ポケットモンスター サファイア編




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第9話 「ジム戦そして…(後編)」






『10月3日 時刻10:19 ムロタウン・ジム前』


ユウキ 「…遅い!」

俺はムロジムの前にいた。
途中トウキさんに会って話をし、いつでもジム戦を行えるとのことなのだが…。

『10時19分』


ラルトス 「………」(ぽけ〜)

ユウキ 「キノココとツチニンの奴!」

9時50分からずっと待っているが一向にキノココとツチニンが姿を現さない。
ツチニンはともかくキノココを放したのは間違いだった…。

ツチニン 「ニン! ニンニン!」

スバメ 「スバ!」

ユウキ 「やっときたか…!」

キノココ 「キノーッ!」

キノココとツチニンだ。
やっときたか…。

ツチニン 「ニン…」
キノココ 「キノ…」

ユウキ 「お前らな…」

キノココとツチニンは俺の前に来ると素直に反省する。

ユウキ 「…まぁいい、さぁいくぞ、みんな!」

スバメ 「スバー!」
ラルトス 「はい!」
ヌマクロー 「ヌマ!」
グラエナ 「ガウ!」
キノココ 「キノー!」
ツチニン 「ニンニン!」

みんな気合十分、俺はムロジムの扉を開け中に入る。
まぁ、実際に戦うのは2匹だけだけど。



トウキ 「待っていたよユウキ君!」

中に入るとトウキさんが既にジムリーダーサイドで待っていた。
中はカナズミジムと同じ位の広さで扉を開けたらすぐにバトルフィールドになっていた。
バトルフィールドは基本的にはただの土のフィールドだった。
基本的には何もない。
しかしひとつ奇妙なことが。

ユウキ 「……」

『溝』だ、バトルフィールドを囲むように1メートルくらいの幅の溝があった。
トレーナーサイドとバトルフィールドの間にこんな大きなフィールドがあるということはこの溝はバトルフィールドの一部ということか。

トウキ 「ジム戦が始まる前に言っておく…」
トウキ 「やるからには手加減はしないぞ!」

ユウキ 「……」

トウキさんは少々ありきたりだがそう言った。
俺は特に何も答えずトレーナーサイドに入る。

審判 「…これより! ムロジム、ジム戦を行います!」
審判 「使用ポケモンは2体! ポケモンの途中交代は挑戦者のみ有効!」
審判 「先制はジムリーダー!」
審判 「これよりジム戦第221戦、ジムリーダートウキ対挑戦者ユウキの一戦を行います!」

トウキ 「いけ! ワンリキー!」

トウキさんはモンスターボールを投げると中からワンリキーが出てくる。

ポケモン図鑑 『ワンリキー 怪力ポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ0,8m 重さ19,5Kg タイプ 格闘』
ポケモン図鑑 『ゴローンを持ちあげて体を鍛える』
ポケモン図鑑 『全ての格闘技をマスターするため世界中を旅するワンリキーもいる』

ワンリキーは人に似た姿をしたポケモンで、身長は子供くらいだが筋肉隆々のその体は屈強そのもの。
格闘タイプらしく様々な格闘技を学ぶポケモンらしい。

ユウキ (ワンリキーか…)

この前助けられた時は見なかったな…。
強さは未知数だが…。

ユウキ 「ラルトス…出番だ」

ラルトス 「はい!」

ラルトスは俺が出番と言うとはっきり返事をする。

ユウキ 「バトルフィールドに運ぼうか?」

ラルトス 「大丈夫です」

ラルトスはそう言うと突然目の前から姿を消す。
そして、バトルフィールドに姿を現す。

ユウキ 「そうか! 『テレポート』か!」

この時やっと俺の頭からある疑問が取れた。
スバメとのスパーリングのとき何故突然消えて、いけるはずの無い上空のスバメの上に行った理由が。
それはテレポートというエスパータイプの技だ。
ラルトスタイプならどのラルトスも早くに覚えるが…。

ユウキ (なんにせよ戦い方が増えるわけだな…)

審判 「挑戦者のラルトス対ジムリーダーのワンリキーの一戦、始めっ!」

審判の合図と共にバトルは始まる。

トウキ 「ワンリキー! 『からてチョップ』!」

ワンリキー 「ワンー!」

ワンリキーはものすごい勢いでラルトスに突っ込んでくる。
ちなみにからてチョップは空手チョップ。
実際にはそんな技はないがそう呼ばれるただの唐竹割りだ。
首…いわゆる急所にダメージを与えやすいので急所に当たりやすいと言われている。

ユウキ 「ラルトス! 『ねんりき』だ!」

ラルトス 「はぁ!」

ラルトスはワンリキーに『ねんりき』で攻撃する。

ワンリキー 「ワ、ワン!?」

ワンリキーは頭を抱え痛み出す。
ねんりきは精神にダメージを与える技だから格闘タイプには有効だ。
動きを封じれるからな。

トウキ 「ワンリキー!」

ワンリキー 「ワ…ワンッ!」

ワンリキーはトウキさんの声を聞くと『ねんりき』のダメージを無視して突っ込んでくる。

ワンリキー 「ワン!」

ユウキ 「避けろ! ラルトス!」

ラルトス 「く!?」

ワンリキーはそのまま真正面から頭上に『からてチョップ』を繰り出す。
ラルトスはそれをステップでかわす。

トウキ 「腕を掴め!」

ワンリキー 「ワン!」

ラルトス 「うわっ!?」

ラルトスは『からてチョップ』はかわすがそのままワンリキーに腕を掴まれてしまう。

トウキ 「これで『テレポート』は無意味だ」

ユウキ 「ちぃ…」

確かにこれでは『テレポート』で逃げることは出来ない。
腕を捕まれているからワンリキーごと『テレポート』してしまうのだ。

ユウキ 「ラルトス! 『ねんりき』だ!」

トウキ 「ワンリキー! 腕を強く握り締めろ!」

ラルトス 「ク…ア、ア…!」

ワンリキー 「ワ、ワン〜…」

ラルトスはワンリキーに『ねんりき』でダメージを与えるがワンリキーもものすごい握力でラルトスの腕を握り締める。
互いダメージに苦しみながらも根性で我慢している。

ユウキ 「頑張れよラルトス!」

俺はそう言いながらトウキさんの方を見る。
トウキさんはすました顔で見守っていた。
安心しているのか…? この状況下で…。

トウキ 「ワンリキー! 『ビルドアップ』!」

ワンリキー 「ワン!」

ユウキ 「なに!?」

ワンリキーは突然『ビルドアップ』を使う。
『ビルドアップ』とは体中の筋肉をパンプアップさせ攻撃力と防御力を上げる技だ。
普通筋肉をパンプアップさせたらスピードが殺されてしまう気もするが、ポケモンバトルにおいてそのような副作用はない。
非常に強力な技のひとつだ。

ラルトス 「あああ!」

いきなりワンリキーの握力が上がりラルトスのダメージがさらに増大する。
このままではやばい!

ユウキ 「ラルトス!?」

ラルトス 「こぉの!!」

ワンリキー 「わん!?」

ユウキ 「んな!?」

トウキ 「!?」

ズシーン!

ワンリキーは大きな音を立ててフィールドの溝に落ちてしまう。
さて、これでは何が起こったか分からないだろうから詳しく説明しよう。

一回り大きくなったワンリキー、腕を締め上げラルトスを苦しめるが突如ラルトスが。
なんとラルトスがとっさにワンリキーの腕を逆間接で極め、一本背負い投げで場外(?)に投げ飛ばしたのだ。

てか、いきなり投げ技かよ…。
何者なんだよラルトスって…。

ラルトス 「はぁ…はぁ…」

審判 「ワンリキー戦闘不能! ラルトスの勝ち!」

トウキ 「く…よくやったワンリキー」

ラルトス 「う…」

ドサッ!

ユウキ 「ラルトス!?」

ラルトスは勝ちを宣言された後、突然倒れてしまう。
やはりラルトスの打たれ強さには限界がきてたということか。

審判 「ラルトス戦闘不能!」

審判はラルトスの様子を見てそう宣言を下す。

ユウキ 「よくやった、ラルトスもどれ!」

俺はボールを取り出し、ラルトスをボールに入れる。

トウキ 「どうやらいきなり最後になったようだな」
トウキ 「俺の最後のポケモンはこれだ!」
トウキ 「いけ! マクノシタ!」

ユウキ 「やはりマクノシタか…」

ポケモン図鑑 『マクノシタ 根性ポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ1,0m 重さ86,4Kg タイプ 格闘』
ポケモン図鑑 『絶対諦めない根性を持つ』
ポケモン図鑑 『たくさん食べよく寝ることで体の中にエネルギーが充満する』

ユウキ 「そっちがマクノシタなら俺は!」
ユウキ 「いけ! スバメ!」

スバメ 「スバー!」

スバメも颯爽(さっそう)とバトルフィールドに入る。

審判 「マクノシタ対スバメ、始め!」

ユウキ 「さて…どうするか」

単純に考えてスバメは空を飛んでいる分、肉体でしか攻撃できないマクノシタは不利だ。
だがひとつ厄介なことがある。
マクノシタの体重86,4キロに対しスバメは2,3キロは絶望だ。
実に40倍近い体重差だ。
こんなに体重差があればスバメの攻撃はたいして効かないかもしれないな。

ユウキ (だが、塵も積もれば山となる!)
ユウキ 「スバメ!朝錬の時のようにやれ!」

スバメ 「スバー!」

スバメは中央に佇むマクノシタの上を旋回しながら飛び回る。

マクノシタ 「マク! マク!?」

マクノシタは戸惑いスバメを目で追いかける。
さて、トウキさんはどう出る?

トウキ 「……」

いたって冷静にスバメを見ている。
さすがに飛行タイプとはやり慣れているって所か。

ユウキ (てことはなにかしら対策があるか…)

トウキ 「…そろそろか」

ユウキ 「!」

そろそろか…?
どうゆうことだこれから何か起こるのか?

ユウキ 「考えても仕方がない…いけ、スバメ!」

スバメ 「スバー!」

トウキ 「にげろ! マクノシタ!」

マクノシタ 「マクー!」

マクノシタはいきなり背を向けてフィールド上を逃げ回る。
そのスピードは見かけによらず早かった。
が、それでスバメから逃げ切れるわけもなく後ろから突っつかれる。
これじゃマクノシタはジリ貧だ。
しかもマクノシタはだんだん追い詰められついにコーナーの溝の方に追い詰められる。

ユウキ 「追い詰めた!」
ユウキ (しかし…なんだこの抵抗のなさは…?)

トウキさんはマクノシタに逃げろと言ったきり何も命令していない。
反撃さえもさせていないのだ。

ドドドドドドドドドド!

ユウキ 「な、なんだ!?」

突然地鳴りのような音が辺りに鳴り響く。

トウキ 「いよいよだ」

これがトウキさんの作戦か!?
しかし一体何が起こる!?

トウキ 「飛び込め! マクノシタ!」

マクノシタ 「マクー!」

ユウキ 「なんだと!?」

突然トウキさんはマクノシタに二度目の命令を出す。
そしてマクノシタは命令通り溝の中に落ちる。
溝の中には何があるという!?

ザパァァァァァ!

ユウキ 「なにぃ!?」

スバメ 「スバッ!?」

突然溝から大量の水が噴水のように噴き出す。
それは5メートル、いや6〜7メートルは高く噴き出した。
そしてマクノシタはその水に乗って飛び上がる。
そして。

トウキ 「マクノシタ! 『つっぱり』!」

マクノシタ 「マクー!」

マクノシタは空を飛ぶスバメよりさらに上つまり頭上から『つっぱり』をスバメに繰り出す。

ズパァン! ドカァ!

スバメは突然の上からの攻撃に反応できず、マクノシタのつっぱりで地面に叩きつけられる。
迂闊だった本来飛行タイプが頭上から攻撃されることなどない。
故に頭上からの攻撃に耐性がない。

スバメ 「ス、スバ〜」

スバメは必死に立ち上がろうとする。

ユウキ (立てるか…!?)

スバメ 「スバ…」

ユウキ 「ダメか…?」

スバメはきつそうだ。
飛行タイプが格闘タイプに強い由縁はその戦闘スタイル。
格闘タイプは地面に足をつけて戦う故に空を飛ぶ鳥ポケモンには有効なヒットが当てられない。
対して飛行タイプはスピードの中で有効なヒットをだす。
この戦闘スタイルの差が有利不利を出す。

しかし、今それが覆された…。
本来ありえない高さからマクノシタの体重を最大限に生かした攻撃。
そして追い討ちの地面への叩きつけ。

打たれ弱いスバメでは無理か…?

トウキ 「どうした? それまでか?」

ユウキ 「く…」

スバメ 「ス、スバー!」

スバメは気合で立ち上がる。
まさに根性だな…。

ユウキ 「だが…」

スバメ 「ス、スバ〜」

ダメージ大…小石ひとつぶつかっても倒れそうだ。

トウキ 「よく立ち上がった…だが、これまでだ」

ユウキ 「く…どうすれば…?」

マクノシタはダメージを負っているとはいえまだまだ元気だ。
逃げ回っていた分ダメージが抑えられたのか。

トウキ 「マクノシタ! 『たいあたり』!」

マクノシタ 「マクー!」

ユウキ 「やばい! 上昇だ!」

スバメ 「スバー!」

ユウキ 「よし!」

スバメは高く飛ぶことによって『たいあたり』をかわす。

トウキ 「まだだ!」

ドドドドド!

ユウキ 「またかよ!?」

再びあの地鳴りが響く。
万事休すか!?

マクノシタ 「マクー!」

マクノシタは再び吹き上がる水に乗ってスバメに襲い掛かる。

マクノシタ 「マク!?」

マクノシタの攻撃はスバメの鼻先で止まる。
スバメが通常より少し高く飛んだから助かったんだ。

ユウキ (少し高く飛んだから助かった…?)

トウキ 「もう一度だ! もう一度水圧を使え!」

マクノシタ 「マクー!」

マクノシタは再び隅の溝から定期的に噴き出す水に乗って襲い掛かる。
だが、俺はあるカラクリに気付いた。 そして、それに気付けばもう怖いもんじゃない。

ユウキ 「スバメ! 叩き落せ!」

マクノシタ 「マ!?」

トウキ 「なに!?」

マクノシタの攻撃はまたもやスバメの鼻先で止まってしまう。
そしてそこから。

ドカァ!


スバメはマクノシタの顔に渾身の『つばさでうつ』攻撃をしてマクノシタは地面にたたきつけられる。

ユウキ (考えてみれば簡単だった…)

スバメとマクノシタの相性関係は何も変わらない。
ただ、マクノシタがスバメの上に跳んできただけなんだ。

ユウキ 「だったら…その更に上にいけばよかったんだ」

マクノシタは飛ぶのではなく跳ぶ。
限界があるんだ。
結局スバメに与えられた強烈なインパクトで気が付かなかったが跳んできただけなんだ。

トウキ 「マ、マクノシタ…?」

マクノシタ 「マク〜…」

マクノシタは目を回している。
これはどう見ても…。

審判 「マクノシタ戦闘不能! よって勝者チャレンジャーのユウキ!」

審判によって改めて俺の勝ちが宣言される。

トウキ 「まさにビックウェーブ! 君の勝ちだ!」

トウキさんはそう言って俺に近づきあるものを渡す。

トウキ 「ナックルバッジ…俺に勝った証だ」

そう、二つ目のバッジ、ナックルバッジだ。
俺はそれを受け取ると。

ユウキ 「ナックルバッジ! ゲット!」

俺はいや、俺たちはこの勝利を大いに分かち合うのだった。

トウキ 「マクノシタ、よく頑張った」

ユウキ 「スバメ、それにみんなも戻れ!」

俺たちは戦い疲れた者、応援に精を出した者達をボールに戻す。

ユウキ 「あ、そうだ、トウキさん『ダイゴ』って人、知りません?」

トウキ 「ダイゴ…? ああ、知っているよ」
トウキ 「ジム戦する前に石の洞窟に向かったけどまだいるんじゃないかな?」

ユウキ 「石の洞窟ですか、ありがとうございました!」

トウキ 「あ、場所分かるのー!?」

ユウキ 「なんとなくは!」

俺はそう言って意気揚揚とジムを外にした。
そして俺はそのまま町の外へと向かった。
石の洞窟…。

ユウキ 「多分あそこだ!」




………………。




ユウキ 「…着いた」

俺は朝ココドラと出会った洞窟の前に来ていた。
この島で洞窟ていったらここぐらいしかなさそうだもんな。

ユウキ 「んじゃ、『ダイゴ』捜索開始ーっと」



中に入るとそこは光にあふれていた。

ユウキ 「…て、なんでじゃ」

不思議に思い天井を見上げるとそこには天井はなかった。
天井にあたる岩盤は崩れ去っており大きな穴が空いていたのだ。
ちなみに中は相当広くへたな学校の運動場くらいはありそうだ。
300メートルくらい先に地下へと続くはしごがある、そこからダイゴって人は下に降りたのだろう。

? 「あ、君! この洞窟は暗いからそんな格好じゃ危ないよ!」

ユウキ 「え?」

突然どこからか声が掛けられる。
声のほうへと振り向くとそこには山男がいた。
もうどこからどう見ても山男、そうとしか言えない。

山男 「この洞窟を歩くには『フラッシュ』という技が必要だ」
山男 「ダイゴとかいう男は持っていたからいいけど君は持っていないだろ」
山男 「よし! 人に親切にするのも山男だ! この秘伝マシンを持っていけ!」

そう言って山男は突然あるディスクと装置を取り出し、俺に渡した。

ユウキ 「秘伝マシン5…『フラッシュ』か!」

そのディスクは秘伝マシンと呼ばれるものだった。

この世には技マシンというものがある。
技マシンとはそのディスクに入った情報をポケモンに渡し、技として覚えさせるのだ。
しかし技マシンは一度使うとただの空ディスクとなる。
つまり使用は一度っきりなのだ。
しかしこの秘伝マシンは違う。
秘伝マシンは使ってもデータが消えず何度でも使える。
ただし、秘伝マシンの技は使用すると二度と忘れられない。
まぁ、そんなにデメリットにはならないけど…。

ユウキ 「んでも、使えるやつは…?」

俺はそこでもうひとつの装置の方を取り出す。
俺はその装置に6つのボールを備える。
そして、ディスクの差込口に秘伝マシンを差し込むと装置は何やら計算し始める。
そして、小型ながら液晶画面に使えるポケモンの名前が出てくる。
そう、この装置はポケモンが使えるか否かの判定をだす装置なのだ。
まぁ、どのポケモンでも技マシンを使えばどんな技でも使えるってわけじゃないからな。

ユウキ 「ラルトスか」

名前はラルトスが表示される。
俺はボールからラルトスを出すとラルトスは不思議そうな顔をしていた。
恐らくなぜ出されたのか分からないからだろう。

ユウキ 「ラルトス、この技を覚えるんだ」

ラルトス 「?」

俺は秘伝マシン5『フラッシュ』を取り出し、ラルトスの頭にくっつけるとディスクは光だしラルトスへとフラッシュの情報が流れ出す。

ラルトス 「…フラッシュですか」

ラルトスは俺が言ってもいない技の名前を言う。
技のセットは成功だな。

ユウキ 「ありがとう! 俺、行くから!」

俺は装置とディスクをバッグに入れるとラルトスを肩に乗せ洞窟の奥へと進んだ。


『同日 某時刻 石の洞窟地下1階』


ユウキ 「…て、本気で真っ暗かよ」

地下一階に降りた途端にいきなり別世界だった。
真っ暗で何も見えない…。

ユウキ 「だが、こんなことで俺は屈しない!」
ユウキ 「ラルトス! フラッシュだ!」

ラルトス 「…いいんですか?」

ユウキ 「あん?」

いきなりラルトスはそんなことを聞いてくる。
良いも悪いも光が無きゃ前に進めんだろうに…。

ユウキ 「なんでもいいからフラッシュだ!」

ラルトス 「…分かりました」

そう言うとラルトスは突然眩く光りだす。
…て、いうか。

ユウキ 「眩しすぎ!!」

俺は速攻ラルトスを地面に降ろす。

ラルトス 「だから言ったのに…」

ユウキ 「う、迂闊だったよ…」

俺はラルトスを肩から降ろした後そのままフラッシュの光を頼りに歩き出すのだった。





ユウキ 「…しっかし、広い洞窟だな」

現在地下一階を歩いて三十分位経つが一向に景色は変わらない。
ついでにダイゴって人も見つからないし。

ラルトス 「そうですね」
トテテテテテ…

ユウキ 「………」

ラルトスはさっきから早足で俺に着いてきていた。
ラルトスと俺では体格差がありすぎる。
俺の一歩はラルトスの5歩にも6歩にもなった。
なんか…辛そうだ…。

ユウキ 「よっと!」

ラルトス 「え?…て、わわっ!」

俺はラルトスを持ち上げるとそのまま肩に乗せた。

ラルトス 「マスター大丈夫ですか!? 眩しくないですか!?」

ラルトスはいきなり俺の心配をする。
つくづく優しいやつだな。

ユウキ 「あのままじゃラルトスが大変だろ? そのまま乗ってろ」

実際は滅茶苦茶眩しいんだがこれもトレーナーの務めということで納得してもらう。
まぁ、ラルトスには世話になりっぱなしだしな。

ラルトス 「マスター…ありがとうございます」

ラルトスは感無量といった顔で俺の顔を見る。

そのまま俺たちは洞窟をさまようのだった。



……………。



ラルトス 「…! マスター、あれ」

ユウキ 「あん?」

突然ラルトスがある方向を指差したのでそっちを向くとそこには。

ココドラA 「ココ!」

ココドラB 「ココー!」

そこにはココドラが4匹いた。
何やら三匹が一匹にケンカを売っているようだ。

ユウキ 「ケンカに多対一は基本だけど汚いな…」

俺はケンカの仲裁に入ろうとするが途中であることに気付く。
ケンカ売られているあの一匹って…朝会ったあいつじゃないのか?

そう、三匹のココドラ相手にケンカを売っているココドラは朝会ったのと同じように目が赤色で腹が青っぽかった。
他の三匹は目が青で腹は黒っぽいのに。

ココドラ(赤) 「ココー!!」

ココドラ達 「ココー!!」

一触即発…そう思った矢先いきなり赤目のの方のココドラがココドラA(仮名)に体当たりする。
それをきっかけに大乱闘が始まる…。
…だろうがそこで俺は。

ユウキ 「ラルトス! 『ねんりき』だ!」

俺はラルトスに三匹の内一匹に『ねんりき』を放たせる。
コイツの『ねんりき』は並じゃないぜ…。

ココドラB 「ここ〜?」

ユウキ 「へ?」

ラルトスの『ねんりき』を食らったココドラBは全く効いていない様子。
ていうか効果なしに等しい?

ココドラ達 「ココ〜…」

ユウキ 「げ…」

ラルトス 「わわ…」

攻撃目標がこっちに変わった模様…ヤバァイ。

ココドラ(赤) 「ユウキ!? ココ!」

ユウキ 「え!?」

突然ココドラが俺の名前を呼ぶ。

ココドラ(赤) 「ココー!」

そして、ココドラは何処かへと走っていってしまう。

ラルトス 「マスター! あのココドラについていきましょう!」

ユウキ 「お、おう!」

俺はラルトスに従いココドラの後を追い、一目散にその場から逃げ出した。



………。
……。
…。



ユウキ 「はぁ、はぁ…撒いたか」

俺たちは地下2階まで来た。
途中までココドラ達に追いかけられていたが何とか逃げ切れたようだ。

ココドラ 「ユウキ! ココ?」

ユウキ 「ああ、ありがとなココドラ」

結局助けるつもりが助けられちまったな。

ラルトス 「ココドラさん、どうもありがとうございました」

ラルトスもぺこりと行儀良くお辞儀する。

ココドラ 「ココ!? ココ!」

ラルトス 「え!? いきなりなんですか!?」

ユウキ 「あ、あんだ?」

突然ココドラがラルトスに食い下がってきたようだ。
一体どうしたってんだ?

ココドラ 「コココ! ココ!?」

ラルトス 「な!? 違います!」

ココドラ 「ココ!」

ラルトス 「な!? 僕は男です!」

ココドラ 「ココ!? ココ…」

ラルトス 「とにかく僕はユウキさんの恋人じゃないし女の子でもないです!」

ユウキ 「…何言ってるか全然分からん」


さて、この会話で全てを把握できた人はいないと思うからここからココドラの台詞も翻訳して読み直しましょう。


ユウキ 「はぁ、はぁ…撒いたか」

俺たちは地下2階まで来た。
途中までココドラ達に追いかけられていたが何とか逃げ切れたようだ。

ココドラ 「ユウキ! 大丈夫?」

ユウキ 「ああ、ありがとなココドラ」

結局助けるつもりが助けられちまったな。

ラルトス 「ココドラさん、どうもありがとうございました」

ラルトスもぺこりと行儀良くお辞儀する。

ココドラ 「んん!? アンタ何者!」

ラルトス 「え!? いきなりなんですか!?」

ユウキ 「あ、あんだ?」

突然ココドラがラルトスに食い下がってきたようだ。
一体どうしたってんだ?

ココドラ 「なんでユウキの肩に乗ってんのよ! 恋人!?」

ラルトス 「な!? 違います!」

ココドラ 「可愛いからっていい気になるんじゃないわよ!」

ラルトス 「な!? 僕は男です!」

ココドラ 「ええ!? そんな…あたしより可愛い顔してるのに…」

ラルトス 「とにかく僕はユウキさんの恋人じゃないし女の子でもないです!」

ユウキ 「…何言ってるか全然分からん」



………。



ユウキ 「…つまり、ラルトスを女の子と思って俺の恋人か何かと勘違いしたと?」

ココドラ 「ココ…」

ココドラは勘違いしたことをわびたいような顔をしている。

ユウキ 「かったる…」

ラルトス 「まぁ、そう言うことです」

ユウキ 「まぁ、別にいいさ、間違えたのは俺だってそうだし」

俺もラルトスを最初は女の子と思ったからほかにも出ると思ったが案の定だな。
この先、何人間違えるやら…?

ラルトス 「マスター、それより早く当面の人探しましょう」

ユウキ 「ん? ああ、そうだな」

ココドラ 「ココ?」

ココドラは何のことかという顔をしてこっちを見てくる。

ユウキ 「ダイゴって言う人を探しているんだが…知ってるか?」

一応ココドラにも聞いておく。
知ってたらもうけものだな。

ココドラ 「ココ! コココ!」

ラルトス 「ダイゴかどうかは分からないけどこの先にひとりの男が向かったって言っています」

ココドラ 「ココ!」

ラルトス 「案内してくれるそうですよ」

ユウキ 「そうか、じゃ、ういういよろしく頼む」

ラルトス 「ういうい…?」

ココドラ 「ユウキ! ココ〜」

ココドラは真っ暗な石の洞窟を先導して歩く。
これで正解なら大ラッキーだな。





………………。





その後俺たちは来た道とは別のルートから地上一階へと上がる。

ココドラ 「ココ!」

ラルトス 「もうすぐだそうですよ」

ユウキ 「やっとか」

もう既に石の洞窟に入って1時間くらいは確実に経とうかという頃合やっと着いたとのことだった。

ユウキ 「あの天井の空洞…最初のところか?」

そこから天井を見ると最初にこの洞窟で見た天井の崩れた跡そっくりの穴があり、真上に来た太陽の光がギンギンに俺を照らしていた。
中は風も通らず光もない肌寒い世界だったが、太陽の光を浴びれば暑いくらいだ。

ココドラ 「ユウキ! ココー!」

俺が立ち止まって空の太陽を見ていると、随分進んだところからココドラが俺を呼んでいた。

ラルトス 「いきましょうマスター」

ユウキ 「ああ、そうだな」

俺は走ってココドラの後を追っていくとやがて先に自然に出来た部屋があった。
どうやらそこがゴールのようだった。
俺はドアも何も無いその空洞とも呼べる部屋へと入った。


中に入るとそこにはひとりの男の人がいた。
今は夢中で石を調べている。
真後ろにいる俺には気が付いていないようだ。

ユウキ 「あの…」

? 「! 君は…?」

俺が声をかけると男の人はゆっくりと立ち上がりこちらを向いた。
真正面から立って見てみるとその人はなかなか身長は高かった。
170位はあるだろうか、年齢は顔だけ見れば20代だな。
そして、顔はとても特徴的な顔。
目が割とパッチリしていて大きくすらっとした綺麗な顔立ち。
そして、明らかに誰かさんに似た顔…。
…ツワブキ社長だ、血縁の者としか思えない…。

ユウキ 「俺、ユウキって言います、あなたがダイゴさんですか?」

ダイゴ 「そう、僕がダイゴだけど?」

ユウキ 「あの、これ…」

俺は向こうがダイゴさんだと分かるとバッグからツワブキ社長より預かった手紙を渡す。

ダイゴ 「…成る程、わかった」

ダイゴさんは一通り手紙を読み終えるとそれを持ち合わせたバッグに入れて後片付けを始めた。

ダイゴ 「君は見た所ポケモントレーナーのようだけど?」

ユウキ 「はい! 俺はポケモントレーナーです、現在ポケモンリーグチャンピオンを目指しています」

ダイゴさんはそれを聞くと少し目を鋭くする。
俺、なんかまずい事言った?

ダイゴ 「成る程…君ならなれるかもしれないね…」
ダイゴ 「僕は見ての通り石集めが趣味の男さ」

ダイゴさんはそう言ってこの洞窟で見つけたであろう石を俺に見せてくれる。
しかし、すぐにダイゴさんは片付けてこの洞窟を出て行こうとする。

ダイゴ 「そうだ、折角あった記念だ、これをあげるよ」

ダイゴさんはそう言ってある一枚のディスクを渡してくる。
技マシンだ。

ユウキ 「これは?」

ダイゴ 「技マシン47、中身は『はがねのつばさ』さ」
ダイゴ 「僕の好きな技さ」

ダイゴさんはそう言うと『それじゃ』とこの洞窟を去っていった。

ユウキ 「『はがねのつばさ』か…」

はがねのつばさは鋼の翼。
鋼タイプの技だが覚えるのは飛行タイプだ。
翼を一時的に鋼のように硬くして攻撃するつばさでうつの変化技だ。
また、稀に攻撃時のみしか上がらない防御力が1戦闘分くらい継続されることもある。
飛行タイプが覚える技として岩タイプにも効果大なところから優秀な技だ。

ラルトス 「それって僕にも覚えられるんですか?」

ラルトスは技マシンを見てそう言う。

ユウキ 「そいつは無理だよ、こいつを覚えられるのは今はスバメくらいさ」

俺がそう言うとラルトスはなぁんだといった顔でこの技マシンを見る。
覚えられるなら覚えたかったのか?

ユウキ 「ま、なんにせよこれで一つやることが少なくなったわけだ」

ラルトス 「あとはカイナですね」

ユウキ 「ああ、それじゃ俺たちも行くか」

ラルトス 「はい」

ココドラ 「ココ!」

ユウキ 「て、え?」

ココドラ 「コ?」

ココドラだ、いままでずっと一言も喋らないから気が付かなかったが、いたのか。

ココドラ 「ココ! ココ!」

ココドラは何かを俺に訴えかけていた。
もしかしてついてきたいのか?
俺はそう思いラルトスの方を向くと。

ラルトス 「………」(コクリ)

ラルトスは無言で頷く。
やはりか…しかし。

ユウキ 「ココドラ…仲間にしてやってもいいがふたつ条件がある」
ユウキ 「ひとつは仲間と仲良くしろ」
ユウキ 「ふたつは今手持ちポケモンが満杯だからモンスターボールに入れてボックスにいてもらう」
ユウキ 「この条件をのめるか?」

ココドラ 「ココ!」

俺はちょっと厳しい口調でそう言うがココドラはオールオッケーといった顔で頷く。

ユウキ 「よし、だったらこれにはいってもらうぞ」

俺はバッグからスーパーボールを取り出してココドラのおでこに当てる。
モンスターボールでないのは今モンスターボールが無かったからだ。
今度買っとこ…。


ボフゥン!

そして、スーパーボールでも変わらずいつもの機械的音がする。
ゲット成功だ。

ユウキ 「ラルトス…もどれ」

ラルトス 「………」

俺はラルトスのボールを取り出すとそれにラルトスを戻す。

ユウキ 「ふう…」

今日は疲れた…。
まだ昼頃だというのに俺の体は疲労困憊(こんぱい)だった。
やっぱ、ジム戦の後すぐにやることじゃないな。
俺は疲れた体を押してさっさとこの石の洞窟を去るのだった。

ユウキ 「ゆっくりしたいけどそんな時間はないんだよなぁ〜…」




ポケットモンスター第9話 「ジム戦そして…(後編)」 完






今回のレポート


移動


ムロタウン→石の洞窟


10月3日(ポケモンリーグ開催まであと149日)


現在パーティ


ヌマクロー

グラエナ

ラルトス

スバメ

キノココ

ツチニン


見つけたポケモン 17匹

ワンリキー



おまけ



その9 「噂(?)のあの人」




あ、さてさて今回は趣向が変わってあの人物。
知っている人は知っているポケモンチャンピオン。
それでははじまりはじまり〜。



ダイゴ 「さて、一旦トクサネシティにでも帰るかな」

僕はムロの浜辺に来るとそう思ってモンスターボールのひとつを取り出した。

エアームド 「エアー!」

モンスターボールからは僕のお気に入りのひとつエアームドが出てくる。
『そらをとぶ』が使えるから船を使う必要が無い。

ダイゴ 「けど、一日で行けるわけじゃないからな」

そこで僕はカイナ、ヒマワキ、ミナモ、そしてトクサネと行くルートを選んだ。

ダイゴ 「いくぞエアームド、トクサネだ」

エアームド 「エアー!」

僕はエアームドの背中にまたがるとエアームドは羽ばたいてその鋼の体を宙に浮かす。
そして、エアームドはものすごいスピードでムロを離れる。

ダイゴ 「彼…ユウキ君て言ったかな」

僕は空の上にいてふと考え事をすると彼の顔が浮かんだ。

彼…ユウキ君て言うそうだけどなかなか面白い少年だった。
この時期にまだムロにいるのにポケモンチャンピオンを目指すなんて無茶だけど彼ならやりそうだ。
ま、根拠は無いんだけどね。
僕の勘はあたるんだ、僕の勘によると彼はポケモンリーグチャンピオンになれるな。
でも、その上はどうかな…。

ダイゴ 「ま、僕には関係の無いことだけど」

僕はこのときふとムロタウンの方を向いた。
もう既にムロタウンは見えないけど彼はまだムロにいるだろう。
僕にとってどうでもいい人物のはずなのにどうにも気になった。

ダイゴ (結局、僕が一番強くて凄いんだよね)



おまけその9 「噂(?)のあの人」 完


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