ポケットモンスター サファイア編




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第24話 『ああ…砂地獄』





『11月8日 午前5時12分 フエンタウン とある広場』


ユウキ 「ふぅ、急にまた元の時間に起きれるようになったものだ」

ここ最近俺はいつも6時を過ぎた辺りに起きていたからな…やっと普段の時間に戻れたか。
ちなみに、俺は今、フエンジムから少し離れたところにある公園のような広場にいる。
以前、チルット達が三奏を結成して、歌った場所だな…。
結局、公認することになっちまった…。

ユウキ 「さて、出ろ! みんな!」

俺はモンスターボールを一斉に投げ、ポケモンを外に出す。

ラグラージ 「ラァ…ぐぅ〜…」

サーナイト 「うんん…?」

チルット 「何すか…こんな朝早くから…」

コドラ 「コド〜…」

モンスターボールから出てきた皆は実に眠そうだった。
まぁ、当然だろう、今日はいつも以上に早かったからな。

ユウキ 「最近、出来なかったがいつもの早朝トレーニングいくぞ!」

コータス 「コー!」

コータスは元気よく鳴いてくれる。
とはいえコータスも眠そうだった、まぁ、頑張ってくれるのは嬉しいことだ。

グラエナ 「…がう」

グラエナはいつも通り。
あまり眠そうには見えないが、内心は微妙だな…。
心なしが首が縦に揺れているように見える。

サーナイト 「早朝トレーニング…本当に久し振りですね…」

ラグラージ 「ラグ…」

ユウキ 「うむ、最後に行ったのはキンセツだったからな…」

思えばあの時までは野宿の時でさえも怠らずやったものだが。
アクア団とマグマ団の煙突山戦もあってすっかり忘れていたからな…。
しかも最近どっぷり疲れを体に残していたから、眠る時間は長くなっていたし。

チルット 「あの〜、ご主人様、質問があるっす」

ユウキ 「ん? どうしたチルット?」

チルットは手(羽根)を上げて、質問をしてくる。

チルット 「その、早朝トレーニングって何すか?」

ユウキ 「ああ、ポケモンバトルの訓練だよ、皆それを毎日やって強くなってきたんだ」

はっきり言って俺は特訓と言う物はやった覚えが無い。
日々の積み重ねさえあれば特訓など必要ないと思うし、実際こうやってここまで来た。

コータス 「コ〜、コ〜!」

ユウキ 「そういや、コータスも初めてだったな…」

コータスと出遭ったのはキンセツを出た後だ。
ラグ(当時ヌマ)の怪我もあってやる機会が無かったからな。

ユウキ 「じゃ、オーダーを言うぞ!」
ユウキ 「チルットとグラエナ対コドラ!」
ユウキ 「そして、サーナイトとコータス対ラグラージだ!」

俺はちょっと風変わりなオーダーを言うとチルットとコータス以外はきょとんとした顔をしていた。

グラエナ 「グ〜がう?」

サーナイト 「つかぬ事聞きますが、それは?」

ユウキ 「俺は最近ある戦いで、複数対1と言う勝負を見た」
ユウキ 「その時思ったんだ、俺たちはいつもフェアな一対一のバトルが出来るわけじゃないと…」
ユウキ 「だから、今回は実戦を想定したバトルを行う! お前等、すぐに行え!」

コータス 「こー!」

チルット 「何だか知らないっすけど…面白そうでやんす!」



……………。



チルット 「とりゃーっ!」

コドラ 「コドッ!」

ガキィン!!

グラエナ 「ガウッ!!」

コドラ 「コド! コドー!!」

ガキッ!

コドラは素早く攻撃してくる、チルットとグラエナの攻撃に防戦一方でいる。
しかし、コドラのあの装甲はあまりに厚く、チルットの飛行技やグラエナの悪技はまるで効いていなかった。

ユウキ 「……」

コドラの鋼と言うタイプはあまりに硬い。
加えて、コドラ自身相当の防御力を持っている。

対してグラエナは戦闘能力にはそれほど高いものは持っていない。
しかし、持ち前の冷静さと頭のよさで、『威嚇』の特性による攻撃力ダウンとふたりのあえて同時に攻撃させない戦略で戦っている。
チルットは未だに使える技は『みだれづき』、攻撃力の高い技が無く、苦労している。
それに、ただでさえまだ俺たちと共に来て日が浅い。
レベルもまだ低いんだ…。


チルット 「くそ〜、コドラさん硬すぎてこっちが参ってしまうっす」

グラエナ 「こうまで硬くなっているとは俺も予想外だな…」

俺たちは自分たち同士で戦うことからしばらく離れていたせいか、身内の実力が解らなくなっていた。
以前までのコドラ(ココドラ)はまだ、実力も浅く、俺ひとりで十分どうにかできたが、もうそうもいかなくなっていた。

グラエナ (悔しいが…俺はもうこのパーティにはついていけなくなってきているのかもしれないな…)

コドラ 「どうしたの? 疲れたわけ?」

コドラはその場から動かず、挑発するように言ってきた。

チルット 「どうするっす? グラエナさん?」

グラエナ 「攻撃させないという戦術はそろそろダメそうだ、コドラの性格ならカウンター狙いできかねん」

もし、コドラに攻撃を混ぜられたら確かにこちらの攻撃も直撃するだろうがそれはこちらも同じだろう。
どう考えても攻撃力と防御力が釣り合っていない、相手にとってはロウリスク、ハイリターンだ。

グラエナ 「…しゃあねえな」

チルット 「なんか思いついたっすか!?」

グラエナ 「チルット、これから俺の戦術を学べ、お前には俺の代わりになってもらう…」

チルット 「…え? それってどういうことっすか?」

グラエナ 「…これからの作戦だ、チルットは攻撃を加えながらコドラの目を引いてくれ」
グラエナ 「それから俺が攻撃を加える、そしたらお前の得意技をかませ」

チルット 「グラエナさん…さっきのは…?」

チルットは俺の作戦の前の台詞が余程気になるようだ。
しかし、俺はチルットを軽く睨み言う。

グラエナ 「二度は言わんぞ、行け!」

チルット 「は、はいっす!」

チルットは空を飛び、高低差を利用してコドラの反撃を受けないように攻撃を行う。

グラエナ (…たく、まだ若いってのにもう限界を感じるなんてな…)

自分の能力にじゃない、自分には自信がある。
だが、多極化する戦いの中で俺という存在が『使えなく』なってきている。
種族としてあまり強くないのも原因だ。
だから、俺はこの頭を手に入れた。
頭脳で戦えばまだ、何とかなると思ったからだ。
だが、結局そんな物はこのバトルでは無意味なのかもしれない。
強い者が残り弱い者は去るのみ…。

グラエナ 「…いくか」

俺はある種の覚悟を決めて、コドラに正面から突っ込む。

コドラ 「グラエナ!? あなたが真正面から!?」

グラエナ 「いくぜ! コドラ!」

コドラは突っ込んでくる俺に気付き、構えてくる。

コドラ 「あなたの攻撃なんてあたしに効かないこと位あんたならわかっているでしょうに!」

グラエナ 「さぁな…!」

俺はそう言うと一度大きな咆哮を行う。
これは『とおぼえ』、すでに5回行った。

コドラ 「悪いけど! あなたにはダウンしてもらうわよ!」

グラエナ 「ただでとれると思うなよ!?」

コドラはそう言うと、コドラの手がぼんやり光る。
『メタルクロー』だ。
俺はそれも気にせず、正面から頭からいく。

ドコォッ!!

グラエナ 「ぐぅ…!?」

コドラ 「なっ…!?」

俺たちは正面から頭と頭が激しくぶつかる。
俺の技、『とっしん』だ。

この技は高威力だが、与えたダメージの何割かは自分も被ってしまう。
もっとも、コドラのような奴には通常ほとんど効かないノーマル技だが。

コドラ 「あたしが…ダメージを受けた…!?」

グラエナ 「カウンターでヒットしたからな…へへ」

その分俺もコドラの『メタルクロー』を被ってしまった。
散々自分の攻撃力を上げて『とっしん』を使ったから自分もでかいダメージ受けちまったな…。

コドラ 「で、でも! あたしを倒すまではいかなかったようね!」

グラエナ 「ああ…だが、俺たちの勝ちさ…」

コドラ 「えっ!?」

俺がそう言うとコドラはハッとして、空を見る。

チルット 「チ〜チルルチ〜チル〜ル〜」

コドラ 「しまった…『うたう』…?」

グラエナ 「もう…一発!」

俺は俺はもう一度その場からコドラに『とっしん』を行う。

コドラ 「うう…」

グラエナ 「ちっくしょう…石頭しやがって…」

そしてそれで俺たちはダウンしてしまう。


ユウキ 「グラエナ、コドラがダウンか…チルットが残ったからグラエナとチルットの勝ちか…」

正直、あのふたりじゃコドラに勝つのは不可能かと思っていたんだが見事にやってのけた。
グラエナの入り知恵だろうがお見事だな。
チルットはふたりを心配してかふたりの側に降り立った。

ユウキ 「で、こっちは…」

ラグラージ 「ラグ! ラーグ!!」

コータス 「コー!? コー!!」

サーナイト 「はわわわわわわっ!!?」

ラグラージはふたりに向かって『だくりゅう』を繰り出した。
昨日のジム戦からまた強くなったのか昨日より、より強くなった『だくりゅう』を見せてくれる。
しかし、あの技は複数の敵がいる場合は分散してダメージが半減してしまう。
そのせいでコータスもまだ大丈夫であった。

サーナイト 「もう、三回目だよ〜…これじゃあ近づけない…」

コータス 「こ〜…」

どうやら、近づけば『だくりゅう』に押し流され近づけないようだ。
その分、遠いからダメージは少ないようだが、こっちもジリ貧だな。


コータス 「ど、どうするんですか〜? ラグラージさん物凄く強いですよ〜?」

サーナイト 「うん、一応リーダーだもんね、僕達の…」

正直僕も驚いている。
ラグラージさんが強いことは重々解っていたけど、これほどだなんて…。

ラグラージ 「…サーナイト、さっさと攻撃に移らないとジリ貧だぞ?」

コータス 「言ってますよ〜? たしかに遠いですけど攻撃しましょうよ〜…」

サーナイト 「多分、それじゃ当たらないと思う」

ラグラージさんは普段はのんびりしている人だけど、バトルになるとせっかちになってしまう。
それに、見た目以上にラグラージさんは素早い。
『サイコキネシス』からも逃れてしまうかもしれない…。
ましてや、コータスさんの攻撃なんて…。

サーナイト 「…コータスさん、僕は『テレポート』で一気に攻勢に出ます」
サーナイト 「コータスさんはもしものフォロー、お願いしますね?」

コータス 「わ、わかりましたー!」

ラグラージ 「……」

サーナイト 「いきますよ! ラグラージさん!」

僕はテレポートして、ラグラージさんの真後ろに飛ぶ。

ラグラージ 「やはり死角に来たか!」

しかし、ラグラージさんも反応が早く、すぐに振り向いてくる。

サーナイト 「てい!」

僕はラグラージさんに牽制の手刀をくりだす。
しかし、ラグラージさんはあっさり回避してしまう。

ラグラージ 「サーナイト! その非力さじゃ当たっても効果はないぜ!」

そう言ってラグラージさんはお返しと言わんばかりに右ブローを放ってくる。
僕はそれを頬を掠めながらその場から動かず避ける。

サーナイト 「こっちまで! 来てもらいますよ!」

僕はさっきだした、手刀の手でラグラージさんに触り、『テレポート』する。

コータス 「消えた!? て、目の前!?」

僕ラグラージさんを捕まえると、一気にコータスさんの目の前に飛ぶ。
僕はいきなりでどうしたらいいのか戸惑コータスさんに命令する。

サーナイト 「コータスさん! 『のしかかり』!」

コータス 「え!? はい! とりゃーっ!」

コータスさんは飛び上がり、ラグラージさんに馬乗り状態になる。
背中が地面だから文字通り、マウントポジション。

サーナイト (コータスって見た目以上にジャンプする種族だから、やられるとビックリなんだよね〜…)

実際ラグラージさんもいきなりのことに直撃を食らってしまった。
僕はこの後の『かえんほうしゃ』でやられちゃったっけ…。

サーナイト 「さぁ! 覚悟してくださいよ! ラグラージさん!!」

僕はそう言って、ラグラージさんに『サイコキネシス』をかけようとするが…。

ラグラージ 「なめるなーっ!」

コータス 「ふぇ!? ふぇぇ!?」

サーナイト 「うそ!?」

ラグラージ 「どりゃあ!」

ラグラージさんはコータスさんを持ち上げると、僕に投げてきた。

ぎゅむ! ドスン!!

サーナイト 「きゅ、きゅう〜…」

コータス 「はう〜…痛いです…」

こっちはもっと痛い…。
今度は僕がコータスさんの『のしかかり』を受ける番だったようだ。
もういや…。

ラグラージ 「これで終わり! 『だくりゅう』をくらえ!」

ザパァァァン!!

コータス 「参りました〜…」

サーナイト 「もう…いや」

『だくりゅう』に流され、コータスさんは僕から離れたところで目を回していた。
僕はもう立つ気力がなかった。
何回も『だくりゅう』を喰らってしまったせいでもう、泥まみれ。

サーナイト (てか、お風呂入りたい…)



ユウキ 「…こっちはラグラージがふたりを倒して、ラグラージの勝ちか」

これで二組とも終わったようだ。
みんなもうバテバテだ。

ユウキ 「お疲れさん、皆相当疲れたみたいだな」

チルット 「初勝利っす〜嬉しいっす〜♪」

グラエナ 「……が、う」
コドラ 「……こ」

グラエナとコドラは死んでいた。
よほど、疲れたのか、それとも二度にわたる頭突き(とっしん)で頭が痛いのか…。

ラグラージ 「ぐぅ…ぐぅ…ラーグ…」

コータス 「コォ〜…」

サーナイト 「お風呂入りたいですぅ〜…」(泣)

ラグラージもさすがに息を粗くしていた。
よもや、80キロもあるコータスを持ち上げ、投げるとはな。
サーナイトは泥まみれになって半泣きだった。
コータスは目を回している。

ユウキ 「んじゃ、ポケセンの温泉で一風呂浴びたら、飯にするか」

サーナイト 「はぁい…」

チルット 「それがいいっす」

チルットは思いの外元気のようだ。
それ以外はほとんどぶっ倒れている。



…………。
………。
……。



そして、時間は流れて、朝の7時を迎えようとする頃…。


ユウキ 「んん…さてと…」

俺は(もとい俺たちは)ポケモンセンターで温泉に入り、ついで朝食も取って、ポケモンセンターの外に出ていた。
これから、俺はトウカシティへ向かう。
ジムバッジを4つ以上集めたら…。
俺は、かつての自分の象徴であるパパのいるトウカシティへ向かわないといけない。

ユウキ 「俺は…そこで過去の清算を終える…」

そして、その時俺はやっと俺であることが出来るだろう…。

俺はそう思うと、フエンタウンの外に歩き出した。


アスナ 「そうは如何咲!!」

ユウキ 「て…え?」

いきなり決意と共に歩き出したら、呼び止められてしまう。
しかも…ものすご〜く、聞き覚えのある声に…。

ユウキ 「アスナさん…」

アスナ 「ア・ス・ナ!! 先生どうしてひとりで行こうとするのよ!」

ユウキ 「はぁ? どういう意味です?」

俺はジム戦を終えたし、アスナさんとはこれでお別れだったはずだが?

アスナ 「こんな手紙だけ置いて出て行かれたら気になってしょうがないじゃない!」

アスナさんはそう言って、俺の前にある手紙を出す。
俺がアスナさん宛に書いておいたやつ…。

アスナ 「ありがとうって書かれたって困るよ!」
アスナ 「しかも、それと一緒にこんな大学ノートまで置いてあるし!」

ユウキ 「あ…それは受験の前に見るべし〜虎の巻〜」

アスナ 「ここまでアフターケアされて、黙っちゃいられないわよ!」

…要するにアスナさんは勝手に出て行ったことが気に入らないと言うことか…。

ユウキ 「そいつはスイマセン…では、さようなら」

あまり心を込めたつもりはないが、俺はそう言ってこの町を去ろうとする。
しかし、やはり、アスナに止められる。

アスナ 「待ってよ先生! キンセツまではあたしもついていくんだから!」

ユウキ 「は…? ついてくる?」

俺は今のアスナの言葉に耳を疑う。

アスナ 「そうよ! どうせ先生はキンセツシティに向かうんでしょ? だったら旅は道連れよ!」

ユウキ 「……」

別に構わないが…それでは砂漠に向かえないな…。
実を言うと、折角ハルカちゃんにゴーゴーゴーグルを貰ったんだから、砂漠へ向かいたかった。
以前フエンに来る途中砂嵐の酷い砂漠を見つけたのだ。
そこなら何か珍しいポケモンもいるかもしれないので、向かってみたかった。

アスナ 「つうわけだから、2分待ってて!!」

アスナはそう言うとダッシュでどこかへ走り出した。
あの方角は自宅か…。

ユウキ 「…やめとこ」

俺は一瞬アスナを置いてさっさと町を離れようかと思ったが止めることにした。
後が怖い…。
ちょっとかったるいのもあるが…。



…それで30分後…。


アスナ 「ごめんね先生…2分で用意なんてとてもあたし出来ない…」

いや、旅支度を2分で出来るなんてとても思ってないから…。
ましてや、向こうで暮らすための物も多くあるはずだしな。

ユウキ 「あれ? そういえばアスナさん荷物少ないですね?」

見るとアスナさんはやや大きめのショルダーバッグを一つ持っているだけだった。
少し少ない気が?

アスナ 「ああ、それなら後から、じっちゃんに荷物を宅配で送ってもらうつもりだから」

なるほど、だからか。

アスナ 「それよりさ、その急に口調かえるの止めてくれない?」
アスナ 「…すっごい、アレで嫌なんだけど…」

どうやらアスナさんは、この年上の人に対する口調が気に入らないようだ。

ユウキ 「…わかったよアスナ、じゃ、行こうか」

アスナ 「うん! それでこそ先生! ふてぶてしくね!」

ユウキ 「……」

何故ふてぶてしく?


…………。
………。
……。



『11月9日』


アスナ 「あ、砂漠だ」

ユウキ 「……」

フエンタウンを出て1日、俺たちは砂漠を迎えていた。
だが、生憎俺たちはここを迂回…。

アスナ 「よーし、行くよ! 先生!」

ユウキ 「…は?」

迂回…するはずが、アスナは見事に砂漠に向かってしまう。

アスナ 「先生! 早く!」

ユウキ 「…かったる」

急がないといけないのに…。
俺は仕方がないので、ゴーゴーゴーグルをつけて砂漠に入ったアスナを追いかけた。


………。


ユウキ 「…こんな寄り道して大丈夫なのか?」

俺は一応アスナに聞いてみた。
もし、ここでアスナが曖昧な返事をしたら引っ張ってでも向かわないといけないだろう。

アスナ 「ああ、それなら大丈夫だよ」

しかし、アスナは見事に何事も無いように言う。

ユウキ 「どうしてだ? キンセツへは11日にはつかないといけないんだぞ?」

アスナ 「大丈夫大丈夫、時間的には問題ないよ」

…どうもアスナからは安心が出来ない。
本当に大丈夫だろうか?

アスナ 「『砂漠に入って』1日余るって計算で来たんだから…」

ユウキ 「え…?」

マジすか…?
しかし、そうすると俺はどれだけ時間を無駄にしていたんだ…?
はぁ…なんていうか。

ユウキ (かったるい…)

アスナ 「ここにね、化石があるんだって」

ユウキ 「化石?」

アスナ 「そう、あたし1度は見てみたくてさ、つーわけで来たわけ!」

ユウキ 「と、するとあれか?」

俺はアスナのいう化石というやつに指を指す。
ここから数メートル離れたところに、それらしき物はあった。

アスナ 「……」
アスナ 「うーん? 目の錯覚?」

ユウキ 「いや、ちゃんとふたつ見えるぞ?」

遠目だが、俺にはふたつの化石が見えた。
まぁ、実際近づいて見てみないとわからないが、少なくともケセランパセランということは無いだろう。

アスナ 「先生…見てきてよ」

ユウキ 「なぬ? 俺か!?」

アスナは疑っているのか、俺に見てきてくれという。
俺は反論を出してしまうが、結局その化石に近づくのだった。


ユウキ 「…やっぱり化石だよな?」

俺は近づいてみると2つの化石があった。
ひとつは…根っこの化石か?
もうひとつ、爪か?

そこには両方とも30センチくらいの化石を見つける。
持ち運べそうだな?

ユウキ 「根っこの化石と爪の化石があったぞ!」

アスナ 「本当!? 持ってきてよ!」

アスナ持って来てくれという。
俺はやれやれとまず、根っこの化石を持ち上げた。

ユウキ 「結構重いな…」

持ち上げると、それなりの重量があった。
俺は次に爪の化石を…。

ザザザザァ…。

ユウキ 「あっ!?」

何と根っこの化石を取ると爪の化石は流砂に飲まれて砂の中に沈んでしまった。

アスナ 「きゃあ!? 何これ!?」

ユウキ 「!? アスナ!?」

瞬間、後からアスナの悲鳴が聞こえる。
振り向くと、アスナは砂に吸い込まれていた。
化石が落ちたことで、アスナの辺りの流砂も動き出したのか!?

ユウキ 「アスナーッ!!」

俺は根っこの化石を放り出すとアスナに全速力で駆け寄った。

アスナ 「先生! 助け…!」

しかし、一足遅くアスナは流砂に飲まれてしまう。
俺は手を伸ばし、アスナを捕まえようとしたがその手が届くことは無かった。

ユウキ 「くそ! アスナー!!」

俺がアスナの立っていた場所に立っても流砂は反応しない。
その場には砂嵐の激しい音のみが残った。

根っこの化石は空しく俺の足元に転がっている。

ユウキ 「くそ…どうすれば、どうすればいい!?」

アスナは流砂に吸い込まれた。
おそらく、アスナはまだ生きている。
流砂が起こるのはその下に空洞があるからだ。
恐らくそこに落とされたんだ…。

ユウキ 「くそ…だがどうやって助け出す!?」

はっきり言って、今、俺が言ったことも仮定に近い。
アスナの元に行けない以上助けようが無い…。



…………。



アスナ 「あたた…ここどこ?」

あたしは気が付くと真っ暗な所にいた。
真っ暗で何も見えない。
そのかわりたった一つ解ることがある。
砂嵐が起きていない。
今は音一つしていない状態だ。
そして、その時あたしはとんでもない所に自分が居る事に気付く。

アスナ 「そうか…流砂に飲まれて地面の下の空洞に来たんだ…」

間違いなくここは空洞…。
どうしよう…あたし死んじゃうかな?

アスナ 「ええい! ダメよ! アスナ、何とか脱出するの!」

あたしはそう思うと、モンスターボールを取り出して、コータスを出す。

コータス 「コー!」

アスナ 「コータス、『かえんほうしゃ』!」

コータス 「コー!」

あたしがそう命令するとコータスは適当に『かえんほうしゃ』をだす。
炎の出す光で周りは見え…。

アスナ 「!? げ、げほげほ!! コータス止めて!」

コータスの『かえんほうしゃ』のお陰で確かに周りは見えたけど、その煙で狭い空間にいるあたしは一気に煙で死にかける。
冗談じゃないわよ、墓穴掘って死ぬなんて…。

アスナ 「でもどうしよう…炎技を使ったらこっちが先にお陀仏するし、だからと言って電気タイプがいるわけでもなく…」

よもやこんな真っ暗状態を冒険しないといけないなんて…。
とりあえずあたしはコータスをすぐにボールに戻すのだった。

アスナ 「せめて使えるのは…ポケナビのライトくらいか…」

あんまり長持ちはしないけど、ポケナビのライトに頼るしかないみたい。

アスナ 「ん? あれ、そういえばさっきまで出ていた煙がもう無い?」

気が付くと、煙はもう感じられなかった。
自然消滅するはずが無いのに…。

アスナ 「………」

あたしはしばらく耳を研ぎ澄ましてみると…。

ヒュオオオ…。

アスナ 「風の音! あっちね!」

あたしは風の音の方へと歩き出した。
こんな所でくたばる気なんて無いんだから!



…………。



ユウキ 「せめて、アスナを発見しないといけないのか…」
ユウキ 「仕方ない…あまり頼りたくないが…フォルム!!」

俺はそう叫ぶと周りにふたつの半透明な白い玉が生まれる。
俺のフォルム『スフィアフォルム』…だそうだ。

ユウキ 「索敵…開始!」

俺はひとつの玉は自分を砂嵐から守るように俺を覆い、もうひとつは溶け込むようにスフィアは砂の中に潜った。
このスフィアは大変便利で、まるで霊体のようにあらゆる物をすり抜け、意識すれば個体のようになって、全てを弾く。
なんでこんな能力が俺にあるのかはさっぱり謎だが、今はこれでアスナを探すしかない。
ちなみに、直接スフィアから見ることは出来ないが、何かこの世界にあるマナとでもいうのだろうか、そう言うものを感じ取ることが出来る。
つまり、砂やポケモン以外の、アスナのマナを感じたらそこにアスナがいると言うことだ。
マナは空気中にもあるから空洞に入ったらそれで解る。
ちなみに、俺はマナと言っているが正式な名称は不明。
もしかしたら、俺だけが感じられるのかも…。

ちなみに、このスフィア、球体ということを除けば何にでもなる。
基本的に霊のように物質をすり抜け、固体のようになって物質を弾いたりもする。
また、硬さも調整できるからゴム球みたいにもなれば鉄球みたいにもなる。
大きさも変わるから、かなり強力だ。
はっきり言ってこの力を使えばポケモンとも十分戦えるだろう。

ユウキ 「アスナ…無事でいてくれよ…」

スフィアはどんどん下に下りていく。
やがてすぐに空洞は見つかるが、アスナのマナは感じなかった。
つまりアスナはどこかへ移動したと言うことか…。



………。



アスナ 「…ここが風の吹きぬける場所…」

あたしはポケナビの光を頼りに風の吹きぬける場所を見つけた。
風の吹きぬける場所は自分のいる場所から12メートルくらいの高さの所に横穴から吹いていた。
その周りは砂のため、登ることは不可能。
しかも、その風穴が人の通れるくらいの大きさかと言うと微妙ね。
あたしじゃ通れないかも…。

アスナ 「て、どうするのよ〜…これじゃ脱出できないよ〜…」

しまいにはポケナビの電力も無くなってきた。
じきに真っ暗になる…。
どうやら本格的にサヨナラ、MY人生のようね…。

アスナ 「うう…いっそ現実こそ夢であれ…」

きっと、これは夢なんだ…。
だから、いつか夢から覚めるんだぁ〜…。

アスナ 「ほえ? なにこれ? 玉?」

突然近くに1メートル大くらいの白い半透明の玉がよってきた。
なんなんだろ?
少なくともあたしを黄泉の世界に引きずり込みに来たってわけじゃなさそう…多分。
まぁ、実際何かを探すようにウロウロしているし…。

グゥゥゥゥゥ…。

アスナ 「うう…お腹すいた…」

あたしは急におなかのすいた腹を抑えた。
そして、何を考えたのか…。

アスナ 「あの玉…食べられるかな?」

突然とんでもないことを考えてしまう。
でも、そう考えるとその白い玉は大福みたいに見えて…。

アスナ 「いただきま〜す…」

あたしはその白い玉に近づいて触れる。

ビィン!

アスナ 「ひゃあ!? な、なに?」

突然あたしが玉に触れると玉は白く光って動きを止める。
い、一体何なわけ?


…………。


ユウキ 「見つけた! でろ! サーナイト!」

サーナイト 「マスター?」

ユウキ 「サーナイト、『テレポート』だ!」
ユウキ 「場所は俺のイメージしている場所!」

俺はそうサーナイトに言ってサーナイトの手を掴む。
サーナイトは目を瞑って、瞑想をして…。


…………。


アスナ 「うう…触れないから食べられない…」

この玉…むかつくことに触ってもすり抜けちゃうから食べられない。
本当になんなわけ?

アスナ 「うう〜…このぉ!」

あたしはおもわずその玉に殴りかかる。
どうせ無駄だろうけど苛立った私はあまり正常で入られなかった。

ユウキ 「アスナ! 助けに…!」

アスナ 「あ…!」

どかぁ!!

ユウキ 「来た…ぞ…」

クリーンヒット。
突然、先生が白い玉の中に現れる。
サーナイトも一緒だ。
恐らく、テレポートしてきたんだろう。
でも、先生は運悪くもあたしの右ストレートをテンプルに受けてしまう。
そのまま先生はダウンしてしまうのだった…。

アスナ 「ああーん! 先生ごめんなさい! まさか現れるとは思わなかったから!」

サーナイト 「マ、マスター!?」


………。
……。


ユウキ 「う〜…?」

アスナ 「よかった目覚めた!」

ユウキ 「アスナ…?」

俺は目を開けるとアスナの顔が目の前にあった。
なんだ、何で俺寝てるんだ。
確か俺は…アスナを助けに…。

ユウキ 「そうだ! アスナ! 助けにきたぞ!」

アスナ 「うん、ありがと先生!」

アスナは半泣きでそう言った。
でも、物凄く嬉しそうだ。
気のせいか、物凄く顔面がヒリヒリするがとりあえず、俺はサーナイトを見て命令する。

ユウキ「サーナイト、砂漠の入り口に『テレポート』だ」

サーナイト 「はい」

サーナイトは俺たちの手を取ると目を瞑り、そして…。


………。


ユウキ 「…やっとか」

アスナ 「よかった〜、無事助かったんだ」

サーナイト 「はぁ…はぁ…ふぅ」

サーナイトは激しく息切れをしていた。
どうやら長距離の『テレポート』に体力も減ってしまったようだ。

アスナ 「もう、あんなのこりごりだよ〜」

ユウキ 「ああ、俺もこりごりだ、妙に頭が痛いし」

アスナ 「あ、あはは〜、何でだろうね〜、て、あれ?」

ユウキ 「ん? どうした?」

アスナ 「先生、その手にあるやつ…」

アスナはそう言って俺の手を指差す。
俺は手を見ると気がついたら根っこの化石を持っていた。
どうやら、ずっと手に持っていたようだな…。

ユウキ 「ほい、アスナ、見たがっていた化石」

俺は化石をアスナに渡すとアスナは苦笑いをして。

アスナ「あはは〜、化石はもういいよ…」

アスナはそう言って化石を俺に押しかせした。
要するにいらないと言うことか。

ユウキ 「捨ててもいいんだがな…」

俺は捨ててもよかったのだが折角だからバッグにしまった。

サーナイト 「さぁ、もう行きましょう! キンセツシティに!」

アスナ 「うん! 行こうよ先生!」

ユウキ 「そうだな…」

そうして、俺たちはキンセツシティに向かうのだった。
そして、そこで俺たちは今度こそ本当に別れるだろう。
願わくば、アスナに幸があらんことを。




ポケットモンスター第24話 『ああ…砂地獄』 完






今回のレポート


移動


フエンタウン


11月9日(ポケモンリーグ開催まであと112日)


現在パーティ


ラグラージ

グラエナ

サーナイト

コドラ

コータス

チルット


見つけたポケモン 39匹




おまけ



その24 「初勝利」




あ、さてさて今回のお話はミツルとシタッパの話。
彼等は一体今何をしているのか?





ドサァ!!

レアコイル 「コイ〜…」

審判 「レアコイル戦闘不能! よって勝者挑戦者ミツル!」

ミツル 「やった! 僕達の勝ちだ!」

ラルトス 「ラァ〜♪」

テッセン 「うむ! 見事なチームワークじゃった! おぬし達の勝ちだ、ほれ!」

ミツル 「やった! ダイナモバッジゲットだ!」

シタッパ 「…よくやったな、ミツル」

俺たちは今、キンセツシティのジムにいた。
今まで特訓に特訓を重ねて、ついにミツルはキンセツジムを攻略した。
今のところミツルのパーティはラルトス、ロゼリア、コイルとよく勝てたものだというパーティだ。

俺はジムの観客席からミツルの戦いを見ていた。
お世辞に凄いとか上手いとかはとてもいえない。
むしろ終わるまでずっと心配の連続だ。

ミツル 「シタッパさん! 勝ちました!」

シタッパ 「ああ、わかっている! 見てたんだからな!」

ミツル 「はい! うれしいです!」

ラルトス 「ラァ〜♪」

ミツルとラルトスは互いこれでもかっと言う位この勝利を喜んでいた。

シタッパ 「じゃあ、次はフエンジムだな」

ミツル 「はい! 急いで行きましょう!」

テッセン 「おぬし達頑張ってな!」

ミツル 「はい!」

俺たちはジムリーダーに一礼すると俺たちはジムを出るのだった。
今回はここまで…。
本編が長かったからオマケは短いと言うのはなしでこれまで。
はたして、ミツルは次も勝てるのか?
不定期に続く。


おまけその24 「初勝利」 完



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