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POCKET MONSTER RUBY



第80話 『ユウキとラルド』




『昨年 3月20日 某時刻 オダマキ研究所』


パァンッ! パパンッ!!

オダマキ 「ハッピバースデイ! ユウキー!!」

クラッカーの音が鳴り響き、研究所では小さなパーティが開かれていた。
小さな誕生会…俺の11歳の誕生日。

オダマキ 「これで、晴れてユウキもポケモントレーナーだな!」

ユウキ 「うん! 俺、絶対ポケモンリーグに出て、チャンピオンになってみせるよ!」
ユウキ 「だから、俺ミズゴロウが欲しい! ミズゴロウと一緒に旅に出るんだ!」

オダマキ 「はははっ! 任せとけ! 必ず約束は守るよ♪」
オダマキ 「まぁ、はやる気持ちもわかるが、旅の出るのは4月に入ってからだ! まだポケモンリーグが終わってないからね」
オダマキ 「さぁ、早くケーキを食べよう! 今日はお前のために僕も仕事は休んだからな!」

ユウキ 「うんっ! よーっし、いっただっきまーーす!!」



…それが、今の俺にとっては6年前の記憶。
この日、俺は11歳になり、4月からポケモントレーナーとしての資格を得るはずだった。
俺はそれまでの間、父さんの仕事を手伝いながら、ポケモンの調査をしていた。
ある日、『トウカのもり』へ調査に向かった時、俺は悲劇にあった。



『昨年 3月31日 某時刻 トウカのもり』


ユウキ 「…え?」

それは…突然のことだった。
俺は父さんと別行動を取っていた…そして、『セレビィ』に会った。
何故、そこにセレビィがいたのかはわからない。
ただ、俺は…その日、その時代から消滅した。





………………………。





『某日 某時刻 ??????』


ユウキ 「うう…ど、どうなったんだ?」

俺はぼんやりする頭を抱えて、周りを見る。
そして、俺は驚愕する。

ユウキ 「な、何なんだ…ここ、『トウカのもり』じゃない」

俺は周りを見て、そう思う。
『トウカのもり』なら、父さんと一緒に何度も入っている、庭同然の場所だ。
だけど、この森は俺の知っている森じゃない…こんな木の配置、草の生え方…全部見覚えが無い!

ユウキ 「ど、どうなってるんだよ!? ここはどこなんだよ!?」

? 「キャ…キャモ」

ユウキ 「!? キ、キモリ? 傷ついてるのか! 待ってろ、今『きずぐすり』を!」

俺はポーチに入れておいた、『きずぐすり』を傷ついたキモリに使い、治療する。
思ったよりも傷は深かったのか、全快しないようだった。
俺はポケモンセンターを探すため、キモリを抱いて走り出す。

ユウキ 「くそっ! ここはどこなんだ!? 出口は…多分こっちだ!!」

俺は今までのフィールドワークの勘で出口を探す。
すると、15分もした所で俺は森を抜けることができた。
…だが、更に信じられない光景が俺の目に映る。



………。



ユウキ 「冗談だろ…ここ、どこだよ?」

俺はまるで知らない町に迷い込む。
ホウエン地方なら、大抵の場所は知ってる…だけど、こんな町は来たことが無い。

キモリ 「キャ…キャモ」

ユウキ 「! 考えてる暇は無い…ポケモンセンターへ!!」

俺は考えるのを後にして、真っ先にポケモンセンターへ駆ける。
そんなに大きくない町なのが幸いした。



………。



『某日 某時刻 ポケモンセンター』


店員 「いらっしゃいませ! ポケモンセンター・ヒワダ支店へようこそ!」

ユウキ 「…ヒワダ支店〜?」

俺はそう言われて、謎めく。
だが、考えるのは後、俺はキモリを早速預けることに。

ユウキ 「あの、お願いします! こいつ…野生みたいで、傷ついてて!」

店員 「まぁ、これは大変! 任せて、すぐに治療してあげるわ!」

店員さんは慣れた動きでキモリを抱きかかえ、治療室に向かう。
幸い、命に別状は無く、キモリはすぐに回復するようだった。



………。



店員 「はい、キモリは元気になったわよ! でも、今日一日は休ませてあげた方がいいわね」

ユウキ 「そ、そうですか…良かったな、キモリ」

キモリ 「……」

キモリは不思議そうな顔で俺の顔を見た。
状況が良くわかっていないのかもしれない。

店員 「このキモリ、野生って言ってたけど…ジョウト地方では、ほとんど見れないポケモンよね?」
店員 「本当は、トレーナーのポケモンなんじゃないかしら?」

ユウキ 「…ジョウト、地方」

俺は再び驚愕する。
今、店員さんはジョウト地方と言った。
俺がいた場所は、ホウエン地方。
と言うことは…。

ユウキ (あそこは『ウバメのもり』!? ヒワダタウン…ジョウト地方の)

俺はひとつの疑問が解けた。
どうやら、セレビィに飛ばされたらしい。
だが、だとしたら事態は深刻を超える。
俺は…もしかしたら。

ユウキ (ポケモンセンターなら、カレンダーが! あった…っ!?」

俺は、壁に貼り付けられているカレンダーを見て、意識を失いそうになる。
そこに書かれている年号は…俺がいた時代の5年前。
紛れも無く、俺は『時渡り』をしてしまっていた。

ユウキ (冗談だろ…何でだよ! 何で、俺がこんな目に…!)
ユウキ (待てよ!? 『ウバメのもり』なら、セレビィにまだ会えるかもしれない!)

俺は微かな希望を胸に、再び『ウバメのもり』へ向かう。
セレビィに会って、戻るためだ。

店員 「あっ、ちょっと君!?」

キモリ 「! キャモッ!」



………。



『某日 某時刻 ウバメのもり』


ユウキ 「くっそ! どこにもいない!! 畜生! 畜生ーーーー!!!」

俺は夜の森の中、絶望に浸された。
戻る術はセレビィ以外に無い、だけど…見つからなかった。
考えてもみれば、幻のポケモンとも言われているセレビィが、そんな簡単に見つかるとは思えない。
俺は…その日、全てを失ってひとりになった。



………。



ユウキ 「畜生…父さん、母さん」

俺は泣きながら、森をさまよう。
考えも無しに、うろついたのがマズかった。
俺は森の中で迷い、夜の闇夜の中…彷徨っていた。

ユウキ 「がっ!?」

ズザザァッ!!

俺は木の根に足を取られ、すっ転ぶ。
衝撃で、上から何かが覆いかぶさってきた。
俺は気持ち悪いその感触を思わず振り払う。

ユウキ 「うわああぁぁっ!!」

ドシャッ!

? 「シューー!!」

ユウキ (今のはポケモンの鳴き声!? 虫タイプか、それとも草タイプ!?)

益々マズイことになった、こっちはポケモンなんて持っていない。
戦うこともできない以上、ポケモンと関わるのは非常にマズイ。
森のポケモンは毒タイプもいる、下手に技くらったら、致命傷もありうる!
俺は、その場から動こうとする、だが、すぐにそれは封じられた。

シュルルルッ!!

ユウキ 「うわっ!!」

俺は体に糸を巻きつけられる。
ネバネバした粘着質の糸、間違いなく『いとをはく』だ。
と言うことは、虫タイプ!

ユウキ (ヤバイ! こんな所で死ぬのなんてゴメンだ!!)

俺は振りほどこうとするも、子供の力では到底敵うわけが無かった。
身動きのまるでできない状態で、俺は暗闇の敵に怯える。

ユウキ 「畜生…何で、何でこんな目に!! チックショーーーーーーーーーーーー!!!」

俺は力の限り吼える。
だが、助けが来るとは思えない。
だけど、その予想はいともたやすく裏切られた。

キモリ 「キャモーーー!!」

ピカッ!!

ユウキ 「うっ!? こ、これは『フラッシュ』!?」

突然、俺の真上で強烈な光を放つキモリが現れる。
それは…俺が助けたキモリの様だった。
ジョウト地方ではキモリの目撃例はあまりない…恐らく、間違いないだろう。
キモリは、体中から光を放ち、闇夜を明るく照らした。
そして、俺の目の前にいるポケモンに向かって、睨み付ける。

ギンッ!

イトマル 「イ、イトト!!」

ユウキ (イトマルだったのか…危ねぇ、『どくばり』でも食らってたら、ヤバかった)

イトマルはキモリにガンを飛ばされて、怯む。
攻撃してくる気配は感じず、キモリは俺に向かって技を繰り出す。

キモリ 「キャモッ!」

ズバァッ!!

ユウキ 「あ…!」

俺の体に巻きついていた糸が容易く切断される。
俺は粘りけを感じながらも、糸の呪縛から解き放たれた。

ユウキ (今の技は…『つばめがえし』! 何で、このキモリが覚えてるんだ!?)
ユウキ (待てよ…今の『フラッシュ』と言い、『つばめがえし』といい、まさか本当にトレーナーのポケモンなのか!?)

そうとしか考えられない、キモリがあれらの技を普通に覚えているはずが無いのだから。

イトマル 「イ、イトトッ!」

キモリ 「…キャモッ」

イトマルとキモリは何やら会話をかわしているようだった。
そして、次の瞬間。

ドカッ!

ユウキ 「いってー!! 何すんだよキモリ!?」

キモリが尻尾で俺の頭を『はたく』
どうやらキモリは俺に何かをさせたいようだ。

キモリ 「キャモキャモッ!!」

キモリをイトマルを指差して、何か喋る。
当然ながら、俺には全くわからない。
だけど、何をさせたいのかは、何となく理解できた。

ユウキ (そうか…イトマルは、寝ている所を急に起こされたから)

俺は自分のやったことを理解し、キモリの意思を理解する。
そして、俺はすぐにイトマルに謝る。

ユウキ 「ごめんっ!」

イトマル 「……」

カササッ

イトマルは俺の言葉を聞くと、何もせずに去っていった。
やがて、その場に静寂が戻る。

ユウキ 「…キモリ、俺を助けてくれたのか?」

キモリ 「……」

キモリは何も言わなかった。
だけど、キモリは僅かに微笑む。
そして、キモリは何も言わずに走り始めた。
『フラッシュ』の効果で、周りが明るく照らされる、出口は…そう遠くないのかもしれない。

ユウキ 「待ってくれよキモリ!」



………。



それが…キモリとの出会いだった。
後から知ったことだが、あのキモリはタマゴから生まれたポケモンのようで、初めからある程度の技を覚えていたらしい。
ポケモンは親から子へ技を受け継ぐと聞いたことがある…
あのキモリは、恐らくトレーナーが育てたキモリやジュプトル、ジュカインから産まれたポケモンなんだろう。
ただ、キモリは産まれてすぐにトレーナーから捨てられたのか、誰のトレーナーでもないと言うことがわかった。
だからというわけじゃないけど…俺は、キモリのトレーナーになると決めた。
俺は、ミズゴロウが本当は良かった。
でも…俺にはキモリが大切に思えた。

ユウキ 「キモリ、これからよろしくな! 俺、新人トレーナーだけど、キモリを大事にするよ!」

キモリ 「…キャモ」

俺のキモリは、『まじめ』な性格だった。
初めてのジョウト地方で、俺はキモリだけを使って色々旅をした。
いつか…元の時代に戻ることを夢見て。





………………………。





それから1年後、俺はホウエン地方に戻った。
だけど、そこには俺にとって何の希望も残っていなかった。

オダマキ 「はははっ! ユウキ、どうした? もう疲れたのか?」

ユウキ 「うん…! やっぱりお父さんはすごいや!」



………。



ユウキ 「……」

キモリ 「…キャモ」

楽しそうに父と戯れる子供の俺。
そう…そこには、もうひとりの俺がいた。
俺はこの時、この時代に居場所なんて無いと、理解した。

ユウキ 「…わかってたんだ。こうなる事位」

キモリ 「キャモ」

ユウキ 「大丈夫さ、俺は何とか生きていく」
ユウキ 「これまでもお前と一緒に何とかなった…これからも同じさ」
ユウキ 「でも…仲間はいた方がいいよな」

キモリ 「…キャモ」

キモリはこの1年、進化もしないで俺のために戦い続けてくれた。
本来なら、すでにジュカインになれるレベルのはずだ、それでもキモリは今の姿を残し続けた。
今のままでも、キモリは十分戦えたからだ。
でも、いつかは…苦しくなる。
相性の悪い相手でも、キモリは傷つきながら戦い続けた。
俺は、ここに来るまで、他のポケモンはゲットしないと決めていた。
踏ん切りがつかなかった…帰ったら、新しい旅が始まるんだ、と思ってた。
でも、叶わなかった…現実は甘くない。

ユウキ 「…行こう、まずは仲間でも探しに!」

キモリ 「キャモッ」

キモリは俺の後ろに着いてくる。
今は、こいつがいるから寂しくは無い。
ただ…俺はもう、『ユウキ』とは名乗れない。
俺は…別の自分にならなければならないから。



………。



『某日 某時刻 コトキタウン・ポケモンセンター』


店員 「えっと…新規のトレーナーですね? 名前は…『ラルド』さんですね!」
店員 「所持ポケモンは、そのキモリだけですか?」

ラルド 「はい…ポケモンは、まだキモリだけです」

キモリ 「キャモ…」

俺は、コトキタウンで、トレーナーカードを新しくする。
幸い、俺はホウエン地方でまだポケモンセンターを利用していなかったので、怪しまれることは無かった。
俺は『ラルド』と名を変え、服装も赤ではなく緑の服に変えた。
これから…俺は新たな旅を始めることになる。
まずは…モンスターボールでも買って、仲間を探すかな。

ユウキ 「わぁ! お兄ちゃん、ポケモントレーナー!?」

ラルド 「!? …ああ、そうだよ」

突然、俺の後ろから、『俺』が話しかけてくる。
どうやら、コトキに来ていたらしい…迂闊だったな、まさか出くわすとは。
ただ…この時、俺はデジャブする。

ラルド (そうだ…俺は、この時ラルドに会っていた)
ラルド (なるほどな…俺自身だったとは)

考えて、俺は笑いがこみ上げてくる。
この当時、俺は年上の少年に憧れて、トレーナーになることを切望していた。
キモリを従える、トレーナー、ラルド。
俺は、ラルドの姿に憧れを覚え、服装や帽子を真似するようになった。
まさか…自分自身に憧れて、自分の真似事をするなんて…思いもよらないからな。

ユウキ 「すっごいや! このキモリ、とっても強そう! どれ位一緒にいるの?」

ラルド 「そうだな…1年位だ、でも俺たちはそれ以上の信頼を持ってる」

ユウキ 「へぇ〜…」

キモリ 「……」

ユウキはキモリと俺を見比べ、感心する。
そして、ユウキはすぐに父に呼ばれて、その場を去る。

ユウキ 「お兄ちゃん、僕はユウキ! いつか、お兄ちゃんにバトルして勝てる位のトレーナーになるから、覚悟してね!!」

ラルド 「ああ…期待して待ってるよ」

俺は出来もしない約束を容易く交わす。
叶わないのはわかっている。
だけど、夢を壊すことはない。

ラルド 「行くか、キモリ」

キモリ 「キャモッ」

こうして、俺は自らに決別し、新たなスタートを切った。
その後、俺はラルトス、ハスボー、ココドラ、ヤミラミ、ハブネーク、をゲットした。
1年はホウエンで旅をし、バトルを繰り返しながら俺は生きていった。
そして、13歳の誕生日を終え、俺はカントーに向かう。
リーグに挑戦するわけでもなく、色んなポケモンと触れ合いながら旅をするのは楽しかった…この頃には、俺のポケモン6体も最終進化を遂げていた。
14歳になり、俺はジョウト地方を再び訪れた。
もしかしたら、セレビィがいるかもしれない…そんなありもしない考えを持ちながら。
だが…この時、俺はとんでもない事件に巻き込まれることになった。
そして…その日、俺はある少女と運命的な出会いを果たす。





………………………。





ラルド 「エミィ!? 何故だ!!」

エミィ 「ラルド…私、もう死ぬのよ」

ラルド 「馬鹿なことを言うな!! 俺が死なせるか!! お前は俺が…!!」

エミィ 「ふふ…いいのよ、無理しなくて」
エミィ 「私…こうなることはわかっていたもの」
エミィ 「こうなる運命だった…あなたは、違うわ」

俺の腕の中で、血みどろのエミィが微笑む。
死を覚悟し、受け入れる女の顔。
俺は、その顔を涙すら流せずに見ていた。

ラルド 「エミィ…!」

エミィ 「泣いてもいいのに…泣かないのね」
エミィ 「私…幸せだった」
エミィ 「あなたを…愛することが出来たから……例え、一瞬…で、も…」

コトリ…

ラルド 「…ぅ!!」

エミィの体から全ての生気が消え去る。
この時、俺は…愛する人を失った。
この事件は、歴史にすら残らない…小さな事件だった。
それに巻き込まれ、とある組織との抗争。
俺はエミィと出会い、恋をし、そして死に別れた。
それから先、俺はどんな女も愛さないと誓った。
俺には…エミィを忘れることが、できなかったから。





………………………。





そして、俺が15歳になる頃…俺は真の恐怖を知ることになる。
エミィを失い、その傷を少しでも癒そうと、シンオウ地方に向かった年。
俺は、相変わらず、ポケモンたちと触れ合いながら旅を続けていた。
ポケモンのメンバーは変えず、いつものメンバー。
バトルも怠らず、俺は全てを振り切るかのように戦い続けた。
本来なら、ポケモンリーグに挑戦しても通用するはずのレベルだったが、俺は出ようとは思わなかった。
もう…あの時のような夢は、忘れてしまったから。
そして、俺はその年のある日、ハードマウンテンで恐怖の惨劇に遭遇した。



………。
……。
…。



『今より2年前 某日 某時刻 ハードマウンテン』


ラルド 「う…うあ! あああっ!?」

俺は血みどろの中にいた。
ハードマウンテンで一夜を明かそうと眠っていた時のことだった。
俺は、派手な音と叫び声、そして強烈な異臭に目を覚まし、目に入ってきた光景を見て、気が狂いそうになった。

人間 「ぎゃあああぁぁぁぁっ!!」

ドシャッ! ビチャッ!!

ラルド 「!? うわああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

俺は叫び声を上げ、後ずさる。
俺の体に人の生首がぶつかってきたのだ。
それだけじゃない、足元には数え切れないほどの肉槐。
ポケモンか人間かもわからないほど入り交ざっている。
死屍累々とはこのことだ…まさに、俺は地獄にいる。
そんな中、ひとりの男が高笑いをあげているのに気づいた。

男 「ヒャアーーーーーーハハッハ!! 血だ! もっと血をよこせーーーーーーー!!!」
男 「死ねぇ! 死ねぇ!! 死んじまえーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ラルド (う、うああ…!!)

俺は恐怖で意識を失いそうになる。
去年の事件など、比較にならないほどこの場所は地獄だ。
男は、俺に目を向け、狡猾した笑みを浮かべる。
その瞬間、俺は殺されると確信した。

男 「ククク…何だぁ? ガキが入り込んでるのか…」
男 「ククク! いいぜ、次はお前だ…どんな死に方がいい? 刻むか…潰すか!」

ドラピオン 「ドラーーーー!!!」

ラルド 「うわああああああああぁ!!!」

ボンッ!

ボスゴドラ 「ボッス!!」

狂気の男は俺に照準を合わせ、ドラピオンを向ける。
他にもポケモンが多数出ているが、どれも正気とは思えない表情をしていた。
俺は恐怖に駆られ、ボスゴドラを繰り出す。
やらなければ、やられる! 俺は、生きるために、戦うことを選んだ。

男 「やるか! 面白ぇ!! ドラピオン『ダークレイン』!!」

ラルド 「何だその技…!? ボスゴドラ『まもる』!!」

ボスゴドラ 「ボスッ!」

ドラピオン 「ドラァァァァァ!!」

ザァァァァァァッ!!!

ボスゴドラ 「!!」

ラルド 「うああああああああああぁぁぁぁっ!!」

黒い雨が当たり一面に降り注ぐ。
その雨は、周りにいる全ての敵を対象とし、トレーナーだろうがなんだろうがお構い無しに攻撃をしてきた。
俺はその雨に体中を焼かれるような痛みを覚えた。
だが、俺は反撃の指示をボスゴドラに与える。

ラルド 「ボスゴドラ! 『アイアンテール』だ!!」

ボスゴドラ 「ボッスーー!!」

ドッギャァァッ!!

ドラピオン 「ギャシャアアァァァッ!!!」

ボスゴドラの『アイアンテール』がドラピオンを吹き飛ばす。
どうやら、そこまでレベルの高いポケモンではないらしい。
とはいえ、他にも4体はいる…全部捌けるか!?

男 「ちっ、役立たずが…モジャンボ!」

モジャンボ 「モッジャー!!」

男 「『ダークホールド』だ!!」

モジャンボ 「モジャーーー!!」

ギュゥゥゥンッ!!

今度はモジャンボが黒い気に覆われ、気を解放する。
瞬間、ボスゴドラの体は黒い気に覆われ、ボスゴドラの動きが鈍くなる。

ラルド (何なんださっきから!? あんな技があるのか!?)

男 「未だサーナイト! 『ダークストーム』!!」

ラルド 「! ジュカイン『リーフストーム』!!」

ボンッ!!

ジュカイン 「ジュッカーーーー!!!」

俺はすかさずジュカインを繰り出し、サーナイト目掛けて『リーフストーム』を指示する。
ジュカインはボールから現れ、すぐに攻撃態勢に入ってサーナイトよりも早く攻撃した。

ドヒュゥゥゥ!! ビュワアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!

サーナイト 「サーーーーーーー!?」

ドギャァァァッ!!

鈍い音をあげ、サーナイトは岩壁に叩きつけられてダウンする。
俺は、気にもせず、次の指示を出す。

ラルド 「ボスゴドラ『れいとうビーム』!!」

ボスゴドラ 「ボ〜スーーーーーーー!!!」

コォォォォォキィィィィンッ!!

モジャンボ 「!?」

今度はモジャンボに攻撃。
ボスゴドラの口から放たれた『れいとうビーム』にモジャンボは凍りつく。
まだ終わりじゃない、俺は更に指示を追加する。

ラルド 「ジュカイン『リーフブレード』! 後ろだ!!」

ジュカイン 「!? ジュッカ!!」

ザシュゥゥッ!!

ラムパルド 「ラ、ラム…!!」

ズシィィンッ!!

後ろから迫っていた気配に俺は気がつき、ジュカインを動かす。
見事な反応で、ラムパルドを撃退した。
どうやら、こいつも奴のお仲間らしい。

男 「ちっ…どいつもこいつも! ケッキング!!」

ケッキング 「ケック!!」

ラルド 「これで…ラストだ!」
ラルド 「ジュカイン『リーフブレード』! ボスゴドラ『きあいパンチ』!!」

ボスゴドラ 「ボ〜ス〜〜!!」

ジュカイン 「ジュッカ!!」

男 「ケッキング『ダークエンド』!!」

まずはジュカインが攻める。
ケッキングは素早い動きで突っ込むが、俺のジュカインはもっと早い。
ケッキングはいかにも強烈そうな技を放つが、ジュカインは直前で回避してケッキングの後ろを取る。

ケッキング 「ケクッ!?」

ラルド 「行けーーーーーー!!」

ジュカイン 「ジュカーーーーー!!」

ザシュッ!!

ケッキング 「ク〜!?」

ボスゴドラ 「ボスーーーー!!」

動きが一瞬止まったところへ、ボスゴドラはドンピシャの『きあいパンチ』を繰り出す。
効果抜群の技だ、これで終わる!

ドッギャァァァァンッ!!

派手な音をたてて、ケッキングは地面を滑る。
立ち上がる気配は感じない、これで…終わりだ!!

男 「…クソが! 役立たずどもめ!! ヒードラン!! こいつらを焼き尽くせ!! 『マグマストーム』!!」

ラルド 「…ヒード、ラン?」

俺は耳を疑う。
だが、狂気の男の前に赤いポケモンが表れた。
巨体から凄まじい熱量を放ち、すぐにそれはこちらへ向かって放たれた。

ゴオォワアァァァァァッ!!

ジュカイン 「!?」

ドグォゥッ!!

ボスゴドラ 「ボスーーーーーー!!」

ラルド 「ボスゴドラ!?」

ボスゴドラは危険を感じ、ジュカインを守る。
しかし、凄まじい炎に焼かれ、ボスゴドラは数秒もしない内に倒れてしまった。

ラルド 「うっ…戻れボスゴドラ!」

シュボンッ!!

男 「クククッ! たまんねぇなぁ! もろいもろいもろい!!」
男 「ギャハハッ!! 骨も残しゃしねぇ! 綺麗に灰にしてやるぜぇ!!」

ラルド (駄目だ…やられる!?)

今の炎がもう一発来たら、今度はどうしようもない。
俺のポケモンで耐えられそうな奴は見当たらない、無理か…!?

男 「ギャーーーーーッハッハッハ!! ハッ!? ハガァッ!!」

ラルド 「!?」

突然、男は苦しみだす。
何かをされたのか、男は苦しみながら、前のめりに倒れる。
そして、そのすぐ後ろの存在に、俺は更なる恐怖を感じた。

ラルド (な、何だこの感覚!? 本当に人が持つ気なのか!?)

倒れた男の後ろにはポケモンが一体。
どうやら、ゴウカザルのようだ。

ザッ! ザッ! ザッ!!

ゴウカザル 「…ゴゥ」

? 「ふん…こんな物か」

現れたのは、とてつもない殺気を放つ男だった。
何やら見たこともない制服に身を包み、見るもの全てを猥怖させる重圧を放つ男。
父さんと同じ位の年だろうか? それなりに年季を感じさせる風貌だ。
ただ、足元に倒れている狂気の男の首元を片手で掴み、引きずった。

? 「ふん…子供か、その程度の力では興味はない、エサにならなかったのは運が良かったな」

ラルド (な、何なんだこいつ! 人を見る目じゃない…まるで、品定めでもするかのような視線で俺を見下しやがった)

制服の男は狂気の男を引きずり、闇に消える。
そして、俺はしばらく呆然とし、異臭と体のダルさに意識を覚醒させ、その場を去った。





………………………。





それから、俺はしばらく狂ったようにポケモンバトルを繰り返した。
相手を倒しても、全く満足がいかず、多い時は1日30回はバトルを繰り返していた。
俺よりも強いトレーナーはひとりもおらず、俺は途方に暮れていた。
そう…俺は、負けたかった。
誰かに打ち負かして欲しかった。
俺が弱いと証明して欲しかった…だけど、そうじゃなかった。
俺は…強かった。
少なくとも、俺はサバイバルエリアで死に物狂いのバトルを繰り返していた。
負けそうになることもない、ほとんどの場合、圧倒的な差で勝つ。
1ヶ月も同じことを繰り返していると、俺は次第に周りから恐れられるようになった。
深緑のトレーナー…それが、俺の通り名になっていた。
別に、俺はそんな名前に興味はない、俺は本当の名前さえ捨てたトレーナーだからだ。

ラルド (あれから1ヶ月…俺は800戦はこなした)
ラルド (負けは一度もない…ポケモンもどんどん強くなる)
ラルド (どうして…誰も俺に勝てないんだ?)

途方に暮れていた。
もう相手はいない…俺の姿をみただけで、皆逃げるように去っていく。
本当の意味で、俺は敵がいなくなってしまった。
もう、これ以上ここにいても仕方がない…そう思った矢先、ひとりの少女が俺に向かってこう言った。

『バトルをしましょう』

俺は、無感情に答えた。
そして…俺は、完膚なきまでに敗北を味わった。

ラルド (負けた…ついに、負けた)

少女は、笑いながら去っていた。
それなりに満足そうな表情をしていた。
年齢は、俺と同じ位じゃないだろうか?
バトルの内容としては、それほど差があるわけではなかった。
6対6のフルバトル…互いに最後の1体となった時、俺はもう燃え尽きていた。
相手の5体を倒すだけでも、俺は全てを出し切ってしまったんだ。
それ位…強かった。
もうちょっとで勝てるかもしれない…そんな甘い希望すら抱けなかった。
だけど…俺はこれで解放される気がした。
俺より強いトレーナーはいる…だったら、俺はまだ…強くなれる。
1ヶ月前の事件以来…俺は何も考えられなかった。
エミィを失った悲劇から、今回の惨劇…俺は、血を見すぎていた。
狂ってしまいそうだった…だけど、耐えていた。
バトルに負ければ、解放される…全力を出して、全部出し切って負けたなら、吹っ切れる。
そんな、勝手な理由を付けて、俺は戦い続けた。
それも…ようやく終わった。



………。



ラルド 「………」

最後のバトルが終わり、俺はひとり地面に倒れた。
夕日に照らされ、俺はふと思う。

ラルド (ホウエンに…帰ろう)

何故かはわからない。
だけど…俺は帰りたかった。
それも、歩いてシンオウからホウエンへ…俺は、約1年かけて、ミシロタウンに戻っていた。





………………………。





『今より1年前 某日 某時刻 ミシロタウン』


ラルド 「……」

ユウキ 「あっ、ラルドさん!! ラルドさんだよね!?」

俺の前にユウキが飛び込んでくる。
目の前のユウキはあれから成長し、俺と同じような服を着ていた。
表情はとても嬉しそうで、ユウキは楽しそうに俺にこう告げた。

ユウキ 「俺、もうすぐポケモントレーナーになるんだ! ラルドさんはキモリだったから、俺はミズゴロウで頑張る!」
ユウキ 「まだ、もらえてないけど、もうすぐもらえるんだ!」
ユウキ 「俺、ミズゴロウをもらったら旅に出るよ! ラルドさんに負けない位強いトレーナーになる!!」

ユウキは、俺を『強い』と勝手に思い込み、そう語る。
俺はそんなユウキの頭をなでてやることしか出来なかった。
そして、ユウキはそのままコトキタウンに向かった。
父さんと一緒にフィールドワークらしい。

ラルド 「…そうか、もうそんな年月になるのか」

俺は感慨深く思う。
そして、俺はこの時気づくべきだったのかもしれない。
この日が…3月31日であることに。



………。
……。
…。



『昨年 3月31日 某時刻 トキワシティ』


女性 「え〜! 現在、事件のあった『トウカのもり』に来ております!」
女性 「何でも、ホウエン地方を代表する、オダマキ博士のご子息が、行方不明になったという事件で!!」

ラルド (止められたはずなんだ…俺の、せいで)

あの時は、何で俺がこんな目に…と何度も思った。
だが、わかってしまえば何のことはない…自分のせいだ。
俺が…何もしなかったら、俺があんな目にあったんだ。
全部…自分のせいだった……。

ラルド 「……!」

俺は必死に息子を探す父さんを見ていた。
センリさんも一緒になって探してくれている。
だけど、見つかるはずはないのはわかっていた…だって。

ラルド 「俺は…ここにいるんだから」

そして、その日の夜…俺は研究所を訪れる決意をした。
そして…全てを話すことに決めた。
もう…縛られるのは、嫌だ。



………。
……。
…。



オダマキ 「嘘だろう…そんな、馬鹿なことが」

ラルド 「…信じる信じないは、好きにしたらいい」
ラルド 「俺は、『ユウキ』だよ」
ラルド 「5年前、この日を境に『時渡り』をして…同じ日に帰ってきた」
ラルド 「もう…この時代に俺はひとりしかいない」
ラルド 「俺が…『ユウキ』なんだから!」

オダマキ 「…ずっと」
オダマキ 「ずっと…お前はひとりで生きてきたんだな」

ラルド 「…え?」

父さんは、険しい表情で、俺を見つめる。
それは俺が今まで見たことのない、複雑そうな表情だった。

オダマキ 「正直…未だに信じられない」
オダマキ 「だけど、『時渡り』を証明する事象が…ここに残ってるんだ」

そう言って、父さんはミズゴロウを俺に差し出す。
それは…俺が本来はもらうはずのミズゴロウだった。

ミズゴロウ 「ゴロゴロ♪」

ミズゴロウは俺に懐いてくる。
会ったばかりのはずなのに、ミズゴロウはまるで本当の仲間に出会えたかのような喜びを表現していた。

オダマキ 「覚えているだろう? このミズゴロウは、君にしか懐かない」
オダマキ 「例え、僕にだって…この子は本当に気を許したりはしなかった」
オダマキ 「だって、この子は…産まれた瞬間から、君を親だと思っているからね」

ラルド 「!?」

そう…俺は、ミズゴロウの親代わりだった。
このミズゴロウは俺のこだわりだった。
ラルドに憧れ、ラルドを超えるために、と俺はミズゴロウのタマゴを必死に暖めた。
そして、タマゴから付加したミズゴロウは俺を親だと思い込んだ。
すりこみ…と言う奴だが、ミズゴロウは他の人間に懐くことはまるでなかった。
そして、そのミズゴロウが今の俺に頬を摺り寄せている…この仕草は、あのミズゴロウの癖だった。
まるで、自分の匂いを擦り付けるかのような仕草。
決して離れないと、そう証明するかのような…

オダマキ 「…お帰り、ユウキ」

ユウキ 「くっ…うぅ……ああぁ!! あああぁっ!!!」

俺はその日…止まった時が動いたかのように、泣いた。
『時渡り』をした5年前、俺は涙を流すことはなかった。
5年ぶりの、『ユウキ』との再会に…俺は父さんの胸に埋もれて、一心に泣いた…
この時、俺は『ユウキ』に戻った。
『ユウキ』の名を取り戻し、俺は新たなスタートラインに立った。
俺はもう迷わないと決めた…同じ過ちを繰り返さないためにも俺は『ユウキ』であり続ける。
もう、自分を捨てたりはしない!
それから、時は流れ…俺は驚愕の出会いを果たした。





………………………。





『昨年 9月27日 ユウキの部屋』


ユウキ 「ポケモンの体力は満タン! 道具もこれでよしっと!」

俺はフィールドワークの準備を終え、椅子から立ち上がろうとする。
その瞬間、俺は目の前にいる少女に驚きを隠せなかった。

ユウキ (エミィ!?)

エミィ(?) 「…?」

俺の目の前に立っていたのは、エミィにそっくりの少女だった。
服装は、エミィと違い赤色…よくよく考えれば大分違う。
あいつは、こんな堂々とはしてなかったからな。
俺は他人だと確信し、冷静にこう尋ねる。

ユウキ 「…って、お前誰?」

少女 「今日、こっちに引っ越してきたハルカ…って多分聞いていると思うけど」

そう、これがハルカとの出会いだった。
今思えば、あいつがポケモンリーグに出るなんて、微塵も思わなかったなぁ。





………………………。





『現代 4月11日 時刻16:00 サイユウシティ・鳥獣保護区』


ユウキ 「俺の話は…こんな所ですよ」

ミク 「そう…あなたは、そんな経験をしたのね」

ミクさんは、まるで痛みに耐えるかのように、体を震わせていた。
ミクさんの体験は俺の倍。
だけど、内容の濃さなら俺は負けていないつもりだった。
時間は残酷だ…だけど、もっと残酷なことはいくらでもある。

ユウキ 「俺が言えるのはひとつだけ…今を生きるべきだ」
ユウキ 「居場所がないなんて、幻ですよ」
ユウキ 「居場所はどこにでも作れる…誰かがきっと、必要としてくれる」
ユウキ 「今の時代は…腐っているのかもしれないけど、悪くない時代だと思いますよ、俺は」

ミク 「…そうね」

ミクさんは、今にも泣き出しそうな表情をしていた。
よっぽど、俺の体験はショッキングだったらしい。

ミク 「私…自惚れていたわ」
ミク 「自分以上に不幸な人間はいないと思い込んでいた」
ミク 「あなたの話を聞いた時、私は幸せなんだと気づいた」
ミク 「…何て、愚か」

ユウキ 「…気づいたなら、きっと大丈夫ですよ」
ユウキ 「俺は、5年かかっただけ…ミクさんは今気づいたなら、それでいいと思いますよ」
ユウキ 「『時渡り』は、確かに残酷です」
ユウキ 「でも、決して不幸なだけじゃない…そこから歩き出すための、歩みが…必ず必要なんです」

俺は空を見てそう言う。
自分を取り戻して1年…あの時は、ホウエンに帰って自分に会っていた時だった。
俺はそんな昔とも今とも取れることを考え、空を見てふと…可笑しくなった。

ユウキ 「…そろそろ戻りましょうか、これ以上は話す必要もないと思います」

ミク 「そうね…よければ、これからも会えるかしら?」

ユウキ 「…まぁ、別に構いませんけど」

何だか、妙な雰囲気に感じる。
ミクさんは、優しい笑みで俺に語りかけてくれる。
何だか、最初の印象はまるで薄れている…何だか、若干マズイ予感がする。

ユウキ 「あっと! 俺、仕事の手伝いあるんで! 先に戻ります!!」

俺は有無も言わさずにダッシュする。
すると、ミクさんは驚いた顔で、俺の駆ける背中を見つめているようだった。
うう…視線が痛い。

ミク 「ふふ…なるほどねぇ」
ミク 「ハルカちゃんが、信頼しているのもわかる気がするわ」
ミク 「今を…自分として生きる、か」
ミク 「私も…取り戻せるかしら? ううん…戻さなければ、ダメなのね」

私は空を見た。
もうすぐ夕方に差しかかろうかと言う時刻。
私は…そんな空を前に、何故か涙を流した。
10年ぶりかもしれない…嬉し涙を。



…To be continued




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