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POCKET MONSTER RUBY



第69話 『激突! 関西魂!!』




『4月6日 時刻11:00 サイユウシティ・自由公園』


ハルカ 「………」

キッヴァ 「……」

ミク 「ふたりとも、準備はいい?」

私は、前回に続き、バトルを続けていた。
今度はどんな人を見つけるのかと思えば、またしても見たことのあるトレーナー。
この人はヒビキさんに負けた人だ、かなりの実力者。
今回ばかりは、勝てないかもしれない…ううん、弱気にはならない!
次の相手はキヨハさん! 勝てなきゃ勝負にならない!!

ハルカ 「…よし、やるしかない! 任せたわ!」

キッヴァ 「!!」

ボボンッ!!

アーマルド 「アーッマ!!」

ジュカイン 「ジュッカ!」

私はアーマルドを繰り出し、キッヴァさんはジュカインを繰り出す。
タイプ相性はこちらの方が有利ね。
ちなみに、今回は2対2のシングルバトル。
最初が有利だからと言って、侮れない。
ましてや、相手はフィーナちゃんたちよりも成績が上の選手だ…初めから本気にならないと。

キッヴァ (ハルカ選手か…まだポケモントレーナーになって僅かと聞いている)
キッヴァ (だが、彼女のバトルを見る限りでは、とてもそうは思えない)
キッヴァ (果たして、私のポケモンで勝てるのか?)

ハルカ (先に攻めてこないようね…だったら!)
ハルカ 「アーマルド! 『つばめがえし』!!」

アーマルド 「アーッマ!!」

ズシンズシンズシン!!

アーマルドは重量感のある走りでジュカインに攻め寄る。
ジュカインはその場で戦闘態勢のまま動く気配は無い。

ハルカ 「行けっ!」

アーマルド 「アマッ!!」

キッヴァ 「『みきり』!」

ヒュッ! ドズアァンッ!!

アーマルド 「!?」

キッヴァ 「『リーフブレード』!!」

ジュカイン 「ジュッカ!!」

ズバァッ!!

アーマルド 「ア、アマーー!!」

ズザザァッ!!

ハルカ (!! 速い…あのタイミングで動かれたら、アーマルドはかわしようが無い)

ジュカインはアーマルドが技を仕掛けるタイミングを『みきり』で完全回避する。
当然のように、対象を失ってアーマルドは隙が出来る。
そして、即カウンターの『リーフブレード』…思ったよりも効いた様ね。
これは、一筋縄ではいかなさそうね…。

キッヴァ (一手目は取った、次はどう来る?)

ジュカイン 「………」

アーマルド 「アマ、アマアマッ!!」

ハルカ (アーマルドはまだまだ元気、ダメージはそれほどじゃない)
ハルカ (だけど、待っている…『みきり』に絶対の自信を持っているってことか…)

ちなみに『みきり』は『まもる』と同様の効果を持つ防御技。
ただし、受け止めるための『まもる』とは違い、『みきり』は回避することがポイント。
相手の攻撃を完全回避するだけに、カウンターを取りやすいのが魅力の技。
『まもる』はどんな攻撃でも必ず防げるけど、防いだ後の動きに多少の制限がかかるのよね…。

ハルカ (もちろん、『みきり』にも弱点はある)

範囲の大きすぎる攻撃は回避できないこともあるし、PPも少ない。
連続使用は当然失敗するし、失敗した時のリスクは『まもる』以上かもしれない。
ともかく、長期戦にはまるで向かない技…それだけで勝つのは難しい。

ハルカ (とはいえ…ジュカインのスピードは厄介ね)

アーマルドとは対照的に、スピードと特殊能力が高いジュカイン。
『みきり』との相性は抜群ね…攻めるだけじゃ、勝てそうもないわね。

ミク (…ハルカさん、考えているわね)
ミク (相手が強ければ強いほど、それに合わせてレベルアップをする…ザラキさんにとっては、非常に危険な相手だわ)
ミク (この戦いの中でさえ、すでにレベルを上げ始めている…恐らく、アーマルドのレベルは、すでにジュカインを超え始めている)

ハルカ 「アーマルド『すなあらし』!」

アーマルド 「アマッ!」

ビュゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオォォッ!!!

キッヴァ 「…く! ジュカイン『タネマシンガン』!!」

ジュカイン 「ジュッカ! カーーーーーーー!!」

バババババババッ!!

アーマルド 「!!〜アマーー!!」

バァンッ!!

キッヴァ 「! 弾き返した!?」

ハルカ 「いいわよアーマルド! 『ロックブラスト』!!」

私は攻撃を弾き返したアーマルドに指示を出す。
今度の技は私も初めて使う新技。
アーマルドは口を大きく開け、そこから無数の岩弾を繰り出した。

バババババババッ!! ドガガガッ!!

ジュカイン 「ジュ、ジュッカーーー!!」

直径5cm大の岩が連続で打ち出される。
適当な軌道だけど、4発がジュカインに激突。
ジュカインは派手に吹き飛んだ。

ジュカイン 「ジュ、ジュカッ!」

キッヴァ (4発もらったか…さすがにダメージが大きい)
キッヴァ (だが、それが命取りだ!!)
キッヴァ 「ジュカイン『リーフストーム』!!」

ハルカ 「『まもる』!!」

キッヴァ 「!?」

私は、キッヴァさんの指示に少し遅れたタイミングで『まもる』を指示する。
相手の技は初めて聞く技だけど、このタイミングで言う以上、大技だろう。
ジュカインは何やら全身を震わせ、緑の葉の様な物を、自分の周りに大量発生させる。
そして、それを一気にアーマルドへ向け、竜巻のように放った。
それとほぼ同時に、アーマルドは『まもる』を行う。

ジュカイン 「ジュッカーーーーーーーーーー!!!!」

アーマルド 「アマッ!」

ドギュオオオオオオオォォォォォゥンッ!! ピッキィィンッ!!!

アーマルド 「アマーー!!」

ゴブワァァァァッ!!!

アーマルドは『リーフストーム』を『まもる』で弾き、高らかに叫ぶ。
無論アーマルドは無傷、逆にジュカインは全ての力を使い果たしたかのような状態だった。

ハルカ 「アーマルド…!」
キッヴァ 「戻れジュカイン!」

シュボンッ!!

ハルカ 「……」

私が言う前に、キッヴァさんはジュカインを戻す。
これ以上は戦えないと悟ったのだろう…さすがにいい判断ね。

ミク (甘いと言えば甘い…これが実戦であれば、ここで倒れかけのポケモンを戻すことは次のポケモンへの負担になる)
ミク (ポケモンは倒れない限り、負けと言う扱いにはならない)
ミク (審判がダウンと判断しない限り、『その』ポケモンは戦えると判断されるわ)
ミク (つまり、代わりに出てきたポケモンに加撃されても、それは認められる…)

キッヴァ 「…頼むぞ、『ソルロック』!!」

ボンッ!

ソルロック 「ルローーー!!」

ハルカ 「! ソルロックか…」

ミク (何故、攻撃しないの!? どう考えてもチャンス)
ミク (あの状況では、相手はポケモンを『交換』した、と判断するべき)
ミク (ダウンによる交代ではないわ…それなのに何故?)

私は、相手のソルロックと、自分のアーマルドを交互に見る。
アーマルドの体力は問題ない、このまま戦っても十分通用するはず。
とはいえ、相手がわざわざソルロックを出したことが気になる。

ハルカ (ミロカロスやメタグロスを出さなかった…)

あの2体は、どう考えてもアーマルドに相性がいい。
なのに出さなかった…その理由が気になる。
2体戦でのバトルで…一体?

キッヴァ 「…今度はこちらから仕掛ける! ソルロック『にほんばれ』!」

ソルロック 「ソルロー!!」

ゴオオオッ!! バヒュゥンッ!! カアアアアアアァァァァァァッ!!

ハルカ 「天候変化!? そう言うことか…!」

相手にとって、それほど『すなあらし』が嫌だったってわけね。
これで、今度は立場が変わった。
岩タイプなのに、ここで『にほんばれ』をわざわざ使ったと言うことは、それに対応した技を覚えさせているということ!

キッヴァ 「ソルロック『だいもんじ』!!」

ハルカ 「アーマルド『まもる』!!」

キッヴァ 「かかった! ソルロック、下だ!!」

ハルカ 「!?」

今のが、どういう意味なのかわからない。
ただ、『まもる』は読まれていた。
アーマルドはすでに動作に入っている。

ソルロック 「ソールローー!!」

ゴオァッ! ドゴォッ!!

アーマルド 「アーマッ!!」

ピキィィンッ!! ドゴアァァッ!!

ハルカ 「地面から炎が!?」

『だいもんじ』は地面に着弾すると同時にアーマルドの視界を塞ぐ。
日照のせいか、炎はかなりの勢いで燃え上がり、すぐには消えなかった。

キッヴァ 「よしっ、『ほのおのうず』!!」

ソルロック 「ソルローー!!」

ゴオオアアァァァッ!!

アーマルド 「ア、アマーー!!」

ハルカ 「!?」

すかさず、次弾が来る。
アーマルドは『まもる』の隙を突かれ、次の攻撃に反応できなかった。
アーマルドの周りを『ほのおのうず』が包み込み、アーマルドの動きを制限する。

ハルカ 「くっ、アーマルド戻って!!」

ヒュンッ…

ハルカ 「あれっ!? こんな時に故障!?」

ミク 「『ほのおのうず』は相手のポケモンを交換できなくする技よ! 効果が続いていいる限り、交換はできないわ!」

ミクさんが大きな声でそう言う。
私は、ここではっ、となり、相手を見る。
すでに相手は次の攻撃に入ろうとしていた。
何てこと…! 完全な判断ミス!

キッヴァ 「ソルロック『ソーラービーム』!!」

ソルロック 「ソールローーーーー!!」

キュィィ…ドギュアアアアアアアアアアァァァァッ!!

アーマルド 「アマーーー!!」

ゴオァァッ!! ズッ…シィィィンッ!!!

アーマルドの体が、前のめりに倒れる。
地面を小さく揺らし、炎は消え去る。

ハルカ 「……」

シュボンッ!!

私は無言でアーマルドを戻す。
まさか、こんなことになるなんて。
だけど、今は悔やんでも仕方がない。
同じ失敗をしなければいい! 私は次のポケモンを繰り出す。

ハルカ 「任せたわよ『フィオネ』!」

ボンッ!

フィオネ 「フィオッ♪」

クルクルクルッ!

フィオネは出てきた途端、くるくる回転しながら踊る。
何て言うか、元気な子だわ。

キッヴァ 「水タイプか…このタイミングで出したと言うことは…ソルロック!」

ハルカ 「フィオネ『あまごい』!!」

キッヴァ 「『にほんばれ』だ!!」

フィオネ 「フィオ〜!」

ソルロック 「ソルロー!!」

ゴォォッ! ヒュンッ……

キッヴァ 「なっ…速すぎた!?」

フィオネ 「フィオッ♪」

ゴゴゴゴッ…ザアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

何と、こちらから指示したにも関わらず、フィオネの方が遅れて『あまごい』を出した。
相手にとっては、それを読んだ上で『にほんばれ』を指示。
打ち消すつもりだったのだろうけど、先に『にほんばれ』が出てしまい、全くの作戦ミス。
と言うよりも…。

ハルカ (フィオネのレベルが低すぎたのね…同じ位のレベルなら、先に動いてたんだろうなぁ)

実際のところがどうなのかはわからないけど、とにかくチャンス!
私は意気揚々と次の技を指示する。

ハルカ 「フィオネ! 『みずのはどう』!!」

フィオネ 「フィオ〜!」

ギュッバァァッ!!

フィオネは両手を胸の辺りで近づけ、そこから『みずのはどう』を作り出して、両手を前に突き出したと同時に打ち出す。
雨の効果で威力を増したそれは、高速でソルロックに向かっていった。

キッヴァ 「く…『コスモパワー』!!」

ソルロック 「ソルロー!!」

カァァッ!! バッシャァァァンッ!!

ソルロックは、何やら銀色の光を放ち、『みずのはどう』に耐え切った。
今の技は…よくわからないけど、多分能力アップ。

ハルカ (それも、防御系!)

効果抜群で、耐えられた…レベルの差があるとはいえ、雨が降っている中であれでは。
予想はできた…でも、対抗策があるわけじゃない。
さて…どうしましょうかね。

ハルカ (これで、多分フィオネのレベル不足は読まれた)

キッヴァ (あのフィオネは、予想以上にレベルが足りていない)

ハルカ (防御も上がっている…今度は詰めにかかってくるはず)

キッヴァ (相性は悪い、ここはまず流れを変える!)

私は今までのバトルを全て振り返りながら、状況を組み立てる。
少ない経験ながらも、私は今まで強敵と戦ってきたつもりだ。
そのバトル経験を思い返し、相手の思考を読む。
下手に危ない能力を使う必要はない…私には格闘技の経験で培った『洞察力』がある。
ポケモンバトルではまだまだだけど、私の経験範囲内なら!

キッヴァ 「ソルロック『にほんばれ』!」
ハルカ 「フィオネ『あまごい』!!」

私たちは同時に叫ぶ。
そして、ポケモンたちも同時に動き出す。

ソルロック 「ソルローー!!」

ゴオォッ! カァァァァァッ!!!

フィオネ 「フィオ〜!」

ハルカ (ダメだわ! 同時に動いてたらフィオネがかなり遅れてる!!)

キッヴァ (行動を読まれたか! だが、ソルロックの方が数段速い! まだ雨に変わる時間差がある!!)
キッヴァ 「ソルロック『ソーラービーム』だ!!」

ソルロック 「ソールロ〜!」

キュィィ…!

フィオネ 「フィオッ!」

ポツポツ…ザアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

ソルロック 「ソ、ソルロ〜!!」

キュゥゥ…

キッヴァ (馬鹿な!? さっきよりも雨が降るのが速い! 計算上では、こちらの方が先に動けたはず!)

ハルカ 「…!」

私はガッツポーズを取る。
フィオネはこのバトルで、格段に動きが良くなった。
相手の速い組み立てのバトルを感じて、フィオネは無意識に行動を早くしようとしている。
私の声を聞いて、相手の反応を見て、フィオネはそれを少しづつ吸収する。
その結果がこれ…計算していた相手の公式を覆す!

ハルカ 「フィオネ、今がチャンスよ! 『たきのぼり』!!」

フィオネ 「フィオッ! フィ〜!!」

シャバババババッ!!

足元の水溜りを滑り、前傾姿勢で空中にいるソルロックの真下付近に近づく。
そして、その途中で溜めの終わったソルロックは攻撃を開始する。

キッヴァ 「まずい! ソルロック!!」

ソルロック 「ローーーーー!!」

ギュバアアアアアアアァァァァッ!! ドギャギャギャギャッ!!

フィオネ 「! フィオッ!!」

ソルロックの『ソーラービーム』はフィオネの通り過ぎた地面を打ち抜く。
そして、フィオネは勢いを残したまま、攻撃態勢に入る。

ハルカ 「いっけーーーー!!」

フィオネ 「フィ〜オーーーーーー!!!」

ドズアッパアアアアアァァァァンッ!!!

ソルロック 「ソ、ソルローーー!!」

ヒュゥゥ…ドッガァァンッ! ゴロゴロ!!

ソルロックは下から突き上げられ、勢いよく宙を舞って地面に落ちる。
数回地面を転がると、ソルロックはそのまま動きを止めた。

ミク 「…ソルロック戦闘不能! よって勝者ハルカ!!」

ハルカ 「よっし! 勝てた!!」

私はもう一度ガッツポーズを取る。
この勝利は大きい。
ランク的にも相当上の選手だ、数字の上でならフィーナちゃんたちよりも上に立った。

ハルカ (って言うか、数字だけならジェットさんは9位だったわよね? だったら、私って実は上位ランカー?)

私は、考えてみる。
今まで、私は自分のことをとにかく『最下位』だと思い続けていた。
でも、ヤエコやミツル君はもちろん、ジェットさんやリベルちゃん、キッヴァさんもそうだけど。

ハルカ (私は、そんなトレーナーたちを倒している…のよね)

もちろん、勝負は時の運。
もう一度戦ったらどうなるかわからない。
ミツル君とは、再戦はしたけど、そんなに敗色濃厚なバトルじゃなかった。

ハルカ (…むしろ、勝ってた?)

あのバトルは途中で意識が途切れたからわからないけれど、勝っていたような気もする。
私は、これらのことを集めて考える。
そして、脳裏にこの言葉が過ぎる。


『あなたの実力じゃ、この辺りのトレーナーは避けるのも当然でしょうね』
『例え戦ったとしても、今のあなたじゃ相手にならないわ』
『酷い…と言うか、あなた、自分の実力をもう少し理解した方がいいわ』


ミクさんの言葉。
私は、この言葉を『自分が格下』だからだと思って解釈していた。
でも、ひょっとしたら逆だったのかもしれない。

ハルカ (皆、私を見て避けるような感じだった…)

私は、上位ランカーを倒したトレーナー…
普通に考えれば、予選も通り抜けてないようなトレーナーじゃ、もう私とはレベルが合わない?

ハルカ 「……」

キッヴァ 「…ハルカさん?」

ハルカ 「!? あ、キ、キッヴァさん…」

気がつくと、キッヴァさんが目の前にいた。
やっぱり、こうして見ると大きい。
170cmはある女性って、やっぱり大人ってイメージがする。

キッヴァ 「…完敗です、さすがは本戦に出場するトレーナーですね」

ハルカ 「え…あ、いやそんな私なんて」

ミク 「謙遜する必要は無いわ…あなたの実力は、ここまでのバトルで証明済み」
ミク 「もっと胸を張りなさい、じゃないと全力で戦った敗者に失礼よ」

ハルカ 「あ、す、すみません! 私、そんなつもりじゃ…」

キッヴァ 「いえ、気にしないでください…」
キッヴァ 「それと、私には別に敬語を使わなくても構いませんよ? 私の方が年下ですから…」

ハルカ 「はぁっ!?」

ミク 「………」

キッヴァさんの言葉に、私は素っ頓狂な声で驚き、ミクさんは眼を見開いて無言だった。
少なからず…驚いている様子。



………。



キッヴァ 「あ、あの…そう固まられても、どう返せばいいのか」

ハルカ 「だ、だって…どう見ても、ねぇ?」

ミク 「…人には様々な体型があるわ。とやかく言うのは失礼よ」

ミクさんはそう言って、さらりと流す。
とはいえ、顔は若干引きつっているようにも見えた。

キッヴァ 「…確かに、よく間違えられますけど」

ハルカ 「と、年下って…いくつなの?」

キッヴァ 「…15歳、です」

ハルカ 「が〜ん…こんな15歳あり?」

身長170cm…スリムな長身に、バランスのいいスタイル。
男勝りな口調に、クールな眼差し…どう見ても、子供に見えん!

キッヴァ 「……」(汗)

ハルカ 「…そう言えば、ミクさんって何歳ですか?」

ミク 「……19よ」

私はふたりを見比べる…。
同じ長身ながら、年の差4歳。
身長…キッヴァ(ちゃん?)の方が高い。
スタイル…ミクさんの方がダイナマイツだけど、キッヴァちゃんはスリムとも取れる。
表情…どっちもクールビューティに見えるけど、ミクさんの方が若干やんちゃそうに見える。
どう見てもキッヴァちゃんの方が落ち着いている…。

ハルカ 「…はぁ」

ミク 「…そのため息は何かしら?」

キッヴァ 「………」(汗)

私は、この世の不思議をかみ締めながら、その場で脱力した。
さすがに疲れたかも…。



………。
……。
…。



『4月6日 時刻12:00 海の家』


ハルカ 「ぷっは〜」

ミク 「…よく食べるわね」

私が2杯目のラーメンを食い終わると、ミクさんはそう言う。
ちなみに、ご飯も2杯お代わりしている。
まぁ、確かに普通よりかなり多いけどね。

ハルカ 「別に、多すぎると言うわけじゃないですけど…ミクさんだって、その体格維持しようと思ったら食べるでしょ?」

ミク 「……」

ミクさんは無言でコーラを飲む。
ミクさんの食事は焼きそば並盛一皿。
どう考えても少ない。

ハルカ 「…もしかして、ダイエットでも考えてるんですか?」

ミク 「…別に」

ミクさんは至って冷静に答える。
何か、考えてるわね。
この人、な〜んか独特の雰囲気があるのよねぇ。
何かを隠してるって言うか…陰がある気がする。

ハルカ (不思議と、悪い気は感じない…でも、信じ切れない部分もある)

ミク 「………」

ミクさんは、必要以上に言葉を発しない。
淡白と言えばそうだけど、とにかく効率主義な気がする。
例を挙げるなら、キヨミさんとキヨハさんを足して2で割ったような感じね。

ハルカ 「…はぁ」

ミク 「…何の溜息かしら?」

ハルカ 「…別に」

私はテーブルにつんのめって、答える。
何だか、疲れた。
連続バトルのせいで、精神的にきつい。
考えることも多いし、何だかこのままバトルを続けるだけでいいのか疑問に思う。

ハルカ (私って、決定的に足りないものがあるからなぁ…)

まず、知識。
私は全くポケモンのことがわかってない。
技の効果しかり、特性しかり。
自分の頭じゃ全く対応しきれないのは一番の問題。

続いて経験。
さすがにどれだけがんばった所で、経験なんてものはすぐに追いつくわけが無い。
より長い時間をかけて培うものだから、こればかりは考えても覆しようは無い。

最後にレベル。
今までに比べれば、ここに来て劇的に強くなって入るけど、まだ足りない。
本番になれば、その場でレベルも上がるかもしれないけど、そう上手くいくとは思えない。

ハルカ (何せ、相手はあのキヨハさん…絶対、何か対策を取ってくる)

キヨハさんが、正面から普通のバトルをするとは思えない。
キヨハさんのバトルは、全て詰め将棋。
本番がどんなルールになるかはわからないけど、絶対に詰めの手を打って来る。
私なんかが、それに気づくわけも無いし、考えるだけ無駄。
だからこそ、レベルを上げておくしか対策は無い。
キヨハさんのポケモンを一気に押し切れるくらいのレベルが欲しい。
幸い、休日はまだまだある…レベルを上げる時間は必ずある。

ハルカ (結局…いつも通りのやり方で煮詰めるしかない、か)

元々、経験の浅い私にそんな引き出しがあるわけも無い。
どの道、私にできるのは戦って、勝つだけ。
戦法なんて、あってないようなもの…やれることをやるだけね。

ハルカ 「うっし! もう開き直る! やるだけやるわ!!」

ミク 「…? 急に、どうしたの?」

ハルカ 「…悩むのを止めただけです」
ハルカ 「今更ですけど…」

私は、微妙な表情でそう言う。
そして、私は立ち上がって、レジに向かった。



………。



ハルカ 「…さ〜て、これからどうしよっかなぁ」

ミク 「もう、バトルは止めるのかしら?」

ハルカ 「…それも考え中」

バトルを続けるのはいいが、疲労も大きい。
まだ昼を過ぎたばかり、一日は長いのだから、もうちょっと効率のいい特訓をしたい。

ハルカ 「とは言っても、他に有効な方法も思いつかないのよねぇ…」

? 「悩んどるようやな」

ハルカ 「ん?」

ゴウスケ 「よ」

何と、いきなり声をかけてきたのは、ゴウスケさんだった。
そう言えば、あれから一度も見てなかったけど。

ハルカ 「何で、こんな所に?」

ゴウスケ 「せやな、敵情視察ってとこか」

ハルカ 「…キヨミさんと戦うのは、2回戦ですよ?」

私は、カマをかけてみる。
すると、ゴウスケさんは笑って。

ゴウスケ 「まぁな! せやけど、どうせ勝つやろ思てな」

気軽に言ってくれる。
私の相手はキヨハさんだと言うのに、この人は私が勝つと思っているのだ。
その自信はどこから来るのか…。

ゴウスケ 「何や? もしかして負けるつもりで戦うんか?」

ハルカ 「…それは、違いますけど」

ゴウスケ 「なら、勝つやろ」

どうにも、この人の考えてることが読めない。
さすが、あのキヨミさんの元彼だ…全く思考が読めない。

ミク (…この男、どこかで?)

ゴウスケ 「何や、偉い別嬪さんがおるなぁ…」
ゴウスケ 「ハルカちゃんの知り合いか?」

ハルカ 「あ、はい…と言っても、そんなに親しいわけじゃないですけど…」

ミク 「……」

ミクさんは、何も語らずただペコリと頭を下げて挨拶する。
そこから何かを悟ったのか、ゴウスケさんは複雑そうな顔で頭を掻いた。

ゴウスケ 「で、ハルカちゃんは、これから特訓かいな?」

ハルカ 「ええ、そのつもりですけど…」

ゴウスケ 「けど?」

ゴウスケさんは笑いながら聞く。
この人、楽しんでるんじゃないでしょうね?

ハルカ 「どうしようかな…って」

ゴウスケ 「そら…どないしたらええかな」

ゴウスケさんは複雑そうな顔で、そう言う。
そりゃ、そうだ。



………。



しばらくの沈黙。
やがて、ゴウスケさんが耐えかねたのか、口を開く。

ゴウスケ 「ま、まぁ…とりあえずバトルでもしたらええんとちゃう?」
ゴウスケ 「言うても、この辺でハルカちゃんのレベルアップを狙えそうなトレーナーがおらんけど」

ミク 「いるわよ…目の前に」

ハルカ 「…ええ、確かに」

ゴウスケ 「は? どこにおんねん…目の前って」
ゴウスケ 「…ワイには何も見えへんな」

ゴウスケさんはわかりきった表情でボケる。
本人はやる気が無さそうね。

ハルカ 「はぁ…まぁ、さすがにゴウスケさんを相手にはできませんけど」
ハルカ 「多分、バトルにならないと思いますし」

ゴウスケ 「いややな〜、ワイそんなすごうないて!」

ハルカ 「信用できません」

? 「ホンマに! まさしくその通り!」

ゴウスケ 「?」

ハルカ 「およ…別の方向から関西弁?」
ハルカ 「って言うか、ややエンジュなまり?」

私たちの背後から、突然そんな声が聞こえてきたのだ。
声のする方向を見ると、何やら窮屈そうなスーツを身にまとった超美青年がこっちを見ていた。
って、あの人どこかで見たような…。

ゴウスケ 「うわちゃ…最悪や」

美青年 「何やねん…ワテの顔見ていきなり」
美青年 「それとも、ワテに会うのがそんなに嬉しかったんかいな?」

どうやら、この人はゴウスケさんの知り合いのようだ。
同じ関西弁同士、何か深そうな関係ね。

ゴウスケ 「お前には会いとうなかったわ…まさかこんなとこにおるとは」
ゴウスケ 「まぁ、薄々予感はしとったけどな…試合見たさかい」

ゴウスケさんは試合と言った。
それはつまり、今大会の出場者…何だろうか?
それとも、別の大会のことかもしれないけど。

美青年 「試合? 何のことやろな?」

青年はそう言って、トボける。
明らかに嘘を吐いている。
しかもワザとらしい。
その仕草を見て、ゴウスケさんは顔をしかめる。

ゴウスケ 「やっぱ、お前とは気ぃ合わんわ」

美青年 「奇遇やな、ワテもや」

何やら、ふたりの間に無言のプレッシャーが生まれる。
な、何かやばそうな雰囲気が。

ゴウスケ 「…ほな、ワイはこれで」

美青年 「待ちぃな…まだ話はあるで」

ゴウスケ 「ワイはない!」

ゴウスケさんは嫌そうに言い返す。
何か、本当にヤバそうだ。

美青年 「折角、こうやって会うたんや、バトルのひとつでもしていかんかい」

ゴウスケ 「バトルやと? お前とかいな?」
ゴウスケ 「笑わせるなや…お前にまともなバトルができんのか?」

何だか、ゴウスケさんの口調が荒々しくなっていく。
バトルと聞いて、ゴウスケさんは少なからず反応しているようだ。

美青年 「見くびられたもんやな…誰かさんと違うて、ワテは正統派でっせ?」

ゴウスケ 「はっ、そんな洒落で笑いとるつもりかいな…逆に冷めるわ」

言葉とは裏腹に、ふたりはヒートアップしていく。
いつ殴りあいになってもおかしくない雰囲気だ。

ハルカ (てか、ヤンキー同士の抗争…)

ミク (どうして、ジョウト人って喧嘩をしたがるのかしら?)

私たちは、数歩下がったところで、すでに観戦モードに入っていた。
ゴウスケさんがバトルをするのなら、参考になるかもしれない。
元々レベルは違うであろうはずのトレーナーだ。
シンオウリーグ準優勝ともなれば、かなりの強さのはず。
興味は尽きないわね…。

美青年 「まさか、逃げるつもりやあらへんやろな?」
美青年 「シンオウリーグ準優勝、グランドフェスティバル・ヨスガ大会のトップコーディネイター…ゴウスケ様ともあろうお方が」

ゴウスケ 「上等や…そこまで言うなら覚悟できとるんやろな?」
ゴウスケ 「元、ポケモンレンジャー・ランク9…リングタウンのペテン師・ランマ」

ゴウスケさんはそんなことを言って挑発する。
すると、ランマと呼ばれた男性は、明らかに表情を変える。

ランマ 「…ペテン師は余計やろが。元ロケット団、ジョウト支部・支部長…ポケモン詐欺師のゴウスケはん?」

ハルカ (ロケット団…って)

ミク (…なるほどね、道理で見たことがある気がしたわ)

ゴウスケ 「いらんこと言うなや…誤解されるやろが」

ランマ 「さっきのお返しや…それに嘘は吐いてへん」
ランマ 「今かて、信用はしとらん…なに考えてんのか知らへんけど、ワテの目の黒い内はいらんことさせへんで?」

ランマさんは、独特の流し目でゴウスケさんを見る。
ゴウスケさんは、無言だったけど、何か言いたそうな顔だった。

ゴウスケ 「御託はもうええわ…やるなら、容赦はせぇへん」
ゴウスケ 「出るんや『ムウマージ』!!」

ボンッ!

ムウマージ 「マ〜♪」

ゴウスケさんは、先にポケモンを出す。
出てきたのは、何やら可愛らしい魔女っ子スタイルの黒と紫のポケモンだった。
見た目的にはゴーストっぽい。

ゴウスケ 「さっさとポケモン出せや! 何やったら6体同時でもかまへんで!?」
ゴウスケ 「片っ端から、叩き潰したるわ…」

ランマ 「冗談きついわ…誰があんさんなんかに6体も使うかいな、1体で十分や!」
ランマ 「出番でっせ…『ムウマ』」

ボンッ!

ムウマ 「ムゥ♪」

ランマさんが出したのは、何やら黒いポケモン。
頭だけ…と言えばわかりよいか。
これも、何だかゴーストっぽい。

ハルカ (って、名前が似てるけど…)

ゴウスケ 「…ムウマージ相手にわざわざムウマとは、進化系に対しての当てつけか?」

ランマ 「別に進化すれば強くなるとは限りまへん…ワテのムウマは、これで十分でっせ」

やはり、あのポケモンは進化系とそうでないポケモン。、
ムウマが進化して、ムウマージになるんだ。

ゴウスケ 「あんまり笑わせんなや!? ムウマージ『シャドーボール』や!!」

ランマ 「ムウマ『あくのはどう』」

ムウマージ 「マー!!」

ギュゥゥンッ!!

ムウマ 「ムゥ!」

ドギャァッ!! ボォンッ!!

ムウマージは素早く『シャドーボール』を口から放つ。
しかし、それに負けない速度でムウマは『あくのはどう』と言う技で相殺した。
見た目は自分を中心に黒い波動(気?)を広げる…といった感じ。
効果範囲はそこまで大きくないようで、互いにダメージを受けることはなかった。

ランマ 「お粗末な攻撃ですわ…そんなもんでっか?」

ゴウスケ 「…やれやれや、よっぽど本気にさせたいらしいな」
ゴウスケ 「ムウマージ、地面に『エナジーボール』や!!」

ムウマージ 「マー!」

ギョバァッ!! バァンッ!!

ムウマ 「ムマ!?」

ムウマージが口から放った、何やら緑のボールがムウマの足元に着弾して弾ける。
同時に、緑の光がムウマを巻き込み、何やら輝かせているように見える。

ハルカ (これって…?)

ランマ 「…! ムウマ『おにび』!」

ムウマ 「ムゥ!!」

ボボボッ!!

ゴウスケ 「『サイコキネシス』!」

ムウマージ 「ムウマー!」

ギュゥゥンッ!!! ドドドンッ!!

ムウマージは自分の周りに『サイコキネシス』を放ち、突然光を放った『おにび』を全てかき消す。
同時にムウマージの姿は青白く光り、ムウマージの姿を引き立てる。

ランマ 「…! このバトル、何のつもりや!?」

ゴウスケ 「何のつもり、やあらへん…ワイは本気になっただけや」
ゴウスケ 「これで、あんさんのポイントは半分くらいか…こっちは最初の減点だけやさかい、一気に優位やな」

ハルカ (やっぱり! これってコンテストバトル!?)

ゴウスケさんは、冷静さを取り戻した表情で、笑う。
逆にランマさんはしてやられた…と言った表情だ。

ゴウスケ 「ムウマージは、元々コンテストのためのポケモンや…バトルは専門やあらへん」
ゴウスケ 「せやから、これが『本気』や…ワイは倒すためだけにポケモンバトルはせぇへん」
ゴウスケ 「それとも、自分のポケモンを『魅せる』自信はあらへんか?」

ランマ 「…!」

ゴウスケさんは完全にペースを握った表情をしている。
ランマさんは悔しそうだ。
自分がバトルをコントロールしていると思った矢先、こんな流れにされたのだ。
普通のバトルをするんじゃなく、コンテストバトルに持ち込む。
ゴウスケさんは、そのまま流れを変えてしまった…凄い。

ゴウスケ 「使い手がそんな表情しとったら、ポケモンの魅力は減点や!」
ゴウスケ 「仕舞いにするで! ムウマージ、空中に『シャドーボール』!」

ムウマージ 「ムマ!」

ギュゥゥンッ!!

ムウマ 「!?」

ムウマージはムウマの頭上に『シャドーボール』を放つ。
当然、当てるためとは思えない。
そしてランマさんがすぐに指示を出す。

ランマ 「ムウマ! こっちも『シャドーボール』で打ち落とせ!!」

ムウマ 「ムゥ!」

ギュゥゥンッ! ドグォンッ!!

ムウマは頭上に『シャドーボール』を放ち、相殺に持ち込む。
そして、頭上で弾けた『シャドーボール』の輝きを浴び、ムウマはそれを見上げるような仕草でアピールする。

ゴウスケ 「『あやしいひかり』」

ムウマージ 「!!」

ボ〜…

ムウマ 「!? !?!?!?!」

ムウマは、『あやしいひかり』を浴び、突然フラフラと浮遊する。
完全に混乱している、これでは折角の輝きも減点だ。

ランマ 「しっかりしなはれ!」

ゴウスケ 「詰めが甘いわ…フィニッシュは『かみなり』!」

ムウマージ 「マージ!!」

カッ! ピッシャアアァァァァンッ!!!

ムウマ 「ムマーー!?」

ドォォォンッ!!

フラフラしていた所に、トドメの『かみなり』が襲い掛かる。
黒い輝きの中、ムウマは一瞬の雷鳴と爆発音の中に沈んでいった…。

ミク 「…ムウマ・バトルオフ!! よって、ウィナー・ゴウスケ!!」

ミクさんは、すぐにそう言う。
そして、次の瞬間。

ワアアアアアアアアアァァァァァッ!!!

女性A 「凄いわ!! 何てアピールなの!!」
女性B 「あんなにもポケモンの美しさを引き立てるなんて…」
女性C 「相手のポケモンを輝かせて、仕留める…とても真似できないわ!!」

パチパチパチパチパチッ!!!

ゴウスケさんのアピールを称える賞賛の声と拍手。
まさに、本日のヒーローだ。

ゴウスケ 「…こら、偉いことになってしもたわ」
ゴウスケ 「正体ばれる前に、帰るわ、ほな!!」

ダダダダダッ!!

女性A 「ね、ねぇ…あのコーディネイターって、もしかして」
女性B 「シンオウ・トップコーディネイターのゴウスケ様よ!!」
女性C 「きゃーーー!! ゴウスケ様待ってーーー!!!」

ドドドドドドドッ!!

何やら、ゴウスケさんの後を追う、幾人もの女性が追いかけていった。
す、凄いわね…さっすが有名人。

ランマ 「……」

シュボンッ!!

ランマ 「はっ…大したやっちゃ」
ランマ 「変わらんな…あの性格」

ハルカ 「あの…」

ランマ 「ん? あんたは…確かハルカ選手やったな、本戦出場の」

ハルカ 「あ、ハイ…」

ランマ 「で、ワテに何か用でっか?」

私は、多少ためらいながらも、聞くことにした。

ハルカ 「あの…ゴウスケさんって、本当は何なんですか?」
ハルカ 「知ってるんですよね…ランマさんは」

ランマ 「……」

私が聞くと、ランマさんは難しそうな表情で、口ごもる。
そして、一言だけ。

ランマ 「…知らん方がええ」

ハルカ 「…え?」

ランマ 「…あいつは、ただのトレーナーであり、コーディネイターや」
ランマ 「それ以上でもそれ以下でもない…せやから、何も知らん方がええ」
ランマ 「ただの、ポケモン馬鹿や…ポケモンが好きなだけの、な」

そう言って、ランマさんは去っていく。
私は、その背中を見て思った。
きっと、ふたりはとても深い所で、ぶつかった者同士。
多分、互いにわかり合う術がなかった。
だから、衝突して、戦う。
それでも、相手のことを知ってしまうから、何かを思う。
男同士の、何かがあったんだろうな…。

ミク 「…とんだイベントだったわね」

ハルカ 「はい…でも、凄く経験になりました!」

私は胸を張ってそう言う。
ゴウスケさんのアピールは、本当にポケモンを『魅せる』ためのバトルだった。
倒すためじゃなく、魅せる。
世の中には、ああ言ったバトルをする人もいる…何だか、見てて凄く気分が良かった。
上に住んでる人は、皆ギスギスしてると思ってただけに、あんなバトルを見ると、凄く嬉しい。
コーディネイターかぁ…ミカゲも相当凄いけど、ゴウスケさんとやったら、どっちが上なんだろ?
ふとした疑問だった…が、その答えはとても出せそうになかった。
まさに、神のみぞ知る…って奴ね。

ハルカ (私も頑張らないと! もっとポケモンたちのために!)



…To be continued




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