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POCKET MONSTER RUBY



第64話 『再戦! ハルカVSヤエコ!! 負けられない戦い!!』




『4月2日 時刻10:15 ポケモンリーグ・第5スタジアム』


タダシ 「さぁ、互いに一体のポケモンを失った両者!」
タダシ 「ダメージは互いにそれほど見られず、ミカルゲは能力を数段高めています!!」
タダシ 「対してヒードランは、ミカルゲに対し若干有利な鋼タイプ!」
タダシ 「まだまだ戦いの行方はわかりません!!」

ミカゲ (多少は、驚かされたけれど…冷静に見れば隙はあるわ)
ミカゲ (ヒードランの能力がどれほどかはわからなくても、トレーナーの能力は十分わかる)

ネロとヒードラン。
組織が関わっている以上、ある程度は型外れなポケモンが出るとは思っていた。
ホロンやダークポケモンまで出てくるのは、予想外と言えば予想外だったけど。
所詮、ポケモンはポケモン、倒せない相手じゃなかったわ。
だけど、このヒードランは違うわね…。
正直、いいポケモンね…今までこれほど苦戦を容易に予想できる相手は、見たこと無いわ…。

ネロ 「ククク…ちっとは面白くなってきたか? ヒードラン『かえんほうしゃ』だ!!」

ヒードラン 「ヒーードォッ!!」

ゴオオオオオオォォォッ!!

ヒードランはその場で重い体を4つの足で固定し、強力な『かえんほうしゃ』を放つ。
ミカルゲのスピードでは回避は不可能、だったら受けるしかない。

ゴオワアァァァッ!!

ミカルゲ 「ミカ〜!!」

タダシ 「『かえんほうしゃ』が直撃!! ミカルゲ耐え切れるのか〜!?」

ミカゲ 「ミカルゲ『めいそう』よ!!」

ミカルゲ 「!! ミカ〜…」

タダシ 「ミカルゲ、攻撃を受けながら『めいそう』をして能力を高める! まだ攻勢には転じないのかぁ!?」

ネロ 「クク…持久戦に持ち込む気だろうが、そうはいかねぇよ。ヒードラン『マグマストーム』だ!!」

ヒードラン 「!! ヒーーーーーードーーーーーーー!!」

ゴゴゴゴゴ…!!

ミカゲ (『マグマストーム』ですって…! 聞いたことはあるけれど、それを使えるレベルだと言うの!?)

ヒードランは全身を赤く燃え滾らせ、口から大きな火球をミカルゲに放つ。
スピードはほとんどないけれど、ミカルゲに回避は無理。
当然、『めいそう』の使用後で動くことは出来ない。

ゴッ! ドゴゴゴゴゴゴゴォォオッ!!!

ミカゲ 「くっ!?」

着弾と同時にミカルゲは凄まじい炎に包まれる。
その炎はすぐに消えることはなく、ミカルゲを中心に竜巻状となってミカルゲを捕らえていた。

タダシ 「ヒードランの『マグマストーム』が炸裂!! ミカルゲ、炎に飲み込まれてしまったぁ!!」

ミカゲ (あの効果は『ほのおのうず』と同様、時間と共に体力を削ぐ…同時に交換も出来なくなる効果)
ミカゲ (通常なら、命中精度の悪い技だけど、ミカルゲに回避は求められない…相性最悪の技ね)

ミカルゲ 「ミ、ミカ…!」

私は、炎の中ミカルゲの状態を確認する。
幸い、まだミカルゲは倒れていない、すぐに次の指示を出す。

ミカゲ 「ミカルゲ『ねむる』よ!!」

ミカルゲ 「ミカ! ZZZ〜…」

タダシ 「お〜っとぉ! ミカルゲここで体力を回復!!」
タダシ 「だが、このまま眠り続けいては危険だぞ〜!?」

ネロ 「クク…常套手段だな、だが!」

ネロ 「ヒードラン『アイアンヘッド』だ!!」

ヒードラン 「ヒィドゥッ!!」

ドドドドドッ!!

ヒードランは4つの足でミカルゲに突進する。
確かに今のミカルゲには物理攻撃の方がダメージは大きい…だけど、体力を回復させたミカルゲがそう簡単に…。

ドッガァァッ!!

ミカルゲ 「!!」

ゴロゴロゴロ!! ザザザァッ!!

ミカゲ 「!?」

ゴオオオォォォッ!!

ヒードラン 「ヒーーードーーーー!!」

タダシ 「な、何と! ヒードラン、ミカルゲを押しのけて自ら『マグマストーム』の炎に包まれた!!」
タダシ 「しかもその炎でヒードランはダメージを受けるどころか、更に強く燃え滾っている!!」

ミカゲ (無理やり『もらいび』を発動させるとはね! 攻撃と同時に攻撃力も上げる…厄介な使い方をしてくれるわね!)
ミカゲ (ミカルゲが起きるには後2分はかかる…だけど)
ミカゲ 「ミカルゲ『ねごと』よ!!」

ミカルゲ 「ミカ〜…ZZZ」

ネロ 「クク…ここで運試しか!?」

確かにネロの言う通り…運試しね。
寝言はそのポケモンが覚えている技の中からランダムで何かの技が出る。
つまり、そのポケモンが技を覚えていればいるほど、何が出るかわからない。
だけど、当然ただ寝ているだけよりも意味はある。
ミカルゲは、眠りながら技を発動させる。

ビュゴオオオオォォォッ!!

ヒードラン 「ヒィドォッ!!」

タダシ 「ミカルゲの『あやしいかぜ』が発動! だが相性が良くない! ヒードランはまだ耐えている!!」

ネロ 「クク…いくら威力があっても、相性が良くなきゃ大したダメージにはならねぇ!!」
ネロ 「ヒードランもう一発『マグマストーム』だ!!」

ミカゲ 「! ニ発目!!」

ヒードラン 「ヒーーーーーーーーードーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ドグオォゥッ!! ゴバァッ!!

今度は『もらいび』で、更に威力の増した火球が放たれる。
眠っているミカルゲにかわす術は無い…というよりも、起きていてもかわすのは無理。
当然のように直撃を受け、再びミカルゲは炎に包まれる。

ゴッバアアアアアアアァァァァッ!!! ゴオオオオオオオオォォォッ!!!

タダシ 「ミカルゲに『マグマストーム』がクリーンヒットォ!! 更に火力の上がったヒードランの攻撃に耐える!!」

ミカゲ 「後1分…ミカルゲ『ねごと』!!」

ミカルゲ 「!! ミカ〜ZZZ」

ボゥ〜…

ヒードラン 「!?」

タダシ 「おっと〜!? 突然ヒードランの体が黒い気に包まれた!」
タダシ 「一瞬で消えてしまったが、これはもしや〜?」

ネロ 「? 何が出たかよくわからなかったが…ヒードランもう一発だ!!」

ヒードラン 「ヒ…ヒドッ!」

タダシ 「ヒードラン、技が出せません! どうやらPP切れのようだーー!!」

ネロ 「!! 『うらみ』かよ…!」

ミカゲ 「…効いたようね、強力な技を連発しすぎなのよ」

私はそう言って、笑う。
ようやく状況に気づいたのか、ネロは苦い顔をする。
だけど、今のファンブルは見逃さないわ!

ミカゲ 「そろそろ起きなさいミカルゲ! 『あくのはどう』よ!!」

ミカルゲ 「!! ミカッ! ミカ〜…」

グオオォォッ!!

ヒードラン 「ヒ、ヒィドォ!!」

タダシ 「ミカルゲ、トレーナーの声に反応し即座に反撃! 『あくのはどう』がクリーンヒットォ! ヒードランが怯んだーー!!」

ネロ 「ちっ! ヒードラン立て直せ!!」

ミカゲ 「ミカルゲ、『さいみんじゅつ』」

ミカルゲ 「ミカ〜〜」

フォンフォンフォン…

ヒードラン 「ヒッ!? ヒド…」

ネロ 「!? 起きろヒードラン!!」

ヒードラン 「ZZZ…」

タダシ 「ミカゲ選手の鮮やかなコンビネーション! ヒードラン、一気に追い詰められたぁ!!」

ネロ 「くっ…何やってやがる!!」

ミカゲ 「ミカルゲ『ゆめくい』」

ミカルゲ 「ミカ〜」

ヒードラン 「!! ZZZ!」

ギュゥゥゥンッ!!

タダシ 「ヒードランの頭から、不思議な気がミカルゲに吸収される!! ミカルゲ、ヒードランの夢を食って体力を回復だーー!!」

ミカルゲ 「ミカ〜♪」

ヒードラン 「ZZZ…」

ネロ 「ふざけんな!! こんなやられ方があるか!! 起きろヒードラン!!」

ミカゲ 「何を言っても遠吠えね…ミカルゲ終わりにしなさぁい、『シャドーボール』!」

ミカルゲ 「ミカ〜…!」

ドッ! ギュウゥゥゥンッ!!

ミカルゲから放たれた『シャドーボール』がヒードランへと一直線に向かう。
スピードはさほど無いけれど、眠っているポケモン相手に外すほど愚かじゃないわ。
いい加減、当たれば倒れるでしょ。

ネロ 「舐めるんじゃねぇ…! ヒードラン『ラスターカノン』だ!!」

ヒードラン 「ヒドッ!? ヒーードオオオォォッ!!」

キュィィッ! ドギャアアアアァァァッ!!

ミカルゲ 「!? ミカーーーーー!!」

タダシ 「な、何とーー!? ヒードラン、絶体絶命の場面でトレーナーの声に反応!!」
タダシ 「直撃寸前で『シャドーボール』をかき消したーーー!! 同時に今度はミカルゲが大ダメージ!!」

ミカゲ 「馬鹿な!? あのタイミングでどうやったら起きると言うの!?」

通常、眠らされたポケモンは最低でも2分は起きないはず。
特性で早起きするポケモンはいても、ヒードランはそうではない。
まだ経過時間は1分半、起きるにしても早すぎるわ。

ミカルゲ 「ミ…ミカ…!」

タダシ 「ミカルゲもはやダウン寸前! 形勢は再び入れ変わったぁ!!」

ネロ 「終わるのはテメェのようだなぁ!! ヒードラン『かえんほうしゃ』でトドメだ!!」

ミカゲ 「ふざけるんじゃないわよ!! こんな所で私が負けるわけが無いのよ!!」
ミカゲ 「ミカルゲ『シャドーボール』!!」

ミカルゲ 「!! ミ、ミカーーーーーーーー!!」

ヒードラン 「ヒィドオオオ!!」

ドギュアァァァァッ!! ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォッ!!

タダシ 「互いの技が正面衝突! 勝つのはどっちだぁ!?」

ドグオゥッ! ギュアアアアアアアアアアアアアァァァァッ!!

ヒードラン 「!?」

ネロ 「なっ!?」

ドッ! ゴオオオオオオオオオオオオォォォンッ!!

大爆発。
ミカルゲの『シャドーボール』は『かえんほうしゃ』を吹き飛ばし、ヒードランを吹き飛ばした。
今度こそ、完全に決着…終わりよ。

ミカゲ 「ふふふ…アハハハハハハッ!!」

私は、勝利を確信して高らかに笑う。
審判はやや戸惑いながらも、ヒードランの状況を確認して、宣言する。

審判 「ヒードラン戦闘不能!! よって勝者ミカゲ!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

タダシ 「鮮烈な幕引き!! 何と言うバトルでしょう!!」
タダシ 「目まぐるしい攻守交替劇についに終止符!!」
タダシ 「苦しい戦いを制したのは、ミカゲ選手だぁーー!!」

オオオオオオオオオオォォォッ!!

大観衆の声援が私を称える。
私はその声援を一身に受けて、天を仰ぐ。

ミカゲ (ああ…何て心地良いの)

私は、勝利に酔いしれる。
相手が強ければ強いほど私の勝利は、喜びを大きくする。
私は、負けない…相手が誰であろうと。

ミカゲ 「そう、私が一番……っ!?」

ガクッ!!

私は突然その場で両膝を地面に落とす。
意識が遠のき、私は立っていられなくなったのだ。

ザシャァッ!!

ミカゲ 「ぐぅ…! ああぁっ!!」

タダシ 「こ、これは一体どうしたことでしょうか!? 勝者のミカゲ選手、突然うめき声をあげました!」

審判 「どうした、ミカゲ選手!?」

ミカゲ 「ぐ…私に触らないで!!」

バシィッ!

私は私に触れようとする審判の手を払いのけて立ち上がる。
何とか、体は動く…まだ、大丈夫。
私は、意識をしっかりと持ち、ネロの方を見た。

ネロ 「……」

壁際まで吹き飛び、完全に失神しているヒードランを見て、ネロは何か呟いているようだった。
ここからでは全く聞こえなかったけれど、ネロの僅かに震えている体を見れば何となく予想は出来る。
そして、次の瞬間。

ネロ 「!!」

ドガァッ!!

ザワザワッ!!

ネロは、ヒードランの顔を踏みにじる。
同時に、歓声はピタリと止み、会場の注目がネロに向けられる。

ネロ 「テメェが! テメェが弱ぇから負けたんだ!!」
ネロ 「クソが! テメェだ!! 全部テメェのせいだ!!」

ドガァッ! ガスッ! ドガッ!

一気に静寂した会場に鈍い音が響き渡る。
同時に、少しづつ観衆がざわめき始める。
ネロはまるで気にした風もなく、狂ったようにヒードランを蹴り続けた。
そんな姿を見て、私はいい加減鬱陶しくなる。

ザワッ…!

一瞬、観客がざわめく。
次の瞬間。

ドズシャアッ!!

ネロ 「ガハッ!」

ミカゲ 「………」



………。



数秒間の沈黙。
私は、人間離れした速度でネロに接近し、ネロの背後から首を右手で掴み、そのまま真下の地面に顔面を叩きつけた。

審判 「お、おいっ! 何をやって…」

ミカゲ 「…鬱陶しいのよ、黙ってなさい」

審判 「う…!」

私は審判を睨みつけ、下がらせる。
そして、ネロの首からを手を離し、私はネロを見下ろす。

ネロ 「が…ああっ!」

ミカゲ 「痛みは感じるの? てっきり、そんな感覚も残っていないと思ったわ」

私は、笑ってそう言うが、ネロは突然頭を抱え、もだえ始めた。

ネロ 「あああっ! うがあああああああぁぁぁっ!!」

ミカゲ 「…あら」

予想以上に、『頭』をやられたらしい。
そこまで強く叩きつけたとは思ってなかったんだけど…。

審判 「だ、誰か救護班!! すぐ、ネロ選手を!!」



………。



結局、ネロはそのまま駆けつけられた救護班によって医務室へ連行された。

ミカゲ 「…はぁ」

自分でも何とも言えないため息を私は吐く。
やれやれ…ね。

ミカゲ (っ…もう始まったというの?)

私は自分の右腕を左腕で抑える。
右腕がわずかに痙攣していた。
下手をすると、すでに進行が始まっている。
肉体への影響が出始めているかもしれない。





………………………。





『同日 同時刻 ????』


カミヤ 「…さてと、そろそろ行こうかな」

? 「どこへだ?」

カミヤ 「…やだなぁ、脅かさないでくださいよ、総帥」

僕はモニターの電源を落としたと同時に、声をかけられた。
振り向くと、そこには我らが『Hope & Pandora』…通称HP団の総帥『マシュウ』が立っていたのだ。

マシュウ 「ミカゲがネロを倒したそうだな」

カミヤ 「耳が早いですね…今終わったところなのに」

僕が冗談交じりに軽く言うと、総帥はつまらなさそうに。

マシュウ 「ふん…あの程度の敵を払えぬようでは、所詮失敗作だ」

カミヤ 「マリアちゃん、同様…ですか?」

僕が皮肉をこめて言うと、総帥は眉をひそめる。
普通なら少し位、思うところもあるのかもしれないけど、この人は特別だからなぁ。

マシュウ 「…所詮、アレも実験体に過ぎん」
マシュウ 「今、組織に必要なのは、結果だ」
マシュウ 「マリアは、実験体として肉体を差し出し、ミカゲはサンプルとして魂を差し出した」

カミヤ (どこまで、そう思ってるのかね…ミカゲが何を考えているか位、予想がつくだろうに)

と、心で思ってはいても、当然口には出さない。
この人、地獄耳だからなぁ…。

マシュウ 「それより、どこに行くつもりだ? まだミカゲのモニターは必要ではないのか?」

カミヤ 「それは、部下に任せちゃいました。僕は折角ですので、現地でモニターしてきます♪」
カミヤ 「ちょっと、『調整』も必要そうなんで、ね」

僕が軽くそう言うと、総帥はしばし考え。

マシュウ 「ふん、所詮は未完成品か」

カミヤ 「そう言うことです、ですのでしばらく留守にします」

僕はそう言うと、すぐにその場を後にした。
口ではああ言ったけれど、実際には調整どころか治療が必要だ。
ミカゲの侵食率はすでに50%を超えた…すでに肉体に変化が起こり始めているはずだ。
あのままバトルを続けたら、間違いなくミカゲは死ぬ。
あの娘は…絶対に負けを認めないだろうから…ね。



………。



部下A 「カミヤ主任? どうかしたんですか?」

カミヤ 「ちょっと、これ借りるよ♪」

部下B 「えっ!? ちょ、ちょっと!!」

カミヤ 「ポケモンリーグが終わったら持って帰るよ!」

僕はそう言って、組織が所持している『F−22A ラプター』に乗り込む。
今のとこ、ここにあるので一番速い『ステルス機』はこいつだ。
スピードはざっとマッハ2は出るからね〜ここからサイユウまでだったら、大体1時間半〜2時間ってとこかな♪

カミヤ 「さてと、当然僕が運転できるわけ無いので、よろしく『ポリゴンZ』、『ロトム』♪」

ボボンッ!

僕は機内でシートに座り、ポケモンを二体出す。
やや狭いけど、問題は無いかな。

カミヤ 「ポリゴンZ、ロトム、操縦頼むよ♪」

ポリゴンZ 「ポリッ」
ロトム 「ロト〜」

ポリゴンZとロトムは、機内のCPUに入り込んでコントロールし始める。
いやぁ、いつも思うけど、ポケモンって便利だなぁ〜。

カミヤ 「出発進行〜目的地『サイユウシティ』♪」

ポリゴンZ 「ポリッ」
ロトム 「ロト〜」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

部下A 「主任が出るぞーーー!! ハッチ開けーー!!」

部下B 「カタパルト用意!! 主任、いつでもいいですよ!!」

カミヤ 「だそうだ、んじゃテイクオフ!」

ポリゴンZ 「ポリッ!」
ロトム 「ロト〜」

ギュウウウウゥゥゥゥンッ!! ドッギャアアアアアアアアァァァァァァァッ!!



………。



部下A 「あ〜あ、行っちゃたよ」

部下B 「今度はサイユウか〜今頃ってポケモンリーグじゃなかったっけ?」

部下A 「ってことは、また主任の親馬鹿が始まったか…」

部下B 「納得…」





………………………。





『時刻10:15 サイユウシティ・第6スタジアム』


メフィー 「オーダイル『ハイドロカノン』! フライゴン『かえんほうしゃ』!!」

オーダイル 「ダーーー!!」
フライゴン 「フラーーー!!」

ザバアアアアァァァンッ!! ドグオウゥッ!!

バクオング 「グ、グ〜」
バクーダ 「バク〜」

アズマ 「決まったーー!! メフィー選手、鮮やかなツープラトン!!」
アズマ 「ミシマ選手のポケモンは溜まらずダウンです!!」
アズマ 「メフィー選手、僅か5分で駒を進めましたーー!!」

メフィー 「あはは〜、どうもですどうもです〜♪」

私は応援してくれる観客の皆さんに手を振って応える。
やっぱり、こっちはいいなぁ〜オーレでは、こんな楽しいバトルはあまり無かったから…。

マリア 「いつまで手を振っているのよ…次の試合の邪魔よ」

メフィー 「あ…す、すみません」

いつの間にか、次の試合の準備が始まっていた。
確かあの子はマリアちゃん…第3位の人だ。
きっと、凄く強いんだろうなぁ。
私はそんなことを考えながらも、選手の控えスペースに戻った。
マリアさんは私の左隣で、次の試合を待っているようだった。
確か、マリアさんは第4試合だから、次の次だよね…。

マリア 「…何かしら?」

メフィー 「え? どうかしたんですかぁ〜?」

私はマリアさんが見ている方向、つまり私の後ろを見る。
控えの選手がいるだけで、特に何もないように見えたんだけど…。

マリア 「どこぞの、漫才のようなネタは止めてもらえないかしら…」
マリア 「私は、あなたの事を言っているのよ」

メフィー 「はえ〜…そうでしたか」

何だか、マリアさんは機嫌が悪いようだった。
あう…私、何かしたかなぁ…。

マリア 「…で、何か用なの?」

メフィー 「ふえ? 何がですかぁ〜?」

マリア 「………」

マリアさんは眉ピクつかせていた。
あう…何か、更に機嫌悪くなったみたい。

マリア 「もういいわ…」

メフィー 「はう…何だかわからないですけど、すみません」

私は謝った。
けれども、マリアさんの機嫌は悪いままだった。
そんなこんなで、ついにマリアさんの試合が始まる。



………。



アズマ 「さぁ、興奮も高まる中! 次の試合を行います!!」
アズマ 「今大会テスト3位の実力を誇る、驚異的な実力のトレーナー! マリア選手です!!」

ワアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!

マリア 「………」

全く…バトルのひとつで、よくこんなに盛り上がれる物ね。
ポケモンリーグなんて初めてだけれど、こんな物は遊び半分。
私は、ミカゲを消すために来ているのだから…。

アズマ 「さぁ、対するトレーナーは実力テスト50位のトレーナー、マクラ選手!!」

マクラ 「……」

出てきたのは、いかにも弱そうな理科系の男。
はっきり言って、相手にならないわね。
戦う前から勝負は決まっているわ。

審判 「両者、ポケモンを!」

マクラ 「よし…頼むぞ『レアコイル』! 『マルマイン』!!」

ボボンッ!!

レアコイル 「PPP!」
マルマイン 「マル〜」

マリア 「行きなさい、『ガブリアス』、『ロズレイド』」

ボボンッ!!

ガブリアス 「ガブッ!」
ロズレイド 「ロズ〜」

アズマ 「これで、両者のポケモンが出揃った! さぁ、いよいよバトルスタートです!!」

審判 「それでは、始め!!」

マリア 「ガブリアス『じしん』、ロズレイドは『まもる』よ」
マリア 「終りね…」

ガブリアス 「ガーーーーー!!」

ロズレイド 「ロズッ!」

ガッ!! ドガガガガガガガッ!!

地面が一気に揺れ、フィールド全てのポケモンを巻き込んでの攻撃。
ロズレイドは直前に『まもる』を使い、ダメージは0。
電気タイプの相手は当然…。

レアコイル 「GGG…」
マルマイン 「マ…」

審判 「あ…レ、レアコイル、マルマイン、両者戦闘不能!! よって勝者、マリア選手!!」

ワアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッ!!

マリア 「戻りなさい、ガブリアス、ロズレイド」
マリア 「はぁ…無駄な時間を過ごしたわ」


アズマ 「何と、凄まじい威力の地震でしょう!! 攻撃のスピードもまるで比較になりません!」
アズマ 「これが、実力3位のポケモンか!? まるで勝って当たり前かのような足取りで戻るマリア選手です!!」



メフィー 「はえ〜…」

マリア 「………」

戻ってきたマリアさんを見て、私は感嘆の息を漏らす。
所要時間は僅か5秒、本日最短記録の勝利でしょう。
私がハルカさんを倒したのよりもずっと早い…。

メフィー (この人に、私勝てるのかなぁ?)

ちょっと弱気になってしまう。
あのガブリアスとロズレイド、たった一度の技で強さがある程度わかった。
レベルが違うのは確かにわかる…私のよりもずっと高い。
だけど…私の方が優れているかもしれない所は考えられた。

メフィー (多分、マリアさんはダブルバトルに慣れてない)

ガブリアスとロズレイド…あの組み合わせははっきり言って、ダブルではあまりいいタッグではない。
いくら実力に差があっても、組み合わせの悪いタッグであれば、格下の相手に負けることも十分考えられる。
私はオーレでそう言うバトルをいくつも見てきた。
その直感が何となく働く…これなら、もしかしたら…。

メフィー (…でも、ずっと同じポケモンを使うとも限らない。マリアさんの試合は次も見ておかないと)

マリア (予選なんて、こんな物でしょうね…本戦出場は確実、だったら予選で手の内を見せるのは馬鹿)
マリア (せいぜい、私の手の上で踊ってもらおうかしら…ふふ)



………。



『時刻10:10 サイユウシティ・第7スタジアム』


ワアアアアアアアァァァァァッ!!

アサクラ 「決まったーーー!! ザラキ選手、僅か1分で初戦を制しました!!」
アサクラ 「強さは本物! 果たして、このトレーナーを倒せるトレーナーは存在するのかーー!?」


ザラキ 「………」

ミク 「不満そうですね」

ザラキ 「む…ミク殿か」

小生は、ミク殿に出迎えられ、控えスペースに立つ。
先ほどのバトルは小生の圧勝、僅か一度の技で終わりであった。
相手の攻撃は悪くなかったが、ポケモンの強さが足りておらん。
それゆえに、効果抜群の技が決まりながらも小生のポケモンを倒せなかった。

ザラキ 「…予選で満足できるとは思ってはおらん」
ザラキ 「だが、空しい物よ…勝てるとわかってしまう戦いは」

ミク 「…心中、お察しいたします」
ミク 「ですが、予選と言えども、気を抜かれては…」

ザラキ 「ふふ…小生に対して、油断と言う文字は無い」
ザラキ 「小生は戦いに置いては、常に一意専心!」
ザラキ 「ゆえに、逃げると言う言葉も知らぬ…だから小生のポケモンも傷だらけよ」

ミク 「…それが、ザラキさんの気性でしょう」
ミク 「ポケモンもそれがわかっているからこそ、常に全力を出せるのだと思います」

ミク殿は献身的にそう言うが、実際にはどうなのだろうな。
小生にポケモンの言葉はわからぬ。
ポケモンがバトルに出る以上、それは勝利に向かってただ、進むのみ。
だが、それがポケモンにとって必ずしも正しいとは限らぬ。
今更かもしれぬが、小生はポケモンに恨まれていてもおかしくは無いのかもしれぬな。

ザラキ (だが、それも良かろう…恐らく、このリーグは小生の最後の舞台)
ザラキ (ここまで来れば、後は恨まれようが、小生は己の生き様を貫くのみよ!)



………。



『時刻10:02 サイユウシティ・第8スタジアム』


ハルカ 「……」

私は気持ちを押さえつける。
ついに…始まる。
静かな控え室の中、私は誰もいない空間で戦意を高める。

バチンッ!

乾いた音が室内に響く。
私は右拳と左掌をぶつけていた。
もうすぐ、私の試合が始まる。
最初の相手は、以前に私をコケにしてくれたエリートトレーナー・ヤエコ。
以前のうっぷんを倍以上にして返してやる…その位の気持ちが今の私にはある。

ハルカ (…使うポケモンはもう決まってる、ただし)

ちょっとばかり厄介ごとも混ざっていた。
結果的にはプラスなのだけれど、果たしてどうなるやら。

ガチャッ!

スタッフ 「ハルカ選手! そろそろ時間です!!」

ハルカ 「はいっ!」

私は気合を入れ、強く答える。
バッ!と立ち上がり、私はボールを確認してスタッフの後に着いて行く。
部屋を出て、しばらく廊下を歩く。
誰もいない花道…私は段々と気が昂ぶってくるの感じる。
いい緊張感だ、今日は思いっきり戦える!

ワアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!

ハルカ 「!!」

試合会場に出ると、いきなり大歓声。
左右を見渡し回りを確認すると、円状型のフィールドだとわかった。
花道の脇に白いラインが引かれたエリアがあり、そこにはミツル君や他の選手の姿が見られた。
どうやら、セコンドスペースのような物らしい、試合が次々と進むために、選手はあそこで控えるのだろう。
道理で控え室には誰もいないわけね…皆すでにスタンバっていたらしい。
私は、一度深呼吸し、バトルフィールドのトレーナーエリアに向かって走った。


コトウ 「さぁ、ついに赤コーナーのトレーナーが現れました! 赤コーナーの選手は、何と今大会最下位の成績を誇るハルカ選手!!」
コトウ 「だが、テストの実力が最下位でも、実戦がそうとは限らない!」
コトウ 「トレーナーとポケモンはバトルの中でも成長する! 果たして、いきなり下克上はあるのかぁ!?」

ヤエコ (さて、せいぜい見せてもらおうかしら、どう成長したのかを、ね)

コトウ 「対する青コーナーですでに待ち構えるのは! テスト20位の強豪、ルネシティ出身のヤエコ選手!!」
コトウ 「昨年のポケモンリーグでも、ベスト16進出を経験しており、今大会では更なる成績を予感させます!」

ハルカ (20位か…しかも昨年ベスト16、ハナから私とは違うってことね)

ノリカ 「ファイットーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! ハ! ル! カ! さ! まーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ハルカファン 「ファイト! ハルカ様!! ファイト!! ハルカ様ーーーーーーーーー!!」

コトウ 「さぁ、固定ファンのマニアックな応援に応えることができるか!? ハルカ選手対ヤエコ選手のバトル、いよいよスタートです!!」

サヤ 「ハルカさん、何か思いつめている…?」

アムカ 「…?」

ノリカ 「何言ってるのよ! 例え何があったってハルカ様は絶対負けないんだから!!」
ノリカ 「ハルカ様ーーーーーーーーーー!! 天下無敵ーーーーーーーーーー!!」



………。



審判 「両者、ポケモンを!!」

フィールドの中央に審判が現れ、両手を高く上げてそう叫ぶ。
そして、私とヤエコは同時にモンスターボールを投げる。

ボボンッ!! ボボンッ!!

バシャーモ 「シャモッ!!」
ミロカロス 「ミロ〜!」

ライボルト 「ラーイッ♪」
ダーテング 「テ〜ン〜♪」

ハルカ (! バシャーモを使うのね)

水の弱点のひとつ草…それを対策する意味ではいいポケモン。
ある程度の予想はしていたけど、やっぱりそう来るのか。
対するこっちは、ライボルトとダーテング。
さて、ここで疑問点があります…何故ダーテングがここにいるのでしょうか?
説明が欲しいのは実はこっちの方で、コノハナを引っ張ってきたら、この子が出てきたと…。
図鑑を参照すると、どうやらコノハナの進化系のようで、いつの間にか進化していたらしい。
確か、試合前に一度全ポケモンを出しておいたのだけど、その時はまだコノハナだったのに…。
まぁ、とにかくいいことには違いない、以前まではまだ可愛げがあったのに、もう完全にいかつくなってしまっている。
その分、私のポケモンの中ではかなり能力は高いはず、期待できるわね!

ヤエコ (ライボルトは以前にも見たわね…もう一体はダーテング、ミロカロス対策といったところかしら?)
ヤエコ (でも、迂闊だったわね…こちらに炎タイプがいるとは読めていなかったと言ったところね)

ヤエコは冷静にこちらを見ていた。
ああいうタイプは、まず引っ掻き回してやるのが一番。
私はすでに図鑑でダーテングの技を参照し、最初に何をするか決めている。
まずは、先手必勝ね!

審判 「それでは、バトル・スタート!!」

ハルカ 「ダーテング、バシャーモに『ねこだまし』! ライボルトは『じゅうでん』よ!!」

ダーテング 「テ〜〜ン♪」

ヒュッ!!

ダーテングは目にも留まらぬスピードで、一気にバシャーモとの距離を詰める。
ヤエコはまだ指示に入っていなかった。

コトウ 「さぁ、戦いの幕が切って落とされたぁ!! まず先手を取ったのはハルカ選手です!!」

ヤエコ 「ミロカロス、ダーテングに『れいとうビーム』よ!」

ハルカ 「待ってました!! ライボルト『でんこうせっか』!!」

ライボルト 「ラーーーイッ!!」

ダダダダッ!!

コトウ 「ライボルト素早い反応で突っ込む!! だが、ミロカロスはモーションに入っている!!」

バチンッ!!

バシャーモ 「シャモッ!!」

ダーテング 「テンッ!」

コトウ 「『ねこだまし』が炸裂! バシャーモは怯んで動けません!!」

ミロカロス 「ミローーーー!!」

コォキィィンッ!!

ライボルト 「ライライライラーーーイ!!」

コオオオォォォッ!!

コトウ 「何と! ライボルト『れいとうビーム』に向かって突っ込む!!」
コトウ 「『じゅうでん』で特殊防御力を上げ、味方を守ったぁ!!」

ヤエコ 「く…さすがに速いわね、以前とは違うと言うことか」
ヤエコ 「今度はこっちの番よ! バシャーモ、ダーテングに『かえんほうしゃ』!!」

バシャーモ 「シャモーーー!!」

ハルカ 「ダーテング、かわして『にほんばれ』!!」

ダーテング 「テ〜ン♪」

ゴオオオオオオオォォォッ!!

コトウ 「ダーテング、ジャンプして『かえんほうしゃ』を回避ーー!! そのまま空中で『にほんばれ』を発動だーーー!!」

カアアアアアアアアァァァァァッ!!

ミロカロス 「ミロッ」

ライボルト 「ライッ」

ダーテング 「テ〜ン♪」

バシャーモ 「シャモ!」

コトウ 「一気に日差しが強くなり、眩い日差しがこのスタジアムに降り注いでいます!」
コトウ 「これで、互いのポケモンにどう影響が出るのか!」

ヤエコ 「互いに、利点、不利点は十分にある…せいぜい利用させてもらうわ!」
ヤエコ 「バシャーモ、ダーテングに『ブレイズキック』! ミロカロスは『れいとうビーム』よ!!」

ハルカ 「ダーテング、ミロカロスに『ソーラービーム』! ライボルトはバシャーモは『スパーク』よ!!」

バシャーモ 「シャモッ!」
ミロカロス 「ミローーーーーーーーー!!」

コオオオオォォキィィィンッ!!

ダーテング 「テ〜〜ンーーーーーーーー!!」

キュィィ…ギュバアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!

ライボルト 「ラーイライライライ!!」

コトウ 「互いのポケモンがそれぞれ動く! まずはミロカロスの『れいとうビーム』とダーテングの『ソーラービーム』が激突!!」

ドッゴオオオオオオオオオオオォォンッ!!

ミロカロス 「ミロッ!?」

ギュアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

コトウ 「『ソーラービーム』がクリーンヒットォ!! ミロカロスには効果が抜群だーーー!!」

バシャーモ 「シャモーーー!!」

ライボルト 「ラーーーイッ!!」

バシャーモ 「シャモッ!?」

ドゴォォンッ! バチバチィッ!!

コトウ 「今度は空中でバシャーモとライボルトが激突! こちらはバシャーモが打ち勝ったぁ!!」

ハルカ 「ライボルト!!」

ヤエコ 「ミロカロス!!」

ライボルト 「ラ、ライッ!」

ミロカロス 「ミ…ミロッ」

ハルカ (あっちのバシャーモは私のよりも数段パワーがあるわね)

少なくとも私のバシャーモとやった時は、ライボルトはあそこまで簡単に打ち負けていなかった。
だけど今の攻防は完全にこちらの負け、ライボルトは思いっきり吹き飛ばされた。
逆に、ダーテングとミロカロスの攻防は完全にこちらの勝利。
単純に技の威力で押し込んだ感じね。

コトウ 「互いのポケモンが一旦、息を整えます…やや膠着状態か?」

ヤエコ (確かに…言うだけの事はあるようね)
ヤエコ (どんなトレーニングをしてきたのか知らないけれど、こんな短期間でここまでのレベルアップをしてきたなんて)
ヤエコ 「プライドが傷つけられるわね…」

ハルカ 「…?」

ヤエコは何かをつぶやいたようだったけど、よく聞こえなかった。
とりあえず、今の所は五分、こっからが本当の勝負ね!

ヤエコ 「ミロカロス『じこさいせい』! バシャーモはダーテングに『かえんほうしゃ』よ!!」

ミロカロス 「ミロ〜!!」
バシャーモ 「シャモーーーー!!」

パァァァァッ!!

コトウ 「ミロカロス! ここで体力を回復!! 同時にバシャーモが攻撃に入る!!」

ハルカ 「く…やっぱりそう来るのか! ライボルト『じゅうでん』でダーテングを庇って!! ダーテングは『わるだくみ』よ!!」

ヤエコ 「何ですって!?」

やっぱり驚いた。
私も最初は驚いていた…この娘が『わるだくみ』を覚えるなんてね。
でも、ヒントはあった。
それは、以前の特訓の時、キヨハさんが言った言葉。

『もしかしたら、ハルカちゃんのポケモンも「わるだくみ」が使えるようになるかもね』

ハルカ (予想通り、ダーテングは使うことができた)

きっと、キヨハさんは知っていたんだ…コノハナが進化したら使えるようになると言うことが。
今回の攻防は、多分私の勝ち。
相手は、こっちに能力アップの技があることを読んでいなかった。
回復技は確かに強力だけど、ミロカロスとの戦いならミクリさんとのバトルで経験済み!
こう言う場合、相手の回復を読んでこっちは能力アップを仕掛けるのが正解よ!!

ライボルト 「ラ〜イーーーー!!」

ゴオオオオオオォォォッ!!

強い日差しのせいで、『かえんほうしゃ』威力が高い。
だけど、ライボルトも『じゅうでん』で特殊防御を高めているから十分耐えてくれる!
その隙に、ダーテングは能力を高める!

ダーテング 「テ〜ンテンッ! テンッ!」

ダーテングは妙なポーズを取り、『わるだくみ』をする。
意味は良くわからないけど、とりあえずこれで特殊攻撃力はグ〜ンとアップ!

ハルカ 「さぁ反撃よ! ダーテング、ミロカロスに『ソーラービーム』!!」
ハルカ 「ライボルトはバシャーモに『かみなり』よ!!」

ダーテング 「テーーーーーーーーーンッ!!」
ライボルト 「ラーーーーイーーーー!!」

キュィィ…ギュアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!
カッ! ピッシャァァアアンッ!!

ヤエコ 「ミロカロス『あまごい』! バシャーモはミロカロスを庇って『まもる』よ!!」

ピキィィンッ!! ギュアアアアアアアアァァッ!! ピッシャアアアアンッ!!

コトウ 「バシャーモ『まもる』で攻撃を完全にシャットアウト!! ヤエコ選手、無傷で乗り越えたーー!!」

ハルカ 「くっ! 仕掛けるのが速すぎた…!?」

これで私のポケモンは一気に隙だらけになる。
しかも、ミロカロスはいきなり。

ミロカロス 「ミローーーーーー!!!」

ザアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

コトウ 「今度は土砂降りの雨が降り注ぐ!! さながら、ここ第8スタジアムは天変地異に見舞われています!!」

ハルカ 「雨…! だったら!!」

ヤエコ (今度は利点と不利点が逆転している、半ば破れかぶれだったけど…!)
ヤエコ 「バシャーモ、ダーテングに『スカイアッパー』!! ミロカロスはライボルトに『ハイドロポンプ』!!」

ハルカ 「同時攻撃! まだ隙はある!!」
ハルカ 「ライボルト『まもる』!! ダーテングはバシャーモに『じんつうりき』!!」

ヤエコ 「!?」

バシャーモ 「シャモーーー!!」

ダーテング 「テーーーンッ!!」

ギュギュギュンッ!!

バシャーモ 「シャモッ!?」

ドッギャァッ!

ミロカロス 「ミローーーーーーーーーー!!」

ドギュアアアアアアアアアアァァァァッ!!

ライボルト 「ライッ!!」

ピキィィンッ!!

コトウ 「今度はヤエコ選手の同時攻撃! だが、ハルカ選手はその上を行く!」

審判 「バシャーモ、戦闘不能!!」

コトウ 「ここでついにバシャーモがダウン!! これで一気にヤエコ選手がピンチになったぞーー!!」
コトウ 「さぁハルカ選手! 下克上は目の前だ!! 一気に決められるかぁ!?」

ヤエコ 「く…戻りなさい、バシャーモ!」

シュボンッ!

ハルカ 「よしっ! これなら…!」

後は2対1、しかも相性のいいポケモンが2体、ここまで来れば後は一気に決められる!!
私は、迷うことなく攻勢に出る。

ハルカ 「ダーテング『タネマシンガン』! ライボルト『かみなり』!!」

ヤエコ 「勝利を確信したわね! ミロカロス、ダーテングに『あやしいひかり』!!」

ミロカロス 「ミ〜ロ〜!」

ダーテング 「テ〜…テンッ!?」

コトウ 「あ〜っと! ここでダーテング混乱してしまったーー!!」

ライボルト 「ラーーーーイーーーー!!」

ピッシャァァァァンッ!!

ミロカロス 「ミ、ミローーー!!」

ヤエコ 「耐えるのよ! ミロカロス!!」

ハルカ 「ダーテング! トドメよ!!」

ダーテング 「テ〜ン〜♪」

ドババババババッ!!

ライボルト 「ラ、ライッ!?」

ドドドドドドッ!!

コトウ 「何とーー! ダーテング、わけもわからず味方を攻撃!! これは痛いーー!!」

ハルカ 「うげっ!?」

ライボルト 「ラ、ライ…」

審判 「ライボルト戦闘不能!」

コトウ 「何と言うことかーーー!! ハルカ選手痛恨!!」
コトウ 「これでまだまだ勝負はわからなくなってしまったーー!!」

ハルカ (何つーベタな展開…普通、ここでひっくり返る!?)

ヤエコ (運も実力の内と言うけど…プライドが傷つくわ、本当に)
ヤエコ (だけど、もうなりふり構っていられない、こうなったらやるしかないわ!)
ヤエコ 「ミロカロス『じこさいせい』よ!!」

ミロカロス 「ミロ〜」

カァァァッ

ハルカ 「く…ダーテング『タネマシンガン』!!」

ダーテング 「テ〜ンッ♪」

バババババッ!!

ハルカ 「わひゃぁぁっ!? ちゃんと相手見なさいよーーー!!」

ダーテングはでたらめに『タネマシンガン』を放つ。
当然、それが相手に当たるわけもなく、相手は悠々と体力を回復してしまった。

ハルカ (ヤバイ…どうする!?)

マズイ展開になってきた。
このままでは主人公予選敗退で、ゲームオーバー!
ただでさえ、崖っぷちでここまで来てるのに、さすがに洒落にならない!

ハルカ (ダメだぁ!! ロクな考えが浮かばない!!)

今までも色んな危機に襲われたけど、こう言うのは初めてだわ!
混乱で動けないなんて…もう後は運に頼るしかない!?

ヤエコ 「悪いけれど、今度も私の勝ちにさせてもらうわ!! ミロカロス『れいとうビーム』!!」
ハルカ 「こうなったら破れかぶれ!! ダーテング『にほんばれ』よ!!

ミロカロス 「ミ〜ローーーー!!」

ダーテング 「テ〜ン〜♪」

コオオオキィィィィ!! ゴオオオオオオオオオオォォォッジュジュジュジュジュジュジュウゥゥゥッ!!

コトウ 「出たーーー!! 『にほんばれ』が発動!! 運良く『れいとうビーム』をかき消したぞーー!?」

ヤエコ 「そ、そんな…!」

ハルカ 「もう、運でも何でもいい!! ダーテング『ソーラービーム』!!」

ダーテング 「ダ〜テ〜〜〜〜ン!!」

キュィィ…ドッギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

ミロカロス 「!!」

ギュアアアアアアアアアアァァァァァ!! ドッバアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァンッ!!!!

今度は真っ直ぐ相手に向かって技を放ったダーテング。
ヤエコのミロカロスは爆発と共に吹き飛び、壁に叩きつけられた。
起き上がる様子は…ない!

審判 「…ミロカロス戦闘不能!! よって勝者、ハルカ選手!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!

コトウ 「決まったーーー!! 大どんでん返しを制したのは、ハルカ選手!!」
コトウ 「最後の最後までどうなるかわからない、緊張感のあるバトルでしたが、最後は運がハルカ選手に傾いたかぁ!?」

ノリカ 「ドアホーーー!! 何が運よ! ハルカ様の実力に決まってるでしょうが!!」

ハルカファンA 「その通りじゃーーー!!」
ハルカファンB 「ギャハハッ!! 熱くて死ぬぜーーー!?」
ハルカファンC 「ブラボーーー! おおブラボーーーー!!」



………。



ヤエコ 「…戻ってミロカロス」

シュボンッ!

ハルカ 「……」

ヤエコ 「……私の負けね」
ヤエコ 「言いたいことはいくらでもあるでしょう? 好きに言ったら…」

ヤエコは俯きながら、明らかに投げやりな言い方でそう言う。
仕方ないので、私は月並みな言葉を与えた。

ハルカ 「ざまあみろ」

ヤエコ 「!! …正直で嬉しいわ」

ヤエコはひくついた笑いを返しながらもそう言った。
怒った様で何より。
このまま落ち込んで帰られても気分悪いしね。

ハルカ 「まっ、運で勝ったようなものだし、素直には喜びたくないわね」
ハルカ 「次やる時、白黒はっきりつけるわ…一応1勝1敗だしね」

そう言って、私はヤエコに背中を向ける。
とりあえず、あんなこと言ったけど、実際にはあんまりやりたくないかも…正直、今回は疲れた。
リターンマッチって、色々気負っちゃうから何か慣れない。
次やるなら、本当に完全勝利しないと!

ヤエコ 「……」
ヤエコ (嫌な女ね…前しか見てない。でも…ちょっと羨ましいかもしれないわね)
ヤエコ (上を知らないっていうのは…羨ましいわ)



………。



コトウ 「どうにか初戦を制したハルカ選手! いきなり20位の強豪を打ち倒しての2回戦進出!」
コトウ 「惜しくも敗れたヤエコ選手は、そのまま会場を去ります…これがトーナメントの辛い現実です」
コトウ 「そう、敗れた物には何も残らない! オール・オア・ナッシング!! ポケモンリーグの予選トーナメントに敗退は許されません!!」


ハルカ 「……」

私は去っていくヤエコの姿を見て思う。
負けた時点で私の挑戦は終わり…。
私はテストで最下位なんだから、いつ負けても不思議じゃない。
だけど、負けるつもりはさらさらない。
やるからには、絶対勝つ!
相手が誰だろうと、私は絶対勝ってみせる…その位の意気込みがないと。

ハルカ (絶対上には、上れない…)

私は、後の戦いで待つであろう強敵たちの姿を思い浮かべる。
そこへたどり着くには…まだ遠い。
でも、このリーグ中に追いついてみせる!
私は、ここから一気に強くなる!!

ハルカ 「……」

ミツル 「ハルカさん」

ハルカ 「…ミツル君」

ミツル 「いいバトルでした、さすがハルカさんです」
ミツル 「やっぱり、ハルカさんは凄い…僕の憧れの人です」

ミツル君は真面目な顔でそう言う。
この子もどこまでの実力なのか。
結局、チャンピオンロードでは戦うことがなかった。
けれど…これだけは確実にわかる。

ハルカ (あの時やっていたら…絶対負けてた)

状況が悪かったのもある…。
でも、万全の状態で挑んだとしても、多分負けていた気がする。
ミツル君にとっても初の大舞台だと言うのに、ミツル君は緊張一つ見せない。
まるで、自分がそこにいるのが当たり前のように馴染んでしまっている。
適応力…というのかもしれない。
多分、ミツル君はここまで来るための素養を、初めから持っていたのでしょうね。
だから、きっとミツル君も私と同じ…このリーグでの戦いで成長を見せている。
きっと、ミツル君と私とのバトルは、『成長力』の勝負で決まる。
だからこそ、私はヤエコにお礼を言いたい…心の中で。

ハルカ (さっきのバトルで私のポケモンは確実に成長した)
ハルカ (それでミツル君との差が埋まるのかはわからない…だけど)
ハルカ (絶対に負けたくない…!)

私は心でそう思う。
負けて当たり前の順位…でも、負けたくはない。
私は強くなって上を目指す。
待っている人のいる場所へ、一気に駆け上がる!!



…To be continued




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