あんまり褒めると照れるで」
ゴウスケ 「まぁ、今回はちょっとばかし、運が悪かったんや」
ゴウスケ 「ホンマはどっちも優勝する気やったさかい」

サヤ 「…あれだけの成績を出せば、新聞やTVでは大騒ぎですよ」

ゴウスケ 「あらら…なるたけマスコミは避けたんやけどなぁ」
ゴウスケ 「はははっ! まぁ、バトル中に取られた写真ばら撒かれたんやろなぁ!!」

気楽にそう言う。
この人…何か軽い。

キヨミ 「相変わらず、変わらないわね…ゴウスケ」

ゴウスケ 「ん? おおっ!! キヨミやんけ!! 奇遇やなぁ!!」

キヨミ 「…白々しいわね。わざわざここまで偶然来たって言うのかしら?」

ゴウスケ 「何や、わかってるんやん!」

キヨミ 「………」
ハルカ 「………」
サヤ 「………」
ノリカ 「……」
アムカ 「?」

思いっきり場が白ける。
あれもギャグなのか?

ゴウスケ 「わ、悪かったわ…ワイ、黙られるのは嫌いやねん」
ゴウスケ 「まぁ、ぶっちゃけ、キヨミの応援に来たんやがな」

キヨミ 「それもどうだかね…あなたなら、シンオウリーグに出た後、ホウエンリーグに挑戦しかねないから」

ゴウスケ 「何や、バレてたんかいな…」

キヨミ 「……」
ハルカ 「……」
ノリカ 「……」
サヤ 「………」
アムカ 「??」

ゴウスケ 「な、何か言うてや…」

キヨミ 「なら、今から敵ねあなたは! 絶対に負けないから!! リーグ終わるまでは口も利かない!!」

な、何かキヨミらしくない気が?
いつものキヨミさんと違って、何だか子供っぽい。

ゴウスケ 「な、何やねんそれ!」

キヨミ 「だって、出るんでしょ!? だったら敵!! それとも、嘘とでも言うつもり!?」

ゴウスケ 「嘘や」

キヨミ 「……」
ハルカ 「……」
ノリカ 「……」
サヤ 「………」
アムカ 「???」

ゴウスケ 「変わらんなキヨミ…相変わらず騙されやすいわ」

キヨミ 「う、うるさいわね!! 大体何よ今更!! 何で今頃会いに来るのよ!?」

ゴウスケ 「まぁ、それはごもっともや」
ゴウスケ 「せやけど、忘れたことは一度もないで? これでも一途なんや」

ハルカ 「はい、しつもーん!」

ゴウスケ 「ほい、ハルカちゃん」

私は右手を挙手して、質問をする。
ゴウスケさんは、生徒を当てるかのように私を当てる。

ハルカ 「キヨミさんとゴウスケさんって、どういう関係なんですかー!?」

どう考えても浅からぬ関係と言えよう。
少なくとも、こんなキヨミさんは見たことがない。

キヨハ 「元カレよ…一応ね」

キヨミ 「姉さん!? 余計なことは言わないで!!」

ハルカ 「ほ〜、元カレ〜ほ〜」

ノリカ 「ひゅ〜ひゅ〜かも〜」

ゴウスケ 「まぁ、元やからな」

キヨミ 「そうよ! 元よ元!! もう今は何の関係もないわ!!」

キヨミさんはかなり全力で否定する。
う〜ん、キヨミさんって、こんなにツンデレっぽかったっけ?

ゴウスケ 「やれやれ…まぁ、ええわ。昔の寄りを戻そうとは思わへん」
ゴウスケ 「ま、キヨミは残念ながら、ついでやからな」

キヨミ 「つ、ついでぇ!?」

キヨハ 「あら、そうなの?」

ハルカ 「して、本当の目的は!?」

ゴウスケ 「それはな…」

キヨミ 「……」
キヨハ 「………」
ノリカ 「どきどき」
サヤ 「………」
アムカ 「ふぁ〜…」←あくび

ゴウスケ 「…特に無いねん」

ドズシャアアッ!!

私とノリカ、キヨミさんは思いっきりずっこける。
ま、まぁ、予想はしていたんだけど…やっぱりこの人変。

ゴウスケ 「まぁ、面ろそうやな〜と思ってきただけや」

キヨミ 「…もういい、私は特訓があるから!」

キヨハ 「あらあら…じゃあ私も行こうかしら」

ゴウスケ 「あ、待ちぃな!! 折角再会したんやから、積もる話でもあるがな!!」

キヨミ 「着いて来るなーーー!!」

キヨハ 「やれやれ…素直じゃないわね」



………。



ハルカ 「…はぁ」

ノリカ 「何だか、突然でしたね」

アムカ 「ZZZ…」

サヤ 「…カタナが眠ってしまったようなので、私は一旦部屋に戻ります」

そう言って、サヤちゃんも行ってしまう。
これで、私はノリカとふたりっきりになる。

ハルカ 「…う〜ん」

ノリカ 「う〜ん…私はポケモンの回復したいので、一旦ポケモンセンターに戻りますね!」
ノリカ 「それじゃあ、ハルカさん! 特訓頑張ってください!!」

結局、ノリカも行ってしまった。
私ひとり、ぽつ〜んと残される。

ハルカ 「…はぁ、どうしようかな?」

少なくとも、やる気はあってもその気になれない。
ひとりで特訓するのも何だかなぁ。
今は、ひとりで煮詰めるより、誰かが見てくれた方が細かいことがわかる気がした。

ハルカ 「まぁいいわ、ぶら〜っと気分転換に公園歩きますかな」

? 「あら、それなら私を案内してくれるかしら?」

ハルカ 「は?」

振り向くと、いきなり赤い色が目に痛い。
って言うか、この日差しの中、何この人は重武装なのだろうか?
いやもとい、それならミカゲもか。
どちらにせよ、日傘一本右手に手にした少女が私に向かって話しかけていたのだ。
しかも、よく見たら…。

ハルカ 「あなた…確かエセ外人のマリアさん!?」

マリア 「…エセと言うのがきになるけれど、まぁ大目に見てあげるわ」
マリア 「とりあえず、案内をお願い…湖に行きたいのよ」

ハルカ 「……マテ」

マリア 「いいから、案内しなさいな…困ってる人間は助けるのが義理でしょう?」

ハルカ 「ダカラマテ…この町に湖があるわけないでしょうが!!」

マリア 「………」

お? 若干赤くなった…痛い所を突かれたらしい。
意外に可愛い所も…。

マリア 「ま、まぁいいわ…それなら、カフェはあるかしら?」
マリア 「一休みしたいのよ」

ハルカ 「ああ、それなら…」

私は思いついた、『私イズム』のカフェを案内する。



………。



店員 「ヘイラッシャイ!!」

ハルカ 「ゴーヤチャンプルふたつにパインジュースふたつ!!」
ハルカ 「やっぱサイユウ来たらこれ食べないと!」
ハルカ 「ほらマリアさんも、私がオゴルから食べて!!」

マリア 「………」

マリアさんは、こう言う所は初めてなのか、戸惑っているようだった。
って言うか、放心状態?

店員 「へい、お待ち! ゴーヤふたつ! パインジュースふたつ!!」

そう言って、店員さんはオーダーを持ってきた。
私は割り箸をふたつに割って、一言。

ハルカ 「いただきます!」

マリア 「……」

私はゴーヤを早速頬張る。
う〜ん! この苦味がたまらん!

マリア 「……」ぱく
マリア 「………!」

マリアさんは、一口食べて固まる。
う〜ん、そんなに美味しかったのかしら?

ハルカ 「う〜ん、この苦味とパインの酸っぱさが私的に丁度いいのよね〜」

マリア 「…これは、何かしら?」

ハルカ 「ん? ゴーヤだよ」

日本名では『にが瓜』とも言う。
結構、ベターな食材だと思うけど…食べたことないのね。

マリア 「…苦いわよ」

ハルカ 「ゴーヤだからね」

マリア 「味が消えないわよ…」

ハルカ 「ジュースがあるってば」

マリア 「変な後味がする…」

ハルカ 「子供じゃないんだから…」

マリア 「ちょっと! どういうことなのよこれは!?」
マリア 「私は『カフェ』を案内なさいと言ったでしょ!?」
マリア 「ここのどこが喫茶店なのよ!?」

ハルカ 「ちなみに、カフェと喫茶店は違うわよ」
ハルカ 「ここは、紛れもなくカフェだから…ただ海の家とも言うけど」

マリア 「不愉快だわ…ここじゃ紅茶も飲めないじゃない!」

? 「うるさいわね…食事位、静かに食べなさい」

ハルカ 「およ? この声は…まさか」

マリア 「ミ、ミカゲェ…!?」

何とそこにいたのは、ミカゲだった。
しかも、ソーキソバを食べている…む、結構通ね。

ミカゲ 「全く、鬱陶しいわね…だからあなたは子供なのよ」

ハルカ 「いや、まずあなたがここにいる方がおかしい気もするんだけど?」

どう考えても、この店にドレスで潜入は普通じゃない。
しかも、無駄に優雅な食べ方だし…パスタじゃねぇっての。

マリア 「ミ、ミカゲに出来て、私に出来ないなんて…許されないわ!!」

そう言って、マリアさんはゴーヤを食べ始める。
一口食べる度に、泣きそうな顔をするのが無駄に可愛い。

ハルカ 「マ、マリアさん…無理に食べなくても」

マリア 「静かにして頂戴! 苦味が増すわ!!」

ごきゅごきゅごきゅ!

マリアさんはジュースを一気に飲んで、耐える。
う〜ん、何だかなぁ…。

マリア 「ジュースおかわりよ!」

店員 「へいまいど!」

ハルカ 「…マリアさん、何だか無理してない?」

マリア 「してないわ!」

ミカゲ 「どうでもいいけれど、そいつに『さん』付けはいらないわよ…どうせ年は17なんだし」

ハルカ 「あれ? 私と同じ?」

マリア 「何よ…別にいいではないの」
マリア 「年なんて、あってないような物よ」

それは無茶苦茶だ…親しき仲にも礼儀有りと言うのに。

マリア 「うぐ…苦い」

ミカゲ 「…子供ね」

そう言って、ミカゲはソーキを食い終わってお勘定を済ませる。
そのまま、ミカゲはどこかへ行ってしまった。



………。



店員 「ありがとうございましたー!!」

マリア 「………」(涙目)

ハルカ 「む、無理に食べるから…」

マリア 「誰のせいなのよ…」

それはおもいっきり私のせいだ。
でも、最後まで食べたのはマリアだ。
ある意味、意地を感じた。

マリア 「もういいわ…今日は散々、部屋に戻って休むことにするわ」

ハルカ 「あ、そう…ひとりで帰れる?」

マリア 「馬鹿にしないで…子供ではなくてよ」

スタスタスタ

そう言って、マリアは逆の方向に向かう。
そっちは海だってば。

ハルカ 「…はぁ、もう止めるのもめんどい」
ハルカ 「誰かが引き取ってくれると信じよう」

結局、私はその場を後にした。
よく見ると、空は日が落ち始めている。
結構時間経ったわね。



………。



『同日 時刻17:00 ポケモンリーグ・裏庭』


ハルカ 「で、ここに来たのはいいけど…誰もいない」
ハルカ 「しょうがない、ひとりでやるか!」

ボンッ!×6

バシャーモ 「シャモ」
マッスグマ 「グマ」
ライボルト 「ライッ♪」
アーマルド 「アマッ!」
ジュペッタ 「………」
ホエルオー 「ホエ〜…!」

ハルカ 「ごめん、ホエルオーだけ戻って」

シュボンッ!

ホエルオーは出た瞬間、岩と木に挟まれる。
でかすぎだわ…これは無理ね。
仕方ないか…。

ハルカ 「さて…できればスパーの相手でもほしいんだけど」

? 「ふむ、相手がいないなら、小生が相手をしてもよいが?」

ハルカ 「おおっ、まさか救世主!?」

どーん!

ザラキ 「会うのは初めてかな、ハルカ嬢」

ハルカ 「ザ、ザラキさん!?」

実力テストLv1位のザラキさんが相手とな!?
そりゃ、これまでにない相手だけど、ただでも済むまい!
下手すれば、また怪我をしかねん!
ここは、丁重にお断りしよう。

ハルカ 「も、申し訳ございません…今はちょっと都合が悪く」

ザラキ 「む? 相手がいないのではなかったか?」

ハルカ 「いえ、ぶっちゃけ、怪我するのが怖いだけです」

ザラキ 「心配はするな、トレーナーが怪我した所でポケモンに問題はない」

ハルカ 「何でトレーナーが怪我やねん!!」

ビシィッ!

思わずツッコム。
う〜ん、我ながら鋭い。
しかしながら、この人、見た目通り屈強な身体ね…肉体派もびっくりだわ。

ミク 「ザラキさん…その人困ってるじゃないですか! いい加減にしてください」

突然、謎の女性が現れる。
う〜む、見事な体つきね。
これはハルカたんもビックリ。

ザラキ 「む、ミク殿か…しかしだな」

ミク 「言い訳は聞きません! どの道、予選が始まれば嫌でも戦う機会はあります」
ミク 「今ここで戦う必然はありません!」

まさしくごもっとも。
とはいえ、できればこちらとしては当たりたくないのが本音。
Lvの違いがはっきりしすぎて、勝負にならない。
キヨハさんの話だと、トレーナーの技術や経験、ポケモンの性格や相性でカバーできるのは10程度。
私は55でザラキさんは82…その差27。
勝負所か、土俵も違うわ。
ハナから勝負にはならない…まだ、私のポケモンじゃ勝負にもならない。
とはいえ、強くなる必要があるのも事実…果たして、私はそこまで強くなれるのか?

ハルカ (勝てるとは思ってない…けど)

見てみたいと言うのは本音。
今の私で、どこまで戦えるのか、どれだけ差があるのか…知ってみるのもいいのかもしれない。

ハルカ 「………」

ミク 「さぁ、ザラキさん…行きましょう」

ザラキ 「むぅ…仕方あるまいな」

ハルカ 「…待ってください、一体だけ…一体だけで、バトルさせてもらえませんか?」

ミク 「正気なの!? あなた、相手をわかって言っているの!?」

ハルカ 「そんなことは、会った時点でわかってます」
ハルカ 「正直、今の私じゃ絶対に勝てない…でも、興味がないといえば嘘になる!」

私は闘志を振り絞ってそう言う。
正直、鳥肌が立ちっぱなしだ…世界選手権の時でも、これほど汗をかいたことはない。
今、私は紛れもなく、ポケモンの頂点に最も近い人と戦いを挑もうとしている。
それは、勇気ではなく無謀なのかもしれない。

ザラキ 「…さすがは、センリの娘よ」

ハルカ 「は?」

ザラキ 「その覚悟、確かに見た…ならば、小生も全力で応えるのみ!」

ボンッ!

バンギラス 「ガアアアァァァッ!!」

ビュゴオォォォォッ!!

突然、1体の緑色のポケモンが出てきて『すなあらし』を巻き起こす。
とてつもない威圧感だ…右目が閉まっているが、見えていないのだろうか?

ミク 「もう止められないわね…せいぜい、死なない程度に頑張りなさい」

ハルカ 「…見たことないポケモン、だけど、ポケモンはポケモン!!」
ハルカ 「やるしかない、自分の一番信頼できるポケモンで!」

ボンッ!

バシャーモ 「シャモ!」

私はバシャーモを繰り出して、バトルの体勢に入る。
もう、退くことはできない。
後は、始めるのみ!

ザラキ 「ハルカ嬢から、仕掛けよ…その力、全力でぶつかって来るがいい」

ハルカ 「だったら、やらせてもらうわ! バシャーモ『スカイアッパー』!!」

バシャーモ 「シャモッ!」

私は覚えたばかりの技を宣言する。
バシャーモは、低い体勢で突っ込み、相手の顎めがけて右アッパーをジャンプして繰り出す。

ドバキャァッ!!

バンギラス 「!!」

緑のポケモンは、頭を仰け反らせるが、倒れない。
相当効いているようにも見えるんだけど、数cm退がった程度。
バシャーモは勢いで空中に飛んでしまい、無防備な状態になっている。

ザラキ 「バンギラス『いわなだれ』!!」

バンギラス 「ガアアッ!!」

ドガガガガッ!!

バシャーモ 「シャモーー!!」

バシャーモは空中でガードするも、物凄い威力の『いわなだれ』を直撃される。
岩の重量をモロに受けて地上に叩きつけられるバシャーモ。
ダメだ…一撃でこの様…。

ハルカ 「…!」

バシャーモ 「…シャモ」

バシャーモは無理に立ち上がる。
明らかに戦闘不能のダメージのはず…戦えるわけないのに。

ハルカ (ダメだ…これ以上、続けても)

しかし、バシャーモの瞳は死んでいなかった。
むしろ、熱く燃えるような瞳で、しっかりと相手を見ていた。

ザラキ 「しっかりせよ! ハルカ嬢!!」

ハルカ 「!!」

ザラキ 「ポケモンはトレーナーを映す鏡…ならば、トレーナーもまたポケモンを映す鏡なのだ!」
ザラキ 「貴公のポケモンは、戦う意思を捨てていない! ならば、それに応えるのがトレーナーの役目!」
ザラキ 「見事、応えて見せよ!! そなたのポケモンに!!」

ザラキさんは、強い言葉でそう渇を入れる。
私は、冷たい汗を拭って、言葉を放つ。

ハルカ 「バシャーモ、もう一発『スカイアッパー』!!」

バシャーモ 「シャモーーー!!」

ヨロヨロの動きながらも、今一度技を放つバシャーモ。
相手は全く動く気配を見せない。
正面から受けるつもりだ。
倒せなかったら、こちらがやられる。
やるかやられるか…気迫で決まる!!

バシャーモ 「シャ〜モーーーーー!!」

ドバキャァァッ!!

バンギラス 「…!!」

またしても仰け反るバンギラス。
やはり倒れない…相手の防御力が高すぎるのか、バシャーモの攻撃力が低いのか。
どの道、これで倒れない以上、もうこちらに勝ち目はない。

ハルカ 「く…2発とも、クリーンヒットしているのに…」

ザラキ 「……」

バンギラス 「…グ」

ズウゥンッ!!

大きな音を立て、バンギラスは片膝を突く。
や、やった!?

バシャーモ 「シャ、シャモ…」

だが、バシャーモは力尽きて倒れる。
これが限界…相手は防御も回避もしていない。
ただ、一回攻撃をしただけ…行動ひとつとっても、まるで内容が違う。
これが、上に立つ者のポケモン。

シュボンッ!

ハルカ 「…バシャーモでも、どうにもならないのか」

ザラキ 「…久し振りに、お前の膝が着く所を見たな」

バンギラス 「…ググ」

ザラキさんは、ゆっくりとバンギラスに歩み寄り、バンギラスの肩に手を置く。
バンギラスは、特に表情も変えず、こちらを睨みつけていた。

ザラキ 「…悔しいか? 格下の相手に膝を着かされたことが」

バンギラス 「…ググッ」

ハルカ 「………」

ザラキ 「ならば、今日の戦いを刻みつけよ」
ザラキ 「次は、完全なる勝利を収めるために!」

バンギラス 「……」

シュボンッ!

バンギラスはこちらを睨みつけたまま、ボールに戻った。
う〜む、プライドの高そうなポケモンね。
いかついし…。
あのポケモンが引っ込むと、砂嵐が弱まった…あのポケモンが出していたんだろうか?

ザラキ 「…ハルカ嬢の覚悟、見せてもらった」
ザラキ 「次に戦う時は、もっと強くなっていることを望む」

ミク 「…ザラキさん」

ふたりはそのまま行ってしまう。
私はひとり残される。
あれが、本当に強いポケモン…そしてトレーナー……

ハルカ (あの人に勝てれば、見つかるかもしれない…)

私が本当に求めている『強さ』…。
今まで何のために戦ってきたのか、その意味がわかるかもしれない。
私は、おぼろげだが、旅の終着が見えた気がした…。



…To be continued




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