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POCKET MONSTER RUBY



第87話 『The wall which you should go over』




『4月15日 時刻9:00 サイユウシティ・第0スタジアム』


ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!!

コトウ 「さぁ、皆さんお待たせいたしましたーーーー!!!」
コトウ 「ここまで、止む無く延期となってしまったポケモンリーグ本戦!!」
コトウ 「ついに、壮絶なるバトルが幕を開けます!!」


オオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォッ!!!


ハルカ 「……」

私は会場に現れ、観客の注目を浴びる。
スポットライトが照らされ、私の存在を引き立たせる。
だけど、私は心が高揚することは無い。
ゆっくりと、しっかりした足取りで前へ進む。
やや暗い照明の会場内、私は正面に立つひとりの女をただ真っ直ぐに見据えた…

キヨハ 「………」


コトウ 「本戦、第1試合はハルカ選手VSキヨハ選手!! もはや語る必要も無いふたりでしょう!」
コトウ 「タッグバトルトーナメントにも出場し、お互い決勝で相まみえたふたりです!」
コトウ 「とはいえ、あの時のバトルではハルカ選手にいい所はまるでありませんでした!」
コトウ 「その差は縮まっているのか!? それともあっさりと幕を引くのか!?」
コトウ 「今大会最大のダークホースが、伝説のトレーナー・キヨハにどう戦うのか! まもなく試合開始です!!」

オオオオオオオオオオオオオオオオォォォッ!!

ハルカ 「……」

私は気を静める。
キヨハさんが相手の以上、余計な感情は状況を悪くする。
簡単に勝てる相手なんかじゃない、むしろ勝てる確率の方が低い。
やれること…全部やるだけ。



………。



ユウキ 「……」

オダマキ 「あれ? 観客席の方にいかないのかい?」

ユウキ 「…ああ、ここでいい」
ユウキ 「別に、声出して応援しようとは思わないしね」

俺はそう言って、父さんと一緒のVIPルームからハルカを見下ろす。
緊張はしてねぇな、顔つきもいい。
今の所不安はなさそうだ。

ユウキ (…やれるだけのことはやった)
ユウキ (そこからどうするかは、お前次第だ)

俺は昨日のバトルを思い出す。
ハルカに教えてやれることは教えた…。
少なくとも、呆気ない負け方はしないだろう…

ユウキ (と、言うより…呆気なく終わったら、許さんがな!)



コトウ 「ちなみに! ポケモンリーグは使用ポケモン6体の変則ルール!」
コトウ 「会場にある、巨大スクリーンにこの戦いのルールが明記されるぞぉ!?」
コトウ 「ちなみにぃ! この試合のルールはぁ!?」

ピピピピピピピピピッ!!

適当な機械音が鳴り響き、巨大スクリーンのモニタにルールが表示される。
書かれている内容は…

コトウ 「シングルバトル! 6対6 勝ち抜き戦だーーー!!」

ハルカ (…って、普通のフルバトルと同じじゃない)

大層な前振りをしたにも関わらず、やることはいつも通り。
とはいえ、スタンダードなルールだけに、厳しい戦いは避けられそうに無い、か…

コトウ 「なお、ポケモンリーグでの持ち物、道具の使用は禁止となっております!」
コトウ 「交換は互いに制限はありません! 相手の全てのポケモンを倒した者が勝者となります!!
コトウ 「そして! ルールの決定と共にフィールドも決定!! 今回のフィールドは…『草原』だぁ!!」

ウィィィィッィンッ!!

ハルカ 「おお…っ!」

フィールドが開き、下から別のフィールドが現れる。
出てきたのは『草原』のフィールド…特に当たり障りも無い、普通のフィールドだ。
草バトルと同じ感じね! これなら戸惑うことは無い!


ワアアアアアアアアアアアアアアアァァ!!


審判 「…それでは、両者ポケモンを!!」

ハルカ 「! 任せるわよ!!」
キヨハ 「……!」

審判が現れ、コールする。
そして私たちはほぼ同時にモンスターボールを投げた。
キヨハさんは…一体どのポケモンで来る?

ボボンッ!!

ライボルト 「! ラーイッ!」
ブラッキー 「……ラキ」

ハルカ (!? いきなりブラッキー!!)

コトウ 「ハルカ選手が繰り出したのはライボルト! キヨハ選手はブラッキーだ!!」
コトウ 「果たして、最初にペースを掴むのはどちらか!? ついに試合開始だーー!!」

審判 「始め!!」

ハルカ (くっ…考えている暇は無い!)
ハルカ 「ライボルト! 『スパーク』!!」

ライボルト 「ライライライー!!」

ライボルトがまず先手を取る。
ブラッキーはどっしりと構え、威嚇するように前屈みの姿勢でこちらを見る。

ドカッ! バチバチィッ!!

ブラッキー 「…! ラキ…」

ブンブンッ!と軽く首を横に振り、ブラッキーは何事も無かったかのように立ち振る舞う。
頭から直撃だったはずだけど…まるで効いてない。
せいぜい1〜2割ってとこか…


コトウ 「ブラッキー! 『スパーク』を物ともしません! これがキヨハ選手の誇るブラッキーだ!!」
コトウ 「過去、幾度と無くバトルを繰り広げ、ダウン率は何と1.7%!!」
コトウ 「あくまで、ポケモンリーグでの算出ですがこの恐るべき数字は、耐久力の高さを物語っているでしょう!!」

そいつぁ驚きね…1.7%って。
私だったら6〜7割以上ダウンしててもおかしくない。
どっちにしても、こんな威力の技じゃダメってことか…

キヨハ 「『くろいまなざし』」

ブラッキー 「……!」

ライボルト 「!?」

ブォォンッ

ライボルトはブラッキーの視線に取り付かれる。
あの技を喰らうと交換ができなくなる…バトルから逃げることも不可能だ。
ヤバイ…何か、いきなり詰めにかかられてる気がする。

ハルカ 「ライボルト『かみなり』!!」

ライボルト 「! ラーーーーイッ!!」

ピシャァァンッ!! バチバチバチィ!!

ブラッキー 「…!!」

ブラッキーは動くことなく、その場で直撃を受ける。
今度は効いてる! でもまだ半分位か…
相手の動きは遅い! スピードで撹乱できれば…

コトウ 「今度は大技で攻める! さすがに『かみなり』の直撃は効いたか!?」
コトウ 「だがブラッキーはまだまだ体力十分! さぁ反撃開始だ!!」

キヨハ 「…『どくどく』」

ブラッキー 「…!」

ボボボッ! ビチャァッ!!

ライボルト 「!? ライーー!」

ハルカ 「ライボルト!? 下から!?」

ブラッキーが何か動作をすると、いきなりライボルトの足元から『どくどく』の水溜りが現れる。
私は完全に避けるタイミングを見逃し、ライボルトは『もうどく』に侵されてしまった。


コトウ 「『どくどく』がヒットォ!! キヨハ選手お得意のパターンだ!!」
コトウ 「こうなるともはや、相手ポケモンは絶体絶命! このパターンでのキヨハ選手の勝率は99.3%!!」
コトウ 「ハルカ選手、切り抜けられるのかぁ!?」


ハルカ (冗談! そんな確率に勝てるわけ無い!)
ハルカ 「ライボルト! 『かみなり』!!」

キヨハ 「『まもる』」

ライボルト 「ライーーー!!!」

ピッシャァァァンッ!! ピッキィィンッ!!

ブラッキー 「………」


コトウ 「ブラッキー無傷! 相手の攻撃を防いで時間を稼ぎます!」


ハルカ 「く…だったら連発で!!」

キヨハ 「『つきのひかり』…」

ブラッキー 「…!」

パァァァァァァァッ!

ブラッキーは自分の真上に月の様な形をした光を作り、そこから光を浴びる。
すると…ブラッキーの体力は4分の1程回復した。


コトウ 「『つきのひかり』で体力を回復! しかし! まだまだ朝のために回復量はイマイチだ!!」


ハルカ (朝のため…? 何か制約があるのか…)
ハルカ (だけどこのままじゃマズイ! ライボルトはどんどん体力が減っていく…!)
ハルカ 「ライボルト『でんこうせっか』!!」

キヨハ 「『まもる』」

ライボルト 「ライーーー!!」

ブラッキー 「……」

ピキィィンッ!!

再び『まもる』で防ぐブラッキー、これで更にライボルトの体力は減る。
ダメだ! このままじゃ…!!

ハルカ (!? そうだ…こっちから逃げられないなら!)
ハルカ 「ライボルト『ほえる』!!」

キヨハ 「! 『かげぶんしん』!!」

ブラッキー 「ラキッ!」

ババババババッ!!

ライボルト 「!?」

ハルカ 「構うなライボルト! 思いっきり吼えろーーー!!!」

ライボルト 「ラ〜イーーーーーーーーーー!!!」

ビュオオゥッ!!

ライボルトは分身に向かって『ほえる』を放つ。
しかし、ブラッキーは引っ込むことなく、そのまま分身と共に健在していた。

コトウ 「『ほえる』不発! ハルカ選手、無理やりに状況を変えようとしましたが、効果は無し!! そして…もはやライボルトはダウン寸前!!」

ハルカ (…ここまでか!!)

キヨハ 「『でんこうせっか』」

ブラッキー 「!!」

ヒュンッ! ドガァッ!!

ライボルト 「ライ〜…!」

ズザァッ! ゴロゴロ!!

ライボルトはブラッキーに突撃され、地面を転がる。
完全に…ダウンだ。

審判 「ライボルト戦闘不能!! ブラッキーの勝ち!」

シュボンッ!

ハルカ 「ありがとう…ライボルト」


コトウ 「キヨハ選手見事! 完璧なバトルでまずはライボルトを毒殺!!」
コトウ 「ハルカ選手、いきなり押され気味だぞぉ!?」



………。



ジェット 「つ、強いな…」

リベル 「当たり前の戦い方だけど、ブラッキーがやるとああも簡単に…」

ノリカ 「ハルカ様ーー!! まだ負けてないですぞーーーー!!」

アムカ 「頑張れーー!!」

サヤ 「………」

キッヴァ (あれが…伝説のトレーナーキヨハ)
キッヴァ (冷静でありながらも、強気の姿勢で攻めてくる…レベルが違うのは明白)
キッヴァ (だけど…ハルカさんの強さは誰にも測れない…手を合わせた人間なら皆わかってる)



………。



ハルカ 「行け! 『アーマルド』!!」

ボンッ!

アーマルド 「アマー!!」

キヨハ 「………」

私はアーマルドを繰り出す。
キヨハさんはそれを見て、観察する。
タイプ相性が悪いのは明白…と、なるとキヨハさんが取る行動は?

キヨハ 「……『ちょうはつ』」
ハルカ 「『ステルスロック』!!」

ブラッキー 「…! ラ」
アーマルド 「アマーー!!」

バババババッ!!

アーマルドはブラッキーの先手を取って動く。
やった! ブラッキーの素早さはアーマルドより遅い!
これで、少しでも有利になれば…!


コトウ 「何とハルカ選手ここで『ステルスロック』!!」
コトウ 「あの技は、相手がポケモンを場に出す度ダメージを与える技!」
コトウ 「フルバトルともなれば、場に出す回数も多くダメージは馬鹿になりません!!」
コトウ 「ハルカ選手、強引に流れを変えようとしています! だがアーマルドは『ちょうはつ』で攻撃しか出来なくなってしまった!!」



………。



ユウキ (よし…ちゃんと使ったな)

オダマキ 「へぇ〜ハルカちゃんも、考えて技を使うようになったね〜」
オダマキ 「ユウキ、君はどう見る?」

ユウキ 「…まだまだだね、このままじゃハルカは勝てない」
ユウキ 「キヨハさんの力は…あんなもんじゃない」

オダマキ 「…ふむ、苦しい戦いなりそうだね」



………。



キヨハ 「戻ってブラッキー…」

シュボンッ!

ハルカ (ここで交換か…でも『ステルスロック』のダメージがある)

キヨハ 「出なさい、『ハガネール』」

ボンッ!! ガキキキィンッ!!

ハガネール 「! ガネーーーール!!」

ハルカ 「……で、でか」

何と、次に現れたのは『ハガネール』と言うポケモン。
かなりのサイズで完全に私たちは見下ろされていた。
10m位だろうか? 凄い巨大さだ…!
しかも『ステルスロック』のダメージがかなり低い…鋼タイプや地面タイプってことね。

ハルカ 「戻ってアーマルド!」

シュボンッ!

キヨハ 「『ステルスロック』!」

ハガネール 「ハガネーー!!」

バババババッ!!

ハルカ (嘘! 向こうも!?)


コトウ 「何と、キヨハ選手も『ステルスロック』!! これはハルカ選手痛い! 状況は戻ってしまったーー!!」


ハルカ (く…この際仕方が無い! とにかく、相性のいい子で攻めていこう!!)
ハルカ 「行け『ホエルオー』!!」

ボンッ! ドシュシュシュッ!!

ホエルオー 「ホエ〜〜」

ハガネール 「ハ…ハガッ」


コトウ 「ハルカ選手、次に出したのはホエルオー! ハガネールをあっさり見下ろす大きさだーー!!」
コトウ 「相次ぐ巨大ポケモンの登場に、会場が狭く感じます!!」

ハルカ (『ステルスロック』のダメージでいきなり体力が減った…でも、押すことはできる!」
ハルカ 「ホエルオー…!」

キヨハ 「戻ってハガネール」

シュボンッ!

ハルカ 「!? また…交換!」


コトウ 「ハルカ選手タイミングが外れる! キヨハ選手、再び交換だ!!」
コトウ 「だが交換すればするほど不利になるこの状況! 一体どうなるのか!!」


キヨハ 「…『ブラッキー』、頼むわ!」

ボンッ! ドシュシュゥッ!!

ブラッキー 「! …ラキィ」

ハルカ 「ホエルオー! 『しおふき』!!」

ホエルオー 「ホエーーー!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ! ドッパアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!

ブラッキー 「ラキ〜〜!!!」

ブラッキーは『しおふき』の直撃を食らう。
だが、まだ倒れない…もう相当ダメージは溜まっているのに!!

キヨハ (良く耐えたわ! これで流れは変わる!)
キヨハ 「『ねむる』!」

ブラッキー 「…! …ZZZ〜」

ハルカ (そんな!? 一気に体力を全快!?)

ブラッキーはその場ですぐに眠り、ここまでのダメージを全快させる。
だけど、逆にチャンスかも…ここで一気にダメージを与えておけば!!

ハルカ 「ホエルオー『しおふき』!!」

ホエルオー 「ホエーーーーーーーーー!!」」

ゴゴゴゴゴゴゴッ! ドッパアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!

ブラッキー 「…!! ZZZ〜」

今ので3割位…結構効いてるわ!
このまま一気に押す!!

ハルカ 「もう一発!!」

ホエルオー 「ホエーーーーーーーーーーーーーー!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ! ドッパアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!

ブラッキー 「!! …ZZZ〜」

もう少し…もう少しで倒せる!!

ハルカ 「ホエルオー!!」

ホエルオー 「ホエーーーーーーーーー!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ! ドッパアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!


ブラッキー 「!! ラ、ラキィ!!」

キヨハ 「『ねむる』…」

ブラッキー 「…!! ZZZ〜」


コトウ 「何と!? ブラッキー連続で眠ります!!」
コトウ 「ホエルオーの大技を位ながらも、耐える!!


ハルカ (マ、マズイ…『しおふき』は後2回しか使えないのに!!)

私は青ざめる。
キヨハさんの狙いはPP切れ!! ホエルオーの『しおふき』を削ってしまえば、ブラッキーを倒す術が無くなる!!
私はすぐにホエルオーを戻すことにした。

ハルカ 「戻ってホエルオー! 出るのよ『アーマルド』!!」

シュボンッ! ボンッ! ドドシュシュシュッ!!

アーマルド 「アマーーー!!」

ズンッ!!

今の『ステルスロック』でアーマルドの体力が大きく削れる。
アーマルドは岩タイプに弱い…わかってたけど、辛い。

ハルカ 「アーマルド『つるぎのまい』!!」

ブラッキー 「ZZZ〜」

アーマルド 「アマーー!!」

ズンッ! ズンッ!!

アーマルドはその場で地団太を踏むように『つるぎのまい』を行う。
これで攻撃力は倍加する、そしてキヨハさんが取る行動は…!

キヨハ 「戻ってブラッキー」

シュボンッ!

ハルカ 「アーマルド!」

キヨハ 「『ハガネール』!」

ハルカ 「『じしん』!!」

ボンッ! キキキキィンッ!!

ハガネール 「ガネッ!」

アーマルド 「アーーーーマッ!!」

ズッギャアアアアアアアアアアアァァァァァァァンッ!!

交換際、私の読みが決まって『じしん』がヒットする。
ハガネールはいきなりのダメージだが踏み止まった…って、耐えるのか。

ハルカ (アーマルドの攻撃力でも、あれなのか…相当な防御力ね)

とはいえ、ハガネールは相当のダメージを受けている。
押し切るなら今だ! 下手なことをされる前に…!

キヨハ (ハルカちゃん…こちらの交換を読んで来たわね)
キヨハ (面白くなってきたわ…そうでなければあなたに勝つ意味は無い!)
キヨハ 「ハガネール『アイアンテール』!!」

ハガネール 「ハガーー!!」

ハルカ 「アーマルド『みずでっぽう』!!」

アーマルド 「アマーーーー!!」

バシャアアアアアァァァァァァァッ!!

ハガネール 「ハ、ハガーーー!!」

ハガネールは巨体を動かし突進してくるも、『みずでっぽう』を受けて怯む。
大した威力じゃないけど、今のハガネールの体力ならこれでも十分! 予想外の水技に耐えられなかったようね!

ドッ! ズゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!

審判 「ハガネール戦闘不能! アーマルドの勝ち!!」

ワアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!


コトウ 「やりましたハルカ選手! ここで勝負をタイに持ちこんだぁ!!」
コトウ 「互いに交換を駆使しての大混戦! ハルカ選手が見事に交換読みを当ててハガネールを沈めましたぁ!!」



………。



ランマ 「…ほぅ、ここでタイに戻すとはなぁ」

イータ 「……」

ワテはイータと一緒にこのバトルを見ていた。
イータの奴、最近妙にバトルを見ようとするが、一体どういう風の吹き回しや?
いや、見てるのはバトルやないんか…?

ランマ (キヨハ…嬉しそうやな)

ワテはかつての好敵手を見てそう思う。
あいつは…いつもコンプレックスを持って戦ってる。
敵わない相手がいる…相手より長い時間、長い回数ポケモンバトルを繰り返してきたのに、勝てない相手。
そのコンプレックスを打ち砕くために、あいつは今日この場に立ってる。

ランマ (…まぁ、せいぜい気張り)
ランマ (ハルカちゃんは、あんさんの期待を裏切るようなトレーナーやおまへん)



………。



キヨハ 「…出なさい『マンタイン』」

ボンッ! ドシュシュッ!!

マンタイン 「マン〜!!」

マンタインが現れ、『ステルスロック』のダメージが入る。
飛行タイプだから、ダメージは大きい。
とはいえ、相手は水タイプか…どうする?

ハルカ (こっちの動きを読んでくるとしたら…!)

キヨハ 「…『なみのり』!」

ハルカ 「『まもる』!」

マンタイン 「マンー!」

ドドドドッ! ザッパアアアアアアアアアアアアアアァァァァンッ!!!

アーマルド 「アマーーー!!」

アーマルドは攻撃を防ぐ。
そのまま攻撃してきた…危ない危ない。
いつものペースで攻撃してたらやられてた。

キヨハ (…なるほど、こっちの手を読もうとしているわけね)
キヨハ (ハルカちゃんらしくないわね…でも、それが成功している)
キヨハ (面白いわ…それならどこまで読めるか見せてもらいましょうか!)

ハルカ 「アーマルド『ロックブラスト』!!」

アーマルド 「アマーー!!」

キヨハ 「回避して『あまごい』!!」

ババババッ!!

マンタイン 「マンッ! マンーー!!」

マンタインは『ロックブラスト』をギリギリでかわす。
多少掠りはするも、空中に飛び上がって回避した。
そして空中で舞うように『あまごい』を行う。

ポツポツ…ザアアアアアアアアァァァァァァッ!!

ハルカ 「!! 戻れアーマルド!!」

シュボンッ!!

ハルカ 「ダーテング! 『にほんばれ』!!」

キヨハ 「『れいとうビーム』!」

ボンッ!! ザシュシュ! コォキィィンッ!!

ダーテング 「! テ、テン…!! テーーーン!!」

カァァァァッ!!

ダーテングは出現すると同時に岩と氷のダメージを受ける。
だが、何とかその場で踏み止まり、ダーテングは『にほんばれ』で天候を変化させる。


コトウ 「短い間に天候が入れ替わる! 互いに有利な状況を作り出そうと必至です!」


ハルカ (ダーテングのダメージは大きい! キヨハさんも考えてくるはず!)
ハルカ 「ダーテング『リーフストーム』!!」

キヨハ 「マンタイン『あまごい』!!」

ダーテング 「テーーーンーーーーーーーーーー!!」

ビュオオオオオオォォォッ! ドビュウウウウウウウウゥゥゥゥッ!!

ダーテングの両手から葉っぱの大軍が風と共にマンタインを襲う。
マンタインは技のモーションに入っているため、回避は出来ない。


コトウ 「『リーフストーム』が直撃!! マンタイン、苦しみながらも耐える!!」
コトウ 「そして、マンタイン再び『あまごい』だぁ!!」


マンタイン 「マンーーー!!!」

ザアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!

再び天候が雨に変わる。
押し切れなかった…やっぱりマンタインは特殊防御力が高い!
だけど、ダメージは与えた、これでいい!

キヨハ (強引ながらも、最適な選択に近い…)
キヨハ (ハルカちゃん、タッグバトルの時とは別人の様な組み立てをしてくる!)
キヨハ (たった1日の期間で…一体何が?)

ハルカ (ユウキが教えてくれた…キヨハさんとの戦い方)
ハルカ (どうすれば、どう動くか…どう動けばどうするのか)
ハルカ (でも…私なんかじゃ読み切ることはできない、だから強引に流れを変えるしかない!)



………。



ユウキ (驚いたな…ハルカの奴、自分の中で自らの戦略を立て始めている)
ユウキ (今まで真っ直ぐ戦うしか出来なかった女が、バトルの組み立てを覚え始めている)
ユウキ (俺が仕込んだのは、あくまで基本…キヨハさんとの戦いで流されないよう、基本を叩き込んだだけだ)
ユウキ (だが、あいつは今目の前にいる相手から戦略を吸収している)
ユウキ (キヨハさんの戦いを見ながら、肌に感じてどうすればいいかを感じ取っているんだ)

オダマキ 「やっぱり、違うね」

ユウキ 「? 何が…」

父さんは何か思い出すように呟く。
そして、やや懐かしそうな顔で。

オダマキ 「センリと戦い方がね…センリは基本的に相手に全力を出させつつ、自分の力全てをぶつけるトレーナーだから」
オダマキ 「でも、ハルカちゃんは違う…ハルカちゃんは最初から全力」
オダマキ 「そして、相手のいい所を全て乗り越えようとする」
オダマキ 「結果、ハルカちゃんは戦いの中で強くなっていく…これは、凄いことだよ」

ユウキ 「……」



………。



キヨハ 「マンタイン『れいとうビーム』!」

ハルカ 「かわして『だましうち』!」

マンタイン 「マンーー!!」

コキィィッ!!

ダーテング 「!! テン!! テーン!?」

ダーテングは身を捻って回避しようとするも、マンタインの反応が速過ぎて回避できなかった。
これでダウンだ…

審判 「ダーテング戦闘不能! マンタインの勝ち!!」

シュボンッ!

ハルカ (残り、4体…キヨハさんは5体だけど)

状況は何とも言えない。
互いに『ステルスロック』がかかっている以上、交換だけでもダメージはあるのだから。
しかし…この大雨の状況、不利と思わざるを得ない。
だったら!!

ハルカ 「ホエルオー!!」

ボンッ!! ドシュシュゥッ!!

ホエルオー 「!? ホエーー!!」

ホエルオーは再び岩に削られる。
だが、まだまだ体力に余裕はある! マンタインを押し切ることは不可能じゃないはず!

キヨハ (恐らく、特性はバレている…いくらマンタインといえど、物理攻撃で押されれば危険か)
キヨハ (…交換しても『ステルスロック』のダメージにはもう耐えられない)
キヨハ (マンタインは…ここでダメね)


コトウ 「序盤から一転して、やや潰し合いになりつつある展開!」
コトウ 「キヨハ選手が若干押しているようにも感じますが、ハルカ選手は不適に笑います」
コトウ 「すでに30分が立とうという中、今だダウンしたポケモンはふたり合わせてたったの3体!」
コトウ 「互いに『ステルスロック』が張られている中、我慢比べのようなバトルが動き始めております!!」


ハルカ 「ホエルオー! 『たきのぼり』!!」

キヨハ 「く…マンタイン『ハイドロポンプ』!!」

マンタイン 「マンーーーーーーーー!!」

ギュォッ! ドッバアアアアアアアアアアァァァァンッ!!

ホエルオー 「ホ、ホエ〜〜〜!! ホエーーーーー!!」

ドズアッパァァァァンッ!!

マンタイン 「マ、マンーー!!」

ホエルオーは『ハイドロポンプ』の直撃を受け、ダメージを負う。
そこまで大きなダメージではないけれど、体力はもう半分を切っている。
ホエルオーはすぐ様、水を下から上へと噴出させ、『たきのぼり』でマンタインのいる上空へと突撃する。
それを受け、マンタインはそのままダウンした。

審判 「マンタイン戦闘不能! ホエルオーの勝ち!!」

シュボンッ!

キヨハ 「頑張ったわね、マンタイン…」
キヨハ (思った以上に『ステルスロック』が辛い…交換を多用すれば、こちらが不利ね)
キヨハ 「『ヘラクロス』!」

ボンッ! ザシュシュシュッ!!

ヘラクロス 「ヘ、ヘラクロッ!!」


コトウ 「キヨハ選手が繰り出したのは『ヘラクロス』! 岩のダメージに苛まれながらも、ドッシリと相手を見据えます!」
コトウ 「ハルカ選手のホエルオーも体力がそれほど残っているわけではありません! 果たしてどうなる!?」


ハルカ (シュミレーションでは散々にやってくれたポケモンね)
ハルカ (攻撃力とスピードが凄い…ここはホエルオーに踏ん張ってもらうしかない!)
ハルカ 「ホエルオー『たきのぼり』!」

キヨハ 「ヘラクロス『メガホーン』!!」

ヘラクロス 「ヘラクローーー!!」

ダダダダッ!!

ホエルオー 「ホエ〜!!」

ドッギャアアアンッ!!

ホエルオーは技の態勢に入るも、先に潰される。
ヘラクロスの圧倒的なパワーには成す術も無かった…

審判 「ホエルオー戦闘不能! ヘラクロスの勝ち!!」


コトウ 「ここはあっさりと決めたキヨハ選手! ハルカ選手、ジリジリと離されます!」
コトウ 「果たして、止めことが出来るか!?」

ハルカ (ついに半分…残りはアーマルドと他2体)
ハルカ (キヨハさんはブラッキーとヘラクロス、他2体か…)

キヨハ (雨ももうすぐ止むわね…このまま押し込めるかしら?)

私は次のポケモンを考える。
今回はあくまでキヨハさんとのバトルを想定してパーティを組んだ。
色々考えて、誰が有効かを決めた。
その中で、唯一怖かったのがこのヘラクロスだ。
他のポケモンと違い、対策が取り辛い…あの圧倒的な攻撃力を受け止められるポケモンが私にはいない…
スピードも私のポケモンじゃそうそう先手は取らせてもらえない…それはシュミレーションでもわかってる。


コトウ 「? ハルカ選手、まだ次のポケモンを悩んでいるようです」
コトウ 「ここにきて、手詰まりか!?」



………。



ノリカ 「ハルカ様ーー!! ヘラクロスには飛行タイプが有効ですぞーー!!」

サヤ 「…それ位は、ハルカさんもわかってるわ」

ノリカ 「例えそうでも、叫ばずにはいられない!!」

ジェット 「ヘラクロスか…厄介なポケモンだな」
ジェット 「キヨハさんって、受けのイメージが強いが、ああ言う強引なのもかえって怖い」

リベル 「ですね…ギャップ、って言うんでしょうか? このタイミングで出されると、特に戸惑いますよね」

キッヴァ (押しているのはキヨハさん…でも、ハルカさんからはそれほど絶望感は伝わってこない)
キッヴァ (ハルカさんは、何かをまだ隠している? それともそれをここで出す?」



………。



ハルカ 「! 『アーマルド』!!」

ボンッ! ザシュザシュ!!

アーマルド 「ア、アマ〜!!」

アーマルドは再度の岩ダメージを食らう。
これで、アーマルドの体力はすでに半分を切った…恐らく、ヘラクロスの攻撃は受けられない。

ハルカ (でもいい…アーマルドに攻撃を受けるのは難しいから)
ハルカ (こういう場合…腹くくった方が勝つのよ!!)

キヨハ (アーマルドの体力はかなり削られている…ヘラクロスの攻撃を止められるとは思えない)
キヨハ (その状況が分かった上でアーマルドを出してくる……ハルカちゃん、そう言うことなのね)

アーマルド 「……」

ヘラクロス 「……」

互いに隙を伺うかの様、動きを止める。
キヨハさんはこっちの手がわかっているだろうに、動こうとしない。
下手をすると、交換されるのでは? と私は思ったのだけど…キヨハさんからはその様子は感じられなかった。
『ステルスロック』のダメージを気にしているのだろうか? 残りがヘルガーやクロバットならそれも納得できるけど…

ハルカ (!? そうか…キヨハさんの残りのポケモンはアーマルドに有効ではない)
ハルカ (…だから、交換はするに出来ない……)

と、推測してみるが、どうとも言えない。
何せ、私は馬鹿だ。
それが分かった所で、今更どうすることもできない…サイは投げられている。

ハルカ (気ぃ引き締めなさいよ〜…失敗したら、多分私たち負けだからね!!)

キヨハ (明らかにハルカちゃんは待っている…と、なると『まもる』で防いでからの反撃…と考えられそうね)
キヨハ (だとしたら…ハルカちゃん、相当苦しむことになるわよ?)
キヨハ 「ヘラクロス!」

ハルカ (来る! 行くわよアーマルド!!)

キヨハ 「『みがわり』!」
ハルカ 「『ロックブラスト』!!」

ヘラクロス 「ヘラッ!」

ボフンッ!

まず、ヘラクロスが『みがわり』を使う。
やや遅れてアーマルドは『ロックブラスト』の態勢に入る。

アーマルド 「アーマーーーーーーーー!!」

バババババッ!! ドガガッ!! ボンッ! ガガガンッ!!!

ヘラクロス 「ヘ、ヘラーーーー!!」

キヨハ 「!? 攻撃、してきた…!」

アーマルドの『ロックブラスト』は『みがわり』を壊して更にヘラクロスを攻撃する。
私の読みはピシャリと当たった! これで流れは変わる!!


コトウ 「キヨハ選手、痛恨の選択ミス!! 『みがわり』を作るも、一気に破壊!」
コトウ 「ハルカ選手、ベストチョイスの技でヘラクロスに大打撃!! ヘラクロスたまらずダウンだぁ!!」

ズンッ!!

審判 「ヘラクロス戦闘不能! アーマルドの勝ち!!」

ハルカ 「うっしゃぁ!!」

私はガッツポーズを取る。
鬼門とも感じられたヘラクロスをアーマルドが仕留めたのだ。
相手にとっては、相当な誤算のはず…これで、流れは私に向くはず!!

シュボンッ!

キヨハ 「…ごめんなさいヘラクロス、私のミスね」
キヨハ (私が読みを間違えるなんて…久しぶりね)
キヨハ (ハルカちゃんは、やはり私の想像通りのトレーナー……私の考えは間違ってなかった)
キヨハ 「…『ヘルガー』、頼むわよ」

ボンッ! ザシュシュゥッ!!

ヘルガー 「ヘ、ヘル…!」

出てきたのは、懐かしのヘルガー。
キヨミさんもあれを使って私を苦しめてくれたポケモンだ。
タイプは良くわかっている、アーマルドなら有利のポケモンだ。
とはいえ、アーマルドは万全じゃない…ここは何とか一撃でも。

ハルカ 「アーマルド『じしん』!!」

キヨハ 「かわして『かえんほうしゃ』!!」

ヘルガー 「ヘルッ! ガーー!!!」

アーマルド 「アマーーーー!!」

ドッギャァァァンッ!! バゴオオオオオオオォォォッ!!

ヘルガーはその場でジャンプし、『じしん』を回避。
そのまま空中で『かえんほうしゃ』を放った。
アーマルドは技の直後でかわせない…ダメか。

ドズンッ!!

審判 「アーマルド戦闘不能! ヘルガーの勝ち!!」


コトウ 「まさに一進一退!! ここに来て互い小細工は無用! 力押しのバトルで流れを掴もうとしております!!」
コトウ 「しかし、注目すべきはハルカ選手! バトル前の評価では勝率10%未満と言われていたトレーナーが、善戦しております!!」
コトウ 「誰がこの結果を予想できたでしょうか!? バトルはこのまま終盤に入り始めます!!」


ノリカ 「馬鹿者ーーー!! このノリカは予想しておったわーー!! ハルカ様、ゴーーーー!!!」

アムカ 「ふみゅーん!!」

サヤ (ハルカさん、もう立派なトップトレーナーですね)
サヤ (才能をいかんなく発揮している…キヨハさんでさえ、手に余ろうとしている)
サヤ (頑張ってくださいハルカさん…そして、キヨハさんも)

ジェット 「いいぞいいぞ! すげぇバトルだ!!」

リベル 「ふたりとも頑張ってーー!!」

キッヴァ (あのふたり…笑ってる)
キッヴァ (これが…ポケモンバトルなのか? 互いに、ポケモンを信じて戦わせる)
キッヴァ (強くなれるから、笑うことも出来る……それが、ポケモントレーナー、か)



………。



ハルカ 「ペリッパー! 頼むわよ!!」

ボンッ! ザシュゥッ!!

ペリッパー 「! ペリー!!」

バササッ!

ペリッパーは岩のダメージを浴びながらも、すぐに上昇する。
戦闘態勢はOKだ、すぐにでも動ける!

キヨハ 「戻ってヘルガー! 出るのよ『ブラッキー』!!」

シュボンッ! ボンッ!! ザシュシュッ!!

ハルカ 「『ハイドロポンプ』!!」

ペリッパー 「ペリーーー!!」

ドッバアアアアアアアァァァァァッ!!

ブラッキー 「!! ZZZ〜…」

私は強引に一発叩き込む…しかし、大したダメージになっていない。
2割強って所ね…岩ダメージで3割強、このままじゃまた眠られてしまう?

ハルカ 「戻ってペリッパー! 出るのよ『バシャーモ』!!」
キヨハ 「戻るのよブラッキー! 『クロバット』!!」

シュボボンッ!! ボボンッ!! ザザシュシュゥッ!!!!

バシャーモ 「シャ、シャモ!」
クロバット 「クロバ!!」

ハルカ 「!? うっ…!」

何と、交換を読まれる。
同時に交換し、しかも有効なタイプを繰り出してきた。
これはマズイ! だけど…こんなことを繰り返していれば岩ダメージの大きいキヨハさんの方が不利のはず…!

ハルカ (と、なると誘っている…私が不用意に攻撃してくるのを!)
ハルカ (深読みして失敗するのを狙っているんだ!! だったら…思いっきり行く!!)

ハルカ 「バシャーモ『オーバーヒート』!!」
キヨハ 「戻って『クロバット』! 『ヘルガー』!」

シュボンッ!! ボンッ! ザシュシュゥッ!!

ヘルガー 「ヘ、ヘルッ!」
バシャーモ 「シャモーーー!!」

ドゴォッ!! ゴオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!!

ヘルガー 「!! ヘルーーーー!!」

ハルカ 「!? しまった!」
キヨハ (撃ってきた!? また読み違えるなんて…! でも、今回は運がよかった)

バシャーモは思いっきり攻撃するも、ヘルガーに吸収されてしまった。
ヘルガーの特性は『もらいび』、炎を吸収してパワーアップしてしまう。
トラウマの光景が脳裏を過ぎる…どうする!?

ハルカ (あの頃とは違う! やるしかないのよバシャーモ!!)

バシャーモ 「!! シャモッ!!」

バシャーモは私の意志に答える。
心が繋がった証拠だ、もうバシャーモはただ臆病なだけの娘じゃない!

キヨハ 「ヘルガー『だいもんじ』!!」

ハルカ 「突っ込めバシャーモ!! 『スカイアッパー』!!」

ヘルガー 「ヘル〜ルーーーーー!!!」

バシャーモ 「シャモーーーーーーー!! シャーーー!!!」

因縁とも思えるヘルガーとの対決。
だけど、バシャーモは過去二度の敗北で強くなった!
ここで勝てなきゃ、女がすたる!!

ドゴァッ!! ドッバアアアアアアアアァァァァァンッ!!

キヨハ 「外した!?」

ヘルガー 「ヘ、ヘルッ!?」

バシャーモ 「シャモーーーーー!!」

ドガッ! バッキィィィィィッ!!!

バシャーモは正面から突っ込み、やや低空姿勢に突撃する。
ヘルガーは真っ向から突っ込むバシャーモに焦ったのか、『だいもんじ』を外してしまった。
バシャーモはすぐ横を掠める炎を無視し、そのままヘルガーの懐に飛び込んで思いっきり顎を突き上げる。
天空高く、アッパーの態勢で飛び上がるバシャーモと、宙を舞って地面に叩きつけられるヘルガー。
効果抜群の技にヘルガーは成す術無く倒れた。

ドッシャアアアァァァァッ!!!

審判 「ヘルガー戦闘不能! バシャーモの勝ち!!」

ハルカ 「よっしゃぁっ!! よくやったわよバシャーモ!!」

バシャーモ 「シャモ♪」

バシャーモは軽く振り向いて返事をする。
相当嬉しいはずだ、3度目の正直。
ついにリベンジに成功した! これは私にとっても大きい!!
今なら、もう負ける気はしない!! いや、絶対勝つ!!

シュボンッ!

キヨハ (…ここで、運に見放される、か)
キヨハ 「……『クロバット』!」

ボンッ! ザシュシュゥッ!!

クロバット 「ク、クロ…!」

クロバットはこれで半分ほどのダメージを受ける。
だけど、ここで無理をすることは無い、私はまず交換することにした。

ハルカ 「バシャーモ、戻って! 出るのよペリッパー!!」
キヨハ 「『はねやすめ』!」

ボンッ! ザシュドシュッ!!

ペリッパー 「ぺ、ペリ〜!!」
クロバット 「クロ〜…」

ヒュゥ…キラァ…

ペリッパーの出現と同時、キヨハさんはクロバットを回復させる。
これでクロバットは全快か…ペリッパーは体力半分。
状況はよくない…だけど、何とかなるはずよ!

ハルカ 「ペリッパー『はねやすめ』!」
キヨハ 「戻ってクロバット! 出るのよ『ブラッキー』」

シュボンッ! ボンッ!! ザシュシュシュッ!!

ブラッキー 「!! ZZZ…」

ペリッパー 「ペリ…」

ヒュゥ…キラァ…

ここでキヨハさんは交換をする。
ブラッキーはこれで半分程度の体力だ…眠っている以上、不利なはずなのに…
ペリッパーは逆に体力を大きく回復した、いっきに押せるなら!!


コトウ 「ここで互いに交換&回復! だが果たしてどちらに運が傾くのか!?」
コトウ 「ハルカ選手はバシャーモとペリッパー」
コトウ 「キヨハ選手はブラッキーとクロバット! 相性はややハルカ選手が有利!」
コトウ 「ここまでで何と互いに12回の交換を行うという、近年稀に見る戦略戦です!!」
コトウ 「だが、バトルもいよいよ幕引きが迫っているのを感じます!」



………。



ユウキ 「…12回かよ、『ステルスロック』を仕掛けての状態でこの回数は異常だぜ」

オダマキ 「確かに! それだけのリスクを背負いながら交換を繰り返す…まさしく命を削っての読み合いだ!!」



………。



ランマ 「…12回か、ワテとキヨハのバトルでもせいぜい9回がええとこやったが」

イータ 「……別に大したこと無いし、不利なら交換するのは当然」
イータ 「交換が多くなるのは、相手に有効な戦略を組み立てられないから、要は詰め方が甘いのよ」

ランマ 「…確かに、な…せやけど、そうわかってても上手くいかへんのがポケモンバトルや」
ランマ 「イータも、本物のトレーナーとバトルしたら、多分わかるで」

イータ 「…別に、わかりたくもないし…お遊びでポケモンを戦わせる奴らのことなんか」



………。



ハルカ 「ペリッパー『ハイドロポンプ』!!」

ペリッパー 「ペリーーー!!」

ドッバアアアアアアアアシャアアアアァァァッ!!

ブラッキー 「…!! ラキッ!?」

ハルカ (目覚めた!? でも、後一撃決まれば勝てる!!)

キヨハ (やれるわね…ブラッキー! あなたなら耐えると信じる!!)

ハルカ 「『ハイドロポンプ』!!」

キヨハ 「『ねがいごと』!!」

ペリッパー 「ペリーーー!!」

ドッバアアアアアアアアシャアアアアァァァッ!!

ブラッキー 「ラ…キーーーーー!!」

パァァァ…キィン!

ハルカ 「耐えた!? そ、そんな…!! 体力計算は間違ってないはずなのに…」

キヨハ 「? 計算……そう」
キヨハ (やっぱり…そうだったのね。ハルカちゃんは、キヨミと同じ能力を!)

ブラッキーは見事耐え切って『ねがいごと』を使う。
確か、あの技は後に体力を回復させる技だ! すぐに回復する技じゃない。
昨日ユウキとのバトルで見た! そしてこのタイミングで使うということは!!

ハルカ 「ペリッパー戻れ!! 出るのよ『バシャーモ』!!」
キヨハ 「ブラッキー『まもる』!!」

シュボンッ! ボンッ!! ザシュシュゥッ!!

バシャーモ 「シャ、シャモ!」

ブラッキー 「ラキ〜!」

ピキィィンッ!

やはり…ブラッキーは安全に体力を回復しよう『まもる』を使った。
キヨハさんは多少苦い顔をするも、予想外…と言うほどではなかったようだ。

キラキラッ! パァァァ!!


コトウ 「ブラッキー! ここで体力を大きく回復!! だが目の前に相性の悪いバシャーモが!!」
コトウ 「バシャーモも『ステルスロック』のダメージがあります、無傷ではありません!」
コトウ 「果たしてどちらが最後の流れを掴むのか!?」


ハルカ (ブラッキーは防御力が高い…後には不利なクロバット)
ハルカ (クロバットが格闘に有利ながらも炎を止められるわけじゃない)
ハルカ (生半可な攻撃じゃ、ブラッキーには効かない…どうする?)

キヨハ 「………」

キヨハさんはこちらを見ている。
出方を伺っているようだけど、眼差しからは強い意志が感じられる。
絶対に勝つ…今はそんな気迫が感じられる。
ここまでのキヨハさんには、何故かそこまで感じられなかった意思だ。
キヨハさん…何か思いつめてる?

ハルカ (ここまで来たら何でもいい! キヨハさんがやる気ならこっちは向かうだけ!!)
ハルカ 「バシャーモ『ほのおのパンチ』!!」

キヨハ 「『どくどく』!!」

バシャーモ 「シャモーー!!」
ブラッキー 「ラキー!!」

ビチャァッ!!

バシャーモ 「!! シャ、シャモーーー!!」

ドゴォッ! バキィッ!!

ブラッキー 「ラ、ラキ〜!!」

バシャーモは両手に炎をまとわせ、二度殴る。
途中、またしても足元から『もうどく』にされてしまうが、この際気にしなかった。
交換しなかった…? クロバットに当たってもいいように『ほのおのパンチ』を選んだんだけど…

ハルカ (ブラッキーの体力はこれでまた半分弱…次は裏をかく!!)
ハルカ (見せてやるわ…もうひとつの切り札を!!)

キヨハ (裏をかく気ね…だったらこっちも読ませてもらうわ!)
キヨハ 「ブラッキー!」

ハルカ 「来る! バシャーモ!!」

キヨハ 「『まもる』!」
ハルカ 「『ビルドアップ』!!」

ブラッキー 「ラキ!」

ピキィィン…

バシャーモ 「シャモ〜!!」

ダンッ! ズダンッ!!

ハルカ 「!!」
キヨハ 「!?」

私は小さく拳を握り込んで笑う。
キヨハさんは明らかに外した…と言う表情をした。
裏をかくとは思ったけど、その裏をかくとは思わなかったらしい。
ここまでの戦いで、1手2手の裏を読む位じゃダメってこと位は学習したわ!
でも…キヨハさんがここに来て読み違えるなんて。
感情が珍しく昂ぶっていたようだけど…そのせい、なのかしら?


コトウ 「キヨハ選手、痛恨!! ここに来てハルカ選手に読みで上回れられる!!」
コトウ 「バシャーモ猛毒に耐えながらも、能力アップで一気に押し切る態勢だー!!」


キヨハ (…負ける? 私が…負ける…?)
キヨハ (勝てないの…? 私は、また…キヨミに?)
キヨハ (……わ、私は……私は!!)

ハルカ (キヨハさん? 何を苦しんで…?)

私は突然キヨハさんの感情を読み取ってしまった。
いや、入って来たと言っていい。
キヨハさんが持っている、悲しい…そう思える感情が…入り込んできた。

バシャーモ 「シャ…シャモッ…」

ハルカ (!? 何やってるのよ私! ここで押さなきゃバシャーモが!!)

キヨハ 「!! も、戻ってブラッキー!! 『クロバット』!!」
ハルカ 「バシャーモ! 『からげんき』!!」

シュボンッ! ボンッ!! ザシュシュゥッ!!

クロバット 「ク、クロッ! クロ!?」

バシャーモ 「シャ〜…モーーーーーーーーーー!!!」

ドッガアァァァァァァッ!!!

物凄い打撃音が響き渡る。
父さん秘伝の『からげんき』がクロバットを捉えた。
クロバットへの交換際…岩のダメージとほぼ同時に受け、クロバットは地へと落ちた…

ボスッ!

審判 「クロバット戦闘不能! バシャーモの勝ち!!」

シュボンッ!!

キヨハ 「………」

ズンッ!

ハルカ 「!?」

キヨハさんは、その場で両膝を突き崩れ去る。
今まで見たことの無い、キヨハさんの姿だった。
まるで、全てを失ったかのような…そんな姿に思える。
もう……終わりなの?

ハルカ 「キヨハさん!! ここで終わらないで!!」

キヨハ 「!? ハ、ハルカ…ちゃん?」

キヨハさんは、弱々しい顔で私を見上げる。
私は強い意思を持って、キヨハさんに思いを伝える。

ハルカ 「立って!! キヨハさん!! これで終わったら…ブラッキーが可哀相よ!!」

キヨハ 「!? ブ、ブラッキー……?」

キヨハさんは震えながら、ブラッキーのボールを持つ。
次第に、キヨハさんの意思が蘇るのを感じる。
私の意志に引っ張られるように、キヨハさんはよろよろと立ち上がり、ボールを投げた。

ボンッ! ザシュシュッ!!

ブラッキー 「ブ、ブラーー!!」

ブラッキーは思いっきり吼える。
勝ち目が無いのをブラッキーも理解している。
でも、それでもブラッキーはバシャーモを見据えた。
戦わずに負けるのは恥だ。
キヨハさんは、そんな終わり方をする人じゃない!

ハルカ 「キヨハさん…お互い、これで最後の攻撃にしましょう!」
ハルカ 「互いの思いの丈…全部ぶつけましょう!!」

キヨハ 「ハルカ…ちゃん……」

キヨハさんは私の笑顔に引っ張られて苦笑いする。
伝わったのがわかる…キヨハさんは最後の力を振り絞るように、口を開く。
私も…それに答えた。

キヨハ 「ブラッキィー!!」

ハルカ 「バシャァァモォ!!」

キヨハ 「『とっておき』!!」
ハルカ 「『フレアドライブ』!!」

ブラッキー 「ブラッ! ブラァァァァァァッ!!!」
バシャーモ 「シャ〜…モォォォォォォォォォォォッ!!!」

ダッ! ドドドドドッ!!

互いに、最後の攻防と思い全力を出す。
毒のダメージでバシャーモはすでに『もうか』が発動している。
ブラッキーといえど、これで終わりになるはずだ!!

ハルカ 「!!」
キヨハ 「!!」

ブラッキー 「!?」
バシャーモ 「!?」

カッ! ドゴッゴアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!

互いがぶつかり、大爆発。
バシャーモの『フレアドライブ』が決まり、ブラッキーの技も命中した。
2体はそのまま、爆風と共に…倒れた。

ハルカ 「……」
キヨハ 「………」

審判 「…両者戦闘不能!! よって勝者!! ハルカ選手ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


ワ…ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!!


コトウ 「や、やりました!! ハルカ選手の勝利!!」
コトウ 「も、申し訳ございません!! 私不覚にも涙してしまいました!!」
コトウ 「それほど劇的な結末!! 崩れ落ちたキヨハ選手を引っ張り上げたハルカ選手!!」
コトウ 「終わった勝負を、再び戻そうとするハルカ選手の魂に会場が震えております!!」
コトウ 「激闘終わって、最後に腕を上げるハルカ選手! おめでとう!! 準決勝進出だぁ!!」



………。



ノリカ 「ハルカ様ーーーーー!! このノリカ! 涙で前が見えませぬーー!!」

アムカ 「ふみ〜!! サヤー! ハルカさん勝ったよーー!!」

サヤ 「よしよし…よかったわね」

ジェット 「最高の勝負だったぜ!! 俺ぁこんな試合見れて幸せもんだ!!」

リベル 「うう…感動的ですぅ」

キッヴァ (…ハルカさん、そうですか)
キッヴァ (私も…勇気が持てました、ハルカさんのバトルを見て…まだトレーナーを続けたい、と…思えるようになりました)



………。



ユウキ 「…まっ、良くやったと褒めてやるか」

オダマキ 「はははっ、素直じゃないなぁ〜! 素直に嬉しいって言えばいいのに!」

ユウキ 「…御免だね、それは」

俺は頭を掻いて一旦部屋を出る。
やれやれ…水でも飲みに行くかね。



………。



ランマ (…ようやった、良かったなキヨハ)
ランマ (これで、踏ん切りつくやろ? もう…縛られる必要、ないやろ?)

イータ 「……部屋に戻る」

ランマ 「お、おい! 他の試合は!?」

イータ 「興味ない……2回戦が始まったらまた来る」

そう言って、イータは無感情に出て行った。
けったいな奴やなぁ…やっぱりハルカちゃん目当てかいな?



………。



『時刻9:53 第0スタジアム・控え室』


ゴウスケ 「と、言う結果や」

キヨミ 「そ、ハルカちゃん…勝ったのね」

ゴウスケ 「…お前の目も大したもんやな」
ゴウスケ 「ワイは…勝つとは思ってなかったわ」

ゴウスケはおちゃらけてそう言う。
相変わらず、読みが甘いわね…

キヨミ 「結局、私が一方的に約束したことを…あの娘は守ってくれた」
キヨミ 「…私が待っているつもりが、今度は待たせちゃったわね」

ゴウスケ 「…キヨミ、お前勝てるか?」

キヨミ 「誰に言ってるの? 私はハルカちゃん以外の誰にも負けるつもりはないわ」
キヨミ 「今度は…私が約束を守る番よ!」

バッ!

私はそう言って立ち上がる。
相手は…ラファ!
不足所か、勝てるかどうかも怪しい。
さて…行きましょうか……約束を果たすために。



…To be continued




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