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POCKET MONSTER RUBY



第88話 『燃え上がれ、炎のように』




『4月15日 時刻10:00 サイユウシティ・第0スタジアム』



ワアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!!!

コトウ 「一際、高い声援が会場を埋め尽くします!!」
コトウ 「それもそのはず! 今対戦のカードは何かと曰く着き!!」
コトウ 「まずは、不敗の伝説チャンピオン! キヨミ選手の入場です!!」

ウオオオオオオオオオオオオオォォォォォッ!!
ワアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッ!!!


キヨミ 「……」

私は…心を落ち着けようと胸に手をやる。
でも、いつもダメ…私はいつまで経っても、こう言う舞台での高揚感は抑えられない。
元々、私はクールなタイプじゃない…むしろすぐに熱くなるタイプ。
全てを捨てようとしたあの日から…私は変わろうとした。

キヨミ (でも、変わられなかった…ううん、変わる必要は無かった)

ポケモンは時間が経ってもその絆を切ったりはしない。
信じた分だけ、結果を返してくれる。
私は自分で変わったつもりだったけど、久しぶりに手にしたポケモンたちは、何一つ変わらずに私を見てくれた。

キヨミ (そんなポケモンたちを、私は今日も信じる!!)

キッ!と私は睨みを効かせ、私の正面より入場する相手を見据える。



ラファ 「……」

コトウ 「さぁ、伝説のトレーナーに対するは! 不屈のトレーナー、ラファ選手!!!」
コトウ 「キヨミ選手とは過去に対戦経験もあり、その時はキヨミ選手の圧倒的勝利だったと記録されております!」
コトウ 「ですが、今大会においては評価は完全に二分!! もはやキヨミ選手と劣る部分は見当たりません!!」


ラファ (とうとう…この日が来た)

私は、過去にキヨミと戦った。
7年前のあの日…私は二次予選でキヨミと戦い、敗れた。
その時から、私の目標は『キヨミ』となった…けど。

ラファ (あなたは…その年を境に姿を消した!)

屈辱だった…勝ち逃げをされた気分。
キヨミは3年連続の無敗チャンピオンのまま、誰に告げることなく姿を眩ました。
だけど…

ラファ (私は、必ずまたあなたと戦えると思っていた…トレーナーを続ける限り!)

伝説のトレーナー、キヨミ…だけど私はそんな肩書きが欲しいわけじゃない。
私はただ、『キヨミ』と言うトレーナーから受けた言葉を、ただ返したいだけ。

ラファ (あの時の借りは、全部返させてもらうわ!!)


コトウ 「さぁ、互いに無言ながらも気迫は十分!!」
コトウ 「間違いなく大荒れのバトルとなるでしょう! 対戦前での評価は、両者ともに5分!」
コトウ 「どちらかが勝ってもおかしくない上、どちらも確実な優勝候補!!」
コトウ 「さぁ、まもなく運命のバトスタートです!! まずはルールの決定をご確認ください!!」

ピピピピピピピピピピピピピピピピッ!!

コトウ 「出たー!! まずは2対2のダブルバトル!! そしてシングルバトル2対2! 最後は2対2のダブルバトルだーーー!!」



ハルカ 「ん…? こういう場合はどうなるの?」

サヤ 「要は、三本勝負です…2対2のダブルで一本、2対2のシングルが1本、最後に2対2のダブルで一本、計3本です」
サヤ 「このルールなら2本先取で勝利と言うことになります」

アムカ 「??? 全然わからない…」

ノリカ 「う〜ん、ダブルとシングル、どっちが有利かで大きく変わりそうだね」

ジェット 「それだけじゃない、3セット各2体づつしか使えないと言うことは…」

リベル 「ほとんど交換もできない、ガチンコ勝負…」

キッヴァ 「ポケモン選択が悪ければ、交換で簡単に対処…と言う風にはいかないわけですね…」

皆がそう言って説明してくれる(アムカは例外)…ふむ。
私の時は単純にシングル6体だったけど、こう言う場合もあるわけか。

ハルカ (ああ…そう言えば、ミクさんとヒビキさんが戦った時、似たような変則ルールをやってたっけ)

私はその時のことを思い出しながら、今の状況を改めて見る。
キヨミさんが負けるとは思わないけど…ラファさんも相当強いはず。



………。



『同日 同時刻 サイユウシティ 第0スタジアム・キヨハの控え室』

キヨハ 「……」

私はキヨミのバトルを、会場内の控え室にあるTVモニターで見つめていた。
隣には、さっき訪れて来たゴウスケ君が一緒にいる。

ゴウスケ 「…キヨミ、勝てると思うか?」

キヨハ 「それは、ラファに? それとも…ハルカちゃんに?」

ゴウスケ 「…本音は両方や、まぁ当面はラファの方やがな」

ゴウスケ君はそう言って不適に笑う。
恐らく、私と同じことを考えていると思うのだけど、私はあえて言ってみることにした。

キヨハ 「…単純な予想だと、キヨミは負けるわね」

ゴウスケ 「…やっぱ、そうなるか?」

そう…これが私たちの予想。
正直、今回ばかりは辛いでしょうね。

キヨハ 「…キヨミには最大の欠点があるわ、それが理由」

ゴウスケ 「…ワイも気にはなっとった、あいつ…ダブルバトルが苦手やろ?」

私は無言で頷く。
心なしか、ルールが決定した瞬間、キヨミの顔が曇った。
自分でも痛いほどわかっているはず…ダブルバトルがこちらでも採用されるようになったのは、まだ最近のこと。
オーレと違い、シングルが主流のこっちでは、ダブルバトルを経験するのは難しい。

キヨハ (ましてや、7年と言うブランクは想像以上に重い…私と違って、本当にバトルから離れていたようだしね)

ゴウスケ 「…あいつは、絶対に勝つと言うた」

キヨハ 「でしょうね…ハルカちゃんに対して一方的に約束をし、ハルカちゃんはそれを最大の目的として私にさえ勝ってみせた」
キヨハ 「キヨミは何が何でも負けられないでしょうね…」

キヨミは、『想い』だけで戦っている…ポケモンがそれに着いて来れれば、あるいは。



………。



『同日 同時刻 試合会場』


ヒュゥゥゥゥ…!

屋内会場で風が吹く、今回のフィールドは草も生えていない荒野。
人工的に作り出された風が少々気になるけど、特に制限されるような風ではない。
私は、まずどのポケモンを出すかに迷っていた。

キヨミ (…やっぱり、こういう図式になったか)
キヨミ (わかってた…自分の苦手なこと位。考えるのは元々苦手だ)

審判 「それでは、まずは2対2のダブルバトルを行います! 両者、2体ポケモンを!!」

審判が高らかに指示を出し、ラファはすぐにボールを用意する。
向こうはダブルを心得てる…こっちは、そんな対応ができるわけもない。

キヨミ 「……」

私はボールラックに手を当て、皆の声を聞く。
私には、ポケモンの声を感じ取ることが出来る。
目を瞑り、ボールラックに手を当て、私は皆の意思を感じ取る。



………。



『俺が行く!』
『私に任せて!』
『きっと大丈夫ですよ』
『私が勝たせてあげる!』
『決めるのはお前だ』
『…僕もやるよ』


キヨミ 「…!!」

ラファ (!? 腹を決めたようね!)

私は目をカッと開き、ボールをふたつ選択する。
互いにバトルの意思は固まった! 後は、やるしかない!!

キヨミ 「先陣は任せるわよ! 『キレイハナ』! 『アブソル』!!」
ラファ 「行くのよ『エーフィ』! 『ピジョット』!!」

ボボンッ!! ボボンッ!!

キレイハナ 「ハナ!」
アブソル 「…ソルッ」

エーフィ 「………」
ピジョット 「ピジョッ!」


コトウ 「さぁ、互いのポケモンは出揃った! 相性は互いに5分5分か!?」
コトウ 「果たして生き残るのはどちらか!? バトルスタートです!!」


審判 「試合開始!!」


キヨミ 「キレイハナ『にほんばれ』! アブソルはエーフィに『かみつく』!!」
ラファ 「エーフィ『まもる』! ピジョットは『ねっぷう』!!」

アブソル 「ソーーッル!!」

エーフィ 「フィッ!」

ピキィィィィンッ!! ガキンッ!

アブソル 「!!」

まずはアブソルが先に動く、しかしエーフィへの攻撃を読んだラファは『まもる』で止めて来た。
そして、次はキレイハナが天候を変える。

キレイハナ 「ハナーー!!」

ボゥッ! カアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!

『にほんばれ』で日差しは熱くなる。
その直後、狙い済ましたピジョットの攻撃がこちらを襲って来た。

ピジョット 「ピジョーーーーーーーー!!!」

ボウゥワアアアアアアァァァァァァァァッ!!!

アブソル 「ソ、ソルー!!」

キレイハナ 「ハ、ハナ〜〜〜〜!!」

ピジョットは高さを上手く合わせ、『にほんばれ』の日差しを最大限に利用して全体に『ねっぷう』を浴びせる。
あの技は炎タイプの技で、相手2体に効果のある大技だ…ピジョットが使うのは初めて見るわよ!?

ラファ (こっちに来る前、シンオウ地方で特訓した成果よ! ピジョットひとつ取っても戦術は大きく変わっている)
ラファ (それがわからなければ、あなたに勝ち目は無いわ!!)

キレイハナ 「ハナ…」

審判 「キレイハナ戦闘不能!」

ワアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!!


コトウ 「何と! 先に『にほんばれ』で有利な状況を作ろうとしたキヨミ選手!」
コトウ 「それを利用され、いきなりキレイハナを失ってしまった!! これでは『にほんばれ』は逆に不利だーーー!!」
コトウ 「ラファ選手の見事な組み立て! キヨミ選手、盛り返せるのか〜!?」



ハルカ 「…うっそ、まだ1分程度の出来事よ!?」

サヤ 「ラファさん、お見事ですね…『ねっぷう』を放つタイミング、位置、効果、コンテストに出ても高得点の出来です」

ノリカ 「だよね〜! エーフィとのコンビネーションもバッチリ! あれでエーフィも輝かせてたら満点だったかも♪」

アムカ 「ふみゅ…よくわかんない」

サヤちゃんとノリカは絶賛、確かに凄いんだろうけど…
私からすれば、その行動一つでキヨミさんのポケモンをあっさり倒したことが驚愕だった。
いくら弱点って言っても、ああも簡単に…

リベル 「ジェットさんのピジョットもあの技使えるんですか?」

ジェット 「…1体だけならな、本当はもう1体位覚えさせたいんだが、欠片が無くてな」

ハルカ 「…欠片?」

ジェット 「ああ、シンオウ地方に色々な色の欠片と引き換えに、技を教えてくれる人がいるんだよ」
ジェット 「その人に頼めば、ピジョットに『ねっぷう』を教えてもらったり出来るんだ」
ジェット 「他にも色々あるぜ! 『あやしいかぜ』とか『エアカッター』、『スピードスター』とか『いびき』なんかもある」

キッヴァ 「私も聞いたことはありますね…利用したことは無いですが」

リベル 「う〜ん、私のキノガッサも色々教えてもらおうかな…」

ハルカ 「技を欠片と引き換えでねぇ…なるほど」

そう言う技も覚えると言うのは非常に興味深いけど…
キヨミさんは、全然読めてなかったみたい…何だか、嫌な予感がするな。



………。



キヨミ 「…戻ってキレイハナ」
キヨミ (早くもダウンか…予想はできていたことだけど)

ラファ 「さぁ、一気に畳み掛けるわよ! エーフィ『シグナルビーム』!!」

キヨミ 「焦りすぎよ! アブソル『ふいうち』!」

ラファ 「かかった! ピジョット『でんこうせっか』!!」

エーフィ 「フィ〜…」

アブソル 「アブソーー!!」

ピジョット 「ジョット!!」

バッ! ドギュンッ! ドカァッ!!

アブソル 「ソ、ソル〜!!」

ピジョット 「ジョ、ジョ〜〜!!」

アブソルはエーフィに対し『ふいうち』を行おうとするが、ピジョットが『でんこうせっか』で割り込んできた。
このせいでアブソルの『ふいうち』は成立せず、ピジョットと相打ちの様な感じになる。
ピジョットは相当なダメージでフラリ…と地上に落ち、そのまま前のめりに倒れるが、その瞬間アブソルの正面から『シグナルビーム』が襲い掛かってきた。

ギャァァァァンッ!!

アブソル 「!!」

バァァァンッ!!

赤と青の光線が交互に突き刺さり、アブソルは後ろへと弾け飛ぶ。
断じてR9の対空レーザーではないが、見た目はそんな感じだ。
空中で1回転し、受身も取れずに地面へと落ち、アブソルはダウンした…

審判 「…アブソル戦闘不能! よって第1セットはラファ選手の勝利!!」

ワアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!!!


コトウ 「決まったーー! まずはラファ選手があっさりと先取!!」
コトウ 「キヨミ先取、ダブルバトルをひとつ落としましたーー!!」


キヨミ 「…戻ってアブソル」

シュボンッ!!

ラファ 「戻りなさい、エーフィ、ピジョット」

シュボボンッ!!



………。



『同時刻 キヨハの控え室』


キヨハ 「…大方の予想通りね」

ゴウスケ 「あかん、てんで敵わんで…」

まさしく圧倒的…今まで、キヨミは自分と同レベルのトレーナーとダブルバトルはこなしてなかった。
レベルの違う相手が今まで相手だったから、ダブルバトルでも強い…と思われていたけれど、実はそうじゃない。
このレベルで見て、初めてわかる…キヨミの弱点が。
このルールでなら、私でもキヨミに勝てるでしょうね…

キヨハ 「キヨミはダブルバトルの対戦経験が無さ過ぎるわ」
キヨハ 「加えて、ポケモンたちがまるでダブルバトルに対応してない」
キヨハ 「…ハルカちゃんに聞いた話だと、トクサネシティでハルカちゃんとのダブルバトルに負けているそうだしね」

ゴウスケ 「!? マジかいな…そら致命傷過ぎるで、よりによってハルカちゃんに負けるなんて」

ゴウスケはやや大げさに言うが、それほど大げさでもないでしょうね。
使用したポケモンのレベルがまだ低かったとはいえ、トレーナー経験半年弱のハルカちゃんに敗北だなんて。
少なくとも、伝説のトレーナーと言われる人間がやるバトル内容ではないでしょうね。

キヨハ (さて…どうするつもりかしら? このままだと、約束破ることになるわね…)



………。



『同時刻 試合会場』


ハルカ 「くっそ…こんなにあっさり決まるなんて!」

サヤ 「…この様子だと、キヨミさんは勝てませんね」

ハルカ 「!? そんなの、まだわからないじゃ…」
サヤ 「わかりますよ」

ハルカ 「!?」

私が否定しようとするけど、サヤちゃんは簡単に言う。
まるで勝負の行方が見えているかのように、無表情に言葉を続けた。

サヤ 「キヨミさんはダブルバトルが弱点です」
サヤ 「さっきのバトルを見れば、それは一目瞭然」
サヤ 「ダブルバトルでのキヨミさんだったら、私やノリカでも勝てますよ、多分」

ノリカ 「え、ええ〜? 私はちょっと自信ないなぁ〜」

ハルカ 「いくら、ダブルバトルが苦手でも、キヨミさんのポケモンなら!」

私は苦しくそう言うが、サヤちゃんは無情に解説する。

サヤ 「無理ですよ、ダブルバトルとシングルバトルは全く違います」
サヤ 「キヨミさんのポケモンはこれまで見ても、シングルに特化しすぎているようです」
サヤ 「シングルバトルに置いては無類の強さを発揮しますが、ダブルバトルはからっきし…」
サヤ 「そもそも、力押しだけでどうにかなるほど、ダブルバトルは甘くないです」
サヤ 「むしろ、ダブルバトルは力押しの戦術をいなす戦法がメジャーですから」

ノリカ 「あ、それはわかるかも…コンテストとかだったら、どうしてもバトルでパワー負けすることあるもんね〜」
ノリカ 「進化してない状態で戦うことも想定するから」

アムカ 「???」

サヤちゃんの説明にノリカは共感する。
そうか…コンテストをメインに戦うサヤちゃんやノリカはそう行ったパワー差を跳ね返す戦術をメインに組み立てる。
キヨミさんにはそれがない…むしろ力押しのみのパワータイプの戦術。
だけど、ラファさんはそのパワーといなしをハイレベルに行ってくる。
…キヨミさんは、勝てない…の?

ジェット (そう言えば、キヨミさんは俺に言ってたな、俺の力が100%出ていたら、自分は負けていたって…)
ジェット (あの言葉は…本当のことだったのかもしれない、この結果を見たら、そう思えてしまうな)



………。



審判 「それでは、キヨミ選手! 次のセットを選択してください!」
審判 「2対2のシングルバトルか、2対2のダブルバトル、どちらで戦いますか!?」

キヨミ (…選択できるのか、だったら私は……)


コトウ 「複数のセットがあるルールの場合、セットの敗北者が次のセットを選択できます!」
コトウ 「ダブルとシングル! どちらか得意な方を選ぶのがベターでしょう!」


ラファ (次はシングルバトルでしょうね…ダブルでの不利はわかりきっているはず)
ラファ (2本先取ルールの以上、シングルでポイントを取り返すしか、あなたに勝ち目は無いものね…)

キヨミ 「……」

ラファは微笑する…余裕の表情ね。
例えシングルを落としても、ダブルでは絶対に負けないと言う自信の表れだ。
だけど、そう言う顔をされると、私は子供の頃からいつもこう思う…

キヨミ (絶対に見返してやるってね!!)
キヨミ 「ダブルバトルを選択するわ!!」

ワアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!

ラファ 「…なっ!?」


コトウ 「おおーーーーーっとぉ!? キヨミ選手、予想外の行動!!」
コトウ 「明らかに圧倒的不利と思われるダブルバトルをそのまま選択!!」
コトウ 「勝算はあるのかぁ!?」


キヨミ (そんなもの無いわよ! 初めっから負けることなんて考えてないし!)
キヨミ (第一…苦手な物だったら、克服すればいいのよ! ハルカちゃんみたいに!!)

ラファ 「!?」

私が不適に笑って見せると、ラファはキョトンとする。
この状況下で笑える私を不審に思ったのか、それとも呆れているのか。
どちらにせよ、ラファはため息をひとつ吐き、キッ!とこちらを睨み付けた。

ラファ 「どう言うつもりかは聞かないわ…あなたのことだから、考えてのことでしょうし」

キヨミ (いや、それはないって…)

ラファはどうにも私を買い被りすぎている感じがする…
まぁ、あんまり地の私を知っている人が少ないとも言えるんだけど。
私って、考えて行動する方じゃないからなぁ…

キヨミ (でも、しばらく思い出せてなかった…今は思い出せる!)
キヨミ (そうだ! これが私だ! ポケモンバトルは楽しむ!! 勝ち負けとかは二の次だ!)
キヨミ (ハルカちゃん、あなたが最初に思い出させてくれたのにね…ごめんなさい)

私は途端に肩が軽くなった気がした。
と、となると途端に嬉しくなってくる。
久しぶりに、こんな強敵と戦えることを改めて嬉しいと実感できた!
そうだ! こんな挑戦者のムードが私は好きなんだ!!

キヨミ 「よーーーっし!! こっから勝つわよーーー!!」

ラファ 「…は、はい?」


コトウ 「お、おお〜っとぉ!? キヨミ選手、いきなりハイテンション!!」
コトウ 「今までのクールなイメージが一気に反転! まるでハルカ選手の様なノリです!!」
コトウ 「しかし、妙にしっくりと来るキヨミ選手の無邪気な笑顔!!」
コトウ 「とても20歳の女性とは思えません!!」



………。



『同時刻 キヨハの控え室』


ゴウスケ 「あ、あいつ…」

キヨハ 「戻ったわね、昔に…ううん、本当のあの娘に」

私たちは、キヨミの笑顔を見て、懐かしむ。
そうだ、10年前、キヨミと私と、ゴウスケ…
3人でジョウト地方を駆け抜けた、あの頃。
キヨミは、いつもあんな笑顔を見せてくれていた。
時には泣いたり、怒ったり…それでも喜ぶ。
新しく出会うポケモンを見る度、キヨミはあの笑顔を見せていた。

キヨハ (でも、チャンピオンになった後、急にあの娘は笑顔を無くしてしまった…)

ミカゲとの一戦、その一戦を境に、キヨミは笑顔を失った。
チャンピオンになったことで、いくつもの挑戦者を打ち倒し、無敗のチャンピオンとして3年間不敗を貫いた。
難攻不落…そうとも言われたキヨミは3年目を境に、姿を消す。
そして、それから7年……突然あの娘は帰ってきた。
帰って来た時、あの娘は少し自分を取り戻しつつあった、それがハルカと言う少女のおかげだと言うことは調べればすぐにわかった。
思えば、キヨミは姿を消す前、元チャンピオンだった『センリ』さんに会っていたそうだ。
その娘である『ハルカ』ちゃん…その初心者トレーナーの姿に、自分を重ねたのかもしれない。
自分が一方的に交わした約束、それをハルカちゃんは守った。
今度は自分の番だと焦っていたのね…キヨミは本当の自分を出すことさえ出来ずに負ける所だった。

キヨハ (でも、取り戻したわね…ようやく)
キヨハ (本当は…私の役目のはずだったけど……ありがとう、ハルカちゃん)
キヨハ (あの娘の『笑顔』を探し出してくれて…)

ゴウスケ 「…ほれ、これで涙拭きぃな」

キヨハ 「あ…ごめんなさいね、嬉しくて」

私はゴウスケ君から白いハンカチを手渡され、涙を拭う。
そして、今度ははっきりとキヨミを見た…もう大丈夫ね。
今のあなたなら、絶対に負けないわ…



………。



『同時刻 試合会場』


ウィィィィィィィィンッ!!

機械音と共に、フィールドは変更をされる。
そういえば、セットが変わる度にフィールドも変更だったわね…で、今回のフィールドは!

ガシャァァァァンッ!! ザアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!


コトウ 「さぁ! 今度のフィールドは水だ!! しかし両フィールドに地面もある上、水深は浅い水だぞ!!」
コトウ 「水深は1メートル半程度! 大きなポケモンにはそれほど影響はないだろう!!」
コトウ 「だが、小さなポケモンには十分な深さとも言える! どう利用するかはトレーナー次第だぁ!!」



キヨミ (さぁ、次で負けたら私たち終わりよ! 絶対に勝つからね!!)
キヨミ 「行っけーーー!! 『デンリュウ』! 『トゲキッス』!!」

ラファ 「く…行くのよ『マリルリ』! 『キレイハナ』!!」

ボボンッ!!

デンリュウ 「リュ〜♪」
トゲキッス 「キッス…」

マリルリ 「ルリ〜♪」
キレイハナ 「ハンナ〜♪」


コトウ 「お〜っとぉ! 今回は見た目もプリティなポケモンが出揃ったぁ!!」
コトウ 「特に注目は、キヨミ選手の『トゲキッス』! これは珍しいポケモンだぁ!!」



………。



『同時刻 キヨハの控え室』


キヨハ 「あ、あれはまさか…」

ゴウスケ 「せや…あん時のトゲピーがあそこまで進化したんや」
ゴウスケ 「今まで、ほとんどバトルには使ってなかったみたいやが、ワイがやった『ひかりのいし』は無駄にせんかったようやな」

ゴウスケ君は笑いながら説明する。
なるほど…ゴウスケ君の入れ知恵か。

キヨハ 「と、言うことは…必勝の鍵とも言えるわね、そう言う風に仕込んだんじゃない?」

ゴウスケ 「当たり前や、ワイからしてもあいつに負けてもらうのは気分悪いからな」
ゴウスケ 「これで負けたら、絶対あいつの胸を揉んで巨乳にしたる!!」

ゴウスケ君はやや邪な顔をしながらも、本音はちゃんと勝ってほしいようだった。
まぁ、ツッコミ所はあるのだけれど、どうしましょうかね?

キヨハ 「…ところで、ゴウスケ君は貧乳が好みだと元部下に聞いたのだけど、本当なの?」

ゴウスケ 「ぶふっ!? 部下って誰やねん!? な、何のことや!!」

ゴウスケ君は明らかにうろたえる…図星か。
良かったわねキヨミ、需要はあるようよ♪



………。



『同時刻 試合会場』


キヨミ 「!? な、何故か…悪寒が」

私は背筋に妙な寒気を覚えるも、すぐに気を取り直す。
そして、審判はすぐさま合図を出す。

審判 「それでは、試合開始!!」

キヨミ (水か…相手はマリルリがいる、デンリュウで一気に押せるけど)

フィールドを見てみると、互いの登場位置は砂浜の様な海岸、互いの海岸に挟まれるように水が敷き詰められている。
海水かどうかはわからないけど、人工的に水はゆったりと流れていた…

ラファ (トゲキッス…対戦経験はほとんどないわね、だけど単純にトゲチックの強化版と思えば!)
ラファ 「先手は私がもらうわ! マリルリ『ひかりのかべ』!」
ラファ 「キレイハナはデンリュウに『ねむりごな』!!」

マリルリ 「リルーー!」

パァァァァァァッ!!

まずはマリルリが壁を張る、デンリュウ対策ね。
そしてキレイハナが遅れて『ねむりごな』の態勢に入る。
だけど、そう上手くはやらせないわ!!

キヨミ 「トゲキッス! 『しんぴのまもり』!!」

トゲキッス 「キッス!」

ポゥゥゥゥゥゥゥッ!! ブワァァァ…

トゲキッスは自分とデンリュウの周りに『しんぴのまもり』を張る。
これにより、『ねむりごな』の効果は無効。
5分位は、状態異常にかからなくなる!

ラファ (そうか! その技もあったわね…キレイハナの速度じゃ間に合わなかったか)

キヨミ 「こんなこともできるわよ! デンリュウ『かわらわり』!!」

デンリュウ 「リュー!!」

バシャバシャ!!

デンリュウは体の半分を水に取られながらも、相手に近づいていく。
『かわらわり』は相手の壁を破壊できる技、相手はこれを見れば壁は貼り辛くなる! 当然、ダメージも与えられるいい技よ!

ラファ 「選択はベターだけど、このフィールドで宣言する技じゃないわね!」
ラファ 「マリルリ『ハイドロポンプ』!」

キヨミ 「トゲキッス『アンコール』!!」

ラファ 「…うっ!?」

トゲキッス 「キ〜ッス! キッス♪」

フリフリフリ♪
トゲキッスは空中で踊るようにクルリと回転。
そしてそれを見たマリルリは…

マリルリ 「マリル〜♪」

パァァァァァァァ…フゥ……

そのまま『ひかりのかべ』をやってしまう。
当然、二重にはかけられないので無効!
これでマリルリはほぼ無力! 後はキレイハナを…!


コトウ 「キヨミ選手鮮やか!! 先ほどのバトルが嘘のような戦術の組み立て!!」
コトウ 「ラファ選手、先に場を固めようとしたのが完全に裏目に出ました!! トゲキッス大活躍!!」



………。



ハルカ 「いいぞいいぞ! 頑張れキヨミさーーーん!!」

サヤ (驚きましたね、全く別人じゃないですか…性格も、戦い方も)

ノリカ 「う〜ん! 何だかキヨミ大佐からハルカ様と同じ匂いを感じまする!! 行けーーーー!! ぶちのめせーーーーー!!」

ノリカも私に乗ってきて応援をしてくれる。
何だか、自分のバトルみたいに楽しい! キヨミさんの本当の姿があれなんだと私は確信する。
そうだ、私もああなりたいと思ってた! バトルは楽しく、そしてポケモンと一緒に強くなる!
これが…これがポケモントレーナーなんだ!

ジェット 「ラファさんも負けるなーー!!」
リベル 「まだまだこれからですよーーー!!」

キッヴァ (手に握った汗が熱い…私も、あんな風にバトルできればな)



………。



ラファ (くっ! このルールだと『アンコール』は解除できない! マリルリは事実上失ってしまった!!)
ラファ (キレイハナだけでなんとかするしか!!)

デンリュウ 「リュー!!」

ズバッシャァァァンッ!! バッキィィィィンッ!!

デンリュウは水中から一気に飛び上がり、キレイハナに向かって『かわらわり』を放つ。
ラファは対処が遅れたのか、わざと引き付けたのか、キレイハナに指示を出さなかった。
『かわらわり』の効果で壁は破壊され、キレイハナは頭に手刀を浴びて痛がった。

キレイハナ 「ハナ〜〜!」

ラファ 「今よ! キレイハナ! 『リーフブレード』!!」

キヨミ (そ、そんな技も使えるの!? 私のはできないのに…!)

キレイハナ 「ハッ…ナーーー!!」

クルルルッ! ザザザシュゥゥゥッ!!

デンリュウ 「リュ、リューーー!!」

キレイハナは『かわらわり』を受けた直後、すぐに反撃した。
身体を横に高速回転させ、頭の葉っぱを回転刃物の様に使って『リーフブレード』を行う。
予想外の接近戦にデンリュウは身体を切り裂かれてしまう。
だけど、その位じゃ私のデンリュウは耐えてみせる!!

キヨミ 「デンリュウ! 頑張れーーー!! 『シグナルビーム』!!」

デンリュウ 「…リュ! リュウーーーーーー!!」

ドッギャァァァァッ!! ババァァァンッ!!

接近戦での『シグナルビーム』が攻撃後のキレイハナに直撃する。
キレイハナはデンリュウに大きなダメージを与えたけど、倒せるほどじゃなかった。
今度はデンリュウの反撃で大きなダメージをキレイハナが受ける!
態勢が整ってない状態で直撃を受け、キレイハナは空中で受身を取れずに地上へ叩きつけられた。

ドッシャァァッ!!

審判 「キレイハナ戦闘不能!!」

ワアアァァァァッ!!

ラファ 「戻ってキレイハナ……よくやったわ」

シュボンッ!!


コトウ 「キヨミ選手! まさに押せ押せムード!! 後はアンコール状態のマリルリしか残っていない!」
コトウ 「ラファ選手、反撃できるのかぁ!?」


マリルリ 「リル!?」

ラファ 「戻った!? よし!!」

キヨミ 「ならもう一度…! トゲキッス『アンコール』!!」

トゲキッス 「キ〜…」

ラファ 「同じ手は食わない! 『アクアジェット』!!」

マリルリ 「リルーーーー!!」

バシャシャシャシャシャ!! ドバッシャァァァァンッ!!

デンリュウ 「リュ!? リューーーー!!」

キヨミ (く…先制技!? マリルリができるなんて…!)

トゲキッス 「キス〜♪」

トゲキッスはマリルリの攻撃後に『アンコール』を行ってしまった。
これでマリルリは『アクアジェット』しか使えなくなる…!
そしてデンリュウはもう…

ドシャァァッ!!

審判 「デンリュウ戦闘不能!」


コトウ 「ここでラファ選手盛り返す!! アンコール地獄から生還だぁ!!」
コトウ 「しかし、まだマリルリは自由に技を繰り出せない!! 果たして吉と出るか!?」



キヨミ (やるわよトゲキッス…進化したばかりのあなたの本領、今こそ見せてもらうわ!)
キヨミ (ダブルバトルは苦手だけど、今はシングルバトルと同じよ!!)

ラファ (やっぱりキヨミは強い…ダブルなら絶対勝てると、天狗になっていた…!)
ラファ (それでこそ、私の目標! ライバルよ!! あなたを超える事が、私の全てだもの!!)

私たちは、いつの間にかふたりして笑っていることにお互い気づいた。
互いのポケモンを信じているから、自分の力を信じているから、笑える。
どんなピンチだって、ポケモンとのコンビネーションで潜り抜けてきた!
お互いに長いトレーナー暦、どうすればいいかは全部わかってるわね!!

キヨミ 「さぁ必ず勝つわよトゲキッス!」

ラファ 「マリルリ! 全力で行きなさい!!」

トゲキッス 「キ〜ッス!」
マリルリ 「リルーーー!!」

バシャシャシャシャ!! ドバッシャァァッ!!

トゲキッス 「キ、キスーー!!」

マリルリは『アクアジェット』で高速にフィールドを飛び回る。
まるで水上ジェットだ…物凄いスピードにトゲキッスは翻弄されてる!
だけど、来る技がわかっているなら、こう言う対処もあるのよ!!

キヨミ 「トゲキッス! 『でんじは』!!」

トゲキッス 「キスッ!!」

バチバチバチィッ!!

マリルリ 「リ、リル〜〜…!」

ラファ 「状態異常!? だけど、『アクアジェット』は素早さに関係ないわ!!」

マリルリ 「リ、リルーー!!」

バシャシャシャシャッ!!

ラファの言う通り、マリルリは麻痺を物ともせず高速で向かってくる。
だけど、麻痺は麻痺だ、それでも反応は遅い!!

キヨミ 「トゲキッス『しんそく』!!」

トゲキッス 「キッス!!」

ドギュンッ!! ドバッシャァァンッ!!

マリルリ 「リ、リルーー!!」

トゲキッス 「キス〜〜!!」


コトウ 「キヨミ選手! 『しんそく』で一気に先手を奪う!!」
コトウ 「互いに先制技であれば、麻痺の効果が出てきます!!」
コトウ 「互いに正面衝突でしたが、麻痺の分マリルリが大きく吹き飛びました!!」


ドッシャァッ!!

マリルリ 「リ、リル〜〜!!」

マリルリは水ではなく、砂浜に落ちた。
そして『アンコール』が解け、我に返る。
ラファはそれを当然見逃さない。

ラファ 「やっと戻った! マリルリ『れいとうパンチ』よ!!」
ラファ 「『ちからもち』のパワー! その身で受けなさい!!」

キヨミ 「残念だけど、あなたはトゲキッスの本当の怖さを知らない…」
キヨミ 「一気に決めるわよ! 『エアスラッシュ』!!」

ラファ 「!?」

マリルリ 「リルルーー!」

トゲキッス 「キッス!!」

バビュウゥゥゥッ!! ドシュゥゥゥッ!!

マリルリ 「リ、リルーーー!! リル!?」

ラファ 「ど、どうしたのマリルリ!?」

エアスラッシュを受け、マリルリは途端に攻撃を止めてしまう。
凄まじい風の刃に切り裂かれ、マリルリは尻餅を着いて首を振る。

ラファ 「マリルリ! 相手を良く見て! もう一度『れいとうパンチ』!!」

キヨミ 「『エアスラッシュ』!!」

マリルリ 「リ…リル……!!」


コトウ 「あーーー!! マリルリここで痺れる!! そして狙い済ました『エアスラッシュ』がマリルリを襲うーー!!」


ザシュウウゥゥゥゥッ!!

マリルリ 「リ、ル……」

ドシャァァッ!!

審判 「…マリルリ戦闘不能!! よって第2セットの勝者はキヨミ選手!!」


ウワアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!!!

コトウ 「やりましたキヨミ選手!! 不可能と思われたダブルバトルでの雪辱に見事勝利!!」
コトウ 「これで会場は一気に沸きます!! 残ったのはバトルの基本! シングルバトル!!」
コトウ 「互いに有利も不利もない! 残された2体のメンバーで最後の戦いに入ります!!」



………。



ラファ 「…マリルリ、戻って」

シュボンッ!

ラファ 「ごめんなさい、私が未熟なばかりに…」

キヨミ (ん〜…やっぱりラファは堅いわね)
キヨミ 「ご苦労様トゲキッス! あなたを信じてよかった♪」

ギュゥ〜!

トゲキッス 「キス〜♪」

私は思いっきりトゲキッスを抱きしめる。
う〜ん、ふわふわ♪ 抱き心地はエーフィに負けてないわね!

シュボンッ!

キヨミ 「…本当にご苦労様、後はリーダーがやってくれるわ!」

私は残りのボールふたつを見て、意欲を高める。
互いに残されたポケモンは、確実に自信のあるポケモンのはず…
こうなったら、難しいことは一切無い! 全力でぶつかるだけだ!!


コトウ 「さぁ、泣いても笑っても最終セット! 最後のフィールドはぁ!?」


ウィィィィィィンッ!! ガシャアアァァァァァンッ!!


キヨミ 「!?」
ラファ 「!?」

ボボボボッ! ゴッバァァッ!!

私たちは互いにフィールドを見て驚く。
今度のフィールドは火山をイメージされたフィールド!
そして、私たちは互いにボールを構え、すぐにポケモンを繰り出した。

キヨミ 「ここは任せるわよ『ハピナス』!!」
ラファ 「行きなさい! 『ライチュウ』!!」

ボボンッ!!

ハピナス 「ハッピ〜♪」
ライチュウ 「ライチュ♪」


コトウ 「おお〜っとぉ! またしても可愛い容姿のポケモン!」
コトウ 「だが、互いにバトルで鍛え抜かれた強力なポケモン! 見た目に騙されてはいけません!!」


審判 「それでは、最終セット試合開始!!」

ワアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!!

会場の鼓動と共に、私たちは同時に動く。
とはいえ、素早さの差は埋められない、相手がライチュウな以上、後手を意識しないと!

キヨミ 「ハピナス『れいとうビーム』!!」
ラファ 「ライチュウ! 『かわらわり』よ!!」

ライチュウ 「ライライ!! ラーーイ!!」

ドッガァァァァッ!!

ハピナス 「ハピーーーー!! ナーーー!!」

コォォォォォキィィィンッ!!

ライチュウ 「チュ〜〜!!」

互いの攻撃が交互に入る。
だが、思いの外ハピナスへのダメージが大きかった。
格闘技の予想はしてたけど、タイプ不一致でここまで威力を持たせるなんて…!

ラファ (ハピナスの厄介さは7年前に味わったわ!! 対策をしない方がおかしいわね!)
ラファ 「ライチュウ! 続けて『10まんボルト』!!」

ライチュウ 「チューー!!」

バチバチバチィッ!!

ハピナス 「…! ナ〜ス♪」

ハピナスは『10まんボルト』を受けても平気な顔をする。
当然だ、特殊耐久力が全ポケモンで最高と言われるハピナスに特殊技はほとんど通用しないのだから…
だけど…

キヨミ (…くっ、カウンターは容易くさせてもらえないか!)

私は完全に指示のタイミングを見失った。
ラファはそれを見てしてやったりの顔をする。
やっぱり組み立てはラファの方が断然に上手い! まるで姉さんの様な展開作りだ…
だけど…姉さんと同じなら。

キヨミ (私は一度も負けたこと無いわよ!?)

ラファ (くっ…! 凄い気迫を感じる!! ハピナスからもキヨミの気が流れ込んでいるような重圧だわ!)
ラファ (これが…これこそ、伝説のトレーナーの力! キヨミの本当の力なのね!!)



………。



ハルカ 「凄い…キヨミさんとハピナス、まるでシンクロしているみたいに強い気を放ってる!」

サヤ 「確かに…見えない気が凄まじく発散されてますね、これは気持ちの強さですね」
サヤ 「キヨミさんがポケモンと深く繋がっている証拠です…」

サヤちゃんは閉じた瞳の奥からそんなことを言ってくれる。
私にもよくわかる…あれは信頼の絆だ。
強い思いは、必ず力になる。
格闘技にも言えることだ、私だって…何度、師匠に力をもらったかわからない。

ノリカ 「…むむ、気に飲まれて声もかけ辛い」

ジェット 「………」(汗)
リベル 「…ゴクリ」
キッヴァ 「………」

アムカ 「…む〜、どっちも可愛いーーー!!」

…アムカはこの際除外しよう。
わかってたことだけど、天然過ぎるわあの娘…



………。



キヨミ (危険なのはわかっている…だけどやるしかない!!)
キヨミ 「ハピナス『でんじは」!!」

ラファ 「よし! 『みがわり」!!」

ライチュウ 「チュッ!」

ボフンッ!!

ハピナス 「ハッピー!」

バチチッ!

キヨミ 「!? しまった…!!」

ラファは狙い済ました『みがわり」を使い、『でんじは』を無効化する。
そしてこれで一気にライチュウは優位に立った、ハピナスは『でんじは』の後ですぐには動けない!

ラファ 「この勝負もらったわ!! 『きあいパンチ』!!」

ライチュウ 「チュウ〜……」

ライチュウは集中力を高める。
威力重視の大技で攻めて来た!? これは逆にチャンス!!

キヨミ 「ハピナス! 『ちきゅうなげ」!!」

ハピナス 「ハッピ〜!!」

ブォンッ!! ドギュルルルルルルッ!! ドッガァァァンッ!! …ボフゥゥゥン

ハピナスは集中力を高めている最中のライチュウに近づき、身代わりを破壊する。
だけど、ハピナスにできるのはそこまで…目の前には技の態勢に入ったライチュウが拳を構えていた。

ライチュウ 「ライチューーー!!」

バッギャァァァァァッ!!!

ハピナス 「ハピーーーーー!!!」

ズザァァァァァァァッ!! ゴロゴロゴローーー!!

ライチュウの右拳がハピナスの腹を打ち抜く、その衝撃でハピナスは激しく後方へ吹き飛んだ。
ハピナスの体力は0…大きく地面を転がり、目を回している。

審判 「…ハピナス戦闘不能!! ライチュウの勝ち!!」


コトウ 「渾身の『きあいパンチ』が炸裂!! 王道のコンビネーションにハピナス撃・沈!!」
コトウ 「これで残されたポケモンは1体! キヨミ選手、勝利を掴めるかーーー!?」



ワアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!!

キヨミ 「………」

私は最後のボールを持ち、ポケモンの声を聞く。
ヒートアップする会場の声援も耳にせず、私はただ…最後のポケモンの声を聞いた。

『心配するな、こんなピンチは何度もやってきた』

キヨミ (うん…そうね……)

『お前は、俺が勝たせる…昔からそれは変わらない』

キヨミ (うん…ありがとう……)

『俺を信じろ! そうすればお前は俺が勝たせる!!』

キヨミ (うん…信じるわ!! 昔はいつだって、私はあなたと一緒に戦ってきたんだから!!)

審判 「キヨミ選手! 早く次のポケモンを……」

キヨミ 「燃え上がれ! バクフーーーーン!!」

ボンッ!!

バクフーン 「フーーーンッ!!」

ザシャッ!! ゴウワアアアアアアァァァァァァッ!!

バクフーンは二本の足でしっかりと岩場を踏みしめ、首周りの炎を滾(たぎ)らせる。
火山ポケモンにとって、このフィールドはまさに天国! 熱く煮えたぎるマグマはバクフーンの炎を更に強くする!!

ライチュウ 「ラ、ライチュ…!」

ラファ 「怯まないでライチュウ! 強敵だけど勝てない相手じゃないわ!!」

ライチュウ 「ラ、ライ!」

バクフーンの放つ気迫にライチュウは明らかに動揺した。
だけどラファからの喝でライチュウはしっかりとバクフーンを睨みつける。
さすがに場慣れしてるわね…さて、やってもらわなきゃ困るわよ?

バクフーン 「フンッ…」

キヨミ (なんて…愚問だったか♪)

この子は私のポケモンの中で、誰よりもピンチを好む。
初めてジョウトリーグを目指すと決めた時、私はまだヒノアラシだったこの子をパートナーに選んだ。
姉さんからの静止も聞かず、私は強情にこの子を育てると堅く決めた。
ヒノアラシだったこの子は、最初言うことを聞いてくれず、中々懐いてくれなかった。
でも、この子がバトル好きなのがわかってからは、私はこの子と一気に仲良くなった。
お姉ちゃんと離れる時も…この子はずっと私の側にいてくれた。

キヨミ (7年の間、離れていたけど…私とバクフーンの絆は誰にも切れない!!)

バクフーン 『それが俺たちの力だ!!』

審判 「試合開始!!」

ラファ 「ライチュウ! 『10まん…」
キヨミ 「『ブラストバーン』!!」

バクフーン 「フーーーーーンーーーーーーーー!!!」

ドギュゥゥッ!! ゴッバアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァンッ!!

ライチュウ 「チュ!? チューーー!!!」

カッ!! チュドオオオオオオオオオオオオオォォォォォンッ!!!

いきなりの先制攻撃。
私のバクフーンの方が速かったわね!
まぁ、挨拶はこれ位でいいでしょう♪

バクフーン 『…へっ、寝起きには丁度いい刺激だ!』

ライチュウ 「……」

紅い閃光に巻き込まれ、大爆発。
ライチュウはその中心で黒コゲになってピクピクしていた…ダウンね。

審判 「………」

ラファ 「ラ、ライチュウ!?」

審判 「あ! ラ、ライチュウ戦闘不能!! バクフーンの勝ち!!」


ワ…ワアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!



………。



『同時刻 キヨハの控え室』


ゴウスケ 「なんつー…力技」

キヨハ 「ふふ…変わらないわね、あの子たち」
キヨハ 「むしろ、戻ったと言うべきかしら? 昔はいつもあんな調子だった物ね…」

ゴウスケ 「せやな…気ぃ抜いたら、即座にあれやったからな…思い出しても頭抱えるわ」
ゴウスケ 「大体、相性とか考えんと大技連発しすぎやねん…あんな技選択、読めるか!!」

ゴウスケ君は思い出すように言い放つ。
同じように私も嫌な思い出を思い出す。
あの娘はいつもああやって、こっちのペースをかき乱す。
あの娘の滅茶苦茶なバトルは、読もうと思っても流されるだけ…
あれこそ、キヨミの本当のバトルだものね……ふふ。



………。



『同時刻 試合会場』


ハルカ 「うわ…いきなりあんな攻撃する普通?」

リベル 「絶対しません!」

ジェット 「普通、もっと安定感のある技で攻めるだろ…」

キッヴァ 「せめて『かえんほうしゃ』とか…」

サヤ 「ですが、結果がこれです…セオリーと踏んでいたラファ選手は見事に裏を書かれましたね」
サヤ 「『ブラストバーン』は出が少々遅い分、出た後の速度は断然に速いです」
サヤ 「初手で放つのはある意味奇襲ですが、相手を倒してしまえばインターバルで反動も消えます」
サヤ 「ある意味、ベストと言える選択ですね…バクフーンの反応の速さは私にも読めませんでしたが」

ノリカ 「うう…にしても威力高すぎ、まだ煙上がってるよ」

アムカ 「うう……いかつすぎ」(泣)

皆、色々考えてはいたようだけど、結局サヤちゃんの解説に納得してしまったようだ…ひとり除いて。
キヨミさん、何だか段々生き生きしてくる…もしかして、ピンチを楽しむタイプ?
う〜ん……何だか、最初の頃とイメージが変わりすぎて、私も戸惑うな…

ハルカ (でも…悪いとは思わない……凄く心が躍る。あの人のバトルは、私の目指しているバトルに似ている)



………。



ラファ 「自ずと、こう言う決着か……7年前も同じ相手だった」
ラファ 「今度は、あなたが勝つ番よ!! 焼き尽くせ!! 『リザードン』!!!」

ボンッ!!

リザードン 「ザーーーーード!!」


コトウ 「ラファ選手が最後に繰り出したのは『リザードン』!!」
コトウ 「奇しくも、互いに炎の初心者用ポケモン、最終進化系!!」
コトウ 「カントーのリザードン! ジョウトのバクフーン!!」
コトウ 「共にホウエンではあまり見られないポケモンですが、その二体がここで睨み合っております!!」
コトウ 「もはや、どちらが勝つか誰にも予想できないでしょう!! さぁ、最後の戦いだぁ!!」


審判 「最終戦! 試合開始!!」

キヨミ 「『かえんほうしゃ』!!」
ラファ 「『かえんほうしゃ』!!」

バクフーン 「フーーン!!」
リザードン 「ザーード!!」


ゴゴワアアアァァァァァァァァァァッ!!! ボボボボボボォォォォォッ!!

バクフーン 「!?」
リザードン 「!?」

互いの『かえんほうしゃ』が激突するも、パワーは互角!
互いに押し切れないようで、暫く押し合った後、両者の『かえんほうしゃ』は同時に途切れた。



………。



ハルカ 「凄い威力ね…どっちも!」

サヤ 「…バクフーンとリザードンは、どちらも同じ力の持ち主と言われていますからね」
サヤ 「力、体力、速度…どれを取ってもコピーの様な能力だそうです」
サヤ 「もちろん、性格や育て方でその差を出すことが出来るのですが…」

ジェット 「見た所、どっちも同じような成長を遂げたってことか?」

リベル 「どうでしょうか…? まだあの攻撃だけじゃ…」

サヤ 「どちらにせよ、リザードンのもう一つのタイプが鍵になると思いますよ」

キッヴァ 「飛行タイプか…! 確かに…」

皆、息を呑んでキヨミさんたちのバトルを見守っていた。
会場はヒートアップするけど、わかっている人は声を呑む。
これは…そう言うバトルなんだろう。



………。



キヨミ (同じ威力…? それとも手を抜いたのかしら…)

バクフーン 『生憎だが、全力だ…向こうもそうだろうな』

バクフーンはそう言う…と言うことは、パワー差はあまりない…か?

ラファ (同等の威力か…だけど、それは特殊攻撃の話!)
ラファ (物理的な攻撃力ならどうかしら!?)

キヨミ 「!! バクフーン『かえんぐるま』!!」
ラファ 「『ほのおのキバ』よ!!」

バクフーン 「!! フーーン!!」

ゴワァッ!! ギュルルルルルッ!!

リザードン 「ザーーー!!」

ゴゥッ!! バササササササッ!!

今度は互いに接近戦を挑む。
バクフーンはその場で身体を丸めて回転し、炎を纏う。
リザードンは翼をはためかせ、口を開けて炎を溜めた。
互いに高速で近づき、お互いの技をぶつけ合う!

ゴッバァァァァァァァンッ!!

バクフーン 「!!」
リザードン 「!?」

バクフーンは回転しながら体当たり、リザードンは炎を纏った牙を突き刺してくる。
結果は、またしても互角…互いにほぼ同じ距離を吹き飛んだ。

キヨミ (また互角…!? でも…今度は……)

ラファ (互角に持ち込まれた!? 体重はリザードンの方が上、技の威力も『ほのおのキバ』が上なのに…)
ラファ (と、なると…物理的な能力は相手が上なのか!!)

バクフーン 『野郎…接近戦はあんまり得意じゃねぇな』

キヨミ (!! 私もそう思った…あのリザードンは接近戦にそれほど特化してない!)
キヨミ (あなたとは、違うってことね!)

バクフーン 『…ふっ』

ラファ 「!? 笑った…」

バクフーンは相手の力を見て笑ったのだ。
特殊攻撃力は同じ、物理攻撃力はこちらが上。
と、なると…やるべきことは決まった!

キヨミ 「バクフーン! 接近戦よ!! 『でんこうせっか』!!」

ラファ 「来た! リザードン『じしん』!!」

バクフーン 「フーーーン!!」

ギュンッ!! ドカァッ!!

リザードン 「!! ザーーードン!!」

ドギャァッ!! ドッガガガガァッ!!

バクフーン 「…!!??」

キヨミ 「バクフーーーーン!!」


コトウ 「ここで『じしん』が炸裂!! 飛行タイプのリザードンはこの弱点を持ちません!!」
コトウ 「突然の接近戦でやや軸がズレたか!? 直撃と言うにはやや甘い当たり方でした!」
コトウ 「しかし、効果抜群の大技! バクフーン大丈夫か!?」


バクフーン 「…フ、フンッ!!」

ゴワアァァァァァァッ!!

キヨミ 「しめた!! 『かみなりパンチ』よ!!」

ラファ 「マズイ、避けるのよ!!」

リザードン 「リ、リザッ…!?」

ガシィッ!!

空中に逃げようとするリザードンの足をバクフーンが左手で掴んで逃がさない。
そして、バクフーンは右拳に電気を溜め、左手でリザードンを引き寄せ、右拳でリザードンの腹を殴りつけた。

バクフーン 「フ〜! フンッ!!」

バキィィッ!! バチチチチィッ!!

リザードン 「ザ、ザーーー!!」


コトウ 「今度はリザードンが大打撃!! 飛行の弱点である電気を喰らってしまったー!!」
コトウ 「しかし、技の威力が段違い! ダメージの差は明らかです!!」


キヨミ 「そんなダメージが差になるかぁ!! バクフーンもう一発!!」

バクフーン 「フーーン!!」

ラファ 「二発も撃たせるか!! 『まもる』!!」

リザードン 「ザァッ!!」

ピキィィィィンッ!!

バクフーン 「フン!?」

バクフーンは足を離さなかったが、『まもる』のフィールドに遮られ、距離を開けられてしまった。
一気に飛び込むには少し遠い、相手の『じしん』は遠くても出せる…!

キヨミ (速度の差が重要になる…相手の攻撃は何で来る!?)

バクフーン 『考えるなキヨミ!! あれをやるぞ!!』

キヨミ 「!? よし!! わかったわ!!」

私たちは互いに意志を固める。
体力の残りは多くない、となると…ラファがやりそうなことは!!

ラファ (この距離…相手の体力、速度…ここまでの戦いでバクフーンにもう距離を詰める術は『でんこうせっか』以外無い!)
ラファ (最後の反撃に『ブラストバーン』を撃つ位が出きる最大のことのはず…いやむしろキヨミはそうすると私は読む!)
ラファ (まだやったことはない…でも、キヨミの『ブラストバーン』を超えるには、これしかない!!)
ラファ 「リザードン! 『フレアショット』よ!!」

リザードン 「!? リ、リザーーー!!」

ゴウゥゥゥゥッ!!

キヨミ 「!? 聞いたことのない技…!!」

突然、リザードンは身体から炎を爆発させる。
『オーバーヒート』に似ているけど、微妙に違う。
口元に凄まじい炎エネルギーが溜め込まれ、それを圧縮している様な…

キヨミ (まさか、『ブラストバーン』!?)

ラファ (この『フレアショット』は実戦では一度も使ったことの無い技!)
ラファ (『オーバーヒート』と『ブラストバーン』の両方の威力を合わせた、私オリジナルの技!!)
ラファ (私のリザードンならやれる! 実戦では初めてでも、きっと上手くいく!!)
ラファ 「行けリザードン! 私は信じているわ!!」

リザードン 「ザーーーーーーーーーー!!!!」

カッ! キュィィィィィッ!!! キィィィィンッ!!

一瞬の光。
リザードンの口に溜め込まれた高圧縮の炎は、まさに閃光の様な眩い光を放つ。

キヨミ 「!! !!『!!』!!!」

バクフーン 「!! !! !!!!!!!」

ゴワアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!!

凄まじい音だった。
私の声もバクフーンの声も何を言ってるかわからない。
だけど、私たちは心で通じている、何をすればいいかも初めからわかってる!

チュッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォッ!!!! ゴワアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!! バッゴォォォォォォォォォンッ!!!



………。



ラファ 「…う……くっ! な、何て爆発」
ラファ 「ま、まさか死んでないでしょうね?」

リザードン 「リ、リザ……!!」

ガクッ!!

リザードンは肩膝を突いて、口から煙をもくもくと吐いていた。
この技の最大の欠点は、反動が大きすぎることだ。
ただでさえ使用後に大きな反動のある、『オーバーヒート』と『ブラストバーン』の組み合わせ。
ご覧の通り、『だいばくはつ』さえ凌ぐ威力を出せるが、使った後は確実に戦える体力は残らない。
そのままダウンしなかっただけでも、僥倖ね…

ラファ 「…キ、キヨミは? まさか、爆発に巻き込まれて…ってことは無いわよね?」

リザードン 「……」

リザードンは答えなかった、どうなったのか、自分でもわかっていないんだろう。
だけど、次第に煙は人工風に飛ばされ、相手の状況が露になっていく、そして…私は驚愕した。

ラファ 「……嘘」



………。



バクフーン 「…フ〜〜〜〜ン!! フンッ!!」

ゴッバアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!

キヨミ 「ぶへっ!! ふはっ!! あーーーーーーー!! もう!! 何なのよあれ!! もう最悪ーーー!!」

ラファ 「…そ、そんな……耐えた!?」

キヨミ 「はぁ!? 耐えるに決まってるじゃない!! 『こらえる』使ったんだから!!」

ラファ 「あ…!!??」

私が当たり前の様に言ってやると、ラファは顔を蒼くした。
そんな当然の効果もラファは頭から抜けていたようだ。
全く、こっちはハナから耐える気満々だっての!!

キヨミ 「さぁ、こっから反撃よ!! バクフーン! 特大の『ブラストバーン』で……」

ラファ 「…降参」

キヨミ 「……って、えぇ〜?」

私はノッて来た所でいきなり脱力させられる。
ここでの反撃が格好いいんじゃないの〜…

キヨミ (でも、ま……あれじゃ仕方ない、か)

私はラファのリザードンを見て理解した。
あのリザードンは、もう戦う力は残っていない。
力を出し尽くして、ほとんど意識は飛んでいるようだった。

キヨミ 「…まっ、降参ならしょうがないわね!」

ラファ 「ふふ…全く、あなたには敵わないわ」
ラファ 「戻って、リザードン……あなたは、最高だったわ」

シュボンッ!

バクフーン 「……フンッ」

キヨミ 「こら! 最後くらいデレろツンデレ!」

パシンッ!と私はそっぽ向くバクフーンの肩を叩いた。
バクフーンはそのまま振り向く気はないようだった。

キヨミ 「全く…戻りなさい!」

シュボンッ!!

私はバクフーンをボールに戻し、改めて。

キヨミ 「よっしゃああああああああああ!! 勝ったぞーーーーー!!」

…ワ、ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!

私の掛け声と共に、会場が騒ぎ始める。
あまりのインパクトの爆発に音が消えてたものね…やっぱお祭りはこうじゃなきゃ!


コトウ 「…あ、あまりの事に私共々、会場が静寂に包まれておりました!」
コトウ 「し、しかし!! ついに決着!! 激闘を制したのは、キヨミ選手です!!」
コトウ 「ラファ選手、最後に全てをぶつける必殺技を放ちましたが、惜しくも倒しきれず!」
コトウ 「必ず! 殺す! 技! で、ありながら惜しくも失敗!!」
コトウ 「審判はいつの間にやら爆発に巻き込まれ気絶しているようであります!」
コトウ 「え〜、とりあえずキヨミ選手おめでとう!! 準決勝進出です!!」
コトウ 「なお、ラファ選手は、RMUより呼び出しがかかっております! 試合後、役員控え室までお越しください!!」


キヨミ 「ははっ…呼び出されてるじゃない」

ラファ 「ふふっ…やりすぎたわね、この技は永久封印になりそう♪」

私たちは、互いに笑い合う。
戦う前は、少なからず敵意が大きかったかもしれない。
でも、今はお互いに分かり合ってる。
だから、ポケモンバトルは楽しい! 戦う度に、トレーナーは仲良くなっていくんだから♪

キヨミ 「………」



………。



ハルカ (! キヨミさん…私を見て笑った)
ハルカ (そうだ…約束は守ってもらった、信じていたけど、改めて私はついに約束の場に迎える!)
ハルカ (トレーナーになって、最初の目標…私はこれまでの全てをあなたにぶつけます!!)

私は未だ煙の上がるフィールドからキヨミさんと向き合う。
まるで人の変わったようなキヨミさん…だけどそれが本当のキヨミさん。
恐らく、私が知っている全てのトレーナーの中でも最強のトレーナーと本当に感じた。
今のキヨミさんなら、ミカゲよりも強いかもしれない…
だけど、それを超えることが今の私の目標だから!!

ハルカ (必ず、勝つ!!)



…To be continued




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