ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第21話 『奇妙な午後の授業』





ユウキ 「………」

アスナ 「………」

カリカリカリカリ…。

ここはジムから少し離れたアスナの家。
何気に一人暮らしの割には3LDKのちょっといい家。
しかし、一人暮らしには広いと思うのだが?
元は家族で暮らしていたりしたのだろうか?

ちなみに今はアスナの個室で勉強を見ている状態。
とりあえず、適当にアスナが持っていた問題集をやらせている。
まず、実際のところのアスナの学力を知りたいからだ。

カリカリ…ピタッ。

ユウキ 「…?」

突然アスナの手の動きが止まる。
そしてシャーペンの消しゴムを顎に当てる。

ユウキ (アスナがやっているのはたしか数学だったよな?)

俺はこっそり止まった部分の問題を見る。

ユウキ (数列…げっ、フィボナッチか…)

アスナは今数列の問題を解いていた。
とまった所はフィボナッチ数列と呼ばれる、大学レベルの問題だった。

ユウキ 「公差は1、2、3…て、簡単じゃないか…」

公差と言うのは簡単に言うと前の数字から+される数字だ。
例えば1の次の数字が2なら公差は1。
次の数字が4なら2だ。

アスナ 「…あ、そうか!」

アスナはしばらく悩んだ後何かに気付いたように再び手を動かし始めた。
いくらなんでも大学入試レベルでフィボナッチなんてそう出るもんじゃないがな…。
最近の参考書は難しくなったもんだ…。
…つっても俺今まで使ったことないけど…。

アスナ 「次はΣか…」

ユウキ (シグマか…、って、レベル下がってんじゃん!)

ちなみにシグマは基本的に数列の和を求める時に使うものだ。
今アスナがやっている問題は…。

 次の数列の和と求めよ。

Σ6より19=(k2乗+4k)。

ユウキ (…147か…)

俺は公式を使って暗算し、答えを出す。
さすがに同時に始めたら暗算を使った分アスナより俺の方が早く答えが出たようだな…。

アスナ 「む…」

しかし、アスナは見事にここで行き詰まる。
おいおい…なんでこっちは出来ないんだ?
同じ数列なのに…。

アスナ 「む!」

カリカリカリカリ!

アスナは何やら閃いたらしく、答えを書き出す。
アスナの答えは132…。
て、おい!

ユウキ 「答え間違えているぞ?」

アスナ 「え!? 本当!?」

ユウキ 「{6分の1×(19k+1)(2(19)k+1)+4×2分の1×}−{6分の1×(5k+1)(2(5)k+1)+4×2分の1(5K+1)}」
ユウキ 「さっきの導入してみ」

アスナ 「…む?」

アスナは目をぽかんとしている。
公式が理解できなかったのか?

ユウキ 「…どうした?」

アスナ 「ごめん、もっかい言って」

ユウキ 「………」


結局、アスナは公式を一から聞いて覚える羽目になるのだった。
かったるいな〜…。
まぁ、何とかなるかな…?



………。
……。
…。


ユウキ 「……」

俺はとりあえず答え終わった問題集の採点をしていた。
とりあえず、国語、数学、英語、理科、社会の基本5科目の採点だ。

アスナ 「先生…どう?」

アスナはあまり自身無げに聞いてくる。

ユウキ 「悪くは無いが…1流を目指すには辛いな…」

採点は国語69点、数学71点、理科48点、社会61点、英語85点だ。
基準としてALL75はほしかったがやはりそうはいかないらしい。

アスナ 「…やっぱり〜…うう〜」

アスナはかなり落ち込む。
まぁ、この時期にこれじゃ仕方ないか…。

ユウキ 「だけど、要領がいい…計算式とかは割とパッと計算していたし、応用も利いている」
ユウキ 「あとは基礎だな…先走りすぎて足元がおろそかだ」

アスナ 「むぅ〜…」

アスナはしかめっ面、俺が採点した問題集を見る。

ユウキ 「心配しなくていいさ! 何とか合格させてやる!」

俺はそう言ってドンッと胸を叩く。
こう言う時は気持ちを下にやっていては出来る物も出来なくなる。
上を目指すなら心だけでも上に持っていかないとな、中途半端が一番怖い。

アスナ 「ねぇ、先生って勉強はどうやってやっていたの?」

アスナは椅子に腰掛けたままそう聞いてくる。

ユウキ 「どうって、数学とかは公式を覚えただけだし、社会とか理科なんて読み飽きた本みたいなもんだからな」

実際、幾度と無く国語、理科、社会の本は読んだものだ。

ユウキ 「英語は気がついたらだった…」

アスナ 「はぁ…やっぱり天才は違うってことかぁ〜…はぁ」

アスナはそう言ってため息をつく。
人は俺を天才って言うが、それもひとえに修練の成果なんだがな…。
要領の良さも天才の内か。

ユウキ 「とりあえず、対策集でも作るか…」

俺はそう言うと、ルーズリーフにアスナ用入試対策参考書の作成に取り掛かろうとする。

アスナ 「ちょっと待った」

しかし、そこでアスナにちょっと待ったがかかる。
一体なんだ?

アスナ 「とりあえずご飯にしよ?」
アスナ 「もう、真っ暗でおなかペコペコだし…」

アスナは苦笑しながらお腹を抑え、窓を見る。
そういえば、ジム戦をやったのが正午、その後昼ご飯を食べた後、早速勉強だった。
晩御飯のこと…すっかり忘れてた。

ユウキ 「腹が減っては戦は出来ぬっていうしな…」

さすが、このままぶっ続けてやるのはどうかか…。
俺も腹減ったし。

アスナ 「あはは、早速用意するから先生は待っててね♪」

アスナはそう言うと足早にキッチンに向かった。
ちなみに俺は自慢じゃないが料理はド下手だ。
はっきり言って人の食えたものは到底作れない。

それに対して、アスナは料理は得意なようだ。
さすがに一人暮らししている者はちがう…。

ユウキ (昼のあれ…うまかったもんな)

ちなみに昼はアスナの作ったチャーハンを食った。
手っ取り早くってんで作ったらしいが、本当に美味しかった。
あんまり食ってると自分の作った飯が食えなくなること受け合いだな。

ユウキ (…もともと食えないけど…)

そんな風にいつも通り自分に突っ込みを入れながら俺は晩御飯を待つのだった。


………。
……。
…。


アスナ 「さ、召し上がれ♪」

そして、夜10時を回った頃、俺たちの晩飯は始まった。

ユウキ 「おお、美味そうだな、いただきます!」

俺は手を合わせてそう言うと、早速アスナに盛ってもらった白ご飯を食べた。

ユウキ 「うむ! うまい!」

アスナ 「あはは、大げさだよ、こんなの誰にだって作れるよ」

俺は大きく頷きそう言うとアスナは笑いながら誰にでも作れるという。
俺には無理だな…。
俺は心の中でそう呟くと、次はおかずに箸を伸ばすのだった。

ちなみにおかずはサラダに魚の煮物と味噌汁の3品だ。
どれも簡単そうだが、奥が深く、作り手によって大きく味が変わる。
俺が作ると最悪だな…。

ユウキ (アスナのだとどれも美味いよな〜…)

俺は心の中でそう思い、頬張るのだった。


………。
……。
…。


ユウキ 「ふぅ…ご馳走さま」

アスナ 「お粗末さまでした♪」

俺は食い終わると再び手を合わせてそう言う。
アスナはこの時は終始笑顔だ。
料理が好きなのかな?

アスナ 「でも、先生、あんまり食べないね…」
アスナ 「もうちょっと食べないと身長もきっと伸びないよ?」

アスナは食べ終わった食器を片付けながらそう言った。
確かに俺はあまり食べないかもしれない。
基本的にはおかわりはしない人間たから必然とあまり食わない。
おかげで身長はアスナより低かったり。
まぁ、俺はこれから伸びるけど…、まだ14だし…。

アスナ 「後で一緒にお風呂入りに行こうね♪」

ユウキ 「うん? ああ…?」

アスナ 「〜♪」

アスナは食器を持って立ち上がると鼻歌交じりで台所に向かった。
ちょっと待てよ…一緒にお風呂入りに行こうって…。

ユウキ 「この家…風呂無いのか?」

とてもそんな風には見えないんだが?


…………。
………。
……。



ユウキ 「…なぁ〜んで、家の風呂を使わないんだ?」

アスナ 「ん? だって、それだと水代かかるじゃん」

俺たちは飯を食べ終わった後、ポケモンセンターに向かった。
そりゃ、ポケモンセンターの温泉は無料だけどな…。

アスナ 「風呂上りのコーヒー牛乳も格別に美味しいしね♪」

アスナは両手に着替えを抱えたままそう言った。
コーヒー牛乳は有料だが…節約しているのじゃないのか?

ユウキ 「いまいちわからん…」

アスナ 「ん? なにが?」

ユウキ 「…いや、なんでもない」

アスナ 「なにそれ、気になるって」

アスナそう言いながら笑って詰め寄った。
…こう言うところは子供みたいだな。

ユウキ (勉強から離れたらこんなに笑って楽しそうに出来るのに…なんだかもったいないな…)

俺はふとそう思った。
俺が学生時代は楽しいことなんてひとつもなかったものだ。
それが、アスナを見ると実に楽しそうだ。
まるで俺そっくり感じたのが嘘のようだった。

ユウキ (どっちが本当のアスナなんだろうな…)

いや、きっとアスナは本当とか嘘とかは無いんだろう…。
どっちも純粋に自分を出しているんだ。
…俺とは違う。
どんなに同じに感じても結局は別の人間…同じはずなど無いか…。

アスナ 「着いたよ」

ユウキ 「ん…」

俺たちは家から徒歩10分程でポケモンセンターに着く。
さすがに時間帯が時間帯だから人はほとんどいないな…。


お姉さん 「あら、アスナさん、今日は遅かったのね?」

アスナ 「うん、ちょっと色々あってね♪」

アスナはポケモンセンターに入ると昼のお姉さんに軽い挨拶を交わす。
今日は…てことはもしかして常連か!?

お姉さん 「ユウキさんも来ていたのですね、でもどうしてアスナさんと一緒に?」

ユウキ 「蛇の道は蛇…ですよ」

俺はそう言うと、更衣室の方へと向かった。

アスナ 「先生…」

ユウキ 「どうした?」

突然更衣室の前にくるとアスナが服の裾を引っ張る。

アスナ 「混浴に入ってみる?」

ユウキ 「…ぶっ!!?」

思わず吹いてしまう。
急にアスナが真面目な顔をしたと思って何だと思ったらとんでもないことを…!?

アスナ 「あははっ! 冗談だよ♪ だってここ混浴はないもん♪」

アスナは大きく高笑いするとそう言って、更衣室に入った。

ユウキ 「遊びやがったな…かったる」

俺はボソッとそう言って更衣室に入るのだった。
ああいう冗談はマジでかったるいっての…。


…………。


ユウキ 「ふぅ…」

俺は貸切の温泉で一息ついていた。
空には真ん丸の月が浮き、空気がわりと綺麗なのか星々が多くみられた。
さすがに時間帯が時間帯だから誰もいない。
まぁ、そっちの方が気楽でいいけど…。

アスナ 「せ〜んせい!」

ユウキ 「は…?」

突然横からアスナの声がする。
振り向くと、3メートルくらいある板の上からアスナが顔を出していた。

ユウキ 「て、おい…どうやってそこにいる?」

ありえない…普通覗けないように板を高くしているのに、アスナは遊々それを超えてこちらを見ている。

アスナ 「先生流に言えば、蛇の道は蛇かな?」

ユウキ 「…さよか」

要するに知らぬが仏と言うことか…。

アスナ 「…やっぱりこうやってみると先生って子供だよね〜」

ユウキ 「当たり前だろ…」

アスナは18、俺は14。
当たり前だが子供だ。
てか、それがどうしたっていうんだ?

アスナ 「…う〜ん、でも精神年齢が高いみたいだしな〜…」
アスナ 「ちなみに、その白髪、染めてるの?」

ユウキ 「いや、地毛だ」

俺は顔だけ湯船から出し、そう答える。
生まれつき白かったんだから仕方が無い。
このせいでよく年齢を間違えられたものだ。

アスナ 「へぇ〜、めずらしいね」

ユウキ 「まぁな」

アスナ 「……」

ユウキ 「……」

それっきり会話は続かない。
まぁ、静かでいいわな…。

アスナ 「先生〜冷静すぎてつまらないね〜」

ユウキ 「はぁっ?」

さすがにその言葉にアスナの方を見るとアスナは本当につまらなそうにしていた。
どういうことだ?

アスナ 「…もし、これ以上あたしの体が持ち上がったらどうする?」

ユウキ 「…それで?」

正直意味がわからない。
どういうことだ?

アスナ 「もー! 鈍いな! つまりこう言うこと!」

アスナはそう言うと更に板の上に体をもち上げる。
そして、そのままアスナの裸体が…て、ヲイ!

ユウキ 「ちょ、ちょっと待て!」

俺はさすがに焦って止める。
さすがにそれはまずい!
後もうちょっとでアスナのいたいけな裸体を拝んでしまう所だった…。

アスナ 「あはは! 先生純情〜♪」

アスナはそう言ってまた高笑いするとそのまま板の向こうに消えてしまう。
また、遊ばれた…?

ユウキ 「…かったるい」

アスナ 「クシュン! あ、はは、あたしもう上がるね♪」

女風呂の方からアスナのクシャミが聞こえた。
いくらこっちは暖かいからって裸のまま風呂場であんなことしてたらな…。

ユウキ 「俺も上がるか…」

対して、俺はずっと湯船に使っていたわけだな…。
入りすぎてのぼせそうだ…。


………。
……。


アスナ 「…んぐんぐ…ぷはぁ!」

ユウキ 「ふぅ…」

俺たちは風呂から上がると、更衣室前に当然のようにある自販機で紙パックのコーヒー牛乳を買って飲んでいた。
ちなみに俺は買っていない、買ったのはアスナだけだ。

アスナ 「半分飲む?」

ユウキ 「いるか…つーかそれだったらもう一本買うって」

さすがに関節キスはまずい。
…てか、これ以上からかわれてたまるか…。

アスナ 「だったら奢ってもらおうかな?」

ユウキ 「おい…」

アスナは自販機を見てそう言いだす。
黙っていたら本気で奢らす気だ…。

アスナ 「これ、あげるから奢ってくれない?」

ユウキ 「いらん! そして奢らん!」

俺はきっぱりそう言う。
てか、そんな気は無いし…。

アスナ 「ちぇ、2本飲めるチャンスだったのにな」

奢らせる気満々だったのか…。

ユウキ 「ま、とりあえず大学合格したら、その時いくらでも奢ってやるよ」

アスナ 「もう! あたしは物に釣られたりはしない!」

さすがにアスナは顔を膨らませそう言う。
物で釣るというか、そういうつもりはないんだがな…。

アスナ 「でも…」

ユウキ 「ん?」

アスナは少し考えるようにして…。

アスナ 「どれ位奢ってくれるかな?」

ユウキ 「…ふ、俺の予算内ならな」

思わず苦笑してしまう。
結局、アスナはそんな欲が出る。
でも、それはいいことだろう。

アスナ 「じゃあ、というわけでもう一杯飲んでから帰ろっと」

アスナは結局飲むらしく、100円硬貨を投入し、コーヒー牛乳を買った。


………。
……。
…。


アスナ 「あ〜あ、なんでだろ」
アスナ 「入試に落ちてへこんだ所なのになんか急に楽しくなっちゃたな…」

アスナは帰り際空を見上げながらボソッと言った。
ふ…楽しいか…。
なんでか、こんな時間が俺も楽しく思えた…。

ユウキ 「…これからどうすればいいだろうかな…?」

アスナ 「これから…? あ、そうか…」

アスナは俺のこれからと言う言葉を聞くと、そうかという顔をする。

アスナ 「先生はポケモンリーグを目指しているんだっけ…」
アスナ 「あたし…足止めしてる…」

アスナは申し訳ないといった顔で俯く。

ユウキ 「気にしなくていい…俺が勝手にアスナの手伝いをしているだけだ…」

そう、俺が勝手にやっているだけ…。
結果的にそれが俺を苦しめているのもわかる。
だが、それがわかってやっているんだ…後悔も何もありはしない…。

アスナ 「でも…」

しかし、アスナはどうしても納得がいかないようだった。

ユウキ 「…今日はもう遅いし、早く寝た方がいいな…」

アスナ 「うん…」

それから、アスナも俺も何か気まずく感じてしまう…。
それっきり、家に帰るまでは無言だった…。



…………。
………。
……。



ユウキ 「……」

カリカリカリカリ…。

俺はアスナの家に着くとリビングで晩飯前に作ろうと思っていた参考書の創作に取り掛かった。
だが、持ち運びを考えてルーズリーフから普通の大学ノートに変更。
大体、どんな学校でも通じ、アスナに特に理解しやすいように製作する。
勉強に必要なことは理解すること…それができなければ何も出来ない。
そして、その実戦。それを経て人ははじめて理解する。

ユウキ (大学は就職と違って斡旋じゃない…チャンスはいくらでもある…)
ユウキ (問題は時間だ…より確実な成果をあげるにはそれ相応の時間がいる…)
ユウキ (場合によっては今年のポケモンリーグは諦めないといけないかもしれない…)

俺はノートの創作をしながら考えていた。
…どうやら俺でも一度決めたことに未練はあるらしい…。
今更ながら、後先を考えてしまうとはな…。

ユウキ 「…いや、今はアスナのことを考えておこう…」

とりあえず、今はアスナのことを優先しておく。



……………。



アスナ 「……眠れない」

あたしはパジャマに着替え、ベットに寝転ぶも全く眠れる様子はなかった。
なんでか原因はあたしもわかる。
気が昂揚しているんだ…。
先生…これからどうするんだろ…。

アスナ 「…はぁ」

思わずため息をついてしまう。
正直、こんな事態考えてもいなかっただけにどうしたらいいんだろう…。

アスナ (…やだな…あたしが先生の足止めしているなんて…)

だからこそ早く…先生を安心させないと…。

アスナ 「……」

あたしは少し考えるとベットから起き上がり、リビングの方へ向かった。
とりあえず、冷えた水が欲しい…。



…………。



アスナ 「あ、先生…」

ユウキ 「アスナ…起きていたのか?」

先生はテーブルの上で何やら大学ノートに書き込みを入れているようだった。
まだ、眠ってなかったんだ…。

アスナ 「先生…まだ起きてたんだ…」

ユウキ 「まぁ、仕方ないさ…」
ユウキ 「仕事を受けたからにはちゃんと全うする、それが俺の信条だしな」

先生は再び机に向かった。
真面目なのはわかるけど…。

アスナ 「でも、いくら先生でもやっぱり子供なんだから無理はしちゃダメだよ」

ユウキ 「む…?」

アスナ 「それに、子供は夜更かししちゃダメなんだよ?」

あたしは少し強めにそう言うと先生は少し顔を顰(しか)める。
子供っていうの気にするのかな?

ユウキ 「…わかったよ、もう少ししたら眠る」

先生は再び鉛筆を動かすと、そう言う。

アスナ 「だめだよ、今すぐ寝るの!」

ユウキ 「なっ!? ちょっと!」

あたしは少し強引に先生を後から抱き寄せる。
先生は可愛く、耳を真っ赤にして抵抗するが、すぐに無駄とわかり抵抗を止める。

アスナ 「先生…もうちょっと気楽にいこ…」
アスナ 「あたしはあたしで何とかするからさ…」

ユウキ 「……」

先生は何も言わない。
次第に先生の体から力が感じられなくなる。
あたしに身を委ねる…と言うわけでもなく、ただ、瞑想するように静かになってしまった。

アスナ 「先生…明日は遊びに行ってみよっか?」

ユウキ 「………」

アスナ 「……寝ちゃった?」

先生はピクリとも動かない。
本当に眠ってしまったのだろうか?
それとも狸寝入りなのだろうか?

どちらにしてもなので、とりあえずキッチンの蛇口の水を一杯飲むと毛布を先生にそっと掛けるのだった。



ユウキ 「…俺はアスナを考え、アスナは俺を考えるか…」




ポケットモンスター第21話 『奇妙な午後の授業』 完






今回のレポート


移動


フエンタウン


11月5日(ポケモンリーグ開催まであと116日)


現在パーティ


ラグラージ

グラエナ

サーナイト

コドラ

コータス

チルット


見つけたポケモン 39匹




おまけ



その21 「アスナの知力」




これはジム戦が終わってすぐの時のことである…。

ユウキ 「次の答え言ってみ」
ユウキ 「冠位十二階や憲法17条を制定した人物は?」

アスナ 「えと…聖徳太子?」

ユウキ 「正解、次だ…」
ユウキ 「体長58メートル、体重600トンと言えば?」

アスナ 「……ぼ、ボ○○ス…」

ユウキ 「…正解だ、次いくぞ」

アスナ 「ねぇ…今のは関係ないんじゃない?」

ユウキ 「……」

………。

ユウキ 「…そんなことない」

アスナ 「今の沈黙は何?」

ユウキ 「次の問題だ!」
ユウキ 「劇場版ミュウと波動の勇者○○○○」
ユウキ 「…はなにか?」

アスナ 「…ルカリオ…」

ユウキ 「ですが、…その作品の登場キャラクター『アーロン』の声優は?」

アスナ 「…わかりません」

ユウキ 「ふむ」

アスナ 「てか、これ絶対おかしいよ…」
アスナ 「なんでそんなネタが出てくるわけ?」

ユウキ 「大学に合格するためには一般常識も持っておけ」

アスナ 「…絶対一般常識じゃない…」

ユウキ 「口答えは許さん」
ユウキ 「次はこれだ。『Eternal Fantasia』、聖魔 悠の後の名は?」

アスナ 「やっぱりおかしいよ! こんなの絶対出ないもん!」

ユウキ 「うるさい、だまれ」

スパァン!

アスナはどこから持ってきたのかハリセンでいい音を立ててユウキに殴られる。

ユウキ 「口答えは許さん」

アスナ 「うぐぅ…」



おまけその21 「アスナの知力」 完


ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system