ポケットモンスター サファイア編




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第26話 『遥か遠い目の前のジムリーダー〜センリ〜』





『11月12日 午前8時17分 カナシダトンネル内部』


ユウキ 「むぅ…」

俺は今、カナシダトンネルの内部にいた。
内部には既に先客がおり、トンネルの道にはやはり大岩があって通ることが出来ない。
さすがにこれはちょっと一筋縄にはいかなさそうだ…。

ガッガッガッガ!

ユウキ 「……」

女性 「…ああ」

岩の向こうでは岩を削る音が聞こえる。
なんでも、この女性の恋人さんだそうで恋人に会うため健気に岩を掘っているらしい。
その心意気には感銘するが、遠回りでも別の道から会いに行った方がいいだろうに…。
まぁ、これもロマンスか?

女性 「彼はポケモンたちを驚かさないようにって、ああやって掘っているの…」

ユウキ 「…かったるい」

聞いていないんだが、女性は語ってくる。
さて、どうしたもんか…。

ユウキ (俺のポケモンに『いわくだき』が使用できるポケモンはいない)
ユウキ (あればこんな岩簡単に砕けるんだが…)

ちなみにいわくだきとはポケモンの技で、秘伝マシンのひとつだ。
そんなに簡単にあるわけ無いんだよな…秘伝マシンなんて。

ユウキ (あとはラグとかサーナイトとかで砕くしかないか…)

俺は自分のポケモンたちでどうにかできないかと考えたがいまいちどれも成功できそうになさそうだ。
ちなみに今、ポケモンたちはポケモンセンターに置きっぱなししている。
そろそろ回収しにいくか。

俺はそう思うとトンネルを引き返しシダケタウンのポケモンセンターへ向かった。



…………。



コドラ 「ああ〜…目覚め最悪〜」

チルット 「いきなりどうしたんすか、コドラさん?」

コドラ 「いろいろあるのよ…女の子には」

コータス 「あはは〜そんなんですか〜」

コドラ 「あなたもそうでしょうが!」

サーナイト 「……」(熟読中)

コドラ 「つーかさ、サーナイト、昨日もあれ読んでいなかった?」

私は今日も今日とて本を読みふけっているサーナイトを見て言う。
よくまぁあんなに熱中できるものね。

ラグラージ 「サーナイトにはそれくらい面白いのかもな」

グラエナ 「…俺にはわからないな」

チルット 「サーナイトさん! そろそろ出発の準備するっすよ!」

サーナイト 「え!? あ、はい…」

チルットが近づいて大声でそう言うと、サーナイトはさすがに気づいて本を閉じる。

サーナイト 「む〜…」

チルット 「? どうしたっすか?」

サーナイト 「この本…どうしたらいいでしょうか?」

コドラ 「本?」

ラグラージ 「貰っといたらいいんじゃねぇか?」

サーナイトはその本があまりに気になるためか、持っていきたいようだ。
別にいいんじゃないかしら?

サーナイト 「でも…これって僕のじゃないし」

グラエナ 「んなもん、ここに置き忘れた奴が悪いんだよ」

サーナイト 「…うん、そうですよね! よし、もっていこう!」

サーナイトはそう決心すると嬉しそうにその本を持った。
う〜む、サーナイトめ、早くも趣味が出来たか…。
こりゃ私もひとつくらい趣味を持った方がよさそうね。



ユウキ 「…なにやら、ポケモンたちが騒いでいるな…」

俺は外からポケモンたちを確認していた。
ポケモンたちはもうすでにいつでも出発できるようだし、俺は借りている部屋に向かうのだった。


………。


『同日 某時刻 ポケモンセンター:101号室』


ユウキ 「…さてと、おーい!」

ラグラージ 「ラグ?」

俺は部屋で旅支度をし終えるとポケモンたちを呼んだ。
ポケモンたちは俺の呼びかけに反応して寄ってくる。

チルット 「出発っすか?」

ユウキ 「ああ、お前らボールに戻ってもらうぞ」

コータス 「こー!」

グラエナ 「ガウ」

サーナイト 「はい!」

ユウキ 「…て、サーナイトその本はなんだ?」

サーナイト 「あ、それは…そこに…」

サーナイトはそう言って本が置いてあった場所を指した。
俺はそれを聞いて間髪いれずに。

ユウキ 「置いてこい」

サーナイト 「えええ! だめですかー?」

サーナイトは心底悲しい顔をする。
そんな顔されても困るっつーの!

ユウキ 「公共物を持ってくるな!」

サーナイト 「うー…」

チルット 「まぁまぁ、いいじゃないっすか、本くらい」

ユウキ 「だめだ」

サーナイト 「……」(ジー)

ユウキ 「う…」

サーナイトはいわゆる物欲しい目で俺を見てくる。
こういう顔には苦手なんだよな…。

サーナイト 「……」(じ〜)

ユウキ 「わ、わかったよ、ただしその本は置いていけ、好きな本買ってやるから…」

サーナイト 「本当ですか!?」

チルット 「だったらマイクや楽器を買ってほしいっす〜」

ユウキ 「我侭言うな」

サーナイト 「じゃあ、置いてきます♪ わーい♪」

サーナイトは嬉しそうにトテトテと走って、本を置いてくる。

ユウキ 「やれやれ、一体何があったのやら…」

ラグラージ 「…ラグ」

コータス 「…コ〜」

見るとラグとコータスが微妙な顔をしている。
一体何があったんだ?

ユウキ 「…とりあえず、戻れお前ら」

俺はモンスターボールを取り出すとポケモンたちをボールに戻す。
サーナイトのあんな嬉しそうな顔は初めてだったな…。







カイ 「あ、ユウキさん、もう出発ですか?」

ユウキ 「あ、はい、お世話になりました」

カイ 「あはは、それではまたのご利用をお待ちしています♪」

カイさんはエンジェルスマイルでそう言ってお見送りをしてくれる。
俺はその後カナシダトンネルに向かうのだった。



………。



ガッガッガッガ!

ユウキ 「……」

岩の所に来ると以前、岩を掘っているようだ。
健気なこったね。

ユウキ 「さて…後はやってみるだけか…」

俺はそう言うと岩の近くにあった、鉄の杭を持つ。
鉄の杭は1メートルほどの地面に刺すための物で、表面上は錆びているがまだまだ大丈夫そうだった。

女性 「あの…何をするつもりで?」

ユウキ 「あ、すいません…向こうの彼に岩から離れてと言ってくれませんか?」

女性 「はぁ、すいませーん! こっちから何かするみたいで、岩から離れてくださーい!」

男性 「わかりましたー!」

そう言う声が聞こえると、掘る音が止む。
俺はそれを聞くと二つのボールを取り出す。

ユウキ 「いけ! コータスとラグ!」

ラグラージ 「ラーグ!」

コータス 「コ−!」

中から当然のように二匹が出る。

ユウキ 「よし! コータス、岩に向かって『かえんほうしゃ』!」

コータス 「コー!」

コータスは大岩に向かって『かえんほうしゃ』を放つ。
煙が凄いが、天井が高いためそこまで煙たくはない。
それより、熱が凄い…。

女性 「ゴホゴホ! な、何をする気で…!?」

ユウキ 「もうちょっと待ってくれればわかりますよ!」

俺はいまだ『かえんほうしゃ』を放たて続ける。

コータス 「コ、コ〜…」

ユウキ 「よし! もういい! ラグラージ、『みずでっぽう』!」

ラグラージ 「ラーグ!」

バシャ! ピシィ!!

岩は水で急に冷やされ、ひびが入る。
間違いなく脆くなったはずだ!

ユウキ 「てい!」

ガキィ!!

俺は鉄の杭をその大岩に突き刺す。
大岩は思ったより簡単に貫くことができた。

ユウキ (あとは…フォルム!)

俺は心の中でこっそりフォルムと言い、二つの珠を出す。
珠は岩の中心に浸透させる。
あとは…。

ドカァン!

俺はフォルムを実体化させ、中で膨張させて、岩を破裂させる。
その瞬間フォルムは解除した。
岩はものの見事に砕け散る。
これで通れるな。

男性 「おお!」

女性 「すごい…!」

二人は俺の行為に感嘆の声を上げた。
いや、やれば何とかなるもんだな。

ユウキ 「お前ら、戻れ」

ラグラージ 「ラグ…」
コータス 「コー」

俺はラグたちをモンスターボールに戻すと、さっさとカナズミ側へ向かう。

男性 「待ってくれ! お礼にこいつを持っていってくれ!」

ユウキ 「はい?」

突然男性の方に止められてしまう。
手には技マシン…いや、秘伝マシンがあった。

男性 「これは秘伝マシン04、『かいりき』!」
男性 「お礼にこれを持っていってくれ!」

ユウキ 「…いいのか? じゃあ、貰うよ?」

俺はそう言うとその秘伝マシンのディスクを受け取ってバックのディスクケースにしまう。
俺はその後カップルに一礼して、カナシダトンネルを出た。



…………。



ユウキ 「ふぅ、久し振りにこっちの西側に来たけど、あんまり気温変わらないな…」

カナシダトンネルを出てまず感じたのはそれだった。
シダケほど寒くは無いが、やはり少なからず寒さを感じる。
もうそろそろ冬が来るわな…。

ユウキ 「さてと」

俺はバックからマッハ自転車のボールを取り出すと、それをボタンを押して自転車状態にする。
こいつなら相当早くいけるはずだ。
と、言うわけで俺はマッハ自転車に跨ってカナズミシティへと向かった。




…………。
………。
……。




『同日 午後6時38分 カナズミシティ』


ユウキ 「随分と久し振りだな〜、ツツジさん元気かな〜?」

カナズミシティに着くと思わず懐かしく思ってしまう。
思い起こせば俺のジム戦はここから始まったんだよな〜。
あの頃は一戦一戦にヒーヒー言っていたのが懐かしい。

ユウキ 「久々にジムの方見てこようかな?」

俺はふとカナズミジムの方が気になった。
この時間帯ならまだやっていないことも無いと思うんだが、ツツジさんの場合早めに切り上げちゃいそうだもんな。

ユウキ 「まぁ、とか言う前にジムに着いていたり…」

俺は既にジムの前に来ていた。
ジムは明かりがついている様子もないし、中から特に音も聞こえてこない。

ギッギッ。

ユウキ 「閉まってる」

…まぁ、そんなもんか。
どうせそうだろうと思ったし。

ユウキ 「とりあえずポケモンセンターに行くか」

俺はそう思うとポケモンセンターを目指す。
ポケモンセンターはこの街の南北に走る大通りに出て、南に向かったらすぐだ。
俺は方向音痴ではあるが、一度通った道は忘れない。
これって特技?

ユウキ 「そういや、この先に本屋あったっけ」

俺はふとサーナイトとの約束を思い出す。
好きな本買ってやるっていう約束だったな。

ユウキ 「でろ、サーナイト」

サーナイト 「…?」

俺は道の途中でモンスターボールからサーナイトを出す。
選ぶのはサーナイトだからな。

サーナイト 「マスター?」

ユウキ 「ほら、本屋行くから何買うか考えとけよ」

サーナイト 「…! ありがとうございます!」

サーナイトはそれを聞くとものすごく嬉しそうな顔をする。
いや、この上なく嬉しいんだろうな…。

ユウキ 「ここだ、ここ」

俺は以前通った道の本屋の前に来た。
とりあえず問題ないので中に入る。

サーナイト 「うわぁ、人間の本って一杯あるんだ〜」

ユウキ 「ポケモンにもあるのか?」

サーナイト 「いいえ、ポケモンには本はありませんよ、でも物語を読むの好きです♪」

サーナイトはそう笑って言い、店の奥へと進んでいった。

ユウキ 「…やれやれ」

俺もたまには本を見て回るか…。
昔は本とか割と読んだもんだよな…。

ユウキ 「…あ、これ…」

俺は適当に古本を見て回っていると、ある一冊の本が目に入る。
俺は思わずその本を手にとって見る。
正直、その本は俺にとって両極端の本だった。
その本はあるカントー地方の少年がピカチュウの相棒を連れて旅に出るという話だった…。
ジム戦に挫折したり、ポケモンと喧嘩したり泣いたり笑ったりの冒険活劇。
昔はこの本を何回も読んだものだった。
ポケモントレーナーに憧れてた頃は…。

サーナイト 「マスターこれ! …あ」

振り向くとサーナイトが一冊の本を持ってきていた。
サーナイトは俺の手の本を見るとある特殊な目をする。
知っている、という目だ。

サーナイト 「マスター、その本…」

ユウキ 「知っているのか?」

サーナイト 「……」(コクリ)

サーナイトは無言で首を縦に振った。
そうか、やっぱり知っているのか。
なんでかは知らんが。

ユウキ 「この本って面白いよな…ポケモンたちとひとりの少年を描いて…」
ユウキ 「泣いたり笑ったり、時には喧嘩したり」

サーナイト 「マスター、読んだことあるんですか?」

ユウキ 「ああ、持ってるからな」

引越しの際、ミシロタウンに持ってきたから家に帰ったらちゃんとあるはずだ。
俺はその本を元の場所に戻すとサーナイトに近寄った。

ユウキ 「んじゃ、それでいいのか?」

サーナイト 「はい…でも…」

サーナイトは俺の戻した本が気になるのかそちらに視線が泳いでいた。
迷っているようだな。

ユウキ 「今日はその本にしておけ、俺のでよかったらミシロタウンに戻った時お前にやるよ」

サーナイト 「え!? いいんですか!?」

ユウキ 「別にいいよ、もう何回も読み返した本だし」

サーナイト 「マスターありがとう!」

サーナイトはまた嬉しそうに笑う。
もとが控えめな性格で最初の頃なんて俺相手でもほとんど話をしてくれなかったんだがな…。

ユウキ 「さて、じゃあ清算に行くぞ」

サーナイト 「はい♪」



ユウキ 「本って…モンスターボールの中に入っちゃうのか?」

サーナイト 「え?」

俺は本を買った後本屋を出てすぐにそんな疑問が浮かんだ。
経験上ポケモン以外ボールに入ったところは見たことが無いんだが…。

ユウキ 「…試してみるか」

サーナイト 「え? え??」

俺はサーナイトが良くわからないといった顔をしているうちにボールを取り出しサーナイトをモンスターボールに戻す。

ユウキ 「……」

モンスターボールに戻した後は何も無かった。
どうやら本も一緒に戻ったようだ。
そういや、ポケモンの道具は持たせると一緒にボールに戻るもんな。
て、本はサーナイトの装備品か!?

さすがに苦笑する。
しかし、モンスターボールの中で本って読めるんだろうか?
…たぶん、無理だろうな…。

ユウキ 「はは…行こ」

俺は苦笑を浮かべたままポケモンセンターへ向かうのだった。



………。



ユウキ 「しかし、最近変なイベントばっかりで時間がよくすっ飛んでいる気がするな〜」

いきなりなんだと思われてしまうかもしれないが、ふと思ってしまった。
ここ最近急に展開が速くなっている気がするもんな…。
まぁ、かったるくなくてありがたいんだが?

さて、まぁそんなことは本編には関係の無いわけで俺はポケモンセンターに入るのだった。


ユウキ 「……」

中に入るとどこか懐かしい感じがした。
思い起こせば俺が初めて利用したポケモンセンターだったんだよな。

女性 「ああーーっ!」

いきなり耳を劈(つんざ)くような声。
物凄く懐かしい…てか、こんな声をあげる人だったろうか?
俺は、その声の方を見る。

ツツジ 「あ、ああ…あああ!」

見ると、正面カウンターになにやら顔を赤くしたツツジさんがいた。
ところでさっきから『あ』しか出てこないが?

ユイ 「いやぁ〜、まさか本当に現れるなんてねぇ〜」

カウンターに立っているポケモンナース姿で仕事中のユイさんも俺を見て苦笑している。
正直、この二人異常な反応が俺にはよく分からないんだけど?

ツツジ 「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ああああああ」

やっぱりツツジさんは口をパクパクさせながらあしか言わない。
俺がこのポケモンセンターに来たら都合悪いのか?

ユウキ 「あの…お二人さん?」

ツツジ 「は、はいぃ!?」

…過剰反応。
一体何なんだ?

ユイ 「や、ユウキ君久しぶりだねぇ〜」

ユウキ 「ええ、その節は大変お世話になりました」

もっとも、それがこの人のお陰(性?)で俺は一躍ポケモンセンターの有名人なってしまったと言っても過言ではない。
まぁ、それが必ずしもメリットになっているかというと話は別だが。
白髪の少年という事もあって色々と奇異の目で見られた感もあったからな…。
しかもこの一族ったら次々と身内に俺のことを広めるんだから…。

ユウキ (ある意味、いい迷惑だった…)

お陰でいままで通ったポケモンセンターのお姉さんの名前みんな覚えてしまったではないか。
まず、カナズミはユイさん、ムロはネイさんだったな。
カイナはメイさんだったな…お節介な人だった。
キンセツはマイさんだったな…無駄口の少ないある意味好感の持てるタイプだった。
フエンはアイさん、底の知れない人だ…。
そしてシダケタウンはアイさんだったな、お喋りでトラウマもあってか一番苦手なタイプだった。
あ、そういえばハジツケタウンの人だけは知らないな…。
うかつだった…どうでもいいのだが。

ユイ 「いや、それにしても約束は約束だしねぇ〜?」

ツツジ 「ええぇっ!?」

ユイさんはイヤラシイ目でツツジさんを見る。
するとツツジさんは顔を真っ赤にする。

ユウキ 「正直、話が見えないんですが…?」

どうせ、かったるいことなんだろうけど。

ユイ 「ああ、実はね今日たまたま君の事話してたわけよ」

ユウキ 「俺の?」

ツツジ 「え、ええ…」

そりゃ、光栄と思うべきなのかいい迷惑と思うべきなのか?

ユイ 「そいで、もし今日君が現れたらツツジが…フガ!」
ツツジ 「ダメー! それ以上はダメー!!」

ツツジさんはユイさんがいい終わる前に口をその手で塞いでしまう。
うむ、某商人ばりのわざだ、アレなら不○議な○ン○ョンにもいけるだろう。
そういえば救助隊ってあそこが出すんだっけか…理不尽な内容になっていなければいいが…。

ユイ 「何よ〜、約束でしょ?」

ツツジ 「そ、そんなの無茶苦茶よ!? 大体アレは…!」

ユウキ 「アレは?」

ツツジ 「うひゃら!?」

面白いくらいにツツジさんが変なリアクションを取ってくれる。
こんな取り乱したツツジさんを見るのは初めてだな。

ユイ 「いや、ほんとの話…」

ツツジ 「ユ、ユイ!?」

ユイ 「ユウキ君はツツジに脈あるかってね?」

ユウキ 「……」
ユウキ 「…はぁ?」

そんな突飛なことを話していたのか…?
少なくともこの二人に対しては脈なしだぞ…。
ん? でもこれだと会話がおかしくないか?
…どうも、何かが繋がらないな…。

ユイ 「はなから答えなんて分かるような顔しているけど、どうなの?」

ユウキ 「当然ナシ」

ツツジ 「うぅ、それはそれで…」

ユウキ 「つうか、歳が離れすぎているし、かったるいし」

俺はまだ14歳だ。
もっとも誕生日が11月21日だからもうすぐ15なんだけど…。
ちなみにこの日付にピンときたあなた、相当のポケモン通だよ…。

ツツジ 「…ちなみにユウキさん何歳ですか?」

ユウキ 「14」

俺はきっぱりそう言うとツツジさんは少し考えるしぐさをして。

ツツジ 「…たしかに離れすぎています…私たち21だし…」

それは約7つも違うというわけだ。
恋に歳の差は無いとはさすがに言わせんぞ?


(アスナ 「あたしなら?」)


ユウキ 「!?」

ユイ 「ん? どうしたの?」

ユウキ 「い、いえ」

突然、画面が暗転してアスナの顔が浮かんでしまった。
いや、それでも4つ差があるじゃないか…。

ユイ 「それで、このポケモンセンターに来た理由は?」

ユウキ 「あ、ポケモンの回復と寝場所を…」

ユイ 「そう、それじゃモンスターボールを」

ユウキ 「どうぞ」

俺はボールをユイさんに渡すとユイさんは丁寧にボールを回復装置に乗せる。

ユイ 「たしかにお預かりしました、少々お時間がかかりますのでお待ちください!」

ユウキ 「うーむ、やっと普通のポケモンナースに会った気がした」

ユイさんのマニュアル的な行動が妙に現実感を出していた。
俺って変な人にかかわってばかりだったからな。
そう言う意味ではユイさんは程よく何に関しても付き合いやすい。

ユイ 「なんか、よく分からないけど、でバッジの方はどうなの?」

ユウキ 「ん、それならやっと4つ」

俺はそう言うとバッジケースを二人に見せる。

ツツジ 「ナックルバッジ、ダイナモバッジ、ヒートバッジ…もちろんストーンバッジもありますね」

ユイ 「おお、良くぞヒートバッジを手に入れたわね、聞いたわよあそこ閉まったって」

ユウキ 「ああ、やっぱりね…」

ツツジ 「…? 何か知っているんですか?」

ユウキ 「まぁ、色々と」

ある意味俺があそこは閉じさせる羽目にしてしまった感があるからな。

ユイ 「うーむ、それにしても4つか〜何とか折り返し地点みたいね」

ユウキ 「…そうですね」

そう、折り返しだ。
バッジは8つ集めるとポケモンリーグに出られる。
あと4つなんだ。
けど、俺にとってはそれが折り返しじゃない。
俺にとって俺という人物への折り返し…。
戻るのではなく、進むための…。

ユイ 「いやぁ、でもこの調子ならポケモンリーグにも出場間に合うかもね」
ユイ 「一体誰が君のこの状況を予想できたかしらね?」

ツツジ 「私はポケモンリーグに出られると予感していました」

そういえば、そんなことジム戦で言ってたっけ。
懐かしい話だ。

ユイ 「それにしても5つ目はどこにする気なの?」

ユウキ 「トウカシティ…トウカジム」

ツツジ 「!!?」

俺の言葉を聞いた瞬間、二人は一瞬氷ついたようになった。
こころなしか、一瞬時間が止まったような感覚に襲われた。

ツツジ 「それは、まだ辛いのではないでしょうか?」

ツツジさんは顔を暗くしてそう進言する。
だが、生憎俺はそれを受け入れる気は無い。

ユウキ 「いえ、一刻も早く俺はあの人に、…センリさんと戦いたんです」

俺はあえてパパのことをセンリさんと呼ぶ。
これはある種俺の覚悟だった。
あの人を親として見ず、ひとりのポケモントレーナーとして見るため。

ユイ 「…訳ありなのね」

ツツジ 「ならば、久しぶりに私とポケモンバトルをしませんか?」

ユウキ 「え?」

ツツジ 「私はあの人ほど強くはありませんが、肩鳴らし位するべきでしょう?」

ユウキ 「…わかりました、やりましょう」

俺はそのポケモンバトルを受ける。
今、俺は負ける気は無い。
いや、これからもだずっと、だ。

ツツジ 「では、もう遅いですがジムの方へ参りましょう」

ツツジさんはそう言って、外へと歩き出す。

ユウキ 「ユイさん、ボール」

ユイ 「はい、頑張ってね」

ユウキ 「……」

俺は何も答えずツツジさんの後を追った。
すでに日は沈んだ時間だが、俺たちのバトルは熱く始まるだろう…。
これは、俺にとってもうひとつの『転機』だろう。
俺たちは無言のまま、ジムへ目指すのだった。




ポケットモンスター第26話 『遥か遠い目の前のジムリーダー〜センリ〜』 完






今回のレポート


移動


シダケタウン→カナシダトンネル→116番道路→カナズミシティ


11月12日(ポケモンリーグ開催まであと109日)


現在パーティ


ラグラージ

グラエナ

サーナイト

コドラ

コータス

チルット


見つけたポケモン 39匹




おまけ



その26 「秘拳! 残○拳の巻(嘘)」




サーナイト 「ル〜ルルル〜ララ〜♪」

コドラ 「随分嬉しそうね〜…その本はなんなの?」

サーナイト 「これですか? えーと、○トル○ワイア○」

ラグラージ 「それはまた…随分ハードな選択だな…」

サーナイト 「そうですか〜さぁて早速読もっと♪」

僕は早速ページを開けてみる。

『おお〜、あ、あなたは。もどってきてくださったか〜』
『わ…わしどうやらここまでのようじゃ』
『だ…だがこの種モミだけは実らせてほ…ほしい』

サーナイト 「?」

僕は何か間違えた?
中を見てみると、何かが違う気がした。
しかし、かまわず読んでみる。

『るせぇ、くそじじい!』

『た…たの…み…ま…す…』

『きさまー!』

サーナイト 「……」

どうやら老人は死んだようだ。
これって一体?

『ヒヒ罠にかかりやがってバカヤロウが〜』

悪党は手を上げると、どこからかモーニングスターが飛んでくる。
男は手でそれを受け止めるが、それが腕に絡まり、身動きがとれなくなった。

『どうだぁこれで手も足もでまい』

『いったはずだきさまらにはおれを殺すことはできん』

『ケッ! 脳みそぶちまいて死にやがれ!』

悪党はそう言うと容赦なくトマホークを男に投げつける。
しかし、男はそれを蹴って、トマホークはモーニングスターを持っている男の一人の首を狩る。
そして、倒れた男の鎖をそのままもう一人の悪党の首に引っ掛ける。
相手は妙に大きくてハゲだった。

『ぬうっふふっこのおれさまと力くらべをしようとはたわけた小僧だぜ』

『人間は自分の潜在能力を30%しかうことはできんが○斗神拳は残りの70%使うことに極意がある。ふん!!』

そう言うと男はメキメキと鎖を鳴らして悪党を引きづりながら手繰り寄せた。

『○山両○波!!』

そう叫ぶとどう見てもただのチョップを悪党に繰り出す。
そのチョップは一発で悪党の頭骸骨を陥没させて、即死させた。
凄い威力だ。

『ヤ…ヤロウふざけやがって!』

リーダーと思われる悪党は両手にトマホークを持って、男に突っかかる。
しかし、悪党は簡単に鼻を折られて、鼻血を垂らす。

『どうしたハゲ。それまでか』

男は超余裕だ。
悪党をハゲ扱い。

『う…ああ。う〜〜〜〜!!』

男はトマホークを振りかざし、男に襲い掛かるが避けられ両腕を掴まれる。
そのまま、ボンと言う音を立てて悪党の両腕をへし折ってしまう。

『ぎゃあああ!』

『ぬあああ』

ドン!

そんな音とともに男はトドメといわんばかりに両親指を相手のコメカミに突き刺す。
普通、そりゃ即死だろ…。

『○斗残○拳!』

でた、必殺技…。
まさに必ず殺す技だから必殺技…恐るべし。

『これは708ある経絡○孔のうち頭維(四合)といってな』
『この指をぬいてから3秒後にてめぇは死ぬ』

まさにそ…そんなというわんばかりの台詞だ。
これが善人相手ならひどすぎる。

『その3秒間に自分の罪深さを思いしれ』

『ち…ちょっとまってくれ、た…たのむ。う…うわあ!』

しかし、男は容赦なく指を引っこ抜く。
だから普通その時点で即死だって…。

『い…いやだ。お…俺ははまだ死にたくねぇ! 死にたくねぇ〜〜っ!』

男はもう、惨めにも逃げ出す。
男はそれを追う様子は無い。
そして…。

『死に…たわっ!?』

そして、悪党は見事に真っ二つになりアジの開き状態になる。


『ケッ、そんな所にまいたって実るわけねえだろ』

『実るさ…下にあの老人が眠っている』




サーナイト 「ふぅ…おもしろかった」

でも、分かったことがある。
これは…○斗の拳だ。
まさか本当にタイトル通りやるなんて…。
これはまさに神(作者)の放ったメキドの火なのか!?
いまならコロニー落としも成功しそうだ。

ラグラージ 「なんで昔の○ャン○読んでるんだよ…」

コドラ 「てか、どうやって手に入れたの?」

結局、買い間違えたことに気づかないサーナイトだった。


注!本編ではさすがに持っていないからな!


おまけその26 「秘拳! 残○拳の巻(嘘)」 完



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