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POCKET MONSTER RUBY



第72話 『熱い会場にクールな演技を! ポケモンコンテスト・サイユウ大会!!』




『4月7日 時刻9:00 サイユウシティ・ポケモンセンター』


ノリカ 「ついに我が世の春が来たーーーーー!!

サヤ 「………」

アムカ 「…何これ?」

ハルカ 「…へ〜、わざわざここでやるんだ」

私たちは、少し遅めの朝食をとった後、ポケモンセンターの壁に大々的に貼り付けられている一枚のポスターを見ていた。
ノリカはそれを見て狂喜し、サヤちゃんは無言で書かれている内容を見ていた。
アムカ…興味以前の問題に意味がわかってない。
そんな、ポスターに書かれている内容とは…


ポケモンコンテスト・サイユウ大会! 本日10:00より緊急開催!!
エントリーの締め切りは9:30まで!!
参加者求ム!!


ハルカ 「…で? 当然、出るのね」

ノリカ 「もちろんであります! 不肖ながら、このノリカが薙ぎ払ってご覧にいれます!!」

ビシィッ!と、軍隊式の敬礼でノリカは勝利宣言する。
こっちは、まぁ当然と考えても、こっちは…?

サヤ 「………」

アムカ 「うにゅ…サヤ考えてる〜」

ノリカ 「もちろん、出るんでしょ? 折角のコンテストだもん!」
ノリカ 「まぁ、地方大会だから、景品は非公式のリボンだけど」

サヤ 「…出るのは構わないけれど」

アムカ 「…けれど?」

サヤちゃんは何やら俯きながら考えているようだ。
コンテストに出ること自体は問題ないようだけど、何かあるのかしら?

サヤ 「…優勝は、まずできないと思うわよ?」

ノリカ 「何を弱気な!? 今臆してどうするサヤ軍曹!?」

ノリカはそう言ってサヤを炊きつけようとする。
いつの間に軍属になったのかは知らないが、無視しよう。

サヤ 「…だったら、ミカゲさんやゴウスケさんに勝てる自身…ある?」

ハルカ 「ぐは…それは辛い」

アムカ 「誰それ〜?」

よくよく考えても見れば、ここにはトップコーディネイターの実力を持った人間がふたりもいる…。
出るとは限らないけど、出てきたらまず優勝は遠のく。
ミカゲにしろゴウスケさんにしろ、コーディネイターとしての実力は折り紙つきだ。

ノリカ 「ぬぅぅ…しかし手前は意地でも突貫するであります!!」
ノリカ 「ハルカ司令! どうか、このノリカに出撃許可を!!」

ハルカ 「よし、許す」

ノリカ 「了解であります!! それでは、エントリーと準備がありますので、即刻会場に向かうであります!!」
ノリカ 「うおおおー!! XXXX年もの間、演習を続けてきた部門の家柄が! 庶民の寄せ集めの軍隊とは違うことを、見せてやれーーーー!!!」

ドドドドドドドドドドドドッ!!!

まさに、カミカゼ…その意気や良し。

ハルカ (…華々しく散れ)

私は、そんな予感を胸に抱きつつ、サヤちゃんの反応を見守る。

サヤ 「…仕方ありませんね、私も行きます」

ハルカ 「おっ、さっすがサヤちゃん♪ ライバルをひとり死地には送れないか」

サヤ 「…別に、そういうわけではありません」
サヤ 「きっちりと、決着を着けに行くだけです…」

アムカ 「あっ、待ってよサヤ〜」

タタタタタッ!!

サヤちゃんはノリカを追う様に、駆け足気味に走っていった。
アムカもそれを追っていったが…。

ハルカ (って、アムカまで出るつもりじゃないでしょうね?)

アムカの実力は良く知らないが、そもそもポケモンを持っているのだろうか?
何やらマッスグマに並々ならぬ愛情を持っているようだけど…。

ハルカ 「…まっ、いいか」
ハルカ 「私も会場に行こっと」

とりあえず、内容と結果が気になるので直接観戦するのが一番だろう、と判断。
私は3人を追いかけるように会場へと足を運んだ。



………。
……。
…。



『時刻9:55 サイユウシティ・第0スタジアム』


ハルカ 「へぇ〜…いつの間にこんなコンテスト用の機材を詰め込んだのか」

アムカ 「…ここって、前にバトルしてた所でしょ?」
アムカ 「何で、こんな風に飾りとか着けてるの?」

ハルカ 「コンテストバトルだからね」

私は、左隣に座って大人しくしているアムカの質問に答える。
どうやら、アムカは結局参加はしなかったようだ。

アムカ 「うにゅ…コンテストって、よくわからない」

ハルカ 「ん〜…私もあんまりかな」
ハルカ 「私はバトル専門だし…」

思いながら、自分には絶対に似合わないと断言できた。
アニメのハルカとは違うのだよ!

アムカ 「うにゅ…僕はバトルも嫌い」
アムカ 「僕は、ポケモンと触れ合えれるだけでいい…」

そう言うアムカは、ちょっと寂しそうだった。
私は、そんなアムカの頭をそっと撫でて。

ハルカ 「気にしない気にしない♪ アムカはポケモンが好きなんでしょ? だったら、それでいいの」

アムカ 「うみゅ…でも、サヤはコンテストもバトルもやるし…」

ハルカ 「サヤはサヤ…アムカはアムカでしょ? 人に合わせちゃ駄目」
ハルカ 「アムカは、アムカのやりたいことをやればいいの」
ハルカ 「ポケモンが好きで、バトルもコンテストも駄目なら、後はブリーダーかウォッチャー位かしらね」

アムカ 「うにゅ…よくわからないよ」

本当に、この娘はどこまで知っていてどこまで知らないのか…。
ある意味、私以上に無知なのかも…。

? 「隣、ええでっか?」

ハルカ 「あ、どうぞ…って」

ランマ 「どうも、お久しゅう…って、昨日会うとるけどな」

何と、私の右隣に座ったのはランマさん。
昨日、ゴウスケさんとバトルをしていた人だった。

ハルカ 「ランマさん、コンテストに興味あるんですか?」

ランマ 「まさか…ワテはどっちかと言うとバトル専門やさかい」
ランマ 「単に、このコンテストの開催者ですわ」

ハルカ 「ああ、そう…開催者…ってはぁ!?」

ランマさんは笑いながら簡単に言う。
コンテストの開催者って、一体どういう人なのよこの人!?

ランマ 「一応、これをあげますわ」

ハルカ 「…うん、名詞?」

私はランマさんから手渡された名詞を読んで見る。

『全日本ポケモンリーグ・Rally Management Union(大会運営組合)本部 運営役員長・ランマ』

ハルカ (うげっ…運営役員長って)

私は名詞を見て驚愕する。
要するに、この人はアレだ…お偉いさん。
あんな物は飾りです!! 偉い人にはそれがわからんのです!!
と、まぁギャグは置いといて…私は名詞を懐に仕舞う。

ランマ 「リーグの休日が長いさかい、折角来てくれてはる観客を退屈させへんように企画したんですわ」
ランマ 「思ったより、人も集まってくれはって、企画した甲斐がありますわ」

そう言ってランマさんは笑って会場を見渡した。
ランマさんの服装は普段着。
至って、ありがちな服装で、長袖の白いカッターシャツと茶色のズボンを身に着けていた。

ハルカ 「…ランマさん、こんな所にいてもいいんですか?」

ランマ 「そらそうや…役員席なんて堅苦しくて敵わん」
ランマ 「観客席で見るんが一番や」

ハルカ 「…自ら出場しようとは思わなかったわけですか?」

私がそう聞くと、ランマさんは少し間を取って。

ランマ 「ワテは専門外ですわ…コンテストは」

ハルカ 「奇遇ですね、私もです」

アムカ 「僕も〜」

何とも、変な取り合わせである。
コンテストの専門外がわざわざ観客席で、観戦しようとしているのだから。

ハルカ 「それよりも、始まるみたいね」

アムカ 「うにゅ、サヤが出て来るの?」

ランマ 「さぁて、シャッフル次第ですわ」

バンッ!!

突然、会場は暗転し、スポットライトでひとりの女性が照らされた。
女性はスポーティな半袖短パンのボーイッシュスタイルで、セミロングの茶髪。
大人な魅力を感じさせる化粧で、一際輝く笑顔を見せた。

司会 「さぁ、皆ーーー!! そろそろポケモンコンテスト・サイユウ大会を始めるわよーーー!?」

ワアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!

アムカ 「うにゅ…凄い音」

ハルカ 「大歓声ですね〜」

ランマ 「そらそやろ…こんな非公式の大会にわざわざ観客が満員になるんやさかい」

ハルカ 「…裏づけあって、ですか」

ランマ 「そう言うことですわ」
ランマ 「まぁ、黙って見ときましょ…折角のコンテストやし」

それ以上、私たちは言葉を話すことなく、ついにトップバッターのコーディネイターが姿を現した。



………。



少女 「『マリル』! 『バブルこうせん』!!」

マリル 「マリリ〜!!」

ブワワワワッ!

司会 「出ました! まずは『バブルこうせん』で会場を盛り上げる!」
司会 「可愛いマリルの演出と共に、美しさも際立っているぞーー!?」

そんな感じで、次々とコーディネイタ−たちが姿を現してくる。
意外と大勢の人が参加しているようで、知った顔はまだ出てこなかった。



………。



司会 「さぁ、続いて8人目の選手はぁ!? 何と、シンオウからはるばるご来訪のトップコーディネイター!!」

ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

司会 「ゴウスケさんだーーーーーーーーーーーー!!!」

キャアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!

途端に大歓声。
予想以上にゴウスケさんの人気は凄まじい。
ゆっくりとした足取りで歩むゴウスケさんは笑顔で、なおかつ落ち着いていた。

ゴウスケ (さ〜て、折角こんな舞台を用意してくれたんや…ヘマはでけへんな)
ゴウスケ 「『ビークイン』! 開幕の『パワージェム』や!!」

ボンッ!

ビークイン 「ビ〜♪」

ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!

司会 「おお〜っとこれは〜!? 小さな『パワージェム』をお手玉のように操っている!」
司会 「しかも4つ同時! これは凄いテクニック!!」



………。



ハルカ 「…ビークインか、そんなポケモンもいるのね」

ランマ 「ええポケモンですわ…舞台にも随分慣れとるようやし、経験は十分でっしゃろ」

アムカ 「う…何か怖いけど」



………。



ビークイン 「ビ〜♪」

ポポポポンッ!! ボンッ!!

司会 「おっと! ビークイン、4つのお手玉をひとつに合わせ、大きな『パワージェム』を作り上げた!?」

ゴウスケ 「よっしゃ、そろそろフィニッシュや! 上に上げて『かいふくしれい』!!」

ビークイン 「ビ〜!」

ドギュンッ! ブブブブブブブブブブブブゥゥゥンッ!!!



………。



ハルカ 「うわっ!? 何か一杯出てきた!?」

ランマ 「『かいふくしれい』ですわ…ビークインの下半身におる蜂を自在に操って、自分の体力を回復させる技ですわ」

アムカ 「う…何か気持ち悪い」



………。



ブブブブブゥゥンッ!! キラキラキラ…

司会 「これは美しい!! 『かいふくしれい』の淡い光が『パワージェム』の琥珀色を引き立てている!」
司会 「回復技をこんな風に使うとは、まさに見事!! 見た目の怖さとは全く真逆のアピールに会場総立ちです!!」

ゴウスケ 「……」

パチンッ!! パアァァァァァァァァァァァァァ…!!

ウオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!

ゴウスケさんは、最後に頭上で指パッチンをする。
と同時に、『パワージェム』と言う技が弾け、取り巻いていた蜂も優雅な軌道を描いてビークインの元に戻る。
ゴウスケさんは、演技終了と同時に会場へ礼をした。

司会 「さっすがはトップコーディネイター!! コレは文句なし!! 100点満点だーーーー!!」
司会 「ビークインにしかできない、ビークインだけの演技! まさに超美麗!!」
司会 「さぁ、このコーディネイターを打倒できる者はいるのか!? 次の選手は…」



………。



ノリカ 「うわ…すっご」

サヤ 「完璧な演技ね…魅せ方で言えば、ミカゲさんよりも凄いかもしれない」

ミカゲ 「あら、聞き捨てならないわね…」

ノリカ 「!?」
サヤ 「………」

ふたりは、私の姿を見て驚いた表情をする。
このふたりも参加していたのね。
私は、TVモニターに一瞬目をやり、すぐにふたりを見てこう言う。

ミカゲ 「ポケモンの魅せ方は、使い手とポケモン次第…」
ミカゲ 「そして、それを評価するのは、審査員」
ミカゲ 「重要なのは、審査員の興味を引く魅せ方よ…さっきの演技はそれを無視した演技」
ミカゲ 「それでも、あの点数が出たのは、審査員の目が大したことないのね、きっと」

ノリカ 「何言ってるんですか! ポケモンにとって、一番魅力ある魅せ方をするのがコーディネイターでしょ!?」

ノリカは私に向かって、怒りとも取れる表情でそう言った。
私は特に関心もなく。

ミカゲ 「…それで、あなたは私に勝てたかしら?」

ノリカ 「!? う、ぐ…!」

予想通り言葉に詰まる。
結局、結果が物を言う。
口ではどう言っても、結果の着いて来ない演技は大して見向きもされないわ。

ミカゲ 「私に勝ちたいなら、審査員に最も評価される魅せ方をすることね…」
ミカゲ 「自分の勝手な考えで、ポケモンの魅力を決め付ける方が、よっぽどおかしいと思うけれど」

サヤ 「………」

ノリカ 「…それでも、私は自分の演技が間違っているとは思わない!」

ミカゲ 「…そう思うのなら、好きにすればいいわ」
ミカゲ 「私には、どうでもいいことだわ…」

私はそう言って、この場を去る。
そろそろ出番ね…とりあえず、たまには息抜きしないとねぇ。



………。



司会 「さぁ、次に登場するのは前回のグランドフェスティバルで準優勝の強豪!! ミカゲさんだーーーー!!」

ワアアアアアアアアァァァァァッ!!

ミカゲ 「……」



………。



ハルカ 「さすがに、ゴウスケさんに比べると声援が少ないわね」

ランマ 「グランドフェスティバルの決勝をほったらかしたので有名やからな」
ランマ 「まぁ、しゃあないやろ…」

アムカ 「う…僕、あいつ嫌い!」

ハルカ 「…? 何で?」

アムカはミカゲを見て、とても嫌そうな顔をする。
敵意と言ってもいい。
まるで憎しみとも取れる感情を、アムカは出していた。

アムカ 「…あいつ、人間じゃないもの」

ハルカ 「…何を言ってるのよ、どう見ても人間じゃない」

アムカ 「違う! 人の皮を被ってるだけ!!」
アムカ 「あれは、絶対人間じゃない…」

ハルカ (…アムカがこれほどまで、毛嫌いするなんて)
ハルカ (どうやら、私が思っている以上に、ミカゲはとんでもない存在っぽいわね)



………。



ミカゲ 「…行きなさい、『ミカルゲ』」

ズッシィィィンッ!!

ミカルゲ 「ミカ〜…」

司会 「おおっと! ミカゲ選手、108kgもある『ミカルゲ』の『かなめいし』を片手で放り投げたぞ!?」
司会 「いきなり、驚きの登場だ!!!」



………。



ハルカ 「ひゃ、108kgって…!? それをボールでも放るかのように…」

ランマ 「とても、人間技やおまへんな…あの体格で」

ミカゲは、何の苦もなくそれをやってのけた。
前に見た時、身体能力は高いとは思ってたけど…桁違いだわ。
いくら私でも、あれを片手で『軽く』放るのは無理だ。
アムカが人間じゃないと畏怖する…その理由が少しわかった気がした。



………。



ミカゲ (…会場は満員、一次審査の審査員はこの観客全て)
ミカゲ (比率は、女性の方が多いわね…採点は『美しさ』と『可愛さ』と言ったところかしら)
ミカゲ 「ミカルゲ『あやしいかぜ』」

ミカルゲ 「ミカ〜〜〜」

ビュゥゥゥゥ…

司会 「お、おっと〜! 突然場がひんやりといたします!」
司会 「まるで、これから肝試しでも始まるかのような…」

ミカルゲはステージを弱めの『あやしいかぜ』で包み込む。
風はしばらくステージを留まり、私は次の指示を出す。

ミカゲ 「『ぎんいろのかぜ』!」

ミカルゲ 「ミカ〜!」

ビュウウウウゥゥッッ!!

ミカルゲは『あやしいかぜ』とは逆の風向きで『ぎんいろのかぜ』を放つ。
黒と紫のコントラストに銀の輝きが混ざり押し流す。
ステージは途端に色のブーストがかかり、観客を一斉に魅了する。

司会 「こ、これは素晴らしい! 『あやしいかぜ』と『ぎんいろのかぜ』が、まるで闇を食らう光の様に少しづつ会場を輝かせる!」
司会 「そして、光の帯が次第に龍の様に雄雄しき帯へと変わる!!」

ミカゲ 「フィナーレ…『みずのはどう』」

ミカルゲ 「ミカッ!」

ギュッバァァッ!! バッシャァァァァァンッ!! キラキラキラ…キラ…

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!

ミカルゲが最後に『みずのはどう』を真上に放つ。
『あやしいかぜ』と『ぎんいろのかぜ』が混ざり合った点にぶつかり、水は弾ける。
そして、水色の輝きを放ち、4色の煌きを真下にいるミカルゲは一身に受けた。
自身が動く動作を演技に盛り込めないミカルゲには、こう言う魅せ方があるのよ…

司会 「ブリリアント!! もう言葉もありません!! 点数は最高得点の100点!」
司会 「ゴウスケ選手に続き、ふたり目の最高得点です!!」

ミカゲ (ふふ…見ているわよね、あの娘たちも)



………。



ノリカ 「………」

サヤ 「…さすがですね、言うことは何もないわ」
サヤ 「…ノリカ?」

ノリカ 「…何でなんだろう?」

ノリカは、俯いて、そんなことを呟く。
私は、黙ってノリカの言葉を待った。

ノリカ 「何で、ミカゲさんって…あんなにも、自分の言葉と演技が噛み合わないんだろう?」

サヤ 「…そう、ですね」

言われてみれば、確かに。
ミカゲさんは、まるでポケモンのことなど二の次だ!と言うような発言をしておきながら、実際の演技はポケモンの特色を完全に理解した上での最良な演技。
結果的にそうなった…と言えばそれまでだけど、そうでないのはミカゲさんのポケモンを見れば一目瞭然。
疑問があると言えば、ある…。

ノリカ 「何か、凄い悔しい…絶対負けたくないって思うのに、絶対あんな演技はできない…って言う弱さが自分の中にある」

サヤ 「気にしなければ、いいわ」

ノリカ 「できるわけないじゃない! あんな演技見せられたら…」

サヤ 「だから、今は忘れればいい…ミカゲさんは言っていたわ」
サヤ 「自分の考えが間違ってないって思うなら、好きにしたらいい…って」

ノリカ 「!?」

私は、ミカゲさんが言っていた言葉をノリカに言う。
ミカゲさんはそこまで細かく言わなかったけど、ノリカ自身が言った言葉に対する答えだから、本人はわかっているはず。

ノリカ 「う〜…もうこうなったら、全力投球かもーー!!」
ノリカ 「私、もう自分の一番自信のあるやり方でやるわ!! 開き直るかも!!」

サヤ 「…うん、それでいいと思う」
サヤ 「頑張ってね、ノリカ」

ノリカ 「もっちろん! 今度こそサヤと決着着けるもん!!」
ノリカ 「じゃあ、行ってるくるね!!」

ダダダダダダダッ!!

ノリカは走って行ってしまった。
結局、私の演技は最後か…何だか、ちょっとだけ緊張する。
ゴウスケさんも、ミカゲさんも、私たちとはまるで違う次元のコーディネイターだというのがわかる。
それでも、私たちは、目指している…トップコーディネイターと言う称号に憧れて。

サヤ (…でも、私は称号なんてどうでもいい)

私は、ポケモンと一緒に、楽しく演技できたら、それでいい。
それを見てくれる観客が喜んでくれたら、もっといい。
そう、思う…。



………。



ランマ 「…ごっつい演技やな、ミカゲ選手」

ハルカ 「ほんっと…あれで、バトルも凄いんだから…」

アムカ 「うう…やっぱり、僕は嫌い」
アムカ 「使うポケモンも怖いもん…」

アムカはどうにもミカゲが苦手のようだ。
内心、ミカゲの演技は評価しているようだけど、どうにもああ言うポケモンは苦手らしい。

ハルカ 「アムカって、どういうポケモンが好きなの?」

アムカ 「んっと…マッスグマとか、オオタチとか…他にはちっちゃくて可愛いのが好き!」

ハルカ 「なるほど…典型的な少女タイプね」
ハルカ 「そりゃ、ミカゲのポケモンはどっちかと言うとバトル的なポケモン多いからね〜」

ランマ 「どんなポケモンを使いよるん?」

私はランマさんに聞かれ、ミカゲのポケモンを思い出す。
確か、最初に見たのがグランドフェスティバルの時だから…。

ハルカ 「ムクホーク…マニューラ、チェリム、んでドクロッグもいたわね、後ミカルゲ…あれ、1体見てないわ」

アムカ 「レントラーも使ってたよ…」

ハルカ 「あ、そう言うのもいるんだ? どんなの?」

アムカ 「んと…たてがみがぶわー!で、電気がビリビリー! がおーー!! こんなの」

ハルカ 「そ、そう…とりあえず電気タイプって言うのは想像できたわ」

アムカはジェスチャーを混ぜ、オーバーリアクションで解説してくれた。
全くわからん…

ランマ 「察しの通り、レントラーは電気タイプのポケモンや…ライボルトと同じ4足系の獣型や」
ランマ 「ライボルトに比べると、パワーは段チや…真っ向勝負はまず避けるべきやな」

ハルカ 「…パワータイプか、電気タイプって、スピード&スペシャルってイメージあるけど」

少なくとも、私のライボルトはそうだし、ライチュウとかプラスル、マイナンもその類だ。
って、ジバコイルはどっちかと言うとガッチリ系か…でもあれは鋼タイプでもあるしねぇ。

ランマ 「まぁ、確かにその通りや…それだけに、レントラーは他の電気タイプとは違う言うことや」

ハルカ 「…う〜ん、勉強になるわね」

さすがに運営役員長と言うだけあり、ポケモンのことは相当詳しいようだ。
今度、色々聞いてみようかな…。

アムカ 「…うう、チェリムだけは好きかも」

アムカは、ミカゲのポケモンを想像して悩んでいるようだった。



………。



司会 「さぁ、もう選手も残り少ない! 次の選手は、グランドフェスティバルで2次審査に進出したノリカさんだーーー!!」

ノリカ 「よーっし! 早速行くわよ『ロゼリア』!」

ロゼリア 「ロゼ〜♪」



ハルカ 「お、ノリカってロゼリアも使うんだ」

アムカ 「う〜ん、ちっちゃいけど、微妙かも…」

ランマ 「何や、あの娘? 自分にそっくりやん…妹か?」

ハルカ 「他人です」

私はきっぱりと言い切る。
あれの姉だとは断じて認めん。
まぁ、実際違うけど。
ノリカは何だかいつものノリで、ロゼリアを繰り出し、楽しそうに演技を始める。

ノリカ 「よーっし! ロゼリア『アロマセラピー』!」

ロゼリア 「ロゼ〜!」

パァァァァァ…

司会 「お! まずは自分の真上から降り注ぐようなアロマの香り!」
司会 「う〜ん、ビューティホゥ! これは美しくもいい匂いだ!」

ノリカ 「続いて『はなびらのまい』!!」

ロゼリア 「ロッゼ! ロゼーーー!!」

ブオオオオォォォォッ!!

ロゼリアはその場で勢い良く回転し、花びらを振りまく。
同時にアロマの香りをステージ上に撒き散らし、程よく観客のテンションを和らげた。

司会 「いいぞいいぞ! アロマの香りを利用して『はなびらのまい』の副作用も中和すると言う、見事なアイデア!」
司会 「さぁ、時間ももう少ない! 最後はどうする!?」

ノリカ 「ロゼリア! 『にほんばれ』から『くさぶえ』!!」「

ロゼリア 「ロゼーー!!」

ゴオオォォッ! カアアアァァァァァァァッ!!

ロゼリア 「♪〜〜〜♪〜♪〜〜〜♪♪〜〜」

司会 「う〜ん…太陽の暑い日差しに安らかな『くさぶえ』の音…何ともスピリチュアル!」
司会 「これは文句なしの高得点! 98点!!」

ワアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!

ノリカ 「や、やった! 自己最高得点!!」

ノリカは得点に満足したのか、嬉しそうにガッツポーズを取った。
ゴウスケさんや、ミカゲには及ばない物の、十分すぎる得点で、二次審査進出は間違いないだろう。



………。



サヤ 「凄い…ノリカ、98点も」
サヤ 「本当に、開き直ってしまったのね…でも、ノリカらしいわ」
サヤ 「…私も、自分にできることをやろう」
サヤ 「今回は、ただ…楽しく」



………。



司会 「さぁ、ついに残りの選手はふたり!」
司会 「次の選手は、ノリカさんやミカゲさんと同じく、グランドフェスティバル・ミナモ大会に出場したコーディネイター!」
司会 「サヤさんの入場です!!」

サヤ 「『カクレオン』」

ボンッ!

カクレオン 「クレクレッ!」

サヤちゃんは、『カクレオン』を繰り出した。
今回は、『カクレオン』か…そう言えば、サヤちゃんって、ノーマルタイプしか使わないのよね…他人のような気がしないわ。

サヤ 「『げんしのちから』」

カクレオン 「カックレ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!

カクレオンはまず、口から岩を吐き出し、自身の周りに複数の岩を配置する。
そして次の瞬間。

サヤ 「『いあいぎり』」

カクレオン 「クレクレ!!」

ザシュザシュッ!! ザザシュッ!!

サヤ 「………」

カクレオン 「……」

司会 「……」

会場 「………」



………。



ゴトゴトゴトンッ!! ゴトトンッ!!

ワアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

カクレオンが一瞬で岩を切り裂き、大歓声。
な、何て言うか…サヤちゃんらしい緊張感。
たくましい演技だわ。

司会 「これは早業!! 『いあいぎり』の特性を利用した見事な演舞です!!」
司会 「一発技ですが、評価はかなりの物! 94点!!」
司会 「う〜ん、高得点だが、やや審査員には好き嫌いがあったようだ!」
司会 「しかしながら、見事な演技のサヤさんに拍手!」

パチパチパチパチ!!

サヤ 「………」

カクレオン 「クレ〜」

サヤちゃんとカクレオンは同時に頭を下げて礼をした。
そのまま、ゆっくりとした足取りで並んで退場していく。
ああ言った何気ない動作も、サヤちゃんらしい。



ハルカ 「う〜ん! あとひとりで一次審査は終了か」
ハルカ 「二次審査までは時間あるんですかね?」

ランマ 「せやな…30分の休憩があるで」

ハルカ 「そっか…それじゃあ、最後の人には悪いけど、一旦抜けようかな…」

オオオオオオオオオオオオォォォッ!!

ハルカ 「…っとぉ?」

と、私が席を立とうとした瞬間、一部の席から大歓声。
間違いなく男。
一体何があったのか、不思議に思ってみてみると、あらまぁ…あんな所に見知った顔が。



………。



司会 「さぁ、ついに最後の選手が入場!!」
司会 「男を悩殺する、ダイナマイトバディの持ち主! ミクさんだーー!!」

ミク 「……」



ハルカ 「な、何でミクさんが〜?」

ランマ 「あの娘…確かこの前ハルカちゃんと一緒におった娘やな」
ランマ 「コーディネイターやったんか…?」

ハルカ 「し、知らないですよ…大体、ミクさんがポケモン持っているかどうかも知らなかったですし」

アムカ 「うわぁ…胸がボヨンボヨンしてる…」

確かに、ミクさんは薄着の服装だけに、そのバストとヒップが目立つ目立つ…私の見立てでは、上から88・58・90ね。
そりゃ男どもは狂喜するわ。
ミクさん自身は恥ずかしくも何ともないのか、冷静だった。



ミク 「『デンリュウ』、『ほうでん』」

ボンッ!

デンリュウ 「デンッ! デ〜ンーーー!!」

バチバチバチビビビビビィッ!!!

司会 「な、何といきなり『ほうでん』で会場を電撃が走る!」
司会 「当たり障りのない、演技ですが、威力は相当目立ちます!!」

デンリュウの放った『ほうでん』は、ステージ上を越えて、観客席ギリギリまで到達する。
何と言うか、技の威力勝負じゃないんだから…。

ミク 「デンリュウ、『パワージェム』」

デンリュウ 「リュッ! リュー!!」

ギュゥンッ! ドォンッ!!

ミク 「『シグナルビーム』!」

デンリュウ 「デンリュ!!」

ギュイィィィンッ!!! ズッドオオオォォンッ!! パラパラパラ…

デンリュウは『パワージェム』を斜め上に放ち、それを『シグナルビーム』で即座に打ち抜く。
前に、ミカゲがやった演技に似ているけど、こっちはスピードよりもパワーが目立つ。
格好良さよりも逞しさね…。

司会 「何とも、力強いデンリュウの演技! これはワイルド&パワフルだ!!」
司会 「得点は…あ〜っと、思ったより伸びない! 79点!! これはちょっと微妙かな〜?」
司会 「二次審査進出は8名! これから30分の休憩を挟んでから、組み合わせの発表だよ!!」
司会 「今の内にトイレは済ませておいてね!? それじゃあ、30分後の11:30にまた集合ー!!」

ワアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!

最後に、大歓声。
それを聞き、私たちは一旦会場を出ることにした。



………。



『時刻11:15 サイユウシティ・第0スタジアム・売店』


ハルカ 「ソフトクリームのチョコひとつ♪ アムカはどうする?」

アムカ 「うにゅ…苺がいい」

ハルカ 「じゃ、ストロベリーも!」

店員 「ハイ! チョコとストロベリーね…ちょっと待ってて!」

私は売店で、ソフトクリームを買っていた。
こう言ったイベント会場の売店はやや高いが、まぁ祭り気分と言うことで、気にしては駄目だ。
それにしてもソフトクリームひとつ300円は高い…。

店員 「はい、お待たせ! じゃあ、400円のお釣りね! ありがとう!!」

ハルカ 「どうも〜♪ ほい、アムカ用」

アムカ 「ありがと〜♪」

私はストロベリーのソフトをアムカに手渡し、自分のソフトを口にする。
さすがに、サイユウシティは暑い…会場内はクーラーが効いているにも関わらず、この温度だ。
ソフトが溶けるのも早い…テンポ良く食べなければ。

アムカ 「ハムハム!」

ハルカ 「あはは…そこまで慌てなくても」

アムカは溶ける前に食べたいのか、勢い良く頬張っていた。
あんまり勢いがいいもんだから、飛び散ったりして服や額にまでクリームが着いている。

ハルカ 「ああ、ほらちょっとアムカ…ストップ!!」

アムカ 「ふみ…」

私はポーチからハンカチを取り出し、アムカの額と服のクリームを取ってあげた。
しっかし、アムカってまるで小学生ね…年は15歳だそうだけど、とてもそうは見えない。
いや、見た目はいいんだけど、行動が完全に小学生並…ハタから見たら、萌え要素爆発だ。

アムカ 「にゅ…ハムハムッ!」

ハルカ 「あ、あはは…」

そんな感じで、私たちはソフトクリームを平らげ、再び観客席に戻った。



………。



ハルカ 「どうも〜」

ランマ 「…な、何やそっちの娘、えろう汚れて」

アムカ 「うにゅ…」

ハルカ 「まぁ、気にしたら負けです」

ランマ 「?」

ランマさんは、クリームの染みが着いた服を見てそう言った。
アムカの服は上が黒だけに、ピンクのストロベリーは目立つ…。
スカートも白だからやっぱり染みが目立つ…主婦泣かせな汚し方だ。
とはいえ、さすがに着替える暇まではなく、このままで行くことにした。
私たちは、前と同じ席に座る。
時間的にも、そろそろ発表が始まる。



バツッ!!

再び、会場は暗転し、ステージ上のモニターに組み合わせが順に発表させる。
最初に映し出されたのは…。

ピンッ!!

ハルカ (ゴウスケさんか…って言っても、ミカゲも同点だから)

ピンッ!!

当然のように続く。
そして、その次は…ノリカが。
続いてサヤ…そこから知らない名前がズラリ。
そして…最後に残った枠に。

ピンッ!!

ハルカ 「…ミ、ミクさん残った」

ランマ 「おもろうなってきたな…あの娘、きっとバトル専門やろから、二次審査は面白いで〜」

確かに、あの演技を見る限り、どう見てもバトル系。
ミクさんが何故コンテストに出たのかは知らないけれど、これはある意味注目だ。
次は選ばれた8人からシャッフルされて、組み合わせが発表される。

ピピピピピピピピッ!! チーンッ!!

司会 「さぁ、ついに組み合わせが決まったーーー!!」
司会 「第1試合はノリカさん対サヤさん!!」
司会 「第2試合はゴウスケさん対アマタさん!!」
司会 「第3試合はミクさん対コウミさん!!」
司会 「そして第4試合はシュウサクさん対ミカゲさんだーーーー!!」



ハルカ (ノリカとサヤちゃん! 図らずともついにぶつかったわね!)

アムカ 「う〜…サヤは負けないもん!!」

ランマ 「これは、荒れそうやな…想像以上や」

恐らく、会場の全員が息を飲んでいるだろう。
注目はやはりゴウスケさんとミカゲ。
このまま行けばファイナルでぶつかる可能性は大。
さすがのミカゲも、相手がゴウスケさんなら途中で帰ったりはしないだろう…
ゴウスケさんの実力はシンオウ最強…ミカゲは実質ホウエン最強。
この二次審査…ひょっとしたら歴史に残るようなコンテストになるんじゃ?
私は、そんなことを思いながら、二次審査の開幕を待つ。
果たして…最後にステージに立っているのは、誰なのだろう…?



…To be continued




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